説明

回転機械装置における回転機械本体の機種識別方法、回転機械装置

【課題】簡単な構成で回転機械本体の機種が識別でき、当該回転機械に接続したコントローラをその機種に最適な制御条件に設定することが容易に、且つ確実に設定接続できる回転機械装置における回転機械本体の機種識別方法、及び回転機械装置を提供すること。
【解決手段】磁気軸受部10にて回転体Rを支承する回転機械本体に、該回転機械本体の機種毎に制御条件の適応したコントローラを制御ケーブル30を介して接続する構成の回転機械装置において、制御ケーブル30と回転機械本体の間、又は制御ケーブル30とコントローラ40の間に設置したアダプタユニット23、24,25に、当該回転機械本体の機種を識別できる機種識別情報を搭載し、コントローラ40側から該機種識別情報を認識できるようにした。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、軸受にて回転体を支承する回転機械本体に、該回転機械本体の機種毎に制御条件の異なるコントローラ(機種毎に最適な制御条件を設定したコントローラ)を制御ケーブルを介して接続する構成の回転機械装置、特に回転体が磁気軸受で支承されるターボ分子ポンプ又はガス循環ファン等の回転機械装置における回転機械本体の機種識別方法、及び回転機械装置に関するものである。
【背景技術】
【0002】
ターボ分子等の回転体を磁気軸受で支承する回転機械は、回転体(ロータ)を所定の位置に磁気浮上支持制御するため、ロータの固有特性に応じた電子回路による制御補償回路が必要である。また、回転体を回転駆動する駆動用モータを駆動するためのインバータ装置についても、該駆動用モータの特性に見合った出力特性を持つインバータ装置が必要である。
【0003】
図1は回転機械の一例であるターボ分子ポンプの磁気軸受部(磁気軸受機構部)に専用の制御ケーブルを介して制御装置(コントローラ)を接続した回転機械装置の構成例を示す図であり、図2は磁気軸受部とコントローラの回路構成を示すブロック図である。ターボ分子ポンプの磁気軸受部10は回転軸11に磁性体からなるラジアル磁気軸受ターゲット12A、12B、ラジアル変位検出センサターゲット13A、13B、アキシャル磁気軸受ターゲット14及び回転体駆動モータMのロータ15を固着した構成の回転体Rを備えている。該回転体Rはラジアル磁気軸受ターゲット12A、12Bに対向して配置されたラジアル電磁石16A、16B及びアキシャル磁気軸受ターゲット14に対向して配置されたアキシャル電磁石17で磁気浮上支持制御(5軸制御)されるようになっている。なお、図示は省略するが回転軸の上部にはターボ分子ポンプの回転翼が取り付けられる。
【0004】
18は回転体駆動モータMのステータで、ロータ15の外周に対向して配置され、該ステータ18に駆動電流を供給することにより、ロータ15が回転し回転体Rは回転する。19A、19Bはラジアル変位センサで、ラジアル変位検出センサターゲット13A、13Bに対向して配置され、ラジアル変位検出センサターゲット13A、13Bのラジアル方向の変位を検出する。20はアキシャル変位検出センサで、回転軸11の下端に対向して配置され、回転軸11のアキシャル方向の変位を検出する。21は磁気軸受部10のケーシングであり、該ケーシング21には専用の制御ケーブル30の1端に取り付けたプラグ31を差し込む差込口22が設けられている。また、コントローラ40のケーシングには制御ケーブル30の他端に取り付けたプラグ32を差し込む差込口41が設けられ、磁気軸受部10に専用の制御ケーブル30を介してコントローラ40を接続できるようになっている。
【0005】
磁気軸受部10は、図2に示すように、位置変位センサ部51、温度センサ部52、回転センサ部53、磁気軸受電磁石部54、モータ駆動コイル部55を備えている。また、コントローラ40は補償回路61、その他信号処理回路62、軸受駆動パワーアンプ63、インバータ装置64、回路駆動電源65を備えている。
【0006】
磁気軸受部10の位置変位センサ部51は上記ラジアル変位センサ19A、19Bの出力信号、及びアキシャル変位検出センサ20の出力信号をプリアンプ等で増幅し、コントローラ40の補償回路61に送るのに適した信号に処理する回路部である。また、磁気軸受部10の温度センサ部52は磁気軸受部10の所定位置に設けられた温度センサ(図示せず)の出力信号をプリアンプ等で増幅し、コントローラ40のその他信号処理回路62に送るのに適した信号に処理する回路部である。また、回転センサ部53は回転体の回転速度を検出する回転センサ(図示せず)の出力をコントローラ40のその他信号処理回路62に送るのに適した信号に処理する回路部である。また、磁気軸受部10の磁気軸受電磁石部54は、ラジアル電磁石16A、16B及びアキシャル電磁石17であり、モータ駆動コイル部55は、回転体駆動モータMのステータ18のコイル部である。
【0007】
コントローラ40の補償回路61は、制御信号生成回路であり、位置変位センサ部51からのラジアル変位センサ19A、19Bの出力信号、及びアキシャル変位検出センサ20の出力信号を受けてラジアル電磁石16A、16B及びアキシャル電磁石17を制御する制御信号を生成する。該補償回路61で生成された制御信号は軸受駆動パワーアンプ63に出力され、該軸受駆動パワーアンプ63で増幅され制御電流となって磁気軸受電磁石部54、即ち、ラジアル電磁石16A、16B及びアキシャル電磁石17に供給される。これにより、回転体Rはラジアル電磁石16A、16B及びアキシャル電磁石17が発する磁気力により浮上支持される。また、インバータ装置64から回転体駆動モータMのステータ18に駆動電流が供給され、回転体Rが回転する。
【0008】
近年、回転体Rが磁気軸受で支承されるターボ分子ポンプに使用されるコントローラは、製品コストと製造台数のバランスをとるため、ターボ分子ポンプの機種に応じた専用のコントローラを個別に用意するのではなく、一定の仕様範囲で統合したコントローラを用意し、コントローラの内部設定(調整)を変更し、使用することが多くなってきた。即ち、電気回路設計構成上は同一のコントローラによって複数のターボ分子ポンプを運転することが技術的にもコスト面も優位になってきた。
【0009】
しかしながら、この弊害として構造上同一なコントローラであっても内部設定を間違えてしまったことにより、ターボ分子ポンプを正常に運転することができないといったトラブルや、使用現場においてコントローラを当初の設定と異なるターボ分子ポンプに使用したいといった要求に対して、わざわざメーカに返却して内部設定の変更を行うと言った合理的でない状況が見られ、コントローラ統合の障害となって、コストダウンが進まないという状況があった。
【0010】
この対策として、コントローラ側に接続するターボ分子ポンプの設定機能を設け、接続時に接続するターボ分子ポンプの機種に合わせて設定する方法が考えられるが、ターボ分子ポンプ等の場合、コントローラとポンプ間の設定距離が長い、或いは装置内部での配線が複雑であるため、当該コントローラがどのターボ分子ポンプと接続されているか判別ができないと言った使用状況であるため実用的ではなく、コントローラの機能として接続されるターボ分子ポンプの機種をコントローラ自身で判別する機能が求められていた。
