説明

噴射装置における障害の検出

【課題】エンジン始動時の噴射装置における短絡障害を検出する障害検出方法を提供する。
【解決手段】噴射装置は1つまたは複数の圧電式燃料噴射器12a、12bを備え、これらの噴射器は駆動回路20内で接続される。本発明の一態様では、駆動回路内のバイアス点PBにおける電位VBが求められ、予測電圧VPBと比較される。バイアス点における電位が、予測電圧の所定許容電圧VTOLの範囲外である場合、短絡障害信号が生成される。本発明の別の態様では、第1の充電パルスが噴射器に印加されて噴射器が充電される。第1の充電パルスの後で、放電スイッチQ2を閉じることによって遅延期間Δt中に放電電流経路38が提供される。不良噴射器は、遅延期間Δt中に放電電流経路を介して放電することになる。遅延期間の後で、第2の充電パルスが噴射器に印加される。第2の充電パルス中に電流ISが感知され、第2の充電パルス中の電流が所定の閾電流よりも大きい場合、短絡警告信号が生成される。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、燃料噴射装置における障害を検出する方法に関し、特に、エンジン始動時の燃料噴射装置における短絡を検出する方法に関する。
【背景技術】
【0002】
自動車のエンジンは一般に、エンジンの個々の気筒または吸気マニホールドに燃料(例えば、ガソリンまたはディーゼル燃料)を噴射する燃料噴射器を備える。エンジン用燃料噴射器は、燃料供給系によって供給される高圧燃料が入っている燃料レールに接続される。ディーゼルエンジンでは、従来型燃料噴射器は一般にニードル弁を採用している。このニードル弁は、燃料レールから計量され、対応するエンジンの気筒または吸気マニホールド内に噴射される流体燃料の量を制御するために開閉動作する。
【0003】
燃料を正確に計量する燃料噴射器の1つのタイプは、圧電式燃料噴射器である。圧電式燃料噴射器は、機械的に直列に配置された圧電素子積層体からなる圧電アクチュエータを採用しており、それによって噴射ニードル弁を開閉してエンジンに噴射される燃料を計量する。圧電式燃料噴射器は、自動車用エンジンでの使用がよく知られている。
【0004】
圧電式燃料噴射器による燃料の計量は一般に、圧電アクチュエータに印加される電圧を制御して、圧電素子の伸縮量を変化させることによって実現される。この電圧は、圧電積層体の正端子および負端子を介してアクチュエータに印加される。圧電素子の伸縮量に従ってニードル弁の移動距離が変化し、そのため、燃料噴射器を通過する燃料の量が変化する。圧電式燃料噴射器なら少量の燃料を正確に計量することができる。
【0005】
一般に、燃料噴射器は、1つまたは複数の噴射器の群単位でグループ分けされる。欧州特許第1400676号に記載されているように、各噴射器群はそれ自体の駆動回路を有し、この駆動回路が噴射器の動作を制御する。この駆動回路は、電力源によって生成される電圧を昇圧させる、すなわち12ボルトからそれよりも高い電圧まで昇圧させるトランスなどの電源と、電荷ひいてはエネルギーを蓄える蓄積コンデンサとを備える。この高電圧は、噴射のたびに圧電式燃料噴射器を充電し、放電させるための電力を供給するのに用いられる蓄積コンデンサの両端に印加される。国際公開第2005/028836A1号に記載されているように、トランスなどの専用電源が不要な駆動回路も開発されている。
【0006】
こうした駆動回路を使用して、蓄積コンデンサひいては圧電式燃料噴射器の両端に印加される電圧を動的に制御することができる。これは、噴射器群に交互に接続される2つの蓄積コンデンサを使用することによって実現される。これら蓄積コンデンサの一方は、充電電流が噴射器群を流れてある噴射器を充電する充電段階中に噴射器群に接続され、それによって、「充電−噴射」型式燃料噴射器における噴射を開始するか、あるいは、「放電−噴射」型燃料噴射器における噴射を停止する。他方の蓄積コンデンサは、放電段階中に噴射器群に接続されて噴射器を放電させ、それによって、充電−噴射型燃料噴射器における噴射を停止するか、あるいは、放電−噴射型燃料噴射器における噴射を開始する。「噴射器を充電する」および「噴射器を放電させる」という表現は便宜上用いられるものであり、それぞれ燃料噴射器の圧電アクチュエータの充電および放電のプロセスを指す。
【0007】
充電段階の終わりであり、その後の放電段階の前の回生段階中に回生スイッチを使用して蓄積コンデンサを補充する。
いかなる回路でもそうであるが、駆動回路にも障害が発生することがある。ディーゼルエンジン燃料噴射システムなど、安全性にとって重要なシステムでは、駆動回路における障害は、噴射システムの故障をもたらすことがあり、その結果、エンジンの致命的な故障が生じる恐れがある。このような障害には、燃料噴射器の圧電アクチュエータにおける短絡障害や開路障害が含まれる。生じ得る短絡障害には、主に以下の3つのタイプがある。
i)圧電アクチュエータの端子間の短絡。「積層体端子」短絡とも称する。
ii)圧電アクチュエータの正端子から接地電位への短絡。正端子は、「ハイ」側端子とも称し、このタイプの短絡は一般に、「ハイ側から接地への」短絡と称する。
iii)圧電アクチュエータの負端子から接地電位への短絡。負端子は、「ロー」側端子とも称し、このタイプの短絡は一般に、「ロー側から接地への」短絡と称する。
【0008】
圧電アクチュエータにおける短絡障害および開路障害を検出する診断システムが、本出願人による同時係属の欧州特許出願第06251881.6号、第06253619.8号、および第06256140.2号に開示されている。これら特許文献の内容を参照により本明細書に組み込む。
【特許文献1】欧州特許第1400676号
【特許文献2】国際公開第2005/028836A1号
【特許文献3】欧州特許出願第06251881.6号
【特許文献4】欧州特許出願第06253619.8号
【特許文献5】欧州特許出願第06256140.2号
【特許文献6】欧州特許出願第06254039.8号
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0009】
しかし、噴射器が充電される前であり、噴射が行われる前のエンジン始動時の、すなわちキーオン時の上記の様々なタイプの短絡障害を検出することができる堅固な診断システムが依然として求められている。
【課題を解決するための手段】
【0010】
本発明の第1態様によれば、エンジン始動時の噴射装置における障害を検出する障害検出方法が提供される。この噴射装置は少なくとも1つの圧電式燃料噴射器を備え、この方法は、
(a)エンジン始動時に噴射器を充電する前に、噴射装置と既知の電位の間のバイアス点におけるバイアス電圧を求めるステップと、
(b)バイアス電圧と予測電圧とを比較するステップと、
(c)バイアス電圧が予測電圧の所定許容電圧範囲外である場合、障害信号を生成するステップとを含む。
【0011】
この障害検出方法は、ハイ側から接地への短絡を検出するのに特に適している。バイアス電圧が予測バイアス電圧にほぼ等しい場合、この噴射器または各噴射器は「良好」であり、すなわち故障していないことを示す。そうではなくて、噴射器の1つまたは複数にハイ側から接地への短絡が生じている場合、バイアス電圧は予測バイアス電圧よりも小さくなる。短絡の抵抗値はバイアス電圧が予測電圧からずれる量に影響を及ぼし、そのずれは、短絡の抵抗が最小のときに最大になる。許容電圧は、抵抗値が所定の値よりも小さい短絡しか障害信号を発生させないように設定することができる。
【0012】
