説明

四方切換弁

【課題】主弁切換え動作に起因した冷媒流動音の発生が少なく、弁位置のずれを防止することができるとともに、車載用として小型軽量化に好適なロータリ式の四方切換弁を提供する。
【解決手段】四方切換弁1のステッピングモータを構成するロータ40内に、遊星歯車機構140を配設しており、ロータの回転が副弁60や主弁70に大幅に減速されて伝達される。副弁60や主弁70は緩やかに開弁するので、切換え時の冷媒流動音が抑えられる。副弁60や主弁70の回動には充分なトルクが得られ、駆動部をコンパクトに構成すことができる。更に、主弁70の停止時にモータの特性に起因してロータ40が反転回転したとしても、ロータ40の反転回転量は減速比分だけ減じられ、また遊星歯車機構140内に存在するバックラッシュ分で吸収されるので、主弁70の弁位置の位置ずれが起きないため、冷媒の漏れを防止することができる。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
この発明は、四方切換弁に係り、特に、主弁に吐出圧力の逃がし弁を副弁として備えたロータリ式の四方切換弁に関する。
【背景技術】
【0002】
一般に、ルームエアコン等に用いられる空気調和機は、冷媒の流れる方向を切換えて、冷房運転又は暖房運転を季節に応じて行うことができ、前記冷媒の流れ方向の切換えは、切換弁によって行われている。図26は、前記切換弁を用いた空気調和機の冷暖房サイクルの一例を示したものである。該サイクルには、圧縮機Cと、切換弁SVと、熱交換器Eと、電子リニア制御弁Tとが接続され、冷房運転時の冷媒は、実線矢印で示すように、圧縮機C、切換弁SV、室外熱交換器E1、電子リニア制御弁T、室内熱交換器E2の順に流れ、切換弁SVを経て、再び圧縮機Cに戻って循環する。一方、暖房運転時の冷媒は、一点鎖線矢印で示すように、圧縮機C、切換弁SV、室内熱交換器E2、電子リニア制御弁T、室外熱交換器E1の順に流れ、切換弁SVを経て、再び圧縮機Cに戻って循環するものである。
【0003】
ここで、前記切換弁の一例として、本出願人は、冷媒流路の切換え動作の容易性及び敏捷性の向上を図るとともに切換弁の信頼性の向上を図り、更に、切換弁の構成の簡素化が可能で製品コストを低減させるロータリ式四方切換弁の技術を提案している(特許文献1参照)。この四方切換弁は、ステータとロータからなるモータ部と、ケースと該ケース内の弁室に配置された主弁と弁座からなる本体部とを備えた四方切換弁であって、弁座は、圧縮機の吸入圧力側と吐出圧力側とにそれぞれ連通する吸入圧力導通孔と吐出圧力導通孔と、室内及び室外の各熱交換器にそれぞれ連通する二つの導通孔とを備えている。また、主弁は、吸入圧力導通孔と二つの導通孔に選択的に連通する連通部と、該連通部と弁室とを連通する均圧孔とを備えている。ロータを構成するロータスリーブは、均圧孔を開閉して圧力の移動を図る副弁と、主弁の位置を移動させる作動ピンとを備え、モータ部のロータの回転によって、副弁を主弁上で回動させるとともに、作動ピンを介して主弁を弁座上で摺動させてなる。
【0004】
この四方切換弁によれば、主弁の上面に副弁を設け、モータ部の入力パルスによって、副弁を主弁上で回動させた後に主弁を弁座上で回動させるので、弁室と連通部との圧力の均衡を図った後に主弁の位置切換え動作を行って冷媒の流れの切換えを行うことができ、弾性部材を用いて主弁を回動させる場合に比して冷媒の流路の切換え動作を容易且つ迅速に行うことができ、更に、四方切換弁の信頼性の向上を図っている。また、副弁は、ロータと主弁との間に位置し、主弁上に載置され、上面側押しばねによって主弁方向に付勢されるとともに、ロータと一体に回転し、連通部と弁室との圧力差をなくす逃がし弁として機能するので、冷媒流路の切換え動作を迅速に行うことを可能にして可動部品点数を減らして四方切換弁の製品コストの低減を図っている。更に、ストッパ当接部及び主弁ストッパが、それ自身の磁力によってその当接状態が保持される場合には、弁座に対する主弁の切換え位置を振動に対しても確実に保持することができ、四方切換弁に対する信頼性の一層の向上を図ることができる。
【特許文献1】特開2001−295951号公報
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0005】
上記の形式の四方切換弁においては、ロータの回転によって主弁の位置が切り換えられるが、主弁による切換えが急速に行われると冷媒流動音が生じることがある。また、主弁の切換え終了後、ロータの回転によって主弁はストッパに当接し停止する。この場合、ロータは直ちに回転を停止できず、主弁の弁軸を過剰に回そうとすることがある。この時、主弁がストッパに当接して回れないので、ステッピングモータの構造に由来して逆にロータの反転回転を生じ、それに起因して、ロータの反転量だけ主弁の弁位置がずれを起こすことがある。主弁が位置ずれを生じた場合、主弁とポートの位置が合致せず、弁漏れを発生する。
【0006】
そこで、この発明の目的は、主弁切換え動作に起因した冷媒流動音の発生が少なく、弁位置のずれを防止することができるとともに、車載用として小型軽量化に適したロータリ式の四方切換弁を提供することである。
【課題を解決するための手段】
【0007】
上記の目的を達成するため、この発明による四方切換弁は、ステータとロータからなるモータ部と、圧縮機の吐出圧力側に連通する弁室が形成されている弁本体と、前記弁室に設けられており前記圧縮機の吸入圧力側に連通する吸入圧力導通孔と室内及び室外の各熱交換器にそれぞれ連通する二つの導通孔とが形成されている弁座と、前記吸入圧力導通孔と前記二つの導通孔に選択的に連通される連通部及び該連通部と前記弁室とを連通する均圧孔が形成されている主弁と、前記モータ部の前記ロータの回転によって前記主弁上で回動して前記均圧孔を開閉し、当該回動の限界で前記主弁と係合しその後の前記ロータの更なる回転で前記主弁を前記弁座上で摺動させて前記連通部を前記二つの導通孔に選択的に切り換える副弁と、備えた四方切換弁において、前記ロータの内部に、当該ロータの回転を減速させて前記副弁を駆動する遊星歯車機構を配設したことを特徴としている。
【発明の効果】
【0008】
