説明

回転電機の固定子コイル及びその製造方法

【課題】 部分放電を効果的に抑制でき信頼性の高い回転電機の固定子コイルを得る。
【解決手段】 対地主絶縁層11は第一及び第二の絶縁層12,13にて形成されている。例えば、素線束5にボンド処理マイカテープを1/2重ね巻にて1回巻回して第一の絶縁層12を形成し、第一の絶縁層12の上に半導電テープを1/2重ね巻にて1回巻回して半導電層15を形成する。その上にボンド処理マイカテープを1/2重ね巻にて9回巻回して第二の絶縁層13を形成し、その外周部に低抵抗及び高抵抗コロナシールド層16,17を設ける。ボンド処理マイカテープの巻回数を可能な限り少なくして、半導電層と素線束との距離を小さくし、半導電層と素線束との間の電界強度が所定値以下になるようにした。これにより、対地主絶縁層11における部分放電を効果的に抑制できる。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
この発明は、回転電機の固定子コイル及びその製造方法に係り、特にタービン発電機などの高電圧の回転電機における半導電層を有する固定子コイル及びその製造方法に関するものである。
【背景技術】
【0002】
タービン発電機などの大容量の回転電機の固定子コイルには、素線束を構成する多数の導体にレーベル転位を行う巻線構成が採用されている。固定子鉄心のスロットに収容される固定子コイルは、一般的に次のようにして製作される。多数の導体をレーベル転位して構成された素線束の外周部に、耐部分放電特性に優れたマイカテープなどを巻回して対地主絶縁層を形成する。そして、この対地主絶縁層の外周部におけるスロットに収納される部分に、固定子鉄心との間の放電を防ぐ低抵抗コロナシールド層を設ける。しかる後に、全体にエポキシ樹脂などの含浸樹脂を真空加圧含浸し、さらに加熱処理を行い、含浸樹脂を硬化させる。
【0003】
上記素線束に印加される高電圧を鉄心との問で絶縁している対地主絶縁層に、空隙などの欠陥が存在すると、これらの欠陥部分で放電が発生し、対地主絶縁層の絶縁破壊や絶縁寿命に悪影響を及ぼしたり、絶縁の健全性を確認するために測定する最大放電電荷量Qmaxやtanδ(誘電正接)の値を悪化させるおそれがある。上記のような空隙などの欠陥による放電を抑制するために、素線束(導体)を包囲する対地主絶縁層内に素線束を囲むように半導電層を設けたものがある。そして、対地主絶縁層の外周には低抵抗コロナシールド層が設けられている(例えば、特許文献1参照)。また、このような半導電層が対地主絶縁層の厚さtに対して導体の端からt/3以内に位置するようにしたものがある(例えば、特許文献2参照)。
【0004】
【特許文献1】特開昭58−159642号(第2頁左上欄第5行、右上欄第16行〜左下欄第3行及び第3図)
【特許文献2】実願昭59−16049号(実開昭60−129855号)のマイクロフィルム(第3頁第14行〜第17行、第1図及び第2図)
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0005】
ところで、レーベル転位された導体を有する素線束においてレーベル転位により生じる導体間の段差を埋めるためにレーベル転位部に絶縁詰物が設けられる。この絶縁詰物は、大気圧下において樹脂を含んだ半硬化の材料を加熱と同時に加圧して硬化させて形成するが、大気中で行われるので内部の空隙がそのまま残存すると、これらの欠陥部分で放電が発生する。一方、対地主絶縁層はマイカテープを巻回した後に樹脂を真空加圧含浸して形成されるのであるが、この対地主絶縁層にも空隙が発生する。ところが、上記絶縁詰物内部の空隙は対地主絶縁層に発生する空隙に比較して大きい。大きな空隙が残存すると、電圧が印加された場合に大きな放電が発生し、最大放電電荷量Qmax特性やtanδ特性を悪くする。従って、低抵抗コロナシールド層を設けたり、半導電層が対地主絶縁層の厚さtに対して導体の端からt/3以内に位置するようにしたりするだけでは、充分な対策を施したとはいえない。この発明は、上記のようなレーベル転位部の絶縁詰物部で発生する部分放電の問題を解決するためになされたものであり、部分放電を効果的に抑制でき信頼性の高い回転電機の固定子コイルを得ること及び固定子コイルの製造方法を提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0006】
この発明に係る回転電機の固定子コイルにおいては、電流を流す素線の外周部に素線絶縁を設け転位が施された複数の導体と転位により生じる導体間の段差を埋める絶縁詰物とを有する素線束と、素線束の外周部に設けられた対地主絶縁層と、素線束の長手方向における絶縁詰物がある部分の外周部の対地主絶縁層中に設けられた半導電層とを備え、半導電層の素線束からの距離を絶縁詰物での電界強度が所定値以下になるように調整したものである。
【0007】
この発明に係る回転電機の固定子コイルの製造法においては、次の工程を設けたものである。
