同期クロック生成回路及び同期クロック生成回路を備えたアナログ/ディジタル角度変換器と角度検出装置
【課題】安価に構成することができる同期クロック生成回路を提供する。
【解決手段】角度検出器10の出力する2相の角度信号S1とS2を、第1二乗回路11と第2二乗回路12でそれぞれ二乗し、それぞれの二乗信号を加算回路14で加算し、加算回路14の出力信号の直流成分をフィルタ16で除去する。フィルタ16の出力信号と基準電位とを比較するコンパレータ18で矩形波に変換し、その矩形波の位相を移相器20で所定量遅らせる。移相器20の出力信号を、同期化分周回路22で角度検出器10に供給する励磁信号に同期して1/2分周して同期クロックSQ3を得る。
【解決手段】角度検出器10の出力する2相の角度信号S1とS2を、第1二乗回路11と第2二乗回路12でそれぞれ二乗し、それぞれの二乗信号を加算回路14で加算し、加算回路14の出力信号の直流成分をフィルタ16で除去する。フィルタ16の出力信号と基準電位とを比較するコンパレータ18で矩形波に変換し、その矩形波の位相を移相器20で所定量遅らせる。移相器20の出力信号を、同期化分周回路22で角度検出器10に供給する励磁信号に同期して1/2分周して同期クロックSQ3を得る。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
この発明は、2相レゾルバのアナログ信号出力から、アナログ/ディジタル角度変換器のための同期クロックを生成する同期クロック生成回路及び、その同期クロック生成回路を備えたアナログ/ディジタル角度変換器と角度検出装置に関する。
【背景技術】
【0002】
特許文献1に開示された従来の角度変換器の同期クロック生成回路を図12に示し、その動作を説明する。
【0003】
シンクロ又はレゾルバ等の周知の巻線型角度検出器1Aから得られたアナログ信号である角度検出信号1a、1b、1c、1dは、周知のスコットトランス又はアイソレーショントランス(以降、トランスと称す)1に入力される。トランス1は、この角度検出信号1a〜1dをもとに角度信号K1=KsinθsinωtとK2=Kcosθsinωtを生成して、シンクロ/ディジタルコンバータ(S/Dコンバータ)又はレゾルバ/ディジタルコンバータ(R/Dコンバータ)からなるA/Dコンバータ2に出力する。同時に、その角度信号K1とK2は一対の二乗回路3aと3bにそれぞれ入力される。角度信号K1、K2は、二乗回路3aと3bでそれぞれ二乗処理され、二乗角度信号(K2sin2θsin2ωt)と(K2cos2θsin2ωt)とになる。二乗処理された各角度信号は、加算器4で加算されて加算角度信号4a=K2sin2ωt(sin2θ+cos2θ)となる。この加算角度信号4aは、平方根回路5に入力されて平方根処理される。(sin2θ+cos2θ)は1であるため、平方根回路5の出力には、Ksinωtが出力される。このKsinωtの信号は、レベル調整回路6で振幅が調整され、K´sinωtとしてA/Dコンバータ2のREF端子2cに入力される。A/Dコンバータ2は、K´sinωtの信号を同期クロックとして用いてディジタル角度信号2dを出力する。
【特許文献1】特許第3100211号公報(段落〔0008〕〜〔0010〕、第1図)
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
従来の同期クロックを得るための技術は、上記したように平方根回路を要するものである。平方根回路はアナログ乗算器を用い、これは比較的高価な部品であった。
【0005】
この発明は、このような点に鑑みてなされたものであり、平方根回路を用いない方法で、安価に構成することができる同期クロック生成回路を提供すること、及びその同期クロック生成回路を備えたアナログ/ディジタル角度変換器と角度検出装置を提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0006】
この発明による同期クロック生成回路は、角度検出器の出力する2相の角度信号S1とS2を、二乗回路でそれぞれ二乗処理し、二乗処理された二乗角度信号を加算回路で加算し、加算回路の出力信号の直流成分をフィルタで除去し、フィルタの出力信号を、基準電位とコンパレータで比較して矩形波に変換し、その矩形波の位相を移相器で所定量遅らせて補正し、移相器の出力信号を、同期化分周回路で角度検出器に供給する励磁信号に同期して1/2分周する。
【発明の効果】
【0007】
以上のようにこの発明によれば、従来の同期クロック生成回路が必要とした平方根回路を用いずに同期クロック生成回路を提供することができる。
つまり、二乗回路、加算回路、フィルタ、コンパレータ、移相器、同期化分周回路とで同期クロック生成回路が構成でき、これらの回路はコストが安い部品で構成できる。したがって、平方根回路を用いた従来の方法に対してコストが安い同期クロック生成回路が提供できる。
【発明を実施するための最良の形態】
【0008】
以下に、この発明の実施の形態を図面を参照して説明する。複数の図面中同一のものには同じ参照符号を付し、説明は繰り返さない。
【実施例1】
【0009】
図1にこの発明による同期クロック生成回路の実施例1の機能構成を示す。図1では、従来技術の説明で示した巻線型角度検出器1A及びトランス1を角度検出器10として表記している。また、角度信号K1をS2、角度信号K2をS1と表記している。角度検出器10は、図示しない励磁巻線に供給する励磁信号sinωtをもとに角度信号S2=Asinθsin(ωt+φ)と、S1=Acosθsin(ωt+φ)を、それぞれ出力する。角度信号S1とS2のθは、角度検出器10の検出角度であり、φは励磁信号との位相差である。この位相差φは、角度検出器10が検出巻線と励磁巻線との電磁結合を利用することに基づき発生するものであり、通常数°〜十数°の遅れである。したがって、各角度信号S1とS2は、上記した式から明らかなように、角度検出器10の検出角度によって互いに振幅が異なり、互いに同一位相で、励磁信号より位相が遅れた信号である。
【0010】