本方法は、ハイ側から接地への短絡障害の中でも抵抗値の範囲が広い短絡障害を検出するのに適している。その範囲には、ミリオーム(mΩ)程度という極めて低い抵抗値から、数百キロオーム(kΩ)程度の高い抵抗値まで含まれる。
【0013】
噴射装置は、噴射器群を形成する複数の燃料噴射器を含み得る。噴射器または各噴射器は、噴射器または各噴射器の充電および放電を行う充電回路および放電回路を含み得る駆動回路に接続される。噴射器群は、これら充電回路および放電回路に選択的に接続可能とし得る。
【0014】
この短絡検出方法は、特定の電圧にバイアスされる点を有する任意の回路で使用することができる。したがって、この方法は、放電−噴射型または充電−噴射型の噴射器用の駆動回路で使用するのに適している。好ましくは、噴射器または各噴射器は放電−噴射型のものである。
【0015】
充電回路は高電圧レールを備え、バイアス電圧は、高電圧レールに高電圧が生成される前、かつ、噴射器群が充電回路に接続される前のエンジン始動時に求められる。高電圧レールに高電圧が生成される前は、高電圧レールの電位が既知であり、そのため、予測電圧を計算することができる。
【0016】
予測電圧は、噴射器群の噴射器がいずれも正常に機能している場合、すなわち短絡していない場合に、高電圧レールに高電圧が生成される前のエンジン始動時にバイアス点において予想される電位である。予測電圧は、噴射器の圧電積層体にかかる電圧の影響を受けない。このことは、エンジン始動時には一般にこの電圧が既知でないので有利である。
【0017】
抵抗性バイアス回路網を使用してバイアス点における電位を測定することができる。この抵抗性バイアス回路網は、バイアス点と接地電位の間に接続された、抵抗値が既知の1つまたは複数の抵抗器を含み得る。例えば、高抵抗の単一抵抗器を、バイアス点と接地電位の間に接続することができる。あるいは、合成抵抗値が大きい1対の抵抗器を直列に、バイアス点と接地電位の間に接続することができる。この1対の抵抗器の両端間の電位差は、この1対の抵抗器のうち一方の抵抗器の両端間の電位差の測定値から推定することができる。この1対の抵抗器のそれぞれの抵抗値は、先に述べた単一抵抗器の抵抗値よりも小さいので、電圧測定回路系で使用するコンポーネントの仕様値をより小さいものにすることができ、そのため、関連するコストを低減し得る。
【0018】
抵抗性バイアス回路網は、バイアス点と既知の電位の間に接続された、抵抗値が既知の1つまたは複数の抵抗器を備えてもよい。この既知の電位は、車両のバッテリーなどのバッテリーから提供することができ、それを適切な電位、例えば約55Vに昇圧することができる。抵抗性バイアス回路網の抵抗器の値により、短絡の検出可能な最大抵抗値を決めることができる。抵抗性バイアス回路網で使用する抵抗器の抵抗値を大きくすれば、抵抗値がより大きな短絡を検出することができる。抵抗性バイアス回路網が約100kΩ程度の抵抗器を備える場合、約100kΩ程度の短絡が検出可能である。
【0019】
駆動回路には充電スイッチを備えることができる。この充電スイッチは、それが閉じているときに、噴射器群を充電回路に接続するように動作可能なものである。好ましくは、バイアス電圧は、噴射器群が充電回路から切り離された状態で、すなわち、充電スイッチが開いた状態で測定する。
【0020】
駆動回路には放電スイッチを備えることができる。この放電スイッチは、それが閉じているときに、噴射器群を放電回路に接続するように動作可能なものである。好ましくは、バイアス電圧は、噴射器群が放電回路から切り離された状態で、すなわち、放電スイッチが開いた状態で測定する。
【0021】
噴射器または各噴射器は、放電回路に含められるように個々に選択可能とし得る。噴射器選択スイッチを噴射器または各噴射器と直列に設けることができる。この噴射器選択スイッチは、それが閉じているときに、関連する噴射器を選択して放電回路に含めるように動作可能なものである。好ましくは、バイアス電圧は、噴射器または各噴射器の選択が解除されて放電回路に含まれない状態で、すなわち、噴射器選択スイッチまたは各噴射器選択スイッチが開いた状態で測定する。
【0022】
深刻な短絡障害、例えば、抵抗値が比較的小さな短絡は、噴射器群が充電回路に接続されているときに噴射器の充電を妨げることがある。軽微な短絡障害、例えば、抵抗値が比較的大きな短絡は、噴射器の充電を妨げないにしても、燃料の噴射量に悪影響を及ぼすことがあり、ひいては、車両の性能または排気物に影響を及ぼすことがある。本方法は、極めて深刻な短絡障害が検出された場合に、関連する噴射器群を停止するステップを含み得る。軽微な短絡しか検出されない場合には、噴射器群を停止しなくてもよいことがある。本方法はさらに、2種類の許容電圧を定義するステップと、バイアス点における電圧が第1の許容範囲外であるが、第2の許容範囲内である場合に、軽微な障害の信号を生成するステップと、バイアス点における電圧が第2の許容範囲外である場合に、深刻な障害の信号を生成するステップとを含み得る。本方法は、軽微な障害および/または深刻な障害が検出された場合に、例えば、車両の機器パネル上の警告灯を光らせることによって車両操作者などの使用者の注意を喚起するステップも含み得る。
【0023】
本発明の第2態様によれば、エンジン始動時の噴射装置における障害を検出する障害検出方法が提供される。この噴射装置は少なくとも1つの圧電式燃料噴射器を備え、この方法は、
(a)充電段階中に噴射器を充電するステップと、
(b)充電段階の後で遅延期間を経過させるステップと、
(c)噴射器のロー側から接地への短絡が生じた場合に、遅延期間中に噴射器が放電し得る放電電流経路を提供するステップと、
(d)遅延期間の後で、再充電段階中に噴射器の再充電を試みるステップと、
(e)再充電段階中に噴射器を流れる電流を感知するステップと、
(f)感知された電流が第1の所定閾電流よりも大きい場合、第1障害信号を生成するステップとを含む。
【0024】
故障していない噴射器は、遅延期間中にほとんど放電しないはずである。したがって、故障していない噴射器では、再充電段階中に電流はほとんど流れないはずである。しかし、再充電段階中に大きな電流が流れる場合、すなわち、第1の所定閾電流よりも大きな電流が流れる場合、噴射器群の噴射器の1つまたは複数が遅延期間中に放電し、したがって、再充電段階中に電流が流れてその不良噴射器または各不良噴射器が再充電されることを示す。
【0025】
第1の障害信号は、噴射器群の噴射器の1つまたは複数に積層体端子短絡または噴射器のロー側から接地への短絡が生じている場合に生成される。放電電流経路を提供すると、遅延期間中に、ロー側から接地への短絡が生じている噴射器が短絡を介して放電することになる。このことは、遅延期間中に、放電した噴射器を再充電する電流が流れることによって検出される。
【0026】
放電電流経路は、遅延期間中に噴射器群を放電回路に接続することによって、好ましくは、放電回路に関連する放電スイッチを閉じることによって提供することができる。ロー側から接地への短絡が存在する場合、放電スイッチを閉じると、実質的に、ロー側から接地への短絡を含む放電電流ループができることになる。
【0027】
遅延期間中に不良噴射器が放電する量は、いくつかの要因から決まる。これらの要因には、短絡の固有抵抗値、遅延期間の長さ、および充電段階後の噴射器がもつ電荷が含まれる。第1の所定閾電流レベルは、所定の抵抗値未満の短絡しか第1の障害信号を生成しないように設定し得る。本発明の第1態様に関連して上記で説明したように、障害が検出された後で、噴射器群に対する動作を一時的に中断することができる。
【0028】
