説明

周波数温度係数調節式共振器

【課題】温度補償機能を備えた発振器を提供すること。
【解決手段】温度補償された一対の共振器(300,390)。温度補償された一対の共振器(300,390)は、第1の周波数(f01)で共振するように構成され、第1の周波数温度係数(TC1)を有する第1の共振器(111)と、第2の周波数(f02)で共振するように構成され、第2の周波数温度係数(TC2)を有する第2の共振器(121)とを含む。第2の周波数(f02)は第1の周波数(f01)よりも大きく、第2の周波数温度係数(TC2)は第1の周波数温度係数(TC1)よりも小さく、第1の共振器(111)と第2の共振器(121)は同じ基板(306)上に形成される。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
関連米国特許の参照
本願は次の米国特許に関連する。(1)1996年12月24日に発行され、アジレント・テクノロジーズ・インクに譲渡された「Tunable Thin Film Acoustic Resonators and Method for Making the Same」と題するRuby他による米国特許第5,587,620号。(2)1999年2月23日に発行され、アジレント・テクノロジーズ・インクに譲渡された「Method of Making Tunable Thin Film Acoustic Resonators」と題するRuby他による米国特許第5,873,153号。(3)2000年5月9日に発行され、アジレント・テクノロジーズ・インクに譲渡された「SBAR Structures and Method of Fabrication of SBAR. FBAR Film Processing Techniques for Manufacturing of SBAR/BAR Filters」と題するRuby他による米国特許第6,060,818号。これらの特許は、調節式の音響薄膜共振器を製造する基礎技術について記載しており、以下で説明する代表的な実施形態の構成要素を含む。したがって、上記の米国特許は、参照によりその全部が本明細書に援用される。
【0002】
本発明は、周波数温度係数調節式共振器に関する。
【背景技術】
【0003】
単純な腕時計からもっと複雑なサーバコンピュータまで、種々の現代の電子機器は、1以上のクロック、すなわち発振器信号を利用している。種々の用途における要件を満たすために、生成されるそれらの信号は正確で、且つ、安定したものでなければならない。また、生成される信号の動作周波数は、温度変化によって設計周波数から大きく外れてはならない。
【0004】
ほぼ全ての携帯電話、コンピュータ、電子レンジ、及び、種々の電気製品は、所定周波数の基準信号を生成するために、水晶発振器を使用している。この所定周波数は通常20MHzである。こうした発振器は水晶制御発振器と呼ばれる。それらの製品のゲートは、基準信号を使用して所定周波数で「クロッキング」すなわちスイッチングされる。「時間基準」はすべて、この水晶共振器発振器から生成される。携帯電話、ラップトップコンピュータ、及び、他の携帯機器において、水晶共振器発振器は、望ましい大きさよりも大きい。通常、発振器は、製品の動作範囲全体において約±2ppmの周波数変動を有する。このレベルの周波数制御を達成するために、水晶共振器は通常、密閉パッケージの中にパッケージングされ、その周囲はアーク溶接されていることが多い。そのため、パッケージは比較的高価である。一例は京セラTCXOパーツ番号KT21である。この製品は、3.2×2.5×1mmのサイズのセラミックパッケージを有し、−30℃〜85℃の間において±2ppmの精度を有し、2mAの電流が流れる。この水晶の共振周波数は20MHzであり、この製品を使用した発振器から得られる信号は、他の電力消費の多い電子機器によって何倍かに倍化しなければならない。また、その結果発生する高調波は一般に、基本周波数に対して約5dBだけしか抑制することができない。
【0005】
また、発振器は他のタイプの共振器を使用して構成することもでき、例えば、標準的なL−C共振器(インダクタ容量性)、音響薄膜共振器(FBAR)等を使用して構成することができる。こうした共振器は水晶共振器に比べて安価であるが、その周波数変動特性は一般に、上記の用途にとって許容されない。
【0006】
代表的実施形態として、温度補償された一対の共振器を開示する。温度補償された一対の共振器は、第1の共振器及び第2の共振器からなる。第1の共振器は、第1の周波数で共振し、第1の周波数温度係数を有するように構成される。第2の共振器は、第2の周波数で共振し、第2の周波数温度係数を有するように構成される。第2の周波数は第1の周波数よりも高く、第2の周波数温度係数は第1の周波数温度係数よりも小さく、第1の共振器と第2の共振器は同じ基板上に作成される。
【0007】
他の代表的実施形態として、基板上に第1の共振器及び第2の共振器を作成する方法を開示する。この方法は、第1の下側電極及び第2の下側電極を形成し、第1の下側圧電層及び第2の下側圧電層を形成し、間質層を形成し、第1の上側圧電層及び第2の上側圧電層を形成することからなる。第1の下側電極と第2の下側電極は部分的に基板の上に重なる。第1の下側圧電層の少なくとも一部は第1の下側電極の上に重なり、第2の下側圧電層の少なくとも一部は第2の下側電極の上に重なり、間質層の少なくとも一部は第1の下側圧電層の上に重なり、第1の上側圧電層の少なくとも一部は間質層の上に重なり、第2の上側圧電層の少なくとも一部は第2の下側圧電層の上に重なり、第1の上側電極は第1の上側圧電層の少なくとも一部の上に配置され、第2の上側電極の少なくとも一部は第2の上側圧電層の上に配置される。
【0008】
更に他の代表的実施形態として、基板上に第1の共振器及び第2の共振器を作成する方法を開示する。この方法は、基板の少なくとも一部の上に重なる第1の下側電極を形成し、基板の少なくとも一部の上に重なる第2の下側電極を形成し、第1の圧電層及び第2の圧電層を形成し、第1の上側圧電層及び第2の上側圧電層を形成し、質量負荷層を形成することからなる。第1の圧電層の少なくとも一部は第1の下側電極の上に重なり、第2の圧電層の少なくとも一部は第1の下側電極の上に重なり、第2の圧電層の少なくとも一部は第2の下側電極の上に重なり、第2の上側電極の少なくとも一部は第2の圧電層の上に重なり、質量負荷層の剛性の温度係数は第2の上側電極の剛性の温度係数とは異なる。第1の上側電極の少なくとも一部は第1の圧電層の上に重なり、質量負荷層の少なくとも一部は第1の上側電極の上に重なるように構成され、又は、質量負荷層の少なくとも一部は第1の圧電層の上に重なり、第1の上側電極の少なくとも一部は質量負荷層の上に重なるように構成される。
【0009】
更に他の代表的実施形態として、基板上に第1の共振器及び第2の共振器を作成する方法を開示する。この方法は、下側質量負荷層を形成し、第1の下側電極及び第2の下側電極を形成し、第1の圧電層及び第2の圧電層を形成し、第1の上側電極及び第2上側電極を形成することからなる。第2の下側電極の一部は基板の上に重なり、下側質量負荷層の剛性の温度係数は第2の下側電極の剛性の温度係数とは異なり、第2の圧電層の少なくとも一部は第2の下側電極の上に重なる。下側質量負荷層の少なくとも一部は基板の上に重なり、第1の下側電極の少なくとも一部は質量負荷層の上に重なり、第1の圧電層の少なくとも一部は第1の下側電極の上に重なるように構成され、又は、第1の下側電極の一部は基板の上に重なり、下側質量負荷層の少なくとも一部は第1の下側電極の上に重なり、第1の圧電層の少なくとも一部は下側質量負荷層の上に重なるように構成される。第1の上側電極は第1の圧電層の上に配置され、第2の上側電極の少なくとも一部は第2の圧電層の上に重なる。
【0010】
本明細書に記載する代表的な実施形態の他の態様及び利点については、添付の図面と合わせて下記の説明から明らかになるであろう。
【0011】
添付の図面は、種々の代表的実施形態のより完全な説明のために使用されるものであり、当業者はこれらの図面を使用して、それらの実施形態並びにその固有の利点を理解することができる。これらの図面において、同じ参照符号は対応する要素を示している。
【0012】
例示目的の図面に示すように、新規の発振器は、共振周波数及び周波数変動特性を適切に調節することにより、発振回路の周波数変動及び温度特性を非常に小さくすることができる。適当な一対の共振器は集積回路技術を使用して作成され、同程度の周波数変動特性を得るために従来使用されている水晶発振器に比べて、コスト及びサイズの面で利点を有する。従来は、水晶発振器を注意深く切断し、温度に対する周波数の変動が小さくなるように調整していた。
【0013】
代表的な実施形態では、温度に対する変動率が異なる2つの共振器を発振器回路に使用して、携帯電話、携帯コンピュータ、及び他の同等の装置の規格温度範囲全体にわたって、最終的に温度変化がゼロではないとしても、非常に温度変化が小さい「うなり」周波数を生成する。これらの共振器を音響薄膜共振器(FBAR)として形成し、他の集積回路と組み合わせることにより、約0.2ミリメートル(mm)厚の面積1×1mm未満のシリコンチップを得ることができる。また、出力信号は、水晶共振器に比べて非常に高い周波数にすることができるため、比較的自由なスプリアスモードにすることができる。その結果、高周波トーンを「クリーン」にするために消費される電力を低減することができる。
【0014】
下記の詳細な説明及び図面のうちの幾つかにおいて、同じ要素は同じ参照符号を使用して識別される。
【0015】
図1は、種々の代表的実施形態において説明されるような発振回路100を示すブロック図である。図1において、発振回路100は、第1の発振器110、第2の発振器120、ミキサ回路130、及び、フィルタ回路140を含む。第1の発振回路は、第1の共振器111及び第1の増幅器112を含む。第2の発振回路120は、第2の共振器121及び第2の増幅器122を含む。
【0016】
第1の増幅器112の出力は第1の共振器111を介して第1の増幅器112の入力にフィードバックされ、その結果、第1の発振器110において第1の周波数f01を有する第1の発振信号115が発生する。第1の周波数f01は第1の共振器111の共振周波数である。
【0017】
第2の増幅器122の出力は第2の共振器120を介して第2の増幅器122の入力にフィードバックされ、その結果、第2の発振器120において第2の周波数f02を有する第2の発振信号125が発生する。第2の周波数f02は第2の共振器121の共振周波数である。
【0018】
図1の代表的実施形態において、第2の周波数f02は第1の周波数f01よりも大きい。図1に示す第1及び第2の発振器110、120の詳細は、単に例示を目的としたものである。第1及び第2の共振器111、121を使用して、種々の発振回路を構成することが可能である。
【0019】
ミキサ回路130は、第1の発振器110から第1の周波数f01を有する第1の発振信号115を受信すると共に、第2の発振器120から第2の周波数f02を有する第2の発振信号125を受信する。第1の発振信号115と第2の発振信号125はミキサ回路130によって混合され、ミキサ信号135が生成される。ミキサ信号135は、第2の周波数f02から第1の周波数f01を減算したものに等しいうなり周波数fを有する信号成分136(図2Aを参照)、並びに、第1の周波数f01と第2の周波数f02の和に等しい合計周波数fを有する他の信号成分137(図2Aを参照)を含む。