ア.電流を流す素線の外周部に素線絶縁を設けた複数の導体を束ねるとともに導体に転位を施す工程。
イ.導体の転位により生じる導体間の段差を絶縁詰物にて埋めて素線束を製作する工程。
ウ.絶縁テープに含浸樹脂と反応して硬化させる硬化剤と硬化反応を促進する触媒とを有する硬化剤触媒混合材料を担持させるボンド処理を行ってボンド処理絶縁テープを製作する工程。
エ.ボンド処理絶縁テープを素線束の外周部に巻回して、絶縁詰物がある部分の電界強度が所定値以下になるように調整した所定の厚さで第一の絶縁層を形成する工程。
オ.半導電テープを絶縁詰物がある部分の外側に所定の厚さで巻回して半導電層を形成する工程。
カ.ボンド処理絶縁テープを第一の絶縁層または半導電層の外周部に所定厚さで巻回して第二の絶縁層を形成する工程。
キ.第二の絶縁層が形成された素線束に所定の含浸樹脂を含浸させる工程。
ク.加熱処理して含浸樹脂を硬化させる工程。
【発明の効果】
【0008】
この発明における回転電機の固定子コイルは、電流を流す素線の外周部に素線絶縁を設け転位が施された複数の導体と転位により生じる導体間の段差を埋める絶縁詰物とを有する素線束と、素線束の外周部に設けられた対地主絶縁層と、素線束の長手方向における絶縁詰物がある部分の外周部の対地主絶縁層中に設けられた半導電層とを備え、半導電層の素線束からの距離を絶縁詰物での電界強度が所定値以下になるように調整したものであるので、絶縁詰物及びその近傍における電界強度を低減でき、部分放電を抑制し、信頼性の高い固定子コイルを得ることができる。
【0009】
この発明における回転電機の固定子コイルの製造法は、次の工程を設けたものである。
ア.電流を流す素線の外周部に素線絶縁を設けた複数の導体を束ねるとともに導体に転位を施す工程。
イ.導体の転位により生じる導体間の段差を絶縁詰物にて埋めて素線束を製作する工程。
ウ.絶縁テープに含浸樹脂と反応して硬化させる硬化剤と硬化反応を促進する触媒とを有する硬化剤触媒混合材料を担持させるボンド処理を行ってボンド処理絶縁テープを製作する工程。
エ.ボンド処理絶縁テープを素線束の外周部に巻回して、絶縁詰物がある部分の電界強度が所定値以下になるように調整した所定の厚さで第一の絶縁層を形成する工程。
オ.半導電テープを絶縁詰物がある部分の外側に所定の厚さで巻回して半導電層を形成する工程。
カ.ボンド処理絶縁テープを第一の絶縁層または半導電層の外周部に所定厚さで巻回して第二の絶縁層を形成する工程。
キ.第二の絶縁層が形成された素線束に所定の含浸樹脂を含浸させる工程。
ク.加熱処理して含浸樹脂を硬化させる工程。
従って、絶縁詰物及びその近傍における電界強度を低減でき、部分放電を抑制し、信頼性の高い固定子コイルの製造方法を提供することができる。
【発明を実施するための最良の形態】
【0010】
実施の形態1.
図1〜図6は、この発明を実施するための実施の形態1を示すものであり、図1は固定子鉄心のスロット出口付近における固定子コイルの要部を示す斜視図、図2はスロット内における固定子コイルの絶縁構造を模式的に示す断面図である。図3はボンド処理マイカテープを素線束の直近外周に巻回して形成した第一の絶縁層の素線束近傍における断面を示す模式図、図4は固定子鉄心に対する半導電層の位置を示す断面図である。図5は半導電層の位置による電位分布の比較を示す電位分布図、図6は半導電層の位置をパラメータにして最大電荷放電量Qmaxを表す特性図である。
【0011】
図1において、タービン発電機の固定子鉄心1の内周部にスロット2aを形成するスロット形成部2が設けられている。スロット2a内に固定子コイル3が収容され、固定子コイル3をスロット2a内に保持するためにスロット2aの開口部にくさび19が設けられている。固定子コイル3は、素線束5と絶縁詰物9と対地主絶縁層11と半導電層15と低抵抗コロナシールド層16と高抵抗コロナシールド層17とを有する。素線束5は、導体8(図2参照)を所定本数、断面が矩形になるように束ね、かつ導体8のレーベル転位を行い、レーベル転位により生じる導体8間の段差を埋めるために図2に示すようにレーベル転位部に絶縁詰物9を設けたものである。なお、導体8は断面が矩形で角部が丸くされた平角銅帯の素線6の外周部にエナメル絶縁やガラス糸巻回などによる素線絶縁を施したものである。そして、素線束5は図4に示すようにスロット2a内にあるスロット部5aとスロット2aの外にあるコイルエンド部5bに分かれている。
【0012】
対地主絶縁層11は、第一の絶縁層12と第二の絶縁層13にて構成されている(図4)。第一の絶縁層12は、図3に示すように素線束5の外周部にボンド処理マイカテープ(詳細後述)を1/2重ね巻にて1回巻回したものである。半導電層15は、図4に示すように素線束5のスロット部5aに形成された第一の絶縁層12を覆うとともに隣接するコイルエンド部5bに形成された第一の絶縁層12を所定範囲まで覆うように、半導電テープ(詳細後述)を1/2重ね巻にて1回巻回して形成したものである。これにより、半導電層15は第一の絶縁層12と第二の絶縁層13との間にあって、かつ図4に示すようにスロット2外に突出された絶縁詰物9の端部の位置Dからさらに所定寸法図4における左方に突出するようにして後述の低抵抗コロナシールド層16の端部の位置Eよりも右方の位置Fまで延長されている。
