説明

回転角検出装置

【課題】簡易な構成でありながらも、360°を超える範囲の回転角の検出にも適用可能な回転角検出装置を提供する。
【解決手段】ステアリングシャフトSにウォームホイール10を外嵌しておき、このウォームホイール10、ウォームギア11および案内ねじ軸12により、ステアリングシャフトSの回転に応じてウォームギア11を直動させる送りねじ機構を構成した。そして、ウォームギア11をその軸心方向から挟み込む態様で2つのカンチレバー13,14を設けた。また、これらカンチレバー13,14に歪みゲージ素子16,17をそれぞれ貼着した。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、回転体の回転角を検出する回転角検出装置に関するものである。
【背景技術】
【0002】
例えば車両のステアリングシャフトの回転角を検出する装置としては一般に、光学式ロータリエンコーダが広く採用されている。光学式ロータリエンコーダは、発光素子、受光素子、スリット円板等の精密部品により構成されている。
【0003】
一方、特許文献1には、より単純な構成の回転角検出装置が提案されている。同文献に記載の回転角検出装置では、図12に示すように、その回転角の検出対象となる回転軸50に一体回転可能にカム板51が取り付けられている。このカム板51の外周面は、その周方向において径が変化するように形成されたカム面52とされている。そしてそのカム面52に先端部が摺接するように、歪みゲージ素子53の貼着されたカンチレバー54を設けるようにしている。このように構成された回転角検出装置では、回転軸50が回転すると、カム面52の押圧によってカンチレバー54の曲げ変形量が変化し、その曲げ変形量に応じて歪みゲージ素子53の抵抗値が変化する。この歪みゲージ素子53の抵抗値の変化量は、ブリッジ回路等によって構成された検出回路から電気信号として出力される。そのため、歪みゲージ素子53の上記検出回路から出力される電気信号に基づいて回転軸50の回転角を検出することができる。
【特許文献1】実開平5−16187号公報
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
こうした回転角検出装置によれば、簡易な構成で回転角の検出を行うことができる。しかしながら、こうした回転角検出装置では、歪みゲージ素子53の抵抗値の変化が、カム面52のカムプロフィールにより決定されるその構造上、歪みゲージ素子53の抵抗値の変化パターンは、自ずと回転体の1回転毎に同じパターンを繰り返すことになる。すなわち、こうした回転角検出装置では、回転角の検出範囲は最大でも360°までとなる。したがって、直進ポジションから±2回転程度、すなわち1440°程度の検出範囲が必要とされるステアリングシャフト等の回転角の検出用途には、採用することができないものとなっている。
【0005】
本発明は、こうした実状に鑑みてなされたものであって、その目的は、簡易な構成でありながらも、360°を超える範囲の回転角の検出にも適用可能な回転角検出装置を提供することにある。
【課題を解決するための手段】
【0006】
こうした目的を達成するため、請求項1に記載の発明では、往復動可能に配設された往復部材と、回転角の検出対象となる回転体の一方の回転方向への回転に応じて上記往復部材を往動させ、同回転体の他方の回転方向への回転に応じて上記往復部材を復動させる運動変換機構と、往復動に応じて上記往復部材から押圧されて変形する変形部材と、該変形部材の変形量を電気信号として出力する出力手段と、を備えて回転角検出装置を構成するようにした。
【0007】
このような構成による回転角検出装置によれば、運動変換機構により、回転体の一方の回転方向への回転に応じて往復部材が往動されるとともに、同回転体の他方の回転方向への回転に応じて同往復部材が復動される。すなわち、回転体の回転運動は、上記運動変換機構を通じて往復部材の往復動に変換されることとなる。そして、この往復部材の往復動によって変形する変形部材の変形量が出力手段によって電気信号として出力される。このように、上記構成による回転角検出装置では、回転体の回転に応じた往復運動量が電気信号として出力される。こうした往復運動量は、回転運動量のようにその値に周期性がないため、回転体が2回転以上回転したときでもユニークな値を取ることが可能となる。このため、回転体の回転角の検出範囲が360°以内に限定されることはなく、簡易な構成でありながらも、360°を超える範囲の回転角の検出ができるようになる。
