説明

回路基板の個体識別装置および個体識別方法

【課題】回路基板の個体識別を簡便かつ容易に実現する回路基板の個体識別装置および個体識別方法を提供すること。
【解決手段】回路基板100上の複数の計測対象110の位置を計測し、計測対象110の計測値と計測対象110の設計値との差を計測対象110ごとの位置情報として取得する位置情報取得手段10と、位置情報取得手段10によって取得された位置情報の組み合わせを基板識別符号として登録する登録手段20とを備える回路基板の個体識別装置。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、回路基板の個体識別装置および個体識別方法に関する。
【背景技術】
【0002】
従来、回路基板のトレーサビリティ実現のための回路基板の個体識別手段として、特許文献1に開示されるように、回路基板の表面に個体ごとに異なる識別マークをパターン上に形成する手段や、特許文献2に開示されるように、バーコードや2次元コード等を印刷する手段や、特許文献3に開示されるように、回路パターンに関係しない複数個のランドもしくはスルーホールに対して個体ごとに異なるパターンで予備はんだもしくは接着剤を塗布する手段や、特許文献4に開示されるように、プリント配線板上にRFIDチップを実装して、チップ内部に製品の個体情報や製造情報を記録する手段や、特許文献5に開示されるように、基板もしくはチップの個体ごとに割り当てられたシリアル番号や品種に対応した回路上の特定の座標位置に複数の位置決めマークを刻印もしくは印刷する手段が知られている。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0003】
【特許文献1】特開2006−228875号公報
【特許文献2】特開2003−078223号公報
【特許文献3】特開平10−270814号公報
【特許文献4】特開2004−087582号公報
【特許文献5】特開2005−252281号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
しかしながら、特許文献1乃至特許文献5に開示されるいずれの手段であっても、これら手段が提供される以前に設計、製造されている品種の回路基板に対して新たに上記手段を適用してトレーサビリティを実現するためには回路基板の追加設計、および、新たに設けられた識別手段に対応した個体判別手段が必要となり、追加設計そのものや、それに伴う回路基板の品質の変動の影響の検証、個体判別手段の設置等によるコストが大きいという問題があった。
【0005】
そこで、本発明は、従来の問題を解決するものであって、すなわち、本発明の目的は、回路基板の個体識別を簡便かつ容易に実現する回路基板の個体識別装置および個体識別方法を提供することである。
【課題を解決するための手段】
【0006】
本発明の回路基板の個体識別装置は、回路基板上の複数の計測対象の位置を計測し、前記計測対象の計測値と前記計測対象の設計値との差を前記計測対象ごとの位置情報として取得する位置情報取得手段と、前記位置情報取得手段によって取得された前記位置情報の組み合わせを基板識別符号として登録する登録手段とを備えることにより、前述した課題を解決したものである。
【0007】
本発明の回路基板の個体識別方法は、回路基板上の複数の計測対象の位置を計測し、前記計測対象の計測値と前記計測対象の設計値との差を前記計測対象ごとの位置情報として取得する手順と、取得された前記位置情報の組み合わせを基板識別符号として登録する手順とを含むことにより、前述した課題を解決したものである。
【発明の効果】
【0008】
本発明では、回路基板の個体識別を簡便かつ容易に実現できる。
【図面の簡単な説明】
【0009】
【図1】本発明の一実施例である回路基板の個体識別装置の全体概略図である。
【図2】図1に示す個体識別装置の動作を示すフローチャート図である。
【図3】回路基板を示す概略的な平面図である。
【図4】一の計測対象におけるスルーホールおよびランドパターンを示す説明図である。
【図5】領域分類に用いられる座標空間を示す説明図である。
【図6】生産情報データベースのデータ構成の一例を示す説明図である。
【図7】検索手順を示すフローチャート図である。
【図8】検索における照合例を示す説明図である。
【図9】領域分類に用いられる座標空間の変形例を示す説明図である。
【図10】本発明の第1変形例である回路基板の個体識別装置の全体概略図である。
【図11】本発明の第4変形例である回路基板の個体識別装置における領域分類に用いられる座標空間を示す説明図である。
【図12】本発明の第6変形例である回路基板の個体識別装置における領域分類に用いられる座標空間を示す説明図である。
【図13】本発明の第6変形例である回路基板の個体識別装置における検索手順を示すフローチャート図である。
【図14】本発明の第6変形例である回路基板の個体識別装置における検索における照合例を示す説明図である。
【発明を実施するための形態】
【0010】
以下、本発明の回路基板の個体識別装置の実施例および変形例を図面に基づいて説明する。
【実施例】
【0011】
本発明の一実施例である回路基板の個体識別装置は、回路基板100上の予め指定された複数の計測対象110ごとの位置情報を取得し、これら位置情報の組み合わせを回路基板100の基板識別符号として利用して回路基板100の個体識別を行うものである。
【0012】
