説明

吸音性シート部材、金属屋根、車両、船舶または航空機用の防音・断熱構造、および、吸音性シート部材の製造方法

【課題】 取扱い性に優れ、効率良く騒音を低減することが可能であり、製造が容易な吸音性シート部材等を提供する。
【解決手段】 吸音性シート部材1は、表面3に凸部5、凹部7が形成される。凸部5と凹部7とは、互いに交互に縦横に隣接して形成される。すなわち、凸部5が所定間隔で形成され、凸部5同士の間には、凸部5と略同サイズの凹部7がいわゆる千鳥配置で設けられる。したがって、凸部5の縦横に隣接する部位には凹部7が形成され、凹部7の縦横に隣接する部位には凸部5が形成される。吸音性シート部材1の裏面9には、凸部5および凹部7は形成されておらず、略平坦である。すなわち、吸音性シート部材1は、表面のみに凸部5と凹部7とが形成され、凹凸は滑らかに連続して形成される。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、建築構造物および建築付帯設備、電気機器、各種産業機器等における騒音防止材として、特に吸音性に優れ、製造が容易な吸音性シート部材およびこれを用いた金属屋根、車両、船舶または航空機用の防音・断熱構造、吸音性シート部材の製造方法に関するものである。
【背景技術】
【0002】
従来、住宅、建築、産業、輸送機器等の分野において、吸音を目的とした吸音材が用いられる。吸音材としては、グラスウール、ロックウールなどの無機質繊維状集積型の吸音体や、パーライト等の無機質粒状集合体の吸音体、樹脂発泡体を積層した吸音体等が用いられる。
【0003】
このような、吸音体としては、例えば、無機系多孔質材料からなる吸音層と多孔質体層とを積層した吸音体がある(特許文献1)。
また、メラミンフォームからなる凹凸フォームの加工形状により吸音効果があることが記載されている(特許文献2)。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0004】
【特許文献1】特開2008−76870号公報
【特許文献2】特開2003−145487号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0005】
しかし、特許文献1に代表されるような吸音体として、無機質繊維状のものを用いたのでは、吸湿等によって形状が変化したり、経時的に吸音特性が変化したりする場合がある。
【0006】
また、粒状や繊維状のものは、取扱い時に飛散等があり取扱い性に問題がある。また、複数の部材を積層するため、製造工数を要するという問題がある。
【0007】
また、特許文献2のメラミンフォームは、熱硬化性のメラミン樹脂からできた柔軟性のある連続気泡の発泡体で、軽量、吸音、断熱材として工業用途に適用されているほか、研磨効果からクリーニングスポンジなどにも利用されている。このメラミン樹脂とはアミノ樹脂に属する熱硬化性樹脂でメラミンとホルムアルデヒドをアルカリ条件下で縮合させたメチロールメラミンを原料とし、このメチロールメラミンを加熱して重縮合を起こし、網目状に架橋することで熱硬化樹脂となる。ところが、メラミンとホルムアルデヒドの合成反応は100%とはならず、未反応のホルムアルデヒドが残留したり、強い酸に接すると未反応のホルムアルデヒド以外にも、メラミン樹脂が分解してホルムアルデヒドが発生したりするので、残存するホルムアルデヒドの毒性に問題が生じることもある。また、このメラミン樹脂からなるフォームは、所謂、型内でのバッチ式の発泡方法であって長尺シートの製造は困難で、金属折板屋根など大型の建材用途に適用するためには繋ぎ合わせが必要で作業性、美観性に課題があり、生産効率も悪いため経済的にも不利である。
【0008】
本発明は、このような問題に鑑みてなされたもので、取扱い性に優れ、効率良く騒音を低減することが可能であり、製造が容易な吸音性シート部材等を提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0009】
前述した目的を達するために第1の発明は、連続気泡率が40%以上である連続気泡発泡構造ポリオレフィン系樹脂からなるシート状部材であり、一方の側の面にのみ、凹部と凸部とが隣り合うように複数形成されることを特徴とする吸音性シート部材である。
【0010】
前記連続気泡発泡構造ポリオレフィン系樹脂が、架橋発泡体であることが望ましい。
【0011】
第1の発明によれば、連続気泡発泡体を用いるため、表面で反射せずに吸音性シート部材内部に進行した音波をシート部材内部で確実に吸音することができる。特に連続気泡率が40%以上であるため、効率良く音波をシート部材内部に進行させて吸音させることができる。また、発泡樹脂であるため、取扱い性が良く、繊維等の飛散がない。