【0011】
一方、回転体を磁気浮上支持する磁気軸受機構はその機能上、回転体の設置方向自在として設計されるが、実用上回転体重量と磁気軸受自身の構成要件によって、ターボ分子ポンプ全体の設置方向の違いにより、磁気軸受制御特性を変更して使用する方が、より安定に制御できることが判っている。
【0012】
ターボ分子ポンプ本体の機種を識別するため、従来提唱されてきた方法では、ポンプ本体に組み込まれた抵抗体等の機種識別素子を上位コントローラから送られる信号手段により判別し、ターボ分子ポンプとコントローラの互換性をとる方法や、モータコイルの磁気特性をコントローラ側で検出することで当該ターボ分子ポンプの固有性を検出し、コントローラとの互換性をとる方法や、DSPを使用して回転体を機械的に移動・振動させ、その応答によって得られるターボ分子ポンプの固有性データに基づき、該ターボ分子ポンプの機種の識別を行う方法が提案されている。
【0013】
上記従来のターボ分子ポンプの機種識別方法のうち、ターボ分子ポンプの内部に機種識別素子を搭載する方法は、ターボ分子ポンプの製造当初より識別素子を組み込まなければならず、識別素子が搭載されていない既存のターボ分子ポンプには機種識別機能を動作させることができない。
【0014】
また、モータコイルの磁気特性をコントローラ側で検出する方法は、同一型式のモータであっても、製造上の誤差、或いは設置環境によって発生するバラツキ、本体の温度変動等によって発生するバラツキによって検出機能動作時に一定のデータが得られず、同時に既設置のターボ分子ポンプのモータに対して新たに識別機能を作用させようとした場合、モータ特性の劣化等により所望のデータが得られず、機種の特定が困難になるケースがある。
【0015】
また、ターボ分子ポンプの回転体を機械的に移動させ、その隙間を計測し機種特有の隙間量を検知することで機種を特定する方法にあっては、機種の違いを明確にするため、機種違い対して必ずいずれかの機械的寸法を変更させなければならず、同一機種にあっては性能向上等を目的とした若干の寸法変更であっても機種識別機能に影響が出ることが考えられ、既に利用開始されているターボ分子ポンプやオーバホール等を行なったターボ分子ポンプに対しては、その寸法に変動が発生しているため、機種識別ができない等実用上の制約が発生していた。
【0016】
また、ディップスイッチ状の切替器又はパラレルスイッチをターボ分子ポンプ制御用ケーブルとは別系統で配線し、機種切替器として使用する方法が提唱されていたが、特殊な構造をもったケーブルが必要となり、実用上の制約となっていた。
【0017】
また、磁気軸受の設置方向判別については、磁気軸受コイル電流の変化等からターボ分子ポンプ取付方向を推定検知する方法、或いはポンプ本体に加速度センサ等を内蔵してポンプ取付方向を検知する方法等が提案されているが、磁気軸受コイル本体の製作誤差等を起因とする電流の誤差が発生した場合,正確な設置方向を推定できなかったり、加速度センサの取り付けられていない既設置のターボ分子ポンプでは、検知機能を有効とすることが出来ない等、いずれの場合も実用上の支障があった。
【特許文献1】特許第3382627号公報
【特許文献2】特許第3457353号公報
【特許文献3】特開平10−77993号公報
【特許文献4】特開平10−122182号公報
【特許文献5】特開平11−294454号公報
【特許文献6】特開平11−311249号公報
【特許文献7】実開平04−46226号公報
【特許文献8】実開平04−62393号公報
【特許文献9】特開平04−42290号公報
【特許文献10】特開2003−148386号公報
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0018】
本発明は上述の点に鑑みてなされたもので、簡単な構成で回転機械本体の機種が識別でき、当該回転機械に接続したコントローラをその機種に最適な制御条件に設定することが容易に、且つ確実に設定接続できる回転機械装置における回転機械本体の機種識別方法、及び回転機械装置を安価に提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0019】
上記課題を解決するため請求項1に記載の発明は、軸受にて回転体を支承する回転機械本体に、該回転機械本体の機種毎に制御条件の適応したコントローラを制御ケーブルを介して接続する構成の回転機械装置における回転機械本体の機種識別方法において、前記制御ケーブルと前記回転機械本体の間、又は前記制御ケーブルと前記コントローラの間に設置したアダプタユニットに、当該回転機械本体の機種を識別できる機種識別情報を搭載し、前記コントローラ側から該機種識別情報を認識できるようにしたことを特徴とする。
【0020】
請求項2に記載の発明は、請求項1に記載の回転機械装置における回転機械本体の機種識別方法において、前記回転機械本体は、回転体を磁気軸受で支承する回転機械本体であることを特徴とする。
【0021】
請求項3に記載の発明は、請求項1に記載の回転機械装置における回転機械本体の機種識別方法において、前記回転機械本体は、回転体を磁気軸受で支承するターボ分子ポンプ又はガス循環ファンなどであることを特徴とする。
【0022】
請求項4に記載の発明は、軸受にて回転体を支承する回転機械本体に、該回転機械本体の機種毎に制御条件の適応したコントローラを制御ケーブルを介して接続する構成の回転機械装置において、前記制御ケーブルと前記回転機械本体の間、又は前記制御ケーブルと前記コントローラの間にアダプタユニットを設置し、該アダプタユニットに前記接続した回転機械本体の機種を識別できる情報を備えた機種識別情報手段を搭載し、前記コントローラ側で該識別情報を認識できるようにしたことを特徴とする。
【0023】
請求項5に記載の発明は、請求項4に記載の回転機械装置において、前記回転機械本体は、回転体を磁気軸受で支承する回転機械本体であることを特徴とする。
【0024】
請求項6に記載の発明は、請求項5に記載の回転機械装置において、前記アダプタユニット内には、前記回転機械本体の制御に使用する信号配線及び電力供給に使用する電力配線を中継する配線と、1本以上の配線が前記コントローラ側の前記制御ケーブルへ接続されるように構成されており、前記機種識別情報手段は、抵抗や静電容量素子等の受動電子部品と切替素子によって構成された受動部品切替回路を備え、該受動部品切替回路により前記接続した回転機械本体の機種識別情報に対応する受動電子部品を切り替え設定し、前記コントローラ側から該回転機械本体の機種を認識できるようにしたことを特徴とする。
【0025】