この発明は、上記のようにロータ内に遊星歯車機構を配設して構成されており、ロータの回転を副弁や主弁に伝達する駆動部が遊星歯車機構を用いているので、ロータリ式の四方切換弁の小型軽量化が図れるとともに、副弁や主弁の作動速度が減速されており、副弁や主弁を開ける際に緩やかに開弁することができ、冷媒流動音が抑えられ静かに切換ることができる。また、副弁や主弁の回動には充分なトルクが得られるとともに、弁室内に遊星歯車機構を設けることもないので主弁や副弁のための駆動部をコンパクトに構成することができる。更に、遊星歯車機構によって減速した駆動力で主弁を駆動しているので、主弁の停止時にモータの特性に起因してロータが反転回転したとしても、ロータの反転回転量は減速比分だけ減じられ、また遊星歯車機構内に存在するバックラッシュ分で吸収されることもあり、主弁の弁位置に与える影響は極めて少なくなる。したがって、主弁の位置ずれが起きないため、閉じ切らない位置で停止することによる漏れを防止することができる。
【発明を実施するための最良の形態】
【0009】
以下、図面に基づいて本発明によるロータリ式四方切換弁の実施形態について説明する。図1乃至図5は、本発明のロータリ式四方切換弁の第1の実施形態を示すもので、図1はそのモータの回転中心軸線を通る縦面で切断した縦断面図、図2は図1に示す四方切換弁を階段状の円柱面A−Aで切断した断面図、図3は図2と同様の断面図であって主弁の切換え位置が変更された断面図、図4は図1に示す四方切換弁を平面B−Bで切断した断面図、図5は図4と同様の断面図であって主弁の切換え位置が変更された断面図である。図4及び図5は、それぞれ、図2又は図3に示す主弁の切換え位置に対応している。
【0010】
第1の実施形態の四方切換弁1は、特に車載用のロータリ式四方切換弁として案出されたものであり、車載用として求められる小型化・軽量化を実現したものである。この四方切換弁1は、ステッピングモータを備えたモータ部10と、主弁70を備えた本体部50とを備えている。ステッピングモータの通電に伴って主弁70が弁座80上を回動することにより、四方切換弁1を通る冷媒流路の切換えが行われる。モータ部10は、ステータ20と、ロータ40とから構成されており、ステータ20は、上下に格納されたステータコイル21及びヨーク22を備え、ステータコイル21にはリード線が束ねられたケーブル23及びステータ20の外周に設けられたコネクタ24が接続されている。
【0011】
弁本体50には、その上面部において本体ケース51が設けられると共に、本体ケース51の上端部にキャン30が気密状に連結固定される。また、弁本体50上の弁室73には、主弁70と、主弁70上に配置される副弁60とが配置され、弁本体50下部には導管群(図外)が設けられる。また、キャン30にはステータ部20が外嵌されるとともに、ロータ40等が内嵌される。この実施形態では、キャン30はその頂部を上向きとする姿勢に置かれている。
【0012】
ロータ40はキャン30内に回転自在に支持されており、ロータ40の内部には、遊星歯車機構140が収容されている。遊星歯車機構140の減速された回転出力が主弁70や副弁60のための駆動軸47に伝達される。遊星歯車機構140の構造の詳細については後述するが、不思議歯車機構を採用することで、ロータ40の回転を例えば50分の1という大きな減速比で減じて出力することができる。
【0013】
駆動軸47の外周には、一定高さにわたって駆動歯車部47aが形成されている。駆動軸47は、その下部において駆動軸47と同軸線上に配置された支持軸43の上端部が嵌入しており、支持軸43の下端部は弁本体50の弁座80を形成する弁シート部59に対して軸受を介して回転可能に支持されている。また、支持軸43の中間部は後述の主弁70を相対回転自在に貫通している。したがって、主弁70は支持軸43を中心として回転する。駆動軸47は、支持軸43の周りで且つ主弁70上の間のばね受45との間に縮装された押しばね46により弾性的に上方に支持されており、主弁70はその反作用によって弁座80に向かって付勢されている。
【0014】
キャンであるケース30は、その下部において筒状軸受150に固定されており、筒状軸受150は、弁本体の一部である本体ケース51に対してシール部材を介在させた状態でかしめによって固定されている。更に、本体ケース51の下部は弁本体50に溶接によって接合されており、その結果、キャン30、本体ケース51及び弁本体50は一体に固定されている。弁本体50の上面には弁シート部59が嵌着されており、本体ケース51の内面と弁シート部59の上面とで囲まれる空所として弁室73が形成されている。弁シート部59の上面は弁室73の底面となっている。弁本体50には、圧縮機の吸入圧力を導入する吸込圧力導通孔54、圧縮機の吐出圧力を導入する吐出圧力導通孔55、室内及び室外の熱交換器に連通される室外熱交換器用導通孔56及び室内熱交換器用導通孔57(図4、図5参照)が形成されている。
【0015】
図4、図5に示すように、吸入圧力導通孔54及び吐出圧力導通孔55は、支持軸43の中心軸線を挟んで両側位置に設けられているとともに、室外熱交換器用導通孔56及び室内熱交換器用導通孔57は、吸入圧力導通孔54と吐出圧力導通孔55との各孔中心線を結ぶ面に対してその対称位置で、且つ吸入圧力導通孔54と吐出圧力導通孔55とから所定角度位置を異にした位置にそれぞれ設けられている。
【0016】
図示しない導管群は、吸入圧力導通孔54に接続される吸入圧力導通管と、吐出圧力導通孔55に接続される吐出圧力導通管と、室外熱交換器用導通孔56に接続される室外熱交換器用導通管と、室内熱交換器用導通孔57に接続される室内交換機用導通管の四本からなり、吐出圧力導通孔55が弁本体50の側方に開いて形成されているので、吐出圧力導通管が弁本体50の側方に接続固定される外は、他の導通管は弁本体50の下端側にそれぞれ接続固定される。
【0017】
主弁70は、弁室73に収容されており、支持軸43の回りに回転可能に且つ弁シート部59上面を摺動可能に載置されている。主弁70は、図2〜図5に示すように、平面視左右対称の蝶の羽根形で、一定高さを有し、その中心部には支持軸43が挿通される軸孔が穿設されている。図4、図5に示されているように、主弁70の下面には、1つの弧状の曲がり通路に形成された連通部74が開いて形成されており、連通部74の周部は弁シート部59上面への当接部、即ち、弁本体当接部78となっている。弁本体当接部78は、弁室73内と連通部74内との間で流体が直接的に漏れないように弁シート部59に密封状に当接している。
【0018】
