説明

周波数変換器

【課題】 発振周波数を下げたときに発振停止を起こしにくくし、さらに、温度が上昇したときにも発振停止を起こしにくくする。
【解決手段】 ミキサトランジスタ86〜89のコレクタバイアス電流と発振トランジスタ61、62のコレクタバイアス電流とを設定するためのバイアス電源74を設け、制御電圧Vtが第1の所定値以上のときよりも第1の所定値以下のときにバイアス電源74の出力電圧を高くしてミキサトランジスタ86〜89のコレクタバイアス電流又は発振トランジスタ61、62のコレクタバイアス電流の少なくとも一方を大きくした。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、テレビジョンチューナ等に使用される周波数変換器に関する。
【背景技術】
【0002】
図6は、例えばVHFテレビジョンチューナに使用される従来の発振回路であり、集積回路20内に構成された第一及び第二の発振トランジスタ2、3と、集積回路20外に設けられた共振回路4とによって構成される。第一の発振トランジスタ2と第二の発振トランジスタ3とは差動接続される。
【0003】
集積回路20外に設けられた共振回路4は端子20aを介して第1の発振トランジスタ2のベースと第2の発振トランジスタ3のコレクタに結合される。共振回路4はインダクタンス素子4a、バラクタダイオード4b等を有し、その一端が端子20aに接続され、他端は集積回路20外で接地される。そして、バラクタダイオード4bに印加される同調電圧Tuによって発振周波数が設定される。上記の発振回路においては図示されていないが、発振トランジスタ2、3のベースにはバイアス電源からバイアス電圧が印加されている。このバイアス電圧の値は、通常一定である(例えば、特許文献1参照。)。発振信号は発振トランジスタ3のコレクタから出力される。
【0004】
【特許文献1】特開2004−172934号公報(図1)
【0005】
また、発振信号が供給される従来のミキサを図7に示す。このミキサも集積回路内に構成される。第一のトランジスタ31と第二のトランジスタ32とは差動接続される。第一のトランジスタ31のベースに接続された入力端34にテレビジョン信号が入力される。第二のトランジスタ32のベースは高周波的に接地される。第1のトランジスタ31と第2のトランジスタ32のベースには一定のバイアス電圧が印加されている。
【0006】
第一のトランジスタ31のコレクタには、第三のトランジスタ36のエミッタと第四のトランジスタ37のエミッタが接続される。また、第二のトランジスタ32のコレクタには、第五のトランジスタ38のエミッタと第六のトランジスタ39のエミッタが接続される。これによって、第三のトランジスタ36と第四のトランジスタ37とは差動接続され、第五のトランジスタ38と第六のトランジスタ39とは差動接続される。
【0007】
第三のトランジスタ36のベースと第六のトランジスタ39のベースとが互いに接続されて局部発振信号の入力端40に接続され、第四のトランジスタ37のベースと第五のトランジスタ38のベースとが互いに接続されて局部発振信号の入力端41に接続される。二つの入力端40、41の間には局部発振信号が平衡入力される。
【0008】
また、第三のトランジスタ36のコレクタと第五のトランジスタ38のコレクタとが互いに接続され、第四のトランジスタ37のコレクタと第六のトランジスタ39のコレクタとが互いに接続される。それぞれの接続点は中間周波信号が平衡出力される出力端42、43となる。また、それぞれの接続点には給電抵抗44、45を介して電源電圧が印加される(例えば、特許文献2参照。)。
【0009】
【特許文献2】特開2004−187101号公報(図2)
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0010】
上記発振回路においては、発振周波数を低くするために制御電圧を低くしてバラクタダイオード4bの容量値を大きくすると、バラクタダイオードの抵抗成分が増加し、共振回路4のQが低下して発振回路としてのループゲインが不足となり発振パワーが低下し、極端な場合は発振停止を起こすおそれがある。また、温度上昇に伴ってループゲインも低下して発振パワーの低下もしくは発振停止を起こすおそれもある。発振パワーが低下するとミキサでの変換効率が低下して出力される中間周波信号のレベルが低下する。温度上昇によってミキサ自体の利得も低下する。