請求項7に記載の発明は、請求項5に記載の回転機械装置において、前記アダプタユニット内には、前記回転機械本体の制御に使用する信号配線及び電力供給に使用する電力配線を中継する配線と、1本以上の配線が前記コントローラ側の前記制御ケーブルへ接続されるように構成されており、前記機種識別情報手段は、任意の電流値に設定可能な定電流回路と、該電流値を任意の値に設定する設定手段を備え、該定電流回路の定電流値を前記接続された回転機械本体の機種識別情報に対応する電流値に設定することで前記コントローラ側から該回転機械本体の機種を認識できるようにしたことを特徴とする。
【0026】
請求項8に記載の発明は、請求項5に記載の回転機械装置において、前記アダプタユニット内には、前記回転機械本体の制御に使用する信号配線及び電力供給に使用する電力配線を中継する配線と、1本以上の配線が前記コントローラ側の前記制御ケーブルへ接続されるように構成されており、前記機種識別情報手段は、前記回転機械本体の機種に関する所定のデータを格納したデータ記憶素子と、通信回路と、データ切替手段とを備え、該データ記憶素子に格納されていたデータを前記接続された回転機械本体の機種識別情報に対応するデータに切り替え設定することで前記コントローラから該回転機械本体の機種を認識できるようにしたことを特徴とする。
【0027】
請求項9に記載の発明は、請求項8に記載の回転機械装置において、前記データ記憶素子には前記通信回路を介して、前記コントローラから通信により供給される運転情報を書き込むことが可能で、且つ書き込まれた運転情報は、前記通信回路を経由して前記コントローラから読み出し可能、或いは別個の通信回路を設けることで、外部信号処理装置により前記データ記憶素子に格納されているデータを読み出すことができるようにしたことを特徴とする。
【0028】
請求項10に記載の発明は、請求項8に記載の回転機械装置において、前記アダプタユニット内に、該アダプタユニットの設置方向が重力方向に対していずれの向きにあるかを検出する設置方向検出素子を設け、該設置方向検出素子からの設置方向検出信号は、前記機種識別信号と共に、前記コントローラに送信され、前記コントローラ側から該回転機械本体の機種と設置方向を認識できるようにしたことを特徴とする。
【0029】
請求項11に記載の発明は、請求項8に記載の回転機械装置において、前記アダプタユニット内に、該アダプタユニットの設置方向が重力方向に対していずれの向きにあるかを手動操作によって所定の出力信号を設定することができる切替手段を設け、該手動操作によって設定した設置方向信号は、前記機種識別信号と共に、前記コントローラに送信され、前記コントローラから該回転機械の機種と設置方向を識別できるようにしたことを特徴とする。
【0030】
請求項12に記載の発明は、請求項5に記載の回転機械装置において、前記アダプタユニット内に内部回路駆動用電源部と、前記回転機械本体の機種識別信号を該回転機械本体の制御に使用する信号配線又は電力供給に使用する電力配線を中継する配線のいずれかに重畳する信号注入回路を設け、該信号配線又は電力配線を中継する配線に前記機種識別信号を重畳させることで前記コントローラから該回転機械本体の機種を認識できるようにしたことを特徴とする。
【0031】
請求項13に記載の発明は、請求項5乃至12のいずれか1項に記載の回転機械装置において、前記回転機械本体は、回転体を磁気軸受で支承するターボ分子ポンプ又はガス循環ファン等であることを特徴とする。
【0032】
請求項14に記載の発明は、請求項5乃至13のいずれか1項に記載の回転機械装置において、前記コントローラは、機種認識情報を認識して接続されている回転機械本体の機種を認識した後、制御条件を該認識した回転機械本体に最適な条件に設定する制御条件設定手段を備えたことを特徴とする。
【発明の効果】
【0033】
請求項1に記載の発明によれば、制御ケーブルと回転機械本体の間、又は制御ケーブルとコントローラの間に設置したアダプタユニットに、当該回転機械本体の機種を識別できる機種識別情報を搭載し、コントローラ側から該機種識別情報を認識できるようにしたので、コントローラで接続された回転機械本体の機種を認識し、この認識した機種の回転機械本体に最適な制御条件を容易、且つ確実に設定できる。また、回転機械本体と制御ケーブルの間に、アダプタユニットを取り付けることで、既に生産設備に設置された回転機械装置にも回転機械本体の機種識別機能を容易に付加することができる。また、アダプタユニットを回転機械本体と制御ケーブルの接続部に設けることにより、回転機械本体の機種を確認し、その機種識別情報を確実にアダプタユニットに搭載(設定)できる。
【0034】
請求項2に記載の発明によれば、回転体を磁気軸受で支承する回転機械本体を備えた回転機械装置において、上記請求項1に記載の発明の効果と同様な効果が得られる。
【0035】
請求項3に記載の発明によれば、回転機械本体として回転体を磁気軸受で支承するターボ分子ポンプ又はガス循環ファン等を備えた回転機械装置において、上記請求項1に記載の発明の効果と同様な効果が得られる。
【0036】
請求項4に記載の発明によれば、制御ケーブルと回転機械本体の間、又は制御ケーブルとコントローラの間にアダプタユニットを設置し、該アダプタユニットに接続した回転機械本体の機種を識別できる情報を備えた機種識別情報手段を搭載し、コントローラ側で該識別情報を認識できるようにしたので、コントローラ側で接続された回転機械本体の機種を認識し、該認識した機種の回転機械本体の制御に最適な制御条件を容易、且つ確実に設定できる。また、回転機械本体と制御ケーブルの間に、アダプタユニットを取り付けることで、既に生産設備に設置された回転機械装置にも回転機械本体の機種識別機能を容易に付加することができる。また、アダプタユニットを回転機械本体の制御ケーブルの接続部に設けることにより、回転機械本体の機種を確認し、その機種識別情報を確実にアダプタユニットに搭載(設定)できる。
【0037】
請求項5に記載の発明によれば、回転体を磁気軸受で支承する回転機械装置において、上記請求項4に記載の発明の効果と同様な効果が得られる。
【0038】
請求項6に記載の発明によれば、機種識別情報手段は、抵抗や静電容量素子等の受動電子部品と切替素子によって構成された受動部品切替回路を備え、該受動部品切替回路を切り替えることにより、接続した回転機械本体の機種識別情報を設定し、コントローラ側から該回転機械本体の機種識別情報を認識できるようにしたので、上記請求項5に記載の発明の効果と同様な効果に加え、回転機械本体の機種識別情報の搭載が容易に実施できると共に、コントローラ側でこの機種識別情報を容易に認識できる。
【0039】
請求項7に記載の発明によれば、機種識別情報手段は、任意の電流値に設定可能な定電流回路と、該電流値を任意の値に設定する設定手段を備え、該定電流回路の定電流値を接続された回転機械本体の機種識別情報に対応する電流値に設定し、コントローラ側から該回転機械本体の機種識別情報を認識できるようにしたので、上記請求項5に記載の発明の効果と同様な効果に加え、回転機械本体の機種識別情報の設定が容易に実施できると共に、コントローラ側でこの機種識別情報を容易に認識できる。
【0040】