この角度信号S1とS2が、それぞれ第1二乗回路11と第2二乗回路12に入力されて二乗され、二乗角度信号S1´とS2´とになる。角度信号S1とS2が二乗されると、マイナス側の波形は、プラス側に変化する。その結果、二乗角度信号S1´とS2´の周波数は、角度信号S1、S2の周波数の2倍となる。
【0011】
二乗角度信号S1´とS2´は、加算回路14で加算され、出力信号αとなる。角度検出器10の検出角度θによっては、どちらか一方の角度信号が0になることがある。例えば、角度検出器10の検出角度θ=0°の時、sin0°=0なので、二乗角度信号S2´は0である。又、角度検出器10の検出角度θ=90°の時、cos90°=0なので、二乗角度信号S1´は0である。角度検出器10の検出角度がどのような値でも二乗角度信号S1´とS2´を加算することで、加算回路14の出力に0にならない信号を得ることができる。この結果、どのような検出角度であっても同期クロックSQ3を生成できるようになる。
【0012】
加算回路14の出力信号αは、フィルタ16に入力されて、その直流成分が除去され、出力信号βとなる。その直流成分が除去されたフィルタ16の出力信号βは、コンパレータ18において、基準電位、この実施例1では、フィルタ16及びコンパレータ18を構成するアナログ回路の接地電位と比較され、矩形波の出力信号SQ1に変換される。
【0013】
フィルタ16によって直流成分が除去された出力信号βを、コンパレータ18で接地電位を基準にして矩形波信号に変換するので、後述する位相ずれが発生する。
つまり出力信号SQ1は、角度信号S1、S2に対し位相がずれる。この位相ずれを移相器20で補正する。
【0014】
位相ずれが補正された矩形波の出力信号SQ2を1/2分周すれば、同期クロックSQ3が得られるが、単純に分周するだけでは、同期クロックSQ3の位相が励磁信号に対して180°反転してしまうことがある。そこで、それを防止する目的で、同期化分周回路22が、角度検出器10内の図示しない励磁巻線に供給される励磁信号に同期して、移相器20の出力信号を1/2分周することで同期クロックSQ3を得る。
【0015】
このように、この実施例1によれば、第1、第2二乗回路11、12と、加算回路14と、フィルタ16と、コンパレータ18と、移相器20と、同期化分周回路22と、で同期クロック生成回路が実現できる。
【0016】
図2に図1で示した機能構成の各部の波形の一例を示し、更に実施例1の動作を説明する。波形を示すに当たって、角度信号S2=Asinθsin(ωt+φ)、S1=Acosθsin(ωt+φ)において、例えば角度検出器10の検出角度θを45°、振幅Aを√2と仮定する。そのように仮定すると、各角度信号S1とS2は、図2(a)に示すように、振幅が±1Vの周期信号(sin(ωt+φ))となる。この角度信号S1とS2を、それぞれ第1二乗回路11と第2二乗回路12で二乗すると、図2(b)に示すように、マイナス側の波形がプラス側に変化する。その結果、周波数は角度信号S1、S2の2倍となる。
【0017】
それぞれの振幅1Vの第1二乗回路11と第2二乗回路12の出力信号は、加算回路14で加算されて図2(c)に示すように振幅が2VP-Pの周期信号となる。この信号の平均値は2×1/2である。
【0018】
図2(c)に示される波形を矩形波に変換する動作を、加算回路14の出力に接続されるフィルタ16とフィルタ16の出力に接続されるコンパレータ18の2つの回路で行なっている。フィルタ16は、例えば直流成分を除去するハイパスフィルタ(以降、HPFと称す)であり、その出力信号βを図2(d)に示す。HPF16の遮断周波数を、好ましくは励磁信号周波数の1/10以下に設定しておくと、加算回路14の出力信号αに歪を与えずに直流成分を除去することができる。
【0019】
HPF16において直流成分が除去された出力信号βは、コンパレータ18によって基準電位である接地電位と比較され、図4(a)に示す矩形波の出力信号SQ1に変換される。
【0020】
上記の矩形波への変換の際に位相ずれが発生するので、その位相ずれについて説明する。図3に、この位相ずれの様子をより分かり易く示す。加算回路14の出力信号がα、HPF16の出力信号がβ、コンパレータ18の出力信号がSQ1である。コンパレータ18の出力信号SQ1で示す矩形波の立ち上がりのタイミングは、加算回路14の出力信号αが基準電位0の時点から遅れており、その位相ずれ量をφ´で示している。
【0021】
直流成分が除去されたHPF16の出力信号βの平均値は0となるので、上記の位相ずれ量φ´は加算回路14の出力信号αの振幅が0から平均値に達するまでの時間t1から求められる。sinωtを二乗したsin2ωtの平均値は1/2である。sinωtが0から平均値の平方根の値に達するまでの時間t1は、
t1=(sin−11/√2)/ω
ω=2πf
で表現される。fは励磁信号の周波数であり、例えば10KHzである。励磁信号周波数が10KHzにおいては、t1=12.5μsとなる。この時間t1に対応する位相量が位相ずれφ´となる。この例では、加算回路14の出力信号αの周波数2f(周期50μs)から、位相ずれφ´=12.5/50×360より90°となる。
【0022】
コンパレータ18の出力信号SQ1には、上記したような位相ずれφ´を伴うので、その位相ずれを移相器20によって補正する。位相補正された移相器20の出力信号波形を図4(b)に示す。この図4(b)に示す信号が、同期クロックSQ3の2倍の周波数である出力信号SQ2である。
【0023】
移相器20の具体的構成の一例を図5に示す。位相ずれの補正は、コンパレータ18の出力信号SQ1の立ち上がりと立ち下りのタイミングを遅らせることで出来る。90°の遅れ位相を進ませることは出来ないので、270°(270°=360°−90°)の位相を移相器20で遅らせる。タイミングの遅延量は、クロック信号Cの周波数とレジスタ51の値で設定される。
【0024】
例えばクロック信号Cの周波数は40MHz(周期=0.025μs)である。励磁信号の周波数が10KHzの場合に、加算回路14の出力信号αの一周期は50μsとなるので、その一周期は2000カウントということになる。したがって、位相を270°遅らせるには、レジスタ51に1500(1500=270/360×2000)をセットすればよい。
【0025】