【0020】
フィルタ140は、ミキサ回路130からミキサ信号135を受信し、ミキサ信号135のうちのうなり周波数fを有する信号成分136を通過させるとともに、ミキサ信号135のうちの合計周波数fを有する他の信号成分137を阻止し、その出力としてフィルタ信号145を生成する。本明細書において、フィルタ信号145は出力信号145とも呼ばれる。したがって、フィルタ信号145は、フィルタ140の伝達関数によって変形されたうなり周波数fを有する信号を主に含む。通常、合計周波数fを有するフィルタ信号145の成分はいずれも、フィルタ140の伝達関数によって大幅に減少される。
【0021】
図2Aは、ミキサ出力235と図1におけるミキサ信号135との関係をプロットしたグラフである。上記のように、ミキサ出力235は、うなり周波数fを有する信号成分136、及び、合計周波数fを有する他方の信号成分137を含む。信号成分136と他方の信号成分137はいずれも、図2Aに描かれている。信号成分136は、うなり周波数f=(f02−f01)の位置にプロットされ、他方の信号成分137は合計周波数f=(f02+f01)の位置にプロットされている。さらに、図2Aには、第1の周波数f01及び第2の周波数f02が、相対位置で描かれている。
【0022】
図2Bは、図1のフィルタ140に関する伝達関数250と周波数の関係をプロットしたグラフである。図2Bに示す代表的実施形態では、フィルタ140はローパスフィルタ140である。ただし、フィルタ140の伝達関数250が、ミキサ信号135のうちのうなり周波数fを有する信号成分136を通過させ、ミキサ信号135のうちの合計信号fを有する信号成分136のような他方の重要な成分を阻止するものでさえあれば、種々のフィルタ140構成を使用することが可能である。したがって、上述のように、フィルタ140の出力におけるフィルタ信号145は、フィルタ140の伝達関数250によって変形されたうなり周波数fを有する信号を主に含む。通常、合計周波数fを有するフィルタ信号145の成分はいずれも、フィルタ140の伝達関数250によって大幅に減少される。
【0023】
図2Cは、図1における第1及び第2の共振器111、121に関する周波数温度係数Tをプロットしたグラフである。基準周波数fにおける共振回路の周波数温度係数Tの値は、T=(1/f)(Δf/Δt)によって与えられる。ただし、Δfは温度変化Δtによってfに発生する周波数シフトである。周波数温度係数Tの値は通常、1℃当たり百万分の一単位(ppm/℃)で表現される。所与の発振器において周波数依存成分が他に存在しない場合、その発振器の温度係数の値は、その発振器が有する共振回路の温度係数の値に等しくなる。第1の共振回路111は第1の周波数温度係数TC1を有し、第2の共振回路121は第2の周波数温度係数TC2を有する。なお、第2の周波数温度係数TC2の値は、第1の周波数温度係数TC1の値よりも小さい。
【0024】
発振回路100のうなり周波数fは、第1の周波数f01と第1の周波数温度係数TC1を乗算したものから第2の周波数f02と第2の周波数温度係数TC2を乗算したものを減算したものに等しい回路周波数温度係数TCCを有する(すなわち、TCC=[f02×TC2]−[f01×TC1])。したがって、第1の周波数f01、第1の周波数温度係数TC1、第2の周波数f02、及び、第2の周波数温度係数TC2は、特定用途における必要性に合わせて選択することができる。これらのパラメータを注意深く選択すれば、水晶振動子によって得られるものに匹敵する、又はそれよりも良好な回路周波数温度係数TCCを得ることができる。実際、これらのパラメータを注意深く選択し、調節することで、回路周波数温度係数TCCをゼロにすることも可能である。
【0025】
図2Dは、音響薄膜共振器(FBAR)の等価回路260を示す図である。音響薄膜共振器は、その製造方法が、集積回路のものと互換性があり、他の方法に比べてコスト、信頼性、及び、サイズの点で比較的有利であることから、本明細書において、種々の代表的実施形態において使用される。図2Dは、音響薄膜共振器の変形Butterworth-Van Dykeモデルを示している。等価回路260から分かるように、音響薄膜共振器は2つの共振周波数を有している。第1の共振周波数は直列共振周波数fSERと呼ばれ、この共振周波数はインダクタLとキャパシタCの直列接続によって発生する。第2の共振周波数は並列共振周波数FPARと呼ばれ、この共振周波数は分路キャパシタCと、上記のインダクタLとキャパシタCの直列接続との並列結合によって発生する。並列共振周波数FPARは反共振周波数とも呼ばれる。抵抗器RSERIES及び分路抵抗器RSHUNTは、構造上理想的でない抵抗成分に相当する。フィルタ140を適切に選択すれば、最終的な出力信号145の周波数を決めるときに、並列共振周波数FPAR又は直列共振周波数fSERのいずれかを選択することができる。上記の点に関し、及び、所与の実施形態において、第1の周波数f01は、第1の共振器111の並列共振周波数fPARと直列共振周波数fSERのいずれかであり、第2の周波数f02は、第2の共振器121の並列共振周波数fPARと直列共振周波数fSERのいずれかである場合がある。当業者には分かるように、2つの音響薄膜共振器に対するミキサ回路130の出力は、図2Aに描かれている2つの周波数ではなく、8個の独立した周波数を有する信号を結合させたものである。それらの8つのい周波数は次のように表わされる。(1)fPAR−1±fPAR−2(2)fPAR−1±fSER−2(3)fSER−1±fPAR−2(4)fSER−1±fSER−2 したがって、任意の所与の用途において、フィルタ140は、不要な7つの周波数を必要なレベルまでフィルタリングすることになる。共振器はいずれも、並列共振周波数fPARが直列共振周波数fSERよりも小さいので、適切に設計されたローパスフィルタ140によって、周波数(fPAR−1−fPAR−2)だけを通過させることができる。
【0026】
図3Aは、種々の代表的実施形態において説明されるような共振器構造300を示す図である。図3Aにおいて、一対の共振器300は第1の共振器及び第2の共振器111、121を含み、それらが側面図として描かれている。これらは集積回路と同様のプロセスを使用して作成される。この例において、共振器111、121は音響薄膜共振器(FBAR)である。共振器111、121は基板305上に作成される。基板305は例えばシリコン305又は他の適当な材料から形成される。共振器111、121は、力学的な波を利用する音響共振器であるため、第1のキャビティ311及び第2のキャビティ312の上にそれぞれ形成される。キャビティは、共振器111、121の振動部を基板305から隔離し、通常ならば基板305に拡散されるであろう振動エネルギーを低減する。第1のキャビティ及び第2のキャビティ311、312は、基板305の上面に形成される。
【0027】
第1の共振器111は、第1のキャビティ311の上に橋渡しされるように形成される。第1の共振器111は、第1の下側電極321、第1の上側電極331、並びに、第1の下側電極321と第1の上側電極331の間に挟まれた第1の圧電構造341を含む。第1の圧電構造341は、第1の下側電極321の上に第1の下側圧電層351を含み、間質層361の上に第1の上側圧電層371を含む。第1の上側圧電層371の上には、第1の上側電極331がある。また、図3Aに示すように、第1の上側電極331の上には質量負荷層381がある。
【0028】
第2の共振器121は、第2のキャビティ312の上に橋渡しされるように形成される。第2の共振器121は、第2の下側電極322、第2の上側電極332、並びに、第2の下側電極322と第2の上側電極332の間に挟まれた第2の圧電構造342を含む。第2の圧電構造342は、第2の下側電極322の上に第2の下側圧電層352を含み、第2の下側圧電層352の上に第2の上側圧電層372を含む。第2の上側圧電層372の上には、第2の上側電極332がある。
【0029】
圧電層351、352、371、372は、窒化アルミニウム(AlN)、または、任意の適当な圧電材料を使用して形成される。窒化アルミニウムの場合、圧電層351、352、371、372は、適当な処理工程において蒸着によって形成することができる。これらの電極321、322、331、332は、例えば、モリブデン、又は、任意の他の適当な導体であってもよい。間質層361の剛性係数対温度は、理想的には、圧電層351、352、371、372よりも大きいことが望ましい。その場合、間質層361の剛性係数と温度の比を大きくするほど、第1の周波数温度係数TC1は第2の周波数温度係数TC2よりも大きくなる。モリブデンの剛性係数と温度の比は、窒化アルミニウムの剛性係数と温度の比よりも大きいので、モリブデンは間質層361に使用することができる。
【0030】
質量負荷層381により、並びに、間質層361の厚さ、及び、種々の圧電層351、352、371、372の相対的厚さを含む他の設計考慮事項から、第1の共振器111は、第2の共振器121の第2の共振周波数f02(すなわち、第2の周波数)よりも低い第1の共振周波数f01(すなわち、第1の周波数)を有するように作成される場合がある。一般に、質量負荷層381の重量が増すほど、共振器の共振周波数は低くなる。また、圧電層(複数の場合もあり)を厚くするほど、共振器の共振周波数は低くなる。
【0031】
一般に、質量負荷層381の重量を増やしても、周波数温度係数に目立った変化は生じない。なぜなら、質量負荷層381はほとんどの場合「おもり」として働き、温度変化があっても、質量負荷層はあまり変化しないからである。ただし、質量負荷をさらに増やせば、第1の共振周波数f01は低下する。この低下は、所与の用途において望ましい場合もあれば、望ましくない場合もある。質量負荷が大きくなるほど、うなり周波数fは高くなる。
【0032】
図3Bは、種々の代表的実施形態において説明されるような他の共振器構造390を示す図である。図3Bにおいて、一対の共振器390は、第1の共振器及び第2の共振器111、121を含み、それらが側面図として描かれている。これらの共振器は、図3Aと同様に、集積回路製造プロセスを使用して形成される。この例において、共振器111、121は音響薄膜共振器(FBAR)である。基板305の上には共振器111、121が形成される。基板305は、例えばシリコン305、又は、他の適当な材料から形成される。図3Bでは、図3Aとは反対に、共振器111、121が単一のキャビティ313の上に形成される。共振器111、121は、本明細書ではキャビティ313と呼ばれる場合がある。単一のキャビティ313は、基板305の上面306上に形成される。単一のキャビティ313は、基板305から共振器111、121の振動部を隔離し、図3Aに示されるように共振器111、121の振動部を基板305から隔離し、振動エネルギーが基板に拡散されることを防止する働きをする。しかしながら、図3Bの構造によれば、図3Aの構造において見られるものに比べて、2つの共振器111、122間の振動結合を増加させることができる。
