説明

回路基板

【課題】ウィスカの発生を確実に抑制することができる回路基板を提供すること。
【解決手段】回路基板1は、絶縁基材111と、この絶縁基材111上に形成された回路層112とを備える。絶縁基材111の端部と、この端部上に形成された回路層112と、この回路層112上に設けられた金属積層部114とを含んで端子部1Aが構成されている。金属積層部114は、回路層112上に設けられ、錫または錫合金から構成される金属層(上部金属層)114Bと、この金属層114B上に設けられ、銅または銅合金を含む金属膜114Cとを備える。上部金属層114B表面には、金属膜114Cにより覆われる被覆部と、金属膜114Cにより覆われない未被覆部とが形成され、被覆部は、上部金属層114B表面の隣接する金属粒子間の境界部分を含んでいる。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、回路基板に関する。
【背景技術】
【0002】
従来、電子機器のメインボード等には、回路基板、たとえば、リジッドフレックス回路基板が使用されている。具体的には、回路基板に端子部を設けるとともに、メインボードにコネクタを設ける。回路基板の端子部をメインボードに接続されたコネクタに挿入することで、回路基板とメインボードとが接続されることとなる。
ここで、回路基板の端子部は、たとえば、回路パターン上に第一の錫めっき層を形成し、さらにこの第一の錫めっき層上に第二の錫めっき層を形成したものである(特許文献1参照)。特許文献1では、錫めっき層を2重に形成することで、ウィスカの発生を防止することができるとされている。
さらには、特許文献2には、ウィスカの発生を抑制するために、下地層として無光沢錫めっき層を形成し、上層として光沢錫めっき層を形成することが開示されている。
【0003】
【特許文献1】特開2003−37353号公報
【特許文献2】特開2005−344157号公報
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
しかしながら、本発明者が検討した結果、特許文献1、2に記載の技術では、コネクタに回路基板の端子部を嵌合させた際に、ウィスカが発生し、ウィスカの発生を抑制することが困難であることがわかった。
【0005】
本発明の目的は、ウィスカの発生を確実に抑制することができる回路基板を提供することである。
【課題を解決するための手段】
【0006】
本発明によれば、絶縁基材と、この絶縁基材上に形成された回路層とを備える回路基板であって、前記絶縁基材の端部と、この端部上に形成された前記回路層と、この回路層上に形成された金属積層部とを含んで端子部が構成され、前記金属積層部は、錫または錫合金を含んで構成される金属層と、この金属層上に設けられるとともに、銅または銅合金を含む金属膜とを備え、前記金属層表面には、前記金属膜により覆われる被覆部と、前記金属膜により覆われない未被覆部とが形成され、前記被覆部は、前記金属層の隣接する金属粒子間の境界部分を含む回路基板が提供される。
【0007】
本発明では、金属層表面には、銅または銅合金を含む金属膜により覆われる被覆部と、金属膜により覆われない未被覆部とが形成されており、被覆部は、金属層の隣接する金属粒子間の境界部分を含んでいる。すなわち、金属層上には、金属層表面の隣接する金属粒子間の境界部分を含むように、金属層表面を選択的に覆う金属膜が形成されている。この金属膜が金属層の隣接する金属粒子間の境界を覆うことで、金属層表面の金属粒子を押さえる役割を果たすと推測される。これにより、金属層表面での金属粒子の飛び出しを防止でき、ウィスカの発生を防止することができる。
また、本発明では、金属膜は、金属層の隣接する金属粒子間の境界部分を覆っており、金属層には、金属膜により覆われる被覆部と、金属膜により覆われない未被覆部とが形成されている。
ここで、金属膜の厚みを厚くし、金属層全面を覆うように金属膜を形成することも考えられるが、この場合には、金属膜と金属層との密着性が悪化し、金属膜が剥離を起こす可能性がある。