RSラッチ59のQ端子より移相器20の出力信号SQ2が出力される。位相ずれを伴うコンパレータ18の出力信号SQ1が、カウンタ52のカウント動作を許可するイネーブル端子E52に接続される。コンパレータ18の出力信号SQ1がインバータ54で反転されてカウンタ50のカウント動作を許可するイネーブル端子E50に接続される。クロック信号Cがカウンタ52とカウンタ50のクロック信号端子C52とC50に接続される。
【0026】
カウンタ52とカウンタ50のそれぞれの出力端子Q52とQ50とが、それぞれ比較器56と58に接続される。レジスタ51の出力が比較器56と58に接続される。比較器56と58の出力端子が各カウンタ52と50のクリア端子R52とR50とにそれぞれ接続されている。更に比較器56の出力端子は、RSラッチ59のセット端子に接続され、また、比較器58の出力端子は、RSラッチ59のリセット端子に接続される。
【0027】
カウンタ52は、例えば11ビットバイナリーカウンタであり、コンパレータ18の出力信号SQ1が“0”から“1”に立ち上がるとカウンタ52のカウント動作が許可され、クロック信号Cのパルス数のカウントを開始する。比較器56は、カウンタ52の出力端子Q52のカウント値と、レジスタ51の値とを比較する。クロック信号Cを1500パルス数えた時に比較器56の出力が“1”となって、RSラッチ59のQ端子を“1”にセットする。
【0028】
カウンタ52のクリア端子R52へ“1”が入力されると、カウンタ52はクロック信号Cの立ち下りで、カウント動作を停止するとともに出力端子Q52を“0”にする。次に、コンパレータ18の出力信号SQ1が“1”から“0”に立ち下がるとインバータ54で反転されて、カウンタ50のカウント動作が許可され、クロック信号Cのパルス数のカウントを開始する。
【0029】
比較器58は、カウンタ50の出力端子Q50のカウント値と、レジスタ51の値とを比較する。クロック信号Cを1500パルス数えた時に比較器58の出力が“1”となって、RSラッチ59のQ端子を“0”にリセットする。
【0030】
カウンタ50のクリア端子R50へ“1”が入力されると、カウンタ50はクロック信号Cの立ち下りで、カウント動作を停止するとともに出力端子Q50を“0”にする。このようにして、コンパレータ18の出力信号SQ1の立ち上がりと立ち下がりのタイミングを遅らせることが出来る。
【0031】
移相器20の出力信号SQ2を1/2分周すれば、図4(c)に示すような同期クロックSQ3を得ることが出来る。角度検出器に供給する励磁信号との位相関係を考慮することなく、移相器20の出力信号SQ2を単純に1/2分周すると、分周器の初期状態や分周開始のタイミングによっては、同期クロックSQ3の位相が反転してしまう。したがって、角度検出器10に供給する励磁信号に同期して分周する同期化分周を行なう。
【0032】
同期化分周回路22の一例を図6に示す。同期化分周回路22は、コンパレータ62とDFF(Dtype Flip Flop)60で構成することができる。コンパレータ62に励磁信号が入力され、DFF60のC端子に移相器20の出力信号であるSQ2が入力され、DFF60のQ端子より同期クロックSQ3が出力される。
【0033】
同期化分周回路22の動作を図7(a)を用いて説明する。矩形波励磁信号70は、角度検出器10に供給される正弦波の励磁信号がコンパレータ62で矩形波に変換された信号である。なお、コンパレータ62の基準電位は接地電位である。コンパレータ62で矩形波に変換された矩形波励磁信号70を、移相器20からの出力信号SQ2の立ち上がりのタイミングで取り込む(ラッチ)ことで同期化と1/2分周とが同時になされる。その結果、移相器20の出力信号SQ2の立ち上がりで反転する1/2分周された同期クロックSQ3が、DFF60のQ端子に生成される。
【0034】
[応用例1]
図1に示した同期クロック生成回路は、例えば、角度値を出力するアナログ/ディジタル角度変換器(以降、A/Dコンバータと称す)に応用することができる。上記の同期クロック生成回路を用いてA/Dコンバータ800を構成した例を図8に示す。図示しない角度検出器からの角度信号S1とS2は、アナログ/ディジタル変換器(以降、ADCと称す)82と、先に説明したこの発明による同期クロック生成部84に、それぞれ入力される。角度信号S1とS2は、ADC82でそれぞれディジタル角度信号S11とS21に変換される。同期クロック生成部84は、各角度信号S1とS2から、同期クロックSQ3を生成して検波部86に出力する。検波部86では、同期クロックSQ3を参照信号として、ADC82でディジタル化された各角度信号S11とS21の同期検波を行う。同期検波された各角度信号S12とS22から、トラッキングループ部88は、ディジタル角度情報を生成する。トラッキングループ部88で生成された角度情報は、角度出力部89より出力される。
【0035】
[応用例2]
応用例1に示したA/Dコンバータ800と、図1に示した角度検出器10とで、図11に示す角度検出装置を構成することができる。検出巻線と励磁巻線を備える角度検出器10のアナログ出力信号である角度信号S1とS2を、A/Dコンバータ800に入力し、励磁信号源120から角度検出器10とA/Dコンバータ800に正弦波の励磁信号を供給することで、ディジタル角度信号を出力する角度検出装置が実現できる。
【0036】
[変形例1]
図6に示した同期化分周回路22は、励磁信号と角度信号S1とS2との位相差の関係が、角度信号S1とS2の遅れであることを前提とした場合である。しかし、角度検出器10とA/Dコンバータ800間の配線状況は色々な場合が想定され、その間のインピーダンス条件によっては、励磁信号よりも角度信号S1とS2の位相が進んでしまう場合があり得る。
【0037】
そうすると、移相器20の出力信号SQ2の位相も、進んだ位相となる。この移相器20の出力信号SQ2と励磁信号とで同期クロックSQ3を生成すると、図7(b)に示すように同期クロックSQ3の位相が180°反転してしまい、誤った位相となる。
【0038】