【0008】
また、請求項1に記載の回転角検出装置において、請求項2に記載の発明によるように、上記変形部材および上記出力手段を2組設けるとともに、一方の組の変形部材を、上記回転体の基準回転位置からの一方の回転方向への回転時にのみ上記押圧を受けて変形するようにし、他方の組の変形部材を、上記回転体の上記基準回転位置からの他方の回転方向への回転時にのみ上記押圧を受けて変形するようにそれぞれ構成することも有効である。
【0009】
回転体が基準回転位置を中心として一方の回転方向に回転するとともに他方の回転方向にも回転するような場合には、回転体の回転角の検出とともにその回転方向の検出も必要となる。この点、回転角検出装置としてこのような構成によれば、回転体が回転したときには、同回転体の基準回転位置からの回転方向に応じて2組の変形部材のうちのいずれか一方のみが変形することとなる。このため、回転体の回転角の検出の際に変形部材の変形の有無に基づいて回転体の回転方向の検出も併せて行なうことができるようになり、回転体の回転方向および回転角を迅速に検出することができるようになる。
【0010】
こうした請求項1または請求項2に記載の回転角検出装置において、上記変形部材および上記出力手段の具体的な構成としては、例えば請求項3に記載の発明によるように、
(イ)上記変形部材はカンチレバーであり、上記出力手段はそのカンチレバーに貼着された歪みゲージである構成。
あるいは請求項4に記載の発明によるように、
(ロ)上記変形部材は圧電体にて構成され、上記出力手段はその圧電体の圧電効果により上記電気信号を出力する構成。
等々、を採用することができる。ちなみに、上記(イ)の構成によれば、回転体の回転に応じてカンチレバーが変形するとともに、カンチレバーに貼着された歪みゲージからの電気信号が同カンチレバーの曲げ変形量に応じて変化することとなる。このため、この歪みゲージから出力される電気信号に基づいて上記回転体の回転角を検出することができるようになる。なお、本明細書中の歪みゲージという文言には、歪みゲージ素子に加えて、その抵抗値の変化量を電気信号として出力する検出回路も含めるものとする。一方、上記(ロ)の構成によれば、回転体の回転に応じて圧電体が伸縮するとともに、その圧電体の伸縮量に応じた電気信号が出力される。よって、このような構成によっても、上記回転体の回転角を好適に検出することができるようになる。
【0011】
また、請求項1〜4のいずれかに記載の回転角検出装置において、上記運動変換機構の具体的な構成としては、例えば請求項5に記載の発明によるように、
(ハ)上記運動変換機構が送りねじ機構である構成。
あるいは請求項6に記載の発明によるように、
(ニ)上記運動変換機構がラックアンドピニオン機構である構成。
等々、を採用することができる。これらいずれの構成によっても、回転体の一方の回転方向への回転に応じて上記往復部材を往動させ、同回転体の他方の回転方向への回転に応じて上記往復部材を復動させることができるようになる。
【0012】
なお、請求項1〜6のいずれかに記載の回転角検出装置において、請求項7に記載の発明によるように、上記回転体として、ステアリングシャフトおよび同ステアリングシャフトに同期して回転する部材のいずれかを適用することとすれば、簡易な構成にて、360°を超える範囲のステアリングシャフトの回転角を好適に検出することができるようになる。
【発明の効果】
【0013】
本発明によれば、簡易な構成でありながらも、360°を超える範囲の回転角の検出にも適用可能な回転角検出装置を提供することができる。
【発明を実施するための最良の形態】
【0014】
以下、本発明にかかる回転角検出装置を具体化した一実施の形態について、図1〜図7を参照しつつ説明する。
図1は、本実施の形態にかかる回転角検出装置について、ステアリングシャフトSが直進ポジションに位置しているとき、すなわちステアリングシャフトSが基準回転位置(0°)に位置しているときの、その斜視構造を模式的に示したものである。