回路基板の個体識別装置は、図1に示すように、回路基板100の複数の計測対象110の位置を計測して計測対象110ごとの位置情報を取得する位置情報取得部(位置情報取得手段)10と、位置情報取得部10によって取得された位置情報の組み合わせを受信して回路基板100ごとに付与されたシリアル番号(個体識別情報)に対応付けて生産情報データベース30に登録する登録部(登録手段)20と、回路基板100の生産情報を記憶する生産情報データベース(記憶手段)30と、位置情報取得部10によって取得された検索対象となる回路基板100の位置情報の組み合わせを検索キーとして生産情報データベース30に記憶された生産情報から該当の回路基板100のシリアル番号を検索する検索部(検索手段)40と、検索部40による検索結果等を出力する出力部(出力手段)50と、使用者による各種入力(例えば、キー入力)を受け付ける入力受付部(入力受付手段)60とを備えている。
【0013】
本実施例では、図3に示すように、回路基板100上の予め指定された複数の計測対象110が、それぞれ、回路基板100上における設計上の座標位置(本実施例では中心の座標位置)が相互に一致するスルーホール(第1計測対象部)111およびランドパターン(第2計測対象部)112を含んでいる。
【0014】
位置情報取得部10は、図1に示すように、回路基板100上の予め指定された複数の計測対象110の位置を計測する位置計測部11と、位置計測部11により計測された計測対象110の計測値と計測対象110の設計値との差分を算出する差分算出部12と、差分算出部により算出された差分を座標空間上の点とみなし、差分が、座標空間を予め複数に区分して成る複数の区分領域のいずれに属するかを分類し、計測対象110ごとの分類情報を取得する領域分類部13とを含んでいる。
【0015】
位置計測部11は、図1に示すように、回路基板100を供給する基板供給ステージ11aと、撮像ステージ11eに固定され基板供給ステージ11aにより供給された回路基板100の表面の外観を撮像するイメージセンサ11bと、イメージセンサ11bによって撮像された回路基板100の外観画像を保持する画像メモリ11cと、画像メモリ11cにより記憶された回路基板100の外観画像を基に計測対象110の位置を計測する画像計測部11dとを備えている。
具体的には、図4に示すように、位置計測部11により、位置決め基準穴113の位置を基準として、スルーホール111の中心111aのXY座標(Xh、Yh)と、ランドパターン112の中心112aのXY座標(Xr、Yr)とが位置計測され、スルーホール111およびランドパターン112の相対位置を示す値として、X軸方向の差分ΔXおよびY軸方向のΔYが算出される。
【0016】
差分算出部12は、位置計測部11により計測された計測対象110の計測値と計測対象110の設計値との差分を算出するものであり、具体的には、スルーホール111およびランドパターン112の相対位置の計測値とスルーホール111およびランドパターン112の相対位置の設計値との差分を算出するものである。
本実施例では、スルーホール111およびランドパターン112の回路基板100上における設計上の座標位置が相互に一致しているため、前記差分は、X軸方向の差分ΔXおよびY軸方向のΔYになる。
【0017】
領域分類部13は、差分算出部12により算出された差分(X軸方向の差分ΔXおよびY軸方向のΔY)を座標空間上の座標(ΔX、ΔY)とみなし、この座標(ΔX、ΔY)が、図5に示すような座標空間を予め複数に区分して成る複数の区分領域のいずれに属するかを分類し、計測対象110ごとの分類情報を取得するものである。
具体的に説明すると、例えば、X軸方向の差分ΔXおよびY軸方向のΔYが、μ<ΔXであり、−μ≦ΔY≦μである場合には、座標(ΔX、ΔY)は、領域(P1−0)に属するものと判断される。
この領域分類部13による前記差分の分類については、以下で詳述する。
なお、本発明で用いる位置情報とは、図5、図9、図11、図12の座標軸である差分ΔX、差分ΔYと同義である。
【0018】
登録部20は、位置情報取得部10によって取得された各計測対象110の位置情報(分類情報)の組み合わせを受信し、これら位置情報の組み合わせを回路基板100ごとに付与されたシリアル番号に対応付けて生産情報データベース30に登録するものである。
具体的には、登録部20は、図6に示すように、該当の回路基板100に付与されたシリアル番号と、計測対象110(スルーホール111)の個数分の分類情報(領域(P1−N1)等)とを対応付けて、生産情報データベース30に登録する。
【0019】
検索部40は、位置情報取得部10から受信した検索対象となる回路基板100の位置情報(分類情報)の組み合わせと、生産情報データベース30に記憶された位置情報(分類情報)の組み合わせとを照合することにより、生産情報データベース30から該当の回路基板100のシリアル番号を検索して特定するものであり、本実施例では、図8に示すように、位置情報取得部10から受信した該当の回路基板100の分類情報の組み合わせと、生産情報データベース30に記憶された位置情報(分類情報)の組み合わせとが完全一致した場合に、該当の回路基板100のシリアル番号が特定されたものとみなされる。
【0020】
出力部50は、検索部40による検索結果等の様々な情報やデータを出力するものであり、検索部40により該当の回路基板100のシリアル番号が特定された場合には該当のシリアル番号を出力し、該当の回路基板100のシリアル番号が特定されない場合には該当なしの旨を出力する。なお、出力部50の具体的な構成は、表示ディスプレイやプリンタ等の如何なるものであってもよい。
【0021】
なお、上述した画像メモリ11c、画像計測部11d、差分算出部12、領域分類部13、登録部20、生産情報データベース30、検索部40等については、ディスプレイ、制御部、記憶部、通信部、補助記憶装置等を備えたサーバ等により実行されるソフトウェアとして構成されている。
【0022】
つぎに、本発明の回路基板の個体識別装置の動作について、図2のフローチャートを参照して概略的に説明する。