図2及び図4に示す状態では、主弁70が一方のストッパ81に当接した一方の切換え位置に達しており、連通部74は吸込圧力導通孔54と室内熱交換器(エバポレータ)用の導通孔57とを連通させている。また、この切換え位置においては、吐出圧力導通孔55と室外熱交換器(コンデンサ)用の導通孔56とが弁室73を通じて連通している。図3及び図5は、主弁70が図2及び図4に示す状態から反時計方向に回転して、主弁70が他方のストッパ82に当接した他方の切換え位置に達した状態を示している。この切換え位置においては、連通部74が吸込圧力導通孔54と室外熱交換器用の導通孔56とを連通させ、吐出圧力導通孔55と室内熱交換器用の導通孔57とを弁室73を通じて連通させている。
【0019】
更に、図1に示すように、主弁70には、連通部74と弁室73とを連通する均圧孔77が穿設されている。均圧孔77は、これを開としたとき、高圧側の弁室73から低圧側の連通部74への冷媒の流れにより、弁室73と連通部74との流体圧が近似することになり、主弁70を弁シート部(弁座)59に押し付ける力が小さくなる(又は殆ど無くなる)。したがって、主弁70を回動させたときに、主弁70の回動がスムースに成り、その結果、冷媒の切り換えが円滑、迅速、且つ容易になる。
【0020】
また、主弁70の上面には、主弁連動ピン72が立設されており、主弁連動ピン72は、後述の副弁60に形成された曲孔64に遊嵌されている。即ち、主弁連動ピン72が曲孔64内を遊動している間は、副弁60は主弁70に回転力を付与しないが、主弁連動ピン72が曲孔64の端部に当接しその状態で更に副弁60が回転するときは、曲孔64の端壁が主弁連動ピン72を押すことになり、主弁70が共動して回転する。
【0021】
主弁70の上面には副弁60が配置されている。副弁60は、主弁70を回転・駆動する作用と共に、主弁70に形成されている均圧孔77を開閉し、以って、主弁70に形成されている連通部74と本体ケース51内の弁室73との間を連通又は閉鎖して圧力の移動・遮断を図り、弁本体50に対する主弁70の押圧力を調整する作用を有する弁である。副弁60は、平面視円形で一定厚みを有し、その外周部には受動歯車部62が形成されている。また、その中央部には回転軸孔61が穿設され、主弁70の上面に立設された回転軸71に軸支される。受動歯車部62の歯数と駆動軸47に形成されている駆動歯車部47aの歯数との比を適宜選択することで、受動歯車部62側のトルクを増幅させるように設定することができる。なお、副弁60と主弁70のいずれか又は両方の当接面には、回転抵抗を低減させるために、テフロン(登録商標)含有樹脂やテフロン含有の表面処理した金属などを用いることが好ましい。
【0022】
副弁60は、駆動軸47の回転により主弁70上で回転し、所定角度以上の回転においては支持軸43を中心に主弁70を回転させる機能を有すると共に、均圧孔77を開閉させる機能を有する。そのために、副弁60には、その周部において一定範囲にわたって曲孔64が形成されると共に、曲孔64の左右端位置に対応してそれぞれ均圧孔閉塞部63a,63bが設けられている。この実施例では、均圧孔閉塞部63a,63bは、副弁60に形成された孔に別部材として嵌合・固定されていることから、均圧孔閉塞部63a,63bの着脱・交換が可能となっている。
【0023】
四方切換弁1を車載用として用いる場合、搭載用として求められる重要事項は小型・軽量であることである。ロータ40の回転を減速して出力軸に出力する減速機構としてロータ40の内部に収容される遊星歯車機構140を用いることで、遊星歯車機構140は大きな減速比を有しながら小型・軽量となり、搭載用として求められる条件を満足する。また、遊星歯車機構140は小型であるにも拘わらず、高精細な弁開度制御が達成される。また、弁本体50及び本体ケース51をアルミニウム材で形成することにより、四方切換弁1の全体重量の更なる軽量化を図ることができる。
【0024】
四方切換弁1には、圧縮機から吐出される高温の媒体と圧縮機へ吸い込まれる低温の媒体とが同時に通過する。弁本体50及び本体ケース51を樹脂製にすると、四方切換弁1の軽量化を図ることができても、耐圧強度が十分ではなく、本体全体を樹脂化するのは難しい。また、本体をステンレスのような丈夫な素材で製作すると、耐圧強度を確保することができても、切換弁として重量が増し、車載等には向かなくなるとともに、コスト高となる。車載用として好適であるようにするために、弁本体50等をアルミニウム材で製作することにより、充分な耐圧強度を確保するとともに切換弁の軽量化を図っている。ただし、アルミニウム材は、弁体が繰り返し衝突する場合には変形等を生じるとともに、熱伝達率が良いために熱を伝え易い。圧縮機等からの高温高圧の流体とエバポレータ等からの低温低圧の流体とが、同じ切換弁を通過するので、熱伝導によるロスが発生する。したがって、弁シート部材59としては、アルミニウム材よりも熱伝達率の低いステンレス製若しくは樹脂製とすることによって、切換弁における熱損失ができるだけ少なくなるようにしてある。
【0025】
以下、遊星歯車機構140について説明をする。図6は遊星歯車機構140を内蔵するモータ駆動部の概略を示す断面図である。ステータ20は、上記のように、気密容器である有頂円筒状のキャン30の外周部に配設されており且つボビンに巻き付けられたコイルが樹脂と一体にモールドされたモータ励磁装置である。キャン30の内部には、ステータ20によって回転駆動される永久磁石型のロータ組立体108が回転自在に支持されている。ステータ20とロータ組立体108とは電動モータの一例としてのステッピングモータを構成している。
【0026】
ロータ組立体108の回転を減速する遊星歯車機構(以下、「減速機構」と略す)140は、ロータ組立体108と一体のサンギア141と、キャリア142に回転自在に支持され且つサンギア141と噛み合う複数の遊星ギア143と、弁本体50側に固定支持されており且つ遊星ギア143の一部と噛み合うリングギア144と、リングギア144の歯数と僅かに歯数が異なる出力内歯ギア145とを備えている。減速機構140によって減速されたロータ組立体108の回転は、出力ギア145を介してドライバ146に伝達される。以下、図6〜図12を参照して、減速機構140について詳細に説明する。
【0027】