【0015】
同図1に示されるように、この回転角検出装置は、ステアリングシャフトSに外嵌されたウォームホイール10と、該ウォームホイール10に歯合する円柱状のウォームギア11と、該ウォームギア11を軸支する棒状の案内ねじ軸12とを備えて構成されている。この案内ねじ軸12の両端部は、車体側の部材にそれぞれ固定されている。ここで、上記案内ねじ軸12によるウォームギア11の軸支構造について、図2を参照しつつ詳細に説明する。
【0016】
図2は、図1中のA−Aに沿ったウォームギア11の断面構造をその周辺の構成とともに示したものである。同図2に示すように、ウォームギア11の内部には、その軸心方向に沿って、上記案内ねじ軸12のねじ部に歯合可能なねじ溝11aが形成されている。上記案内ねじ軸12は、このウォームギア11のねじ溝11aにそのねじ部が歯合するように配設されている。本実施の形態では、ステアリングシャフトSが矢印F1の方向に回転したときにウォームギア11が矢印S1の方向に直動(往動)し、ステアリングシャフトSが矢印F2の方向に回転したときにウォームギア11が矢印S2の方向に直動(復動)するように、案内ねじ軸12のねじ部の形状および同ウォームギア11のねじ溝11aが形成されている。すなわち、本実施の形態にかかる回転角検出装置では、ウォームホイール10、ウォームギア11および案内ねじ軸12によって送りねじ機構が構成されており、ステアリングシャフトSの回転に応じてウォームギア11が往復動するようになっている。なお、案内ねじ軸12の軸方向長さは、上記ウォームギア11の往復動範囲、すなわち上記ステアリングシャフトSの回転可能範囲に応じて設定されている。
【0017】
また、この回転角検出装置は、図1に示すように、上記ウォームギア11をその軸心方向から挟み込む態様で配設された2つの真直帯状のカンチレバー(変形部材)13,14を備えている。これらカンチレバー13,14は、外力の印加に伴って変形するとともに、外力の印加が除去された際には元の形状に復元する性質を有する、ばね鋼やチタン等の金属によってそれぞれ形成されている。そして、これらカンチレバー13,14は、図中左側(以下、「シャフト側」と記載)の端面が上記ウォームギア11の側面にそれぞれ当接されるとともに、図中右側(以下、「ベース側」と記載)の端面が、略直方体状に形成されたベース15の側面にそれぞれボルト固定されている。ベース15は、上記案内ねじ軸12と同様、車体側の部材に固定されている。なお、本実施の形態では、上記ベース15は、ウォームギア11の軸心方向に沿ったその長さが同ウォームギア11の軸心方向の長さと同一となるように形成されている。すなわち、カンチレバー13,14はそれぞれ、ベース15の両側面から上記ウォームギア11側に延設されており、その延設の方向は、同ウォームギア11の軸心方向と直交している。次に、こうしたカンチレバー13,14周辺の構造について、図3(a),(b)を参照しつつさらに詳細に説明する。
【0018】
図3(a)は、カンチレバー13周辺の側面構造を模式的に示したものである。同図3(a)に示すように、上記カンチレバー13の外側面13aにおいて、そのシャフト側には、上記案内ねじ軸12が挿通可能な長穴13bが貫通形成されている。この長穴13bは、その直径が上記案内ねじ軸12の直径よりも若干大きく形成されるとともに、上記シャフト側に延びるように形成されている。
【0019】
また、このカンチレバー13の外側面13aの中央部には、歪みゲージ素子16が貼着されている。この歪みゲージ素子16は、例えばCu−Ni系の金属箔が弾性体に貼着された構造を有しており、同弾性体の変形によって上記金属箔(抵抗体)が伸縮したとき、その抵抗値が変化する素子である。本実施の形態にかかる回転角度検出装置では、この歪みゲージ素子16の抵抗値の変化を電気信号(電圧)として検出することによって、カンチレバー13の曲げ変形量を検出するようにしている。
【0020】