本発明では、金属膜で金属層の全面を覆わないようにすることで、金属層と金属膜との密着性を高めることができる。
【0008】
ここで、前記金属膜の厚みは、10nm以上、100nm以下であることが好ましい。
金属膜の厚みを100nm以下とすることで、金属層に対して密着性の高い金属膜とすることができる。
また、金属膜の厚みを10nm以上とすることで、確実にウィスカの発生を防止することができる。
【0009】
さらには、前記金属膜は、めっき膜であることが好ましい。
金属膜をめっき膜とすることで、めっき粒子が金属層の隣接する金属粒子間の境界部分に析出し、アンカー効果を生ずることにより確実にウィスカの発生を抑制することができる。
【0010】
また、前記金属積層部は、回路層上に形成され、前記金属層により被覆される下部金属層と、この下部金属層上に設けられる上部金属層としての前記金属層と、前記上部金属層上に設けられる前記金属膜とを備え、前記下部金属層は、金属粒子の平均粒径が0.5μm以上、5μm以下の無光沢めっき層であり、前記上部金属層は、金属粒子の平均粒径が0.1μm以下の光沢めっき層であることが好ましい。
【0011】
端子部の金属積層部を構成する下部金属層は、金属粒子の平均粒径が0.5μm以上5μm以下と比較的粒径が大きいため、内部応力が低い。しかしながら、被膜硬度が低いため、コネクタに接続した際にコネクタから大きな力が加わるとウィスカが発生してしまう。
下部金属層上に設けられる金属粒子の平均粒径が0.1μm以下の上部金属層は、下部金属層よりも被膜硬度が高い。これに加え、上部金属層上に金属膜を設けているので、下部金属層でのウィスカの発生を防止することができる。
【0012】
また、端子部の金属積層部を無光沢めっき層である下部金属層を有しないものとした場合には、端子部の金属積層部の内部応力が高くなり、ウィスカが発生するおそれがある。
これに対し、端子部の金属積層部を内部応力の低い無光沢めっき層である下部金属層と、比較的内部応力が高くなりやすい光沢めっき層である上部金属層とを備える構成とすることで、端子部の金属積層部の内部応力を低く抑えることができ、ウィスカの発生を抑制することができる。
なお、光沢めっき層とは、金属粒子の平均粒径が0.1μm以下の層であればよく、いわゆる半光沢めっき層をも含む概念である。
【0013】
この際、前記下部金属層は、錫または錫合金を含む無光沢めっき層であることが好ましい。
また、前記下部金属層は、ニッケルまたはニッケル合金を含む無光沢めっき層であってもよい。
【0014】
さらに、前記下部金属層の厚みは15μm以下であり、前記上部金属層の厚みは5μm以下であることが好ましい。
下部金属層の厚みを15μm以下とすることで、下部金属層中で発生する内部応力を低減させることができる。
さらに、上部金属層の厚みを5μm以下とすることで、上部金属層中で発生する内部応力を低減させることができる。これにより、端子部でのウィスカの発生をさらに確実に抑制することができる。
【0015】
また、前記回路層上に直接前記下部金属層が形成されていることが好ましい。
回路層上に直接下部金属層を形成することで金属積層部の内部応力を低減させることができるという効果を奏することができる。
さらに、前記絶縁基材は、可撓性を有するものであることが好ましい。
【発明の効果】
【0016】
本発明によれば、ウィスカの発生を確実に抑制することができる回路基板が提供される。
【発明を実施するための最良の形態】
【0017】
以下、本発明の実施形態を図面に基づいて説明する。
図1には、本実施形態の回路基板1が示されている。また、図2,3には、この回路基板1の端子部1Aの表面の拡大図が示されている。
まず、はじめに、回路基板1の概要について説明する。
回路基板1は、絶縁基材111と、この絶縁基材111上に形成された回路層112とを備える。
絶縁基材111の端部と、この端部上に形成された回路層112と、この回路層112上に設けられた金属積層部114とを含んで端子部1Aが構成されている。