図7は、シャフト201とロータ組立体108の詳細を示す断面図である。ステッピングモータの永久磁石型のロータ組立体108は、キャン30の内部においてシャフト201によって回転自在に配設されている。ロータ組立体108は、磁性材料を含有するプラスチック材料によって有頂筒状に形成され、周壁としての筒体202と中央に配設されるサンギア部材204とが一体に成型されている。サンギア部材204には、中心に垂直下方に延びると共にシャフト201のための貫通孔203を有するボス205が設けられている。ボス205の外側には減速機構140の一構成要素であるサンギア141が形成されている。
【0028】
図8は、減速機構140を構成するギアケース220の詳細を示す図であって、(a)は平面図、(b)は断面図である。ギアケース220は、円筒状の部材であり、下部が弁本体50側(図1参照)の上部に嵌合されている。ギアケース220の上端縁221から上方に突出して形成されている4本の舌片222は、先端222aが根元222bに比べて幅が広い逆テーパ状に形成されており、その両側縁部にアンダーカット部が形成されている。この舌片222aを図13に示すリングギア144の凹部234(図9参照)に差し込んで加熱することで、リングギア144の素材のプラスチックが溶融し、リングギア144が確実にギアケース220に固着される。
【0029】
図9は、リングギア144の詳細を示し、(a)は平面図、(b)は(a)のX−X´断面図、(c)は(a)のY方向側面図である。リングギア144は、例えばプラスチックを成型加工して作られたリング状のもので、外周部にはフランジ233が形成されるとともに、ギアケース220の上部に固定されるための凹部234及び凸部232が周方向に交互に形成されている。リングギア144の内周側には、減速機構140を構成する要素の一つであるリングギア歯235が形成されている。
【0030】
図10は、リングギア144の浮き上り及びロータ回転時の振動による騒音を抑制する皿ばね240の詳細を示す図であり、(a)は平面図、(b)は側面図である。図6にも示したように、ギアケース220の上部に嵌装されたリングギア144については、ロータ組立体108の間に配設される皿ばね240によって、浮き上りが防止される。また、ロータ回転時に発生する振動を皿ばね240のばね性により低減し、振動による騒音を抑制することができる。皿ばね240は、ロータ組立体108のサンギア141が設けられたボス205が貫通する孔241を有するリング状のもので、その外周から3方へ延びるばね部242を有する。
【0031】
図11は、減速機構140を構成するキャリア142と遊星ギア143の詳細を示す図であって、(a)はキャリア142の平面図、(b)は遊星ギア143の断面図、(c)はキャリア142の断面図、(d)はプレート254を被せたキャリア142の平面図である。キャリア142は、例えばプラスチックを成型加工して形成され、中心部にシャフト201が貫通する孔250を有する円盤を備え、その上面の周縁部には上方に向けて延びる3本のマスト251と3個の隔壁252が周方向に交互に設けられている。遊星ギア143は筒状に形成され、中心部にはキャリア142のマスト251に回転自在に嵌合される孔253aを有し、外周部にはギア部253を有する。各マスト251に遊星ギア143を嵌合したキャリア142の上面には、一枚のワッシャ状のプレート254が被せられ、マスト251と隔壁252の頂部の凸部がプレート254の孔255に圧入され、固定される。
【0032】
図12は、減速機構140を構成する出力内歯ギア145及びこれと一体の出力軸146の詳細を示す断面図である。出力内歯ギア145は有底円筒状で、底壁の中心には出力軸146の円柱部262が圧入される孔260が形成されている。出力内歯ギア145の内周には、内歯ギア261が形成されている。出力軸146は、シャフト201を受け入れる有底の穴263と、穴263が形成される側と反対側にマイナスドライバ形状の平ドライバ部としての凸部154が形成されている。平ドライバ部としての凸部154は、図6に示すように、駆動軸47のスリット状の凹部155に挿入されて係合状態となる。なお、凸部154と凹部155とは、逆の配置でも良く、図1に示すドライバ構造は、この逆配置となっている。
【0033】
減速機構140においては、ロータ組立体108のサンギア141が入力ギアとなり、キャリア142に支持された遊星ギア143が、サンギア141、固定ギアとしての内歯が形成されているリングギア144、及び内周に内歯261が形成されている出力内歯ギア145に同時に噛み合う。キャリア142全体は、出力内歯ギア145上で自由に回転できるように支持されている。リングギア144と出力内歯ギア145とは互いに転位した関係にあり、互いに歯数が僅かに相違する。この型式の遊星歯車機構は、所謂、不思議歯車機構と称せられ、極めて大きな減速比を達成することができる歯車機構である。遊星ギア143が固定のリングギア144と噛み合いながら自転しつつ公転するとき、歯数の相違に基づいてリングギア144に対して出力内歯ギア145が回転する。したがって、減速機構140では、サンギア141の入力が減速されて出力内歯ギア145に出力され、例えば50対1程度の大きな減速比で減速を行う。ロータ組立体108の回転は、例えば50分の1に減速されて、出力軸146に、そして更には駆動軸47に伝達される。駆動軸47は微少回転数での回転が可能となり、分解能の高い弁開度制御が達成される。
【0034】
図13は、切換弁1の駆動部の主要部の分解斜視図である。弁本体10の筒状上部には、ギアケース220の下端部が嵌装される。ギアケース220の内部の上方には減速機構140が配置される。ギアケース220の上部には4本の舌片222と凹部221が形成されており、舌片222の先端部222aは根元部222bより幅寸法が大きくなるように形成されている。減速機構140の一構成要素であり且つ樹脂等で作られる固定のリングギア144は、内周面にリングギア歯235が形成され、外周部には4つの凹部234が形成されている。リングギア144は、この凹部234をギアケース220の舌片222に差し込み、この部分を加熱してプラスチック製の固定ギアを溶融させることにより堅固に固定される。
【0035】