【0011】
本発明は、発振周波数を下げたときに発振停止を起こしにくくすると共に、温度上昇に伴って中間周波信号のレベル低下を防ぐことを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0012】
本発明の第1の解決手段は、受信信号を中間周波信号に周波数変換するミキサと、前記ミキサに局部発振信号を供給する発振回路とを備え、前記ミキサには前記受信信号と前記局部発振信号とが入力されるミキサトランジスタを設け、前記発振回路には発振トランジスタと、カソードに発振周波数制御用の制御電圧が印加されるバラクタダイオードを有すると共に前記発振トランジスタに結合された共振回路とを設け、前記ミキサトランジスタのコレクタバイアス電流と前記発振トランジスタのコレクタバイアス電流とを設定するためのバイアス電源を設け、前記制御電圧が第1の所定値以上のときよりも前記第1の所定値以下のときに前記バイアス電源の出力電圧を高くして前記ミキサトランジスタのコレクタバイアス電流又は前記発振トランジスタのコレクタバイアス電流の少なくとも一方を大きくした。
【0013】
また、第2の解決手段として、前記バイアス電源の出力電圧に正の温度係数を持たせた。
【0014】
また、第3の解決手段として、前記バイアス電源は、一端が電源にプルアップされた電源側抵抗と、一端が接地されると共に他端が前記電源側抵抗の他端に接続された接地側抵抗とを有し、前記電源側抵抗と前記接地側抵抗との接続点から前記出力電圧を出力し、前記電源側抵抗の抵抗値温度係数を前記接地側抵抗の抵抗値温度係数よりも小さくし、前記電源側抵抗の抵抗値又は前記接地側抵抗の抵抗値の少なくとも一方を前記制御電圧が第1の所定値以上のときと以下のときとで異なるように切り替えた。
【0015】
また、第4の解決手段として、前記バイアス電源は第1のバイアス電源と第2のバイアス電源とを有し、前記第1のバイアス電源によって前記発振トランジスタのコレクタバイアス電流を設定し、前記第2のバイアス電源によって前記ミキサトランジスタのコレクタバイアス電流を設定した。
【0016】
また、第5の解決手段として、前記第1のバイアス電源における、前記電源側抵抗は一端が電源にプルアップされた第1の抵抗と、第1のスイッチトランジスタを介して前記第1の抵抗に並列接続される第2の抵抗とを有し、前記接地側抵抗は一端が接地されると共に他端が前記第1の抵抗の他端に接続された第3の抵抗を有し、前記第1のスイッチトランジスタを前記制御電圧が前記第1の所定値以上のときにオフにすると共に、前記第1の所定値以下のときにオンにした。
【0017】
また、第6の解決手段として、前記第1のバイアス電源における、前記電源側抵抗は一端が電源にプルアップされた第1の抵抗を有し、前記接地側抵抗は一端が接地されると共に他端が前記第1の抵抗の他端に接続された第3の抵抗と、第1のスイッチトランジスタを介して前記第3の抵抗に並列接続される第4の抵抗とを有し、前記第1のスイッチトランジスタを前記制御電圧が前記第1の所定値以上のときにオンにすると共に、前記第1の所定値以下のときにオフにした。
【0018】
また、第7の解決手段として、前記ミキサの前段には前記制御電圧によって同調周波数が変えられる同調回路が設けられ、前記第2のバイアス電源における、前記電源側抵抗は一端が電源にプルアップされた第1の抵抗と、第1のスイッチトランジスタを介して前記第1の抵抗に並列接続される第2の抵抗とを有し、前記接地側抵抗は一端が接地されると共に他端が前記第1の抵抗の他端に接続された第3の抵抗と、第2のスイッチトランジスタを介して前記第3の抵抗に並列接続される第4の抵抗とを有し、前記第1のスイッチトランジスタを前記制御電圧が前記第1の所定値以上のときにオフにすると共に、前記第1の所定値以下のときにオンにし、前記第2のスイッチトランジスタを前記制御電圧が前記第1の所定値よりも高い第2の所定値と第3の所定値との間でオンにすると共に、前記第2の所定値と前記第3の所定値との間以外のときにオンにした。