【0012】
また、シート部材の一方の面のみに凹部と凸部とが隣り合うように複数形成されるため、シート部材表面で反射される音波が、一方向に反射することがなく散乱されるため、例えば室内で用いた場合には、残響時間を短くすることができる。なお、他方の面は略平坦であるため、設置の際に、構造体等に貼り付けることも容易である。
【0013】
第2の発明は、第1の発明にかかる吸音性シート部材を用い、前記吸音性シート部材を金属製屋根の裏側に設けたことを特徴とする金属屋根の防音・断熱構造である。
【0014】
第2の発明によれば、吸音特性による防音と、連続気泡発泡構造による断熱性とを兼ね備え、金属屋根の裏打ち材料として特に好適な防音・断熱構造を得ることができる。
【0015】
第3の発明は、第1の発明にかかる吸音性シート部材を用い、前記吸音性シート部材を車両、船舶または航空機の内装材に設けたことを特徴とする防音・断熱構造である。
【0016】
第3の発明によれば、吸音特性による防音と、連続気泡発泡構造による断熱性とを兼ね備え、車両、船舶または航空機の内装材として特に好適な防音・断熱構造を得ることができる。
【0017】
第4の発明は、連続気泡構造を有する両面が平滑なシート部材を用い、幅方向および周方向それぞれに凹部と凸部とが隣り合うように複数ある一対のローラを対向させ、対向する一対の前記ローラの互いの凹部と凸部とがそれぞれ噛み合う位置関係となるように同期させて回転させ、一対の前記ローラの間に前記シート部材を挿入し、前記シート部材が一対のローラによって挟まれて変形している位置において、前記シート部材の厚さ方向の略中央で前記シート部材を厚さ方向に2分割することで、一方の側の面にのみ、凹部と凸部とが隣り合うように複数形成された一対のシート部材を形成することを特徴とする吸音性シート部材の製造方法である。
【0018】
一対の前記ローラの間隔を調整することで、前記吸音性シート部材の凹凸の高さを調整してもよい。
【0019】
第4の発明によれば、凹凸が隣り合うように複数形成される2枚の吸音性シート部材を1枚の板状のシート部材から容易に製造することができる。したがって、長尺シートの製造も容易であり、極めて製造性の高い吸音性シート部材の製造方法を提供することができる。
【0020】
また、吸音性シート部材の凹凸は、ローラの凹凸高さで調整するのではなく、シート部材を噛みこむローラ同士の間隔で調整されるため、同一のローラで複数の凹凸高さを有する吸音性シート部材を製造することができる。
【発明の効果】
【0021】
本発明によれば、取扱い性に優れ、効率良く騒音を低減することが可能であり、製造が容易な吸音性シート部材等を提供することができる。
【図面の簡単な説明】
【0022】
【図1】吸音性シート部材1を示す斜視図であり、(a)は表面側、(b)は裏面を示す図。
【図2】吸音性シート部材1を示す図であり、(a)は平面図、(b)は(a)のA−A線断面図。
【図3】吸音性シート部材1を製造するロール11a、11bを示す図で、(a)は正面図、(b)は側面図。
【図4】ロール11a、11bにより吸音性シート部材1を製造する方法を示す図。
【図5】ロール11a、11bにより吸音性シート部材1を製造する方法を示す図で、図4のC部拡大図。
【図6】供試体の吸音特性を評価する方法を示す模式図。
【図7】供試体の吸音率の測定結果を示す図。
【発明を実施するための形態】
【0023】
以下、図面を参照しながら、本発明の実施形態について説明する。図1、図2は、吸音性シート部材1を示す図であり、図1(a)は、シート部材1の表面斜視図、図1(b)は裏面斜視図、図2(a)は吸音性シート部材1の平面模式図、図2(b)は断面図である。
【0024】
吸音性シート部材1は、表面3に凸部5および凹部7が形成される。凸部5と凹部7とは、互いに交互に縦横に隣接して形成される。すなわち、凸部5が所定間隔で形成され、凸部5同士の間に凸部5と略同サイズの凹部7がいわゆる千鳥配置で設けられる。したがって、凸部5の縦横に隣接する部位には凹部7が形成され、凹部7の縦横に隣接する部位には凸部5が形成される。
【0025】
吸音性シート部材1の裏面9には、凹凸は形成されておらず、略平坦である。すなわち、吸音性シート部材1は、表面のみに凸部5と凹部7とが形成される。
【0026】
図2(b)は、図2(a)のA−A線断面図およびB−B線断面図である。図2(b)に示すように、凸部5と凹部7とが縦横に同様に連続して形成され、凸部5は厚さが厚い部位であり、凹部7は厚さが薄い部位となる。斜め方向に隣接する凸部5同士の間(斜め方向に隣接する凹部7同士の間)には、凸部5と凹部7の厚さの略中間の厚さの稜が形成される。すなわち、吸音性シート部材1の表面の凹凸は、滑らかに連続して形成される。