図14は、シャフト201を支持する支持部材300とその周辺部を示す図であり、(a)は縦断面図、(b)は平面図である。支持部材300は、一枚の金属板をプレス加工してなるもので、ロータ組立体108のシャフト201が嵌入される筒状の内側ハブ部301と、キャン30の内壁に係合し内側ハブ部301と同じ方向に突出した筒状の外側ハブ部302と、内側ハブ部301と外側ハブ部302とを一体的に連結する平板状のフランジ部303とを有している。外側ハブ部302は、キャン30の内壁にしまり嵌め、好ましくは中間嵌めに近いしまり嵌めとなるように、軽圧入の状態に嵌合している。内側ハブ部301は、シャフト201に圧入されてはいないが、嵌合状態にある。なお、サンギア部材204は、皿ばね240の付勢力によってその内周部分で支持部材300に当接しており、ロータ組立体108の回転抵抗が大きくならないようにされている。
【0036】
支持部材300はプレス成形された金属薄板とすることが好ましい。支持部材300は樹脂成形された薄板とすることもできるが、樹脂製品は金属板よりも強度が遥かに低いので、板厚を厚くする必要がある。また、熱膨張が金属製の場合よりも大きくなるので寸法管理を厳しくする必要がある。板厚が厚いとキャン30の高さが高くなり、その分、切換弁の上下方向寸法も長くなるので、板厚を薄くすることができる金属のプレス成形品とすることが好ましい。図示されている形状の支持部材300は、簡易的なプレス成形によって得られる形状・構造である。
【0037】
次に、本実施例の四方切換弁の作動について図1〜図5を用いて説明する。モータ部10において、ケーブル23及びコネクタ24を通じてステータコイル21を通電励磁させることにより、ロータ40がモータ部10の単位パルス当りの回転角度に応じて回転をする。ロータ40の回転は上記したように減速動作をする遊星歯車機構140を介して大きく減速され、減速された回転が駆動軸47を介して副弁60に伝達される。副弁60が主弁70上を回動し、均圧孔77を開閉する。更なる副弁60の回転により、主弁70が副弁60と共動して弁本体50上を回動し、後述する冷媒流れの切換えが行われる。
【0038】
次に、四方切換弁1の具体的な作動について説明する。図2、図4は、冷房運転時のセット状態を示しており、吸入圧力導通管(吸込圧力導通孔54)と室内熱交換器用の導通管(導通孔57)とが主弁70の連通部74を介して連通し、吐出圧力導通孔55と室外熱交換器用の導通孔56とが主弁70の外側、すなわち弁室73に連通している。この状態では、弁室73内の圧力と連通部74内の圧力との間に大きな圧力差があり、主弁70はこの圧力差によって弁本体50に押え付けられていて容易には移動しない。この状態から冷媒流路の切換えを行う場合に、四方切換弁1は、逃し弁である副弁60を用いることで弁室73と連通部74の各圧力の均衡を図り、主弁70を押え付ける力を除いた後に主弁70の回動動作を行う。
【0039】
まず、図2、図4の状態において、ステッピングモータに対するパルス入力によりロータ40が回転し、遊星歯車機構140によって大きく減速された出力回転が駆動軸47に伝達され、歯車部47a,62の噛合いを介して副弁60が回転する。副弁60の一方の均圧孔閉塞部63aによって閉塞されていた主弁70の均圧孔77が解放され、弁室73の冷媒が均圧孔77を介して連通部74内に導入されて弁室73内の圧力と連通部74内の圧力との均衡が図られる。
【0040】
その後、曲孔64が主弁連動ピン72に当接(衝突)すると共に他方の均圧孔閉塞部63bによって主弁70の均圧孔77が閉塞され、この状態で曲孔64が主弁連動ピン72を押して、主弁70を反時計方向に一定の角度、即ち、一方のストッパ81から離れて他方のストッパ82に当接するまで回動・摺動させる(図3、図5の状態)。この動作により、主弁70の連通部74による吸込圧力導通孔54と導通孔57との連通が、吸込圧力導通孔54と導通孔56との連通に切換わり、同時に、弁室73を通じた吐出圧力導通孔55と導通孔56との連通が、吐出圧力導通孔55と導通孔57との連通に切換わる。
【0041】
この動作により、暖房運転時のセット状態になる。また、この間、他方の均圧孔閉塞部63bによって均圧孔77を閉塞した状態で主弁70を回動させることで、弁室73と連通部74と間の圧力差に変動がないから、主弁70の回動が円滑となる。なお、図3、図5の状態から、図2、図4の状態とする場合は、モータ部10を反対の方向に回動作動させればよい。
【0042】
以上のように、本発明の四方切換弁1は、モータ部10への入力パルスによって、副弁60を主弁70上で回動した後、主弁70が弁本体50上を充分なトルクで回動し、且つ、弁室73と連通部74との圧力の均衡を図った後に冷媒の流れの切換えを行うから、簡単な構成・動作で、冷媒の流路の切換え動作を容易、かつ、迅速に行うことができ、さらに、四方切換弁1の信頼性の向上を図ることができる。また、モータ部10のロータ40の回転をロータ40内に配設した遊星歯車機構140によって大きく減速させ、その減速した回転を副弁60、更には主弁70に伝達しているので、副弁60と主弁70の回動速度が緩やかになり、四方切換弁1を通過する冷媒流動音を軽減することができる。更に、主弁70の回動速度が十分に減速されているので、主弁70がストッパ81,82に当接して停止された後に、ステッピングモータの動作特性上、モータ部10の作動が直ちに停止せず反転回転をするような場合でも、主弁70の移動量は減速比に応じて極めて僅かなものとなり、また遊星歯車機構140内に存在するバックラッシュで吸収されることもあって、弁位置の位置ずれを生じることがなく、漏れを生じることもない。
また、副弁60・主弁70共に、簡単な構成で機能させることができるから、可動部品点数を減らして四方切換弁1の製品コストの低減を図ることができる。
【0043】
次に、本発明によるロータリ式四方切換弁の第2の実施形態について説明する。図15はモータの回転中心軸線を通る縦面で切断した縦断面図、図16は図15のC−C平面断面図、図17は図16の右側面図、図18は図16の左側面図である。なお、本実施形態において、第1の実施形態に対応する部分には同一の符号を付してあり、重複する説明は省略する。第2の実施形態の四方切換弁も、第1の実施形態と同様に、車載用の四方切換弁である。
本実施形態では、第1の実施形態において弁本体50から下向きに延出する導管群が横向きになるように構成されている。即ち、図15において、吸入圧力導通孔54が弁本体50の左側面に開口するように設けられ、室外熱交換器用導通孔56及び室内熱交換器用導通孔57が弁本体50の右側面に開口するように設けられている。モータ部10の姿勢と各配管接続部の配置をこのようにすることで、弁本体50の下方に他の物品が存在する場合に、導管群がその物品と干渉することがなくなるとともに、配管接続部が全て横向きであるため、配管作業が改善される。