【0033】
第1の共振器111は、単一のキャビティ313の上に形成される。第1の共振器111は、第1の下側電極321、第1の上側電極331、及び、第1の下側電極321と第1の上側電極331の間に挟まれた第1の圧電構造341を含む。第1の圧電構造341は、第1の下側電極321の上に第1の下側圧電層351を有し、第1の下側圧電層351の上に間質層361を有し、間質層361の上に第1の上側圧電層371を有する。第1の上側圧電層371の上には、第1の上側電極331がある。また、図3Bに示すように、第1の上側電極331の上には、質量負荷層381がある。
【0034】
また、単一のキャビティ313の上には、第2の共振器121も作成される。第2の共振器121は、第1の共振器111と共通の第1の下側電極321、第2の上側電極332、並びに、第1の下側電極321と第2の上側電極332の間に挟まれた第2の圧電構造342を含む。第2の圧電構造342は、第1の下側電極321の上に第2の下側圧電層352を有し、第2の下側圧電層352の上に第2の上側圧電層372を有する。構造的な目的から、図3Bは、下側を接続する圧電層352、及び、上側を接続する圧電層373を更に示している。
【0035】
図3Aに示すように、圧電層351、352、371、372は、窒化アルミニウム(AlN)、又は、任意の適当な圧電材料を使用して形成される。窒化アルミニウムの場合、圧電層351、352、371、372は、適当な処理工程において蒸着によって形成することができる。電極321、322、331、332は、例えば、モリブデン、又は、任意の他の適当な導体であってもよい。間質層361は、理想的には、圧電層351、352、371、372よりも大きな剛性係数と温度の比を有することが好ましい。その場合、間質層361の剛性係数と温度の比を大きくするほど、第2の周波数温度係数TC2に比べて第1の周波数温度係数TC1は大きくなる。モリブデンの剛性係数と温度の比は、窒化アルミニウムの剛性係数と温度の比よりも大きいので、モリブデンは間質層361に使用することができる。
【0036】
質量負荷層381により、並びに、間質層361の厚さ、及び、種々の圧電層351、352、371、372の相対的厚さを含む他の設計考慮事項から、第1の共振器111は、第2の共振器121の第2の共振周波数f02(すなわち、第2の周波数)よりも低い第1の共振周波数f01(すなわち、第1の周波数)を有するように作成することができる。
【0037】
図3Cは、種々の代表的実施形態において説明されるような更に他の共振器構造300を示す図である。図3Cの代替実施形態では、図3Aや図3Bの共振器構造300、390とは異なり、第1の共振器111の間質層361は省略されている。図3Cにおいて、一対の共振器300は、第1の共振器及び第2の共振器111、121を含み、それらが側面図で描かれている。それらの共振器は、集積回路と同様のプロセスを使用して製造される。この例において、共振器111、121は、音響薄膜共振器(FBAR)である。共振器111、121は基板305に形成される。基板305は、例えば、シリコン又は他の適当な材料からなる。共振器111、121は、力学的な波を利用する音響共振器であるため、第1のキャビティ311及び第2のキャビティ312の上にそれぞれ形成される。これらのキャビティは、共振器111、121の振動部を基板305から隔離し、通常ならば基板305に拡散されるであろう振動エネルギーを低減する。第1のキャビティ及び第2のキャビティ311、322は、基板305の上面306に形成される。
【0038】
第1の共振器111は、第1のキャビティ311の上に橋渡しされるように形成される。第1の共振器111は、第1の下側電極321、第1の圧電層351(第1の下側圧電層351)、第1の上側電極331、及び、質量負荷層381を含む。第1の圧電層351は第1の下側電極321の上にあり、第1の上側電極331は第1の圧電層351の上にあり、質量負荷層381は第1の上側電極331の上にある。
【0039】
第2の共振器121は、第2のキャビティ312の上に橋渡されるように形成される。第2の共振器121は、第2の下側電極322、第2の圧電層352(第2の下側圧電層352)、及び、第2の上側電極332を含む。第2の圧電層352は第2の下側電極322の上にあり、第2の上側電極332は第2の圧電層352の上にある。
【0040】
圧電層351、352は、窒化アルミニウム、又は、任意の適当な圧電材料から形成することができる。窒化アルミニウムの場合、圧電層351、352は、適当な処理工程において蒸着によって形成することができる。電極321、322、331、332は、例えば、モリブデン、又は、任意の他の適当な導体から形成することができる。
【0041】
図3Cの実施形態では、質量負荷層381は、温度による剛性の変化が、特に、第2の上側電極332よりも大きい材料であることが望ましい。質量負荷層381は、酸化物であってもよい。また、質量負荷層381は、PMMA(ポリメタクリル酸メチル)、PY(ポリイミド族の有機材料の1つ)、BCB(ベンゾクロロブタン)、又は他の適当な材料のような有機材料であってもよい。また、質量負荷層381は樹脂であってもよい。この樹脂は、低誘電率材料であってもよい。低誘電率材料は一般に、3.5以下の誘電定数を有する材料である。適当な低誘電率材料の一例は、ダウ・ケミカルのSiLK材料である。SiLKは、温度によって軟化する有機材料である。このように、質量負荷層381の剛性係数と温度の比を大きくすると、第1の周波数温度係数TC1は、第2の周波数温度係数TC2よりも大きくなる。質量負荷層381の上に、さらに保護層を設けてもよい。
【0042】
質量負荷層381によって、第1の共振器111は、第2の共振器121の第2の共振周波数f02(すなわち、第2の周波数)よりも低い第1の共振周波数f01(すなわち、第1の周波数)を有するように作成することができる。一般に、質量負荷層381の重量が増すほど、共振器の共振周波数は低くなる。また、圧電層(複数の場合もあり)が厚くなるほど、共振器の共振周波数は低くなる。
【0043】
質量負荷層381の材料が第1の上側電極及び第2の上側電極331、332とは異なるこの代表的実施形態の場合、温度変化によって質量負荷層381の剛性が変化するため、質量負荷層381の厚さ及び材料を変えると、周波数温度係数は大きく変わる可能性がある。質量負荷を大きくするほど、うなり周波数fは高くなる。
【0044】
また、代表的実施形態において、第1の共振器及び第2の共振器111、121は、図3Bのものと同様の単一のキャビティ313の上に形成してもよい。
【0045】
図3Dは、種々の代表的実施形態において説明されるような、更に他の共振器構造300を示す図である。図3Cの代替実施形態である図3Dでは、図3Aや図3Bの共振器構造300、390とは異なり、第1の共振器111の間質層361は省略され、一対の共振器300は、第1の共振器及び第2の共振器111、121からなり、それらが側面図として描かれている。これらの共振器は、集積回路と同様のプロセスを使用して製造される。この例において、共振器111、121は、音響薄膜共振器(FBAR)である。共振器111、121は基板305上に形成され、基板305は例えば、シリコン305又は他の適当な材料からなる。共振器111、121は、第1のキャビティ311及び第2のキャビティ312の上にそれぞれ形成される。なぜなら、それらは、力学的な波を利用する音響共振器であるからである。キャビティは、共振器111、121の振動部を基板305から隔離し、通常ならば基板305に放散されるであろう振動エネルギーを低減する。第1のキャビティ及び第2のキャビティ311、312は、基板305の上面306上に形成される。
【0046】
第1の共振器111は、第1のキャビティ311の上に橋渡しされるように形成される。第1の共振器111は、下側質量負荷層382、第1の下側電極321、第21の圧電層351(第1の下側圧電層351)、第1の上側電極331、及び、オプションの質量負荷層381を含む。第1の下側電極321は下側質量負荷層382の上にあり、第1の圧電層351は第1の下側電極321の上にあり、第1の上側電極331は第1の圧電層351の上にあり、オプションの質量負荷層381は第1の上側電極331の上にある。
【0047】
図3Dの実施形態における下側負荷層382は、特に第2の下側電極322に比べて、温度により大きな剛性変化を受ける材料であることが望ましい。また、下側質量負荷層382は、PMMA(ポリメタクリル酸メチル)、PY(ポリイミド族の有機材料の1つ)、BCB(ベンゾクロロブタン)、又は他の適当な材料のような有機材料であってもよい。また、質量負荷層382は樹脂であってもよい。この樹脂は、低誘電率材料であってもよい。低誘電率材料は一般に、3.5以下の誘電定数を有する材料である。適当な低誘電率材料の一例は、ダウ・ケミカルのSiLK材料である。SiLKは、温度によって軟化する有機材料である。このように、質量負荷層382の剛性係数と温度の比を大きくすると、第1の周波数温度係数TC1は第2の周波数温度係数TC2よりも大きくなる。
【0048】
第2の共振器121は、第2のキャビティ312の上に橋渡しされるように形成される。第2の共振器121は、第2の下側電極322、第2の圧電層352(第2の下側圧電層352)、及び、第2の上側電極332を含む。第2の圧電層352は第2の下側電極322の上にあり、第2の上側電極332は第2の圧電層352の上にある。
【0049】
圧電層351、352は、窒化アルミニウム、又は、任意の適当な圧電材料から形成することができる。窒化アルミニウムの場合、圧電層351、352は、適当な処理工程において蒸着によって形成することができる。電極321、322、331、332は、例えば、モリブデン、又は、任意の他の適当な導体であってもよい。質量負荷層381は、例えば、モリブデン、又は、任意の他の適当な材料であってもよい。
【0050】
下側質量負荷層382によって、第1の共振器111は、第2の共振器121の第2の共振周波数f02(すなわち、第2の周波数)よりも大きな第1の共振周波数f01(すなわち、第1の周波数)を有するように形成することができる。一般に、下側質量負荷層382及び質量負荷層381の重量が増すほど、共振器の共振周波数は低くなる。また、圧電層(複数の場合もあり)を厚くするほど、共振器の共振周波数は低くなる。
【0051】
下側質量負荷層382の材料が第2の下側電極322の材料とは異なるこの実施形態の場合、温度変化によって下側質量負荷層382の剛性が変化するため、下側質量負荷層382の厚さ及び材料を変えることで、周波数温度係数を大きく変えることができる。質量負荷を大きくするほど、うなり周波数fは高くなる。
【0052】
また、代表的実施形態において、第1の共振器及び第2の共振器111、121は、図3Bのものと同様の単一のキャビティ313の上に形成してもよい。
【0053】
図4は、図3A及び図3Bの共振器構造300、390を形成する方法400を示すフロー図である。図3Aの共振器構造300の場合、ブロック410において、基板305にキャビティ311、312をエッチングする。ただし、図3Bの他方の共振器構造390の場合、基板305にはキャビティ313を一個しかエッチングしない。次に、ブロック410はブロック420に制御を移す。