【0027】
凸部5としては、経済性や加工性、省スペース化等を考慮すると8mm以下であることが望ましい。また、凹部7は2mm以上であることが望ましい。2mm未満では、吸音性や断熱性等の特性が十分得られないためである。
【0028】
吸音性シート部材1は、連続気泡発泡構造である。独立気泡では、吸音性シート部材1の内部まで音波が伝播せずに反射してしまい、吸音特性が劣るためである。吸音性シート部材1の材質としては、例えば高密度ポリエチレン、低密度ポリエチレン、ポリプロピレン、ポリブタジエン、ポリメチルペンテン等のポリオレフィン系樹脂が使用できる。ポリオレフィンは軽量であり、コスト的にも比較的安価であるため、本発明には最適である。
【0029】
また、吸音発泡シートは架橋構造であることが望ましい。架橋することにより機械的強度が向上し、シートを切断刃で切断する際に変形せずに容易に加工が可能となる。架橋方法は発泡シートを押出成形等で製造する際に有機過酸化物等の架橋剤を添加することによる方法や、電子線により架橋など適宜選択できるが、特に限定するものではない。
【0030】
吸音性シート部材1の連続気泡率は40%以上であることが望ましい。連続気泡率が40%未満では、吸音性シート部材1の表面近傍での音波の反射が多くなり、吸音特性が劣るためである。
【0031】
次に、吸音性シート部材1の製造方法について説明する。図3は、吸音性シート部材1の製造に用いられるロール11a、11bを示す図であり、図3(a)は正面図、図3(b)は側面図である。なお、ロール11bはロール11aと同様の構成であるため、説明を省略する。
【0032】
ロール11aは、円筒状のロールの表面に凸部13が複数形成されたものである。凸部13は、ロール11aの表面に千鳥状に配置される。すなわち、凸部13は、ロール11aの長手方向に所定間隔(所定ピッチ)で形成され、周方向に隣り合う凸部13は前述の設置ピッチに対して半ピッチずれた位置に形成される。なお、凸部13で囲まれた部位が凹部15となる。凹部15は凸部13に対してわずかに大きく、互いに対向する凸部13と凹部15とは噛み合うことができる。
【0033】
ロール11a、11bは、互いに対向するように所定の間隔をあけて配置される。ロール11a、11bの間隔は、調整が可能である。なお、この際、互いに対向するロール11a、11bのそれぞれの凸部13と凹部15の位置が一致しないような周方向位置で配置される。
【0034】
すなわち、対向して設置された状態で、ある周断面位置(例えば図3(b))において、上側のロール11aの凸部13が下端(ロール11bとの対向側)に位置した際、下側のロール11bの当該凸部13に対応する位置の上端(ロール11a側)には凹部15が位置するように、互いの回転位置が制御されて同期する。なお、ロール11a、11bの長手方向における凸部13、凹部15も互いに一致しないように互い違いになるように設置される。
【0035】
図4は、ロール11a、11bを用いて、吸音性シート部材1を製造する状態を示す図である。前述の通り、ロール11a、11bが所定の間隔をあけて設置される。ロール11a、11bは、互いに反対方向に回転し(図中矢印D方向)、一方の側より、シート部材16を噛みこんでいく。シート部材16は、連続気泡発泡構造を有するシート状部材であり、製造する吸音性シート部材1の平均厚みの2倍の厚みを有する。
ところで、製造しようとする吸音性シート部材1の厚さが、これの元となるシート部材の厚さよりも厚いものとする場合は、例えば、予めシート部材16を複数枚用意し、シート部材16の表面(通気性のないスキン層を有するシート表面)同士を貼り合わせて積層し、この積層したシート部材を同様の凹凸加工方法にて吸音性シート部材1を得ることもできる。この場合、得られた吸音性シート部材1には貼り合わせ面のスキン層が残ることとなるが、この吸音性シート部材内部に残ったスキン層が曲げモードに対して強度を増し、貼り合せたものの振動を抑制することができる。この振動抑制効果は、例えば、金属屋根の裏打ち材料に適用した場合には、雨滴などによる金属へ加わる振動が吸音性シートで抑制され、屋内側の雨音を低下させる効果も発揮できる。
【0036】
シート部材16は、ロール11a、11bにより噛みこまれて順次後方に送られる(図中矢印E方向)。ロール11a、11bの噛みこみ部のやや後方側には切断刃17が設けられる。切断刃17は、シート部材16を厚さ方向に切断するものであり、少なくともシート部材16の幅以上の幅を有する。シート部材15は、ロール11a、11bによりつぶされながら(変形させられながら)ロール11a、11b後方に送られ、ロール11a、11bにより変形がなされた状態で切断刃17により厚さ方向に切断される。