【0044】
次に、本発明によるロータリ式四方切換弁の第3の実施形態について、図19にそって説明する。なお、本実施形態において、第1の実施形態に対応する部分には同一の符号を付してあり、重複する説明は省略する。第3の実施形態の四方切換弁も、他の実施形態と同様に、車載用の四方切換弁である。
本実施形態では、モータ部10を弁本体50に対して横向きに取り付けている。すなわち、モータ部10の駆動軸47の駆動歯車部47aを傘歯車とするとともに、これを弁本体50の支持軸43に固定された傘歯車43aに噛合させている。また、支持軸43に固定された平歯車43bを副弁60に噛合させている。このようにすることで、弁本体50の上方に他の物品が存在する場合に、モータ部10がその物品と干渉することがなくなる。また、モータ部10を垂直にした場合に、モータ部10の下方に他の物品が存在していても、導管群が横向きであるため、その物品と干渉することがなくなる。
【0045】
次に、本発明によるロータリ式四方切換弁の第4の実施形態(他の実施形態と同様に車載用の四方切換弁)について図20、図21にそって説明する。図20(a)はモータの回転中心軸線を通る縦面で切断した縦断面図、図20(b)は副弁60とその付近を拡大した断面図、図21はその右側面図であり、配管の接続状態を示す。なお、本実施形態は第3の実施形態の弁室の向きを変更した実施形態であり、対応する部分には同一の符号を付すことで、重複する説明は省略する。
本実施形態では、図20に示すように、モータ部10は、キャン30を上向き(正常姿勢)として弁本体50の上側に配置されている。また、弁本体50においては、弁座80、主弁70及び副弁60が横に並ぶように、弁室73は横向きに配置されている。モータ部10のロータ40の回転が出力される縦配置の駆動軸47の回転は、駆動側の傘歯車部47aと被駆動側の傘歯車43aを介して回転力伝達方向が直角に変換されて横配置されている駆動軸(支持軸)43に伝達され、更に平歯車48を介して副弁60を駆動している。また、図21に示すように、弁本体50において、圧縮機C(図15)の吐出圧力側に接続される高圧側配管接続部(ポート)とされる導通孔55は上向きに配置されている。更に、弁本体50において、圧縮機Cの低圧側吸入圧力側に接続される低圧側配管接続部(ポート)とされる導通孔54と、室内及び室外の各熱交換器にそれぞれ接続される配管接続部となるコンデンサ側の導通孔56及びエバポレータ側の導通孔57とは横向きに配置されている。副弁60は、歯車部62の歯車本体内に収容されており、ばね65によって主弁70に対して均圧孔77を閉じる方向に付勢されている。
【0046】
モータ部10の姿勢と各配管接続部の配置を上記のようにすることにより、弁本体50の各導通孔54〜57に対する配管作業が弁室73の上方と横方とになって弁室73下方での配管作業が無くなるので、配管接続の作業性が向上する。これに加えて、モータ部10は上向きのままであるから、作動流体(冷媒)に含まれる潤滑油がモータ部10に滞留することがなく、冷凍サイクルのコンプレッサの作動に悪影響が及ぶのを回避することができる。
【0047】
次に、本発明によるロータリ式四方切換弁の第5の実施形態(他の実施形態と同様に車載用の四方切換弁)について、図22及び図23にそって説明する。図22はモータの回転中心軸線を通る縦面で切断した縦断面図、図23はその右側面図であり、配管の接続状態を示す。本実施形態においては、モータ部10の姿勢や弁室73の向きについては第4の実施形態と同じであるので、対応する部分には同一の符号を付してあり、重複する説明は省略する。
本実施形態では、特に図23に示すように、弁本体50において、圧縮機Cの低圧側吸入圧力側に接続される導通孔54と、室内及び室外の各熱交換器にそれぞれ接続されるコンデンサ側の導通孔56及びエバポレータ側の導通孔57とが横向きに配置されているのみならず、圧縮機Cの吐出圧力側に接続される高圧側配管接続部とされる導通孔55も含めて、すべての配管接続部が横向きに配置されている。
【0048】
モータ部10の姿勢と各配管接続部の配置をこのようにすることにより、配管接続部が全て横向きであるため、第4の実施形態が奏する効果に加えて配管作業を更に改善し、図15に示す第2の実施態様と同等の効果を奏することができる。
【0049】
次に、本発明によるロータリ式四方切換弁の第6の実施形態(他の実施形態と同様に車載用の四方切換弁)について、図24を参照しつつ説明する。図24はモータの回転中心軸線を通る縦面で切断した縦断面図である。本実施形態は図20に示す第4の実施形態とは、ロータ40の回転を出力する縦配置の駆動軸47の回転方向を横配置の駆動軸43の回転方向に直角に変換する傘歯車の構造が異なるのみであるので、第4の実施形態と対応する部分には同一の符号を付してあり、重複する説明は省略する。かかる傘歯車の噛み合いにおいて、駆動軸47側に設けられている駆動側の傘歯車47cのピッチ円径よりも、駆動軸43側に設けられている被駆動側の傘歯車43cのピッチ円径が大径とされている。傘歯車47c,43cの構成によって駆動軸43を介しての副弁60及び副弁60を介しての主弁70の駆動は減速駆動、即ち、大トルク駆動されることになり、主弁70の切換え動作を確実にするという効果を奏することができる。
【0050】
次に、本発明によるロータリ式四方切換弁の第7の実施形態(他の実施形態と同様に車載用の四方切換弁)を図25にそって説明する。図25はモータの回転中心軸線を通る縦面で切断した縦断面図である。本実施形態は、図20に示す第4の実施形態とは、弁本体50に対するモータ部10の配置と、横配置された駆動軸43との駆動連結構造が異なるのみであるので、第4の実施形態と同等の対応部分には同一の符号を付してあり、重複する説明は省略する。
