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回路接続材料、回路接続部材の接続構造及び半導体装置
説明

回路接続材料、回路接続部材の接続構造及び半導体装置

【課題】低温かつ迅速な硬化処理が可能であり、硬化処理を行う際のプロセスマージンが広く、安定した特性を有し、かつ貯蔵安定性にも優れる回路接続材料を提供すること。
【解決手段】熱可塑性樹脂、ラジカル重合性化合物、ラジカル重合開始剤、ニトロキシド化合物、酸性化合物及び塩基性化合物を含有し、上記ラジカル重合性化合物が、(メタ)アクリロイル基を有し、上記ニトロキシド化合物が、アミノキシル基を有し、上記塩基性化合物が、アミノ基、ピリジル基及びイミダゾイル基からなる群より選ばれる1種以上の官能基を有する、接着剤組成物を含有する、回路接続材料。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、接着剤組成物、回路接続材料、回路部材の接続構造及び半導体装置に関する。
【背景技術】
【0002】
半導体素子及び液晶表示素子において、素子中の種々の部材を結合させる目的で従来から種々の接着剤が使用されている。接着剤に要求される特性は、接着性をはじめとして、耐熱性、高温高湿状態における信頼性等多岐に亘る。
【0003】
従来、半導体素子や液晶表示素子用の接着剤としては、接着性に優れ、特に高温高湿条件下でも優れた接着性を示すエポキシ樹脂等の熱硬化性樹脂が用いられている(例えば、特許文献1参照)。上記接着剤の構成成分としては、エポキシ樹脂、エポキシ樹脂と反応性を有するフェノール樹脂等の硬化剤、エポキシ樹脂と硬化剤との反応を促進する熱潜在性触媒が一般に用いられている。熱潜在性触媒は接着剤の硬化温度及び硬化速度を決定する重要な因子となっており、室温での貯蔵安定性及び加熱時の硬化速度の観点から種々の化合物が用いられている。係る接着剤は、通常170〜250℃の温度で1〜3時間加熱することにより硬化し、これにより接着性が得られる。
【0004】
近年、半導体素子の高集積化、液晶素子の高精細化に伴い、素子間及び配線間ピッチの狭小化が進んでいる。このような半導体素子等に上述した接着剤を用いた場合は、硬化させる時の加熱温度が高く、また硬化する速度が遅いため、所望の接続部のみならず周辺部材まで過剰に加熱し、周辺部材の損傷等の要因となる傾向がある。さらに低コスト化のためには、スループットを向上させる必要があり、低温(100〜170℃)、短時間(1時間以内)、換言すれば「低温速硬化」での接着が要求されている。この低温速硬化を達成するためには、活性化エネルギーの低い熱潜在性触媒を使用する必要がある。しかしながら、活性化エネルギーの低い熱潜在性触媒は、室温付近での貯蔵安定性を兼備することが非常に難しい。
【0005】
最近、アクリレート誘導体やメタアクリレート誘導体(以後、(メタ)アクリレート誘導体という)とラジカル重合開始剤であるパーオキサイドとを併用した、ラジカル硬化型接着剤が注目されている。ラジカル硬化は、反応活性種であるラジカルが反応性に富むため、短時間硬化が可能である(例えば、特許文献2、3参照)。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0006】
【特許文献1】特開平01−113480号公報
【特許文献2】特開2002−203427号公報
【特許文献3】国際公開第98/044067号パンフレット
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0007】
しかしながら、ラジカル硬化型接着剤は高反応性を有するために、硬化処理を行う際のプロセスマージンが狭くなる傾向がある。例えば、半導体素子や液晶表示素子を電気的に接続するために上述したラジカル硬化型の接着剤を用いる場合、その硬化物を得る際の温度や時間等のプロセス条件が多少でも変動すると、接着強度、接続抵抗等の特性が安定して得られない傾向にある。また、接着剤の反応性と貯蔵安定性とは、通常トレードオフの関係にあるため、ラジカル硬化型接着剤で低温速硬化を達成しようとすると、該接着剤の貯蔵安定性が低下してくる傾向にある。
【0008】
そこで本発明は、上記事情をかんがみてなされたものであり、低温で十分迅速に硬化処理を行うことができ、硬化処理を行う際のプロセスマージンが広く、十分に安定した特性(接着強度や接続抵抗)を有し、かつ貯蔵安定性にも十分優れる接着剤組成物、及びそれを用いた回路接続材料、回路部材の接続構造及び半導体装置を提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0009】
本発明は、熱可塑性樹脂、ラジカル重合性化合物、ラジカル重合開始剤、ニトロキシド化合物及び塩基性化合物を含有する接着剤組成物を提供する。
【0010】
この接着剤組成物は、低温で十分迅速に硬化処理を行うことができ、硬化処理を行う際のプロセスマージンが広く、十分に安定した接着強度や接続抵抗等の特性を得ることができると共に、十分優れた貯蔵安定性を有することができる。本発明の接着剤組成物が係る効果を奏する要因は現在のところ詳細には明らかにされていないが、本発明者らは以下の要因を考えている。ただし、要因はこれに限定されない。
【0011】
すなわち、低温で短時間硬化が可能となる要因は、主として本発明の接着剤組成物が熱可塑性樹脂、ラジカル重合性化合物及びラジカル重合開始剤を含有する、いわゆるラジカル硬化型接着剤組成物であるからである。硬化処理を行う際のプロセスマージンが広く、安定した特性が得られる要因は、主として本発明の接着剤組成物がニトロキシド化合物を含有しているからである。また、貯蔵安定性に十分優れているのは、主として本発明の接着剤組成物が塩基性化合物を含有しているからである。そして、上記構成を一体不可分に備えることにより、本発明の接着剤組成物は、それら低温短時間での硬化を達成しながら、硬化処理を行う際のプロセスマージンが広く、安定した特性を十分に高いレベルに引き上げており、かつ貯蔵安定性に十分優れていると、本発明者らは推測している。
【0012】
上述のとおり、本発明の接着剤組成物を用いると硬化処理を短時間で行うことができ、かつプロセスマージンを広げることができる。そのため、本発明の接着剤組成物は、半導体素子や液晶素子等の素子間及び配線間ピッチが狭小化したとしても、所望の接続部のみならず周辺部材まで加熱し、周辺部材の損傷等の影響を及ぼすことを防止することができ、スループットを向上させることが可能となる。また、本発明の接着剤組成物は、良好な貯蔵安定性を有しているため、作製した接着剤組成物を室温付近で放置しても、その初期特性が保持されており、プロセスマージンの拡大効果を維持できる。
【0013】
本発明の接着剤組成物において、塩基性化合物は、その共役酸のpKaが5.0〜11.0であることが好ましい。これにより、得られる接着剤組成物は貯蔵安定性が更に向上する。
【0014】
更に、上述の塩基性化合物は、アミノ基、ピリジル基及びイミダゾイル基からなる群より選ばれる1種以上の官能基を有していることが好ましい。上記官能基を分子中に有することで、本発明の接着剤組成物は、貯蔵安定性が一層向上する。
【0015】
本発明の接着剤組成物は、熱可塑性樹脂100質量部に対して、ラジカル重合性化合物50〜250質量部、ラジカル重合開始剤0.05〜30質量部、ニトロキシド化合物0.01〜10質量部及び塩基性化合物0.5〜10質量部を含有していることが好ましい。本発明の接着剤組成物は、その構成材料を上記の範囲の配合割合とすることによって、本発明の効果をより顕著に発揮することができる。
【0016】
本発明の接着剤組成物は、導電性粒子を更に含有することが好ましい。このような接着剤組成物はそれ自体導電性を容易に有することができる。そのため、この接着剤組成物は、回路電極や半導体等の電気工業や電子工業の分野において導電性接着剤として用いることができるようになる。更に、この場合、接着剤組成物が導電性を有するため、硬化後の接続抵抗をより低くすることが可能となる。
【0017】
また、本発明の接着剤組成物は、熱可塑性樹脂100質量部に対して、導電性粒子を0.5〜30質量部含有していることが好ましい。導電性粒子の配合割合を上記範囲に設定することによって、このような接着剤組成物は、導電性粒子による効果を一層発揮することができる。例えば、回路電極の接続に用いた場合、対向する回路電極間で導電しなかったり、あるいは隣接する回路電極間で短絡(ショート)したりすることを防止する異方導電性を備えることができる。更に、導電性粒子を上述の配合割合で含有した接着剤組成物は、電気的な接続の異方性を一層良好に示すことも可能となり、異方導電性接着剤組成物として用いることができるようになる。
【0018】
本発明の回路接続材料は、対向する回路電極同士を電気的に接続するための回路接続材料であって、回路接続材料が上述した接着剤組成物を含有することが好ましい。
【0019】
このような回路接続材料は、対向する回路電極同士の接着を低温であっても十分短時間で行うことができ、プロセスマージンを広げることも可能となる。更に、このような回路接続材料から得られる硬化物は、その硬化物を得る際のプロセス温度や時間が変動したとしても、接着強度を安定したものとすることができる。また、回路接続材料の硬化物の経時的な接着強度の低下も抑制することができる。更に、この回路接続材料が導電性粒子を上記の配合割合で含有すれば、電気的な接続の異方性を一層良好に示すことができ、回路電極用の異方導電性回路接続材料として用いることも可能である。
【0020】
本発明は上述した接着剤組成物をフィルム状に形成してなるフィルム状接着剤を提供する。また、本発明は、上述の回路接続材料をフィルム状に形成してなるフィルム状回路接続材を提供する。フィルム状とした接着剤組成物又は回路接続材料は取扱性に優れるため、スループットを一層向上させることができる。
【0021】
本発明は、第1の回路基板の主面上に第1の回路電極が形成された第1の回路部材と、第2の回路基板の主面上に第2の回路電極が形成された第2の回路部材と、第1の回路基板の主面と第2の回路基板の主面との間に設けられ、第1の回路電極と第2の回路電極とを対向配置させた状態で電気的に接続する回路接続部材とを備え、回路接続部材は、上述した回路接続材料の硬化物である回路部材の接続構造を提供する。
【0022】
このような回路部材の接続構造は、電気的に接続した回路電極を有効に利用することができる。すなわち、第1の回路電極と第2の回路電極とを電気的に接続できるように上述した回路接続材料を用いるため、本発明の接続構造を有する回路部材は、品質のばらつきが少なく、十分に安定した特性を示すことができる。更に、回路接続材料の硬化物が導電性粒子を含む場合は、接続抵抗を低くすることができる。この導電性粒子を配合することによって、所望の部材間の選択的な電気的接続を容易に可能とする。また、導電性粒子を上記の配合割合で含有すれば、電気的な接続の異方性を示し、異方導電性回路接続材料とすることも可能である。
【0023】
また、本発明は、半導体素子と、半導体素子を搭載する基板と、半導体素子及び基板間に設けられ、半導体素子及び基板を電気的に接続する半導体素子接続部材とを備え、半導体素子接続部材は、上述した接着剤組成物の硬化物又はフィルム状接着剤である半導体装置を提供する。
【0024】
このような半導体装置は、半導体素子と基板とを電気的に接続する接着剤組成物の硬化物が上述した接着剤組成物の硬化物であることから、品質のばらつきが少なく、十分に安定した特性を示すことができる。更に、接着剤組成物の硬化物が導電性粒子を含む場合は、接続抵抗を低くすることができる。この導電性粒子を配合することによって、対向する半導体素子及び基板間で導電性を十分に確保できる。
【発明の効果】
【0025】
本発明によれば、低温で十分迅速に硬化処理を行うことができ、硬化処理を行う際のプロセスマージンが広く、十分に安定した特性(接着強度や接続抵抗)を有し、かつ貯蔵安定性にも優れる接着剤組成物、及びそれを用いた回路接続材料、回路部材の接続構造及び半導体装置を提供することができる。
【図面の簡単な説明】
【0026】
【図1】本発明の回路部材の接続構造の一実施形態を示す部分断面図である。
【図2】回路部材を接続する一連の工程図である。
【図3】本発明の半導体装置の一実施形態を示す部分断面図である。
【発明を実施するための形態】
【0027】
以下、必要に応じて図面を参照しつつ、本発明の好適な実施形態について詳細に説明する。なお、図面中、同一要素には同一符号を付すこととし、重複する説明は省略する。また、上下左右等の位置関係は、特に断らない限り、図面に示す位置関係に基づくものとする。更に、図面の寸法比率は図示の比率に限られるものではない。また、本明細書における「(メタ)アクリレート」とは、「アクリレート」及びそれに対応する「メタクリレート」を意味する。同様に「(メタ)アクリル」とは、「アクリル」及びそれに対応する「メタクリル」を意味し、「(メタ)アクリロイル」は、「アクリロイル」及びそれに対応する「メタクリロイル」を意味する。
【0028】
(接着剤組成物)
本発明の接着剤組成物は、熱可塑性樹脂、ラジカル重合性化合物、ラジカル重合開始剤、ニトロキシド化合物及び塩基性化合物を含有するものである。
【0029】
ここで、本発明に係る熱可塑性樹脂は、接着する対象物(以下、単に「被着体」という。)同士の接着を強固なものにするために用いられる。
【0030】
本発明に用いられる熱可塑性樹脂としては、特に制限はなく公知のものを使用することができる。具体的には、例えば、ポリアミド類、フェノキシ樹脂類、ポリ(メタ)アクリレート類、ポリイミド類、ポリウレタン類、ポリエステル類、ポリビニルブチラール類等を用いることができる。これらは単独あるいは2種類以上を混合して用いることができる。更に、これらの樹脂は分子内にシロキサン結合やフッ素置換基が含まれていてもよい。これらは混合する樹脂同士が完全に相溶するか、若しくはミクロ相分離が生じて白濁する状態であれば好適に用いることができる。
【0031】
また、上述した熱可塑性樹脂の分子量は特に制限はないが、熱可塑性樹脂の分子量が大きいほど後述するフィルムを容易に形成することができ、接着剤としての流動性に影響する溶融粘度を広範囲に設定することも可能となる。溶融粘度を広範囲に設定することができれば、半導体素子や液晶素子等の接続に用いた場合、素子間及び配線間ピッチが狭小化したとしても、周辺部材に接着剤が付着することを一層防止することができ、スループットを向上させることが可能となる。一般的な重量平均分子量としては5000〜150000が好ましく、10000〜80000が特に好ましい。重量平均分子量が5000未満では、後述するフィルムとして使用する場合にフィルム形成性が不十分となる傾向があり、重量平均分子量が150000を超えると、他の成分との相溶性が劣る傾向がある。
【0032】
なお、本明細書における重量平均分子量は、以下の条件に従ってゲルパーミエイションクロマトグラフィー(GPC)分析により下記条件で測定し、標準ポリスチレンの検量線を使用して換算することにより求められる。(GPC条件)使用機器:日立L−6000型((株)日立製作所製、商品名)検出器:L−3300RI((株)日立製作所製、商品名)カラム:ゲルパックGL−R420+ゲルパックGL−R430+ゲルパックGL−R440(計3本)(日立化成工業(株)製、商品名)溶離液:テトラヒドロフラン測定温度:40℃流量:1.75ml/min
【0033】
本発明に用いるラジカル重合性化合物は、何らかのエネルギーが付与されることによってラジカルが発生し、そのラジカルが連鎖反応によって重合してポリマーを形成する性能を有する化合物をいう。このラジカル重合反応は一般にカチオン重合やアニオン重合よりも迅速に反応が進行する。よって、ラジカル重合性化合物を用いる本発明においては、比較的短時間での重合が可能となる。
【0034】
本発明で用いるラジカル重合性化合物としては、(メタ)アクリル基、(メタ)アクリロイル基やビニル基等、分子内にオレフィンを有する化合物であれば、特に制限なく公知のものを使用することができる。この中でも(メタ)アクリロイル基を有するラジカル重合性化合物であることが好ましい。
【0035】
ラジカル重合性化合物の具体例としては、例えば、エポキシ(メタ)アクリレートオリゴマー、ウレタン(メタ)アクリレートオリゴマー、ポリエーテル(メタ)アクリレートオリゴマー、ポリエステル(メタ)アクリレートオリゴマー等のオリゴマー、トリメチロールプロパントリ(メタ)アクリレート、ポリエチレングリコールジ(メタ)アクリレート、ポリアルキレングリコールジ(メタ)アクリレート、ジシクロペンテニル(メタ)アクリレート、ジシクロペンテニロキシエチル(メタ)アクリレート、ネオペンチルグリコールジ(メタ)アクリレート、ジペンタエリスリトールヘキサ(メタ)アクリレート、イソシアヌル酸変性2官能(メタ)アクリレート、イソシアヌル酸変性3官能(メタ)アクリレート、2,2’−ジ(メタ)アクリロイロキシジエチルホスフェート、2−(メタ)アクリロイロキシエチルアシッドホスフェート等の多官能(メタ)アクリレート化合物が挙げられる。これらの化合物は、必要に応じて単独あるいは2種以上混合して用いてもよい。
【0036】
本発明に係るラジカル重合性化合物は、反応性基として(メタ)アクリロイル基を有していれば、被着体の材質を選ばず強固な接着をすることができる。この被着体としては、プリント配線板やポリイミド等の有機基材をはじめ、銅、アルミニウム等の金属やITO(indium tin oxide)、窒化珪素(SiN)、二酸化珪素(SiO)等を含む材質からなる基材が挙げられる。
【0037】
本発明の接着剤組成物におけるラジカル重合性化合物の配合割合は、熱可塑性樹脂100質量部に対して、50〜250質量部であることが好ましく、60〜150質量部であることがより好ましい。ラジカル重合性化合物の配合割合が50質量部未満であると、接着剤組成物の硬化物の耐熱性が低下する傾向にあり、250質量部を超えると、接着剤組成物を後述するフィルムとして使用する場合にフィルム形成性が不十分となる傾向にある。
【0038】
また、本発明の接着剤組成物はラジカル重合開始剤を含む。ラジカル重合性化合物は、一旦ラジカル重合反応を開始すると、連鎖反応が進行し、強固な硬化が可能となるが、最初にラジカルを発生させることが比較的困難である。そのため、本発明では、接着剤組成物中に、ラジカルを比較的容易に生成可能なラジカル重合開始剤を含有させる。
【0039】
本発明に係るラジカル重合開始剤は、従来から知られている過酸化物やアゾ化合物等公知の化合物を用いることができる。具体的には、クミルパーオキシネオデカノエート、1,1,3,3−テトラメチルブチルパーオキシネオデカノエート、1−シクロヘキシル−1−メチルエチルパーオキシネオデカノエート、t−ヘキシルパーオキシネオデカノエート、t−ブチルパーオキシネオデカノエート、t−ブチルパーオキシピバレート、1,1,3,3−テトラメチルブチルパーオキシ−2−エチルヘキサノエート、2,5−ジメチル−2,5−ジ(2−エチルヘキサノイルパーオキシ)ヘキサン、t−ヘキシルパーオキシ−2−エチルヘキサノエート、t−ブチルパーオキシ−2−エチルヘキサノエート、t−ブチルパーオキシネオヘプタノエート、t−アミルパーオキシ−2−エチルヘキサノエート、ジ−t−ブチルパーオキシヘキサヒドロテレフタレート、t−アミルパーオキシ−3,5,5−トリメチルヘキサノエート、3−ヒドロキシ−1,1−ジメチルブチルパーオキシネオデカノエート、1,1,3,3−テトラメチルブチルパーオキシ−2−エチルヘキサノエート、t−アミルパーオキシネオデカノエート、t−アミルパーオキシ−2−エチルヘキサノエート、2,2’−アゾビス−2,4−ジメチルバレロニトリル、1,1’−アゾビス(1−アセトキシ−1−フェニルエタン)、2,2’−アゾビスイソブチロニトリル、2,2’−アゾビス(2−メチルブチロニトリル)、ジメチル−2,2’−アゾビスイソブチロニトリル、4,4’−アゾビス(4−シアノバレリン酸)、1,1’−アゾビス(1−シクロヘキサンカルボニトリル)、t−ヘキシルパーオキシイソプロピルモノカーボネート、t−ブチルパーオキシマレイン酸、t−ブチルパーオキシ−3,5,5−トリメチルヘキサノエート、t−ブチルパーオキシラウレート、2,5−ジメチル−2,5−ジ(3−メチルベンゾイルパーオキシ)ヘキサン、t−ブチルパーオキシ−2−エチルヘキシルモノカーボネート、t−ヘキシルパーオキシベンゾエート、2,5−ジメチル−2,5−ジ(ベンゾイルパーオキシ)ヘキサン、t−ブチルパーオキシベンゾエート、ジブチルパーオキシトリメチルアジペート、t−アミルパーオキシノルマルオクトエート、t−アミルパーオキシイソノナノエート、t−アミルパーオキシベンゾエート等が挙げられる。これらの化合物は、単独で用いても、2種以上を混合して用いてもよい。
【0040】
これらの中でも、1分間半減期温度が90〜175℃で、かつ重量平均分子量が180〜1000のパーオキシエステル誘導体又はジアシルパーオキサイドが好ましい。ここで、「1分間半減期温度」とは、半減期が1分となる温度をいい、「半減期」とは、化合物の濃度が初期値の半分に減少するまでの時間をいう。ラジカル重合開始剤の1分間半減期温度が90〜175℃であると、本発明の接着剤組成物から得られる硬化物は、従来のものに比べて、優れた接続抵抗を備えることが可能となる。
【0041】
また本発明の接着剤組成物におけるラジカル重合開始剤の配合割合は、熱可塑性樹脂100質量部に対して、0.05〜30質量部であることが好ましく、0.1〜20質量部であることが更に好ましい。ラジカル重合開始剤の配合割合が0.05質量部未満であると、ラジカル重合の重合速度が低下する傾向にあり、接着剤組成物の硬化物が硬化不足となる傾向にあり、ラジカル重合開始剤の配合割合が30質量部を超えると、接着剤組成物の貯蔵安定性が低下する傾向にある。
【0042】
なお、本発明において付与するエネルギーの形態としては、特に限定されないが、熱、電子線、ガンマ線、紫外線、赤外線、可視光、マイクロ波等が挙げられる。
【0043】
本発明に用いられるニトロキシド化合物としては、特に制限がなく公知のものを使用することができる。プロセスマージンを広げる効果を一層有効に発揮できることから、ニトロキシド化合物としては、アミノキシル基(>N−O・)を有するニトロキシド化合物が好適に用いられる。その具体例としては、例えば、下記一般式(A)で表される化合物が挙げられる。
【化1】