これを防止するためには、同期化分周回路22のDFF60が参照する矩形波励磁信号70の位相を90°進めておけばよい。その構成を図9に示す。位相を90°進めるために、コンパレータ62とDFF60の間に+90°移相器92を設ける。+90°移相器92は前述の移相器20と同じ考え方で構成することができる。つまり、コンパレータ62の出力信号の立ち上がりと立ち下りのタイミングをカウンタを用いて位相270°に相当する時間だけ遅らせればよい。
【0039】
移相器20の出力信号SQ2の位相が、上記した理由で進んだとしても、DFF60に入力する矩形波励磁信号70の位相を+90°移相器92で90°進め、矩形波励磁信号94を生成することで、図7(c)に示すように同期クロックSQ3を正常に出力することが出来る。
図9の構成は、励磁信号に対する角度信号S1とS2の位相ずれφが位相進み45°まで、及び位相遅れ45°まで、正しい位相の同期クロックSQ3を出力することが出来る。
【0040】
[変形例2]
前述の説明では、フィルタ16をHPFとして説明して来たが、この発明はHPFに限定されない。例えば、HPFの代わりにローパスフィルタ(以降、LPFと称す)で構成することも可能である。その構成を図10に示す。加算回路14の出力信号αをLPF100に入力し、LPF100の出力信号β´をコンパレータ18の反転入力端子(−)に入力する。また、加算回路14の出力信号αをコンパレータ18の非反転入力端子(+)に入力する。コンパレータ18の出力は、移相器20へ接続される。
【0041】
LPF100の遮断周波数を、角度信号S1とS2の周波数よりも十分低く設定しておくことで、LPF100の出力信号β´は、加算回路14の出力信号αの平均電圧となる。加算回路14の出力信号αを、LPF100の出力する平均電圧を基準にしてコンパレータ18で矩形波に変換することでも、実施例1で説明したコンパレータ18の出力信号SQ1と同じ出力が得られる。
【0042】
フィルタ16に、実施例1のHPFを使用した説明及び上記のLPFを使用した説明は、コンパレータ18の基準電位に加算回路14の出力信号αの平均値を使用するものである。コンパレータ18は、加算回路14の出力信号αを矩形波に変換することを目的としているので、コンパレータ18の基準電位は平均電圧でなくてもよい。
【0043】
コンパレータ18に与える基準電位としては、加算回路14の出力信号αの電圧範囲内であればよく、設定した基準電位で定まる移相量を、移相器20で移相すればよい。また更に、フィルタ16としてバンドパスフィルタ(以降、BPFと称す)を用いてもよい。例えば、加算回路14の出力信号αから、BPFで励磁信号周波数の2倍の周波数の正弦波信号を抽出し、コンパレータ18で矩形波に変換し、それを1/2分周して同期クロックSQ3を生成してもよい。
【0044】
以上のように、実施例1は種々の変形が可能である。
高価な平方根回路を使用せず、安い部品が使用できる第1、第2二乗回路、加算回路、フィルタ、コンパレータ、移相器、同期化分周回路とで、同期クロック生成回路が構成できる。つまり、本願発明によれば、コストが安く位相精度も十分に良い、同期クロック生成回路を提供することができる。
【図面の簡単な説明】
【0045】
【図1】この発明による同期クロック生成回路の実施例1の機能構成を示す図。
【図2】図1に示した機能構成の各部の波形の一例を示す、図2(a)は角度信号S1とS2を示す、図2(b)は第1,第2二乗回路11,12の出力信号波形を示す、図2(c)は加算回路14の出力信号波形を示す、図2(d)はフィルタ16の出力信号波形を示す図である。
【図3】位相ずれ量を分かり易く説明する図。
【図4】図1に示した機能構成の各部の波形の一例を示す、図4(a)はコンパレータ18の出力信号波形を示す、図4(b)は移相器20の出力信号波形を示す、図4(c)は同期化分周回路22の出力信号波形を示す図である。
【図5】移相器20の一具体例を示す図。
【図6】同期化分周回路22の一具体例を示す図。
【図7】同期化分周回路22の動作を説明するための図であり、図7(a)は励磁信号よりも角度信号S1とS2の位相が遅れた場合の同期化分周回路22の動作を示す図、図7(b)は励磁信号よりも角度信号S1とS2の位相が進んだ場合の同期化分周回路22の動作を示す図、図7(c)は矩形波励磁信号の位相を90°進めた場合の同期化分周回路22の動作を示す図である。
【図8】この発明の同期クロック生成回路をA/Dコンバータに応用した場合の機能構成を示す図。
【図9】同期化分周回路22をコンパレータと+90°移相器とDFFとで構成した例を示す図である。
【図10】フィルタ16をローパスフィルタ100で構成した例を示す図。
【図11】この発明の角度検出装置を示す図。
【図12】特許文献1に開示された従来の角度変換器の同期クロック生成回路を示す図。
【技術分野】
【0001】
この発明は、2相レゾルバのアナログ信号出力から、アナログ/ディジタル角度変換器のための同期クロックを生成する同期クロック生成回路及び、その同期クロック生成回路を備えたアナログ/ディジタル角度変換器と角度検出装置に関する。
【背景技術】
【0002】
特許文献1に開示された従来の角度変換器の同期クロック生成回路を図12に示し、その動作を説明する。
【0003】
シンクロ又はレゾルバ等の周知の巻線型角度検出器1Aから得られたアナログ信号である角度検出信号1a、1b、1c、1dは、周知のスコットトランス又はアイソレーショントランス(以降、トランスと称す)1に入力される。トランス1は、この角度検出信号1a〜1dをもとに角度信号K1=KsinθsinωtとK2=Kcosθsinωtを生成して、シンクロ/ディジタルコンバータ(S/Dコンバータ)又はレゾルバ/ディジタルコンバータ(R/Dコンバータ)からなるA/Dコンバータ2に出力する。同時に、その角度信号K1とK2は一対の二乗回路3aと3bにそれぞれ入力される。角度信号K1、K2は、二乗回路3aと3bでそれぞれ二乗処理され、二乗角度信号(K2sin2θsin2ωt)と(K2cos2θsin2ωt)とになる。二乗処理された各角度信号は、加算器4で加算されて加算角度信号4a=K2sin2ωt(sin2θ+cos2θ)となる。この加算角度信号4aは、平方根回路5に入力されて平方根処理される。(sin2θ+cos2θ)は1であるため、平方根回路5の出力には、Ksinωtが出力される。このKsinωtの信号は、レベル調整回路6で振幅が調整され、K´sinωtとしてA/Dコンバータ2のREF端子2cに入力される。A/Dコンバータ2は、K´sinωtの信号を同期クロックとして用いてディジタル角度信号2dを出力する。