本実施形態では、弁本体50において弁座80、主弁70及び副弁60が横に並ぶように弁室73は横向きに配置されているが、モータ部10は弁本体50に対して上斜め向きに配置されている。また、モータ部10のロータ40の回転は、フレキシブルシャフト又はユニバーサルジョイント等の自在継手49を介して横方向に変換され、副弁60を、更には主弁70を駆動している。自在継手49の一例としてのフレキシブルシャフトは、例えば、カーボンファイバを編んで製造されたものを用いることができる。第7の実施形態によれば、特に車載用として用いる場合には、弁本体60において弁室73を横向きに配置するときにモータ部10は斜め上向きの任意の方向に設定できるので、各導通孔54〜57への配管の作業性を損なうことなく、モータ部10をエンジンルームの余剰空間に効率良く配置することができるので、レイアウトスペースが限られる車載用として好適である。
【0051】
本発明によるロータリ式四方切換弁は、上述した実施形態に限定されるものではなく、本発明の要旨を逸脱しない範囲で上述した実施形態に種々の改変を施すことができることは明らかである。本発明による四方切換弁の用途が車載用以外の場合には、弁本体50の材質として、アルミニウム材よりも熱伝達率の小さい真鍮やステンレス材又は合成樹脂材を使用することによって熱損失を少なくすることができる。
【図面の簡単な説明】
【0052】
【図1】本発明によるロータリ式四方切換弁の第1の実施形態を示す図であって、モータの回転中心軸線を通る縦面で切断した縦断面図。
【図2】図1に示す四方切換弁を階段状の円柱面A−Aで切断した断面図。
【図3】図2と同様の断面図であって主弁の切換え位置が変更された断面図。
【図4】図1に示す四方切換弁を平面B−Bで切断した断面図。
【図5】図4と同様の断面図であって主弁の切換え位置が変更された断面図。
【図6】図1に示す四方切換弁に用いられる遊星歯車機構を内蔵するモータ駆動部の概略を示す断面図。
【図7】図6に示す遊星歯車機構において、シャフトとロータ組立体の詳細を示す断面図。
【図8】図6に示す遊星歯車機構に用いられるギアケースの詳細を示す図。
【図9】図6に示す遊星歯車機構に用いられるリングギアの詳細を示す図。
【図10】図6に示す遊星歯車機構に用いられる固定ギアの浮き上りを防止する皿ばねの詳細を示す図。
【図11】図6に示す遊星歯車機構に用いられるキャリアと遊星ギアの詳細を示す図。
【図12】図6に示す遊星歯車機構に用いられる出力ギアと出力軸の詳細を示す図。
【図13】図6に示す遊星歯車機構に用いられる主要部の分解斜視図。
【図14】図6に示す遊星歯車機構に用いられる支持部材の拡大図。
【図15】本発明によるロータリ式四方切換弁の第2の実施形態を示す図であって、モータの回転中心軸線を通る縦面で切断した縦断面図。
【図16】図15のC−C平面断面図。
【図17】図15の右側面図。
【図18】図15の左側面図。
【図19】本発明によるロータリ式四方切換弁の第3の実施形態を示す図であって、モータの回転中心軸線を通る縦面で切断した縦断面図。
【図20】本発明によるロータリ式四方切換弁の第4の実施形態を示す図であって、モータの回転中心軸線を通る縦面で切断した縦断面図。
【図21】図20の右側面図。
【図22】本発明によるロータリ式四方切換弁の第5の実施形態を示す図であって、モータの回転中心軸線を通る縦面で切断した縦断面図。
【図23】図22の右側面図。
【図24】本発明によるロータリ式四方切換弁の第6の実施形態を示す図であって、モータの回転中心軸線を通る縦面で切断した縦断面図。
【図25】本発明によるロータリ式四方切換弁の第7の実施形態を示す図であって、モータの回転中心軸線を通る縦面で切断した縦断面図。
【図26】四方切換弁を用いた冷房暖房運転時のサイクル構成図。
【符号の説明】
【0053】
1 四方切換弁
10 モータ部 20 ステータ
21 コイル 22 ヨーク
23 ケーブル 24 コネクタ
30 キャン
40 ロータ 43 支持軸(横駆動軸)
43c 傘歯車
45 ばね受 46 押しばね
47 駆動軸 47a 駆動歯車部
47c 傘歯車 48 平歯車
49 自在継手
50 本体部 51 本体ケース
54 吸込圧力導通孔 55 吐出圧力導通孔
56 室外熱交換器用導通孔 57 室内熱交換器用導通孔
59 弁シート部
60 副弁 61 回転軸孔
62 受動歯車部 64 曲孔
70 主弁 71 回転軸
72 主弁連動ピン 73 弁室
74 連通部 77 均圧孔
78 弁本体当接部
80 弁座 81,82 ストッパ
140 遊星歯車機構 141 サンギア
142 キャリア 143 遊星ギア
144 リングギア 145 出力内歯ギア
146 ドライバ

【特許請求の範囲】
【請求項1】
ステータとロータからなるモータ部と、
圧縮機の吐出圧力側に連通する弁室が形成されている弁本体と、
前記弁室に設けられており前記圧縮機の吸入圧力側に連通する吸入圧力導通孔と室内及び室外の各熱交換器にそれぞれ連通する二つの導通孔とが形成されている弁座と、
前記吸入圧力導通孔と前記二つの導通孔に選択的に連通される連通部及び該連通部と前記弁室とを連通する均圧孔が形成されている主弁と、
前記モータ部の前記ロータの回転によって前記主弁上で回動して前記均圧孔を開閉し、当該回動の限界で前記主弁と係合しその後の前記ロータの更なる回転で前記主弁を前記弁座上で摺動させて前記連通部を前記二つの導通孔に選択的に切り換える副弁と、
を備えた四方切換弁において、
前記ロータの内部に、当該ロータの回転を減速させて前記副弁を駆動する遊星歯車機構を配設したことを特徴とする四方切換弁。
【請求項2】
前記モータ部はステッピングモータを構成していることを特徴とする請求項1記載の四方切換弁。
【請求項3】
前記遊星歯車機構は、前記ロータの回転が入力されるサンギア、前記サンギアと同心に配置されたリングギア、キャリアに回転自在に支持されており前記サンギアと前記リングギアとに噛み合う遊星ギア、及び前記遊星ギアに噛み合い且つ前記リングギアの歯数と僅かに相違する歯数を有する出力ギアを備えた不思議歯車機構であり、前記出力ギアの減速回転によって前記主弁及び副弁が駆動されることを特徴とする請求項1又は2記載の四方切換弁。
【請求項4】
前記遊星歯車機構の減速回転を前記副弁に伝達するため、前記遊星歯車機構の出力軸に対して同軸状に連結されているとともに前記副弁と歯車係合する駆動軸が設けられており、更に前記駆動軸は、当該駆動軸と同軸状に配置され前記弁本体に支持されている支持軸によって回転支持されていることを特徴とする請求項1〜3のいずれか1項記載の四方切換弁。
【請求項5】
前記支持軸は、前記主弁を貫通して前記主弁の前記弁座上での摺動を案内していることを特徴とする請求項4記載の四方切換弁。