【0044】
ここで、式(A)中、Rは、水素原子、水酸基、アミノ基、カルボキシル基、シアノ基、チオイソシアネート基、炭素数1〜10のアルキル基、アリール基、炭素数1〜20のアルコキシ基、エステル基、又はアミド基を示し、X、X、X及びXは、それぞれ独立に水素原子又は炭素数1〜5のアルキル基を示す。
【0045】
より具体的には、ニトロキシド化合物として、下記式(1)〜(16)で表される化合物が挙げられる。またポリアミン、ポリエステル、ポリアクリレート等の側鎖に、上記一般式(A)で表される化合物からR又はXを脱離してなる1価の基を置換基として導入したポリマーが挙げられる。
【化2】

【0046】
ニトロキシド化合物は、1種を単独で、又は2種以上を組み合わせて用いられる。
【0047】
ニトロキシド化合物による作用は下記にあると本発明者らは考えているが、その作用は下記に限定されない。すなわち、ニトロキシド化合物は、ラジカル重合開始剤から発生するラジカルをほぼ完全にトラップする。そのため、ニトロキシド化合物残存時には、ラジカル重合の開始及び進行を完全に抑制し、ニトロキシド化合物が完全に消費された後にラジカル重合が進行する。それにより、接続時の接着剤組成物の流動する時間を確保することができ、接着剤組成物のプロセスマージンを拡大することができる。
【0048】
ニトロキシド化合物の配合割合は、熱可塑性樹脂100質量部に対して、0.01〜10質量部が好ましく、0.02〜0.5質量部がより好ましい。この配合割合が0.01質量部未満であると、ニトロキシド化合物による上記効果を奏し難くなり、また10質量部を越えると、接着剤組成物の硬化性が低下する傾向にある。
【0049】
本発明の接着剤組成物は、上述のニトロキシド化合部に加えて、塩基性化合物をも含有する。これにより、本発明の接着剤組成物は、長時間放置した場合であっても上述のプロセスマージンの拡大という効果の低減を十分に抑制することができる。
【0050】
本発明に用いられる塩基性化合物は、その共役酸のpKaが5.0〜11.0であることが好ましい。pKaが5.0未満では、ニトロキシド化合物の添加効果を低減してしまい、pKaが11.0を超えると、接着剤組成物が添加剤としてリン酸エステル誘導体などの酸性化合物を含んでいる場合、塩基性化合物が酸性化合物と反応してしまい、塩基性化合物の添加効果、及び添加されたリン酸エステル誘導体などの酸性化合物の添加効果を奏し難くなる。なお、本明細書において、共役酸のpKaは水溶液中におけるものをいう。
【0051】
共役酸のpKaが5.0〜11.0である塩基性化合物としては、例えば、改訂4版 化学便覧 基礎編II 日本化学会編、317〜321項に記載されているアミン、ピリジン、イミダゾール誘導体が挙げられる。
【0052】
また、塩基性化合物として、アミノ基、ピリジル基及びイミダゾイル基からなる群より選ばれる1種以上の官能基を有する化合物を挙げることができる。この場合、塩基性化合物は、これらの官能基を分子中に1又は2以上有している。
【0053】
塩基性化合物として、より具体的には、例えば、下記一般式(B)、(C)及び(D)で表される化合物が挙げられる。
【化3】

【0054】
ここで、式(B)中、R、R及びR(「R〜R」と表記する。以下同様。)は、それぞれ独立に、水素原子、炭素数1〜20のアルキル基、又は炭素数1〜8のシクロアルキル基を示す。
【化4】

【0055】
ここで、式(C)中、R〜Rは、それぞれ独立に、水素原子、水酸基、アミノ基、シアノ基、アリール基、エステル基、アミド基、炭素数1〜20のアルキル基、炭素数1〜8のシクロアルキル基、又は炭素数1〜20のアルコキシ基を示す。
【化5】

【0056】
ここで、式(D)中、R10〜R12は、それぞれ独立に、水素原子、水酸基、アミノ基、シアノ基、アリール基、エステル基、アミド基、炭素数1〜20のアルキル基または、炭素数1〜8のシクロアルキル基、又は炭素数1〜20のアルコキシ基を示し、R13は、水素原子、アリール基、又は炭素数1〜20のアルキル基を示す。
【0057】
また、塩基性化合物として、ポリアミン、ポリエステル、ポリアクリレート等の側鎖にアミノ基、ピリジル基及び/又はイミダゾイル基が導入されたポリマーが挙げられる。なお、アミノ基は上記R〜Rで表される置換基を有していてもよく、ピリジル基は上記R〜Rで表される置換基を有していてもよく、イミダゾイル基は上記R10〜R12で表される置換基を有していてもよい。
【0058】
更に、塩基性化合物が、下記式(17)〜(27)で表される化合物のいずれかであると、アルコキシシリル基が接着性付与剤としても作用するため、さらに好ましい。これらの化合物は、1種を単独で、又は2種以上を組み合わせて用いられる。
【化6】