【特許文献1】特許第3100211号公報(段落〔0008〕〜〔0010〕、第1図)
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
従来の同期クロックを得るための技術は、上記したように平方根回路を要するものである。平方根回路はアナログ乗算器を用い、これは比較的高価な部品であった。
【0005】
この発明は、このような点に鑑みてなされたものであり、平方根回路を用いない方法で、安価に構成することができる同期クロック生成回路を提供すること、及びその同期クロック生成回路を備えたアナログ/ディジタル角度変換器と角度検出装置を提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0006】
この発明による同期クロック生成回路は、角度検出器の出力する2相の角度信号S1とS2を、二乗回路でそれぞれ二乗処理し、二乗処理された二乗角度信号を加算回路で加算し、加算回路の出力信号の直流成分をフィルタで除去し、フィルタの出力信号を、基準電位とコンパレータで比較して矩形波に変換し、その矩形波の位相を移相器で所定量遅らせて補正し、移相器の出力信号を、同期化分周回路で角度検出器に供給する励磁信号に同期して1/2分周する。
【発明の効果】
【0007】
以上のようにこの発明によれば、従来の同期クロック生成回路が必要とした平方根回路を用いずに同期クロック生成回路を提供することができる。
つまり、二乗回路、加算回路、フィルタ、コンパレータ、移相器、同期化分周回路とで同期クロック生成回路が構成でき、これらの回路はコストが安い部品で構成できる。したがって、平方根回路を用いた従来の方法に対してコストが安い同期クロック生成回路が提供できる。
【発明を実施するための最良の形態】
【0008】
以下に、この発明の実施の形態を図面を参照して説明する。複数の図面中同一のものには同じ参照符号を付し、説明は繰り返さない。
【実施例1】
【0009】
図1にこの発明による同期クロック生成回路の実施例1の機能構成を示す。図1では、従来技術の説明で示した巻線型角度検出器1A及びトランス1を角度検出器10として表記している。また、角度信号K1をS2、角度信号K2をS1と表記している。角度検出器10は、図示しない励磁巻線に供給する励磁信号sinωtをもとに角度信号S2=Asinθsin(ωt+φ)と、S1=Acosθsin(ωt+φ)を、それぞれ出力する。角度信号S1とS2のθは、角度検出器10の検出角度であり、φは励磁信号との位相差である。この位相差φは、角度検出器10が検出巻線と励磁巻線との電磁結合を利用することに基づき発生するものであり、通常数°〜十数°の遅れである。したがって、各角度信号S1とS2は、上記した式から明らかなように、角度検出器10の検出角度によって互いに振幅が異なり、互いに同一位相で、励磁信号より位相が遅れた信号である。
【0010】
この角度信号S1とS2が、それぞれ第1二乗回路11と第2二乗回路12に入力されて二乗され、二乗角度信号S1´とS2´とになる。角度信号S1とS2が二乗されると、マイナス側の波形は、プラス側に変化する。その結果、二乗角度信号S1´とS2´の周波数は、角度信号S1、S2の周波数の2倍となる。
【0011】
二乗角度信号S1´とS2´は、加算回路14で加算され、出力信号αとなる。角度検出器10の検出角度θによっては、どちらか一方の角度信号が0になることがある。例えば、角度検出器10の検出角度θ=0°の時、sin0°=0なので、二乗角度信号S2´は0である。又、角度検出器10の検出角度θ=90°の時、cos90°=0なので、二乗角度信号S1´は0である。角度検出器10の検出角度がどのような値でも二乗角度信号S1´とS2´を加算することで、加算回路14の出力に0にならない信号を得ることができる。この結果、どのような検出角度であっても同期クロックSQ3を生成できるようになる。
【0012】
加算回路14の出力信号αは、フィルタ16に入力されて、その直流成分が除去され、出力信号βとなる。その直流成分が除去されたフィルタ16の出力信号βは、コンパレータ18において、基準電位、この実施例1では、フィルタ16及びコンパレータ18を構成するアナログ回路の接地電位と比較され、矩形波の出力信号SQ1に変換される。
【0013】
フィルタ16によって直流成分が除去された出力信号βを、コンパレータ18で接地電位を基準にして矩形波信号に変換するので、後述する位相ずれが発生する。
つまり出力信号SQ1は、角度信号S1、S2に対し位相がずれる。この位相ずれを移相器20で補正する。
【0014】
位相ずれが補正された矩形波の出力信号SQ2を1/2分周すれば、同期クロックSQ3が得られるが、単純に分周するだけでは、同期クロックSQ3の位相が励磁信号に対して180°反転してしまうことがある。そこで、それを防止する目的で、同期化分周回路22が、角度検出器10内の図示しない励磁巻線に供給される励磁信号に同期して、移相器20の出力信号を1/2分周することで同期クロックSQ3を得る。
【0015】
このように、この実施例1によれば、第1、第2二乗回路11、12と、加算回路14と、フィルタ16と、コンパレータ18と、移相器20と、同期化分周回路22と、で同期クロック生成回路が実現できる。
【0016】
図2に図1で示した機能構成の各部の波形の一例を示し、更に実施例1の動作を説明する。波形を示すに当たって、角度信号S2=Asinθsin(ωt+φ)、S1=Acosθsin(ωt+φ)において、例えば角度検出器10の検出角度θを45°、振幅Aを√2と仮定する。そのように仮定すると、各角度信号S1とS2は、図2(a)に示すように、振幅が±1Vの周期信号(sin(ωt+φ))となる。この角度信号S1とS2を、それぞれ第1二乗回路11と第2二乗回路12で二乗すると、図2(b)に示すように、マイナス側の波形がプラス側に変化する。その結果、周波数は角度信号S1、S2の2倍となる。