請求項8に記載の発明によれば、機種識別情報手段は、回転機械本体の機種に関する所定のデータを格納したデータ記憶素子と通信回路とデータ切替手段を備え、該データ記憶素子に格納されていたデータを接続された回転機械本体の機種識別情報に対応するデータに切り替えて設定し、コントローラ側から該回転機械本体の機種識別情報を認識できるようにしたので、上記請求項5に記載の発明の効果と同様な効果に加え、回転機械本体の機種識別情報の搭載が容易に実施できると共に、コントローラ側でこの機種識別情報を容易に認識できる。
【0041】
請求項9に記載の発明によれば、データ記憶素子には通信回路を介して、コントローラから通信により供給される運転情報を書き込むことが可能で、且つ書き込まれた運転情報は、通信回路を経由してコントローラから読み出し可能、或いは別個の通信回路を設けることで、外部信号処理装置によりデータ記憶素子に格納されているデータを読み出すことができるようにしたので、上記請求項8に記載の発明の効果と同様な効果に加え、コントローラ側のバージョンアップ用ファームウェアがアダプタユニットから送信可能となり、回転機械本体の機種毎にコントローラ側の各種設定情報等の制御条件を最適化することが容易となる。また、外部信号処理装置もデータ記憶素子に格納されているデータを読み出し処理することができる。
【0042】
請求項10に記載の発明によれば、アダプタユニット内に設けた設置方向検出素子からの設置方向検出信号は、機種識別信号と共に、コントローラに送信されるので、上記請求項8に記載の発明の効果と同様な効果に加え、設置方向も考慮した制御条件を最適化することが容易となる。
【0043】
請求項11に記載の発明によれば、手動操作によって設定した設置方向信号は機種識別信号と共に、コントローラに送信されるので、上記請求項8に記載の発明の効果と同様な効果に加え、設置方向も考慮した制御条件を最適化することが容易となる。
【0044】
請求項12に記載の発明によれば、回転機械本体の機種識別信号を該回転機械本体の制御に使用する信号配線又は電力供給に使用する電力配線を中継する配線のいずれかに重畳する信号注入回路を設け、該信号配線又は電力配線を中継する配線に機種識別信号を重畳させ、コントローラ側から該回転機械本体の機種識別情報を認識できるようにしたので、上記請求項5に記載の発明の効果と同様な効果に加え、回転機械本体の機種識別信号をコントローラに伝送するための信号配線を省略できる。
【0045】
請求項13に記載の発明によれば、回転機械本体として回転体を磁気軸受で支承するターボ分子ポンプ又はガス循環ファン等を備えた回転機械装置において、上記請求項5乃至12に記載の発明の効果と同様な効果が得られる。
【0046】
請求項14に記載の発明によれば、コントローラは、機種認識情報を認識して接続されている回転機械本体の機種を認識した後、制御条件を該認識した回転機械本体に最適な条件に設定する制御条件設定手段を備えているので、回転機械本体を最適な状態で運転し、その機能を最大限発揮させることが可能な制御を実行できる。
【発明を実施するための最良の形態】
【0047】
以下、本願発明の実施の形態例を図面に基づいて説明する。図3乃至図5は、それぞれ回転機械本体としてターボ分子ポンプの磁気軸受部を使用する回転機械装置の構成例を示す図である。図3乃至図5において、図1と同一符号を付した部分は同一又は相当部分を示す。なお、他の図面においても、図1及び図2と同一符号を付した部分は同一又は相当部分を示す。図3において、23は磁気軸受部10を備えるターボ分子ポンプの機種を識別できる機種識別情報手段を搭載するアダプタユニットであり、該アダプタユニット23は磁気軸受部10と専用の制御ケーブル30の間に設置され、詳細には制御ケーブル30の1端に設けたプラグ31と磁気軸受部10のケーシング21に設けた差込口22の間に設置されている。
【0048】
磁気軸受部10に制御ケーブル30を介して接続されたコントローラ40は、上述した統合型のコントローラで、磁気軸受部10を備えたターボ分子ポンプの機種毎に最適な制御条件を設定できるようになっている。上記アダプタユニット23の機種識別情報手段には、磁気軸受部10を備えたターボ分子ポンプの機種が識別できる機種識別情報が搭載(設定)され、該機種識別情報をコントローラ40から認識できるようになっている。コントローラ40は、接続されているターボ分子ポンプの機種識別情報を認識し、当該機種のターボ分子ポンプを制御するのに最適な制御条件を設定し、磁気軸受部10を制御する。
【0049】
上記アダプタユニット23の機種識別手段に搭載される識別情報は、ターボ分子ポンプを特定できるだけのパターン数だけ揃えることができるが、下記にその例を示す。
【0050】
アダプタユニット23の機種識別手段が4ビット程度のディジタル信号を出力し続ける識別ユニットであり、スイッチの切替で8種類のディジタル信号に切り替える機能があれば、8種類のターボ分子ポンプに対応させることができ、コントローラ40側ではディジタル信号によって8種類のターボ分子ポンプを見分け、回転数設定などを自動切り替えする。この場合、「識別情報は4ビットディジタル信号」である。
【0051】
アダプタユニット23の機種識別手段が4−20mAのアナログ電流信号を出力する識別ユニットであれば、スイッチの切替で無限段階の切替信号が発生可能であり、所定の電流値に対してターボ分子ポンプ機種を特定しておき、コントローラ40側で電流信号に見合ったターボ分子ポンプの判別を行うことで、回転数設定などを自動切り替えする。この場合「識別情報は4−20mAの電流信号」である。
【0052】
アダプタユニット23内部にCPU及びメモリを搭載し、コントローラ40側で必要な機種設定データを、該アダプタユニット23からコントローラ40側に送信する。データの送信の方法については、RS485,232等々通信方式がある。この場合識別情報は、信号ではなくコントローラの設定値そのものである。
【0053】
また、コントローラ40側で識別信号に沿った設定切替情報を持っている場合、或いは設定情報自体がアダプタユニット23から送られてくる場合のどちらであってもよく、必要なのはアダプタユニット23からターボ分子ポンプ機種毎に異なる“識別信号”を出力することが可能であればよい。
【0054】
アダプタユニットとしては、上記アダプタユニット23とは形状の異なるアダプタユニット24を図4に示すように、磁気軸受部10と専用の制御ケーブル30の間、詳細には制御ケーブル30の1端に設けたプラグ31と磁気軸受部10のケーシング21に設けた差込口22の間に設置し、プラグ31の差し込み方向を変えている。また、アダプタユニット25を図5に示すようにコントローラ40と専用の制御ケーブル30の間、詳細には制御ケーブル30の他端に設けたプラグ32とコントローラ40のケーシングに設けた差込口41の間に設置してもよい。
【0055】