【0019】
また、第8の解決手段として、前記発振トランジスタとミキサトランジスタと前記バイアス電源とを集積回路内に構成し、前記集積回路内には前記スイッチトランジスタをオン又はオフ切り替えるための切替制御回路を設け、前記切替制御回路には選局用の周波数データを入力した。
【発明の効果】
【0020】
第1の解決手段によれば、ミキサには受信信号と局部発振信号とが入力されるミキサトランジスタを設け、発振回路には発振トランジスタと、カソードに発振周波数制御用の制御電圧が印加されるバラクタダイオードを有すると共に発振トランジスタに結合された共振回路とを設け、ミキサトランジスタのコレクタバイアス電流と発振トランジスタのコレクタバイアス電流とを設定するためのバイアス電源を設け、制御電圧が第1の所定値以上のときよりも第1の所定値以下のときにバイアス電源の出力電圧を高くしてミキサトランジスタのコレクタバイアス電流又は発振トランジスタのコレクタバイアス電流の少なくとも一方を大きくしたので、制御電圧が低いときにバラクタダイオードの抵抗成分が増加して共振回路のQが低下しても、発振トランジスタもしくはミキサトランジスタのゲインが増加し、発振停止等の不具合を防止すると共に、中間周波信号のレベルを高くすることができる。
【0021】
また、第2の解決手段によれば、バイアス電源の出力電圧に正の温度係数を持たせたので、温度が上昇したときに発振トランジスタのコレクタ電流もしくはミキサトランジスタのコレクタ電流を増加させて発振回路のループゲインの低下もしくはミキサの変換効率の低下を防止できる。
【0022】
また、第3の解決手段によれば、バイアス電源は、一端が電源にプルアップされた電源側抵抗と、一端が接地されると共に他端が電源側抵抗の他端に接続された接地側抵抗とを有し、電源側抵抗と接地側抵抗との接続点から出力電圧を出力し、電源側抵抗の抵抗値温度係数を接地側抵抗の抵抗値温度係数よりも小さくし、電源側抵抗の抵抗値又は接地側抵抗の抵抗値の少なくとも一方を制御電圧が第1の所定値以上のときと以下のときとで異なるように切り替えたので、バイアス電圧に正の温度係数を持たせることができる。
【0023】
また、第4の解決手段によれば、バイアス電源は第1のバイアス電源と第2のバイアス電源とを有し、第1のバイアス電源によって発振トランジスタのコレクタバイアス電流を設定し、第2のバイアス電源によってミキサトランジスタのコレクタバイアス電流を設定したので、それぞれ最適なコレクタバイアス電流を設定できる。
【0024】
また、第5の解決手段によれば、第1のバイアス電源における、電源側抵抗は一端が電源にプルアップされた第1の抵抗と、第1のスイッチトランジスタを介して第1の抵抗に並列接続される第2の抵抗とを有し、接地側抵抗は一端が接地されると共に他端が第1の抵抗の他端に接続された第3の抵抗を有し、第1のスイッチトランジスタを制御電圧が前記第1の所定値以上のときにオフにすると共に、第1の所定値以下のときにオンにしたので、第1のスイッチトランジスタによってバイアス電圧を2通りに切り替え、何れのバイアス電圧にも正の温度係数を持たせることができる。
【0025】
また、第6の解決手段によれば、第1のバイアス電源における、電源側抵抗は一端が電源にプルアップされた第1の抵抗を有し、接地側抵抗は一端が接地されると共に他端が第1の抵抗の他端に接続された第3の抵抗と、第1のスイッチトランジスタを介して第3の抵抗に並列接続される第4の抵抗とを有し、第1のスイッチトランジスタを制御電圧が前記第1の所定値以上のときにオンにすると共に、前記第1の所定値以下のときにオフにしたので、第1のスイッチトランジスタによってバイアス電圧を2通りに切り替え、何れのバイアス電圧にも正の温度係数を持たせることができる。
【0026】
また、第7の解決手段によれば、第2のバイアス電源における、電源側抵抗は一端が電源にプルアップされた第1の抵抗と、第1のスイッチトランジスタを介して第1の抵抗に並列接続される第2の抵抗とを有し、接地側抵抗は一端が接地されると共に他端が第1の抵抗の他端に接続された第3の抵抗と、第2のスイッチトランジスタを介して第3の抵抗に並列接続される第4の抵抗とを有し、第1のスイッチトランジスタを制御電圧が前記第1の所定値以上のときにオフにすると共に、第1の所定値以下のときにオンにし、第2のスイッチトランジスタを制御電圧が第1の所定値よりも高い第2の所定値と第3の所定値との間の範囲でオンにすると共に、第2の所定値と第3の所定値との間以外の範囲でオフにしたので、前段の同調回路の挿入損失の周波数特性による利得偏差を平準化できる。