一方、カンチレバー14周辺の側面構造を模式的に図3(b)に示すように、カンチレバー14の外側面14aにおいて、そのシャフト側には、上記案内ねじ軸12が挿通可能な長穴14bが貫通形成されている。この長穴14bも、上記カンチレバー13に形成された長穴13bと同様、その直径が上記案内ねじ軸12の直径よりも若干大きく形成されるとともに、上記シャフト側に延びるように形成されている。そして、このカンチレバー14の外側面14aの中央部には、上記歪みゲージ素子16と同様の構造を有する歪みゲージ素子17が貼着されている。本実施の形態にかかる回転角度検出装置では、この歪みゲージ素子17の抵抗値の変化を電気信号(電圧)として検出することによって、カンチレバー14の変形量を検出するようにしている。
【0021】
こうしたカンチレバー13に貼着された歪みゲージ素子16およびカンチレバー14に貼着された歪みゲージ素子17の抵抗値の変化を検出するための検出回路のうち、歪みゲージ素子16の抵抗値の変化を検出するための検出回路についてその一例を図4に示す。なお、歪みゲージ素子17の抵抗値の変化を検出するための検出回路も、上記歪みゲージ素子16の抵抗値の変化を検出するための検出回路と同様に構成することができるため、ここではカッコ書による付記に留めてその詳細な説明を割愛することとする。
【0022】
同図4に示すように、上記検出回路は、3つの抵抗R1〜R3と上記歪みゲージ素子16(17)とをそれぞれ一辺とするブリッジ回路によって構成されている。詳しくは、検出回路は、歪みゲージ素子16(17)、抵抗R1、抵抗R2、抵抗R3、そして上記歪みゲージ16素子(17)がこの順に環状に接続されて構成されている。そして、この検出回路は、上記歪みゲージ素子16(17)と抵抗R1との接続点e1および抵抗R2と抵抗R3との接続点e2の間に基準電圧Eを印加するとともに、抵抗R1と抵抗R2との接続点e3および上記歪みゲージ素子16(17)と抵抗R3との接続点e4の間の電圧をアンプAMPを通じて作動増幅する構成となっている。このアンプAMPの出力電圧V1(V2)は上記歪みゲージ素子16(17)の抵抗値の変化量、すなわち上記カンチレバー13(14)の曲げ変形量に比例する。こうして、上記カンチレバー13,14の曲げ変形量は、上記歪みゲージ素子16,17およびその検出回路を通じて電気信号として出力される。なお、歪みゲージ素子16,17自体は抵抗体であるため、上記カンチレバー13,14の変形の他に、温度変化によってもその抵抗値が変化する。そこで、実使用上は、こうした温度による影響を補償するために、上記カンチレバー13,14の内側面側にも歪みゲージ素子を貼着する等の対策が図られている。
【0023】
次に、本実施の形態にかかる回転角検出装置によるステアリングシャフトSの回転角の検出原理について、図5〜図7を参照しつつ説明する。図5および図6は、回転角検出装置の平面構造を模式的に示したものである。
【0024】
まず、図5に示すように、ステアリングシャフトSが基準回転位置から矢印F1方向に回転された場合について説明する。この場合、ステアリングシャフトSの矢印F1方向の回転運動は、ウォームホイール10、ウォームギア11、および案内ねじ軸12によって構成された送りねじ機構を通じてウォームギア11の矢印S1方向の直進運動に変換される。これにより、ベース15に固定された上記カンチレバー13のシャフト側の端部が上記ウォームギア11の端部によって押圧されることとなって、カンチレバー13のみが弓なりに変形することとなる。
【0025】
次に、図6に示すように、ステアリングシャフトSが基準回転位置から上記矢印F1方向と反対の方向、すなわち矢印F2の方向に回転されたとする。この場合には、ステアリングシャフトSの矢印F2方向の回転運動は、上記送りねじ機構を通じてウォームギア11の矢印S2方向の直進運動に変換される。そして、ベース15に固定された上記カンチレバー14のシャフト側の端部が上記ウォームギア11の端部によって押圧されることとなって、カンチレバー14のみが弓なりに変形することとなる。
【0026】
このように、カンチレバー13は、ステアリングシャフトSの基準回転位置からの矢印F1方向への回転時にのみウォームギア11からの押圧を受けて変形する。一方、カンチレバー14は、ステアリングシャフトSの基準回転位置からの矢印F2方向への回転時にのみウォームギア11からの押圧を受けて変形する。すなわち、ステアリングシャフトSが回転したときには、同ステアリングシャフトSの回転方向に応じてカンチレバー13およびカンチレバー14のうちのいずれか一方のみが変形する。図7は、こうしたカンチレバー13,14の変形量とステアリングシャフトSの回転角との関係の一例を模式的に示したものである。なお、ここでは、基準回転位置から矢印F1方向の回転角をプラス、基準回転位置から矢印F2方向の回転角をマイナスとしてそれぞれ示している。