【0013】
第二の絶縁層13は、半導電層15の外周部及び半導電層15のない部分においては第一の絶縁層12の外周部に、ボンド処理マイカテープを1/2重ね巻にして9回巻回して形成されている。従って、第一の絶縁層12及び第二の絶縁層13にて構成される対地主絶縁層11は、ボンド処理マイカテープを1/2重ね巻にて合計10回巻回して形成されたものであり、半導電層15は対地主絶縁層11の約1/10の厚さのところに設けられていることになる。
【0014】
ここで、上記対地主絶縁層11に用いるボンド処理マイカテープは、マイカテープにボンド処理を行ったものである。このボンド処理とは、上述の固定子コイルに含浸するエポキシ樹脂などの含浸樹脂と反応して硬化させる硬化剤と硬化反応を促進する触媒として例えばナフテン酸亜鉛やオクチル酸亜鉛などの金属酸化物やルペロックス(商品名)などの過酸化有機物などを混合した混合樹脂である硬化剤触媒混合材料を塗布、噴霧、コーティング、含浸などの方法によってマイカテープに担持させる処理のことである。
【0015】
また、半導電層15は、耐熱性が高いF種以上の半導電テープを第一の絶縁層12の外周部に巻回して形成したものである。半導電テープとしては、生テープに半導電材料を含浸させたり塗布担持させたものやカーボン繊維混抄化学繊維テープなどを用いることができる。生テープとして、例えばガラスやポリエステル、ポリアミドなどの織布、不織布などの絶縁性、耐熱性に優れた一般的な絶縁材料を挙げることができる。半導電材料としては、例えばカーボンやグラファイトなどの導電性ないしは半導電性を有する材料の粉末やファイバを混入したポリエステル樹脂やエポキシ樹脂などの塗料などを用いることができる。さらに、半導電テープとして、鉄粉、酸化鉄など鉄を主原料とした粉末などを分散させた樹脂を塗布するなどの処理を行うことにより導電性が付与された半導電クロステープや半導電不織布テープなどを用いることも可能である。
【0016】
低抵抗コロナシールド層16は、図4に示すように第二の絶縁層13の外周部に半導電層16を完全に覆うように半導電層15の端部の位置Fよりもさらに所定寸法固定子鉄心1から突出させて設けられている。また、コイルエンド部5bに形成された第二の絶縁層13の所定部分を覆うようにかつ低抵抗コロナシールド層16と連接して高抵抗コロナシールド層17が設けられている。低抵抗コロナシールド層16は、対地主絶縁層11の表面のコロナ放電を防止するための表面コロナシールド装置として設けられたものである。
【0017】
次に、固定子コイルの製造方法について説明する。
予め、対地主絶縁層11に用いるボンド処理マイカテープを、マイカテープにボンド処理を行うことにより製作しておく。このボンド処理により、上述のように含浸樹脂と反応して硬化させる硬化剤と硬化反応を促進する触媒を混合した硬化剤触媒混合材料を塗布などの方法によって上記マイカテープに担持させる。また、半導電テープを用意しておく。半導電テープは、上述した半導電クロステープや半導電不織布テープを購入したり、生テープに半導電材料を塗布や含浸したりして製作しておく。
【0018】
そして、平角銅帯にエナメル絶縁被覆やガラス糸などを巻き付けて素線絶縁7を施したものを所定の長さに切断して導体8を製作後、レーベル転位のために曲げ加工を施し、所定本数を束ねる。束ねられた導体8のうち上下に位置する導体8にはレーベル転位のため導体8相互間に段差がついているため半硬化状態にした樹脂をのせ、加熱成形して所定の形状に整え絶縁詰物9を形成し、素線束5とする。この素線束5の周囲に上記ボンド処理マイカテープを1/2重ね巻にて1回だけ巻回して第一の絶縁層を形成する。そして、スロット部5aに形成された第一の絶縁層12の全部及びこれに隣接するコイルエンド部5bに形成された第一の絶縁層12の一部に半導電テープを1/2重ね巻にて1回巻回して半導電層15を形成する。
【0019】
さらに、半導電層15の上及び半導電層15が設けられていない部分においては第一の絶縁層の上に1/2重ね巻にて9回ボンド処理マイカテープを巻回して、第二の絶縁層13を形成する。しかる後、素線束5のスロット部5aに形成された第二の絶縁層13の外周部の全部及びコイルエンド部5bに形成された第二の絶縁層13の所定範囲の外周部に半導電層15を完全に覆うように低抵抗導電塗料を塗布することにより低抵抗コロナシールド層16を形成する。また、コイルエンド部5bに形成された第二の絶縁層13の外周部に低抵抗コロナシールド層16と連接して高抵抗導電塗料を塗布することにより高抵抗コロナシールド層17を形成する。