【0054】
図3Aの共振器構造300の場合、ブロック420では、キャビティ311、312に犠牲材料を充填する。図3Bの他方の共振器構造390の場合、単一のキャビティ313に犠牲材料を充填する。犠牲材料にはリン石英ガラス材料を使用することができ、犠牲材料は後で除去される。次に、ブロック420はブロック430に制御を移す。
【0055】
図3Aの共振器構造300の場合、ブロック430では、第1の下側電極及び第2の下側電極321、322を形成する。図3Bの他方の共振器構造390の場合、第1の下側電極321を形成する。図3Aの場合の第1の下側電極及び第2の下側電極321、322、又は、図3Bの場合の第1の下側電極321は、金属蒸着またはフォトリソグラフィのような既知の技術を使用して形成することができる。例えば、モリブデンの層をウェーハ上に蒸着した後、フォトレジストをウェーハ上にスピンコーティングし、フォトレジストを適当なパターンで露出させ、次いでフォトレジストを現像し、モリブデンをエッチングする場合がある。次に、ブロック430はブロック440に制御を移す。
【0056】
図3Aの共振器構造300の場合、ブロック440において、下側電極321、322の上に下側圧電層351、352(これらは、下側ウェーハ圧電層350と同時に蒸着され、本明細書では、パターニングされるまで、まとめて下側ウェーハ圧電層350と呼ばれる)を蒸着する。図3Bの他方の共振器構造390の場合、下側圧電層351、352は、第1の下側電極321の上に蒸着される。この場合も、フォトリソグラフィ工程を使用して、第1の下側圧電層及び第2の下側圧電層351、352を画定及び形成する。例えば、窒化アルミニウムの層をウェーハ上に蒸着した後、フォトレジストをウェーハ上にスピンコーティングし、適当なパターンでフォトレジストを露出させるようにフォトレジストをパターニングし、次いでフォトレジストを現像し、窒化アルミニウムをエッチングする場合がある。次に、ブロック440はブロック450に制御を移す。
【0057】
ブロック450では、第1の共振器111の第1の下側圧電層351の上に間質層361を追加する。間質層361は、金属蒸着やフォトリソグラフィのような既知の技術を使用して形成することができる。例えば、モリブデンの層をウェーハ上に蒸着した後、フォトレジストを基板305上にスピンコーティングする場合がある。フォトレジストは適当なパターンで露出されるようにパターニングされ、次いでフォトレジストは現像され、モリブデンがエッチングされる。次に、ブロック450はブロック460に制御を移す。
【0058】
ブロック460では、第1の共振器111の間質層361、及び、第2の共振器121の第2の下側圧電層352上に、上側圧電層371、372(これらは、上側ウェーハ圧電層370と同時に蒸着され、パターニングされるまでは上側ウェーハ圧電層370と呼ばれる)を蒸着する。この場合も、第1の上側圧電層及び第2の上側圧電層371、372は、既知のフォトリソグラフィ工程を使用して画定及び形成される。例えば、窒化アルミニウムの層をウェーハ上に蒸着した後、フォトレジストをウェーハ上にスピンコーティングし、フォトレジストを適当なパターンで露出されるようにパターニングし、次いでフォトレジストを現像し、窒化アルミニウムをエッチングする場合がある。次に、ブロック460はブロック470に制御を移す。
【0059】
ブロック470では、第1の上側電極及び第2の上側電極331、332を形成する。第1の上側電極及び第2の上側電極331、332は、金属蒸着やフォトリソグラフィのような既知の技術を使用して形成することができる。例えば、上側圧電層371、372の上にモリブデンの層を蒸着した後、蒸着されたモリブデンの上に、フォトレジストをスピンコーティングする。フォトレジストは、適当なパターンで露出されるようにパターニングされる。次に、フォトレジストを現像し、モリブデンをエッチングして、第1の上側電極及び第2の上側電極331、332を形成する。次に、ブロック470はブロック480に制御を移す。
【0060】
ブロック480では、第1の共振器111の第1の上側電極331の上に、質量負荷層381を追加する。質量負荷層381は、金属蒸着やフォトリソグラフィのような既知の技術を使用して形成することができる。例えば、モリブデン又は他の材料の層をウェーハ上に蒸着した後、フォトレジストをウェーハ上にスピンコーティングする。フォトレジストは適当なパターンで露出されるようにパターニングされ、次いでフォトレジストは現像され、モリブデンがエッチングされ、第1の上側電極331の上に質量負荷層381が残される。次に、ブロック480はブロック485に制御を移す。
【0061】
ブロック485では、第1の上側電極331の厚さの一部、及び、第2の上側電極332の厚さの一部を除去するか、又は、第2の上側電極332の厚さの一部、及び、質量負荷層381の厚さの一部を除去する。ブロック485の適当な動作は、ブロック480よりも前に行われる。次に、ブロック485はブロック490に制御を移す。
【0062】
ブロック490では、第2の圧電層352の厚さをそのまま維持しつつ、第1の圧電層351の厚さの一部を除去し、第1の圧電層351の厚さをそのまま維持しつつ、第2の圧電層352の厚さの一部を除去し、第2の上側電極の厚さをそのまま維持しつつ、第1の上側電極331の厚さの一部を除去し、第1の上側電極331の厚さをそのまま維持しつつ、第2の上側電極332の厚さの一部を除去し、第2の上側電極332の厚さをそのまま維持しつつ、質量負荷層381の厚さの一部を除去し、又は、質量負荷層381の厚さをそのまま維持しつつ、第2の上側電極332の厚さの一部を除去する。ブロック490の適当な動作は、ブロック470よりも前に行われるか、又は、ブロック480よりも前に行われる。次に、ブロック490はブロック495に制御を移す。
【0063】
図3Aの共振器構造300の場合、ブロック495では、キャビティ311、312に先に設けられた犠牲材料を除去する。図3Bの他方の共振器構造390の場合は、キャビティ313に先に設けられた犠牲材料を除去する。犠牲材料がガラスである場合、適宜、フッ化水素酸を使用して、キャビティ311、312又はキャビティ313から犠牲材料をエッチングすることができる。次に、ブロック495でこのプロセスは終了する。
【0064】
例えば、第1の発振器110は、第1の共振器111を使用して、2.3GHzの第1の周波数f01を有する第1の発振信号115を生成し、第2の発振器120は、第2の共振器121を使用して、2.0GHzの第2の周波数f02を有する第2の発振信号125を生成する。うなり周波数fは、300MHzになるであろう。
【0065】
当業者には分かるように、他の代表的実施形態では、上に記載したプロセスに対して種々の変更を施し、今説明したものと同様の構造を得ることも可能である。具体的には、上記のプロセスは、図3Aの第1の共振器111だけを基板305上に形成するように、変更を加えることができる。その場合、第1の周波数f01と温度係数Tは、上に記載した教示に従って変更することができる。間質層361の剛性係数と温度の比が、第1の下側圧電層351及び第1の上側圧電層371のものよりも小さい場合、第1の周波数温度係数TC1は、間質層361が存在しない場合よりも小さくなるであろう。間質層361のパラメータを調節するか否かに関わらず、第1の周波数温度係数TC1は調節することができる。また、イオン・ミリング工程に関係するフォトリソグラフィを更に含めることにより、第1の周波数及び第2の周波数f01、f02の両方又は片方を変更することもできる。また、幾つかの特定の工程を省略することにより、例えば、(1)ブロック450(間質層の追加)及び(2)ブロック460(上側圧電層の追加)における幾つかの工程を省略することにより、図3Cの代表的実施形態を構成することも可能である。
【0066】
図5Aは、図3A〜図3Bの共振器構造300、390に関する回路周波数温度係数TCCと上側共振器層395から除去される厚さの間の関係をプロットしたグラフである。本明細書では、質量負荷層381と第2の上側電極322は、まとめて上側共振器層395と呼ばれる。ただし、上側共振器層395は、図面には具体的に示されていない。図5Bは、図3Aの共振器構造300、及び、図3Bの他方の共振器構造390に関するうなり周波数fと上側共振器層395から除去された厚さの間の関係をプロットしたグラフである。図5A〜図5Bにおいて、上側共振器層395の材料は、全面除去プロセスを使用して除去される。この全面除去プロセスは、ウェーハ全体にわたって質量負荷層381及び第2の上側電極332から等量を除去するアイアン・ミルであってもよい。全面アイアン・ミルは、第1の共振器及び第2の共振器111、121の第1の共振周波数及び第2の共振周波数f01、f02を調節するだけでなく、第1の共振器及び第2の共振器111、121の第1の周波数温度係数及び第2の周波数温度係数TC1、TC2も調節する。したがって、全面アイアン・ミルによれば、発振回路100の最終的なうなり周波数fと、うなり周波数fの最終的な温度変動(回路周波数温度係数TCC)との両方が調節される。したがって、全面アイアン・ミルは、発振器回路100のうなり周波数fに対しても、うなり周波数fの最終的な温度変動(回路周波数温度係数TCC)のいずれに対しても使用することができる。ただし、両方に対して使用することはできない。また、全面アイアン・ミルは、質量負荷層381を追加する前に、第1の上側電極及び第2の上側電極331、332に対して実施することもできる。
【0067】
図6Aは、図3A〜図3Bの共振器構造300、390に関する回路周波数温度係数TCCと質量負荷層381から除去される厚さとの間の関係をプロットしたグラフである。図6Bは、図3A〜図3Bの共振器構造300、390に関するうなり周波数fと質量負荷層381から除去される厚さとの間の関係をプロットしたグラフである。図6A〜図6Bにおいて、厚さ除去プロセスは、質量負荷層381から材料を除去する差分アイアン・ミルプロセスと呼ばれるが、このプロセスは、第2の上側電極332から材料を除去するのにも使用される場合がある。したがって、差分アイアン・ミルによれば、第1の共振器111又は第2の共振器121の第1の共振周波数f01又は第2の共振周波数f02を調節できるだけでなく、第1の共振器111又は第2の共振器121の第1の周波数温度係数TC1又は第2の周波数温度係数TC2も調節することができる。したがって、差分アイアン・ミルによれば、発振回路100の最終的なうなり周波数fと、うなり周波数fの最終的な温度変動(回路周波数温度係数TCC)が両方とも調節される。したがって、差分アイアン・ミルは、発振回路100のうなり周波数fに対しても、うなり周波数fBの最終的な温度変動(回路周波数温度係数TCC)に対しても使用することができるが、両方に対して使用することはできない。また、差分アイアン・ミルプロセスを使用すれば、第2の圧電層352の厚さをそのまま維持しつつ、第1の圧電層351の厚さの一部を除去し、第1の圧電層351の厚さをそのまま維持しつつ、第2の圧電層352の厚さの一部を除去し、第2の上側電極332の厚さをそのまま維持しつつ、第1の上側電極331の厚さの一部を除去し、第1の上側電極331の厚さをそのまま維持しつつ、第2の上側電極332の厚さの一部を除去し、又は、質量負荷層381の厚さをそのまま維持しつつ、第2の上側電極332の厚さの一部を除去することができる。
