説明

含フッ素エラストマー組成物

【課題】耐寒性にすぐれかつ耐燃料油油透過性にすぐれているばかりではなく、耐圧縮永久歪特性にもすぐれた架橋物を与え得る含フッ素エラストマー組成物を提供する。
【解決手段】その共重合組成が、テトラフルオロエチレンを含まず、(a)フッ化ビニリデン40〜65モル%、(b)クロロトリフルオロエチレン20〜40モル%、(c)パーフルオロ(メチルビニルエーテル)7〜20モル%、(d)一般式 CF2=CFO〔CF2CF(CF3)O〕nCF3(n:2〜6の整数)で表わされるパーフルオロポリエーテル3〜15モル%および(e)一般式 RfX(Rf:炭素数2〜8の不飽和フルオロ炭化水素基、基中に1個以上のエーテル結合を有していてもよく、XはBrまたはI)で表わされる含臭素または含ヨウ素不飽和化合物0.1〜2モル%である含フッ素エラストマー100重量部当リ、0.1〜10重量部の有機過酸化物、0.1〜10重量部の多官能性不飽和化合物および2重量部以上の受酸剤を添加してなる含フッ素エラストマー組成物。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、含フッ素エラストマー組成物に関する。更に詳しくは、耐圧縮永久歪特性、低温特性および耐燃料油透過性にすぐれた架橋物を与え得る含フッ素エラストマー組成物に関する。
【背景技術】
【0002】
フッ化ビニリデン-テトラフルオロエチレン-パーフルオロ(メチルビニルエーテル)を主構成単位とする含フッ素エラストマーは、含フッ素エラストマー特有のすぐれた耐熱性や耐溶剤性を有するばかりではなく、良好な低温特性をも有することから、自動車産業を始め種々の技術分野で用いられている。
【0003】
近年においては、耐寒性のさらなる向上のために、上記パーフルオロ(メチルビニルエーテル)に加えて、側鎖に複数のエーテル結合を有するモノマーをさらに共重合させた含フッ素エラストマーが提案されている(特許文献1、2参照)。
【0004】
本出願人の出願に係る特許文献1には、その共重合組成が
(a)フッ化ビニリデン 50〜85モル%
(b)テトラフルオロエチレン 0〜25モル%
(c)パーフルオロ(メチルビニルエーテル) 7〜20モル%
(d)CF2=CFO〔CF2CF(CF3)O〕nCF3 3〜15モル%
(ただし、nは2〜6の整数である)
(e)RfX(Rfは炭素数2〜8の不飽和フルオロ炭化水素基であり、 0.1〜2モル%
基中に1個以上のエーテル結合を有していてもよく、
Xは臭素またはヨウ素である)
であるパーオキサイド架橋性含フッ素エラストマー100重量部当り、有機過酸化物0.1〜10重量部、多官能性不飽和化合物0.1〜10重量部および受酸剤3〜20重量部を添加してなる含フッ素エラストマー組成物が記載されている。
【0005】
ここで用いられる含フッ素エラストマー中のテトラフルオロエチレン含量は、0〜25モル%、好ましくは20モル%以下とされ、テトラフルオロエチレンを共重合させることにより、耐溶剤性が著しく改善されるとされている。すなわち、含フッ素エラストマー中のフッ素含量を上げるためにテトラフルオロエチレンの共重合が行われている。それにより、耐燃料油透過性は改善されるものの、好ましくは耐寒性や耐圧縮永久歪特性のなお一層の改善が求められる。
【0006】
また、近年の環境規制に伴い、SHED (Sealed Housing for Evaporative Determination)規制が強化されており、耐寒性にすぐれかつ耐燃料油透過性にすぐれた架橋物を与える含フッ素エラストマー組成物の開発が望まれている。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0007】
【特許文献1】特開2004−346087号公報
【特許文献2】特開2006−045566号公報