【0023】
まず、識別対象となる回路基板100の指定された面全体をイメージセンサ11bにより撮像し、撮像された回路基板100の外観画像を画像メモリ11cに保持する(S101)。図3には、この回路基板100の外観の一例を示している。
【0024】
次に、図4に示すように、予め指定されたスルーホール111の中心111aのXY座標(Xh、Yh)と、ランドパターン112の中心112aのXY座標(Xr、Yr)とを、画像メモリ11cに記憶された回路基板100の外観画像から計測し(S102)、中心111aのXY座標(Xh、Yh)と中心112aのXY座標(Xr、Yr)とのX軸方向の差分ΔXおよびY軸方向のΔYを算出する(S103)。
【0025】
次に、S103で求めたΔX、ΔYの正負および絶対値を、XY座標上の座標(ΔX、ΔY)とみなし、図5に示すXY座標空間上の予め指定された複数の区分領域のいずれに座標(ΔX、ΔY)が属するかを判定し、座標(ΔX、ΔY)が属する領域を数字または記号に変換して分類情報とする(S104)。
【0026】
次に、前述したS102〜S104の手順を、予め指定された全ての計測対象110(スルーホール111、ランドパターン112)において実施する(S105)。
【0027】
次に、S101〜S105の手順を経た回路基板100に対してシリアル番号が未だ付与されていない場合(S106におけるYES)、対象となる回路基板100のシリアル番号を新規作成し(S107)、対象となる全ての計測対象110(スルーホール111、ランドパターン112)の分類情報と回路基板100のシリアル番号とを対応付けて生産情報データベース30に登録する(S108)。
【0028】
他方、S101〜S105の手順を経た回路基板100に対してシリアル番号が既に付与され登録されている場合(S106におけるNO)、S101〜S105の手順で得られた計測対象110(スルーホール111、ランドパターン112)の位置情報(分類情報)を検索キーとして、生産情報データベース30から、全ての計測対象110について分類情報が一致する回路基板100を検索し、対象となる回路基板100のシリアル番号を検索結果として出力する(S109)。
【0029】
なお、S106における該当の回路基板100に対するシリアル番号の付与の有無に関しては、使用者が、任意のタイミングで入力受付部60等を用いて前記付与の有無について入力を行う。
【0030】
つぎに、前述したS104の手順における領域設定、および、得られた分類情報を登録する生産情報データベース30のデータ構成の一例について、説明する。
【0031】
まず、回路基板100のスルーホール111、特に径が0.5mm以内のスルーホール111の穿孔には、近年、レーザドリル装置、すなわちレーザ照射ヘッドを備えたステージを所定の位置に移動し、レーザの光路を制御して単一もしくは複数の穴を1回の照射で穿孔する手段を備えたレーザドリル装置を用いるのが一般的である。そして、レーザドリル装置の加工位置精度は、主にステージの位置決め精度に依存し、ステージは主にサーボ制御されるため、スルーホール111の中心位置のバラツキは、概ね正規分布に従うものと判断できる。
【0032】
また、ランドパターン112の中心位置の精度は、エッチングマスクパターンの加工精度および回路基板100とエッチングマスクパターンとの相対位置決めの精度に依存するが、エッチングマスクパターンもレーザ加工もしくはブラスト加工が主であることから、ランドパターン112の中心位置のバラツキは、スルーホール111の場合と同様に、概ね正規分布に従うものと判断できる。
【0033】
次に、説明の簡略化のため、スルーホール111の中心座標およびランドパターン112の中心座標のバラツキの標準偏差は、全て同一値の標準偏差σであるとし、領域分割の規定値として、0<μ<σとなるμを定義する。
そして、XY座標を規定値μ、−μを境界として、XY各成分で3分割すると、XY座標は、図5に示すように、9つの領域に分割されることになる。なお、図5における領域の名称に関して、XY各成分の0は、0近傍(−μ以上でμ以下)、N1は−μ未満、P1はμより大きいことを意味している。
そして、説明の簡略化のため、前述した座標(ΔX、ΔY)が図5に示す各領域に属する確率が、同一の1/9であるとすると、μの値は、正規分布表における−Z〜Z区間での積分値が0.3333近傍となるZの値から、μ≒0.43σとなる。
【0034】
そして、生産情報データベース30には、図6に示すように、一の回路基板100の個体に対し、図6に示すように、シリアル番号を1つと、各計測対象110(スルーホール111)に対し、前述の手順S104にて得られた領域番号を計測対象の計測対象110(スルーホール111)の個数分記録する。
【0035】
次に、前述手順番号S109に示す分類情報から製品のシリアル番号を検索する手順の一例に関して、図7のフローチャートを参照して説明する。
【0036】
まず、検索対象となる回路基板100の指定された面全体をイメージセンサ11bにより登録時と同様の条件で撮像し、回路基板100の外観画像を画像メモリ11cに保持する(S101)。
【0037】
回路基板100内の予め指定された計測対象110(スルーホール111)を用い、前述の手順S102〜S105にて得られた分類情報を生産情報データベース30の内容と照合する(S121)。
【0038】
それぞれのスルーホール111の領域番号を比較し、一致した数を全てのシリアル番号に対して取得し(S122)、全てのスルーホール111で一致するものが見つかったら(S123)、特定された回路基板100のシリアル番号を検索結果として出力し(S124、照合例を図8に示す)、見つからなければ該当なしを出力する(S130)。
【0039】