【0068】
図6A〜図6Bから、全面アイアン・ミルプロセスの対象とする前又は後に、最終的なうなり周波数f、又は、最終的な回路周波数温度係数TCCのどちらかを対象として差分アイアン・ミルを実施することが可能であることが分かる。したがって、これら2つのプロセス(全面アイアン・ミルと差分アイアン・ミル)を組み合わせることにより、所望のうなり周波数f、及び、回路周波数温度係数TCC(すなわち、うなり周波数fの周波数温度係数)を対象とすることが可能である。
【0069】
代表的な例として、第1の圧電構造341の中心部に500オングストロームのモリブデンを使用した場合、うなり周波数fを165MHzにすることができ、回路周波数温度係数TCCを約0ppm/℃にすることができる。共振器構造300の代表的値は次のとおりである。(1)第1の下側電極321、第2の下側電極322、第1の上側電極332、及び、第2の上側電極332はそれぞれ、1500オングストロームのモリブデン、(2)第1の下側圧電層351、第2の下側圧電層352、第1の上側圧電層371、及び、第2の上側圧電層372はそれぞれ、1.1ミクロンの窒化アルミニウム。(3)間質層361及び質量負荷層381はそれぞれ、1000オングストロームのモリブデンである。
【0070】
図7は、図3Cの共振器構造300を形成するための方法700を示すフロー図である。適当な変更を施すと、このプロセスは、図3Bに示すような単一のキャビティ313しか備えていないものであれば、図3Cのような構造の作成にも使用することが可能である。ブロック710では、キャビティ311、312、又は、キャビティ313を基板305にエッチングする。次に、ブロック710はブロック720に制御を移す。
【0071】
ブロック720では、キャビティ311、312、又は、キャビティ313に犠牲材料を充填する。この犠牲材料には、リン石英ガラス材料を使用することができ、犠牲材料は後で除去される。次に、ブロック720はブロック730に制御を移す。
【0072】
ブロック730では、第1の下側電極及び第2の下側電極321、322を形成する。あるいは、結合された第1の下側電極321を形成する。第1の下側電極及び第2の下側電極321、322、又は、第1の下側電極321は、金属蒸着やフォトリソグラフィのような既知の技術を使用して形成することができる。例えば、モリブデンの層をウェーハ上に蒸着した後、フォトレジストをウェーハ上にスピンコーティングし、フォトレジストを適当なパターンで露出されるようにフォトレジストをパターニングし、次いでフォトレジストを現像し、モリブデンをエッチングする場合がある。次に、ブロック730はブロック740に制御を移す。
【0073】
ブロック740では、第1の電極及び第2の電極321、322の上、又は、結合された電極321の上に、第1の圧電層及び第2の圧電層351、352(これらは、下側ウェーハ圧電層350と同時に蒸着され、本明細書ではまとめて下側ウェーハ圧電層350と呼ばれる)を蒸着する。この場合も、第1の圧電層及び第2の圧電層351、352は、既知のフォトリソグラフィ工程を使用して画定及び形成される。例えば、窒化アルミニウムの層をウェーハ上に蒸着した後、フォトレジストをウェーハ上にスピンコーティングし、フォトレジストを適当なパターンで露出されるようにパターニングし、次いでフォトレジストを現像し、窒化アルミニウムをエッチングする場合がある。次に、ブロック740はブロック770に制御を移す。
【0074】
ブロック770では、第1の上側電極及び第2の上側電極331、332を形成する。第1の上側電極及び第2の上側電極331、332は、金属蒸着やフォトリソグラフィのような既知の技術を使用して形成することができる。例えば、第1の圧電層及び第2の圧電層351、352の上にモリブデンの層を蒸着した後、蒸着されたモリブデンの上にフォトレジストをスピンコーティングする場合がある。フォトレジストは適当なパターンで露出されるようにパターニングされ、次いでフォトレジストが現像され、モリブデンがエッチングされ、第1の上側電極及び第2の上側電極331、332が形成される。次に、ブロック770はブロック780に制御を移す。
【0075】
ブロック780では、第1の上側電極及び第1の共振器111の上に、質量負荷層381を追加する。質量負荷層381は、蒸着やフォトリソグラフィのような既知の技術を使用して形成することができる。この実施形態における質量負荷層381の剛性の温度係数は、第2の上側電極332のものとは異なる。先に述べたように、質量負荷層381には種々の選択肢がある。質量負荷層381が有機材料又は樹脂である場合、有機材料又は樹脂をウェーハ上に蒸着した後、フォトレジストをウェーハ上にスピンコーティングする場合がある。フォトレジストは、適当なパターンで露出されるようにパターニングされ、次いでフォトレジストは現像され、第1の上側電極331の上に質量負荷層381を残すようにして材料がエッチングされる。次に、ブロック780はブロック785に制御を移す。
【0076】
ブロック785では、第1の上側電極331の厚さの一部、及び、第2の上側電極332の厚さの一部を除去するか、又は、第2の上側電極332の厚さの一部、及び、質量負荷層381の厚さの一部を除去する。ブロック785の適当な動作は、ブロック780よりも前に実施される。次に、ブロック785はブロック790に制御を移す。
【0077】
ブロック790では、第2の圧電層352の厚さをそのまま維持しつつ、第1の圧電層351の厚さの一部を除去し、第1の圧電層351の厚さをそのまま維持しつつ、第2の圧電層352の厚さの一部を除去し、第2の上側電極332の厚さをそのまま維持しつつ、第1の上側電極331の厚さの一部を除去し、第1の上側電極331の厚さをそのまま維持しつつ、第2の上側電極の厚さの一部を除去し、第2の上側電極332の厚さをそのまま維持しつつ質量負荷層381の厚さの一部を除去し、又は、質量負荷層381の厚さをそのまま維持しつつ、第2の上側電極332の厚さの一部を除去する。ブロック790の適当な動作は、ブロック770の動作よりも前、ブロック780の動作よりも前、又は、ブロック785の動作よりも前に行われる。次に、ブロック790はブロック795に制御を移す。
【0078】
ブロック795では、キャビティ311、312、又は、単一のキャビティ313の中に先に配置した犠牲材料を除去する。犠牲材料がガラスである場合、適宜、フッ化水素酸を使用して、キャビティ311、312、又は、単一のキャビティ313から犠牲材料をエッチングすることができる。次に、ブロック795でこのプロセスは終了する。
【0079】
上記の方法の代替実施形態として、第1の上側電極及び第2の上側電極331、332を追加するステップの前に、第1の共振器111の第1の圧電層351の上に、質量負荷層381を追加してもよい。換言すれば、ブロック770とブロック780は逆の順番であってもよい。
【0080】
図8は、図3Dの共振器構造300を作成する方法800を示すフロー図である。適当な変更を施すことにより、このプロセスは、図3Bに示すような単一のキャビティ313を有するものであれば、図3Dに示すような構造の作成にも使用することができる。ブロック810では、基板305にキャビティ311、312、又は、単一のキャビティ313をエッチングする。次に、ブロック810はブロック820に制御を移す。
【0081】
ブロック820では、キャビティ311、312、又は、単一のキャビティ313に、犠牲材料を充填する。この犠牲材料には、リン石英ガラス材料を使用することができ、犠牲材料は後で除去される。次に、ブロック820はブロック825に制御を移す。
【0082】
ブロック825では、下側質量負荷層382を形成する。下側質量負荷層382は、蒸着やフォトリソグラフィのような既知の技術を使用して形成することができる。この実施形態における下側質量負荷層382の剛性の温度係数は、第2の下側電極322や、単一のキャビティ313の場合の結合された下側電極321のものとは異なる。上で述べたとおり、下側質量負荷層382には種々の選択肢がある。下側負荷層382が有機材料又は樹脂である場合、有機材料又は樹脂をウェーハ上に蒸着した後、フォトレジストをウェーハ上にスピンコーティングする場合がある。フォトレジストは適当なパターンで露出されるようにパターニングされ、次いでフォトレジストは現像され、第1の上側電極331の上に下側質量負荷層382を残すようにして材料がエッチングされる。次に、ブロック825はブロック830に制御を移す。
【0083】
ブロック830では、第1の下側電極及び第2の下側電極321、322を形成する。あるいは、結合された第1の下側電極321を形成する。第1の下側電極及び第2の下側電極321、322、又は、結合された第1の下側電極321は、金属蒸着やフォトリソグラフィのような既知の技術を使用して形成することができる。例えば、モリブデンの層をウェーハ上に蒸着した後、フォトレジストをウェーハ上にスピンコーティングし、適当なパターンで露出されるようにフォトレジストをパターニングし、次いでフォトレジストを現像し、モリブデンをエッチングする場合がある。次に、ブロック830はブロック840に制御を移す。
【0084】
ブロック840では、第1の電極及び第2の電極321、322の上、又は、結合された下側電極321の上に、第1の圧電層及び第2の圧電層351、352(これらは、下側ウェーハ圧電層350と同時に蒸着され、本明細書では、まとめて下側圧電層350と呼ばれる)を蒸着する。この場合も、第1の圧電層及び第2の圧電層351、352は、既知のフォトリソグラフィ工程を使用して画定され、形成される。例えば、窒化アルミニウムの層をウェーハ上に蒸着した後、ウエーハ上にフォトレジストをスピンコーティングする場合がある。フォトレジストは適当なパターンで露出されるようにパターニングされ、次いで、フォトレジストが現像され、窒化アルミニウムがエッチングされる場合がある。次に、ブロック840はブロック870に制御を移す。
【0085】
ブロック870では、第1の上側電極及び第2の上側電極331、332を形成する。第1の上側電極及び第2の上側電極331、332は、金属蒸着やフォトリソグラフィのような既知の技術を使用して形成することができる。例えば、第1の圧電層及び第2の圧電層351、352の上にモリブデンの層を蒸着した後、蒸着されたモリブデンの上にフォトレジストをスピンコーティングする場合がある。フォトレジストは適当なパターンで露出されるようにパターニングされ、次いでフォトレジストが現像され、モリブデンをエッチングして、第1の上側電極及び第2の上側電極331、332が形成される。次に、ブロック870はブロック880に制御を移す。
【0086】