【請求項6】
前記主弁と前記駆動軸との間には、前記駆動軸を前記遊星歯車機構の前記出力軸に向かって付勢するとともに前記主弁を前記弁座に向かって付勢するばねが介装されていることを特徴とする請求項4記載の四方切換弁。
【請求項7】
前記弁座は、前記主弁の回動範囲を規制する主弁ストッパを備えていることを特徴とする請求項1〜6のいずれか1項記載の四方切換弁。
【請求項8】
前記弁本体はケースと当該ケースが密封的に固定されている弁本体部とから構成されており、前記弁室は前記ケースと前記弁本体部とによって形成されており、前記ステータは前記ケースの外側に配置され、前記ロータは前記ケースの内側に配置されていることを特徴とする請求項1〜7のいずれか1項記載の四方切換弁。
【請求項9】
前記弁本体はアルミニウム製であり、前記弁本体に取り付けられて前記弁座を形成する弁シート部をステンレス製又は樹脂製としたことを特徴とする請求項1〜8のいずれか1項記載の切換弁。
【請求項10】
前記モータ部を前記弁本体の上側に配置するとともに前記弁本体において前記弁座、前記主弁及び前記副弁が横に並ぶように前記弁室を横向きに配置し、前記モータ部の前記ロータの回転方向を横方向に直角に変換して前記副弁を駆動し、更に、前記弁本体において、前記圧縮機の前記吐出圧力側に接続される高圧側配管接続部を前記弁本体に上向きに配置するとともに前記圧縮機の前記吸入圧力側に接続される低圧側配管接続部と前記室内及び室外の各熱交換器にそれぞれ接続される配管接続部とを横向きに配置したことを特徴とする請求項1〜9のいずれか1項記載の切換弁。
【請求項11】
前記モータ部を前記弁本体の上側に配置するとともに前記弁本体において前記弁座、前記主弁及び前記副弁が横に並ぶように前記弁室を横向きに配置し、前記モータ部の前記ロータの回転方向を横方向に直角に変換して前記副弁を駆動し、更に、前記弁本体において、前記圧縮機の前記吐出圧力側に接続される高圧側配管接続部と、前記圧縮機の前記吸入圧力側に接続される低圧側配管接続部と、前記室内及び室外の各熱交換器にそれぞれに接続される二つの配管接続部とを横向きに配置したことを特徴とする請求項1〜9のいずれか1項記載の切換弁。
【請求項12】
前記モータ部を前記弁本体の上側に配置するとともに前記弁本体において前記弁座、前記主弁及び前記副弁が横に並ぶように前記弁室を横向きに配置し、前記モータ部の前記ロータの回転が出力される縦駆動軸の回転方向を傘歯車で直角に変換して横駆動軸を介して前記副弁を駆動し、前記傘歯車の駆動側ピッチ円径よりも被駆動側のピッチ円径を大径としたことを特徴とする請求項1〜9のいずれか1項記載の切換弁。
【請求項13】
前記モータ部を前記弁本体に対して上斜め向きに配置するとともに前記弁本体において前記弁座、前記主弁及び前記副弁が横に並ぶように前記弁室を横向きに配置し、前記モータ部の前記ロータの回転を、自在継手を介して横方向に変換して前記副弁を駆動することを特徴とする請求項1〜9のいずれか1項記載の切換弁。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【図6】
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【図7】
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【図8】
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【図9】
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【図10】
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【図11】
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【図12】
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【図13】
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【図14】
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【図15】
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【図16】
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【図17】
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【図18】
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【図19】
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【図20】
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【図21】
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【図22】
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【図23】
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【図24】
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【図25】
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【図26】
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【公開番号】特開2010−84939(P2010−84939A)
【公開日】平成22年4月15日(2010.4.15)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2008−291463(P2008−291463)
【出願日】平成20年11月13日(2008.11.13)
【出願人】(391002166)株式会社不二工機 (451)
【Fターム(参考)】