金属積層部114は、回路層112上に設けられ、錫または錫合金から構成される金属層(上部金属層)114Bと、この金属層114B上に設けられ、銅または銅合金を含む金属膜114Cとを備える。
上部金属層114B表面には、金属膜114Cにより覆われる被覆部114B1と、金属膜114Cにより覆われない未被覆部114B2とが形成され、被覆部114B1は、上部金属層114B表面の隣接する金属粒子間の境界部分を含んでいる。
なお、図2は、端子部1A表面を拡大した断面図であり、図3は端子部1A表面を拡大した平面図である。また、図3の一点鎖線は、上部金属層114Bを平面視した際の、上部金属層114B表面の金属粒子の外形を示している。
【0018】
次に、回路基板1の構造について詳細に説明する。
回路基板1は、絶縁基材111と、この絶縁基材111上に設けられた回路層112と、表面被覆層113と、金属積層部114とを備える。
絶縁基材111は、樹脂フィルム基材から構成されている。ここで、樹脂フィルム基材としては、可撓性を有するものが好ましく、例えば、ポリイミド樹脂フィルム、ポリエーテルイミド樹脂フィルム、ポリアミドイミド樹脂フィルム等のポリイミド樹脂系樹脂フィルム、ポリアミド樹脂フィルム等のポリアミド樹脂系フィルム、ポリエステル樹脂フィルム等のポリエステル樹脂系フィルムが挙げられる。このうち、弾性率と耐熱性を向上させる観点から、特にポリイミド樹脂系フィルムが好ましく用いられる。
絶縁基材111の厚さは、特に限定されないが、5〜50μmが好ましく、特に12.5〜25μmが好ましい。厚さがこの範囲内であると、特に屈曲性に優れる。
【0019】
回路層112は、銅等の導体から構成されており、絶縁基材111の表面側にのみ設けられている。この回路層112のうち、絶縁基材111の端部に形成された部分は、前述した端子部1Aを構成する。
【0020】
表面被覆層113は、回路層112の回路パターンの隙間部分を埋めるように設けられており、表面被覆層113の開口部からは、回路層112のうち、絶縁基材111の端部上に形成された部分を含む回路層112の一部が露出している。
この表面被覆層113は、いわゆるカバーレイフィルムであり、接着層113Aと、接着層113A上に設けられた樹脂フィルム113Bとを備えている。
接着層113Aとしては、例えば、エポキシ樹脂、ポリエステル系樹脂、ポリイミド系樹脂、ポリアミド系樹脂、ポリアミドイミド系樹脂、ポリウレタン系樹脂、エポキシ系樹脂等の熱硬化性樹脂を含む樹脂組成物で構成されていることが好ましい。これらの中でもエポキシ系樹脂が好ましい。これにより、密着性を向上することができる。さらに、耐熱性を向上することもできる。
樹脂フィルム113Bとしては、たとえば、ポリイミド樹脂フィルム、ポリアミドイミド樹脂フィルム等のポリイミド樹脂系樹脂フィルム、ポリエステル樹脂フィルム等のポリエステル樹脂系フィルム等があげられる。
【0021】
金属積層部114は、回路層112上に設けられている。この金属積層部114のうち、絶縁基材111の端部の上方に形成された部分は、前述した端子部1Aを構成する。
この金属積層部114は、回路層112上に形成された下部金属層114Aと、前述した錫または錫合金から構成される上部金属層114Bと、銅または銅合金を含む金属膜114Cとを備える。
【0022】
下部金属層114Aは、上部金属層114Bにより全面が被覆されている。また、この下部金属層114Aは、回路層112上に直接形成されている。
下部金属層114Aは、Pbフリーめっきであり、本実施形態では、錫または錫合金から構成される。錫合金としては、Sn−Cu、Sn−Bi、Sn−Ag等が例示できる。なかでも、ウィスカの発生しにくいSn−Cuを使用することが好ましい。