【特許文献3】特公昭54−1585号公報
【特許文献4】特公昭58−4728号公報
【特許文献5】特公平5−13961号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0008】
本発明の目的は、耐寒性にすぐれかつ耐燃料油油透過性にすぐれているばかりではなく、耐圧縮永久歪特性にもすぐれた架橋物を与え得る含フッ素エラストマー組成物を提供することにある。
【課題を解決するための手段】
【0009】
かかる本発明の目的は、その共重合組成が、テトラフルオロエチレンを含まず、
(a)フッ化ビニリデン 40〜65モル%
(b)クロロトリフルオロエチレン 20〜40モル%
(c)パーフルオロ(メチルビニルエーテル) 7〜20モル%
(d)一般式 CF2=CFO〔CF2CF(CF3)O〕nCF3 (ここで、 3〜15モル%
nは2〜6の整数である)で表わされるパーフルオロポリ
エーテル
(e)一般式 RfX(ここで、Rfは炭素数2〜8の不飽和フルオロ 0.1〜2モル%
炭化水素基であり、基中に1個以上のエーテル結合を有して
いてもよく、Xは臭素またはヨウ素である)で表わされる含臭素
または含ヨウ素不飽和化合物
である含フッ素エラストマー100重量部当リ、0.1〜10重量部の有機過酸化物、0.1〜10重量部の多官能性不飽和化合物および2重量部以上の受酸剤を添加してなる含フッ素エラストマー組成物によって達成される。
【発明の効果】
【0010】
本発明に係る含フッ素エラストマー組成物においては、前記特許文献2記載の含フッ素エラストマーにおいて、任意共重合成分とされしかもその実施例でも用いられているテトラフルオロエチレンの代りに、その含フッ素エラストマーに求められる所望の性質を損なわない範囲内においてさらに共重合させてもよいとされているクロロトリフルオロエチレンを25〜35モル%共重合させた含フッ素エラストマーを用いることにより、耐寒性にすぐれかつ耐燃料油透過性にすぐれているばかりではなく、耐圧縮永久歪特性にもすぐれた架橋物を与えることができる。
【0011】
かかる特性を有する本発明の含フッ素エラストマー組成物を架橋成形して得られたものは、フッ素ゴム系シール材、特に自動車燃料用シール材として、Oリング、オイルシール、耐熱ホース等の用途に好適に用いることができる。
【発明を実施するための形態】
【0012】
含フッ素エラストマ−の共重合組成比は、(a)フッ化ビニリデンが40〜65モル%、好ましくは40〜55モル%、(b)クロロトリフルオロエチレンが20〜40モル%、好ましくは25〜35モル%、(c)パーフルオロ(メチルビニルエーテル)が7〜20モル%、好ましくは7〜15モル%、(d)前記一般式で表わされるパーフルオロビニルエーテルが3〜15モル%、好ましくは3〜10モル%、(e)前記一般式で表わされる含臭素またはヨウ素不飽和化合物が0.1〜2モル%、好ましくは0.3〜1.5モル%であり、これらの組成比は所望の耐寒性、耐燃料油透過性および耐圧縮永久歪特性を有する架橋物を与え得る範囲として選択されたものである。
【0013】
(a)成分のフッ化ビニリデンには、下記(b)〜(e)成分がぞれぞれ共重合される。
(b)成分のクロロトリフルオロエチレンを共重合させた場合には、耐寒性および耐圧縮永久歪特性を著しく改善することができる。ただし、(b)成分の組成比率が大きすぎると破断時伸びが損われるので、その割合は20〜40モル%、好ましくは25〜35モル%とされる。また、(b)成分の共重合は、燃料油C等の燃料に対する耐燃料油透過性を著しく改善させる。
(c)成分のパーフルオロ(メチルビニルエーテル)は、得られる共重合体に柔軟性を付与し、低温特性、特にTR試験におけるTR70値を改善するための必須成分である。