【0020】
このようにして対地主絶縁層11内に半導電層15を設けるとともに対地主絶縁層11の外周部に低抵抗コロナシールド層16と高抵抗コロナシールド層17を形成したものを含浸タンクにいれ、所定の含浸樹脂を真空加圧含浸する。各部、特に対地主絶縁層11に充分含浸樹脂が含浸されてから含浸タンクから取り出し、加熱硬化のために加熱炉に入れて全体を加熱して含浸樹脂を硬化させ、固定子コイル3を製作する。このとき、ボンド処理マイカテープに担持された硬化剤触媒混合材料が上記含浸樹脂を硬化させまた硬化反応を促進する。このようにして製作した固定子コイル3を、スロット2a内に収容し、くさび19をスロット2aの開口部に装着して抜け止めを行う。
【0021】
ところで、上述の対地主絶縁層11の外周部に低抵抗コロナシールド層16と高抵抗コロナシールド層17を形成したものを含浸タンクに入れ含浸樹脂を真空含浸する時、レーベル転位部の絶縁詰物9は上述のように素線束5を形成する過程で加熱され硬化してしまっているので、対地主絶縁層11に含浸樹脂を含浸する過程では絶縁詰物9には樹脂は含浸されず、絶縁詰物の硬化時に形成された空隙はそのまま残っている。この空隙は対地主絶縁層11に形成される空隙よりも大きい場合があり、部分放電特性を悪化させる。特に、耐電圧試験のように高い電圧を印加すると、空隙部で放電して放電電荷が空隙部の壁に残るため、以後の最大放電電荷量Qmaxの測定においては耐電圧試験を行う前の10倍程度に急増する場合がある。
【0022】
半導電層15の電位は、図2における面積の大きいA部の半導電層15をはさむ第一の絶縁層12と第二の絶縁層13の静電容量の分圧によってほぼ決まり、B部やC部の影響は小さい。そして、半導電層15の抵抗が低いため、絶縁詰物9のあるB部における半導電層15の電位もA部における半導電層15の電位とほぼ等しくなる。この時、絶縁詰物9を通過する電界は低減されるので、部分放電が抑制される。このように、第一の絶縁層12の厚さが対地主絶縁層11の厚さに占める割合をできる限り小さくすることにより、すなわち本実施の形態のように例えば対地主絶縁層11をボンド処理マイカテープを1/2重ね巻で10回巻回して形成する場合、第一の絶縁層12の巻回数を最小限の1/2重ね巻で1回巻とする。これによりA部の半導電層15の電位は全体に対して1:9に分圧される。従って、図5(a)に示すように、半導電層15がない場合は絶縁詰物9を横切る等電位線が密であるのに対して、半導電層15がある場合は図5(b)に示すように等電位線が1本しかないになる。すなわち、等電位線の数が多いほど電界が強い、等電位線の数が少ないほど電界が弱いので、半導電層15により電界強度を充分に小さくできることが分かる。
【0023】
図6に、最大放電電荷量Qmaxの電圧特性を示す。図6において、特性曲線Q1はこの実施の形態に示した対地主絶縁層11中において素線束5の端から対地主絶縁層11の厚さの1/10の位置に半導電層15を設けた場合、特性曲線Q2は素線束5の端から1/3の位置に半導電層15を設けた場合、特性曲線Q3は半導電層15を設けない場合、の最大放電電荷量Qmax特性を示す。最大放電電荷量Qmax特性は、特性曲線Q2に示されるように、素線束5の端から1/3の位置に設置した場合は半導電層15を設けない場合よりは改善されるがその効果が小さく、最大放電電荷量Qmaxの低減効果はわずかなものである。すなわち、顕著な効果を奏するためには半導電層15の素線束5の端までの距離が対地主絶縁層11の厚さの1/10程度以下となるようにするのが望ましく、上述のように可能な限り近づけるほど、効果が大きくなる。
【0024】
しかし、半導電層15を素線束5にできる限り近い位置に設けるために、素線束5に直接半導電テープを巻回すると、半導電層15と素線束5が短絡するおそれがある。素線束5の表面にある導体8間の窪みに樹脂が完全に入らず空隙が形成されると、耐電圧試験時にこの空隙で放電して素線絶縁7が破壊され半導電層15と素線6が短絡する。また、これとは別の何らかの理由で素線絶縁7が傷ついている場合にも、半導電層15と素線6が短絡する。半導電層15と素線6が短絡した場合、半導電層15を経由して電流が流れるため、tanδ特性が悪くなる不具合が発生する。
【0025】
このような半導電層15と素線束5との短絡を防ぐため、この実施の形態においては図3に示すように、素線束5の直上にボンド処理マイカテープを1/2重ね巻で1回巻回し、第一の絶縁層12を形成した。これに対する比較例として、ボンド処理マイカテープの隣接する端部同士が若干重なるようにして1回巻回して第一の対地絶縁層を形成してみた。ところが、巻回時のピッチのばらつきにより、ボンド処理マイカテープ相互間に形成された隙間の部分に樹脂が含浸されなかったり、含浸樹脂が硬化前に漏れ出したりした場合に空隙が形成されることがあり、耐電圧試験時に半導電層15と素線束5間で放電して短絡し、耐電圧試験後のtanδが大きくなる現象が発生した。テープ幅の1/3〜2/3重ね巻にするとこの現象は発生しないことから、最低1/3重ね巻1回が必要である。通常、ボンド処理マイカテープは1/2重ね巻とすることが多く、1/2重ね巻は巻回が容易であるので、この実施の形態では1/2重ね巻としたが、1/3〜2/3重ね巻でも目的は達せられる。