【0059】
塩基性化合物の配合割合は、熱可塑性樹脂100質量部に対して、0.5〜10質量部が好ましく、1.0〜3.0質量部がより好ましい。配合割合が0.5質量部未満であると、塩基性化合物による上記効果を奏し難くなり、また、10質量部を超えると、他の成分との相溶性が低下する傾向がある。
【0060】
本発明の接着剤組成物は、導電性粒子を含有することが好ましい。導電性粒子を含有することによって、その接着剤組成物に導電性を付与することができる。これにより、本発明の接着剤組成物は、回路電極や半導体等の電気工業や電子工業の分野において導電性接着剤として用いることが可能となる。
【0061】
本発明に用いる導電性粒子は、電気的接続を得ることができる導電性を有するものであれば特に制限されない。この導電性粒子としては、例えば、Au、Ag、Ni、Cu及びはんだなどの金属、又はカーボンなどが挙げられる。また、非導電性のガラス、セラミック、プラスチック等を核とし、この核に上記金属粒子やカーボンを被覆したものであってもよい。この中でも金属自体が熱溶融性の金属である場合、又はプラスチックを核とし、金属若しくはカーボンで被覆したものである場合が好ましい。これらの場合、接着剤組成物の硬化物を加熱や加圧により変形させることが一層容易となるため、電極同士を電気的に接続する際に、電極と接着剤組成物との接触面積を増加させ、電極間の導電性を向上させることができる。
【0062】
更に、本発明の接着剤組成物は、上述の導電性粒子の表面を、高分子樹脂で被覆した層状粒子を含有してもよい。層状粒子の状態で導電性粒子を接着剤組成物に添加すると、導電性粒子の配合量を増加させた場合であっても、樹脂で被覆されているので導電性粒子同士の接触によって短絡が発生することを一層抑制し、電極回路間の絶縁性も向上させることができる。なお、これらの導電性粒子や層状粒子は、1種を単独で又は2種以上を混合して用いてもよい。
【0063】
導電性粒子の平均粒径は、分散性及び導電性の点から1〜18μmであることが好ましい。また、導電性粒子の配合割合は、熱可塑性樹脂100質量部に対して、0.5〜30質量部であることが好ましい。更に、この導電性粒子の配合割合は、接着剤組成物100体積%に対して0.1〜30体積%であることが好ましく、0.1〜10体積%であることが更に好ましい。導電性粒子の配合割合が、0.1体積%未満であると導電性が十分に得られない傾向があり、30体積%を超えると回路の短絡が起こる傾向がある。なお、導電性粒子の配合割合(体積%)は、23℃における接着剤組成物を硬化させる前の各成分の体積に基づいて決定される。各成分の体積は、比重を利用して重量から体積に換算する方法や、その成分をよくぬらす適当な溶媒(水、アルコール等)を入れたメスシリンダー等の容器にその成分を投入し、増加した体積から算出する方法によって求めることができる。
【0064】
また、本発明の接着剤組成物には、カップリング剤及び密着性向上剤、レベリング剤などの接着助剤を適宜添加してもよい。これにより、本発明の効果をより顕著に発揮することができ、更に良好な密着性や取扱い性を付与することができるようになる。具体的には、アルコキシシラン誘導体やシラザン誘導体が挙げられる。それらの中でも、下記一般式(E)で表される化合物を添加することが好ましい。
【化7】

【0065】
ここで、式(E)中、R14、R15及びR16はそれぞれ独立に、水素原子、炭素数1〜5のアルキル基、炭素数1〜5のアルコキシ基、炭素数1〜5のアルコキシカルボニル基、又はアリール基を示し、R17は水素原子又はメチル基を示し、pは1〜10の整数を示す。
【0066】
更に、この一般式(E)において、R14が炭素数1〜5のアルキル基又はアリール基であり、R15及びR16がそれぞれ独立に炭素数1〜3のアルコキシ基であり、pが2〜4であると接着性及び接続抵抗により優れるため好ましい。なお、一般式(E)で表される化合物は1種を単独で用いても、2種以上を混合して用いてもよい。
【0067】
また、接着助剤は、リン酸エステル誘導体であってもよい。このリン酸エステル誘導体としては、具体的には、下記一般式(F)で表される化合物が好ましい。
【化8】