この下部金属層114Aは、金属粒子の平均粒径が0.5μm以上5μm以下のいわゆる無光沢めっき層である。ここでいう無光沢めっき層とは、金属粒子の平均粒径が0.5μm以上5μm以下のものをいう。金属粒子の平均粒径が0.5μm以上5μm以下であれば、下部金属層114Aを形成するためのめっき液中には、完全に光沢剤が添加されていなくてもよく、また、多少の光沢剤が添加されていてもよい。
【0023】
なかでも下部金属層114Aの金属粒子の平均粒径は1μm以上であることが好ましい。このようにすることで、下部金属層114Aで発生する内部応力を確実に低減させることができる。また、金属粒子の平均粒径は3μm以下とすることが好ましい。このようにすることで、下部金属層114Aの硬度の低下を防止することができる。
下部金属層114Aの厚みは、5μm以上、15μm以下であることが好ましい。なかでも、7μm以上であることが好ましい。7μm以上とすることで、金属積層部114の厚みを確保することができる。
また、下部金属層114Aの厚みは、10μm以下であることがより好ましい。10μm以下とすることで、下部金属層114A中で発生する内部応力を確実に低減させることができる。
【0024】
上部金属層114BもPbフリーめっきであり、具体的には、錫または錫合金から構成される。錫合金としては、Sn−Cu、Sn−Bi、Sn−Ag等が例示できる。なかでも、ウィスカの発生しにくいSn−Cuを使用することが好ましい。
上部金属層114Bは、金属粒子の平均粒径が0.1μm以下である、いわゆる光沢めっき層である。光沢めっき層とは、金属粒子の平均粒径が0.1μm以下であればよい。上部金属層114Bを形成するためのめっき液中には光沢剤が添加されている。
【0025】
上部金属層114Bの厚みは、0.5μm以上、5μm以下であることが好ましい。なかでも、1μm以上であることが好ましい。1μm以上とすることで上部金属層表面114Bの微小欠損が小さくなり、下部金属層114Aの粒子が飛び出しにくくなるという効果がある。また、上部金属層114Bの厚みは、3μm以下であることがより好ましい。3μm以下とすることで上部金属層表面114Bが酸化された場合でも内部応力の発生が小さく粒子が押し出されることがないという効果がある。
下部金属層114Aと上部金属層114Bとの膜厚の比率(下部金属層114A:上部金属層114B)は1:1以上、30:1以下であることが好ましい。
【0026】
金属膜114Cは、厚さ10〜100nmの薄膜であり、実質的に錫を含んでいないものである。すなわち、金属膜114Cには意図的に錫が添加されていない。具体的には、金属膜114Cは、銅または銅合金から構成されるものである。この金属膜114Cは、フラッシュめっきにより形成されるめっき膜である。
金属膜114Cは、厚さ20nm以上であることが好ましい。金属膜114Cの厚みを20nm以上とすることで確実にウィスカの発生を防止することができる。
また、金属膜114Cの厚みは、50nm以下であることが好ましい。このようにすることで、金属膜114Cと上部金属層114Bとの密着性を高めることができる。
なお、金属膜114Cの厚みTは、図2の模式図に示すように、金属膜114Cの最も深い位置から表面までの距離をいう。
【0027】
金属膜114Cは、図2および図3に示すように、ポーラス状の被膜であり、上部金属層114Bを完全に覆っていない。具体的には、金属膜114Cは、上部金属層114Bの隣接する金属粒子間の境界部分を埋め込むように、上部金属層114Bの表面を選択的に覆っており、上部金属層114B表面の各金属粒子の上面部分は覆っていない。
すなわち、上部金属層114B表面には、金属膜114Cにより覆われる被覆部114B1と、金属膜114Cにより覆われない未被覆部114B2とが形成されることとなる。被覆部114B1は、上部金属層114B表面の隣接する金属粒子間の境界部分を含んでいる。
【0028】
なお、下部金属層114A、上部金属層114Bの金属粒子の平均粒径は、金属積層部114の断面をSEMによって観察し、粒径を計測することで得られる。また、下部金属層114A、上部金属層114B、金属膜114Cの膜厚も、金属積層部114の断面をSEMによって観察することで計測することができる。