【0027】
図7に示されるように、ステアリングシャフトSが基準回転位置(0°)から矢印F1の方向に回転された場合には、その回転角に応じてカンチレバー13の変形量が増加する。一方、ステアリングシャフトSが基準回転位置(0°)から矢印F2の方向に回転された場合には、その回転角に応じてカンチレバー14の変形量が増加する。そして、カンチレバー13が変形したときにはその変形量に応じて歪みゲージ素子16の抵抗値が変化し、カンチレバー14が変形したときにはその変形量に応じて歪みゲージ素子17の抵抗値が変化することとなる。これにより、歪みゲージ素子16の検出回路から出力される電気信号(出力電圧V1)が変化した場合には、ステアリングシャフトSが矢印F1の方向に回転されており、歪みゲージ素子17の検出回路から出力される電気信号(出力電圧V2)が変化した場合には、同ステアリングシャフトSが矢印F2の方向に回転されていると求めることができる。また、歪みゲージ素子16の検出回路から出力される電気信号の大きさ、あるいは歪みゲージ素子17の検出回路から出力される電気信号の大きさに基づいてステアリングシャフトSの回転角を検出することができる。
【0028】
なお、本実施の形態では、ウォームギア11が「往復部材」に、ウォームホイール10、ウォームギア11、および案内ねじ軸12が「運動変換機構」にそれぞれ相当する構成となっている。また、本実施の形態では、歪みゲージ素子16,17およびそれらの検出回路が「出力手段(歪みゲージ)」に相当する構成ともなっている。
【0029】
以上説明したように、本実施の形態にかかる回転角検出装置によれば、以下のような効果を得ることができるようになる。
(1)ステアリングシャフトSにウォームホイール10を外嵌しておき、このウォームホイール10、ウォームギア11および案内ねじ軸12によって送りねじ機構を構成するようにした。そして、上記ウォームギア11をその軸心方向から挟み込む態様で2つの真直帯状のカンチレバー13,14を設けるようにした。また、これらカンチレバー13,14に歪みゲージ素子16,17をそれぞれ貼着するようにした。これにより、ステアリングシャフトSの回転運動がウォームギア11の往復動に変換されることとなり、ステアリングシャフトSの基準回転位置からの回転方向に応じてカンチレバー13あるいはカンチレバー14が変形することとなる。そして、これらカンチレバー13あるいはカンチレバー14の曲げ変形量に応じて、歪みゲージ素子16あるいは歪みゲージ素子17から検出回路を通じて電気信号が出力される。すなわち、本実施の形態にかかる回転角検出装置では、ステアリングシャフトSの回転に応じた往復運動量が電気信号として出力される。こうした往復運動量は、回転運動量のようにその値に周期性がないため、ステアリングシャフトSが2回転以上回転したときでもユニークな値を取ることが可能となる。このため、ステアリングシャフトSの回転角の検出範囲が360°以内に限定されることはなく、簡易な構成でありながらも、360°を超える範囲の回転角の検出ができるようになる。
【0030】
また、ステアリングシャフトSが回転したときには、同ステアリングシャフトSの回転方向に応じてカンチレバー13およびカンチレバー14のうちのいずれか一方のみが変形するようにした。このため、カンチレバー13に貼着された歪みゲージ素子16の検出回路から出力される電気信号(出力電圧V1)が変化した場合には、ステアリングシャフトSが矢印F1の方向に回転されていると求めることができる。一方、カンチレバー14に貼着された歪みゲージ素子17の検出回路から出力される電気信号(出力電圧V2)が変化した場合には、同ステアリングシャフトSが矢印F2の方向に回転されていると求めることができる。したがって、ステアリングシャフトSの回転角の検出の際にその回転方向の検出も併せて行なうことができるようになり、ステアリングシャフトSの回転方向および回転角を迅速に検出することができるようになる。
【0031】