ブロック880では、第1の共振器111の第1の上側電極331の上に質量負荷層381を追加する。質量負荷層381は、蒸着やフォトリソグラフィのような既知の技術を使用して形成することができる。例えば、ウェーハ上にモリブデンを蒸着した後、ウェーハ上にフォトレジストをスピンコーティングする場合がある。フォトレジストは適当なパターンで露出されるようにパターニングされ、次いでフォトレジストが現像され、第1の上側電極331の上に質量負荷層381を残すようにして材料をエッチングする場合がある。次に、ブロック880はブロック885に制御を移す。
【0087】
ブロック885では、第1の上側電極331の厚さの一部、及び、第2の上側電極332の厚さの一部を除去するか、又は、第2の上側電極332の厚さの一部、及び、質量負荷層381の厚さの一部を除去する。ブロック885の適当な動作は、ブロック880の動作よりも前に行われる。次に、ブロック885はブロック890に制御を移す。
【0088】
ブロック890では、第2の圧電層352の厚さをそのまま維持しつつ、第1の圧電層351の厚さの一部を除去し、第1の圧電層351の厚さをそのまま維持しつつ、第2の圧電層352の厚さの一部を除去し、第2の上側電極332の厚さをそのまま維持しつつ、第1の上側電極331の厚さの一部を除去し、第1の上側電極331の厚さをそのまま維持しつつ、第2の上側電極332の厚さの一部を除去し、第2の上側電極332の厚さをそのまま維持しつつ、質量負荷層381の厚さの一部を除去し、又は、質量負荷層381の厚さをそのまま維持しつつ、第2の上側電極332の厚さの一部を除去する。ブロック890の適当な動作は、ブロック870の動作よりも前、ブロック880の動作よりも前、又は、ブロック885の動作よりも前に行われる。次に、ブロック890はブロック895に制御を移す。
【0089】
ブロック895では、キャビティ311、312、又は、単一のキャビティ313の中に先に配置された犠牲材料を除去する。犠牲材料がガラスである場合、適宜、フッ化水素酸を使用して、キャビティ311、312又は単一のキャビティ313から犠牲材料をエッチングすることができる。次に、ブロック895でこのプロセスは終了する。
【0090】
上記の方法の代替実施形態として、第1の上側電極及び第2の上側電極331、332を追加するステップの後に、第1の共振器111の第1の圧電層351の下に、下側質量負荷層382を追加してもよい。換言すれば、ブロック825とブロック830は順番が逆であってもよい。
【0091】
図9は、図1の発振回路100の部分を作成する方法900を示すフロー図である。ブロック910では、第1の周波数f01を有する第1の発振信号115を生成するように構成され、第1の周波数温度係数TC1を有するように構成された第1の発振器110を形成する。次に、ブロック910はブロック920に制御を移す。
【0092】
ブロック920では、第2の周波数f02を有する第2の発振信号125を生成するように構成され、第2の周波数温度係数TC2を有するように構成された第2の発振器120を形成する。ただし、第2の周波数f02は第1の周波数f02よりも大きく、第2の周波数温度係数TC2は第1の周波数温度係数TC1よりも小さく、第2周波数f02に第2の温度係数TC2を乗算したものと、第1の周波数f01に第1の周波数温度係数TC1を乗算したものとの差は、ゼロに等しい。次に、ブロック920はブロック930に制御を移す。
【0093】
ブロック930では、第1の発振器110の出力と第2の発振器120の出力を互いに結合する。そして、ブロック930でこのプロセスは終了する。
【0094】
第1の下側圧電層351及び第2の下側圧電層352の圧電材料としては、窒化アルミニウム以外にも、種々の材料を使用することが可能である。また、下側電極321、322、間質層361、及び、上側電極331、332に、モリブデン以外の材料を使用することも可能である。更に、種々の他の構造を使用することも可能である。
【0095】
代表的な実施形態において、共振周波数f01、f02を有し、周波数変動特性TC1、TC2を有する一対の共振器111、121を利用した発振器回路110、120は、発振回路100の周波数変動対温度特性(T)が非常に小さくなるように、適宜調節することができる。適当な一対の共振器111、121は集積回路技術を使用して製造することができ、その結果、同等の周波数変動特性を得るために従来使用されている水晶振動子に比べて、コスト及びサイズの面で利点が得られる。また、各共振器は、目標の共振周波数及び周波数温度係数を有するように構成することができる。
【0096】
代表的実施形態において、温度によって異なる変動率を有する2つの共振器111、121を発振器回路110、120に使用することによって、携帯電話、ラップトップコンピュータ、及び、他の携帯機器の標準的な温度範囲全体にわたって、温度変動TCCがゼロではないにしても非常に小さいうなり周波数fを生成することができる。共振器を音響薄膜共振器(FBAR)として形成し、他の集積回路に結合することにより、厚さ約0.2ミリメートル(mm)、面積1×1mm未満のシリコンチップを形成することができる。さらに、スプリアスモードのほとんどなく、水晶振動子に比べて遥かに高い周波数の出力信号を得ることができる。その結果、必要とされる「きれいな」高周波トーンを作成する際の消費電力が少なくて済む。
【0097】
本明細書において詳細に説明されている代表的実施形態は、例示のためのものであり、制限のためのものではない。当業者には分かるとおり、添付の特許請求の範囲に規定される本発明の範囲内で等価な実施形態を得るために、記載した実施形態の形態及び細部に種々の変更を施すことが可能である。
【0098】
本発明の種々の例示的実施形態を以下に列挙する。
1.温度補償された一対の共振器であって、
第1の周波数で共振し、第1の周波数温度係数を有するように構成された第1の共振器と、
第2の周波数で共振し、第2の周波数温度係数を有するように構成された第2の共振器とからなり、前記第2の周波数は前記第1の周波数よりも高く、前記第2の周波数温度係数は前記第1の周波数温度係数よりも小さく、前記第1の共振器と前記第2の共振器とが同じ基板上に形成される、温度補償された一対の共振器。
2.前記第1の共振器は、
前記基板の一部の上に重なる第1の下側電極と、
前記第1の下側電極の少なくとも一部の上に重なる第1の圧電構造と、
第1の上側電極と
を含み、前記第1の上側電極は前記圧電構造の少なくとも一部の上に配置され、
前記第2の共振器は、
前記基板の一部の上に重なる第2の下側電極と、
前記第2の下側電極の少なくとも一部の上に重なる第2の圧電構造と、
前記第2の圧電構造の少なくとも一部の上に重なる第2の上側電極と
を含む、1に記載の温度補償された一対の共振器。
3.前記第1の上側電極の少なくとも一部の上に重なる質量負荷層を更に含み、前記第1の上側電極は、前記第1の圧電構造の少なくとも一部の上に重なるように構成される、2に記載の温度補償された一対の共振器。
4.前記第1の圧電構造の少なくとも一部の上に重なる質量負荷層を更に含み、前記第1の上側電極は、前記質量負荷層の少なくとも一部の上に重なるように構成される、2に記載の温度補償された一対の共振器。
5.前記第1の圧電構造は、
前記第1の下側電極の少なくとも一部の上に重なる第1の下側圧電層と、
前記第1の下側圧電層の少なくとも一部の上に重なる間質層と、
前記間質層の少なくとも一部の上に重なる第1の上側圧電層と
を含み、
前記第2の圧電構造は、
前記第2の下側電極の少なくとも一部の上に重なる第2の下側圧電層と、
前記第2の下側圧電層の少なくとも一部の上に重なる第2の上側圧電層と
を含む、2に記載の温度補償された一対の共振器。
6.前記第1の上側電極の少なくとも一部の上に重なる質量負荷層を更に含み、前記第1の上側電極は、前記第1の圧電構造の少なくとも一部の上に重なるように構成される、5に記載の温度補償された一対の共振器。
7.前記第1の圧電構造の少なくとも一部の上に重なる質量負荷層を更に含み、前記第1の上側電極は、前記質量負荷層の少なくとも一部の上に重なるように構成される、5に記載の温度補償された一対の共振器。
8.前記第1の共振器は、
前記基板の一部の上に重なる第1の下側電極と、
前記第1の下側電極の少なくとも一部の上に重なる第1の圧電層と、
第1の上側電極と、
質量負荷層と
を含み、前記第1の上側電極は、前記第1の圧電層の少なくとも一部の上に重なり、前記質量負荷層は、前記質量負荷層は、前記第1の上側電極の少なくとも一部の上に重なり、又は、前記質量負荷層は、前記第1の圧電層の少なくとも一部の上に重なり、前記第1の上側電極は、前記質量負荷層の少なくとも一部の上に重なるように構成され、
前記第2の共振器は、
前記基板の一部の上に重なる第2の下側電極と、
前記第2の下側電極の少なくとも一部の上に重なる第2の圧電層と、
前記第2の圧電層の少なくとも一部の上に重なる第2の上側電極と
を含み、前記質量負荷層の剛性の温度係数は、前記第2の上側電極の剛性の温度係数とは異なるように構成される、1に記載の温度補償された一対の共振器。
9.前記質量負荷層は有機材料からなる、8に記載の温度補償された一対の共振器。
10.前記有機材料は、PMMA(ポリメタクリル酸メチル)、PY(ポリイミド)、及び、BCB(ベンゾクロロブタン)からなる群の中から選択される、9に記載の温度補償された一対の共振器。
11.前記質量負荷層は樹脂からなる、8に記載の温度補償された一対の共振器。
12.前記樹脂は低誘電率材料である、11に記載の温度補償された一対の共振器。
13.前記質量負荷層は酸化物からなる、8に記載の温度補償された一対の共振器。
14.前記第1の共振器は、
下側質量負荷層と、
第1の下側電極と、
第1の圧電層と
を含み、前記下側質量負荷層は、前記基板の一部の上に重なり、前記第1の下側電極は、前記第1の下側質量負荷層の少なくとも一部の上に重なり、前記第1の圧電層は、前記第1の下側電極の少なくとも一部の上に重なるように構成され、又は、前記第1の下側電極は、前記基板の一部の上に重なり、前記下側質量負荷層は、前記第1の下側電極の少なくとも一部の上に重なり、前記第1の圧電層は、前記下側質量負荷層の少なくとも一部の上に重なるように構成され、
前記第2の共振器は、
前記基板の一部の上に重なる第2の下側電極と、
前記第2の下側電極の少なくとも一部の上に重なる第2の圧電層と、
前記第2の圧電層の少なくとも一部の上に重なる第2の上側電極と
を含み、前記下側質量負荷層の剛性の温度係数は、前記第2の下側電極の剛性の温度係数とは異なるように構成される、1に記載の温度補償された一対の共振器。
15.前記第1の上側電極の少なくとも一部の上に重なる質量負荷層を更に含み、前記第1の上側電極は、前記第1の圧電構造の少なくとも一部の上に重なるように構成される、14に記載の温度補償された一対の共振器。
16.前記第1の圧電構造の少なくとも一部の上に重なる質量負荷層を更に含み、前記第1の上側電極は、前記質量負荷層の少なくとも一部の上に重なるように構成される14に記載の温度補償された一対の共振器。
17.前記質量負荷層は有機材料からなる、14に記載の温度補償された一対の共振器。
18.前記有機材料は、PMMA(ポリメタクリル酸メチル)、PY(ポリイミド)、及び、BCB(ベンゾクロロブタン)からなる群の中から選択される、17に記載の温度補償された一対の共振器。
18.前記受信は低誘電率材料からなる、19に記載の温度補償された一対の共振器。
19.前記質量負荷層は酸化物からなる、14に記載の温度補償された一対の共振器。