【0037】
図5は、図4のC部拡大図である。シート部材16は、ロール11a、11bの凸部13および凹部15によって弾性変形する。前述の通り、ロール11a、11bは、ロール11aの凸部13(凹部15)とロール11bの凹部15(凸部13)とが互い違いの位置となるように回転する。したがって、シート部材15は、上側のロール11aの凸部13および凹部15と、下側のロール11bの凸部13および凹部15との間を縫うように波形となる。
【0038】
切断刃17は、シート部材16が波形形状である状態でシート部材16を切断する。すなわち、切断部19は、シート部材16の厚さ方向の略中央に位置するが、実際に切断がなされる部位においては、シート部材16が波形に変形しているため、実際の切断部は、シート部材16の厚さ方向の中央ではない。したがって、シート部材16は厚さ方向に対して波形に切断される。
【0039】
切断後のシート部材16は、ロール11a、11b(凸部13、凹部15)による変形が元の状態に戻りながらロール11a、11bの後方に送られる。この際、切断刃17により切断された部位が、波形に戻る。したがって、シート部材16の切断面に凸部5と凹部7が形成される。すなわち、切断部19を中心に、ロールの凹部15内に変形した部位(図中F)が、吸音性シート部材1の凸部5となり、ロールの凸部13により押しつぶされた部位が、吸音性シート部材1の凹部7となる。以上により、図1に示す吸音性シート部材1が一対形成される。
【0040】
なお、ロール11a、11bの間隔を調整することで、ロール11a、11bによるシート部材16の波形の変形量が変化する。また、製造される吸音性シート部材の凹凸は、前述の通り、切断部における波形変形量により決定される。したがって、ロール11a、11bの間隔を調整することで、製造される吸音性シート部材の凹凸高さを調整することができる。
【実施例】
【0041】
本発明にかかる吸音性シート部材の性能評価を行った。図6は、供試体21のJIS A 1409による残響室法によりランダム入射吸音率を測定する方法を示す模式図である。まず、残響室20内に供試体を床面に設置し、供試体の側方にスピーカ23およびマイクロホン27をそれぞれ設置した。スピーカ23は、ランダムノイズ発生機、2チャンネルフィルタ、イコライザ、アンプ等からなる音源装置を接続される。マイクロホン27は、精密騒音計、アナライザ、パーソナルコンピュータ等からなる受音装置29と接続される。
【0042】
なお、測定周波数は100Hz〜5kHzであり、2チャンネルフィルタの設定は、1/3オクターブ100Hz〜5kHz、High Pass フィルター 89Hz、Low Pass フィルター 5.6kHzとした。
【0043】
供試体21としては、以下の2種類のものを用いた。
供試体A:本発明にかかる供試体Aとしては、2580mmx3656mmのサイズであり、平均厚さが4mm、かつ、前述の方法で製造され、一方の面に凸部と凹部とが形成され、凸部と凹部との高低差が4mmのものを用いた。
供試体B:比較例として、2580mmx3656mmのサイズであり、厚さが4mmの両面が平坦なものを用いた。供試体A、Bともに、連続気泡率が60%のポリオレフィン系架橋発泡体シート(古河電気工業株式会社製 フネンエース(登録商標))を用いた。
【0044】
測定は、鋼板を床面に敷き、スプレーのりを塗布後、供試体のフラット面を鋼板側にしてハンドロールで隙間なく貼り合わせ、背後空気層のない状態で残響時間を測定した。
【0045】
図7は、測定された残響室法吸音率の測定結果を示す図である。図7は、縦軸が残響室音法吸音率、横軸が1/3オクターブバンド中心周波数である。図中Sは、本発明にかかる吸音性シート部材である供試体Aの結果であり、図中Tは比較例である供試体Bの結果である。
【0046】
供試体A(S)は、供試体B(T)と比較して、吸音率が高く、特に高周波数側において、その効果が大きいことが分かる。
【0047】
以上説明したように、本実施形態の吸音性シート部材によれば、一方の面にのみ凹凸が形成され、凹凸が縦横に互いに交互に形成されるため、シート部材表面で反射される音波が、一方向に反射することがなく散乱されるため、残響時間を短くすることができる。また、他方の面は略平坦であるため、設置の際に、構造体等に貼り付けることも容易である。
【0048】
また、連続気泡率が40%以上の連続気泡構造の発泡樹脂を用いるため、表面で反射せずに吸音性シート部材内部に進行した音波がシート部材内部で確実に吸音することができる。