【0068】
ここで、式(F)中、R18は水素原子又はメチル基を示し、nは1〜10の整数を示し、mは1又は2の整数を示す。これらの接着助剤は1種を単独で用いても、2種以上の化合物を混合して用いてもよい。
【0069】
また、本発明の接着剤組成物は、リン酸エステル誘導体などの酸性化合物を含有する場合であっても、塩基性化合物を含有しているため、プロセスマージンの拡大という効果の低減を抑制することができる。
【0070】
本発明の接着剤組成物は、この他にも使用目的に応じて別の材料を添加することができる。例えば、接着剤の橋架け率を向上させる接着性向上剤を併用してもよい。これにより接着強度を一層高めることができる。すなわち、(メタ)アクリロイル基を有するラジカル重合性化合物に加え、アリル基、マレイミド基、ビニル基等のラジカル重合可能な官能基を有する化合物を添加してもよい。具体的には、N−ビニルイミダゾール、N−ビニルピリジン、N−ビニルピロリドン、N−ビニルホルムアミド、N−ビニルカプロラクタム、4,4’−ビニリデンビス(N,N−ジメチルアニリン)、N−ビニルアセトアミド、N,N−ジメチルアクリルアミド、N−イソプロピルアクリルアミド、N,N−ジエチルアクリルアミド等が挙げられる。なお、これらの接着性向上剤は1種を単独で用いても、2種以上を混合して用いてもよい。
【0071】
本発明の接着剤組成物は、単官能(メタ)アクリレート等の流動性向上剤を併用してもよい。これにより、接続時の接着剤組成物の流動性をより向上させることができる。具体的には、ペンタエリスリトール(メタ)アクリレート、2−シアノエチル(メタ)アクリレート、シクロヘキシル(メタ)アクリレート、ジシクロペンテニル(メタ)アクリレート、ジシクロペンテニロキシエチル(メタ)アクリレート、2−(2−エトキシエトキシ)エチル(メタ)アクリレート、2−エトキシエチル(メタ)アクリレート、2−エチルヘキシル(メタ)アクリレート、n−ヘキシル(メタ)アクリレート、2−ヒドロキシエチル(メタ)アクリレート、ヒドロキシプロピル(メタ)アクリレート、イソボルニル(メタ)アクリレート、イソデシル(メタ)アクリレート、イソオクチル(メタ)アクリレート、n−ラウリル(メタ)アクリレート、2−メトキシエチル(メタ)アクリレート、2−フェノキシエチル(メタ)アクリレート、テトラヒドロフルフリール(メタ)アクリレート、2−(メタ)アクリロイロキシエチルホスフェート、N,N−ジメチルアミノエチル(メタ)アクリレート、N,N−ジメチルアミノエチル(メタ)アクリレート、N,N−ジメチルアミノプロピル(メタ)アクリレート、N,N−ジメチルアミノプロピル(メタ)アクリレート、(メタ)アクリロイルモルホリンが挙げられる。なお、これらの流動性向上剤は1種を単独で用いても、2種以上を混合して用いてもよい。
【0072】
更に、本発明の接着剤組成物は、応力緩和及び接着性を向上させるゴム系の材料を併用してもよい。具体的には、ポリイソプレン、ポリブタジエン、カルボキシル基末端ポリブタジエン、水酸基末端ポリブタジエン、1,2−ポリブタジエン、カルボキシル基末端1,2−ポリブタジエン、水酸基末端1,2−ポリブタジエン、アクリルゴム、スチレン−ブタジエンゴム、水酸基末端スチレン−ブタジエンゴム、アクリロニトリル−ブタジエンゴム、カルボキシル基、水酸基、(メタ)アクリロイル基又はモルホリン基をポリマー末端に含有するアクリロニトリル−ブタジエンゴム、カルボキシル化ニトリルゴム、水酸基末端ポリ(オキシプロピレン)、アルコキシシリル基末端ポリ(オキシプロピレン)、ポリ(オキシテトラメチレン)グリコール、ポリオレフィングリコール、ポリ−ε−カプロラクトンが挙げられる。
【0073】
上述したゴム系の材料は、接着性向上の観点から、極性が高い官能基であるシアノ基、カルボキシル基を側鎖あるいは末端に含むゴム系の材料であることが好ましく、更に流動性向上の観点から、液状であることがより好ましい。具体的には、液状アクリロニトリル−ブタジエンゴム、カルボキシル基、水酸基、(メタ)アクリロイル基又はモルホリン基をポリマー末端に含有する液状アクリロニトリル−ブタジエンゴム、液状カルボキシル化ニトリルゴムが挙げられ、極性基であるアクリロニトリル含有量がこれらのゴム系材料全体の10〜60質量%であることが更に好ましい。なお、これらのゴム系材料は1種を単独で用いても、2種以上を混合して用いてもよい。
【0074】
更にまた、本発明の接着剤組成物は、t−ブチルピロカテコール、t−ブチルフェノール、p−メトキシフェノール等に代表される重合禁止剤などの添加剤を併用してもよい。これにより、接着剤組成物の貯蔵安定性が更に高まることとなる。
【0075】
本発明の接着剤組成物は、常温で液状である場合にはペースト状で使用することができる。常温で固体の場合には、加熱してペースト化する他、溶剤を使用してペースト化してもよい。使用できる溶剤としては、接着剤組成物と反応せず、かつ十分な溶解性示すものであれば、特に制限はないが、常圧での沸点が50〜150℃であるものが好ましい。沸点が50℃未満であると、室温で容易に溶剤が揮発してしまい後述するフィルムを作製するときの作業性が悪化する傾向にある。また、沸点が150℃を超えると、溶剤を揮発させることが難しく、接着後において十分な接着強度が得られない傾向にある。
【0076】
本発明の接着剤組成物は、フィルム状にしてから用いることも可能である。このフィルム状接着剤は、接着剤組成物に溶剤等を加えた混合液を、フッ素樹脂フィルム、ポリエチレンテレフタレートフィルム、離型紙等の剥離性基材上に塗布し、又は不織布等の基材に上記混合液を含浸させて剥離性基材上に載置し、溶剤等を除去することによって得ることができる。このように接着剤組成物をフィルム状とすると、取扱性に優れ一層便利である。
【0077】
また、本発明の接着剤組成物に導電性粒子を添加してフィルムを作製すると、異方導電性フィルムとすることができる。この異方導電性フィルムは、例えば、基板上の対抗する電極間に載置し、加熱加圧することにより両電極を接着することができるとともに、電気的に接続することができる。ここで電極を形成する基板としては、半導体、ガラス、セラミック等の無機質、ポリイミド、ポリカーボネート等の有機物、ガラス/エポキシ等のこれら複合の各組み合わせが適用できる。
【0078】
更に、本発明の接着剤組成物は加熱及び加圧を併用して接着させることができる。加熱温度は、特に制限は受けないが、50〜190℃の温度が好ましい。圧力は、被着体に損傷を与えない範囲であればよく、一般的には0.1〜10MPaが好ましい。これらの加熱及び加圧は、0.5秒〜120秒間の範囲で行うことが好ましい。
【0079】
本発明により、低温で十分迅速に硬化処理を行うことができ、硬化処理を行う際のプロセスマージンが広く、十分に安定した特性(接着強度や接続抵抗)を有し、かつ貯蔵安定性にも十分優れる接着剤組成物が提供可能となる。
【0080】
更にまた、本発明の接着剤組成物は、低温で十分迅速に硬化処理を行うことができ、硬化処理を行う際のプロセスマージンが広く、十分に安定した特性(接着強度や接続抵抗)を有し、かつ貯蔵安定性にも十分優れることから、好適に回路接続材料として用いることができる。例えば、第1の回路部材の回路電極と第2の回路部材の回路電極とを電気的に接続する際に、これらの回路部材を対向配置した状態で、本発明の接着剤組成物を一方の回路電極に付与し、他方の回路電極とラジカル重合反応により電気的に接続させることができる。このように接着剤組成物を回路接続材料として用いると、電気的に接続を短時間で行うことができ、接続を行う際のプロセス温度や時間が変動したとしても、接着強度や接続抵抗等の特性を安定したものとすることができる。また、回路接続材料の硬化物の経時的な特性低下も抑制することができる。更に、この回路接続材料が導電性粒子を含有すれば、電気的な接続の異方性を示すことができ、回路電極用の異方導電性回路接続材料として用いることも可能である。
【0081】
上述の回路接続材料は、熱膨張係数の異なる異種の被着体の回路接続材料としても使用することができる。具体的には、異方導電接着剤、銀ペースト、銀フィルム等に代表される回路接続材料、CSP用エラストマー、CSP用アンダーフィル材、LOCテープ等に代表される半導体素子接着材料として使用することができる。
【0082】
(回路部材の接続構造)
次に、本発明の回路部材の接続構造の好適な実施形態について説明する。図1は、本発明の回路部材の接続構造の一実施形態を示す概略断面図である。図1に示すように、本実施形態の回路部材の接続構造1は、相互に対向する第1の回路部材20及び第2の回路部材30を備えており、第1の回路部材20と第2の回路部材30との間には、これらを電気的に接続する回路接続部材10が設けられている。第1の回路部材20は、第1の回路基板21と、回路基板21の主面21a上に形成される第1の回路電極22とを備えている。なお、回路基板21の主面21a上には、場合により絶縁層(図示せず)が形成されていてもよい。
【0083】
一方、第2の回路部材30は、第2の回路基板31と、第2の回路基板31の主面31a上に形成される第2の回路電極32とを備えている。また、回路基板31の主面31a上にも、場合により絶縁層(図示せず)が形成されていてもよい。
【0084】
第1の回路部材20及び第2の回路部材30としては、電気的接続を必要とする電極が形成されているものであれば特に制限されない。具体的には、液晶ディスプレイに用いられているITO等で電極が形成されているガラス又はプラスチック基板、プリント配線板、セラミック配線板、フレキシブル配線板、半導体シリコンチップ等が挙げられ、これらは必要に応じて組み合わせて用いることができる。このように、本実施形態では、プリント配線板やポリイミド等の有機物からなる材質をはじめ、銅、アルミニウム等の金属やITO(indium tin oxide)、窒化ケイ素(SiN)、二酸化ケイ素(SiO)等の無機材質のように多種多様な表面状態を有する回路部材を用いることができる。
【0085】
回路接続部材10は、絶縁性物質11及び導電性粒子7を含有している。導電性粒子7は、対向する第1の回路電極22と第2の回路電極32との間のみならず、主面21aと31aとの間にも配置されている。本実施形態の回路部材の接続構造1においては、第1の回路電極22と第2の回路電極32とが、導電性粒子7を介して電気的に接続されている。このため、第1の回路電極22及び第2の回路電極32の間の接続抵抗が十分に低減される。したがって、第1の回路電極22及び第2の回路電極32の間の電流の流れを円滑にすることができ、回路の持つ機能を十分に発揮することができる。また、この導電性粒子7を上述した配合割合とすることによって電気的な接続の異方性を示すことも可能である。
【0086】
なお、回路接続部材10が導電性粒子7を含有していない場合には、第1の回路電極22及び第2の回路電極32の間に所望の量の電流が流れるように、それらを直接接触させるか若しくは十分に近づけることで電気的に接続される。