20.基板上に第1の共振器及び第2の共振器を作成する方法であって、
前記基板の一部の上に重なる第1の下側電極及び第2の下側電極を作成するステップと、
前記第1の下側電極の少なくとも一部の上に重なる第1の圧電層、及び、前記第2の下側電極の少なくとも一部の上に重なる第2の下側圧電層を作成するステップと、
前記第1の下側圧電層の少なくとも一部の上に重なる間質層を作成するステップと、
前記間質層の少なくとも一部の上に重なる第1の上側圧電層、及び、前記第2の下側圧電層の少なくとも一部の上に重なる第2の上側圧電層を作成するステップと、
前記第1の上側圧電層の少なくとも一部の上に位置する第1の上側電極、及び、前記第2の上側圧電層の少なくとも一部の上に重なる第2の上側電極を作成するステップと
からなる方法。
23.前記第1の上側電極の少なくとも一部の上に重なる質量負荷層を作成するステップを更に含み、前記第1の上側電極は、前記第1の圧電構造の少なくとも一部の上に重なるように構成される、22に記載の方法。
24.前記第1の上側電極及び前記第2の上側電極を作成するステップより前に、前記第1の圧電構造の少なくとも一部の上に重なる質量負荷層を作成するステップを更に含み、前記第1の上側電極は、前記質量負荷層の少なくとも一部の上に重なるように構成される22に記載の方法。
25.前記第1の上側電極の厚さの一部、及び、前記第2の上側電極の厚さの一部を除去するステップ、又は、前記第2の上側電極の厚さの一部、及び、前記質量負荷層の厚さの一部を除去するステップを更に含む、22に記載の方法。
26.前記第2の上側圧電層の厚さをそのまま維持しつつ、前記第1の上側圧電層の厚さの一部を除去するステップ、若しくは、前記第1の上側圧電層の厚さをそのまま維持しつつ、前記第2の上側圧電層の厚さの一部を除去するステップ、若しくは、前記第2の上側電極の厚さをそのまま維持しつつ、前記第1の上側電極の厚さの一部を除去するステップ、若しくは、前記第1の上側電極の厚さをそのまま維持しつつ、前記第2の上側電極の厚さの一部を除去するステップ、若しくは、前記第2の上側電極の厚さをそのまま維持しつつ、前記質量負荷層の厚さの一部を除去するステップ、若しくは、前記質量負荷層の厚さをそのまま維持しつつ、前記第2の上側電極の厚さの一部を除去するステップを更に含む22に記載の方法。
27.前記第1の下側電極及び前記第2の下側電極を作成する前に、前記基板の上面に第1のキャビティ及び第2のキャビティを作成するステップと、
前記第1のキャビティ及び前記第2のキャビティに犠牲材料を充填するステップであって、前記第1の下側電極は、前記第1のキャビティの一部、及び、前記第1のキャビティの周りにある前記基板の一部の上に重なり、前記第2の下側電極は、前記第2のキャビティの一部、及び、前記第2のキャビティの周りにある前記基板の上に重なるように、犠牲材料を充填するステップと、
前記犠牲材料を除去するステップと
を更に含む、22に記載の方法。
28.前記第1の下側電極及び前記第2の下側電極を作成する前に、前記基板の上面にキャビティを作成するステップと、
前記キャビティに犠牲材料を充填するステップであって、前記第1の下側電極及び前記第2の下側電極が、前記キャビティの一部、及び、前記キャビティの周りにある前記基板の一部の上に重なる一体型の下側電極を形成するように、犠牲材料を充填するステップと、
前記犠牲材料を除去するステップと
を更に含む、22に記載の方法。
29.基板上に第1の共振器及び第2の共振器を作成する方法であって、
前記基板の少なくとも一部の上に重なる第1の下側電極、及び、前記基板の少なくとも一部の上に重なる第2の下側電極を作成するステップと、
前記第1の下側電極の少なくとも一部の上に重なる第1の圧電層、及び、前記第2の下側電極の少なくとも一部の上に重なる第2の圧電層を作成するステップと、
第1の上側電極及び第2の上側電極を作成するステップであって、前記第2の上側電極は、前記第2の圧電層の少なくとも一部の上に重なるように構成される、第1の上側電極及び第2の上側電極を作成するステップと、
質量負荷層を作成するステップであって、前記質量負荷層の剛性の温度係数が、前記第2の上側電極の剛性の温度係数とは異なり、前記第1の上側電極が、前記第1の圧電層の少なくとも一部の上に重なり、又は、前記質量負荷層が、前記前記第1の上側電極の少なくとも一部の上に重なり、又は、前記質量負荷層が、前記第1の圧電層の少なくとも一部の上に重なり、前記第1の上側電極が、前記質量負荷層の一部の上に重なるように構成される、質量負荷層を作成するステップと
からなる方法。
30.前記質量負荷層は有機材料からなる、29に記載の方法。
31.前記有機材料は、PMMA(ポリメタクリル酸メチル)、PY(ポリイミド)、及び、BCB(ベンゾクロロブタン)からなる群の中から選択される、30に記載の方法。
32.前記質量負荷層は樹脂からなる、29に記載の方法。
33.前記樹脂は低誘電率材料からなる、32に記載の方法。
34.前記質量負荷層は酸化物からなる、29に記載の方法。
35.前記第1の上側電極の厚さの一部、及び、前記第2の上側電極の厚さの一部を除去するステップ、又は、前記第2の上側電極の厚さの一部、及び、前記質量負荷層の厚さの一部を除去するステップを更に含む、29に記載の方法。
36.前記第2の圧電層の厚さをそのまま維持しつつ、前記第1の圧電層の厚さの一部を除去するステップ、若しくは、前記第1の圧電層の厚さをそのまま維持しつつ、前記第2の圧電層の厚さの一部を除去するステップ、若しくは、前記第2の上側電極の厚さをそのまま維持しつつ、前記第1の上側電極の厚さの一部を除去するステップ、若しくは、前記第1の上側電極の厚さのをそのまま維持しつつ、前記第2の上側電極の厚さの一部を除去するステップ、若しくは、前記第2の上側電極の厚さをそのまま維持しつつ、前記質量負荷層の厚さの一部を除去するステップ、若しくは、前記質量負荷層の厚さをそのまま維持しつつ、前記第2の上側電極の厚さの一部を除去するステップを更に含む、29に記載の方法。
37.前記第1の下側電極及び前記第2の下側電極を作成する前に、前記基板の上面に第1のキャビティ及び第2のキャビティを作成するステップと、
前記第1のキャビティ及び前記第2のキャビティに犠牲材料を充填するステップであって、前記第1の下側電極が、前記第1のキャビティの一部、及び、前記第1のキャビティの周りにある前記基板の一部の上に重なり、前記第2の下側電極が、前記第2のキャビティの一部、及び、前記第2のキャビティの周りにある前記基板の一部の上に重なるように構成される、犠牲材料を充填するステップと、
前記犠牲材料を除去するステップと
を更に含む、29に記載の方法。
38.前記第1の下側電極及び前記第2の下側電極を作成する前に、前記基板の上面にキャビティを作成するステップと、
前記キャビティに犠牲材料を充填するステップであって、前記第1の下側電極及び前記第2の下側電極が、前記キャビティの少なくとも一部、及び、前記キャビティの周りにある前記基板の部分の上に重なる一体型下側電極を形成するように構成される、犠牲材料を充填するステップと、
前記犠牲材料を除去するステップと
を更に含む29に記載の方法。
39.基板上に第1の共振器及び第2の共振器を作成する方法であって、
下側質量負荷層を作成するステップと、
第1の下側電極及び第2の下側電極を作成するステップであって、前記第2の下側電極は、前記基板の少なくとも一部の上に重なるように構成され、前記下側質量負荷層の剛性の温度係数は、第2の下側電極の剛性の温度係数とは異なるように構成される、第1の下側電極及び第2の下側電極を作成するステップと、
第1の圧電層及び第2の圧電層を作成するステップであって、前記第2の圧電層は、前記第2の下側電極の少なくとも一部の上に重なり、前記下側質量負荷は、前記基板の少なくとも一部の上に重なり、前記第1の下側電極は、前記下側質量負荷層の少なくとも一部の上に重なり、前記第1の圧電層は、前記第1の下側電極の少なくとも一部の上に重なるように構成され、又は、前記第1の下側電極は、前記基板の少なくとも一部の上に重なり、前記下側質量負荷層は、前記下側電極の少なくとも一部の上に重なり、前記第1の圧電層は、前記下側質量負荷層の少なくとも一部の上に重なるように構成される、第1の圧電層及び第2の圧電層を作成するステップと、
第1の上側電極及び第2の上側電極を作成するステップであって、前記第1の上側電極は、前記第1の圧電層の上に配置され、前記第2の上側電極は、前記第2の圧電層の少なくとも一部の上に重なるように構成される、第1の上側電極及び第2の上側電極を作成するステップと、
からなる方法。
40.前記第1の上側電極の少なくとも一部の上に重なる質量負荷層を作成するステップであって、前記第1の上側電極は、前記第1の圧電構造の少なくとも一部の上に重なるように構成される、質量負荷層を作成するステップを更に含む、39に記載の方法。
41.前記第1の上側電極及び前記第2の上側電極を作成するステップの前に、前記第1の圧電構造の少なくとも一部の上に重なる質量負荷層を作成するステップを更に含み、前記第1の上側電極は、前記質量負荷層の少なくとも一部の上に重なるように構成される、39に記載の方法。
42.前記質量負荷層は有機材料からなる、39に記載の方法。
43.前記有機材料は、PMMA(ポリメタクリル酸メチル)、PY(ポリイミド)、及び、BCB(ベンゾクロロブタン)からなる群の中から選択される、42に記載の方法。
44.前記質量負荷層は樹脂からなる、39に記載の方法。
45.前記樹脂は低誘電率材料からなる、44に記載の方法。
46.前記質量負荷層は酸化物からなる、39に記載の方法。
47.前記第1の上側電極の厚さの一部、及び、前記第2の上側電極の厚さの一部を除去するステップ、又は、前記第2の上側電極の厚さの一部、及び、前記質量負荷層の厚さの一部を除去するステップを更に含む、39に記載の方法。
48.前記第2の圧電層の厚さをそのまま維持しつつ、前記第1の圧電層の厚さの一部を除去するステップ、若しくは、前記第1の圧電層の厚さをそのまま維持しつつ、前記第2の圧電層の厚さの一部を除去するステップ、若しくは、前記第2の上側電極の厚さをそのまま維持しつつ、前記第1の上側電極の厚さの一部を除去するステップ、若しくは、前記第1の上側電極の厚さをそのまま維持しつつ、前記第2の上側電極の厚さの一部を除去するステップ、若しくは、前記第2の上側電極の厚さをそのまま維持しつつ、前記質量負荷層の厚さの一部を除去するステップ、若しくは、前記質量負荷層の厚さをそのまま維持しつつ、前記第2の上側電極の厚さの一部を除去するステップを更に含む、39に記載の方法。
49.前記下側質量負荷層及び前記第2の下側電極を作成する前に、前記基板の上面に第1のキャビティ及び第2のキャビティを作成するステップと、
前記第1のキャビティ及び前記第2のキャビティに犠牲材料を充填するステップであって、前記質量負荷層は、前記第1のキャビティの一部、及び、前記第1のキャビティの周りにある前記基板の一部の上に重なり、前記第2の下側電極は、前記第2のキャビティの一部、及び、前記第2のキャビティの周りにある前記基板の一部の上に重なるように構成される、犠牲材料を充填するステップと、
前記犠牲材料を除去するステップと
を更に含む、39に記載の方法。
50.前記下側質量負荷層及び前記第2の下側電極を作成する前に、前記基板の上面にキャビティを作成するステップと、