【0017】
それぞれの振幅1Vの第1二乗回路11と第2二乗回路12の出力信号は、加算回路14で加算されて図2(c)に示すように振幅が2VP-Pの周期信号となる。この信号の平均値は2×1/2である。
【0018】
図2(c)に示される波形を矩形波に変換する動作を、加算回路14の出力に接続されるフィルタ16とフィルタ16の出力に接続されるコンパレータ18の2つの回路で行なっている。フィルタ16は、例えば直流成分を除去するハイパスフィルタ(以降、HPFと称す)であり、その出力信号βを図2(d)に示す。HPF16の遮断周波数を、好ましくは励磁信号周波数の1/10以下に設定しておくと、加算回路14の出力信号αに歪を与えずに直流成分を除去することができる。
【0019】
HPF16において直流成分が除去された出力信号βは、コンパレータ18によって基準電位である接地電位と比較され、図4(a)に示す矩形波の出力信号SQ1に変換される。
【0020】
上記の矩形波への変換の際に位相ずれが発生するので、その位相ずれについて説明する。図3に、この位相ずれの様子をより分かり易く示す。加算回路14の出力信号がα、HPF16の出力信号がβ、コンパレータ18の出力信号がSQ1である。コンパレータ18の出力信号SQ1で示す矩形波の立ち上がりのタイミングは、加算回路14の出力信号αが基準電位0の時点から遅れており、その位相ずれ量をφ´で示している。
【0021】
直流成分が除去されたHPF16の出力信号βの平均値は0となるので、上記の位相ずれ量φ´は加算回路14の出力信号αの振幅が0から平均値に達するまでの時間t1から求められる。sinωtを二乗したsin2ωtの平均値は1/2である。sinωtが0から平均値の平方根の値に達するまでの時間t1は、
t1=(sin−11/√2)/ω
ω=2πf
で表現される。fは励磁信号の周波数であり、例えば10KHzである。励磁信号周波数が10KHzにおいては、t1=12.5μsとなる。この時間t1に対応する位相量が位相ずれφ´となる。この例では、加算回路14の出力信号αの周波数2f(周期50μs)から、位相ずれφ´=12.5/50×360より90°となる。
【0022】
コンパレータ18の出力信号SQ1には、上記したような位相ずれφ´を伴うので、その位相ずれを移相器20によって補正する。位相補正された移相器20の出力信号波形を図4(b)に示す。この図4(b)に示す信号が、同期クロックSQ3の2倍の周波数である出力信号SQ2である。
【0023】
移相器20の具体的構成の一例を図5に示す。位相ずれの補正は、コンパレータ18の出力信号SQ1の立ち上がりと立ち下りのタイミングを遅らせることで出来る。90°の遅れ位相を進ませることは出来ないので、270°(270°=360°−90°)の位相を移相器20で遅らせる。タイミングの遅延量は、クロック信号Cの周波数とレジスタ51の値で設定される。
【0024】
例えばクロック信号Cの周波数は40MHz(周期=0.025μs)である。励磁信号の周波数が10KHzの場合に、加算回路14の出力信号αの一周期は50μsとなるので、その一周期は2000カウントということになる。したがって、位相を270°遅らせるには、レジスタ51に1500(1500=270/360×2000)をセットすればよい。
【0025】
RSラッチ59のQ端子より移相器20の出力信号SQ2が出力される。位相ずれを伴うコンパレータ18の出力信号SQ1が、カウンタ52のカウント動作を許可するイネーブル端子E52に接続される。コンパレータ18の出力信号SQ1がインバータ54で反転されてカウンタ50のカウント動作を許可するイネーブル端子E50に接続される。クロック信号Cがカウンタ52とカウンタ50のクロック信号端子C52とC50に接続される。
【0026】
カウンタ52とカウンタ50のそれぞれの出力端子Q52とQ50とが、それぞれ比較器56と58に接続される。レジスタ51の出力が比較器56と58に接続される。比較器56と58の出力端子が各カウンタ52と50のクリア端子R52とR50とにそれぞれ接続されている。更に比較器56の出力端子は、RSラッチ59のセット端子に接続され、また、比較器58の出力端子は、RSラッチ59のリセット端子に接続される。
【0027】
カウンタ52は、例えば11ビットバイナリーカウンタであり、コンパレータ18の出力信号SQ1が“0”から“1”に立ち上がるとカウンタ52のカウント動作が許可され、クロック信号Cのパルス数のカウントを開始する。比較器56は、カウンタ52の出力端子Q52のカウント値と、レジスタ51の値とを比較する。クロック信号Cを1500パルス数えた時に比較器56の出力が“1”となって、RSラッチ59のQ端子を“1”にセットする。
【0028】
カウンタ52のクリア端子R52へ“1”が入力されると、カウンタ52はクロック信号Cの立ち下りで、カウント動作を停止するとともに出力端子Q52を“0”にする。次に、コンパレータ18の出力信号SQ1が“1”から“0”に立ち下がるとインバータ54で反転されて、カウンタ50のカウント動作が許可され、クロック信号Cのパルス数のカウントを開始する。
【0029】
比較器58は、カウンタ50の出力端子Q50のカウント値と、レジスタ51の値とを比較する。クロック信号Cを1500パルス数えた時に比較器58の出力が“1”となって、RSラッチ59のQ端子を“0”にリセットする。
【0030】
カウンタ50のクリア端子R50へ“1”が入力されると、カウンタ50はクロック信号Cの立ち下りで、カウント動作を停止するとともに出力端子Q50を“0”にする。このようにして、コンパレータ18の出力信号SQ1の立ち上がりと立ち下がりのタイミングを遅らせることが出来る。
【0031】
移相器20の出力信号SQ2を1/2分周すれば、図4(c)に示すような同期クロックSQ3を得ることが出来る。角度検出器に供給する励磁信号との位相関係を考慮することなく、移相器20の出力信号SQ2を単純に1/2分周すると、分周器の初期状態や分周開始のタイミングによっては、同期クロックSQ3の位相が反転してしまう。したがって、角度検出器10に供給する励磁信号に同期して分周する同期化分周を行なう。
【0032】