【0029】
ここで、端子部1Aは、図1に示すように、絶縁基材111の端部と、回路層112のうち、この絶縁基材111の端部上に形成された部分と、金属積層部114のうち、絶縁基材111の端部上に形成された回路層112上に設けられた部分とを含んで構成されている。
また、端子部1Aは、絶縁基材111の裏面に設けられた補強部115を有する。
補強部115は、絶縁基材111の裏面上に設けられた粘着剤115Aと、この粘着剤115Aにより絶縁基材111裏面に貼り付けられる補強フィルム115Bと備える。
補強フィルム115Bとしては、たとえば、ポリイミド樹脂フィルム、ポリアミドイミド樹脂フィルム等のポリイミド樹脂系樹脂フィルム、ポリエステル樹脂フィルム等のポリエステル樹脂系フィルム等があげられる。
このような端子部1Aは、図4(A)、(B)に示すように、メインボードMのコネクタCに接続される。コネクタCに端子部1Aを接続すると、コネクタC内の接触ピンが端子部1Aの金属積層部114に接触し、メインボードMと回路基板1とが電気的に接続されることとなる。
【0030】
次に、図5を参照して、回路基板1の製造方法について説明する。
まず、はじめに、図5(A)に示すように、絶縁基材111と、この絶縁基材111の表面に金属箔(たとえば、銅箔)212が設けられた積層板21を用意する。
次に、図5(B)に示すように、金属箔212の一部をエッチング等により、選択的に除去し、回路層112を形成する。
その後、図5(C)に示すように、回路層112上に開口部が形成された表面被覆層113を貼り付ける。ここで、表面被覆層113の開口部は、あらかじめカバーレイフィルムをパンチングすることで形成される。表面被覆層113を回路層112に積層する条件は、特に限定されないが、温度80〜220℃、圧力0.2〜10MPaで熱圧成形装置により圧着することが好ましい。
【0031】
次に、図5(D)に示すように、絶縁基材111の端部上に配置された回路層112上に金属積層部114を形成する。具体的には、表面被覆層113の開口部から露出した回路層112にSn電解めっき、あるいはSn合金の電解めっきを施し、回路層112を覆う下部金属層114Aを形成する。下部金属層114Aを形成するためのめっき液中には、光沢剤が添加されていないことが好ましい。
その後、下部金属層114A上に下部金属層114Aを覆う上部金属層114Bを形成する。具体的には、下部金属層114Aに対し、Sn電解めっき、あるいはSn合金の電解めっきを施して、上部金属層114Bを形成する。上部金属層114Bを形成するためのめっき液中には光沢剤が添加されている。
さらに、上部金属層114B上にフラッシュめっきにより金属膜114Cを形成する。たとえば、硫酸銅めっき液を用い、短時間、高電圧の電解めっきにより金属膜114Cを形成する。
【0032】
その後、絶縁基材111の端部裏面に補強部115を貼り付ける。以上のような工程により、回路基板1を得ることができる。
【0033】
次に、本実施形態の効果について説明する。
上部金属層114B上には、銅または銅合金を含むとともに、上部金属層114Bの隣接する金属粒子間の境界部分を覆う金属膜114Cが形成されている。この金属膜114Cが上部金属層114B表面の金属粒子を押さえる役割を果たすと推測される。これにより、上部金属層114B表面での金属粒子の飛び出しを防止でき、ウィスカの発生を防止することができる。
また、本実施形態では、金属膜114Cは、上部金属層114Bの隣接する金属粒子間の境界部分を覆っており、上部金属層114Bには、金属膜114Cにより覆われる被覆部114B1と、金属膜114Cにより覆われない未被覆部114B2とが形成されている。
ここで、金属膜114Cの厚みを厚くし、上部金属層114B全面を覆うように金属膜を形成することも考えられるが、この場合には、金属膜114Cと上部金属層114Bとの密着性が悪化し、金属膜114Cが剥離を起こす可能性がある。