【0027】
また、第8の解決手段によれば、発振トランジスタとミキサトランジスタとバイアス電源とを集積回路内に構成し、集積回路内には各スイッチトランジスタをオン又はオフ切り替えるための切替制御回路を設けた、切替制御回路には選局用の周波数データを入力したので、周波数データによって簡単にバイアス電圧を2通りに切り替え、何れのバイアス電圧にも正の温度係数を持たせることができる。
【発明を実施するための最良の形態】
【0028】
図1は本発明の周波数変換器が適用されるテレビジョンチューナの基本構成を示す。テレビジョン信号(RF)はバラクタダイオード(図示せず)を有する同調回路50を介してミキサ51に入力される。ミキサ51には発振回路52から局部発振信号が供給される。発振回路52もバラクタダイオード(図示せず)を有する。ミキサ51と発振回路52とで周波数変換器53が構成され、ミキサ51から出力される中間周波信号(IF)が中間周波同調回路54を介して後段の回路に供給される。同調回路50の同調周波数と発振回路52の発振周波数とはPLL回路55によって制御される。すなわち、PLL回路55から出力される制御電圧Vtが同調回路50のバラクタダイオードと発振回路52のバラクタダイオードとに印加され、同調周波数と発振周波数は制御電圧Vtを高くすれば高くなり、制御電圧Vtを低くすれば低くなる。また、ミキサ51及び発振回路52はそれぞれトランジスタを有し、これらトランジスタにはバイアス電源56からバイアス電圧が供給される。
【0029】
図2は、上記周波数変換器53における発振回路52の具体構成とミキサ53とバイアス電源56を示す。集積回路60内に構成された第1及び第2の発振トランジスタ61、62は差動接続され、各コレクタはそれぞれ抵抗63、64によって電源Bにプルアップされる。また差動接続のために各エミッタは共通の抵抗65によって接地される。各ベースには第1のバイアス電源72からバイアス電圧が印加され、コレクタバイアス電流が設定される。そして、集積回路60外に設けられた共振回路67が第1の発振トランジスタ61、第2の発振トランジスタ62に結合される。
【0030】
共振回路67は、2つのバラクタダイオード67a、67bと、それらのカソード間に直列接続された2つのインダクタンス素子67c、67dと、2つのバラクタダイオード67a、67bのアノード間に接続された容量素子67eとを有する。2つのインダクタンス素子67c、67dの接続点にはPLL回路55からの制御電圧Vtが印加される。2つのバラクタダイオード67a、67bのアノードは集積回路60の外部接続端子60a、60bを介して発振第1のトランジスタ61のコレクタとベースとの間に結合されると共に、第2の発振トランジスタ62のコレクタとベースとの間にも結合される。また、バラクタダイオード67a、67bのアノードは直流的に接地される。
【0031】
すなわち、第1の発振トランジスタ61のベースには結合コンデンサ68を介してバラクタダイオード67aのアノードが結合され、コレクタには結合コンデンサ69を介してバラクタダイオード67bのアノードが結合される。同様に、第2の発振トランジスタ62のベースには結合コンデンサ70を介してバラクタダイオード67bのアノードが結合され、コレクタには結合コンデンサ71を介してバラクタダイオード67aのアノードが結合される。
【0032】
一般に、発振回路のループゲインは温度の影響を受け、温度上昇に伴ってループゲインが低下する特性を有している。また、一般にバラクタダイオードは容量値を大きくするために制御電圧Vtを低くすると(発振周波数を低くする)抵抗成分が増加する。従って、共振回路67のQが低下する特性を有する。