(d)成分のパーフルオロビニルエーテルは、その一般式で表わされる化合物の単一成分を用いてもよいし、あるいは種々のn値を有する2種以上の混合物を用いてもよい。前記一般式で表わされるパーフルオロビニルエーテルは、フッ化セシウム触媒、ジグライム溶剤等の存在下にCF3OCF(CF3)COFとヘキサフルオロプロペンオキシドとを反応させ、次いで無水炭酸カリウムとの反応および熱分解反応を行うことによって得られ、生成物はn=2〜6の混合物であるが、それを分留することによって種々のn値を有するパーフルオロビニルエーテルを分離し、それを単独で用いることができる。あるいは、それらを分離することなく、混合物としても用いることができる。
(e)成分の含臭素またはヨウ素化合物としては、例えばCF2=CFOCF2CF2Br、CF2=CFOCF2CF(CF3)OCF2CF2Br、CF2=CFBr、CF2=CHBr、CF2=CFI、CF2=CHI等のRf基が炭素数2〜8の不飽和フルオロ炭化水素基であり、基中に1個以上のエーテル結合を有していてもよいものも用いられ、好ましくはCF2=CFOCF2CF2Br、CF2=CFI、CF2=CHIが用いられる(特許文献3参照)。
【0014】
また、本発明組成物で用いられる含フッ素エラストマ−共重合体の分子量を調節する目的であるいは成形加工性、特に硬化段階での発泡を抑制する目的で、一般式R(Br)n(I)mで表わされる含臭素および/またはヨウ素化合物の存在下で共重合反応を行うことは非常に有効である(特許文献3参照)。
【0015】
かかる化合物としては、例えばICF2CF2CF2CF2I、ICF2CF2CF2CF2Br、ICF2CF2Br等が用いられ、特にICF2CF2CF2CF2Iは硬化特性等の面からみて好適である。他の例は、特許文献4に記載されている。
【0016】
これらの化合物は連鎖移動剤として作用し、生成する共重合体の分子量を調節する働きをする。また、連鎖移動反応の結果として、分子末端に臭素および/またはヨウ素原子が結合した共重合体が得られ、これらの部位は加硫成形段階において硬化部位として働く。ただし、重合工程でのそれの使用割合が多いと、最終成形品の機械的強度を低下させるので、それの使用割合は全単量体重量に対して約1重量%以下、好ましくは約0.5〜0.01重量%とされる。
【0017】
さらに、加硫成形品の耐圧縮永久歪特性を改善するために、下記の如きパーフルオロジビニルエーテルを共重合させてもよい。その使用割合は、成形品の機械的物性の点から、全単量体重量に対して約1重量%以下、好ましくは約0.5〜0.1重量%とされる。
CF2=CFOCF2CF(CF3)OCF2CF2OCF=CF2
【0018】
また、含フッ素エラストマ−に求められる所望の性質を損わない範囲内において、他の単量体、例えばトリフルオロエチレン、ヘキサフルオロプロペン等の含フッ素単量体をさらに共重合させてもよい。ただし、テトラフルオロエチレンは除外される。
【0019】
かかる含フッ素エラストマ−は、水性乳化重合法または水性けん濁重合法によって製造することができる。水性乳化重合法では、水溶性過酸化物を単独であるいはそれと水溶性還元性物質とを組合せたレドックス系のいずれをも反応開始剤系として用いることができる。水溶性過酸化物としては例えば過硫酸アンモニウム、過硫酸カリウム、過硫酸ナトリウム等が、また水溶性還元性物質としては例えば亜硫酸ナトリウム、亜硫酸水素ナトリウム等が用いられる。この際、水性乳化液の安定化剤として、pH調節剤(緩衡剤)、例えばリン酸一水素ナトリウム、リン酸二水素ナトリウム、リン酸一水素カリウム、リン酸二水素カリウム等も用いられる。
【0020】
乳化重合法に用いられる乳化剤としては、一般にフッ素化カルボン酸塩が用いられ、好ましくは
CF3CF2CF2O〔CF(CF3)CF2O〕nCF(CF3)COONH4 (n:1または2)