同期化分周回路22の一例を図6に示す。同期化分周回路22は、コンパレータ62とDFF(Dtype Flip Flop)60で構成することができる。コンパレータ62に励磁信号が入力され、DFF60のC端子に移相器20の出力信号であるSQ2が入力され、DFF60のQ端子より同期クロックSQ3が出力される。
【0033】
同期化分周回路22の動作を図7(a)を用いて説明する。矩形波励磁信号70は、角度検出器10に供給される正弦波の励磁信号がコンパレータ62で矩形波に変換された信号である。なお、コンパレータ62の基準電位は接地電位である。コンパレータ62で矩形波に変換された矩形波励磁信号70を、移相器20からの出力信号SQ2の立ち上がりのタイミングで取り込む(ラッチ)ことで同期化と1/2分周とが同時になされる。その結果、移相器20の出力信号SQ2の立ち上がりで反転する1/2分周された同期クロックSQ3が、DFF60のQ端子に生成される。
【0034】
[応用例1]
図1に示した同期クロック生成回路は、例えば、角度値を出力するアナログ/ディジタル角度変換器(以降、A/Dコンバータと称す)に応用することができる。上記の同期クロック生成回路を用いてA/Dコンバータ800を構成した例を図8に示す。図示しない角度検出器からの角度信号S1とS2は、アナログ/ディジタル変換器(以降、ADCと称す)82と、先に説明したこの発明による同期クロック生成部84に、それぞれ入力される。角度信号S1とS2は、ADC82でそれぞれディジタル角度信号S11とS21に変換される。同期クロック生成部84は、各角度信号S1とS2から、同期クロックSQ3を生成して検波部86に出力する。検波部86では、同期クロックSQ3を参照信号として、ADC82でディジタル化された各角度信号S11とS21の同期検波を行う。同期検波された各角度信号S12とS22から、トラッキングループ部88は、ディジタル角度情報を生成する。トラッキングループ部88で生成された角度情報は、角度出力部89より出力される。
【0035】
[応用例2]
応用例1に示したA/Dコンバータ800と、図1に示した角度検出器10とで、図11に示す角度検出装置を構成することができる。検出巻線と励磁巻線を備える角度検出器10のアナログ出力信号である角度信号S1とS2を、A/Dコンバータ800に入力し、励磁信号源120から角度検出器10とA/Dコンバータ800に正弦波の励磁信号を供給することで、ディジタル角度信号を出力する角度検出装置が実現できる。
【0036】
[変形例1]
図6に示した同期化分周回路22は、励磁信号と角度信号S1とS2との位相差の関係が、角度信号S1とS2の遅れであることを前提とした場合である。しかし、角度検出器10とA/Dコンバータ800間の配線状況は色々な場合が想定され、その間のインピーダンス条件によっては、励磁信号よりも角度信号S1とS2の位相が進んでしまう場合があり得る。
【0037】
そうすると、移相器20の出力信号SQ2の位相も、進んだ位相となる。この移相器20の出力信号SQ2と励磁信号とで同期クロックSQ3を生成すると、図7(b)に示すように同期クロックSQ3の位相が180°反転してしまい、誤った位相となる。
【0038】
これを防止するためには、同期化分周回路22のDFF60が参照する矩形波励磁信号70の位相を90°進めておけばよい。その構成を図9に示す。位相を90°進めるために、コンパレータ62とDFF60の間に+90°移相器92を設ける。+90°移相器92は前述の移相器20と同じ考え方で構成することができる。つまり、コンパレータ62の出力信号の立ち上がりと立ち下りのタイミングをカウンタを用いて位相270°に相当する時間だけ遅らせればよい。
【0039】
移相器20の出力信号SQ2の位相が、上記した理由で進んだとしても、DFF60に入力する矩形波励磁信号70の位相を+90°移相器92で90°進め、矩形波励磁信号94を生成することで、図7(c)に示すように同期クロックSQ3を正常に出力することが出来る。
図9の構成は、励磁信号に対する角度信号S1とS2の位相ずれφが位相進み45°まで、及び位相遅れ45°まで、正しい位相の同期クロックSQ3を出力することが出来る。
【0040】
[変形例2]
前述の説明では、フィルタ16をHPFとして説明して来たが、この発明はHPFに限定されない。例えば、HPFの代わりにローパスフィルタ(以降、LPFと称す)で構成することも可能である。その構成を図10に示す。加算回路14の出力信号αをLPF100に入力し、LPF100の出力信号β´をコンパレータ18の反転入力端子(−)に入力する。また、加算回路14の出力信号αをコンパレータ18の非反転入力端子(+)に入力する。コンパレータ18の出力は、移相器20へ接続される。
【0041】
LPF100の遮断周波数を、角度信号S1とS2の周波数よりも十分低く設定しておくことで、LPF100の出力信号β´は、加算回路14の出力信号αの平均電圧となる。加算回路14の出力信号αを、LPF100の出力する平均電圧を基準にしてコンパレータ18で矩形波に変換することでも、実施例1で説明したコンパレータ18の出力信号SQ1と同じ出力が得られる。
【0042】
フィルタ16に、実施例1のHPFを使用した説明及び上記のLPFを使用した説明は、コンパレータ18の基準電位に加算回路14の出力信号αの平均値を使用するものである。コンパレータ18は、加算回路14の出力信号αを矩形波に変換することを目的としているので、コンパレータ18の基準電位は平均電圧でなくてもよい。
【0043】
コンパレータ18に与える基準電位としては、加算回路14の出力信号αの電圧範囲内であればよく、設定した基準電位で定まる移相量を、移相器20で移相すればよい。また更に、フィルタ16としてバンドパスフィルタ(以降、BPFと称す)を用いてもよい。例えば、加算回路14の出力信号αから、BPFで励磁信号周波数の2倍の周波数の正弦波信号を抽出し、コンパレータ18で矩形波に変換し、それを1/2分周して同期クロックSQ3を生成してもよい。
【0044】
以上のように、実施例1は種々の変形が可能である。