そこで、本発明では、これらの問題に対処するため、集積回路60内に構成した第1のバイアス電源72に温度特性を持たせ、且つ、このバイアス電圧の値を切り替えて発振トランジスタ61、62のベースに印加するようにしている。以下に、第1のバイアス電源72を説明する。
【0033】
先ず、第1のバイアス電源72は、一端が電源Bにプルアップされた電源側抵抗73と、一端が接地されると共に他端が電源側抵抗73の他端に接続された接地側抵抗74とを有する。電源側抵抗73と接地側抵抗74との接続点から発振トランジスタ61、62のベースにバイアス電圧が印加される。
【0034】
電源側抵抗73は一端が電源にプルアップされた第1の抵抗73aと、第1のスイッチトランジスタ75を介して第1の抵抗73aに並列接続される第2の抵抗73bとから構成される。また、接地側抵抗74は一端が接地されると共に他端が第1の抵抗73aの他端に接続された第3の抵抗74aで構成される。第1のスイッチトランジスタ75はNPN型で示したがPNP型でもよい。第1の抵抗73a及び第2の抵抗73bの抵抗値は温度上昇に伴って増加する正の温度係数(およそ+700PPM/°C)を持つ。また、第3の抵抗74aの抵抗値も温度上昇に伴って増加する正の温度係数(およそ+1200PPM/°C)を持つ。すなわち、電源側抵抗73の抵抗値温度係数は接地側抵抗74の抵抗値温度係数よりも小さい。
【0035】
第1のスイッチトランジスタ75のベースには第1の切替制御回路76から切替電圧が入力される。第1の切替制御回路76には受信チャンネルに対応した周波数データDが入力される。周波数データDは、例えば、10数ビットのデータからなり、受信チャンネルの周波数が高くなると上位のビットデータが順次0から1に変わるので、最上位のビットデータのみに着目してこれが0か又は1によって受信チャンネルの周波数の高低の判断が可能となる。
【0036】
例えば、第1の切替制御回路76は、周波数データの最上位のビットデータが0のときには(従って、制御電圧Vtが第1の所定値以下のとき)第1のスイッチトランジスタ75をオンさせる。よって、電源側抵抗73の抵抗値が小さくなってバイアス電圧が高くなる。また、最上位のビットデータが1のときには(従って、制御電圧Vtが第1の所定値以上のとき)第1のスイッチトランジスタ75をオフにする。よって、バイアス電圧は低くなる。
【0037】
このことから、第1のバイアス電源72から出力されるバイアス電圧は、制御電圧Vtが第1の所定値以下のときには図3のAに示すように高くなり、制御電圧Vtが第1の所定値以上のときには図3のBに示すように低くなる。また、何れの場合のバイアス電圧も、上記の抵抗温度係数によって、温度上昇に伴って電圧値が上昇する正の温度係数を持つ。
【0038】
そして、制御電圧Vtが第1の所定値以下で共振回路67のQが低下した場合には、バイアス電圧が高くなるので、発振トランジスタ61、62のコレクタバイアス電流が大きくなり、ループゲインを増加して発振パワーの低下防止や発振停止等の不具合を防ぐようにする。また、制御電圧Vtが第1の所定値以上の場合には、バイアス電圧を低くして第1の発振トランジスタ61、第2の発振トランジスタ62のコレクタバイアス電流を下げ、発振回路52のループゲインを必要最小限に抑えることで発振パワーを抑え、不要輻射を抑制する。
【0039】
また、温度上昇によってループゲインが低下しようとするが、コレクタバイアス電流が増加するのでループゲインの低下が抑えられる。逆に温度低下によってループゲインが増加しすぎて異常発振等が起ころうとしても、コレクタバイアス電流の減少に余ってループゲインの上昇が抑えられる。
【0040】
発振信号は第1及び第2の発振トランジスタ61、62のコレクタから出力されてミキサ51に供給される。また、第1のバイアス電源72から出力されたバイアス電圧もミキサ51に印加される。ミキサ51には外部接続端子60cを介してテレビジョン信号(RF)が入力され、中間周波信号(IF)は外部接続端子60d、60eから集積回路60の外部に出力される。
【0041】