【0026】
また、前述したように、半導電層15と素線束5は確実に絶縁しなければtanδが大きくなる不具合が発生するおそれがある。しかし、素線束5の外周部に形成された第一の絶縁層12の巻回数を多くしすぎると半導電層15が素線束5から遠くなるので、目的とする部分放電の抑制効果が小さくなる(図6参照)。以上から、素線束5にボンド処理マイカテープを1/2重ね巻にて1回巻回して第一の絶縁層12を形成し、その外周にボンド処理半導電テープを1/2重ね巻にて1回巻回して半導電層15を形成し、さらにその外周にボンド処理マイカテープを1/2重ね巻にて所定の回数巻回して第二の絶縁層13を形成したものが最適である。
【0027】
また、絶縁詰物9近傍における放電を抑制するためには、半導電層15の端部の位置Fは、図4に示すようにレーベル転位が施されている部分の絶縁詰物9の端部の位置Dよりも図4における左方すなわち位置Dよりも固定子鉄心1から離れた位置にあることが必要である。半導電層15の端部の位置Fが絶縁詰物9の端部の位置Dより鉄心に近いと、半導電層15からはみだした絶縁詰物9近傍の空隙で発生する部分放電を抑制できず、最大放電電荷量Qmaxが大きくなる。また、素線束5のスロット部5bの長さ方向すなわち軸方向全長にわたり半導電層15の電位をほぼ一定とするため、半導電層15の端部の位置Fは低抵抗コロナシールド層16の固定子鉄心1側の端部の位置Eよりも図4における右方に位置するようにして、半導電層15が低抵抗コロナシールド層16により完全に覆われるようにしている。なお、このように半導電層15が低抵抗コロナシールド層16により完全に覆われるようにすれば、半導電層15の電位は低抵抗コロナシールド層16と半導電層15と素線束5間の静電容量分圧から決まる。
【0028】
また、半導電層15の端部の位置Fが低抵抗コロナシールド層17の端部の位置Eよりも図4における左方の位置にあってかつ半導電層15が低抵抗コロナシールド層16により完全に覆われていない場合、第二の絶縁層13の表面には高抵抗コロナシールド層17がありその電位は低抵抗コロナシールド層16の電位より高くなる。このため、高抵抗コロナシールド層17近傍の半導電層15の電位が若干上昇することになるが、絶縁詰物9がない部分であるため最大放電電荷量Qmaxは大きくならない。しかし、半導電層15における素線束5の長さ方向の電位が一様ではないため、半導電層15を素線束5の長さ方向に電流が流れtanδが大きくなるおそれがあるため、好ましくはない。このため、半導電層15の端部の位置Fは絶縁詰物9の端部の位置Dと低抵抗コロナシールド層16の固定子鉄心1側の端部の位置Eとの間であるG部の範囲にあるのが最適である。
【0029】
以上のように、この実施の形態によれば、ボンド処理マイカテープを巻回して第一の絶縁層12を形成し、その外周に半導電テープを巻回して半導電層15を形成し、さらにその外周にボンド処理マイカテープを所定回巻回して第二の絶縁層13を形成した。すなわち、半導電層15の素線束5からの距離を絶縁詰物9がある部分の電界強度が所定値以下になるように調整した。また、第一の絶縁層の厚さを対地主絶縁層11の厚さに対し可能な限り小さし、半導電層15の素線束5の端からの距離を対地主絶縁層11全体の厚さの1/3より小さく望ましくは約1/10より小さくなるようにし、絶縁詰物がある部分の電界強度が充分に小さくなるようにした。これにより、絶縁詰物9及びその近傍における電界強度を低減でき、部分放電を抑制し良好な最大放電電荷量Qmax特性を得ることができる。また、tanδを減少させることができる。これらにより信頼性の高い固定子コイル3を得ることができる。また、絶縁テープとしてマイカテープを用いれば、絶縁性及び耐コロナ性に優れた第一及び第二の絶縁層を形成することができる。また、半導電テープとしてカーボン繊維混抄化学繊維テープを用いれば半導電テープを容易に製作することができる。さらに、ガラステープまたはポリエステル繊維テープに樹脂と導電体の粉とを混合した半導電材料を担持させれば、半導電テープを容易に製作することができる。そして、マイカテープにボンド処理を行えば、絶縁性及び耐コロナ性に優れたボンド処理絶縁テープを製作することができる。また、半導電テープとしてカーボン繊維混抄化学繊維テープを用いれば、容易に半導電層を形成することができる。また、ガラステープまたはポリエステル繊維テープに樹脂と導電体の粉と混合した半導電材料を担持させた半導電テープを用いれば、容易に半導電層を形成することができる。
【0030】
実施の形態2.