が用いられる。これらの乳化剤は、約1〜30重量%、好ましくは約5〜20重量%の水溶液として用いられる。乳化剤量がこれよりも少ないと、モノマーおよび生成共重合体を水性媒体中に均一に分散させることができず、多すぎると経済的に不利となる(特許文献5参照)。
【0021】
共重合反応は、約20〜80℃、好ましくは、約25〜60℃の温度で行われる。重合温度が高すぎると、成形加工時に発泡などの問題が発生し、また加硫成形品の耐圧縮永久歪特性も悪化する。また、重合圧力は、一般に約5MPa以下で行われる。
【0022】
この含フッ素エラストマーは、従来公知の種々の加硫方法、例えばパーオキサイド架橋法、ポリアミン加硫法、ポリオール加硫法あるいは放射線、電子線などの照射法によって硬化させることができるが、有機過酸化物を用いるパーオキサイド架橋法は、機械的強度にすぐれ、また架橋点の構造が安定した炭素-炭素結合を形成するため耐薬品性、耐摩耗性、耐溶剤性等にすぐれた加硫物を与えるので、特に好ましく用いられる。
【0023】
パーオキサイド架橋法に用いられる有機過酸化物としては、例えば2,5-ジメチル-2,5-ビス(第3ブチルパーオキシ)ヘキサン、2,5-ジメチル-2,5-ビス(第3ブチルパーオキシ)ヘキシン-3、ベンゾイルパーオキサイド、ビス(2,4-ジクロロベンゾイル)パーオキサイド、ジクミルパーオキサイド、ジ第3ブチルパーオキサイド、第3ブチルクミルパーオキサイド、第3ブチルパーオキシベンゼン、1,1-ビス(第3ブチルパーオキシ)-3,5,5-トリメチルシクロヘキサン、2,5-ジメチルヘキサン-2,5-ジヒドロキシパーオキサイド、α,α′-ビス(第3ブチルパーオキシ)-p-ジイソプロピルベンゼン、2,5-ジメチル-2,5-ジ(ベンゾイルパーオキシ)ヘキサン、第3ブチルパーオキシイソプロピルカーボネート等が挙げられる。
【0024】
これらの有機過酸化物が用いられるパーオキサイド架橋法では、共架橋剤として多官能性不飽和化合物、例えばトリ(メタ)アリルイソシアヌレート、トリ(メタ)アリルシアヌレート、トリアリルトリメリテート、N,N′-m-フェニレンビスマレイミド、ジアリルフタレート、トリス(ジアリルアミン)-s-トリアジン、亜リン酸トリアリル、1,2-ポリブタジエン、エチレングリコールジアクリレート、ジエチレングリコールジアクリレート等を併用することが好ましい。これらの共架橋剤を併用することにより、よりすぐれた加硫特性、機械的強度、耐圧縮永久歪特性など有する架橋物を得ることができる。
【0025】
さらに、受酸剤としてハイドロタルサイト化合物や2価金属の酸化物または水酸化物、例えばCa、Mg、Pb、Znなどの酸化物または水酸化物を用いることもできる。
【0026】
パーオキサイド架橋系に配合される以上の各成分は、含フッ素エラストマー100重量部当り、有機過酸化物が約0.1〜10重量部、好ましくは約0.5〜5重量部の割合で、また必要に応じて共架橋剤が約0.1〜10重量部、好ましくは約0.5〜5重量部の割合で、さらに受酸剤は約2重量部以上、好ましくは約3〜20重量部の割合でそれぞれ用いられる。受酸剤の使用割合がこれよりも少ないと、金属に対する耐腐食性が損われるようになる。
【0027】
含フッ素エラストマーに、有機過酸化物、多官能性不飽和化合物および受酸剤を添加して形成した組成物は、有機過酸化物架橋後に以下に示される低温特性を発現する架橋物を与える。
-43℃≦TR10<-30℃<TR70≦-20℃
ここでTR10、TR70値は、TRテストでサンプルを50%伸長し、ガラス転移温度Tg以下としてガラス化させた後、徐々に温度を上げていくと歪みが緩和し、初期伸長に対して10%または70%回復した温度を示している。
【0028】