さらに、位置計測部11の撮像分解能に対して計測対象110(スルーホール111)の位置ずれ量のバラツキが大きい場合は、領域分割の規定値をX、Y各成分で2つずつ(0<μ1<μ2<σ)設け、X、Y各成分で最低それぞれ5分割し、図9のように合計25分割する形態としてもよい。
【0040】
X成分に関してのみ例を示すと以下のとおりである。
すなわち、「領域N2」がΔX<−μ2、「領域N1」が−μ2≦ΔX<−μ1、「領域0」が|ΔX|≦μ1、「領域P1」がμ1<ΔX≦μ2、「領域P2」がΔX<μ2である。
【0041】
図5に示す座標空間を9分割した例と同様に、各領域に属する確率が同一(1/25)であるとすると、μ1の値は、正規分布表における−Z〜Z区間での積分値が0.2をとるZの値から、μ1≒0.25σとなる。μ2の値は同じく積分値が0.6をとるZの値から、μ2≒0.84σとなる。
【0042】
なお、XY各成分で分割する領域の数は、位置計測部11の撮像分解能や生産情報データベース30の容量などに応じて、3つ以上の任意の個数でよく、さらに領域分割の規定値も2つ以上の異なる任意の値でよいことは言うまでもない。
【0043】
次に、本発明の実用上における代表的な実施条件について、以下に説明する。
【0044】
表面実装型の回路基板100の一般的な設計ルールをふまえると、最も使用頻度の高い0.3mm径のスルーホール111に対して、スルーホール111の中心位置、ランドパターン112の中心位置の公差はいずれも±0.1mmである。
【0045】
スルーホール111の穿孔機の信頼性や歩留まりにも依存するが、スルーホール111の中心位置およびランドパターン112の中心位置のバラツキの標準偏差σを公差の1/4の25umとする場合、スルーホール111とランドパターン112の中心位置の差分に対し、分割された領域が等確率となることが望ましいため、領域を9分割する場合の規定値は、μ≒0.43σ=10.75um、領域を25分割する場合の規定値は、μ1≒0.25σ=6.25um、μ2≒0.84σ=21.00umが好ましい。
また、領域分割の規定値は、入力画像上1画素以上の値をとる必要があるため、位置計測部11の撮像分解能は5um以下が好ましい。
【0046】
次に、本発明の信頼性を実証するため、回路基板100の通算の生産数量N枚中、領域情報が最低1組一致する確率を考える。
【0047】
計測対象110としてのスルーホール111がm個、1個のスルーホール111あたりの領域分割数がS個の場合、1枚の回路基板100でとりうる領域情報の組み合わせは、Sのm乗通りとなる。なお、以下の数式内では、Sのm乗を、S^mと略記する。
【0048】
さらに1枚の回路基板100を生産し、m個のスルーホール111を計測した時に得られる領域情報がSのm乗通りの中から等しい確率で出現すると仮定する。
【0049】
この場合、N枚の回路基板100における領域情報の組み合わせ総数は、(S^m)^N通りとなる。
【0050】
一般に、K通りの異なる数字をN個順番に並べる組み合わせはK!/(K−N)!(K!はKの階乗)で表されるが、K=(S^m)と置き換えれば、これがN枚の回路基板100で得られた領域情報が全て異なる場合の組み合わせ総数となる。
【0051】
以上から、N枚の回路基板100の領域情報の組み合わせで同一のものが全く現れない確率Pは、N枚の回路基板100で得られた領域情報が全て異なる場合の組み合わせ総数を、N枚の回路基板100における領域情報の組み合わせ総数で割ったP=(K!/(K−N)!)/K^Nの値となる。
【0052】
逆に、領域情報が最低1組一致する確率であれば1−Pとなる。
【0053】
Pの値は実用上限りなく1に近づけなければならないため(P=1ならばN=0)、KはNより十分大きい値である必要がある。
生産数量Nに対して、領域情報が最低1組一致する確率(1−P)を1/(A*N)以下とするためのKの条件は、1≧P≧(1−N/K)^Nの関係から、K≧N/(1−(1−1/(A*N))^(1/N))が目安となる。
【0054】
以上から、最低必要なスルーホール111の数は、上記の不等式の解m(=log(K)/log(S))の最小値を小数点以下切り上げた値として求めることができる。
【0055】
回路基板100の生産数量Nは一般的に10の3乗ないし6乗のオーダであり、領域情報の一意性の信頼度を示すAの値を、N=1000の時の一致確率を1ppmとする100であるとすると、領域分割数Sが9および25の場合、以下の表1の通りとなる。
【0056】
【表1】

【0057】
信頼性を示すAの値は仮に最低ラインの100としたが、この値も十分高いことが好ましい。
【0058】
ただ、Aの値が10倍されるごとに、最低必要なスルーホール111の数は1増える程度のため、計測対象のスルーホール数を最低スルーホール数の1.5倍程度にしておけば十分実用に耐えられると見てよい。
【0059】
このようにして得られた本実施例の回路基板の個体識別装置では、計測対象110となるスルーホール111、ランドパターン112の加工における相対位置の誤差のランダム性を利用した回路基板100の個体識別を実現するため、設計上、個体情報を記録したRFIDチップを実装することや、バーコードや2次元コードなどの個体識別コードを直接印刷することが困難である場合であっても、製品のトレーサビリティを簡便かつ容易に確保できる。
【0060】
次に、本発明の回路基板の個体識別装置の変形例について、以下に説明する。
なお、以下の変形例の説明においては、上述した実施例との相違点のみを説明し、相違点以外については説明を省略する。
【0061】
まず、本発明の第1変形例である回路基板の個体識別装置について、図10に基づいて説明する。
【0062】