なお、図4は第1のバイアス電源72の他の構成例を示す。図4においては、電源側抵抗73は第1の抵抗73aで構成され、接地側抵抗74は第3の抵抗74aと、第1のスイッチトランジスタ75を介して第3の抵抗74aに並列接続される第4の抵抗74bとから構成される。そして、第1の切替制御回路76から第1のスイッチトランジスタ75のベースに切替電圧が入力される。この場合、第1の切替制御回路76は、制御電圧Vtが第1の所定値以下では第1のスイッチトランジスタ75をオフにし、第1の所定値以上ではオンにする。従って、この構成においても図3と同じバイアス電圧が出力される。
【0042】
図5はミキサ51の構成を示す。第1の増幅トランジスタ81と第2の増幅トランジスタ82とは差動接続される。第1の増幅トランジスタ81のベースはテレビジョン信号(RF)を入力する外部接続端子60cに接続され、第2の増幅トランジスタ82のベースは高周波的に接地される。そして、第1の増幅トランジスタ81のベースと第2の増幅トランジスタ82のベースに第1のバイアス電源72からバイアス電圧が印加される。
【0043】
第1の増幅トランジスタ81のコレクタには第1の混合トランジスタ86のエミッタと第2の混合トランジスタ87のエミッタが接続される。また、第2の増幅トランジスタ82のコレクタには第3の混合トランジスタ88のエミッタと第4の混合トランジスタ89のエミッタが接続される。これによって、第1の混合トランジスタ86と第2の混合トランジスタ87とは差動接続され、第3の混合トランジスタ88と第4の混合トランジスタ89とは差動接続される。
【0044】
第1の混合トランジスタ86のベースと第4の混合トランジスタ89のベースとが互いに接続されて局部発振信号の入力端90に接続され、第2の混合トランジスタ87のベースと第3の混合トランジスタ88のベースとが互いに接続されて局部発振信号の入力端91に接続される。二つの入力端90、91の間には局部発振信号が平衡入力される。
【0045】
また、第1の混合トランジスタ86のコレクタと第3の混合トランジスタ88のコレクタとが互いに接続され、負荷抵抗92を介して電源にプルアップされ、第2の混合トランジスタ87のコレクタと第4の混合トランジスタ89のコレクタとが互いに接続され、負荷抵抗93を介して電源にプルアップされる。そして、それぞれの接続点は中間周波信号が平衡出力される外部接続端子60d、60eに接続される。
【0046】
以上の構成においては、第1の増幅トランジスタ81のコレクタバイアス電流は第1の混合トランジスタ86及び第2の混合トランジスタ87のコレクタバイアス電流となり、第2の増幅トランジスタ82のコレクタバイアス電流は第3の混合トランジスタ88及び第4の混合トランジスタ89のコレクタバイアス電流となる。従って、第1のバイアス電源72によって第1の混合トランジスタ86乃至第4の混合トランジスタ89のコレクタバイアス電流が設定される。
【0047】
テレビジョン信号は第1の増幅トランジスタ81及び第2の増幅トランジスタ82によって増幅され、第1の混合トランジスタ86及び第2の混合トランジスタ87のエミッタと第3の混合トランジスタ88及び第4の混合トランジスタ89のエミッタに入力される。第1の混合トランジスタ及び第4の混合トランジスタ89のベースと第2の混合トランジスタ及び第3の混合トランジスタ88のベースとの間に局部発振信号が入力されることで、第1の混合トランジスタ86及び第3の混合トランジスタ88のコレクタと第2の混合トランジスタ87及び第4の混合トランジスタ89のコレクタとの間に中間周波信号が出力される。
【0048】
一般に、ミキサの変換利得は、注入される局部発振信号のレベルと温度とに依存するが、第1のバイアス電源72のバイアス電圧を高くすれば各トランジスタのコレクタバイアス電流が増加して利得が高くなるので、制御電圧が第1の所定値よりも低いときに局部発振信号のレベルが低下して変換利得が低下してもそれを補償することができ、また、温度上昇に伴って変換利得が低下してもそれを補償することができる。
【0049】
図1に示す同調回路50は、そこに使用されるバラクタダイオードに制御電圧Vtが印加されて同調周波数が変えられるが、同調周波数の変化に対して挿入損失が変化する。同調周波数範囲を低域、中域、高域と分けた際に中域では他の帯域よりも挿入損失が少なくなってチューナ全体の利得偏差が大きくなる。そこで、ミキサ52に印加するバイアス電圧を中域の受信時に低くして利得を下げて平準化を図ることができる。