金属膜114Cで上部金属層114Bの全面を覆わないようにすることで、上部金属層114Bと金属膜114Cとの密着性を高めることができる。
特に、本実施形態では、金属膜114Cの厚みを100nm以下としているので、上部金属層114Bと金属膜114Cとの密着性を確実に高めることができる。
【0034】
さらに、本実施形態では、金属膜114Cの厚みを10nm以上としているので、金属膜114Cにより、上部金属層114Bの金属粒子を確実に押さえることができ、確実にウィスカの発生を防止することができる。
【0035】
また、本実施形態では、金属膜114Cをめっき法により形成している。金属膜114Cをスパッタ等により形成することも考えられるが、この場合には、金属膜114Cを形成する領域以外の部分に金属膜が形成されてしまうことがあり、回路基板において導通不良等が発生する場合がある。
これに対し、本実施形態では、金属膜114Cをめっき法により形成しているので、このような問題は生じない。
さらに、金属膜114Cをめっき膜とすることで、めっき粒子が金属層の隣接する金属粒子間の境界部分に析出し、アンカー効果を生ずることにより確実にウィスカの発生を抑制することができる。
【0036】
端子部1Aの金属積層部114を構成する下部金属層114Aは、金属粒子の平均粒径が1μm以上5μm以下と比較的粒径が大きいため、内部応力が低い。しかしながら、被膜硬度が低いため、コネクタに接続した際にコネクタから大きな力が加わるとウィスカが発生してしまう。
下部金属層114A上に設けられる金属粒子の平均粒径が0.1μm以下の上部金属層114Bは、下部金属層114Aよりも被膜硬度が高い。これに加え、上部金属層114B上に金属膜114Cを設けているので、下部金属層114Aでのウィスカの発生を防止することができる。
【0037】
また、端子部の金属積層部を無光沢めっき層を有しないものとし、たとえば、光沢めっき層と金属膜114Cとから構成されるものとした場合には、端子部の金属積層部の内部応力が高くなり、ウィスカが発生してしまう可能性がある。
これに対し、端子部1Aの金属積層部114を内部応力の低い無光沢めっき層である下部金属層114Aと、比較的内部応力が高くなりやすい光沢めっき層である上部金属層114Bとを備える構成とすることで、端子部1Aの金属積層部114の内部応力を低く抑えることができ、ウィスカの発生を抑制することができる。
【0038】
下部金属層114Aの厚みを15μm以下とすることで、下部金属層114A中で発生する内部応力を低減させることができる。
また、下部金属層114Aの厚みを5μm以上とすることで、金属積層部114の厚みを確保することができ、コネクタCとの接合を確実なものとすることができる。
【0039】
さらに、上部金属層114Bの厚みを5μm以下とすることで、上部金属層114B中で発生する内部応力を低減させることができる。これにより、端子部1Aでのウィスカの発生をさらに確実に抑制することができる。
また、上部金属層114Bの厚みを0.5μm以上とすることで、金属積層部114全体としての硬度を確保することができる。
【0040】
本実施形態では、回路層112上に直接下部金属層114Aを形成している。
回路層112上に下地層としてNi層等を形成してもよいが回路層112上に直接下部金属層114Aを形成することで、回路基板1の製造効率を高めることができる。
また、回路基板上に直接下部金属層114Aを形成することで金属積層部114の内部応力を低減させることができるという効果がある。
【0041】
なお、本発明は前述の実施形態に限定されるものではなく、本発明の目的を達成できる範囲での変形、改良等は本発明に含まれるものである。
たとえば、前記実施形態では、絶縁基材111の表面側にのみ回路層112が形成されていたが、これに限らず、絶縁基材の裏面側にも回路層が形成されていてもよい。
さらに、本発明にかかる回路基板は、リジッド回路基板であってもよく、また、リジッドフレックス回路基板等としてもよい。