上述した実施例では、イメージセンサ11bが、撮像ステージ11eに固定されたエリアセンサであり、回路基板100の指定された面全体を撮像するように構成されていたが、イメージセンサ11bの解像度と回路基板100のサイズの関係から位置計測部11の撮像分解能が推奨される値を満たさない場合においては、図10に示すように、イメージセンサ11bを移動させるXYステージ(移動手段)11gを撮像ステージ11e上に設けてもよい。
【0063】
この場合、回路基板100が所定の位置に供給された時点でXYステージ11gを指定された箇所の撮像位置に移動し、当該撮像位置でイメージセンサ11bにより回路基板100の表面の一部を撮像し、個別画像メモリ11fの指定領域に保存する。
そして、前述した動作を全ての撮像位置において実行し、得られた個別画像メモリ11f上の全ての外観画像を、各外観画像を撮像したXYステージ11gの位置を基に合成し画像メモリ(合成画像メモリ)11cに出力することで回路基板100の全体の外観画像を得ることができる。
【0064】
次に、本発明の第2変形例である回路基板の個体識別装置について以下に説明する。
【0065】
第2変形例では、イメージセンサ11bによる撮像時において、イメージセンサ11bをY方向のラインセンサとし、基板供給ステージ11aをX方向に等速に移動させるか、イメージセンサ11b自体をXステージ上で等速に移動させている間にイメージセンサ11bの撮像動作を行うように構成されている。この場合でも同一の撮像効果が得られる。
【0066】
次に、本発明の第3変形例である回路基板の個体識別装置について、以下に説明する。
【0067】
上述した実施例では、回路基板100上の予め指定される計測対象110が、図3に示すように、回路基板100上における設計上の座標位置(中心の座標位置)が相互に一致するスルーホール111およびランドパターン112から構成されるものとして説明したが、これら以外にも、回路基板100上における設計上の座標位置(中心の座標位置)を同じくするレジスト開口部や、配線パターンやシルクパターン等の回路基板100上に形成されるパターンのうち、位置計測が容易で、イメージセンサ11bにおける同一視野内にあり、かつ、計測された位置のバラツキの標準偏差σがある程度高い(例えば公差の1/4以上)パターンのいずれかまたはいずれかの組み合わせを、任意に選択して計測対象110として用いてもよい。
【0068】
この場合、計測対象110を選定するにあたって、回路基板100の位置ごとに設計値に対する加工位置そのもののズレ、レジストの形成位置のズレ、シルク印刷位置のズレがある場合もあるため、回路基板100上のあらゆる位置から均等に抽出するのが好ましい。
【0069】
次に、本発明の第4変形例である回路基板の個体識別装置について、図11に基づいて以下に説明する。
【0070】
上述した実施例では、手順S104における分類情報の生成において、前記差分の正負にのみ着目して9つもしくは25個の区分領域に分類するものとして説明したが、位置計測部11の撮像分解能が計測対象110(スルーホール111)の中心座標のバラツキの標準偏差σに対して十分に精細である場合は、差分の正負のみならず、その大きさや方向に着目した分類、例えば、図11に示すように、第1計測対象部および第2計測対象部の中心位置の差分(ΔX、ΔY)を2次元ベクトルとした時の絶対値と方向、すなわち、極座標(r,θ)における範囲で分類する形態としてもよい。
【0071】
θのしきい値を45度刻みの8個、rのしきい値をμと2μの2つとして領域分割する場合、所属する領域番号の定義は、図11に示す通りとなる。
【0072】
なお、θやrのしきい値の数は、位置計測部11の撮像分解能や、領域に属する確率の分布等に応じて任意に設定すればよい。
【0073】
次に、本発明の第5変形例である回路基板の個体識別装置について、以下に説明する。
【0074】
第5変形例では、計測対象110としてのスルーホール、ランドパターン、レジスト開口部、配線パターン、シルクパターンの加工基準位置の誤差に伴う相対的な位置ずれにより、分類情報の生成時に全ての計測対象110(スルーホール111)の属する領域が同一になる確率が高くなるのを防止するため、例えば、図3に示す回路基板100上に穿孔された位置決め基準穴113の中心位置と、位置決め基準穴113と設計上の座標位置が一致または近傍する箇所(配線パターンの一部であるランドパターン、レジスト開口部、シルクパターン等)の中心位置との相対的の計測値および設計値の差分を算出し、その平均値を補正値として加工基準位置の誤差を相殺する補正部(図示しない)が位置情報取得部10に付加されている。
【0075】
次に、本発明の第6変形例である回路基板の個体識別装置について、図12乃至図14に基づいて以下に説明する。
【0076】
計測対象110の位置計測における繰り返し計測誤差に起因して、ある計測対象110で識別された区分領域が隣接した領域と見なされて不一致と誤判定される事象を回避するため、図7における分類情報の照合手順S121〜S123において、図12のように分割された区分領域のうち隣接された領域まで一致扱いとする判定部を検索部に付加してもよい。
【0077】
すなわち、図13に示すように、全ての計測対象110(スルーホール111)に対して属する区分領域が一致するものが見つからなかった場合は、生産情報データベース30を不一致の計測対象110の数が所定以下のものに限り昇順でソートし(S125)、不一致の計測対象110の数が最も少ないシリアル番号を対象として(S126)、不一致な箇所の全てが隣接する場合(S127)、そのシリアル番号を検索結果として出力する(S124)(照合例は図14)。
【0078】
また、S127において隣接していない領域があった場合は、不一致の計測対象110(スルーホール111)の数が次に大きいシリアル番号を抽出して(S128)、手順S127と同様の比較を行う。