噴射器は、充電段階中に、一杯に充電することもできるし、部分的に充電してもよい。好ましくは、充電回路では、例えば約20Vの較正可能な低電圧しか生成されず、噴射器は、充電段階中にこの電圧まで充電される。充電段階中に圧電積層体に印加される電圧が小さければ、試験を実施するのに極めて低い燃料圧しか必要とされず、そのため、この方法は、エンジン始動時に用いるのに適している。というのは、燃料はまだ高レベルに加圧されていないからである。
【0029】
好ましくは、バイアス電圧は、噴射器または各噴射器の選択が解除されて放電回路に含まれない状態で、すなわち、噴射器選択スイッチまたは各噴射器選択スイッチが開いた状態で測定する。
【0030】
第1の障害信号が生成される場合、障害が積層体端子短絡なのか、噴射器のロー側から接地への短絡なのかを識別するために、この方法はさらに、診断ステップを含むことができるが、この場合、放電電流経路を提供するステップを含めない。そのため、障害がロー側から接地への短絡である場合、噴射器の放電が妨げられる。したがって、障害が依然として検出される場合、その障害は積層体端子短絡に起因し得る。この方法はさらに、
(g)別の充電段階中に噴射器を充電するステップと、
(h)放電電流経路を形成せずに、別の遅延期間を経過させるステップと、
(i)別の再充電段階中に噴射器の再充電を試みるステップと、
(j)別の再充電段階中に噴射器を流れる電流を感知するステップと、
(k)感知された電流が第2の所定閾電流よりも大きい場合、噴射器の端子間が短絡していることを示す第2障害信号を生成するステップとを含む。
【0031】
第2の障害信号が生成されない場合、第1の障害信号はロー側から接地への短絡に起因していると推論することができる。したがって、この方法はさらに、
(l)別の再充電段階中に感知された電流が第2の所定閾電流以下である場合、噴射器のロー側から接地への短絡が生じていることを示す第3の障害信号を生成するステップを含む。
【0032】
別のステップとして、第2または第3の障害信号が生成された後で、この方法は、第1の障害信号が積層体端子短絡または噴射器のロー側から接地への短絡を表すことをメモリ装置に記録するステップを含み得る。
【0033】
あるいは、またはそれに加えて、ステップ(b)の遅延期間中に放電電流経路の電流の流れを監視することによって、積層体端子短絡と、ロー側から接地への短絡とを区別することができる。電流が検出された場合、あるいは少なくとも、所定の閾レベルよりも大きな電流が検出された場合、ロー側から接地への短絡が生じていることを示す。したがって、この方法はさらに、ステップ(b)の遅延期間中に放電電流経路の放電電流を感知するステップと、遅延期間中に放電電流経路で第3の所定閾電流よりも大きな放電電流が感知された場合、噴射器のロー側から接地への短絡が生じていることを示す第4の障害信号を生成するステップとを含み得る。
【0034】
放電電流経路で放電電流は検出されないが、ステップ(b)の遅延期間中に噴射器が依然として放電している場合、第1の障害信号は積層体端子短絡が生じていることを示すと推論することができる。したがって、この場合、この方法はさらに、第1の障害信号は積層体端子短絡を表すことをメモリ装置に記録するステップを含み得る。
【0035】
紛らわしくないように、第2および第3の所定閾電流を第1の所定閾電流と同じにすることもできるし、異なるものとしてもよい。
放電経路の電流は、電流感知手段によって、駆動回路内のいくつかの点のいずれか1つにおいて検出することができる。例えば、別々の電流センサをそれぞれの噴射器に直列に接続することができる。こうすると、短絡を特定の噴射器までたどることができる。したがって、この方法は、複数の電流経路において電流を監視するステップと、第4障害信号に応答してロー側から接地への短絡の場所をメモリ装置に記録するステップとを含み得る。
【0036】
本発明の第1および第2の態様ならびにこれらに関連する任意選択のステップを適切に組み合わせて、エンジン始動時におけるある範囲の短絡障害を検出し診断する診断ルーチンを形成し得ることを理解されたい。このような診断ルーチンにより、積層体端子短絡に加えて、エンジン始動時におけるハイ側から接地への短絡およびロー側から接地への短絡のいずれをも検出する堅固な方法が提供されよう。
【0037】
本発明の診断方法では、抵抗値が広い範囲に及ぶ様々な短絡障害を検出することができる。広範囲な抵抗値を検出する能力は、それによって、本発明の診断方法が、そのような能力がない場合にはエンジン始動時に検出されないままになり、エンジンの始動の妨げになり得る短絡障害を検出することができるため、特に有益である。本発明の診断方法は迅速に実施することができ、そのため、エンジン始動時の最初の点火にかかる時間に実質的に影響を及ぼさない。
【0038】
本発明の考え方には、コンピュータプログラム製品も含まれる。コンピュータプログラム製品は、実行環境で実行されたときに、上記で説明した方法のいずれか、または全部を実施するように動作可能な少なくとも1つのコンピュータプログラムソフトウエア部分を含む。本発明の考え方には、このコンピュータプログラムソフトウエア部分または各コンピュータプログラムソフトウエア部分が記憶されたデータ記憶媒体、ならびに前記データ記憶媒体を備えたマイクロコンピュータも含まれる。
【図面の簡単な説明】
【0039】
【図1】エンジン内の圧電式燃料噴射器群を含む噴射装置を制御する駆動回路を示すブロック図である。
【図2】バイアス点PBを含めて図1の駆動回路をより詳細に示す回路図である。
【図3】図2の駆動回路を示す図であるが、噴射器の1つにハイ側から接地への短絡が生じている。
【図4】図4aは、図3のバイアス点PBで求められた電位とハイ側から接地への短絡の抵抗値RSCとの関係を示すグラフである。
【0040】
図4bは、図4aに類似のグラフであるが、深刻な短絡と軽微な短絡を区別し得る方法を示す。
【図5】図2の駆動回路を示す図であるが、噴射器の1つにロー側から接地への短絡が生じており、放電電流経路が示されている。
【図6−a】エンジン始動時における噴射器のロー側から接地への短絡および積層体端子短絡を検出する診断ルーチンの流れ図である。
【図6−b】噴射器のロー側から接地への短絡と積層体端子短絡とを区別する診断サブルーチンの流れ図である。
【図7】図2の駆動回路に類似の駆動回路を示す図であるが、噴射器のロー側から接地への短絡を検出するために、それぞれの噴射器と直列に接続された1対の電流センサを含む。
【図8】図2の駆動回路に類似の駆動回路を示す図であるが、噴射器のロー側から接地への短絡を検出するために、噴射器群と直列に接続される電流センサを配置し得る場所を3つ示している。
【図9】ハイ側からバッテリーへの短絡およびロー側からバッテリーへの短絡を示す駆動回路の図である。
【発明を実施するための形態】
【0041】
添付の図面を参照して例として本発明を説明する。
図1を参照すると、図に示す自動車用エンジンなどのエンジン10は、第1燃料噴射器12aおよび第2燃料噴射器12bを備える燃料噴射装置を有する。燃料噴射器12a、12bはそれぞれ、噴射器用ニードル弁14a、14bおよび圧電アクチュエータ16a、16bを有する。圧電アクチュエータ16a、16bは、関連する噴射器12a、12bの噴射器用ニードル弁14a、14bを開閉して、エンジン10の関連する気筒への燃料噴射を制御するように動作可能である。ディーゼル内燃機関において燃料噴射器12a、12bを使用してエンジン10にディーゼル燃料を噴射することもできるし、火花点火内燃機関において燃料噴射器12a、12bを使用してエンジン10に可燃ガソリンを噴射することもできる。
【0042】