前記キャビティに犠牲材料を充填するステップであって、前記第1の下側電極及び前記第2の下側電極が、前記キャビティの少なくとも一部、前記キャビティの周りにある前記基板の部分、及び、前記下側質量負荷層の一部の上に重なる一体型下側電極を形成するように構成される、犠牲材料を充填するステップと、
前記犠牲材料を除去するステップと
からなる、39に記載の方法。
【図面の簡単な説明】
【0099】
【図1】種々の代表的実施形態において説明されるような発振回路を示すブロック図である。
【図2A】図1のミキサ信号の種々の成分について、ミキサ出力と周波数の関係をプロットしたグラフである。
【図2B】図1のフィルタに関する伝達関数と周波数の関係をプロットしたグラフである。
【図2C】図1の第1及び第2の共振回路に関する周波数温度係数をプロットしたグラフである。
【図2D】音響薄膜共振器(FBAR)の等価回路を示す図である。
【図3A】種々の代表的実施形態において説明されるような共振器構造を示す図である。
【図3B】種々の代表的実施形態において説明されるような他の共振器構造を示す図である。
【図3C】種々の代表的実施形態において説明されるような更に他の共振器構造を示す図である。
【図3D】種々の代表的実施形態において説明されるような更に他の共振器構造を示す図である。
【図4】図3A及び図3Bの共振器構造を製造する方法を示すフロー図である。
【図5A】図3Aの共振器構造について、回路周波数温度係数と、上側ウェーハ圧電層から除去される厚さとの関係をプロットしたグラフである。
【図5B】図3Aの共振器構造について、うなり周波数と、上側ウェーハ圧電層から除去される厚さとの関係をプロットしたグラフである。
【図6A】図3Aの共振器構造について、回路周波数温度係数と、第1の共振器から除去される質量負荷層との関係をプロットしたグラフである。
【図6B】図3Aの共振器構造について、うなり周波数と、第1の共振器から除去される質量負荷層との関係をプロットしたグラフである。
【図7】図3Cの共振器構造を製造する方法を示すフロー図である。
【図8】図3Dの共振器構造を製造する方法を示すフロー図である。
【図9】図1の発振回路の部分を製造する方法を示すフロー図である。

【特許請求の範囲】
【請求項1】
温度補償された一対の共振器(300、390)であって、
第1の周波数(f01)で共振し、第1の周波数温度係数(TC1)を有するように構成された第1の共振器(111)と、
第2の周波数(f02)で共振し、第2の周波数温度係数(TC2)を有するように構成された第2の共振器(121)と
からなり、前記第2の周波数(f02)は前記第1の周波数(f01)よりも大きく、前記第2の周波数温度係数(TC2)は前記第1の周波数温度係数(TC1)よりも小さく、前記第1の共振器(111)と前記第2の共振器(121)が共通の基板(305)上に形成される、温度補償された一対の共振器(300、390)。
【請求項2】
前記第1の共振器(111)は、
前記基板(305)の一部の上に重なる第1の下側電極(321)と、
前記第1の下側電極(321)の少なくとも一部の上に重なる第1の圧電構造(341)と、
前記第1の圧電構造(341)の少なくとも一部の上に配置された第1の上側電極(331)と
を含み、
前記第2の共振器(121)は、
前記基板(305)の一部の上に重なる第2の下側電極(322)と、
前記第2の下側電極(322)の少なくとも一部の上に重なる第2の圧電構造(342)と、
前記第2の圧電構造(342)の少なくとも一部の上に重なる第2の上側電極(332)と
を含む、請求項1に記載の温度補償された一対の共振器(300、390)。
【請求項3】
前記第1の圧電構造(341)は、
前記第1の下側電極(321)の少なくとも一部の上に重なる第1の下側圧電層(351)と、
前記第1の下側圧電層(351)の少なくとも一部の上に重なる間質層(361)と、
前記間質層(361)の少なくとも一部の上に重なる第1の上側圧電層(371)と
を含み、
前記第2の圧電構造(342)は、
前記第2の下側電極(322)の少なくとも一部の上に重なる第2の圧電層(352)と、
前記第2の下側圧電層(352)の少なくとも一部の上に重なる第2の上側圧電層(372)と
を含む、請求項2に記載の温度補償された一対の共振器。
【請求項4】
前記第1の共振器(111)は、
前記基板(305)の一部の上に重なる第1の下側電極(321)と、
前記第1の下側電極(321)の少なくとも一部の上に重なる第1の圧電層(351)と、
第1の上側電極(331)と、
質量負荷層(381)と
を含み、前記第1の上側電極(331)は、前記第1の圧電層(351)の少なくとも一部の上に重なり、前記質量負荷層(381)は、前記第1の上側電極(331)の少なくとも一部の上に重なるように構成され、又は、前記質量負荷層(381)は、前記第1の圧電層(351)の少なくとも一部の上に重なり、前記第1の上側電極(331)は、前記質量負荷層(381)の少なくとも一部の上に重なるように構成され、
前記第2の共振器(121)は、
前記基板(305)の一部の上に重なる第2の下側電極(322)と、
前記第2の下側電極(322)の少なくとも一部の上に重なる第2の圧電層(352)と、
前記第2の圧電層(352)の少なくとも一部の上に重なる第2の上側電極(332)とを含み、
前記質量負荷層(381)の剛性の温度係数は、前記第2の上側電極(332)の剛性の温度係数とは異なるように構成される、請求項1に記載の温度補償された一対の共振器(300、390)。
【請求項5】
前記質量負荷層(381)は有機材料からなる、請求項4に記載の温度補償された一対の共振器(300、390)。
【請求項6】
前記有機材料は、PMMA(ポリメタクリル酸メチル)、PY(ポリイミド)、及び、BCB(ベンゾクロロブタン)からなる群の中から選択される、請求項5に記載の温度補償された一対の共振器(300、390)。
【請求項7】
前記質量負荷層(381)は樹脂からなる、請求項4に記載の温度補償された一対の共振器(300、390)。
【請求項8】
前記樹脂は低誘電率材料からなる、請求項7に記載の温度補償された一対の共振器(300、390)。
【請求項9】
前記質量負荷層(381)は酸化物からなる、請求項4に記載の温度補償された一対の共振器(300、390)。
【請求項10】
前記第1の共振器(111)は、
下側質量負荷層(382)と、
第1の下側電極(321)と、
第1の圧電層(351)と
を含み、前記下側質量負荷層(382)は、前記基板の一部の上に重なり、前記第1の下側電極(321)は、前記下側質量負荷層(382)の少なくとも一部の上に重なり、前記第1の圧電層(351)は、前記第1の下側電極(321)の少なくとも一部の上に重なるように構成され、又は、前記第1の下側電極(321)は、前記基板(305)の一部の上に重なり、前記下側質量負荷層(382)は、前記第1の下側電極(321)の少なくとも一部の上に重なり、前記第1の圧電層(351)は、前記下側質量負荷層(382)の少なくとも一部の上に重なるように構成され、
前記第1の圧電層(351)の少なくとも一部の上に、第1の上側電極(331)が配置され、
前記第2の共振器(121)は、
前記基板(305)の少なくとも一部の上に重なる第2の下側電極(322)と、
前記第2の下側電極(322)の少なくとも一部の上に重なる第2の圧電層(352)と、
前記第2の圧電層(352)の少なくとも一部の上に重なる第2の上側電極(332)とを含み、
前記質量負荷層(382)の剛性の温度係数は、前記第2の下側電極(322)の剛性の温度係数とは異なるように構成される、請求項1に記載の温度補償された一対の共振器(300、390)。
【請求項11】
前記質量負荷層(381)は有機材料からなる、請求項10に記載の温度補償された一対の共振器(300、390)。
【請求項12】
前記有機材料は、PMMA(ポリメタクリル酸メチル)、PY(ポリイミド)、及び、BCB(ベンゾクロロブタン)からなる群の中から選択される、請求項11に記載の温度補償された一対の共振器(300、390)。
【請求項13】
前記質量負荷層(381)は樹脂からなる、請求項10に記載の温度補償された一対の共振器(300、390)。
【請求項14】
前記樹脂は低誘電率材料からなる、請求項13に記載の温度補償された一対の共振器(300、390)。
【請求項15】
前記質量負荷層(381)は酸化物からなる、請求項10に記載の温度補償された一対の共振器(300、390)。


【図1】
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【図2A】
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【図2B】
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【図2C】
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【図2D】
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【図3A】
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【図3B】
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【図3C】
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【図3D】
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【図4】
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【図5A】
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【図5B】
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【図6A】
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【図6B】
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【図7】
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【図8】
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【図9】
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【公開番号】特開2007−82218(P2007−82218A)
【公開日】平成19年3月29日(2007.3.29)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2006−245359(P2006−245359)
【出願日】平成18年9月11日(2006.9.11)
【出願人】(506198551)アバゴ・テクノロジーズ・ワイヤレス・アイピー(シンガポール)プライベート・リミテッド (22)
【Fターム(参考)】