また、前記TR10、TR70についての条件を満足させるためには、前記(c)成分のパーフルオロ(メチルビニルエーテル)と(d)成分のパーフルオロビニルエーテルとの組成合計量が10モル%以上、好ましくは15モル%以上とすることが望ましい。これらの各成分組成合計量が10モル%以下では、得られる共重合体が半樹脂状になったり、低温特性、特にTR70値が悪化するようになる。
【0029】
架橋に際しては、上記各成分に加えて、従来公知の充填剤、補強剤、可塑剤、滑剤、加工助剤、顔料などを適宜配合することもできる。充填剤または補強剤としてカーボンブラックを用いる場合、一般には含フッ素エラストマー100重量部当り約10〜50重量部程度の割合で用いられる。
【0030】
以上の各成分は、ロール混合、ニーダ混合、バンバリー混合、溶液混合など一般に用いられる混合法によって混練され、混練された混練物は、一般に約100〜250℃で約1〜60分間程度行われるプレス加硫によって加硫され、さらに約150〜250℃で約30時間以内のオーブン加硫(二次加硫)が行われる。
【実施例】
【0031】
次に、実施例について本発明を説明する。
【0032】
実施例1
容量500mlのステンレス鋼製オートクレーブ内を窒素ガスで置換し、脱気後下記反応媒体を仕込んだ。
界面活性剤CF3CF2CF2OCF(CF3)CF2OCF(CF3)COONH4 30g
Na2HPO4・12H20 0.5g
イオン交換水 250ml
【0033】
オートクレーブ内を再び窒素ガスで置換し、脱気後以下の反応原料を仕込んだ。
フッ化ビニリデン〔VdF〕 25g(40.7%)
クロロトリフルオロエチレン〔CTFE〕 35g(31.4%)
パーフルオロ(メチルビニルエーテル)〔FMVE〕 34g(21.4%)
CF2=CFO〔CF2CF(CF3)O〕3CF3 〔MPr3VE〕 37g(5.8%)
CF2=CFOCF2CF2Br 〔FBrVE〕 2g(0.8%)
ICF2CF2CF2CF2I 〔DIOFB〕 0.5g
なお、カッコ内の百分率はモル%である。
【0034】
次いで、オートクレーブ内部の温度を50℃とし、そこに亜硫酸水素ナトリウム0.01gおよび過硫酸アンモニウム0.05gをそれぞれ0.3重量%水溶液として加え、重合反応を開始させた。20時間反応を行った後冷却し、残ガスを排出して乳化液を取出し、これに5重量%塩化カルシウム水溶液を加えて重合物を凝析させ、水洗、乾燥して、下記組成(19F-NMRによる)の含フッ素エラストマー状共重合体(含フッ素エラストマー)を127g得た。
VdF 43モル%
CTFE 34モル%
FMVE 16.8モル%
MPr3VE 5.4モル%
FBrVE 0.8モル%
【0035】
この含フッ素エラストマー100部(重量、以下同じ)に、
MTカーボンブラック(キャンキャブ製品サーマックスN990) 30部
トリアリルイソシアヌレート(日本化成製品TAIC M60) 6部
有機過酸化物(日本油脂製品パーヘキサ25B-40) 1.4部
ZnO 4部
を加え、2本ロールミルで混和し、得られた硬化性組成物を180℃で10分間圧縮成形して厚さ2mmのシートおよびOリング(P24)を得、さらに200℃で10時間のオーブン加硫(二次加硫)を行った。
【0036】
これの架橋物について、次の各試験を行った。
常態物性:JIS K6250,6253に準拠
圧縮永久歪:ASTM D395 Method Bに準拠して、P24 Oリングについて175℃、70時間の
値を測定
低温特性:ASTM D1329に準拠して、TR10,TR70値を測定
燃料透過性試験:上部が開口したSUS304製有底円筒状試験容器(高さ50mm、直径50mm
、肉厚5mm)の内部に燃料油Cを約30ml入れ、その開口部を封止する
ように円板状ゴム試験片(直径50mm、厚さ2mm)をかぶせ、そのゴム
試験片周囲を断面逆L字型の円筒状枠体で固定した測定用治具を用
意し、その治具を40℃の恒温槽に入れ、24時間毎に治具全体の重量
を測定し、その重量変化から燃料透過係数を求めた