また、回路基板を複数の絶縁基板を有する多層構成としてもよい。
【0042】
前記実施形態では、端子部1Aの金属積層部114の下部金属層114Aを錫または錫合金を含む無光沢めっき層としたが、これに限らず、下部金属層114Aは、金属粒子の平均粒径が0.5μm以上5μm以下の無光沢めっき層であればよい。たとえば、下部金属層をNiあるいはNi合金の無光沢めっき層から構成してもよい。ニッケル合金としては、たとえば、Ni−P、Ni−Co、Ni−B等が例示できる。
下部金属層をNiあるいはNi合金の無光沢めっき層とする場合には、下部金属層の膜厚を1μm以上、特に3μm以上とすることが好ましく、また、7μm以下、特に5μm以下とすることが好ましい。
【0043】
さらに、前記実施形態では、金属積層部114は、下部金属層114A、上部金属層114B、金属膜114Cを有するものとしたが、これに限られるものではない。たとえば、金属積層部を、錫または錫合金を含んで構成される金属層と、金属膜とから構成される2層構成のものとしてもよい。ここで、錫または錫合金を含んで構成される金属層は、光沢めっき層であってもよく、また、無光沢めっき層であってもよい。ただし、この場合、錫または錫合金を含んで構成される金属層を、無光沢めっき層とする場合に比べ、光沢めっき層とした場合のほうが、ウィスカの発生を低減させることができる。
【0044】
また、前記実施形態では、絶縁基材111を可撓性を有するものとしたが、これに限らず、絶縁基材111を硬質板から構成してもよい。
さらに、前記実施形態では、下部金属層114Aは、回路層112上に直接設けられていたが、これに限らず、回路層112上にNi層等を形成し、このNi層等の上に下部金属層114Aを形成してもよい。
【実施例】
【0045】
以下、本発明の実施例および比較例に基づいて詳細に説明するが、本発明はこれに限定されるものではない。
(実施例1)
厚さ25μmのポリイミド基材(絶縁基材)の片面に厚さ18μmの銅箔を有する両面銅張板(積層板)を用意した。
次に、前記銅箔の一部を選択的に除去し、最小回路幅75μm、最小回路間75μmの回路層を作製した。
さらに、予め開口部を設けた表面被覆層(ポリイミド樹脂基材絶縁被覆フィルム)を最高温度160℃、圧力4MPaの熱圧成形装置にて圧着した。その後、回路層上に端子部を構成する金属積層部を形成し、端子部を有する回路基板を製造した。
ここで金属積層部の形成方法は以下の通りである。
【0046】
下部金属層
下部金属層を電解めっき法により形成した。
使用しためっき液の組成を表1に示す。
【0047】
【表1】

【0048】
また、電流密度は、2.0A/dmとした。なお、下部金属層用のめっき液中には光沢剤は添加されていない。
【0049】
上部金属層
上部金属層を電解めっき法により形成した。
使用しためっき液の組成を表2に示す。
【0050】
【表2】

【0051】
また、電流密度は、3.0A/dmとした。なお、第二金属層用のめっき液中には光沢剤としてNF−111A(日本マクダーミッド(株)社製)、が30ml/L添加されている。
【0052】
金属膜
金属膜をフラッシュめっき法により形成した。
使用しためっき液の組成を表3に示す。
【0053】
【表3】

【0054】
金属膜を形成する際には、めっき液の温度、有機酸濃度等を適宜調整するとともに、通常のCuの電解めっきのめっき条件よりも電流密度を高くし、短時間でめっきを行った。
【0055】
次に、得られた回路基板の金属積層部の下部金属層の金属粒子の平均粒径、膜厚、上部金属層の金属粒子の平均粒径、膜厚、金属膜の膜厚を計測した。
金属粒子の平均粒径、膜厚は、金属積層部の断面をSEM観察することで測定した。
結果を表4に示す。
【0056】
【表4】

【0057】
(比較例1)
端子部の金属積層部を下部金属層、上部金属層を有するものとし、金属膜は形成しなかった。他の条件は実施例1と同じである。
【0058】
実施例および比較例について、ウィスカの発生に関して比較を行った。