【0087】
回路接続部材10は上記接着剤組成物を含む回路接続材料の硬化物により構成されていることから、第1の回路部材20又は第2の回路部材30に対する回路接続部材10の接着強度が十分に高くなり、かつ、接続抵抗が十分低くなり、しかもこの状態を長期間にわたって持続させることができる。したがって、第1の回路電極22及び第2の回路電極32間の電気特性の長期信頼性を十分に高めることが可能となる。
【0088】
(回路部材の接続構造の製造方法)
次に、上述した回路部材の接続構造の製造方法について、その工程図である図2を参照にしつつ、説明する。
【0089】
先ず、上述した第一の回路部材20と、フィルム状回路接続材料40を用意する(図2(a)参照)。フィルム状回路接続材料40は、回路接続材料をフィルム状に成形してなるものである。回路接続材料は、接着剤組成物5と、導電性粒子7とを含有する。ここで、接着剤組成物5には上述した本発明に係る接着剤組成物が用いられる。なお、回路接続材料が導電性粒子7を含有しない場合でも、その回路接続材料は絶縁性接着剤として異方導電性接着に使用でき、特にNCP(Non−Conductive Paste)と呼ばれることもある。また、回路接続材料が導電性粒子7を含有する場合には、その回路接続材料はACP(Anisotropic Conductive Paste)と呼ばれることもある。
【0090】
フィルム状回路接続材料40の厚さは、10〜50μmであることが好ましい。フィルム状回路接続材料40の厚さが10μm未満では、回路電極22、32間に回路接続材料が充填不足となる傾向がある。他方、50μmを超えると、回路電極22、32間の接着剤組成物を十分に排除しきれなくなり、回路電極22、32間の導通の確保が困難となる傾向がある。
【0091】
次に、フィルム状回路接続材料40を第一の回路部材20の回路電極22が形成されている面上に載せる。なお、フィルム状回路接続材料40が支持体(図示せず)上に付着している場合には、フィルム状回路接続材料40側を第一の回路部材20に向けるようにして、第一の回路部材20上に載せる。このとき、フィルム状回路接続材料40はフィルム状であり、取り扱いが容易である。このため、第一の回路部材20と第二の回路部材30との間にフィルム状回路接続材料40を容易に介在させることができ、第一の回路部材20と第二の回路部材30との接続作業を容易に行うことができる。
【0092】
そして、フィルム状回路接続材料40を、図2(a)の矢印A及びB方向に加圧し、フィルム状回路接続材料40を第一の回路部材20に仮接続する(図2(b)参照)。このとき、加熱しながら加圧してもよい。但し、加熱温度はフィルム状回路接続材料40中の接着剤組成物が硬化しない温度、すなわちラジカル重合開始剤がラジカルを発生する温度よりも低い温度とする。
【0093】
続いて、図2(c)に示すように、第二の回路部材30を、第二の回路電極を第一の回路部材20に向けるようにしてフィルム状回路接続材料40上に載せる。なお、フィルム状回路接続材料40が支持体(図示せず)上に付着している場合には、支持体を剥離してから第二の回路部材30をフィルム状回路接続材料40上に載せる。
【0094】
そして、フィルム状回路接続材料40を加熱しながら、図2(c)の矢印A及びB方向に第一及び第二の回路部材20、30を介して加圧する。このときの加熱温度は、ラジカル重合開始剤がラジカルを発生可能な温度とする。これにより、ラジカル重合開始剤においてラジカルが発生し、ラジカル重合性化合物の重合が開始される。こうして、フィルム状回路接続材料40が硬化処理され、本接続が行われ、図1に示すような回路部材の接続構造が得られる。
【0095】
加熱温度は、例えば、90〜200℃とし、接続時間は例えば1秒〜10分とする。これらの条件は、使用する用途、接着剤組成物、回路部材によって適宜選択され、必要に応じて、後硬化を行ってもよい。
【0096】
上記のようにして、回路部材の接続構造を製造すると、得られる回路部材の接続構造において、導電性粒子7を対向する回路電極22、32の双方に接触させることが可能となり、回路電極22、32間の接続抵抗を十分に低減することができる。
【0097】
また、フィルム状回路接続材料40の加熱により、回路電極22と回路電極32との間の距離を十分に小さくした状態で接着剤組成物5が硬化して絶縁性物質11となり、第一の回路部材20と第二の回路部材30とが回路接続部材10を介して強固に接続される。即ち、得られる回路部材の接続構造においては、回路接続部材10は、上記接着剤組成物を含む回路接続材料の硬化物により構成されていることから、回路部材20又は30に対する回路接続部材10の接着強度が十分に高くなり、かつ、回路電極22、32間の接続抵抗を十分に低減することができる。また、この回路部材の接続構造は、そのような状態を長期間にわたって持続することができる。したがって、得られる回路部材の接続構造は、回路電極22、32間の距離の経時的変化が十分に防止され、回路電極22、32間の電気特性の長期信頼性に優れる。
【0098】
なお、接着剤組成物5は、少なくとも加熱によりラジカルを発生するラジカル重合開始剤を含むものでもよく、このラジカル重合開始剤に代えて、光照射のみでラジカルを発生するラジカル重合開始剤を用いてもよい。この場合、フィルム状回路接続材料40の硬化処理に際して、加熱に代えて光照射を行えばよい。この他にも、必要に応じて、超音波、電磁波等によりラジカルを発生するラジカル重合開始剤を用いてもよい。また、接着剤組成物5における硬化性成分としてエポキシ樹脂及び潜在性硬化剤を用いてもよい。
【0099】
また、上記実施形態では、フィルム状回路接続材料40を用いて回路部材の接続構造を製造しているが、フィルム状回路接続材料40に代えて、フィルム状に形成されていない回路接続材料を用いてもよい。この場合でも、回路接続材料を溶媒に溶解させ、その溶液を、第一の回路部材20又は第二の回路部材30のいずれかに塗布し乾燥させれば、第一及び第二の回路部材20、30間に回路接続材料を介在させることができる。
【0100】
また、導電性粒子7の代わりに、他の導電材料を用いてもよい。他の導電材料としては、粒子状、又は短繊維状のカーボン、AuめっきNi線などの金属線条等が挙げられる。
【0101】
フィルム状回路接続材料40は、本発明の接着剤組成物を含有することから、硬化の際のプロセスマージンを広くできる。それと共に、フィルム状回路接続材料40は、貯蔵安定性にも優れるため、放置後もその特性を維持することができる。これにより、フィルム状回路接続材料40を用いて回路接続部材の接続構造を製造する際のプロセスマージンが広くなり、生産歩留まりを向上することが可能となる。
【0102】
(半導体装置)
次に、本発明の半導体装置の実施形態について説明する。図3は、本発明の半導体装置の一実施形態を示す概略断面図である。図3に示すように、本実施形態の半導体装置2は、半導体素子50と、半導体の支持部材となる基板60とを備えており、半導体素子50及び基板60の間には、これらを電気的に接続する半導体素子接続部材80が設けられている。また、半導体素子接続部材80は基板60の主面60a上に積層され、半導体素子50は更にその半導体素子接続部材80上に積層されている。
【0103】
基板60は回路パターン61を備えており、回路パターン61は、基板60の主面60a上で半導体接続部材80を介して又は直接に半導体素子50と電気的に接続されている。そして、これらが封止材70により封止され、半導体装置2が形成される。
【0104】
半導体素子50の材料としては特に制限されないが、シリコン、ゲルマニウムの4族の半導体素子、GaAs、InP、GaP、InGaAs、InGaAsP、AlGaAs、InAs、GaInP、AlInP、AlGaInP、GaNAs、GaNP、GaInNAs、GaInNP、GaSb、InSb、GaN、AlN、InGaN、InNAsPなどのIII-V族化合物半導体素子、HgTe、HgCdTe、CdMnTe、CdS、CdSe、MgSe、MgS、ZnSe、ZeTeなどのII-VI族化合物半導体素子、そして、CuInSe(ClS)などの種々のものを用いることができる。
【0105】
半導体素子接続部材80は、絶縁性物質11及び導電性粒子7を含有している。導電性粒子7は、半導体素子50と回路パターン61との間のみならず、半導体素子50と主面60aとの間にも配置されている。本実施形態の半導体装置2においては、半導体素子50と回路パターン61とが、導電性粒子7を介して電気的に接続されている。このため、半導体素子50及び回路パターン61間の接続抵抗が十分に低減される。したがって、半導体素子50及び回路パターン61間の電流の流れを円滑にすることができ、半導体の有する機能を十分に発揮することができる。また、この導電性粒子7を上述した配合割合とすることによって電気的な接続の異方性を示すことも可能である。
【0106】
なお、半導体素子接続部材80が導電性粒子7を含有していない場合には、半導体素子50と回路パターン61とを所望の量の電流が流れるように直接接触させるか若しくは十分に近づけることで電気的に接続される。
【0107】
半導体素子接続部材80は上記接着剤組成物を含む接着剤組成物の硬化物により構成されている。このことから、半導体素子50及び基板60に対する半導体素子接続部材40の接着強度が十分に高くなり、かつ、半導体素子50及び回路パターン61間の接続抵抗を十分に低減することができる。そして、この状態を長期間にわたって持続させることができる。したがって、半導体素子50及び基板60間の電気特性の長期信頼性を十分に高めることが可能となる。
【0108】
(半導体装置の製造方法)
次に、上述した半導体装置の製造方法について説明する。
【0109】
まず、回路パターン61を形成した基板60と、フィルム状半導体素子接続材料を用意する。フィルム状半導体素子接続材料は、半導体素子接続材料をフィルム状に成形してなるものである。半導体素子接続材料は、接着剤組成物5と、導電性粒子7とを含有する。ここで、接着剤組成物5には上述した本発明に係る接着剤組成物が用いられる。なお、半導体素子接続材料が導電性粒子7を含有しない場合でも、その半導体素子接続材料は絶縁性接着剤として異方導電性接着に使用でき、特にNCP(Non−Conductive Paste)と呼ばれることもある。また、半導体素子接続材料が導電性粒子7を含有する場合には、その半導体素子接続材料はACP(Anisotropic Conductive Paste)と呼ばれることもある。
【0110】