【0037】
実施例2〜4、比較例1〜6、比較例7〜9
実施例1において、反応原料量が種々変更された。なお、FBrVE量およびDIOFB量は、変更されなかった。得られた含フッ素エラストマーの組成(19F-NMRによる)および生成量、ならびにそれを用いた含フッ素エラストマー組成物の架橋物についての測定結果は、次の表1(実施例)、表2(比較例1〜6)および表3(比較例7〜9)に示される。
表1
実施例

〔含フッ素エラストマー〕
反応原料
VdF (g) 25 29 28 32
TFE (g) − − − −
CTFE (g) 35 35 31 29
FMVE (g) 34 32 32 28
MPr3VE (g) 37 40 40 40
共重合体組成
VdF (モル%) 43.0 48.0 48.0 52.5
TFE (モル%) − − − −
CTFE (モル%) 34.0 30.0 28.0 25.0
FMVE (モル%) 16.8 15.0 16.5 15.5
MPr3VE (モル%) 5.4 6.2 6.6 6.2
FBrVE (モル%) 0.8 0.8 0.9 0.8
共重合体量
生成量 (g) 127 131 128 127

〔測定項目〕
常態物性
硬さ (Duro A) 72 69 67 67
100%モジュラス (MPa) 7.4 7.2 6.9 6.7
破断時強さ (MPa) 13.2 12.2 12.1 13.2
破断時伸び (%) 190 200 190 200
圧縮永久歪
175℃、70時間 (%) 24 25 25 26
耐寒性
TR10 (℃) -30.4 -30.5 -30.3 -31.2
TR70 (℃) -20.4 -22.2 -21.4 -21.5
燃料透過性
Fuel C (mg・mm/cm2・24hrs) 6.2 6.9 7.4 7.9

表2
比較例

〔含フッ素エラストマー〕
反応原料
VdF (g) 25 29 28 32 42 60
TFE (g) 30 30 27 25 − 12
CTFE (g) − − − − − −
FMVE (g) 34 32 32 28 25 44
MPr3VE (g) 37 40 40 40 42 −
共重合体組成
VdF (モル%) 41.0 47.0 47.0 51.0 82.0 73.0
TFE (モル%) 33.0 31.0 29.0 26.0 − 10.0
CTFE (モル%) − − − − − −
FMVE (モル%) 19.5 15.0 17.0 16.0 11.0 16.0
MPr3VE (モル%) 5.7 6.2 6.2 6.2 6.2 −
FBrVE (モル%) 0.8 0.8 0.8 0.8 0.8 1.0
共重合体量
生成量 (g) 122 127 125 123 108 115

〔測定項目〕
常態物性
硬さ (Duro A) 83 81 79 79 66 70
100%モジュラス (MPa) 6.9 6.5 6.4 6.2 6.5 3.9
破断時強さ (MPa) 11.2 10.5 10.2 10.2 11.6 19.6
破断時伸び (%) 180 190 190 200 180 290
圧縮永久歪
175℃、70時間 (%) 34 33 31 31 23 26
耐寒性
TR10 (℃) -30.2 -30.6 -30.7 -31.0 -36.6 -30.6
TR70 (℃) -10.4 -12.3 -14.3 -16.8 -24.6 -22.7
燃料透過性
Fuel C (mg・mm/cm2・24hrs) 6.5 6.6 8.2 8.8 39.8 12.5

表3
比較例

〔含フッ素エラストマー〕
反応原料
VdF (g) 60 58 55
TFE (g) − − −
CTFE (g) 20 23 29
FMVE (g) 34 32 32
MPr3VE (g) 37 40 40