【0050】
そのために、図5のミキサ52に使用される第1のバイアス電源72に代えて、図6に示す第2のバイアス電源77が使用される。第2のバイアス電源77は、電源側抵抗73は一端が電源にプルアップされた第1の抵抗73aと、第1のスイッチトランジスタ75を介して第1の抵抗73aに並列接続される第2の抵抗73bとを有し、接地側抵抗74は一端が接地されると共に他端が第1の抵抗73aの他端に接続された第3の抵抗74aと、第2のスイッチトランジスタ78を介して第3の抵抗74aに並列接続される第4の抵抗74bとを有する。
【0051】
そして、第1のスイッチトランジスタ75のベースと第2のスイッチトランジスタ77のベースが第2の切替制御回路79に接続され、第2の切替制御回路79に周波数データDが入力される。第2の制御回路79は、制御電圧Vtが第1の所定値以上のときにオフにすると共に、第1の所定値以下のときにオンにし、第2のスイッチトランジスタ78を制御電圧Vtが第1の所定値よりも高い第2の所定値と第3の所定値との間の範囲でオンにすると共に、第2の所定値と第3の所定値との間以外の範囲でオフにする。従って、制御電圧Vtが第2の所定値と第3の所定値との間ではバイアス電圧が低下して変換利得を下げることができる。
【0052】
制御電圧Vtは周波数データと対応しているので、中域の周波数範囲を第2の所定値と第3の所定値に対応して設定すればよい。
【0053】
なお、第1の抵抗乃至第4の抵抗43a、43b、44a、44bは拡散抵抗によって構成される。これらの抵抗は集積回路30の製造プロセスで構成されるが、拡散抵抗はPNジャンクションを用いて形成され、PNジャンクションに逆バイアスを印加したときの空乏層が温度によって拡大、縮小するので温度係数の大きな抵抗が形成できる。
【図面の簡単な説明】
【0054】
【図1】本発明の周波数変換器を適用したテレビジョンチューナの基本構成図である。
【図2】本発明の周波数変換器に使用される発振回路の回路図である。
【図3】本発明の周波数変換器に使用されるバイアス電源の特性図である。
【図4】本発明の周波数変換器に使用されるバイアス電源の回路図である。
【図5】本発明の周波数変換器に使用されるミキサの回路図である。
【図6】本発明の周波数変換器に使用されるバイアス電源の他の回路図である。
【図7】従来の周波数変換器に使用される発振回路の回路図である。
【図8】従来の周波数変換器に使用されるミキサの回路図である。
【符号の説明】
【0055】
50:同調回路
51:ミキサ
52:発振回路
53:周波数変換器
54:中間周波同調回路
55:PLL回路
56:バイアス電源
60:集積回路
61、62:第1の発振トランジスタ
67:共振回路
67a、67b:バラクタダイオード
72:第1のバイアス電源
73:電源側抵抗
73a:第1の抵抗
73b:第2の抵抗
74:接地側抵抗
74a:第3の抵抗
74b:第4の抵抗
75:第1のスイッチトランジスタ
76:第1の切替制御回路
77:第2のバイアス電源
78:第2のスイッチトランジスタ
79:第2の切替制御回路
81、82:第1の増幅トランジスタ
86〜89:混合トランジスタ

【特許請求の範囲】
【請求項1】
受信信号を中間周波信号に周波数変換するミキサと、前記ミキサに局部発振信号を供給する発振回路とを備え、前記ミキサには前記受信信号と前記局部発振信号とが入力されるミキサトランジスタを設け、前記発振回路には発振トランジスタと、カソードに発振周波数制御用の制御電圧が印加されるバラクタダイオードを有すると共に前記発振トランジスタに結合された共振回路とを設け、前記ミキサトランジスタのコレクタバイアス電流と前記発振トランジスタのコレクタバイアス電流とを設定するためのバイアス電源を設け、前記制御電圧が第1の所定値以上のときよりも前記第1の所定値以下のときに前記バイアス電源の出力電圧を高くして前記ミキサトランジスタのコレクタバイアス電流又は前記発振トランジスタのコレクタバイアス電流の少なくとも一方を大きくしたことを特徴とする周波数変換器。
【請求項2】
前記バイアス電源の出力電圧に正の温度係数を持たせたことを特徴とする請求項1に記載の周波数変換器。