【0079】
ソートした全てのシリアル番号で不一致、かつ、隣接していない領域があった場合(S129)は該当なしを出力する(S130)動作を付加してもよい。
【0080】
ただし、図5に示すような領域分割の規定値を1つ用いた9領域分割の例では、登録時に原点近傍の領域(0−0)となった計測対象110(スルーホール111)においては、XY両成分とも隣接領域までの誤検出を認めると、一致扱い領域と全領域とが等しくなるため、そのスルーホール111の領域識別は不可能である。そのため、本変形例の場合には、図12に示す例のように、プラス側およびマイナス側の両方で、領域分割の規定値を最低2つ設定することが必須となる。
なお、図12の例の場合、隣接領域は両矢印でつながった領域同士、例えば、原点近傍を意味する領域(0−0)の隣接領域は、領域(0−N1)、領域(0−P1)、領域(N1−0)、領域(P1−0)、領域(N1−N1)、領域(N1−P1)、領域(P1−N1)、領域(P1−P1)の8領域となる。
【0081】
さらに、上記の変形例においては、繰り返し計測誤差のために生産情報データベース30の登録時に得られた分類情報と登録済みの回路基板100の分類情報が一致してしまう事象や、相違する分類情報が全て互いに隣接する領域となり、実際隣接した異なる領域として判定すべきところを一致と見なされることで分類情報が一致判定された回路基板100が複数発生する事象をあわせて回避する必要がある。
【0082】
そこで、生産情報データベース30内に登録する分類情報に、計測値が領域分割の規定値からどれだけ近いかという、繰り返し計測誤差による分類情報の誤判定リスクの有無情報を明示する手段と、検索時における一致扱いとする隣接領域の候補を限定する手段をあわせて設けてもよい。
【0083】
例えば、図5等に示す実施例のように領域分割の規定値μ1=σ/4=6.25umとし、計測時の繰り返し最大誤差が計測分解能と同じであり、その値がμ1/5=σ/20=±1.25umの場合を考える。
【0084】
計測対象となる回路基板100のある計測対象110(スルーホール111)の差分算出値の絶対値がXY座標ともに6.25−1.25=5.00um以下であれば、誤判定リスクなしの領域(0−0)と判定する。
【0085】
一方、X座標の絶対値が5.00umを超え6.25um以下であれば、X方向のプラス側に隣接する領域(P1−0)との誤判定リスクありとして、領域(0−0)、誤判定リスク(P1−0)と判定し、その計測値をあわせて保持する。
【0086】
同様に、計測対象110(スルーホール111)がXY座標ともに絶対値が5.00umを超え6.25um以下であれば、XY双方向のプラス側に隣接する領域(P1−0)、領域(0−P1)、領域(P1−P1)の3領域との誤判定リスクありとして、領域(0−0)、誤判定リスク(P1−0、0−P1、P1−P1)と判定する。
【0087】
もし、1つでも誤判定リスクをもつ計測対象110が存在する場合や、全ての計測対象110の領域情報が一致する登録済みの回路基板100が見つかった場合は、全ての計測対象110の計測値をあわせて記録する。
【0088】
また、検索時には、計測対象110(スルーホール111)が領域(0−0)、誤判定リスクなし判定であれば、比較対象となる計測対象110における領域情報が領域(0−0)かつ誤判定リスクなしの場合のみを一致とみなす。
【0089】
一方、領域(0−0)、誤判定リスク(P1−0)判定の場合であれば、比較対象の計測対象110の領域情報が領域(0−0)、領域(P1−0)の2通り、かつ誤判定リスクもその2通りのいずれかのみを一致とみなす。
【0090】
同様に、領域(0−0)、誤判定リスク(P1−0、0−P1、P1−P1)判定の場合であれば、比較対象となる計測対象110における領域情報が領域(0−0)を含めた4通りのいずれか、かつ、誤判定リスクもその4通りのいずれかのみを一致とみなす。
【0091】
それでも、計測対象の回路基板100に対して複数の回路基板100が一致判定された場合は、誤判定リスクを持つ計測対象110(スルーホール111)の計測値(差分)同士を比較し、最も計測値(差分)の差が小さいもの、誤判定リスクを持つスルーホール111が複数であれば計測値(差分)の差の2乗和が最も小さいものを検索結果とする判断部を検索部に設けてもよい。
【0092】
以上のようにして、登録済みの回路基板100の区分領域情報、誤判定リスク情報、計測値を組み合わせることで、計測結果をσ/20の分解能で記録した場合は、1個の計測対象110(スルーホール111)における誤判定リスクをもつ領域(0−0)の計測値の組み合わせは36通りとなるため、計測対象110のスルーホール111がm個の場合、2枚の回路基板100のデータ一致確率は上記例に比べて36のm乗分の1に小さくなる。
【0093】
次に、本発明の第7変形例である回路基板の個体識別装置について、以下に説明する。
【0094】
第7変形例では、上記例において計測繰り返し誤差のリスクをなくすため、加工誤差の標準偏差に対して計測繰り返し誤差の標準偏差を十分小さく、例えば1/20以下に実現できる計測手段を用い、生産情報データベース30に登録する位置情報として、区分領域に関する分類情報は用いずに、差分算出値に対して計測時の最大繰り返し誤差以下を丸めた概算値に置き換えている。
【0095】
この場合、分類情報に相当する概算値が全ての計測対象110(スルーホール111)で一致したシリアル番号が得るべき検索結果となる。
【0096】
以上に説明した実施例および複数の変形例は、その適用有無も含めて任意に組み合わせることが可能である。
【0097】
上記の実施形態の一部又は全部は、以下の付記のようにも記載されうるが、以下には限られない。