高価な平方根回路を使用せず、安い部品が使用できる第1、第2二乗回路、加算回路、フィルタ、コンパレータ、移相器、同期化分周回路とで、同期クロック生成回路が構成できる。つまり、本願発明によれば、コストが安く位相精度も十分に良い、同期クロック生成回路を提供することができる。
【図面の簡単な説明】
【0045】
【図1】この発明による同期クロック生成回路の実施例1の機能構成を示す図。
【図2】図1に示した機能構成の各部の波形の一例を示す、図2(a)は角度信号S1とS2を示す、図2(b)は第1,第2二乗回路11,12の出力信号波形を示す、図2(c)は加算回路14の出力信号波形を示す、図2(d)はフィルタ16の出力信号波形を示す図である。
【図3】位相ずれ量を分かり易く説明する図。
【図4】図1に示した機能構成の各部の波形の一例を示す、図4(a)はコンパレータ18の出力信号波形を示す、図4(b)は移相器20の出力信号波形を示す、図4(c)は同期化分周回路22の出力信号波形を示す図である。
【図5】移相器20の一具体例を示す図。
【図6】同期化分周回路22の一具体例を示す図。
【図7】同期化分周回路22の動作を説明するための図であり、図7(a)は励磁信号よりも角度信号S1とS2の位相が遅れた場合の同期化分周回路22の動作を示す図、図7(b)は励磁信号よりも角度信号S1とS2の位相が進んだ場合の同期化分周回路22の動作を示す図、図7(c)は矩形波励磁信号の位相を90°進めた場合の同期化分周回路22の動作を示す図である。
【図8】この発明の同期クロック生成回路をA/Dコンバータに応用した場合の機能構成を示す図。
【図9】同期化分周回路22をコンパレータと+90°移相器とDFFとで構成した例を示す図である。
【図10】フィルタ16をローパスフィルタ100で構成した例を示す図。
【図11】この発明の角度検出装置を示す図。
【図12】特許文献1に開示された従来の角度変換器の同期クロック生成回路を示す図。
【特許請求の範囲】
【請求項1】
2相レゾルバ角度信号S1とS2を入力し、
上記角度信号S1を二乗する第1二乗回路と、
上記角度信号S2を二乗する第2二乗回路と、
上記第1、第2二乗回路の出力信号を加算する加算回路と、
上記加算回路の出力信号の直流成分を除去するフィルタと、
上記フィルタの出力信号と基準電位とを比較するコンパレータと、
上記コンパレータの出力信号の位相を所定量遅らせる移相器と、
上記2相レゾルバに供給する励磁信号を入力し、上記励磁信号に同期して上記移相器の出力信号を1/2分周する同期化分周回路と、
を具備することを特徴とする同期クロック生成回路。
【請求項2】
請求項1に記載の同期クロック生成回路において、
上記同期化分周回路は、上記励磁信号と同相の信号に同期して、上記移相器の出力信号を1/2分周する同期化分周回路
であることを特徴とする同期クロック生成回路。
【請求項3】
請求項1に記載の同期クロック生成回路において、
上記同期化分周回路は、上記励磁信号に対して位相を90°進めた信号に同期して、上記移相器の出力信号を1/2分周する同期化分周回路
であることを特徴とする同期クロック生成回路。
【請求項4】
請求項1乃至3の何れかに記載の同期クロック生成回路を備えることを特徴とするアナログ/ディジタル角度変換器。
【請求項5】
検出巻線と励磁巻線を備えて、検出角度をアナログの2相レゾルバ角度信号で出力する角度検出器と、
上記アナログの2相レゾルバ角度信号をディジタル角度に変換して、ディジタル角度情報を出力する請求項4に記載のアナログ/ディジタル角度変換器と、
を具備することを特徴とする角度検出装置。
【請求項1】
2相レゾルバ角度信号S1とS2を入力し、
上記角度信号S1を二乗する第1二乗回路と、
上記角度信号S2を二乗する第2二乗回路と、
上記第1、第2二乗回路の出力信号を加算する加算回路と、
上記加算回路の出力信号の直流成分を除去するフィルタと、
上記フィルタの出力信号と基準電位とを比較するコンパレータと、
上記コンパレータの出力信号の位相を所定量遅らせる移相器と、
上記2相レゾルバに供給する励磁信号を入力し、上記励磁信号に同期して上記移相器の出力信号を1/2分周する同期化分周回路と、
を具備することを特徴とする同期クロック生成回路。
【請求項2】
請求項1に記載の同期クロック生成回路において、
上記同期化分周回路は、上記励磁信号と同相の信号に同期して、上記移相器の出力信号を1/2分周する同期化分周回路
であることを特徴とする同期クロック生成回路。
【請求項3】
請求項1に記載の同期クロック生成回路において、
上記同期化分周回路は、上記励磁信号に対して位相を90°進めた信号に同期して、上記移相器の出力信号を1/2分周する同期化分周回路
であることを特徴とする同期クロック生成回路。
【請求項4】
請求項1乃至3の何れかに記載の同期クロック生成回路を備えることを特徴とするアナログ/ディジタル角度変換器。
【請求項5】
検出巻線と励磁巻線を備えて、検出角度をアナログの2相レゾルバ角度信号で出力する角度検出器と、
上記アナログの2相レゾルバ角度信号をディジタル角度に変換して、ディジタル角度情報を出力する請求項4に記載のアナログ/ディジタル角度変換器と、
を具備することを特徴とする角度検出装置。
【図1】
【図2】
【図3】
【図4】
【図5】
【図6】
【図7】
【図8】
【図9】
【図10】
【図11】
【図12】
【図2】
【図3】
【図4】
【図5】
【図6】
【図7】
【図8】
【図9】
【図10】
【図11】
【図12】
【公開番号】特開2009−171051(P2009−171051A)
【公開日】平成21年7月30日(2009.7.30)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2008−4830(P2008−4830)
【出願日】平成20年1月11日(2008.1.11)
【出願人】(000231073)日本航空電子工業株式会社 (1,081)
【Fターム(参考)】
【公開日】平成21年7月30日(2009.7.30)
【国際特許分類】
【出願日】平成20年1月11日(2008.1.11)
【出願人】(000231073)日本航空電子工業株式会社 (1,081)
【Fターム(参考)】
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