燃料噴射器12a、12bは噴射器群18を形成し、駆動回路20によって制御される。実際には、エンジン10は、2つ以上の噴射器群18を備えることがあり、各噴射器群18は、1つまたは複数の燃料噴射器12a、12bを備えることがある。理解しやすいように、以下の説明は、1つの噴射器群18だけに関するものとする。以下で説明する本発明の実施形態では、燃料噴射器12a、12bは、負の充電時に変位するタイプのもの、すなわち「放電−噴射」型噴射器である。したがって、燃料噴射器12a、12bは、放電段階中に開いてエンジン気筒に燃料を噴射し、充電段階中に閉じて燃料の噴射を停止する。
【0043】
エンジン10は、エンジン制御モジュール(ECM)22によって制御され、駆動回路20はECM22を構成する一部であり、ECM22と一体になっている。ECM22はマイクロプロセッサ24およびメモリ26を含み、これらは、様々なルーチンを実施して、燃料噴射装置の制御を含めてエンジン10の動作を制御するように構成されている。マイクロプロセッサ24と駆動回路20の間で信号がやりとりされ、駆動回路20から受信した信号で構成されるデータはメモリ26に記録される。ECM22は、エンジンの回転数および負荷を監視するように構成される。ECM22は、噴射器12a、12bへの燃料供給量および噴射器12a、12bの動作タイミングも制御する。ECM22は、バッテリー電圧が約12Vの(図示しない)車両用バッテリーに接続される。エンジン10を動作させるにあたってのECM22の動作および機能のさらなる細部、特に噴射装置の噴射サイクルは、国際公開第2005/028836A1号に詳細に記載されている。
【0044】
図2に、1対の燃料噴射器12a、12b用の駆動回路20をさらに詳細に示す。駆動回路20は、高電圧レールVH、低電圧レールVL、および接地電圧レールVGNDを含む。駆動回路20は、低電圧レールVLが双方向中央電流経路21として働く半Hブリッジとして全体的に構成される。噴射器12a、12bの圧電アクチュエータ16a、16b(図1)は、中央回路分岐部21において接続される。圧電アクチュエータ16a、16bは、コイルL1と電流感知・制御手段28の間に配置され、これらと直列に結合される。
【0045】
圧電アクチュエータ16aおよび16b(以下、単に「アクチュエータ」と称する)は並列に接続される。各アクチュエータ16a、16bの電気特性はコンデンサと同じであり、アクチュエータのハイ側(+)端子とロー側(−)端子の間の電位差である電圧を保持するように充電可能である。各アクチュエータ16a、16bは、それぞれの噴射器選択スイッチSQ1、SQ2と直列に接続され、各噴射器選択スイッチSQ1、SQ2は、その両端間に接続されたそれぞれのダイオードD1、D2を有する。
【0046】
電圧源VSが、駆動回路20の低電圧レールVLと接地レールVGNDの間に接続される。電圧源VSは、(図示しない)車両用バッテリーと、バッテリーからの電圧を低電圧レールVLの必要電圧まで昇圧させるための(図示しない)ステップアップトランスとを組み合わせて提供してもよい。
【0047】
第1のエネルギー蓄積コンデンサC1が、高電圧レールVHと低電圧レールVLの間に接続され、第2のエネルギー蓄積コンデンサC2が、低電圧レールVLと接地電圧レールVGNDの間に接続される。コンデンサC1、C2は、充電および放電の段階中にアクチュエータ16a、16bの充電および放電を行うのに使用するエネルギーを蓄積する。充電スイッチQ1が、高電圧レールVHと低電圧レールVLの間に接続され、放電スイッチQ2が、低電圧レールVLと接地レールVGNDの間に接続される。スイッチQ1、Q2は、それぞれのダイオードRD1、RD2を有する。ダイオードRD1、RD2は、それぞれのスイッチQ1、Q2の両端間に接続され、それによって、コンデンサC1、C2を補充する回生段階中に電流がコンデンサC1、C2に戻るようにしている。簡潔にするために、本明細書ではこの回生プロセスは説明しないが、同時係属の国際出願公開第2005/028836A1号および欧州特許出願第06256140.2号に詳細に記載されている。
【0048】
噴射装置におけるある種の接地への低抵抗短絡を検出する障害トリップ抵抗器RFが、接地レールVGNDと接地の間に接続される。この障害トリップ抵抗器RFは、抵抗値がミリオーム程度と極めて低いものであり、したがって、接地レールVGNDにかかる電圧はほぼゼロボルトである。この障害トリップ抵抗器RFは本発明に不可欠なものではないことを理解されたい。そのため、その動作は本明細書では説明しないが、同時係属の欧州特許出願第06251881.6号に記載されている。
【0049】
抵抗性バイアス回路網30が、高電圧レールVHと接地レールVGNDの間に接続され、バイアス点PBのところで中央回路分岐部21と交差する。抵抗性バイアス回路網30は、直列に接続された第1の抵抗器R1、第2の抵抗器R2、および第3の抵抗器R3を有する。第1の抵抗器R1は、高電圧レールVHとバイアス点PBの間に接続され、第2の抵抗器R2および第3の抵抗器R3は、バイアス点PBと接地レールVGNDの間で直列に接続される。第2の抵抗器R2は、バイアス点PBと第3の抵抗器R3の間に接続され、第3の抵抗器R3は、第2の抵抗器R2と接地レールVGNDの間に接続される。
【0050】
第1の抵抗器R1、第2の抵抗器R2、および第3の抵抗器R3はそれぞれ、既知の大きな抵抗値を有する。第1の抵抗器R1は、以下RHと称する抵抗値を有し、第2の抵抗器R2および第3の抵抗器R3は、以下RGと称する合成抵抗値(R2+R3)を有する。典型的には、RHおよびRGはそれぞれ、数百キロオーム程度である。R2およびR3の代わりに1つの抵抗器を使用し得ることを理解されたい。
【0051】
R3の両端間の電圧を測定し、この測定値から、第2の抵抗器R2および第3の抵抗器R3の合成抵抗RGの両端間のバイアス電圧VBを推定する。あるいは、バイアス電圧VBは、RG両端間の電位差を測定することによって直接求めることもできる。この電圧測定は、マイクロプロセッサ24のアナログ−デジタル(A/D)モジュールによって行われる。この例では、A/Dモジュールの最大入力電圧は5Vであり、そのため、R2およびR3の大きさは、R3の両端間の電圧が5Vよりも大きくならないようにする。
【0052】
駆動回路20の本質的な部分は、充電回路および放電回路である。充電回路は、高電圧レールVH、低電圧レールVL、第1のコンデンサC1、および充電スイッチQ1を備え、放電回路は、低電圧レールVL、接地レールVGND、第2のコンデンサC2、および放電スイッチQ2を備える。この駆動回路の動作は、同時係属の欧州特許出願第06254039.8号および第06256140.2号に記載されている。これらの特許文献の内容を参照により本明細書に組み込む。そうではあるが、参照しやすいように、駆動回路20の動作の充電段階および放電段階を以下に簡単に概説する。
【0053】
充電段階中にアクチュエータ16a、16bを充電するために、充電スイッチQ1が閉じられ、放電スイッチQ2は開いたままにする。第1のコンデンサC1は、完全に充電されていれば、その両端間で約200Vの電位差を有するので、充電スイッチQ1を閉じると、充電回路に電流が流れる。すなわち、この電流は、第1のコンデンサC1の正/ハイ側端子から、充電スイッチQ1およびコイルL1を(矢印「I−CHARGE」の方向に)通り、アクチュエータ16a、16bを(ハイ側+からロー側−に)通り、関連するダイオードD1、D2を通り、電流感知・制御手段28を通り、第1のコンデンサC1の負/ロー側端子に戻る。
【0054】