図6は図3の回転機械装置の回路構成を示すブロック図である。図示するように、アダプタユニット23には、機種識別情報手段としての機種識別情報設定回路70が設けられ、該機種識別情報設定回路70に設定された機種識別情報S1は制御ケーブル30内の配線を介してコントローラ40のその他信号処理回路62に伝送するようになっている。これにより、コントローラ40は機種識別情報設定回路70に設定された機種識別情報S1を確実に認識し、該コントローラ40に接続されている磁気軸受部10を備えたターボ分子ポンプの機種を認識できる。また、図示は省略するが、コントローラ40はターボ分子ポンプの機種毎にその制御条件を最適に設定するデータを備えると共に、該データに基づき接続されたターボ分子ポンプの機種に応じて制御条件を最適に設定する制御条件設定手段を備え、上記のように機種識別情報S1を認識して接続されているターボ分子ポンプの機種を認識した後、制御条件を最適に設定する。これにより、ターボ分子ポンプを最適な制御条件で運転することができ、ターボ分子ポンプの機能を最大限発揮させることができる。
【0056】
図7(a)はアダプタユニット23の内部構成例を示す図で、図7(b)は切替素子の詳細を示す図である。アダプタユニット23内には図7(a)に示すように、機種識別情報設定回路70と配線71が設置されている。配線71は、磁気軸受部10からコントローラ40へ、コントローラ40から磁気軸受部10へ、制御のための信号を伝送するために使用する複数の信号配線及びコントローラ40から磁気軸受部10に電力を供給するために使用する電力配線を中継するための複数の配線71−1〜71−nで構成されている。これらの配線71−1〜71−nは、コントローラ40側の制御ケーブル30に接続されている。また、機種識別情報設定回路70は抵抗や静電容量素子等の受動電子部品72と切替素子(切替スイッチ)73で構成される受動部品切替回路74を備えている。切替素子73は図7(b)に示すように、機種A、B、C、D、E、F、Gと切り替えることができるようになっており、機種を選択することにより、それに応じた機種識別情報を示す受動電子部品72を選択できるようになっている。
【0057】
受動部品切替回路74は配線75を介して制御ケーブル30に接続され、コントローラ40から選択された受動電子部品72で表される機種識別情報を読み取ることができるようになっている。これにより簡単な構成の受動部品切替回路74で磁気軸受部10を備えターボ分子ポンプの機種識別情報を容易に、且つ正確に設定でき、コントローラ40ではこの設定された機種識別情報を読み取り、当該機種を認識し、該機種に最適な制御条件を設定できる。
【0058】
図8(a)はアダプタユニット23の内部構成を示す図で、図8(b)は切替素子の詳細を示す図である。アダプタユニット23内には図8(a)に示すように、機種識別情報設定回路70と複数の配線71が設置されている。機種識別情報設定回路70は切替素子(切替スイッチ)73、電源回路76、及び定電流回路77で構成されている。切替素子73は図8(b)に示すように、機種A、B、C、D、E、F、Gと切り替えることにより、機種を選択することにより、定電流回路の定電流を当該機種に応じた機種識別情報を示すレベル(電流値)に設定できるようになっている。
【0059】
定電流回路77は配線75を介して制御ケーブル30に接続され、コントローラ40から設定された定電流回路77の定電流を読み取ることができるようになっている。これにより簡単な構成の定電流回路77と切替素子73で磁気軸受部10を備えたターボ分子ポンプの機種識別情報を容易に、且つ正確に設定でき、コントローラ40ではこの設定された機種識別情報を読み取り、当該機種を認識し、当該機種に最適な制御条件を設定できる。
【0060】
図9(a)はアダプタユニット23の内部構成を示す図で、図9(b)は切替素子の詳細を示す図である。アダプタユニット23内には図9(a)に示すように、機種識別情報設定回路70と複数の配線71が設置されている。機種識別情報設定回路70は切替素子(切替スイッチ)73、電源回路76、データ記憶素子(ROM)78及び信号処理回路79で構成されている。切替素子73は図9(b)に示すように、機種A、B、C、D、E、F、Gと切り替えることができるようになっている。データ記憶素子78には磁気軸受部10を備えターボ分子ポンプの機種に関する複数のデータ(機種データ)が格納されており、切替素子73で機種を選択することにより、それに対応する機種データを選択できるようになっている。信号処理回路79は選択された機種データをコントローラ40に送信するに適する信号に処理する回路(通信回路)である。
【0061】
信号処理回路79は配線75を介して制御ケーブル30に接続され、コントローラ40に選択された機種データを送信するようになっている。これにより機種データを格納したデータ記憶素子(ROM)78、切替素子73、信号処理回路79を備えた簡単な構成の機種識別情報設定回路70で磁気軸受部10を備えターボ分子ポンプの機種に対応して機種データを選択し、機種識別情報を容易に、且つ正確に設定でき、コントローラ40ではこの機種識別情報を受信して、当該機種に最適な制御条件を設定できる。
【0062】
図10は図3の回転機械装置の他の回路構成例を示すブロック図である。図示するように、アダプタユニット23には、機種識別情報手段としての機種識別情報設定回路70が設けられ、該機種識別情報設定回路70に設定された機種識別情報S1は信号注入部80を介して配線71の内の回転センサ部53からの信号S2を制御ケーブル30内の1本の配線(芯線)30aに中継する配線71−nに注入する。これにより制御ケーブル30内の配線30aには、回転センサ部53からの信号S2と機種識別情報S1が重畳され、コントローラ40のその他信号処理回路62に伝送される。その他信号処理回路62では機種識別情報S1を分離して機種を認識し、制御条件を認識した機種に最適に設定する。
【0063】
図11(a)はアダプタユニット23の内部構成例を示す図で、図11(b)は切替素子の詳細を示す図である。アダプタユニット23内には図11(a)に示すように、機種識別情報設定回路70と信号注入部80を備えている。機種識別情報設定回路70は電源回路76、切替素子(切替スイッチ)73、及び発振回路81を備えている。発振回路81は切替素子73が設定した機種に対応した周波数の機種識別情報S1を発生し、信号注入部80は交流結合により該周波数の機種識別情報S1を配線71の内の1本の配線71−nに注入する。切替素子73は図11(b)に示すように、機種A、B、C、D、E,FGと切り替えることができるようになっており、機種を選択することにより、発振回路81はそれに応じた周波数の機種識別情報を発生するようになっている。
【0064】
発振回路81は、商用周波数(50Hz又は60Hz)に比して高い100kHz〜30MHzの高周波数信号を発生し、該高周波数信号の周波数範囲を特定の範囲に限定して通過させる複数のフィルタ回路を用い、これを切替素子73で切替選択することにより、磁気軸受部10を用いるターボ分子ポンプの機種に応じた周波数範囲の機種識別信号S1を発生するようになっている。機種識別番号S1を受信したコントローラ40のその他信号処理回路62は、機種識別番号S1の周波数範囲から接続されているターボ分子ポンプの磁気軸受部10の機種を認識し、当該機種に最適な制御条件を設定できる。