フィルム状半導体素子接続材料の厚さは、10〜50μmであることが好ましい。フィルム状半導体素子接続材料の厚さが10μm未満では、回路パターン61と半導体素子50間に半導体素子接続材料が充填不足となる傾向がある。他方、50μmを超えると、回路パターン61と半導体素子50間の接着剤組成物を十分に排除しきれなくなり、回路パターン61と半導体素子50間の導通の確保が困難となる傾向がある。
【0111】
次に、フィルム状半導体素子接続材料を基板60の回路パターン61が形成されている面上に載せる。なお、フィルム状半導体素子接続材料が支持体(図示せず)上に付着している場合には、フィルム状半導体素子接続材料側を基板60に向けるようにして、基板60上に載せる。このとき、フィルム状半導体素子接続材料はフィルム状であり、取り扱いが容易である。このため、基板60と半導体素子50との間にフィルム状半導体素子接続材料を容易に介在させることができ、基板60と半導体素子50との接続作業を容易に行うことができる。
【0112】
そして、フィルム状半導体素子接続材料を加圧し、フィルム状半導体素子接続材料を基板60に仮接続する。このとき、加熱しながら加圧してもよい。但し、加熱温度はフィルム状半導体素子接続材料中の接着剤組成物が硬化しない温度、すなわちラジカル重合開始剤がラジカルを発生する温度よりも低い温度とする。
【0113】
続いて、半導体素子50をフィルム状半導体素子接続材料上に載せる。なお、フィルム状半導体素子接続材料が支持体(図示せず)上に付着している場合には、支持体を剥離してから半導体素子50をフィルム状半導体素子接続材料上に載せる。
【0114】
そして、フィルム状半導体素子接続材料を加熱しながら、基板60及び半導体素子50を介して加圧する。このときの加熱温度は、ラジカル重合開始剤がラジカルを発生可能な温度とする。これにより、ラジカル重合開始剤においてラジカルが発生し、ラジカル重合性化合物の重合が開始される。こうして、フィルム状半導体素子接続材料が硬化処理され、本接続が行われる。
【0115】
加熱温度は、例えば、90〜200℃とし、接続時間は例えば1秒〜10分とする。これらの条件は、使用する用途、接着剤組成物、基板によって適宜選択され、必要に応じて、後硬化を行ってもよい。
【0116】
次いで、必要に応じて半導体素子を樹脂封止する。このとき、樹脂封止材を基板の表面に形成するが、基板の表面とは反対側の面にも樹脂封止材を形成するとしてもよい。これにより図3に示すような半導体装置が得られる。
【0117】
上記のようにして、半導体装置を製造すると、得られる半導体装置において、導電性粒子7を対向する回路パターン61と半導体素子50の双方に接触させることが可能となり、回路パターン61と半導体素子50間の接続抵抗を十分に低減することができる。
【0118】
また、フィルム状半導体素子接続材料の加熱により、回路パターン61と半導体素子50との間の距離を十分に小さくした状態で接着剤組成物5が硬化して絶縁性物質11となり、基板60と半導体素子50とが半導体素子接続部材80を介して強固に接続される。すなわち、得られる半導体装置においては、半導体素子接続部材80は、上記接着剤組成物を含む半導体素子接続材料の硬化物により構成されていることから、基板50又は半導体素子50に対する半導体素子接続部材80の接着強度が十分に高くなり、かつ、半導体素子50及び回路パターン61間の接続抵抗が十分に低減される。また、この半導体装置ではそのような状態が長期間にわたって持続される。したがって、得られる半導体装置は、回路パターン61、半導体素子50間の距離の経時的変化が十分に防止され、回路パターン61、半導体素子50間の電気特性の長期信頼性に優れる。
【0119】
なお、上記実施形態では、接着剤組成物5として、少なくとも加熱によりラジカルを発生するラジカル重合開始剤を含むものが用いられているが、このラジカル重合開始剤に代えて、光照射のみでラジカルを発生するラジカル重合開始剤を用いてもよい。この場合、フィルム状半導体素子接続材料の硬化処理に際して、加熱に代えて光照射を行えばよい。この他にも、必要に応じて、超音波、電磁波等によりラジカルを発生するラジカル重合開始剤を用いてもよい。また、接着剤組成物5における硬化性成分としてエポキシ樹脂及び潜在性硬化剤を用いてもよい。
【0120】
また、上記実施形態では、フィルム状半導体素子接続材料を用いて半導体装置を製造しているが、フィルム状半導体素子接続材料に代えて、フィルム状に形成されていない半導体素子接続材料を用いてもよい。この場合でも、半導体素子接続材料を溶媒に溶解させ、その溶液を、基板60又は半導体素子50のいずれかに塗布し乾燥させれば、基板60又は半導体素子50間に半導体素子接続材料を介在させることができる。
【0121】
また、導電性粒子7の代わりに、他の導電材料を用いてもよい。他の導電材料としては、粒子状、又は短繊維状のカーボン、AuめっきNi線などの金属線条等が挙げられる。
【0122】
フィルム状半導体素子接続材料は、本発明の接着剤組成物を含有することから、硬化の際のプロセスマージンを広くできる。それと共に、フィルム状半導体素子接続材料は、貯蔵安定性にも優れるため、放置後もその特性を維持することができる。これにより、フィルム状半導体素子接続材料を用いて半導体装置を製造する際のプロセスマージンが広がり、生産歩留まりを向上することが可能となる。
【0123】
以上、本発明の好適な実施形態について説明したが、本発明はこれに制限されるものではない。
【実施例】
【0124】
以下に、本発明を実施例に基づいて具体的に説明するが、本発明はこれに限定されるものではない。
【0125】
(フェノキシ樹脂溶液の調製)
フェノキシ樹脂(ユニオンカーバイド社製、商品名:PKHC、重量平均分子量45000)40質量部を、ガラス製の容器に収容したメチルエチルケトン(和光純薬工業社製、商品名:2−ブタノン、純度99%)60質量部に溶解して、固形分40質量%のフェノキシ樹脂溶液を調製した。
【0126】
(ウレタン樹脂の合成)
ポリブチレンアジペートジオール(Aldrich社製、重量平均分子量2000)450質量部、ポリオキシテトラメチレングリコール(Aldrich社製、重量平均分子量2000)450質量部及び1,4−ブチレングリコール(Aldrich社製)100質量部を、メチルエチルケトン(和光純薬工業(株)製、商品名:2−ブタノン、純度99%)4000質量部中に溶解した。そこにジフェニルメタンジイソシアネート(Aldrich社製)390質量部を加えて反応液を得た。次に、その反応液を70℃で60分間反応させて、ウレタン樹脂を得た。なお、このときの温度制御はオイルバス(アズワン(株)製、商品名:HOB−50D)を用いて行った。得られたウレタン樹脂の重量平均分子量をGPCによって測定したところ、35万であった。
【0127】
(ラジカル重合性化合物の準備)
イソシアヌル酸EO変性ジアクリレート(東亞合成(株)製、商品名:M−215)、ウレタンアクリレート(共栄社化学(株)製、商品名:AT−600)及び2−(メタ)アクリロイロキシエチルホスフェート(共栄社化学(株)製、商品名:P−2M)を準備した。
【0128】
(ラジカル重合開始剤の準備)
t−ヘキシルパーオキシ−2−エチルヘキサノエート(日本油脂(株)製、商品名:パーヘキシルO)を準備した。
【0129】
(ニトロキシド化合物の準備)
4−ヒドロキシ−2,2,6,6−テトラメチルピペリジン−1−オキシル(TEMPOL、旭電化工業(株)製、商品名:LA7−RD)、4−アセトアミド−2,2,6,6−テトラメチルピペリジン−1−オキシル(TEMPOL−NHAc、東京化成工業(株)製)、2,2,6,6−テトラメチルピペリジン−1−オキシル(TEMPO、和光純薬工業(株)製)を準備した。
【0130】
(塩基性化合物の準備)
イミダゾール変性シランカップリング剤(日鉱マテリアル(株)製、商品名:IM−1000)、アミン化合物(旭電化(株)製、商品名:LA−87)及び1,2−ジメチルイミダゾールを準備した。
【0131】
(導電性粒子の作製)
ポリスチレン粒子の表面上に、厚さ0.2μmになるようにニッケルからなる層を設け、更にこのニッケルからなる層の表面上に、厚さ0.02μmになるよう金からなる層を設けた。こうして平均粒径4μm及び比重2.5の導電性粒子を作製した。
【0132】
(実施例1)
上記フェノキシ樹脂溶液62.5質量部(フェノキシ樹脂を25質量部含有)に、上記ウレタン樹脂を固形分で25質量部、ラジカル重合性化合物として、M−215を25質量部、AT−600を25質量部及びP−2Mを5質量部、ラジカル重合開始剤としてパーヘキシルOを3質量部、ニトロキシド化合物としてTEMPOLを0.2質量部及び塩基性化合物としてIM−1000を1質量部配合した。得られた溶液に上述の導電性粒子を配合分散させて、接着剤組成物を得た。導電性粒子の配合割合は、接着剤組成物の全量に対して1.5体積%であった。
【0133】
次いで、得られた接着剤組成物を、厚さ80μmのフッ素樹脂フィルムに塗工装置(康井精機(株)製、商品名:SNC−S3.0)を用いて塗布して塗膜を得た。次にその塗膜を70℃で10分間熱風乾燥を行うことにより、厚さが15μmのフィルム状回路接続材を得た。
【0134】
(実施例2)
塩基性化合物として、IM−1000を1質量部配合することに代えてLA−87を1質量部配合した以外は実施例1と同様にして、フィルム状回路接続材を得た。
【0135】
(実施例3)
塩基性化合物として、IM−1000を1質量部配合することに代えて1,2−ジメチルイミダゾールを1質量部配合した以外は実施例1と同様にして、フィルム状回路接続材を得た。
【0136】
(実施例4)
ラジカル重合性化合物として、P−2Mを配合しない以外は実施例1と同様にして、フィルム状回路接続材を得た。
【0137】
(実施例5)
ニトロキシド化合物として、TEMPOL0.2質量部に代えてTEMPO0.5質量部を配合した以外は実施例1と同様にして、フィルム状回路接続材を得た。
【0138】
(実施例6)
ニトロキシド化合物として、TEMPOL0.2質量部に代えてTEMPOL−NHAc0.2質量部を配合した以外は実施例1と同様にして、フィルム状回路接続材を得た。
【0139】
(実施例7)
塩基性化合物として、IM−1000を1質量部配合することに代えて0.05質量部配合した以外は実施例1と同様にして、フィルム状回路接続材を得た。
【0140】
(実施例8)
塩基性化合物として、IM−1000を1質量部配合することに代えて2質量部配合した以外は実施例1と同様にして、フィルム状回路接続材を得た。
【0141】
(比較例1)
塩基性化合物であるIM−1000を配合しない以外は実施例1と同様にして、フィルム状回路接続材を得た。
【0142】
(比較例2)
ニトロキシド化合物であるTEMPOL及び塩基性化合物であるIM−1000を配合しない以外は実施例1と同様にして、フィルム状回路接続材を得た。
【0143】
上記実施例及び比較例で得られた接着剤組成物の各成分の配合比を、表1、2に示す。
【0144】
【表1】