【請求項3】
前記バイアス電源は、一端が電源にプルアップされた電源側抵抗と、一端が接地されると共に他端が前記電源側抵抗の他端に接続された接地側抵抗とを有し、前記電源側抵抗と前記接地側抵抗との接続点から前記出力電圧を出力し、前記電源側抵抗の抵抗値温度係数を前記接地側抵抗の抵抗値温度係数よりも小さくし、前記電源側抵抗の抵抗値又は前記接地側抵抗の抵抗値の少なくとも一方を前記制御電圧が第1の所定値以上のときと以下のときとで異なるように切り替えたことを特徴とする請求項2に記載の周波数変換器。
【請求項4】
前記バイアス電源は第1のバイアス電源と第2のバイアス電源とを有し、前記第1のバイアス電源によって前記発振トランジスタのコレクタバイアス電流を設定し、前記第2のバイアス電源によって前記ミキサトランジスタのコレクタバイアス電流を設定したことを特徴とする請求項3に記載の周波数変換器。
【請求項5】
前記第1のバイアス電源における、前記電源側抵抗は一端が電源にプルアップされた第1の抵抗と、第1のスイッチトランジスタを介して前記第1の抵抗に並列接続される第2の抵抗とを有し、前記接地側抵抗は一端が接地されると共に他端が前記第1の抵抗の他端に接続された第3の抵抗を有し、前記第1のスイッチトランジスタを前記制御電圧が前記第1の所定値以上のときにオフにすると共に、前記第1の所定値以下のときにオンにしたことを特徴とする請求項4に記載の周波数変換器。
【請求項6】
前記第1のバイアス電源における、前記電源側抵抗は一端が電源にプルアップされた第1の抵抗を有し、前記接地側抵抗は一端が接地されると共に他端が前記第1の抵抗の他端に接続された第3の抵抗と、第1のスイッチトランジスタを介して前記第3の抵抗に並列接続される第4の抵抗とを有し、前記第1のスイッチトランジスタを前記制御電圧が前記第1の所定値以上のときにオンにすると共に、前記第1の所定値以下のときにオフにしたことを特徴とする請求項4に記載の周波数変換器。
【請求項7】
前記ミキサの前段には前記制御電圧によって同調周波数が変えられる同調回路が設けられ、前記第2のバイアス電源における、前記電源側抵抗は一端が電源にプルアップされた第1の抵抗と、第1のスイッチトランジスタを介して前記第1の抵抗に並列接続される第2の抵抗とを有し、前記接地側抵抗は一端が接地されると共に他端が前記第1の抵抗の他端に接続された第3の抵抗と、第2のスイッチトランジスタを介して前記第3の抵抗に並列接続される第4の抵抗とを有し、前記第1のスイッチトランジスタを前記制御電圧が前記第1の所定値以上のときにオフにすると共に、前記第1の所定値以下のときにオンにし、前記第2のスイッチトランジスタを前記制御電圧が前記第1の所定値よりも高い第2の所定値と第3の所定値との間でオンにすると共に、前記第2の所定値と前記第3の所定値との間以外のときにオフにしたことを特徴とする請求項4に記載の周蓮変換器。
【請求項8】
前記発振トランジスタとミキサトランジスタと前記バイアス電源とを集積回路内に構成し、前記集積回路内には前記スイッチトランジスタをオン又はオフ切り替えるための切替制御回路を設け、前記切替制御回路には選局用の周波数データを入力したことを特徴とする請求項4乃至7の何れかに記載の周波数変換器。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【図6】
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【図7】
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【図8】
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【公開番号】特開2006−319937(P2006−319937A)
【公開日】平成18年11月24日(2006.11.24)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2005−169799(P2005−169799)
【出願日】平成17年6月9日(2005.6.9)
【出願人】(000010098)アルプス電気株式会社 (4,263)
【Fターム(参考)】