なお、この発明にかかる回転角検出装置は上記実施の形態に限定されるものではなく、同実施の形態を適宜変更した例えば次のような形態として実施することもできる。
・上記実施の形態では、ステアリングシャフトSの一方の回転方向(矢印F1)への回転に応じてウォームギア11を往動させ、同ステアリングシャフトSの他方の回転方向(矢印F2)への回転に応じてウォームギア11を復動させる運動変換機構として、送りねじ機構を用いていた。こうした運動変換機構は、送りねじ機構に限定されるものではなく、例えば図8に示すように、運動変換機構として、直線状のラックギア20とこのラックギア20に歯合するピニオンギア21から構成される機構、いわゆるラックアンドピニオン機構を採用するようにしてもよい。具体的には、回転角検出装置において、上記ウォームホイール10に代えてピニオンギア21を、上記ウォームギア11および案内ねじ軸12に代えてラックギア20を用いる。そして、ラックギア20を直動可能に支持する。例えば、上記ステアリングシャフトSの軸心方向に沿ってラックギア20に長穴20aを形成する。また、上記長穴20aに挿通可能なピン22を車体側の部材に突出形成するとともに、これらピン22を長穴20aにそれぞれ挿通させてラックギア20を支持する。これにより、上記ステアリングシャフトSが矢印F1方向に回転したときにはラックギア20が矢印S1の方向に直動し、上記ステアリングシャフトSが矢印F2方向に回転したときにはラックギア20が矢印S2の方向に直動するようになる。また、上記ラックギア20をその軸心方向から挟み込むように2つの真直帯状のカンチレバー23,24を配設する。具体的には、これらカンチレバー23,24のシャフト側の端面を上記ラックギア20の側面にそれぞれ当接させるとともに、そのベース側の端面を略直方体状に形成されたベース25の側面にそれぞれボルト固定する。そして、上記実施の形態と同様、ベース25を車体側の部材に固定する。このような構成によっても、ステアリングシャフトSの回転方向に応じてカンチレバー23およびカンチレバー24のいずれか一方が上記ラックギア20に押圧されて曲げ変形するようになる。したがって、カンチレバー23,24に歪みゲージ素子16,17をそれぞれ貼着することとすれば、歪みゲージ素子16の検出回路から出力される電気信号の変化量、あるいは歪みゲージ素子17の検出回路から出力される電気信号の変化量に基づいてステアリングシャフトSの回転角を検出することができる。
【0032】
・上記実施の形態では、変形部材としてカンチレバー13,14を、出力手段として歪みゲージ素子16,17およびそれらの検出回路を用いた。これら変形部材および出力手段は、ウォームギア11の往復動に応じて電気信号を出力する構成であればよく、例えば、変形部材および出力手段として、水晶、ニオブ酸リチウム、チタン酸バリウム、チタン酸鉛等の圧電体を用いるようにしてもよい。圧電体は、応力が印加されるとその結晶表面に正または負の電荷を発生する効果、いわゆる圧電効果を呈する物質である。そこで、ウォームギア11の側面に当接するように上記圧電体を配設すれば、ステアリングシャフトSの回転に応じてウォームギア11が同圧電体の表面を押圧することとなり、ステアリングシャフトSの回転に応じた電圧が圧電体に誘起されることとなる。このため、この圧電体にて誘起される電圧(電気信号)の変化量に基づいてステアリングシャフトSの回転角を検出することができる。
【0033】
・上記実施の形態において、カンチレバー14(13)および同カンチレバー14(13)に貼着された歪みゲージ素子17(16)を割愛するようにしてもよい。すなわち、ウォームギア11にて押圧される変形部材および出力手段を一つとしてもよい。この場合、例えば図9(a)に示すように、カンチレバー13のシャフト側の端面がばね30によってウォームギア11側に付勢される構成とすることも有効である。このような構成によれば、図9(b)に示すように、ステアリングシャフトSが矢印F2の方向に回転したときには、上記ばね30の付勢力によってカンチレバー13がウォームギア11側に曲げ変形するようになる。