【0145】
【表2】

【0146】
〔回路部材の接続構造の作製〕
まず、ライン幅25μm、ピッチ50μm及び厚み18μmの銅回路配線を500本有するフレキシブル回路板(FPC基板)と、0.2μmの酸化インジウム(ITO)の薄層を全面に形成したガラス基板(ITO基板、厚み1.1mm、表面抵抗20Ω/□)とを準備した。次に、それらFPC基板とITO基板との間に、上述のようにして得られたフィルム状回路接続材を配置した。そして、熱圧着装置(加熱方式:コンスタントヒート型、東レエンジニアリング株式会社製)を用いて、所定の温度、3MPaの条件下、それらの積層方向に10秒間の加熱加圧を行った。こうして、幅2mmにわたりFPC基板とITO基板とを回路接続材料の硬化物により電気的に接続した回路部材の接続構造を作製した。なお、上記所定温度は、160℃、180℃及び200℃の3パターンを採用した。
また、得られたフィルム状回路接続材を真空包装材に収容し、40℃で5日間放置した後、上記と同様にして回路部材の接続構造を作製した。
【0147】
〔接続抵抗の測定〕
得られた回路部材の接続構造における回路間の接続抵抗を、(1)接着直後、並びに、(2)接着後80℃、95%RHの高温高湿槽中で120時間耐湿試験を行った後、マルチメータ(アドバンテスト社製、商品名:TR6848)で測定した。なお、抵抗値は、隣接する回路間の抵抗150点の平均(x+3σ)で示した。結果を表3に示す。
【0148】
【表3】