【0098】
(付記1)回路基板上の複数の計測対象の位置を計測し、前記計測対象の計測値と前記計測対象の設計値との差を前記計測対象ごとの位置情報として取得する位置情報取得手段と、前記位置情報取得手段によって取得された前記位置情報の組み合わせを基板識別符号として登録する登録手段とを備える回路基板の個体識別装置。
【0099】
(付記2)前記複数の計測対象は、前記回路基板上における設計上の座標位置が相互に一致または近傍する第1計測対象部および第2計測対象部をそれぞれ含み、前記位置情報取得手段は、前記計測対象ごとに前記第1計測対象部および前記第2計測対象部の相対位置を計測して前記位置情報を取得する付記1に記載の回路基板の個体識別装置。
【0100】
(付記3)前記位置情報取得手段は、前記計測対象の位置を計測する位置計測部と、前記位置計測部により計測された前記計測対象の計測値と前記計測対象の設計値との差分を算出する差分算出部と、前記差分算出部により算出された前記差分を座標空間上の点とみなし、前記差分が、座標空間を予め複数に区分して成る複数の区分領域のいずれに属するかを分類し、前記計測対象ごとの分類情報を取得する領域分類部とを含み、前記位置情報には、前記領域分類部により取得された前記分類情報が含められる付記1または付記2に記載の回路基板の個体識別装置。
【0101】
(付記4)前記登録手段は、前記位置情報取得手段によって取得された前記計測対象ごとの位置情報の組み合わせを前記回路基板の個体識別情報に対応付けて記憶手段に登録し、前記回路基板の個体識別装置は、前記位置情報取得手段から受信した前記位置情報の組み合わせと前記記憶手段に記憶された前記位置情報の組み合わせとを照合することにより前記回路基板の前記個体識別情報を検索する検索手段と、前記検索手段による検索結果を出力する出力手段とを更に備える付記1乃至付記3のいずれかに記載の回路基板の個体識別装置。
【0102】
(付記5)前記位置情報取得手段は、前記回路基板の外観を撮像するイメージセンサと、前記イメージセンサによって撮像された前記回路基板の外観画像を記憶する画像メモリと、前記画像メモリにより記憶された前記回路基板の外観画像を基に前記計測対象の位置を計測する画像計測部とを含む付記1乃至付記4のいずれかに記載の回路基板の個体識別装置。
【0103】
(付記6)前記計測対象は、スルーホール、ランドパターン、レジスト開口部、配線パターン、シルクパターンのいずれか、または、いずれかの組み合わせである付記1乃至付記5のいずれかに記載の回路基板の個体識別装置。
【0104】
(付記7)前記位置情報取得手段は、前記回路基板に形成された位置決め基準穴と前記位置決め基準穴に設計上の座標位置が一致または近傍する箇所との相対位置の計測値と、前記位置決め基準穴と前記箇所との相対位置の設計値との差分を算出し、前記差分を補正値として用いて前記計測対象の計測位置を補正する補正部を含む付記1乃至付記6のいずれかに記載の回路基板の個体識別装置。
【0105】
(付記8)前記領域分類部は、前記差分が、直交座標または極座標を予め複数に区分して成る複数の区分領域のいずれに属するかを分類する付記3乃至付記7のいずれかに記載の回路基板の個体識別装置。
【0106】
(付記9)前記位置情報取得手段は、前記領域分類部による前記差分の領域分類時に、前記差分が正しい区分領域に隣接する区分領域に属すると誤判定される可能性の有無を判断する判断部を更に含み、前記位置情報には、前記差分算出部により算出された前記差分と、前記判断部により誤判定の可能性が有ると判断されたことを示す誤判定リスク情報とが含められる付記3乃至付記7のいずれかに記載の回路基板の個体識別装置。
【0107】
(付記10)前記検索手段は、前記位置情報取得手段から受信した前記分類情報の組み合わせと前記記憶手段に記憶された前記分類情報の組み合わせとを照合した際に不一致の計測対象が存在する場合であっても、前記不一致の計測対象間で前記区分領域が相互に隣接し、かつ、前記不一致の計測対象の位置情報に前記誤判定リスク情報が付加されている場合には、前記不一致の分類情報同士が相互に一致するものとみなす判定部を更に含む付記9に記載の回路基板の個体識別装置。
【0108】
(付記11)前記検索手段は、前記分類情報の組み合わせの照合によって一致する回路基板が複数検索された場合に、前記誤判定リスク情報が付加された全ての前記計測対象における前記差分同士を比較し、前記差分同士の差分のXY各成分の2乗和が最小となる回路基板を検索結果として絞り込む判断部を更に含む付記10に記載の回路基板の個体識別装置。
【0109】
(付記12)回路基板上の複数の計測対象の位置を計測し、前記計測対象の計測値と前記計測対象の設計値との差を前記計測対象ごとの位置情報として取得する手順と、取得された前記位置情報の組み合わせを基板識別符号として登録する手順とを含む回路基板の個体識別方法。
【符号の説明】
【0110】
10 ・・・ 位置情報取得部
11 ・・・ 位置計測部
11a ・・・ 基板供給ステージ
11b ・・・ イメージセンサ
11c ・・・ 画像メモリ
11d ・・・ 画像計測部
11e ・・・ 撮像ステージ
11f ・・・ 個別画像メモリ
11g ・・・ XYステージ
12 ・・・ 差分算出部
13 ・・・ 領域分類部
20 ・・・ 登録部
30 ・・・ 生産情報データベース
40 ・・・ 検索部
50 ・・・ 出力部
60 ・・・ 入力受付部
100 ・・・ 回路基板
110 ・・・ 計測対象
111 ・・・ スルーホール
111a ・・・ スルーホールの中心
112 ・・・ ランドパターン
112a ・・・ ランドパターンの中心
113 ・・・ 位置決め基準穴

【特許請求の範囲】
【請求項1】