このため、ステアリングシャフトSの基準回転位置からの一方の回転方向への回転、および他方の回転方向への回転のいずれの方向の回転であっても、その回転角に応じた電気信号が歪みゲージ素子16の検出回路から出力されるようになり、同ステアリングシャフトSの360°以上の回転角を検出することができる。また、変形部材および出力手段が一つで済むため、回転角検出装置をより簡易な構成とすることができるようにもなる。なお、このような構成では、ウォームギア11の往復動に同期してカンチレバー13が変形する構成であれば任意の構成を採用することができる。この他にも、例えばカンチレバー13のシャフト側の端面とウォームギア11のカンチレバー13側の端面とを機械的な機構を介して連結した構成や、両端面を接着剤によって固着した構成を採用するようにしても同様の効果を得ることができる。
【0034】
・上記実施の形態では、ウォームギア11の内部にねじ溝11aを形成するとともに、このねじ溝11aに案内ねじ軸12のねじ部を歯合させることによって、ウォームホイール10の回転運動をウォームギア11の往復動に変換していた。このようにウォームホイール10の回転運動を同ウォームギア11の往復動に変換するための機構は任意である。例えば図10に示すように、ウォームギア11の両側面にそれぞれ、その軸心方向に延出形成されたねじ軸11bを設けるとともに、このねじ軸11bに対応させて、同ねじ軸11bのねじ部が歯合するねじ溝が形成された軸受部40,41を車体側の部材に設けるようにしてもよい。このようにしても、ウォームホイール10の回転運動をウォームギア11の往復動に変換することができる。
【0035】
・上記実施の形態におけるウォームギア11や、運動変換機構としてラックアンドピニオン機構を採用した上記他の実施の形態におけるラックギア20の運動は、直動に限定されない。例えば、図11に示すように、ラックギア20は、ステアリングシャフトS側に湾曲した形状に形成されてもよい。このような構成によっても、ステアリングシャフトSの回転に応じてカンチレバー23あるいはカンチレバー24が変形するため、同ステアリングシャフトSの回転角を好適に検出することができる。要するに、運動変換機構は、ステアリングシャフトSの回転に応じて変形部材を押圧する構成であればよい。すなわち、運動変換機構は、ステアリングシャフトSの一方の回転方向への回転に応じて変形部材を往動させ、同ステアリングシャフトSの他方の回転方向への回転に応じて変形部材を復動させる構成であればよい。
【0036】
・上記実施の形態では、ステアリングシャフトSにウォームホイール10を外嵌することによってステアリングシャフトSの回転をウォームホイール10の回転としてウォームギア11に伝達するようにしていた。しかしながら、ステアリングシャフトSの回転をウォームギア11に伝達するための構成は任意である。例えば、ステアリングシャフトSに平歯車を外嵌するとともに、この平歯車とウォームホイール10との間に減速機を設けるようにしてもよい。このような構成によれば、ステアリングシャフトSの回転に応じて回転するウォームホイール10の回転量が抑制されるため、ウォームギア11の軸心方向長さを短くすることが可能となり、ひいては回転角検出装置をより簡易な構成とすることができるようになる。要するに、運動変換機構は、ステアリングシャフトSの回転に同期してウォームギア11を往復動させる構成であればよい。
【0037】
・本発明にかかる回転角検出装置は、ステアリングシャフトSの回転角を検出する用途以外にも適用可能である。特に、1回転以上回転する回転体の回転角を検出する際には、本発明にかかる回転角検出装置による回転角の検出が特に有益となる。
【図面の簡単な説明】
【0038】
【図1】本発明にかかる回転角検出装置の一実施の形態について、ステアリングシャフトが基準回転位置に位置しているときの、その斜視構造を模式的に示す斜視図。
【図2】図1中のA−Aに沿ったウォームギアの断面構造をその周辺の構成とともに模式的に示す正面図および断面図。
【図3】(a)は、図1中の矢印Bの方向から見た回転角検出装置の側面構造を示す側面図、(b)は、図1中の矢印Cの方向から見た同回転角検出装置の側面構造を示す側面図。
【図4】歪みゲージ素子の抵抗値の変化を検出するための検出回路の一例を示す回路図。
【図5】同実施の形態にかかる回転角検出装置の平面構造を示す平面図。
【図6】同実施の形態にかかる回転角検出装置の平面構造を示す平面図。