噴射を開始するために、駆動回路20は、放電段階において、先に充電されたアクチュエータ16a、16bの一方が放電するように動作する。この放電段階中、噴射器12aまたは12b(図1)は、関連する噴射器選択スイッチSQ1またはSQ2を閉じることによって選択されて噴射する。放電スイッチQ2は閉じられ、充電スイッチQ1は開いたままである。例えば、第1の噴射器12aから噴射させるには、第1の噴射器選択スイッチSQ1が閉じられ、電流が、第2のコンデンサC2の正端子から、電流感知制御手段28を通り、選択された第1の噴射器12aのアクチュエータ16aを(ロー側−からハイ側+に)通り、コイルL1を(矢印「I−DISCHARGE」の方向に)通り、放電スイッチQ2を通り、第2のコンデンサC2の負側に戻るように流れる。ダイオードD2のために、電流は、選択されていない第2噴射器12bのアクチュエータ16bを通って流れることはできない。というのは、関連する噴射器選択スイッチSQ2が開いたままだからである。
【0055】
噴射を停止するには、選択された噴射器12aまたは12bを、関連する噴射器選択スイッチSQ1またはSQ2を開くことによってその選択を解除し、放電スイッチQ2を開き、充電スイッチQ1を閉じて先に放電した噴射器12aまたは12bを再充電する。それによって、圧電積層体が伸張し、そのため、関連する噴射器12a、12b(図1)の噴射器用ニードル弁14a、14bが閉じる。
【0056】
次に、ハイ側から接地への短絡を検出する方法を説明する。
図2の駆動回路20である図3を参照すると、図2の駆動回路20において、第2の噴射器12bに、ハイ側から接地への短絡34が生じている。エンジン始動時にハイ側から接地への短絡34を検出するために、噴射器12a、12bを充電する高電圧が高電圧レールVHに生成される前に、抵抗性バイアス回路網30を使用してバイアス点PBにおけるバイアス電位VBを求める。バイアス電位VBは、噴射器12a、12bがいずれも選択されていない状態で、すなわち、噴射器選択スイッチSQ1およびSQ2がともに開いているときに測定される。
【0057】
バイアス電位VBの測定値は、予測電圧VPBと比較される。予測電圧VPBは、噴射器群18の噴射器12a、12bがともに正常に機能している場合、すなわち、ハイ側から接地への短絡34が存在しないときにバイアス点PBにおいて予想される電位である。
【0058】
バイアス電位VBの測定値が予測電圧VPBとほぼ同じか、あるいは予測電圧VPBの所定許容範囲内にある場合、噴射器群18においてハイ側から接地への短絡34が存在しないことを示している。しかし、バイアス電圧VBの測定値が予測電圧VPBよりも低いか、あるいは予測電圧VPBの所定許容電圧よりも低い場合、噴射器12a、12bの一方または両方にハイ側から接地への短絡34が生じていることを示している。
【0059】
バイアス点PBにおける予測電圧VPBは、次のように導かれる。
PB=IR
=I(R+R) 2
ここで、Iは抵抗性バイアス回路網30を流れる電流である。
【0060】
したがって、バイアス電位は下記の式3によって計算される。
PB=V/(R+R) 3
しかし、エンジン始動時には、第1のコンデンサC1の両端間の電位差は、高電圧レールVHに高電圧が生成される前はほぼゼロボルトである。したがって、高電圧レールVHの電位は、電圧源VSの電圧にほぼ等しい。したがって、噴射器12a、12bがいずれも選択されていない状態での予測バイアス電圧VPBの値は、下記の式4によって与えられる。
【0061】
PB=V/(R+R) 4
VS、RH、およびRGはいずれも既知なので、VPBは、上記の式4を用いて計算することができる。
【0062】
噴射器12aまたは12bのいずれかにハイ側から接地への短絡34が生じている場合、図3に示すように、抵抗性バイアス回路網30の抵抗RGと並列に接続された抵抗器が存在するかのような挙動になる。
【0063】
バイアス点PBと接地レールVGNDの間の実効抵抗RGは、下記の式5によって計算される。
【0064】
【数1】

【0065】
ここで、RSCは、ハイ側から接地への短絡34の抵抗値である。
噴射器12a、12bがいずれも選択されていない状態、すなわち、噴射器選択スイッチSQ1およびSQ2がともに開いた状態でのバイアス電圧VBの測定値は、下記の式6によって与えられる。
=VG*/(R+RG*) 6
図4aは、バイアス電圧VBの測定値と、ハイ側から接地への短絡34の抵抗値RSCとの関係を示すグラフである。図4aから、ハイ側から接地への短絡34の抵抗値RSCが減少すると、バイアス電圧VBの測定値は予測電圧VPBよりも小さくなってゆくことがわかる。したがって、バイアス電圧VBの測定値が予測バイアス電圧VPBよりも小さい場合、ハイ側から接地への短絡34が生じていることを示している可能性がある。バイアス電圧VBの測定値は、ハイ側から接地への短絡34が生じている場合、噴射器12a、12bの圧電積層体にかかる電圧にかかわらず、予測バイアス電圧VPBよりも常に低くなる。そのため、この技術は、エンジン始動時において特に有用である。というのは、圧電積層体にかかる電圧は一般に始動時には未知だからである。
【0066】
実際には、バイアス電圧VBの測定値が予測電圧VPBと比較され、バイアス電圧VBの測定値が予測電圧VPBの許容範囲VTOLから外れている場合に障害が報告される。この許容範囲は、検出対象の障害の範囲が特定のシステム要件に従って変化し得るように較正することができる。図4aに、許容電圧範囲VTOLを示すが、許容電圧範囲VTOLにより最大短絡抵抗値RMAXが規定されることがわかる。許容電圧範囲VTOLは、最大短絡抵抗値RMAXよりも抵抗値が低い短絡障害により障害信号が生成されるように設定される。
【0067】
図4bは、図4aに類似のグラフであるが、(比較的低い抵抗値の)深刻な短絡と、(比較的高い抵抗値の)軽微な短絡とを区別し得る方法を示している。図4bには、1対の電圧閾値VTOLAおよびVTOLBが示されている。VTOLAは上側短絡抵抗閾値RSCAに相当し、VTOLBは下側短絡抵抗閾値RSCBに相当する。軽微な短絡障害、すなわち、抵抗値がRSCAとRSCBの間にある障害が検出されるのは、バイアス点PBにおける電圧の測定値が第1電圧閾値VTOLAと第2電圧閾値VTOLBの間にある場合である。深刻な短絡障害、すなわち、抵抗値がRSCB未満のものは、バイアス点PBにおける電圧が第2電圧閾値VTOLB未満である場合に検出される。
【0068】
同時係属の欧州特許出願第06256140.2号に、エンジン始動時における噴射器12a、12bの圧電アクチュエータ16a、16bの積層体端子(+/−)間の短絡を検出する方法が開示されている。先に述べたように、この特許文献の内容を参照により本明細書に組み込む。この方法で用いる「充電パルス」技術は、高電圧レールVHに充電電圧を生成するステップと、充電スイッチQ1を所定期間閉じることによって噴射器群18に対して第1の充電パルスを実施するステップと、所定の遅延期間Δtの後で噴射器群18に対して第2の充電パルス、すなわち「再充電」パルスを、この場合も充電スイッチQ1を閉じることによって実施するステップと、電流感知制御手段28を使用して噴射器12a、12bを流れる電流を監視するステップとを含む。この方法は、噴射器群18が放電回路から切断された状態で、すなわち、放電スイッチQ2が開いた状態で実施される。
【0069】