回路基板上の複数の計測対象の位置を計測し、前記計測対象の計測値と前記計測対象の設計値との差を前記計測対象ごとの位置情報として取得する位置情報取得手段と、前記位置情報取得手段によって取得された前記位置情報の組み合わせを基板識別符号として登録する登録手段とを備えることを特徴とする回路基板の個体識別装置。
【請求項2】
前記複数の計測対象は、前記回路基板上における設計上の座標位置が相互に一致または近傍する第1計測対象部および第2計測対象部をそれぞれ含み、
前記位置情報取得手段は、前記計測対象ごとに前記第1計測対象部および前記第2計測対象部の相対位置を計測して前記位置情報を取得することを特徴とする請求項1に記載の回路基板の個体識別装置。
【請求項3】
前記位置情報取得手段は、前記計測対象の位置を計測する位置計測部と、前記位置計測部により計測された前記計測対象の計測値と前記計測対象の設計値との差分を算出する差分算出部と、前記差分算出部により算出された前記差分を座標空間上の点とみなし、前記差分が、座標空間を予め複数に区分して成る複数の区分領域のいずれに属するかを分類し、前記計測対象ごとの分類情報を取得する領域分類部とを含み、
前記位置情報には、前記領域分類部により取得された前記分類情報が含められることを特徴とする請求項1または請求項2に記載の回路基板の個体識別装置。
【請求項4】
前記登録手段は、前記位置情報取得手段によって取得された前記計測対象ごとの位置情報の組み合わせを前記回路基板の個体識別情報に対応付けて記憶手段に登録し、
前記回路基板の個体識別装置は、前記位置情報取得手段から受信した前記位置情報の組み合わせと前記記憶手段に記憶された前記位置情報の組み合わせとを照合することにより前記回路基板の前記個体識別情報を検索する検索手段と、前記検索手段による検索結果を出力する出力手段とを更に備えることを特徴とする請求項1乃至請求項3のいずれか1項に記載の回路基板の個体識別装置。
【請求項5】
前記位置情報取得手段は、前記回路基板の外観を撮像するイメージセンサと、前記イメージセンサによって撮像された前記回路基板の外観画像を記憶する画像メモリと、前記画像メモリにより記憶された前記回路基板の外観画像を基に前記計測対象の位置を計測する画像計測部とを含むことを特徴とする請求項1乃至請求項4のいずれか1項に記載の回路基板の個体識別装置。
【請求項6】
前記計測対象は、スルーホール、ランドパターン、レジスト開口部、配線パターン、シルクパターンのいずれか、または、いずれかの組み合わせであることを特徴とする請求項1乃至請求項5のいずれか1項に記載の回路基板の個体識別装置。
【請求項7】
前記位置情報取得手段は、前記回路基板に形成された位置決め基準穴と前記位置決め基準穴に設計上の座標位置が一致または近傍する箇所との相対位置の計測値と、前記位置決め基準穴と前記箇所との相対位置の設計値との差分を算出し、前記差分を補正値として用いて前記計測対象の計測位置を補正する補正部を含むことを特徴とする請求項1乃至請求項6のいずれか1項に記載の回路基板の個体識別装置。
【請求項8】
前記領域分類部は、前記差分が、直交座標または極座標を予め複数に区分して成る複数の区分領域のいずれに属するかを分類することを特徴とする請求項3乃至請求項7のいずれか1項に記載の回路基板の個体識別装置。
【請求項9】
前記位置情報取得手段は、前記領域分類部による前記差分の領域分類時に、前記差分が正しい区分領域に隣接する区分領域に属すると誤判定される可能性の有無を判断する判断部を更に含み、
前記位置情報には、前記差分算出部により算出された前記差分と、前記判断部により誤判定の可能性が有ると判断されたことを示す誤判定リスク情報とが含められることを特徴とする請求項3乃至請求項7のいずれか1項に記載の回路基板の個体識別装置。
【請求項10】
回路基板上の複数の計測対象の位置を計測し、前記計測対象の計測値と前記計測対象の設計値との差を前記計測対象ごとの位置情報として取得する手順と、取得された前記位置情報の組み合わせを基板識別符号として登録する手順とを含むことを特徴とする回路基板の個体識別方法。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【図6】
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【図7】
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【図8】
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【図9】
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【図10】
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【図11】
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【図12】
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【図13】
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【図14】
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【公開番号】特開2013−69838(P2013−69838A)
【公開日】平成25年4月18日(2013.4.18)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2011−207054(P2011−207054)
【出願日】平成23年9月22日(2011.9.22)
【出願人】(000004237)日本電気株式会社 (19,353)
【Fターム(参考)】