【0149】
実施例1〜8のフィルム状回路接続材を用いた場合、各加熱温度において、接着直後及び耐湿試験後の接続抵抗が、ばらつきの少ない値を示し、広域の加熱温度に対して良好な電気特性を示した。これに対して、比較例2のフィルム状回路接続材を用いた場合、加熱温度が高くなるにつれて大幅に接続抵抗が上昇した。また、耐湿試験後の接続抵抗は、接続直後よりも大きくなった。また、比較例1のフィルム状回路接続材を用いた場合、フィルム作成直後の接続では良好な接続抵抗を示すものの、40℃で5日放置した後に接続した場合には接続抵抗が大きくなり、特に高温接続時の接続抵抗の増加が顕著となった。なお、実施例7のフィルム状回路接続材を用いた場合、塩基性化合物の添加の効果が少なく、40℃で放置した後の接続温度の違いによる、接続抵抗の差が他の実施例よりも大きくなった。
【0150】
〔接着強度の測定〕
得られた回路部材の接続構造における回路間の接着強度をJIS−Z0237に準じて90度剥離法で測定し評価した。ここで、接着強度の測定装置はテンシロンUTM−4(剥離速度50mm/min、25℃、東洋ボールドウィン社製)を使用した。結果を表4に示す。
【0151】
【表4】

【0152】
実施例4のフィルム状回路接続材を用いた場合、他の実施例と比較して、接着力が低くなった。これは被着体の種類に起因するものと考えられる。一方、実施例1のフィルム状回路接続材を用いた場合、比較例1及び比較例2のフィルム状回路接続材を用いた場合と比較して接着力の低下は小さかった。また、実施例8のフィルム状回路接続材を用いた場合、接着力がわずかではあるが低下する傾向にある。
【0153】
〔DSCの測定〕
得られたフィルム状回路接続材3.0±0.2mgを電子天秤((株)エー・アンド・デイ製、商品名:HR202)を用い秤量し測定試料とした。示差走査熱量測定(DSC)装置「DSC7」(PERKIN ELMER社製、商品名)を使用し、窒素気流下、測定温度範囲30℃〜250℃、昇温速度10℃/分で測定を行った。また、実施例1〜8及び比較例1、2のフィルム状回路接続材を真空包装材に収容し、40℃で3日及び5日間放置した後、同様の条件でDSC測定を行った。結果を表5に示す。
【0154】
【表5】

【0155】
実施例1〜8のフィルム状回路接続材を用いた場合、40℃で放置した後の発熱開始温度及び発熱ピーク温度は、初期の発熱開始温度及び発熱ピーク温度からの変化が小さかった。比較例1のフィルム状回路接続材を用いた場合、40℃で放置した後、発熱ピーク温度及び発熱開始温度が初期に比べ低下し、比較例2のフィルム状回路接続材を用いた場合に近い硬化挙動を示した。
【産業上の利用可能性】
【0156】
本発明によれば、低温で十分迅速に硬化処理を行うことができ、硬化処理を行う際のプロセスマージンが広く、十分に安定した特性(接着強度や接続抵抗)を有し、かつ貯蔵安定性にも優れる接着剤組成物、及びそれを用いた回路接続材料、回路部材の接続構造及び半導体装置を提供することができる。
【符号の説明】
【0157】
1…回路部材の接続構造、2…半導体装置、5…接着剤組成物、7…導電性粒子、10…回路接続部材、11…絶縁性物質、20…第1の回路部材、21…第1の回路基板、22…第1の回路電極、30…第2の回路部材、31…第2の回路基板、32…第2の回路電極、40…フィルム状回路接続部材、50…半導体素子、60…基板、61…回路パターン、70…封止材、80…半導体素子接続部材。

【特許請求の範囲】
【請求項1】
対向する回路電極同士を電気的に接続するための回路接続材料であって、
熱可塑性樹脂、ラジカル重合性化合物、ラジカル重合開始剤、ニトロキシド化合物、酸性化合物及び塩基性化合物を含有し、
前記ラジカル重合性化合物が、(メタ)アクリロイル基を有し、
前記ニトロキシド化合物が、アミノキシル基を有し、
前記塩基性化合物が、アミノ基、ピリジル基及びイミダゾイル基からなる群より選ばれる1種以上の官能基を有する、接着剤組成物を含有する、回路接続材料。
【請求項2】
前記ニトロキシド化合物が、下記一般式(A)及び下記式(13)〜(16)で表される化合物から選ばれる1種又は2種以上の化合物である、請求項1記載の回路接続材料。
【化1】


[式(A)中、Rは、水素原子、水酸基、アミノ基、カルボキシル基、シアノ基、チオイソシアネート基、炭素数1〜10のアルキル基、アリール基、炭素数1〜20のアルコキシ基、エステル基、=O又はアミド基を示し、X、X、X及びXは、それぞれ独立に炭素数1〜5のアルキル基を示す。]
【請求項3】
前記酸性化合物が、リン酸エステル誘導体を含む、請求項1又は2記載の回路接続材料。
【請求項4】
前記リン酸エステル誘導体が、下記一般式(F)で表される化合物を含む、請求項3記載の回路接続材料。
【化2】


[式(F)中、R18は水素原子又はメチル基を示し、nは1〜10の整数を示し、mは1又は2の整数を示す。]
【請求項5】
前記塩基性化合物は、その共役酸のpKaが5.0〜11.0である、請求項1〜4のいずれか一項に記載の回路接続材料。
【請求項6】
前記熱可塑性樹脂100質量部に対して、前記ラジカル重合性化合物50〜250質量部、前記ラジカル重合開始剤0.05〜30質量部、前記ニトロキシド化合物0.01〜10質量部及び前記塩基性化合物0.5〜10質量部を含有する、請求項1〜5のいずれか一項に記載の回路接続材料。
【請求項7】
前記塩基性化合物が、下記一般式(B)、(C)及び(D)で表される化合物から選ばれる1種又は2種以上の化合物である、請求項1〜6のいずれか一項に記載の回路接続材料。
【化3】


[式(B)中、R、R及びRは、それぞれ独立に、水素原子、炭素数1〜20のアルキル基、又は炭素数1〜8のシクロアルキル基を示す。]
【化4】


[式(C)中、R〜Rは、それぞれ独立に、水素原子、水酸基、アミノ基、シアノ基、アリール基、エステル基、アミド基、炭素数1〜20のアルキル基、炭素数1〜8のシクロアルキル基、又は炭素数1〜20のアルコキシ基を示す。]
【化5】


[式(D)中、R10〜R12は、それぞれ独立に、水素原子、水酸基、アミノ基、シアノ基、アリール基、エステル基、アミド基、炭素数1〜20のアルキル基または、炭素数1〜8のシクロアルキル基、又は炭素数1〜20のアルコキシ基を示し、R13は、水素原子、アリール基、又は炭素数1〜20のアルキル基を示す。]
【請求項8】
前記塩基性化合物が、下記式(17)〜(27)で表される化合物から選ばれる1種又は2種以上の化合物である、請求項1〜7のいずれか一項に記載の回路接続材料。
【化6】

【請求項9】
導電性粒子を更に含有する、請求項1〜8のいずれか一項に記載の回路接続材料。
【請求項10】
前記熱可塑性樹脂100質量部に対して、前記導電性粒子を0.5〜30質量部含有する、請求項9記載の回路接続材料。
【請求項11】
請求項1〜10のいずれか一項に記載の回路接続材料をフィルム状に形成してなるフィルム状回路接続材。
【請求項12】
第1の回路基板の主面上に第1の回路電極が形成された第1の回路部材と、
第2の回路基板の主面上に第2の回路電極が形成された第2の回路部材と、
前記第1の回路基板の主面と前記第2の回路基板の主面との間に設けられ、前記第1の回路電極と前記第2の回路電極とを対向配置させた状態で電気的に接続する回路接続部材と、を備え、
前記回路接続部材は、請求項1〜10のいずれか一項に記載の回路接続材料の硬化物である回路部材の接続構造。
【請求項13】
半導体素子と、
前記半導体素子を搭載する基板と、
前記半導体素子及び前記基板間に設けられ、前記半導体素子及び前記基板を電気的に接続する半導体素子接続部材と、を備え、
前記半導体素子接続部材は、請求項1〜10のいずれか一項に記載の回路接続材料の硬化物である半導体装置。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【公開番号】特開2013−76089(P2013−76089A)
【公開日】平成25年4月25日(2013.4.25)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2013−4687(P2013−4687)
【出願日】平成25年1月15日(2013.1.15)
【分割の表示】特願2007−540895(P2007−540895)の分割
【原出願日】平成18年8月24日(2006.8.24)
【出願人】(000004455)日立化成株式会社 (4,649)
【Fターム(参考)】