図7はこの発明の実施の形態2であるスロット内における固定子コイルの絶縁構造を模式的に示す断面図、図8はボンド処理半導電テープの重量減少を示す特性図である。この実施の形態は、実施の形態1における半導電テープにボンド処理をしたものであるボンド処理半導電テープを、半導電テープと同様に1/2重ね巻にて1回巻回して半導電層55を形成したものである。その他の構成については、図1〜図4に示した実施の形態1と同様のものであるので、相当するものに同じ符号を付して説明を省略する。
【0031】
ここで、上記半導電層55の形成に用いるボンド処理半導電テープは、次のように実施の形態1におけるマイカテープのボンド処理と同様の処理を行う。すなわち、半導電テープに上述のエポキシ樹脂などの含浸樹脂と反応して硬化させる硬化剤と硬化反応を促進する触媒として例えばナフテン酸亜鉛やオクチル酸亜鉛などの金属酸化物やルペロックス(商品名)などの過酸化有機物などを混合した混合樹脂である硬化剤触媒混合材料を塗布、噴霧、コーティング、含浸などの方法によって担持させる。固定子コイルの製造にあたっては、予め、半導電層55の形成に用いるボンド処理半導電テープを、半導電テープにボンド処理を行うことにより製作しておく。その他の製造法については、実施の形態1で述べたのと同様である。
【0032】
この実施の形態においても、図7に示したように、半導電層55は第一の絶縁層12と第二の絶縁層13に挟まれた構造となる。上述のように、マイカテープに含浸樹脂と反応して硬化させる目的でマイカテープにボンド処理が行われたボンド処理マイカテープを巻回して対地主絶縁層11を形成する。この実施の形態においては、半導電層55を形成するための半導電テープにボンド処理を行うことにより、第一及び第二の絶縁層12,13を形成するボンド処理絶縁テープに担持された硬化剤触媒混合材料が半導電層55を形成する半導電テープへ流出するのを防止し、真空含浸したときに含浸樹脂が硬化不足とならないようにする。なお、硬化不足となった場合には、運転中の温度上昇により硬化不足の樹脂が熱分解してガスが発生して対地主絶縁層11中に空隙が発生したり、半導電層55と対地主絶縁層11との接着強度が低くなり運転中の応力により剥離が発生するおそれがあるので、これを防止する。図8にボンド処理するときの硬化剤触媒混合材料の濃度をマイカテープに処理する濃度と同じ濃度した場合のボンド処理半導電テープ(M1)及びボンドを通常のマイカテープに処理する濃度の1/4の濃度とした場合のボンド処理半導電テープ(M2)を、155℃で約1000時間加熱した場合の含浸樹脂の重量減少を示す。
【0033】
これによれば、通常濃度で処理したもの(M1)はほとんど重量が減少していないのに対し、濃度を1/4としたもの(M2)は約1%の重量減少が発生している。長期の運転ではこの重量減少に伴うガスが対地主絶縁層11内に蓄積して、固定子コイル3の最大放電電荷量Qmaxやtanδ特性を悪化させるおそれがある。このような含浸樹脂の硬化不足を防止するために、上述のように半導電層55を形成するために対地主絶縁層11を形成するマイカテープに施すのと同様の硬化剤触媒混合材料の濃度でボンド処理を行ったボンド処理半導電テープを用いている。従って、対地主絶縁層11及び半導電層55における含浸樹脂の硬化不足を防止でき、使用中のガスの発生を少なくできる。
【0034】
以上のように、この実施の形態によれば、ボンド処理されたボンド処理半導電テープを用いて半導電層55を形成するようにしたので、第一及び第二の絶縁層12,13を形成するボンド処理絶縁テープに担持された硬化剤触媒混合材料すなわちボンドが半導電層55を形成する半導電テープへ流出するのを防止して、真空含浸したときに含浸樹脂が硬化不足とならないようにできる。これにより、実施の形態1で述べた効果に加えて、対地主絶縁層11中の空隙の発生を防止して部分放電を抑制し良好な最大放電電荷量Qmax特性を得ることができる。また、tanδを減少させることができる。従って、信頼性の高い固定子コイル3を得ることができる。
【0035】
実施の形態3.