【図7】同実施の形態にかかる回転角検出装置において、ステアリングシャフトの回転角とカンチレバーの変形量との関係を示すグラフ。
【図8】他の実施の形態にかかる回転角検出装置の平面構造を模式的に示す平面図。
【図9】(a),(b)は、他の実施の形態にかかる回転角検出装置の平面構造を模式的に示す平面図。
【図10】他の実施の形態にかかる回転角検出装置の平面構造を模式的に示す平面図。
【図11】他の実施の形態にかかる回転角検出装置の平面構造を模式的に示す平面図。
【図12】従来の回転角検出装置の正面構造を模式的に示す正面図。
【符号の説明】
【0039】
10…ウォームホイール、11…ウォームギア、11a…ねじ溝、11b…ねじ軸、12…案内ねじ軸、13,14,23,24…カンチレバー、13a,14a…外側面、13b,14b,20a…長穴、15,25…ベース、16,17…歪みゲージ素子、20…ラックギア、21…ピニオンギア、22…ピン、30…ばね、40,41…軸受部、S…ステアリングシャフト。

【特許請求の範囲】
【請求項1】
往復動可能に配設された往復部材と、
回転角の検出対象となる回転体の一方の回転方向への回転に応じて前記往復部材を往動させ、同回転体の他方の回転方向への回転に応じて前記往復部材を復動させる運動変換機構と、
往復動に応じて前記往復部材から押圧されて変形する変形部材と、
前記変形部材の変形量を電気信号として出力する出力手段と、
を備えることを特徴とする回転角検出装置。
【請求項2】
前記変形部材および前記出力手段を2組設けるとともに、一方の組の変形部材は、前記回転体の基準回転位置からの一方の回転方向への回転時にのみ前記押圧を受けて変形するように、他方の組の変形部材は、前記回転体の前記基準回転位置からの他方の回転方向への回転時にのみ前記押圧を受けて変形するようにそれぞれ構成されてなる
請求項1に記載の回転角検出装置。
【請求項3】
前記変形部材はカンチレバーであり、前記出力手段はそのカンチレバーに貼着された歪みゲージである
請求項1または2に記載の回転角検出装置。
【請求項4】
前記変形部材は圧電体にて構成され、前記出力手段はその圧電体の圧電効果により前記電気信号を出力する
請求項1または2に記載の回転角検出装置。
【請求項5】
前記運動変換機構は、送りねじ機構である
請求項1〜4のいずれか1項に記載の回転角検出装置。
【請求項6】
前記運動変換機構は、ラックアンドピニオン機構である
請求項1〜4のいずれか1項に記載の回転角検出装置。
【請求項7】
前記回転体はステアリングシャフトおよび同ステアリングシャフトに同期して回転する部材のいずれかである
請求項1〜6のいずれか1項に記載の回転角検出装置。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【図6】
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【図7】
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【図8】
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【図9】
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【図10】
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【図11】
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【図12】
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【公開番号】特開2007−147480(P2007−147480A)
【公開日】平成19年6月14日(2007.6.14)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2005−343350(P2005−343350)
【出願日】平成17年11月29日(2005.11.29)
【出願人】(000003551)株式会社東海理化電機製作所 (3,198)
【Fターム(参考)】