第2の充電パルス中に電流が検出された場合、あるいは少なくとも所定の閾電流よりも大きな電流が検出された場合、噴射器群18の少なくとも1つの圧電積層体16aまたは16bの電圧が第1充電パルスの後で減少し、したがって、噴射器12a、12bの少なくとも1つがその圧電積層体端子(+/−)間で短絡していることを示している。というのは、「正常な」噴射器12a、12b、すなわち故障してない噴射器12a、12bなら、その電荷は遅延期間Δtの間保持されるはずであるが、積層体端子が短絡した噴射器12a、12bは、遅延期間Δtに短絡を介して少なくとも部分的に放電することになり、したがって、第2の充電パルス中に電流が流れて不良噴射器12a、12bを再充電するからである。
【0070】
次に、ロー側から接地への短絡を検出する方法を説明する。
欧州特許出願第06256140.2号に記載の充電パルス方法によれば、エンジン始動時における積層体端子短絡障害を検出することができるが、噴射器群18における噴射器のロー側から接地への短絡を検出することはできない。図5の駆動回路20に、第2の噴射器12bのロー側から接地への短絡36を示す。ロー側から接地への短絡36を検出するために、以下で説明するように、改変された充電パルス方法を用いる。上記で説明した充電パルス方法と同様に、改変された充電パルス方法も、積層体端子短絡障害を検出することができる。
【0071】
図5に示すように、改変された充電パルス方法は、第1の充電パルスの後で遅延期間Δt中に放電スイッチQ2を閉じるステップを含む。遅延期間Δt中、個々の噴射器12a、12bは選択されず、放電回路に含まれない。すなわち、噴射器選択スイッチSQ1およびSQ2はともに開いたままである。噴射器12a、12bが故障してなければ、放電スイッチQ2だけが閉じており、他のスイッチ(Q1、SQ1、SQ2)が開いている場合、電流は流れないはずである。しかし、図5の第2の噴射器12bは故障しており、噴射器のロー側から接地への短絡36が生じている。この場合、放電スイッチQ2を閉じると、図5に矢印38で示すように、放電電流ループができる。この放電電流ループ38はロー側から接地への短絡36を含み、放電スイッチQ2を閉じると、遅延期間Δt中に、不良第2の噴射器12bが、このロー側から接地への短絡36を介して、完全にまたは少なくとも一部が放電する。
【0072】
遅延期間Δtの後で放電スイッチQ2を開き、充電スイッチQ1を閉じることによって第2の充電パルスが実施されると、電流(IS)が流れて、放電した不良噴射器12bを再充電する。この電流は、第2の充電パルス中に、電流感知制御手段28を使用して検出される。このように電流が流れることは、噴射器群18の噴射器12a、12bの少なくとも1つが短絡しており、したがって故障していることを示している。遅延期間Δt中に、電流(IS)が検出された場合、あるいは少なくとも、所定の閾電流レベルよりも大きい電流が検出された場合、マイクロプロセッサ24は短絡障害信号を生成し、この短絡障害信号はメモリ26に記録される。
【0073】
電流感知制御手段28を流れる電流は、同時係属の欧州特許出願第06256140.2号に記載のチョップフィードバックによる方法および回路を用いて監視される。先に述べたように、この特許文献の内容を参照により本明細書に組み込む。本質的には、電流感知制御手段28は、第2の充電パルスが実施されたときの電流の流れを監視する。短絡障害が生じている場合、第2の充電パルスが実施されて、遅延期間Δt中に少なくとも一部が放電した不良噴射器が再充電されるときに電流が流れるはずである。短絡障害の固有抵抗および遅延期間Δtの長さにより、不良噴射器がどの程度放電するか、したがって、第2の充電パルス中に電流がどのくらい流れるが決まる。
【0074】
電流感知制御手段28によって感知された電流が所定の閾電流レベルよりも大きい場合、固有抵抗値が所定の抵抗値よりも小さい短絡障害が駆動回路内で生じていることを示している。少なくとも第2の充電パルス中に制御信号が生成される。この制御信号は、マイクロプロセッサにフィードバックされ、2つの離散状態間で変化する。電流感知制御手段28によって感知された電流が所定の閾電流レベルよりも大きい場合、この制御信号はチョッピングされる。マイクロプロセッサ24は、制御信号におけるチョッピングを監視し、チョッピングが検出された場合には短絡障害信号を生成する。
【0075】
噴射器12a、12bが故障してない場合、遅延期間Δt中に放電スイッチQ2を閉じても、放電電流ループ38ができないことを理解されたい。というのは、ロー側から接地への短絡36が存在せず、かつ、遅延期間Δt中は、噴射器選択スイッチSQ1およびSQ2が開いたままになるからである。したがって、故障してない噴射器は、遅延期間Δt中、ほぼその電荷を保持するはずであり、その場合、第2の充電パルスにより、所定の閾電流レベルよりも大きな電流は検出されず、そのため、障害信号も生成されない。
【0076】
以下、図6aの流れ図および図5の駆動回路を参照して、ロー側から接地への短絡36を検出するための改変された充電パルス方法を含む診断ルーチンの例を説明する。ロー側から接地への短絡36を検出する方法ステップに加えて、この診断ルーチンは、上記の噴射器12a、12bに関連する開路障害を検出する方法ステップも含む。開路障害について試験することは本発明に不可欠なことではないことを理解されたい。開路障害についての試験は、同時係属の欧州特許出願第06256140.2号に記載されている。
【0077】
[ステップA1] 噴射器選択スイッチSQ1、SQ2が開いた状態で、高電圧レールVHに約20Vの較正可能な低電圧が生成される。
[ステップA2] 充電スイッチQ1を閉じて噴射器群18に対して第1充電パルスを実施することによって、噴射器群18の噴射器12a、12bがともに高電圧レールVHと同じ電圧に充電される。
【0078】
[ステップA3] 充電スイッチQ1を開き、次いで、放電スイッチQ2を閉じる。放電スイッチQ2を開く[ステップA5]前に所定期間Δt(遅延期間Δt)経過させる[ステップA4]。
【0079】
[ステップA6] 所定期間Δtが経過した後で充電スイッチQ1を再度閉じて、噴射器群18に対して第2充電パルスを実施するように試みる。
[ステップA7] 電流感知制御手段28を使用して第2充電パルス中に流れる電流(IS)を感知する。
【0080】
[ステップA8] 感知された電流(IS)と所定の電流レベルとを比較する。
[ステップA9] 最後に、感知された電流が所定の電流レベルよりも大きい場合、あるいは、所定の電流レベルの許容範囲外である場合、噴射器群18の噴射器12a、12bの1つまたは複数が短絡している。この短絡は、積層体端子短絡または噴射器のロー側から接地への短絡のいずれかである。
【0081】
そうではなく、感知された電流(IS)が所定の電流レベルよりも大きくない場合、あるいは、所定の電流レベルの許容範囲から外れていない場合、噴射器群18の噴射器12a、12bのいずれも短絡しておらず、診断ルーチンは、以下に示す個々の噴射器12a、12bに開路障害が生じていないかの試験に進む。
【0082】
[ステップA10] 噴射器群18の噴射器12a、12bの一方を、その関連する噴射器選択スイッチSQ1またはSQ2を閉じることによって選択して放電回路に含まれるようにし、放電段階中は放電スイッチQ2を閉じる。
【0083】
[ステップA11] 図2を参照して先に述べたように、選択された噴射器12aまたは12bは放電段階中に放電するはずであり、この放電電流は電流感知制御手段28を使用して感知される。
【0084】
[ステップA12] 放電段階中に感知された放電電流と、所定の放電電流レベルとを比較する。
[ステップA13] 最後に、感知された放電電流が所定の放電電流レベル未満である場合、あるいは、所定の放電電流レベルの許容値未満である場合、選択された噴射器12aまたは12bには開路障害が生じている。そうではなくて、感知された放電電流が所定の放電電流レベルよりも大きい場合、あるいは、所定の放電電流レベルの許容値よりも大きい場合、選択された噴射器12aまたは12bには開路障害が生じていない。