図9は、この発明の実施の形態3におけるボンド処理加熱半導電テープを加熱処理したときの重量減少を示す特性図である。この実施の形態3は、半導電塗料を塗布した半導電テープを、加熱処理してからボンド処理を行ったボンド処理加熱半導電テープを用いるものである。図4や図7に示したように、半導電層15や半導電層55は対地主絶縁層11の内部に形成される。半導電層15や半導電層55を形成するためのボンド処理をする前の半導電テープはF種以上の耐熱性があるものも多数あるが、カーボンやグラフアイトを樹脂に混合した半導電塗料を、ガラス繊維の生ガラステープなどに塗る方法で製作されるものが多い。しかし、生ガラステープに塗布された半導電塗料の未反応物により、運転中に温度が上がったときにガスが発生する可能性がある。図9にガラス基材とポリエステル繊維基材の生テープにそれぞれカーボンやグラフアイトを混合した半導電塗料を塗布したものを155℃で加熱した場合の重量減少の一例を示すが、熱劣化により重量が減少している。すなわち、半導電テープからガスが発生していることが分る。
【0036】
実施の形態1や2の半導電層15や半導電層55のように第二の絶縁層13の内側に半導電テープやボンド処理半導電テープが巻回される場合、ガスが発生すると半導電層15や半導電層55を形成する半導電テープやボンド処理半導電テープは第二の絶縁層13で囲まれているのでガスが抜けるところがない。このため、半導電層15や半導電層55の近傍に空隙が形成され、部分放電が発生して最大放電電荷量Qmaxやtanδを悪くする可能性がある。これを防ぐため、半導電塗料を塗布した半導電テープにあらかじめ運転で想定される最高温度と同等以上の温度で所定時間加熱処理を施せば、運転時に未反応物からガスが発生するのが抑制され、良好な特性を得ることができる。そして、この加熱処理した加熱半導電テープにボンド処理を行って、ボンド処理加熱半導電テープを製作し、半導電層の形成に用いる。その他の構成や製造方法については、実施の形態1や2で述べたものと同様である。
【0037】
図9は、加熱処理により減少する樹脂減少量を示すもので、曲線K1はガラス繊維を基材とする生ガラステープに上述の半導電塗料を塗布した半導電ガラステープを予め約160℃で加熱処理した加熱処理品である加熱半導電テープを、さらに155℃にて加熱したときの重量減少量を示す。曲線K2は、半導電塗料を塗布した半導電ガラステープであって加熱処理していない未処理品を、155℃にて加熱したときの重量減少量を示す。曲線K3は、ポリエステル繊維を基材とする生ポリエステル繊維テープに上述の半導電塗料を塗布した半導電ポリエステル繊維テープであって加熱処理していない未処理品を、155℃にて加熱したときの重量減少量を示す。図9から明らかなように、半導電塗料を塗布などにより担持させた半導電テープを予め加熱処理しておけば、重量の減少が少なくなり加熱半導電テープにおける発生ガスの量を抑制できる。なお、上記加熱処理を減圧下で実施すれば、一層ガス発生の抑制効果が大きくなる。
【0038】
固定子コイル3において、第一の絶縁層12の上に加熱処理後にボンド処理したボンド処理加熱半導電テープを巻回して半導電層を形成し、さらにその外周に所定回数ボンド処理マイカテープを巻回することにより、ボンド処理加熱半導電テープからガスが発生することを抑制できるので、レーベル転位部の絶縁詰物9近傍に形成される空隙で発生する部分放電を軽減でき、また対地主絶縁層11中の空隙の発生を防止して信頼性の高い固定子コイルを実現することができる。
【0039】
なお、以上の実施の形態においては、ボンド処理マイカテープを1/2重ね巻にて1回巻回して第一の絶縁層12を形成し、1/2重ね巻にて9回巻回して第二の絶縁層13を形成したが、巻回数はこれに限定されるものではなく、必要とされる絶縁強度に応じて決定すればよい。また、半導電層15や半導電層55を半導電テープ、ボンド処理半導電テープあるいはボンド処理加熱半導電テープを第一の絶縁層12の上に1/2重ね巻にて1回巻回して形成するものについて説明したが、これに限られるのでものはなく、突き合わせでの1回ないし2回巻きなどであってもよい。なお、突き合わせ巻とは半導電テープの幅方向端部を突き合わせ状態になるようにして順次巻回する方法である。
【図面の簡単な説明】
【0040】
【図1】この発明の実施の形態1である固定子鉄心出口付近における固定子コイルの要部を示す斜視図である。
【図2】スロット内における固定子コイルの絶縁構造を模式的に示す断面図である。
【図3】ボンド処理マイカテープを素線束の直近外周に巻回して形成した第一の絶縁層の素線束近傍における断面を示す模式図である。
【図4】固定子鉄心に対する半導電層の位置を示す断面図である。
【図5】半導電層の位置による電位分布の比較を示す電位分布図である。
【図6】半導電層の位置をパラメータにして最大電荷放電量Qmaxを表す特性図である。
【図7】この発明の実施の形態2であるスロット内における固定子コイルの絶縁構造を模式的に示す断面図である。
【図8】ボンド処理半導電テープの重量減少を示す特性図である。
【図9】この発明の実施の形態3において半導電テープを加熱処理したときの重量減少を示す特性図である。
【符号の説明】
【0041】
1 固定子鉄心、2a スロット、3 固定子コイル、5 素線束、
5a スロット部、5b コイルエンド部、6 素線、8 導体、絶縁詰物9、
11 対地主絶縁層、12 第一の絶縁層、13 第二の絶縁層、15 半導電層、
16 低抵抗コロナシールド層、17 高抵抗コロナシールド層、55 半導電層。

【特許請求の範囲】
【請求項1】
電流を流す素線の外周部に素線絶縁を設け転位が施された複数の導体と上記転位により生じる上記導体間の段差を埋める絶縁詰物とを有する素線束と、
上記素線束の外周部に設けられた対地主絶縁層と、