【0065】
図12(a)はアダプタユニット23の内部構成を示す図で、図12(b)は切替素子の詳細を示す図である。アダプタユニット23内には図12(a)に示すように、切替素子(切替スイッチ)73、電源回路76、及び定電流回路77で構成される機種識別情報設定回路70を備えている。切替素子73は図12(b)に示すように、機種A、B、C、D、E、F、G内のいずれかの機種を選択することにより、定電流回路の定電流を当該機種に応じた機種識別情報を示すレベル(電流値)に設定できるようになっている。
【0066】
定電流回路77は1本の配線75を介して制御ケーブル30に接続すると共に、配線71−nを接地ラインに接続している。これにより定電流回路77で設定された機種識別情報を示す定電流が配線75及び該配線75が制御ケーブル30内の配線を通ってコントローラ40のその他信号処理回路62に流れるから、コントローラ40は接続されているターボ分子ポンプの磁気軸受部10の機種を認識することができる。このように切替素子73で定電流回路77の定電流を所定の値に設定することにより、ターボ分子ポンプの磁気軸受部10の機種識別情報を設定できるから、機種識別情報の設定が容易で、且つ正確に設定でき、コントローラ40ではこの機種識別情報を示す定電流により、当該機種を認識し最適な制御条件を設定できる。
【0067】
磁気軸受部10は、その機能上、回転体Rの設置方向自在、即ち図13(a)のように縦置きにするか図13(b)に示すように横置きするか等設置方向自在として設計されているが、実用上回転体Rの重量と磁気軸受の構成要件によって、ターボ分子ポンプ全体の設置方向の違いにより、磁気軸受制御特性を変更して使用する方が、より安定に制御できることが判っている。
【0068】
そこでここでは、図14(a)に示すように、アダプタユニット23内の機種識別情報設定回路70内に切替素子73、電源回路76、データ記憶素子(ROM)78、信号処理回路79以外に磁気軸受部10の設置方向を検出する設置方向検出器82を設けている。切替素子73によりデータ記憶素子78から選択した機種データと共に、設置方向検出器82で検出して設置方向検出信号を信号処理回路79で処理してコントローラ40のその他信号処理回路62(図10参照)に伝送している。これにより、コントロ−ラ40で接続されているターボ分子ポンプの磁気軸受部10の機種を認識すると共に、磁気軸受部10の設置方向を認識して、設置方向を考慮して機種に最適な制御条件を設定して該磁気軸受部を制御できる。
【0069】
設置方向検出器82は図14(c)に示すように、上下に設置された一対のガイドケース82a、82bの間に遊嵌する導電性のボール82cを具備する構成で、図13(a)に示すように、アダプタユニット23が横方向(磁気軸受部10は縦方向)に設置された場合に、ガイドケース82aとガイドケース82bの中心部に設けた電極82dと電極82eがボール82cを介して導通され、このことを導通確認回路82fが検知することにより、アダプタユニット23が横方向、即ち重力方向Fgに対して直交する方向に設置されていることを検知できる。また、図13(b)に示すように、アダプタユニット23が縦方向(磁気軸受部10は横方向)に設置されるとボール82cが電極82dと電極82eから外れ、アダプタユニット23が縦方向に以外に設置されていることを検知できる。なお、設置方向検出器82は、磁気軸受部10が横方向又は縦方向に設置された場合にボール82cにより電極82dと電極82eが導通されるよう設置してもよい。
【0070】
図15(a)は機種識別情報設定回路70に手動操作で設置方向を設定できる設置方向切替スイッチ83を設けた例を示す。設置方向切替スイッチ83は図15(b)に示すように、操作部83aを左方向又は右方向にスライドさせることにより、アダプタユニット23が縦方向に設置されているか横方向に設置かを設定できるようになっている。信号処理回路79は切替素子73で選択されたデータ記憶素子(ROM)78内の機種データ及び設置方向切替スイッチ83で設定された設置方向データを処理してコントローラ40に送信する。
【0071】
図16(a)はアダプタユニット23の内部構成例を示す図で、図16(b)は切替素子の詳細を示す図である。ここでは、図16(a)に示すように、機種識別情報設定回路70にROMとRAMを有するデータ記憶部84、電源回路76、信号処理回路79、切替素子73を設けている。コントローラ40から制御ケーブル30、配線75、及び信号処理回路79を介してデータ記憶部84のROMとRAMに格納されているデータを読み込むことができると共に、データ記憶部84のRAMにコントローラ40から運転情報を書き込むことができるようになっている。また、信号処理回路79とは別に通信回路85を設け、通信回路85を介して図示しない外部信号処理装置によりデータ記憶部84に格納されているデータを読み出すことができるようになっている。
【0072】
上記のように、コントローラ40側のバージョンアップ用ファームウェアをアダプタユニット23から送信可能となり、ターボ分子ポンプ本体の磁気軸受部10の機種毎にコントローラ40側の各種設定情報等の制御条件を最適化することが容易となる。また、外部信号処理装置でデータ記憶部84に格納されているデータを読み出し処理することができることにより、磁気軸受部10を備えたターボ分子ポンプ本体の各種解析処理等に利用できる。
【0073】
なお、図4及び図5に記載のアダプタユニット24、25の内部構成及び機能も上記アダプタユニット23の内部構成及び機能と略同一であるのでその説明は省略する。
【0074】
上記実施形態例では、回転機械本体として回転体Rを磁気軸受部10で磁気浮上支持するターボ分子ポンプを例に説明したが、本発明はターボ分子ポンプに限定されるものではなく、例えば、図17に示す構成のエキシマレーザ装置のガス循環ファン100でもよい。
【0075】
図17は、エキシマレーザ装置のエキシマガスを循環させるガス循環ファンの基本的構成を示す断面図である。図17において、ファン103はチャンバー101内に配置され、チャンバー101内にはレーザガスが封入されている。ファン103の回転軸102を支持する磁気軸受部は、チャンバー101の両側に配置され、図17の左側には、それぞれラジアル電磁石104とラジアル変位センサ105とで構成されるラジアル磁気軸受106と、アキシャル電磁石107、108とアキシャル変位センサ109で構成されるアキシャル磁気軸受110と、モータロータ118及びモータステータ117で構成されるモータ111と、回転軸102を保護するためにラジアル方向及びアキシャル方向を支持できるタッチダウン軸受としての保護軸受112が配置されている。
【0076】