【0085】
[ステップA14] 選択された噴射器12aまたは12bには開路障害が生じていないことがわかった場合、噴射器選択スイッチSQ1またはSQ2を開くことによって噴射器12aまたは12bの選択が解除され、もう一方の噴射器12aまたは12bが選択され、上記のステップA10〜A12を繰り返すことによって開路障害について試験する。
【0086】
上記で説明した方法で検出される短絡障害は、積層体端子短絡または噴射器のロー側から接地への短絡36のいずれかであり得ることを理解されたい。というのは、いずれの障害によっても、遅延期間Δt中に関連する噴射器12aまたは12bが放電し、したがって、第2の充電段階中に電流が流れるからである。
【0087】
場合によっては、積層体端子短絡と噴射器のロー側から接地への短絡36とを区別し得ることが望ましい。これら2つのタイプの短絡障害は、以下でさらに詳細に説明するようにソフトウエアまたはハードウエアによる方法を用いて互いに区別することができる。
【0088】
本発明の一実施形態では、積層体端子短絡と噴射器のロー側から接地への短絡36を区別するためにソフトウエアによる解決策が提供される。このソフトウエアによる解決策は、図6aの診断ルーチンのステップA9で短絡が検出されることに応答して実行される診断サブルーチンである。このサブルーチンは、本質的には、噴射器12a、12bを充電し、遅延期間Δt2待ち、噴射器12a、12bを再充電しようと試みるが、このときは遅延期間Δt2中、放電スイッチQ2を開いたままにする試験シーケンスを繰り返すというものである。
【0089】
図6aのステップA1〜A8からなる主診断ルーチン中に検出された短絡がロー側から接地への短絡36であった場合、不良噴射器は、診断サブルーチンの遅延期間Δt2中に放電しない。したがって、診断サブルーチンの第2の充電パルス中に電流感知制御手段28によって電流が検出されなかった場合、あるいは、所定の閾レベル以下の電流が検出された場合、噴射器群18の1つまたは複数の噴射器12aおよび/または12bに関連する噴射器のロー側から接地への短絡36が生じている。
【0090】
そうではなくて、所定の閾電流レベルよりも大きな電流が診断サブルーチンの第2の充電パルス中に依然として検出される場合、噴射器群18に積層体端子短絡が生じていると推論することができる。というのは、このタイプの短絡は、遅延期間Δt/Δt2中の放電スイッチQ2の開閉状態にかかわらず検出されるからである。
【0091】
図6bは、診断サブルーチンの方法ステップを示す流れ図である。この診断サブルーチンは、図6aの主診断ルーチンにおいて障害信号が生成される場合に実行される。このサブルーチンは以下のステップを含む。
【0092】
[ステップB1] 充電スイッチQ1を閉じることによって噴射器群18に対して充電パルスを実施し、それによって、噴射器12a、12bをともに高電圧レールVHの電位に充電する。
【0093】
[ステップB2] 充電スイッチQ1を開き、較正可能な遅延期間Δt2を経過させ、その間、放電スイッチQ2は開いたままにする。
[ステップB3] 充電スイッチQ1を再度閉じることによって噴射器群18に対して第2の充電パルスを実施する。
【0094】
[ステップB4] 電流感知・制御手段28を使用して第2充電パルス中に流れる電流(IS)を検出する。
[ステップB5] 第2の充電パルス中に感知された電流(IS)と所定の閾電流とを比較する。
【0095】
[ステップB6] 感知された電流(IS)が所定の閾電流レベルよりも大きい場合、積層体端子短絡が生じており、積層体端子障害信号が生成される。
[ステップB7] 感知された電流(IS)が所定の閾電流レベル以下である場合、ロー側から接地への短絡が生じており、ロー側から接地への障害信号が生成される。
【0096】
上記の方法で生成された障害信号は、この障害がどの噴射器群18に関連するかを識別する標識とともにメモリ26に記憶される。メモリ26には、噴射器12aまたは12bのいずれかに関連する開路障害の診断結果に関係する任意の信号も記憶される。
【0097】
次に図7を参照すると、噴射器のロー側から接地への短絡36と積層体端子短絡とを区別するためのハードウエアによる解決策が示されている。図7の駆動回路20aは、図2、図3、および図5の駆動回路20に類似しているが、それぞれの噴射器12aおよび12bと直列に接続され、噴射器12aおよび12bのハイ(+)側にある1対の電流感知抵抗器R4およびR5をさらに含む。電流感知抵抗器R4、R5を使用して、図6aの主診断ルーチンにおけるステップA4の遅延期間Δt中に放電スイッチQ2が閉じたときの電流の流れを監視することができる。
【0098】
図7に示すように、第2の噴射器12bには、ロー側から接地への短絡36が生じており、そのため、遅延期間Δt中に放電スイッチQ2が閉じられたとき、第2の噴射器12bは、この短絡36を介して完全に、あるいは少なくとも部分的に放電する。放電電流(ID)は、第2の噴射器12bと直列に接続された第2の電流感知抵抗器R5によって検出される。このように放電電流(ID)が検出されるということは、ロー側から接地への短絡36が生じていることを示しており、このことは、この障害が第2の噴射器12bに関連するものであるという記録とともにメモリ26に記録される。
【0099】
電流感知抵抗器R4、R5のいずれもロー側から接地への短絡36を検出せず、第2の充電パルス中に噴射器12a、12bのロー側に接続された電流センサ28によって障害が検出された場合、噴射器12a、12bの一方または両方に積層体端子短絡が生じていることを示している。
【0100】
R4およびR5だけを使用し、電流センサ28を使用せずにロー側から接地への短絡36と積層体端子短絡とを区別することも可能である。例えば、障害電流38および再充電電流がR4またはR5によって検出された場合、ロー側から接地への短絡を示している。そうではなくて、R4またはR5のいずれによっても障害電流38が検出されないが、再充電電流がR4またはR5によって検出された場合、積層体端子短絡が生じていることを示している。
【0101】
図8の駆動回路20bに、噴射器のロー側から接地への短絡36と積層体端子短絡とを区別するためのハードウエアによる別の解決策を示す。駆動回路20bは、中央回路分岐部21で接続され、噴射器12a、12bのハイ(+)側で噴射器群18と直列に接続される電流感知抵抗器R6を配置し得る場所を3つ示している。電流感知抵抗器R6は、噴射器群18と抵抗性バイアス回路網30の間(R6a)、または、抵抗性バイアス回路網30とコイルL1の間(R6b)、あるいは、コイルL1と放電スイッチQ2の間(R6c)のいずれかに配置し得る。
【0102】
図8の電流感知抵抗器(R6a、R6b、またはR6c)を使用して、第1の充電パルスと第2の充電パルスの間の遅延期間Δt中の放電電流ループ38における電流の流れを、図7を参照して上記で説明した電流感知抵抗器R4およびR5とほぼ同じやり方で監視する。放電ループ38で所定の閾電流レベルよりも大きな電流が検出された場合、噴射器群18の噴射器12aおよび/または12bの一方または両方にロー側から接地への短絡36が生じていることを示している。この障害に係わる特定の噴射器群18を突き止めることができるが、図7に示す構成と異なり、特定の噴射器12a、12bを突き止めることはできない。
【0103】