共重合体組成
VdF (モル%) 66.5 66.0 61.0
TFE (モル%) − − −
CTFE (モル%) 10.5 12.0 15.0
FMVE (モル%) 16.4 15.2 16.8
MPr3VE (モル%) 5.8 6.0 6.3
FBrVE (モル%) 0.8 0.8 0.9
共重合体量
生成量 (g) 147 151 154

〔測定項目〕
常態物性
硬さ (Duro A) 69 70 71
100%モジュラス (MPa) 5.8 5.4 5.2
破断時強さ (MPa) 12.4 12.3 12.4
破断時伸び (%) 250 260 230
圧縮永久歪
175℃、70時間 (%) 21 22 22
耐寒性
TR10 (℃) -31.8 -31.6 -30.3
TR70 (℃) -21.4 -20.8 -20.2
燃料透過性
Fuel C (mg・mm/cm2・24hrs) 12.2 11.9 10.4

【特許請求の範囲】
【請求項1】
その共重合組成が、テトラフルオロエチレンを含まず、
(a)フッ化ビニリデン 40〜65モル%
(b)クロロトリフルオロエチレン 20〜40モル%
(c)パーフルオロ(メチルビニルエーテル) 7〜20モル%
(d)一般式 CF2=CFO〔CF2CF(CF3)O〕nCF3 (ここで、 3〜15モル%
nは2〜6の整数である)で表わされるパーフルオロポリ
エーテル
(e)一般式 RfX(ここで、Rfは炭素数2〜8の不飽和フルオロ 0.1〜2モル%
炭化水素基であり、基中に1個以上のエーテル結合を有して
いてもよく、Xは臭素またはヨウ素である)で表わされる含臭素
または含ヨウ素不飽和化合物
である含フッ素エラストマー100重量部当リ、0.1〜10重量部の有機過酸化物、0.1〜10重量部の多官能性不飽和化合物および2重量部以上の受酸剤を添加してなる含フッ素エラストマー組成物。
【請求項2】
(c)成分と(d)成分との合計共重合量が10モル%以上である含フッ素エラストマーが用いられた請求項1または2記載の含フッ素エラストマー組成物。
【請求項3】
(e)成分化合物がCF2=CFOCF2CF2Br、CF2=CFBr、CF2=CHBr、CF2=CFIまたはCF2=CHIである含フッ素エラストマーが用いられた請求項1または2記載の含フッ素エラストマー組成物。
【請求項4】
一般式 R(Br)n(I)m (ここで、Rは炭素数2〜6の飽和フルオロ炭化水素基または飽和クロロフルオロ炭化水素基であり、nおよびmは0、1または2であり、m+nは2である)で表わされる含臭素および/またはヨウ素飽和化合物の存在下で共重合反応させて得られた含フッ素エラストマーが用いられた請求項1記載の含フッ素エラストマー組成物。
【請求項5】
含臭素および/またはヨウ素飽和化合物がICF2CF2CF2CF2Iである含フッ素エラストマーが用いられた請求項4記載の含フッ素エラストマー組成物。
【請求項6】
有機過酸化物架橋後に以下に示される低温特性(ASTM D1329準拠)を発現する架橋物を与える請求項1または4記載の含フッ素エラストマー組成物。
-43℃≦TR10<-30℃<TR70≦-20℃
【請求項7】
請求項1または4記載の含フッ素エラストマー組成物を架橋成形して得られたフッ素ゴム系シール材。
【請求項8】
自動車燃料用シール材として用いられる請求項7記載のフッ素ゴム系シール材。

【公開番号】特開2010−241900(P2010−241900A)
【公開日】平成22年10月28日(2010.10.28)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2009−90123(P2009−90123)
【出願日】平成21年4月2日(2009.4.2)
【出願人】(502145313)ユニマテック株式会社 (169)
【Fターム(参考)】