また、図17の右側には、ラジアル電磁石113及びラジアル変位センサ114で構成されるラジアル磁気軸受115と、ラジアル方向のみの支持を可能とする保護軸受116とが設けられている。チャンバー101の所定位置に差込口22を設け、該差込口22と制御ケーブル30の一端に接続されたプラグ31の間にアダプタユニット23が設けられている。該アダプタユニット23には、ラジアル磁気軸受106とアキシャル磁気軸受110とラジアル磁気軸受115とで構成される磁気軸受部を備えたガス循環ファン100の機種を識別できる機種識別手段が搭載されている。図示は省略するが、制御ケーブル30の他端には図3と同様、プラグ32、差込口41を介してコントローラ40が接続されている。
【0077】
アキシャル磁気軸受110及びラジアル磁気軸受106、115はそれぞれアキシャル変位センサ109、ラジアル変位センサ105及び114によって回転軸102の位置を検出し、その位置検出信号を制御ケーブル30を介してコントローラ40に送る。コントローラ40ではこの各位置検出信を上述のように補償回路61で処理し、軸受駆動パワーアンプ63を増幅し、ガス循環ファン100の軸軸受部のラジアル磁気軸受106、アキシャル磁気軸受110、ラジアル磁気軸受115を制御して、回転軸102を所定位置に磁気浮上支持する。また、モータステータ117のコイル部には、コントローラ40のインバータ装置64から駆動電流を供給することにより、モータロータ118と伴にファン103が回転し、チャンバ101内のレーザガスを攪拌する。なお、図示は省略するが、アダプタユニットとしては、図4、図5に示すような、アダプタユニット24、25としてもよいことは当然である。
【0078】
以上、本発明の実施形態を説明したが、本発明は上記実施形態に限定されるものではなく、特許請求の範囲、及び明細書と図面に記載された技術的思想の範囲内において種々の変形が可能である。回転体を磁気軸受機構で磁気浮上支持する回転機械本体を備え、回転機械本体の機種毎に制御条件を変えて制御する回転機械装置に広く利用できる。また、スクリューやルーツ式等のドライ真空ポンプやガス循環ファン等の流体機械のように回転体を軸受機構で支持する回転機械本体を備え、回転機械本体の機種毎に制御条件を変えて制御する回転機械装置にも利用できる。
【図面の簡単な説明】
【0079】
【図1】従来の回転機械装置としてターボ分子ポンプの磁気軸受部にコントローラを接続した構成例を示す図である。
【図2】従来の回転機械装置としてターボ分子ポンプの磁気軸受部とコントローラの回路構成を示すブロック図である。
【図3】本発明に係る回転機械装置としてターボ分子ポンプの磁気軸受部にコントローラを接続した構成例を示す図である。
【図4】本発明に係る回転機械装置としてターボ分子ポンプの磁気軸受部にコントローラを接続した構成例を示す図である。
【図5】本発明に係る回転機械装置としてターボ分子ポンプの磁気軸受部にコントローラを接続した構成例を示す図である。
【図6】本発明に係る回転機械装置の回路構成例を示すブロック図である。
【図7】本発明に係る回転機械装置のアダプタユニットの内部構成例を示す図である。
【図8】本発明に係る回転機械装置のアダプタユニットの内部構成例を示す図である。
【図9】本発明に係る回転機械装置のアダプタユニットの内部構成例を示す図である。
【図10】本発明に係る回転機械装置の回路構成例を示すブロック図である。
【図11】本発明に係る回転機械装置のアダプタユニットの内部構成例を示す図である。
【図12】本発明に係る回転機械装置のアダプタユニットの内部構成例を示す図である。
【図13】本発明に係る回転機械装置としてターボ分子ポンプの磁気軸受部の設置方向例を示す図である。
【図14】本発明に係る回転機械装置のアダプタユニットの内部構成例を示す図である。
【図15】本発明に係る回転機械装置のアダプタユニットの内部構成例を示す図である。
【図16】本発明に係る回転機械装置のアダプタユニットの内部構成例を示す図である。
【図17】本発明に係る回転機械装置としてエキシマレーザ装置のガス循環ファンの基本的構成を示す図である。
【符号の説明】
【0080】
10 磁気軸受部
11 回転軸
12A ラジアル磁気軸受ターゲット
12B ラジアル磁気軸受ターゲット
13A ラジアル変位検出センサターゲット
13B ラジアル変位検出センサターゲット
14 アキシャル磁気軸受ターゲット
R 回転体
M 回転体駆動モータ
15 ロータ
16A ラジアル電磁石
16B ラジアル電磁石
17 アキシャル電磁石
18 ステータ
19A ラジアル変位センサ
19B ラジアル変位センサ
20 アキシャル変位検出センサ
21 ケーシング
22 差込口
23 アダプタユニット
30 制御ケーブル
31 プラグ
32 プラグ
40 コントローラ
41 差込口
51 位置変位センサ部
52 温度センサ部
53 回転センサ部
54 磁気軸受電磁石部
55 モータ駆動コイル部
61 補償回路
62 その他信号処理回路
63 軸受駆動パワーアンプ
64 インバータ装置
65 回路駆動電源
70 機種識別情報設定回路
71 配線
72 受動電子部品
73 切替素子(切替スイッチ)
74 受動部品切替回路
75 配線
76 電源回路
77 定電流回路
78 データ記憶素子(ROM)
79 信号処理回路
80 信号注入部
81 発振回路
82 設置方向検出器
100 ガス循環ファン
101 チャンバー
102 回転軸
103 ファン
104 ラジアル電磁石
105 ラジアル変位センサ
106 ラジアル磁気軸受
107 アキシャル電磁石
108 アキシャル電磁石
109 アキシャル変位センサ
110 アキシャル磁気軸受
111 モータ
112 保護軸受
113 ラジアル電磁石
114 ラジアル変位センサ
115 ラジアル磁気軸受
116 保護軸受

【特許請求の範囲】
【請求項1】
軸受にて回転体を支承する回転機械本体に、該回転機械本体の機種毎に制御条件の適応したコントローラを制御ケーブルを介して接続する構成の回転機械装置における回転機械本体の機種識別方法において、
前記制御ケーブルと前記回転機械本体の間、又は前記制御ケーブルと前記コントローラの間に設置したアダプタユニットに、当該回転機械本体の機種を識別できる機種識別情報を搭載し、前記コントローラ側から該機種識別情報を認識できるようにしたことを特徴とする回転機械装置における回転機械本体の機種識別方法。
【請求項2】
請求項1に記載の回転機械装置における回転機械本体の機種識別方法において、
前記回転機械本体は、回転体を磁気軸受で支承する回転機械本体であることを特徴とする回転機械装置における回転機械本体の機種識別方法。
【請求項3】
請求項1に記載の回転機械装置における回転機械本体の機種識別方法において、
前記回転機械本体は、回転体を磁気軸受で支承するターボ分子ポンプ又はガス循環ファン等であることを特徴とする回転機械装置における回転機械本体の機種識別方法。
【請求項4】
軸受にて回転体を支承する回転機械本体に、該回転機械本体の機種毎に制御条件の適応したコントローラを制御ケーブルを介して接続する構成の回転機械装置において、