ウィスカの発生試験の条件は以下の通りである。また、結果を表5に示す。
【0059】
回路基板の、金属層が形成された端子部の周辺を試験片として切り出す。切り出した試験片を、厚さ3mmのアクリル板を用いて挟み込み、1kg/cm2の圧力をかけた状態で、室温下1000時間放置後ウィスカの発生状況を目視にて観察した。
【0060】
【表5】

【0061】
比較例に比べ、実施例ではウィスカの発生を抑制することができることがわかった。
【図面の簡単な説明】
【0062】
【図1】本発明の実施形態にかかる回路基板を示す断面図である。
【図2】回路基板の金属積層部の表面の断面を模式的に示した図である。
【図3】回路基板の金属積層部の表面の表面を模式的に示した図である。。
【図4】回路基板とコネクタとを示す図である。
【図5】回路基板の製造工程を示す断面図である。
【符号の説明】
【0063】
1 回路基板
1A 端子部
21 積層板
111 絶縁基材
112 回路層
113 表面被覆層
113A 接着層
113B 樹脂フィルム
114 金属積層部
114A 下部金属層
114B 上部金属層(金属層)
114B1 被覆部
114B2 未被覆部
114C 金属膜
115 補強部
115A 粘着剤
115B 補強フィルム
212 金属箔
C コネクタ
M メインボード

【特許請求の範囲】
【請求項1】
絶縁基材と、この絶縁基材上に形成された回路層とを備える回路基板であって、
前記絶縁基材の端部と、この端部上に形成された前記回路層と、この回路層上に形成された金属積層部とを含んで端子部が構成され、
前記金属積層部は、錫または錫合金を含んで構成される金属層と、この金属層上に設けられるとともに、銅または銅合金を含む金属膜とを備え、
前記金属層表面には、前記金属膜により覆われる被覆部と、前記金属膜により覆われない未被覆部とが形成され、
前記被覆部は、前記金属層の隣接する金属粒子間の境界部分を含む回路基板。
【請求項2】
請求項1に記載の回路基板において、
前記金属膜の厚みは、10nm以上、100nm以下である回路基板。
【請求項3】
請求項1または2に記載の回路基板において、
前記金属膜は、めっき膜である回路基板。
【請求項4】
請求項1乃至3のいずれかに記載の回路基板において、
前記金属積層部は、前記回路層上に形成され、前記金属層により被覆される下部金属層と、この下部金属層上に設けられる上部金属層としての前記金属層と、
前記上部金属層上に設けられる前記金属膜とを備え、
前記下部金属層は、金属粒子の平均粒径が0.5μm以上、5μm以下の無光沢めっき層であり、
前記上部金属層は、金属粒子の平均粒径が0.1μm以下の光沢めっき層である回路基板。
【請求項5】
請求項4に記載の回路基板において、
前記下部金属層は、錫または錫合金を含む無光沢めっき層である回路基板。
【請求項6】
請求項4に記載の回路基板において、
前記下部金属層は、ニッケルまたはニッケル合金を含む無光沢めっき層である回路基板。
【請求項7】
請求項4乃至6のいずれかに記載の回路基板において、
前記下部金属層の厚みは15μm以下であり、前記上部金属層の厚みは5μm以下である回路基板。
【請求項8】
請求項4乃至7のいずれかに記載の回路基板において、
前記回路層上に直接前記下部金属層が形成されている回路基板。
【請求項9】
請求項1乃至8のいずれかに記載の回路基板において、
前記絶縁基材は、可撓性を有する回路基板。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【公開番号】特開2008−85011(P2008−85011A)
【公開日】平成20年4月10日(2008.4.10)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2006−261924(P2006−261924)
【出願日】平成18年9月27日(2006.9.27)
【出願人】(000002141)住友ベークライト株式会社 (2,927)
【Fターム(参考)】