【0049】
また、連続気泡構造でかつ、厚さが連続して変化する凹凸があるため、音波の進行方向に対して厚さ(伝播行程)に分布が形成されるため、比較的広い周波数での吸音特性に優れる。
【0050】
このような吸音性シート部材は、住宅、建築、産業、輸送機器の分野で、吸音および断熱を目的として用いられるグラスウール、ロックウールなどの無機質繊維状集積型の吸音体、パーライト等の無機質粒状集合体の吸音体、その他、樹脂積層体などの吸音体が使用される分野に適用される。特に、軽量で構造が簡易であり、設置も容易であることから、防音や断熱の必要な金属屋根の裏打ち材として好適である。吸音シート部材の平坦面側を屋根側として貼り付けるのみで、効率のよい、金属屋根の防音・断熱構造を得ることができる。
【0051】
また、その他用途として鉄道用車両、船舶、航空機などの大型移動体の内装吸音断熱材として使用することができる。鉄道車両用では、屋根、幕、腰、妻、或いは床などの部位に客室内の吸音力を高めることに有効である。船舶用では、客室内の内装材や倉庫室、車庫などの内壁材に吸音性を持たせることによる防音対策に有効である。航空機用では、乗客用の座席周りに適用することで、静寂性が保たれる。自動車内装用の吸音断熱材としてルーフ、インパネ下部或いは内部、床周辺部などに適用可能である。
【0052】
以上、添付図を参照しながら、本発明の実施の形態を説明したが、本発明の技術的範囲は、前述した実施の形態に左右されない。当業者であれば、特許請求の範囲に記載された技術的思想の範疇内において各種の変更例または修正例に想到し得ることは明らかであり、それらについても当然に本発明の技術的範囲に属するものと了解される。
【符号の説明】
【0053】
1………吸音性シート部材
3………表面
5………凸部
7………凹部
9………裏面
11a、11b………ロール
13………凸部
15………凹部
16………シート部材
17………切断刃
19………切断部
20………残響室
21………供試体
23………スピーカ
25………音源装置
27………マイクロホン
29………受音装置

【特許請求の範囲】
【請求項1】
連続気泡率が40%以上である連続気泡発泡構造ポリオレフィン系樹脂からなるシート状部材であり、
一方の側の面にのみ、凹部と凸部とが隣り合うように複数形成されることを特徴とする吸音性シート部材。
【請求項2】
前記連続気泡発泡構造ポリオレフィン系樹脂が、架橋発泡体であることを特徴とする請求項1記載の吸音性シート部材。
【請求項3】
請求項1または請求項2のいずれかに記載の吸音性シート部材を用い、前記吸音性シート部材を金属製屋根の裏側に設けたことを特徴とする金属屋根の防音・断熱構造。
【請求項4】
請求項1または請求項2のいずれかに記載の吸音性シート部材を用い、前記吸音性シート部材を車両、船舶または航空機の内装材に設けたことを特徴とする車両、船舶、または航空機用の防音・断熱構造。
【請求項5】
連続気泡構造を有する両面が平滑なシート部材を用い、幅方向および周方向それぞれに凹部と凸部とが隣り合うように複数ある一対のローラを対向させ、対向する一対の前記ローラの互いの凹部と凸部とがそれぞれ噛み合う位置関係となるように同期させて回転させ、一対の前記ローラの間に前記シート部材を挿入し、前記シート部材が一対のローラによって挟まれて変形している位置において、前記シート部材の厚さ方向の略中央で前記シート部材を厚さ方向に2分割することで、一方の側の面にのみ、縦横方向にそれぞれ凹部と凸部とが連続して形成された一対の吸音性シート部材を形成することを特徴とする吸音性シート部材の製造方法。
【請求項6】
一対の前記ローラの間隔を調整することで、前記吸音性シート部材の凹凸の高さを調整することを特徴とする請求項5記載の吸音性シート部材の製造方法。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【図6】
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【図7】
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【公開番号】特開2011−112874(P2011−112874A)
【公開日】平成23年6月9日(2011.6.9)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2009−269252(P2009−269252)
【出願日】平成21年11月26日(2009.11.26)
【出願人】(000005290)古河電気工業株式会社 (4,457)
【Fターム(参考)】