上記素線束の長手方向における上記絶縁詰物がある部分の外周部の上記対地主絶縁層中に設けられた半導電層とを備え、
上記半導電層の上記素線束からの距離を上記絶縁詰物での電界強度が所定値以下になるように調整した
回転電機の固定子コイル。
【請求項2】
上記半導電層の上記素線束からの距離を上記対地主絶縁層の厚さの3分の1よりも小さくしたことを特徴とする請求項1に記載の回転電機の固定子コイル。
【請求項3】
上記対地主絶縁層は、絶縁テープに所定の含浸樹脂と反応して硬化させる硬化剤と上記硬化反応を促進する触媒とを有する硬化剤触媒混合材料を担持させるボンド処理を行って製作されたボンド処理絶縁テープを上記素線束の外周部に所定回数巻回して形成されたものであり、
上記半導電層は上記ボンド処理絶縁テープを上記素線束の外周部に重ね巻で1回巻回した後に半導電テープを巻回して形成されたものであり、
上記素線束は、上記素線束の外周部に巻回された上記ボンド処理絶縁テープ及び上記半導電テープに上記所定の含浸樹脂が含浸され硬化されたものである
ことを特徴とする請求項1に記載の回転電機の固定子コイル。
【請求項4】
上記絶縁テープは、マイカテープであることを特徴とする請求項3に記載の回転電機の固定子コイル。
【請求項5】
上記半導電テープは、カーボン繊維混抄化学繊維テープであることを特徴とする請求項3に記載の回転電機の固定子コイル。
【請求項6】
上記半導電テープは、ガラステープまたはポリエステル繊維テープに樹脂と導電体の粉とを混合した半導電材料を担持させたものであることを特徴とする請求項3に記載の回転電機の固定子コイル。
【請求項7】
上記半導電テープは、所定の温度で所定時間加熱処理したものであることを特徴とする請求項3に記載の回転電機の固定子コイル。
【請求項8】
上記半導電テープは、上記ボンド処理を行ったものであることを特徴とする請求項3に記載の回転電機の固定子コイル。
【請求項9】
次の工程を有する回転電機の固定子コイルの製造法。
ア.電流を流す素線の外周部に素線絶縁を設けた複数の導体を束ねるとともに上記導体に転位を施す工程。
イ.上記導体の転位により生じる上記導体間の段差を絶縁詰物にて埋めて素線束を製作する工程。
ウ.絶縁テープに含浸樹脂と反応して硬化させる硬化剤と上記硬化反応を促進する触媒とを有する硬化剤触媒混合材料を担持させるボンド処理を行ってボンド処理絶縁テープを製作する工程。
エ.上記ボンド処理絶縁テープを上記素線束の外周部に巻回して、上記絶縁詰物がある部分の電界強度が所定値以下になるように調整した所定の厚さで第一の絶縁層を形成する工程。
オ.半導電テープを上記絶縁詰物がある部分の外側に所定の厚さで巻回して半導電層を形成する工程。
カ.上記ボンド処理絶縁テープを上記第一の絶縁層または上記半導電層の外周部に所定厚さで巻回して第二の絶縁層を形成する工程。
キ.上記第二の絶縁層が形成された上記素線束に所定の含浸樹脂を含浸させる工程。
ク.加熱処理して上記含浸樹脂を硬化させる工程。
【請求項10】
上記第一の絶縁層を形成する工程は、上記第一の絶縁層の厚さを上記素線束から上記第二の絶縁層の外側までの距離の3分の1よりも小さくすることを特徴とする請求項9に記載の回転電機の固定子コイルの製造法。
【請求項11】
上記第一の絶縁層を形成する工程は上記ボンド処理絶縁テープを重ね巻で1回巻回するものであり、上記第二の絶縁層を形成する工程は、上記ボンド処理絶縁テープを重ね巻で所定回数巻回するものであることを特徴とする請求項9に記載の回転電機の固定子コイルの製造法。
【請求項12】
上記ボンド処理絶縁テープを製作する工程は、マイカテープに上記ボンド処理を行うものであることを特徴とする請求項9に記載の回転電機の固定子コイルの製造法。
【請求項13】
上記半導電テープを巻回して半導電層を形成する工程は、半導電テープとしてカーボン繊維混抄化学繊維テープを用いるものであることを特徴とする請求項9に記載の回転電機の固定子コイルの製造法。
【請求項14】
上記半導電テープを巻回して半導電層を形成する工程よりも前に、ガラステープまたはポリエステル繊維テープに樹脂と導電体の粉とを混合した半導電材料を担持させて半導電テープを製作する工程を設けたことを特徴とする請求項9に記載の回転電機の固定子コイルの製造法。
【請求項15】
上記半導電テープを巻回して半導電層を形成する工程よりも前に、上記半導電テープを所定の温度で所定時間加熱処理する工程を設けたことを特徴とする請求項9に記載の回転電機の固定子コイルの製造法。
【請求項16】
上記半導電テープを巻回して半導電層を形成する工程よりも前に、上記半導電テープに上記ボンド処理を行う工程を設けたことを特徴とする請求項9に記載の回転電機の固定子コイルの製造法。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【図6】
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【図7】
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【図8】
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【図9】
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【公開番号】特開2006−325357(P2006−325357A)
【公開日】平成18年11月30日(2006.11.30)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2005−147627(P2005−147627)
【出願日】平成17年5月20日(2005.5.20)
【出願人】(000006013)三菱電機株式会社 (33,312)
【Fターム(参考)】