前記制御ケーブルと前記回転機械本体の間、又は前記制御ケーブルと前記コントローラの間にアダプタユニットを設置し、該アダプタユニットに前記接続した回転機械本体の機種を識別できる情報を備えた機種識別情報手段を搭載し、前記コントローラ側で該識別情報を認識できるようにしたことを特徴とする回転機械装置。
【請求項5】
請求項4に記載の回転機械装置において、
前記回転機械本体は、回転体を磁気軸受で支承する回転機械本体であることを特徴とする回転機械装置。
【請求項6】
請求項5に記載の回転機械装置において、
前記アダプタユニット内には、前記回転機械本体の制御に使用する信号配線及び電力供給に使用する電力配線を中継する配線と、1本以上の配線が前記コントローラ側の前記制御ケーブルへ接続されるように構成されており、
前記機種識別情報手段は、抵抗や静電容量素子等の受動電子部品と切替素子によって構成された受動部品切替回路を備え、該受動部品切替回路により前記接続した回転機械本体の機種識別情報に対応する受動電子部品を切り替え設定し、前記コントローラ側から該回転機械本体の機種を認識できるようにしたことを特徴とする回転機械装置。
【請求項7】
請求項5に記載の回転機械装置において、
前記アダプタユニット内には、前記回転機械本体の制御に使用する信号配線及び電力供給に使用する電力配線を中継する配線と、1本以上の配線が前記コントローラ側の前記制御ケーブルへ接続されるように構成されており、
前記機種識別情報手段は、任意の電流値に設定可能な定電流回路と、該電流値を任意の値に設定する設定手段を備え、該定電流回路の定電流値を前記接続された回転機械本体の機種識別情報に対応する電流値に設定することで前記コントローラ側から該回転機械本体の機種を認識できるようにしたことを特徴とする回転機械装置。
【請求項8】
請求項5に記載の回転機械装置において、
前記アダプタユニット内には、前記回転機械本体の制御に使用する信号配線及び電力供給に使用する電力配線を中継する配線と、1本以上の配線が前記コントローラ側の前記制御ケーブルへ接続されるように構成されており、
前記機種識別情報手段は、前記回転機械本体の機種に関する所定のデータを格納したデータ記憶素子と、通信回路と、データ切替手段とを備え、該データ記憶素子に格納されていたデータを前記接続された回転機械本体の機種識別情報に対応するデータに切り替え設定することで前記コントローラ側から該回転機械本体の機種を認識できるようにしたことを特徴とする回転機械装置。
【請求項9】
請求項8に記載の回転機械装置において、
前記データ記憶素子には前記通信回路を介して、前記コントローラから通信により供給される運転情報を書き込むことが可能で、且つ書き込まれた運転情報は、前記通信回路を経由して前記コントローラから読み出し可能、或いは別個の通信回路を設けることで、外部信号処理装置により前記データ記憶素子に格納されているデータを読み出すことができるようにしたことを特徴とする回転機械装置。
【請求項10】
請求項8に記載の回転機械装置において、
前記アダプタユニット内に、該アダプタユニットの設置方向が重力方向に対していずれの向きにあるかを検出する設置方向検出素子を設け、該設置方向検出素子からの設置方向検出信号は、前記機種識別信号と共に、前記コントローラに送信され、前記コントローラ側から該回転機械本体の機種と設置方向を認識できるようにしたことを特徴とする回転機械装置。
【請求項11】
請求項8に記載の回転機械装置において、
前記アダプタユニット内に、該アダプタユニットの設置方向が重力方向に対していずれの向きにあるかを手動操作によって所定の出力信号を設定することができる切替手段を設け、該手動操作によって設定した設置方向信号は、前記機種識別信号と共に、前記コントローラに送信され、前記コントローラから該回転機械の機種と設置方向を識別できるようにしたことを特徴とする回転機械装置。
【請求項12】
請求項5に記載の回転機械装置において、
前記アダプタユニット内に内部回路駆動用電源部と、前記回転機械本体の機種識別信号を該回転機械本体の制御に使用する信号配線又は電力供給に使用する電力配線を中継する配線のいずれかに重畳する信号注入回路を設け、該信号配線又は電力配線を中継する配線に前記機種識別信号を重畳させることで前記コントローラ側から該回転機械本体の機種を認識できるようにしたことを特徴とする回転機械装置。
【請求項13】
請求項5乃至12のいずれか1項に記載の回転機械装置において、
前記回転機械本体は、回転体を磁気軸受で支承するターボ分子ポンプ又はガス循環ファン等であることを特徴とする回転機械装置。
【請求項14】
請求項5乃至13のいずれか1項に記載の回転機械装置において、
前記コントローラは、機種認識情報を認識して接続されている回転機械本体の機種を認識した後、制御条件を該認識した回転機械本体に最適な条件に設定する制御条件設定手段を備えたことを特徴とする回転機械装置。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【図6】
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【図7】
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【図8】
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【図9】
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【図10】
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【図11】
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【図12】
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【図13】
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【図14】
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【図15】
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【図16】
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【図17】
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【公開番号】特開2008−196463(P2008−196463A)
【公開日】平成20年8月28日(2008.8.28)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2007−35425(P2007−35425)
【出願日】平成19年2月15日(2007.2.15)
【出願人】(000000239)株式会社荏原製作所 (1,477)
【Fターム(参考)】