上記で説明した様々な方法および診断ルーチンにおけるスイッチの開閉は、マイクロプロセッサ24によって制御され、様々な障害信号は、マイクロプロセッサ24によって出力されメモリ26に記憶されることを理解されたい。上記で説明した方法のいずれも、メモリ装置26を読んで障害を診断することをさらに含み得る。このステップは、障害がメモリに記録されてからいくらか時間が経った後で、例えば、エンジンの点検中に自動車技術者によって実施し得る。
【0104】
障害信号が生成された場合、検出された特定の障害によっては、噴射器群18に対するさらなる動作をすべて禁止するようにマイクロプロセッサをプログラムすることができることも理解されたい。これは、後続の放電、充電、および回生の段階をすべて禁止することを含み得る。
【0105】
上記で説明したハイ側から接地への短絡を検出する診断方法によれば、車両のバッテリー電圧を介してハイ側から接地への短絡を検出することもできることを理解されたい。このような短絡を「ハイ側からバッテリーへの」短絡とも称する。さらに、上記で説明したロー側から接地への短絡を検出する診断方法によれば、バッテリー電圧を介してロー側から接地への短絡を検出することもできる。このような短絡を「ロー側からバッテリーへの」短絡とも称する。図9に、ハイ側からバッテリーへの短絡40およびロー側からバッテリーへの短絡42の例を示す。図9に示すものなどのバッテリーを介した短絡は低インピーダンスのものである。
【0106】
さらに、本明細書で説明した様々な方法および診断ルーチンを任意に組み合わせて、エンジン始動時の様々な異なるタイプの短絡、すなわち、積層体端子短絡、噴射器のロー側から接地への短絡、噴射器のハイ側から接地への短絡、噴射器のロー側からバッテリーへの短絡、および噴射器のハイ側からバッテリーへの短絡を試験し得ることを理解されたい。

【特許請求の範囲】
【請求項1】
エンジン始動時の噴射装置における障害を検出する障害検出方法であって、前記噴射装置は噴射器駆動回路(20)に接続された少なくとも1つの圧電式燃料噴射器(12a、12b)を備え、前記噴射器駆動回路(20)は低電圧レール(VL)、接地電圧レール(VGND)を含み、高電圧レール(VH)を備えた噴射器充電回路を含み、前記噴射装置は前記高電圧レール(VH)と低電圧レール(VL)の間に接続され、既知の電位(VS)を有する電源は前記低電圧レール(VL)と前記接地電圧レール(VGND)との間に接続され、
(a)前記低電圧レール(VL)の要求された電圧に昇圧するバッテリを使用する既知の電位(VS)を有する前記電源を提供するステップと、
(b)高電圧が前記高電圧レール(VH)上に生成される前で且つ前記噴射器駆動回路に前記噴射器(12a、12b)を接続する前の前記エンジン始動時に前記噴射器(12a、12b)を充電する前に、前記高電圧レール(VH)上の電圧が前記電源の前記既知の電位(VS)に実質的に等しい時に、前記噴射装置と前記高電圧レール(VH)の間のバイアス点(PB)におけるバイアス電圧(VB)を求めるステップと、
(c)前記バイアス電圧(VB)と予測電圧(VPB)とを比較するステップと、
(d)前記バイアス電圧(VB)が前記予測電圧(VPB)の所定許容電圧範囲外である場合、障害信号を生成するステップと、
を含む、方法。
【請求項2】
前記障害信号は噴射器のハイ側から接地への短絡(34)を示す、請求項1に記載の方法。
【請求項3】
前記求められたバイアス電圧(VB)が前記予測電圧(VPB)よりも低い度合いが前記所定許容電圧よりも大きい場合に、前記障害信号を生成するステップをさらに含む、請求項1または2に記載の方法。
【請求項4】
VPB=VS・RG/(RH+RG)
を用いて前記予測電圧(VPB)を計算するステップをさらに含み、
式中、RGは前記バイアス点(PB)と接地電位(VGND)との間の既知の第1抵抗値であり、RHは前記バイアス点(PB)と前記既知の電位(VS)との間の既知の第2抵抗値である、請求項1から3のいずれかに記載の方法。
【請求項5】
前記噴射器充電回路は充電スイッチ(Q1)を含み、充電スイッチ(Q1)が開いた状態で、ステップ(a)で前記バイアス電圧を求めるステップをさらに含み、前記充電スイッチ(Q1)は、閉じられたときに前記噴射装置を前記充電回路に接続するように構成されている、請求項4に記載の方法。
【請求項6】
前記噴射器駆動回路は噴射器放電回路をさらに含み、前記噴射装置が前記噴射器放電回路から切断されている状態で、ステップ(a)で前記バイアス電圧を求めるステップをさらに含む、請求項1から5のいずれかに記載の方法。
【請求項7】
前記噴射器放電回路は放電スイッチ(Q2)を含み、前記放電スイッチ(Q2)は、閉じられたときに前記噴射装置を前記放電回路に接続するように構成され、そして放電スイッチ(Q2)が開いた状態で、ステップ(a)で前記バイアス電圧を求めるステップをさらに含む、請求項6に記載の方法。
【請求項8】
前記またはそれぞれの噴射器(12a、12b)は、前記またはそれぞれの噴射器(12a、12b)を個々に選択して前記放電回路に含めるための関連する選択スイッチ(SQ1、SQ2)を有し、前記方法は、前記バイアス電圧(VB)を求めるときに前記またはそれぞれの噴射器(12a、12b)の選択が解除されて前記放電回路に含まれないように前記またはそれぞれの選択スイッチ(SQ1、SQ2)が開いた状態で実施される、請求項6または7に記載の方法。
【請求項9】
障害信号が生成された場合、前記噴射器(12a、12b)の後続の充電ステップを一時停止するステップをさらに含む、請求項1から8のいずれかに記載の方法。
【請求項10】
前記障害信号をメモリ装置(26)に記録するステップをさらに含む、請求項1から9のいずれかに記載の方法。
【請求項11】
コンピュータプログラム製品であって、実行環境で実効されたときに、請求項1から10のいずれか1つに記載の方法を実施するように動作可能な少なくとも1つのコンピュータプログラムソフトウエア部分を含む、コンピュータプログラム製品。
【請求項12】
請求項11に記載の前記コンピュータソフトウエア部分を記憶したデータ記憶媒体。
【請求項13】
請求項12に記載の前記データ記憶媒体を備えたマイクロコンピュータ。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【図6−a】
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【図6−b】
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【図7】
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【図8】
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【図9】
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【公開番号】特開2012−13093(P2012−13093A)
【公開日】平成24年1月19日(2012.1.19)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2011−231023(P2011−231023)
【出願日】平成23年10月20日(2011.10.20)
【分割の表示】特願2008−157568(P2008−157568)の分割
【原出願日】平成20年6月17日(2008.6.17)
【出願人】(510119821)デルファイ・テクノロジーズ・ホールディング・エス.アー.エール.エル. (45)
【Fターム(参考)】