固体撮像素子、その製造方法、カメラ
【課題】混色を抑えた固体撮像素子、その製造方法、カメラを提供する。
【解決手段】実施形態によれば、固体撮像素子は、2次元配列された複数の光電変換部を有する基板と、前記基板に対して積層され、前記各光電変換部に向けて特定の波長域の光を透過させる複数のカラーフィルタと、を備える。前記各カラーフィルタは、相対的に屈折率の異なる第1の層と第2の層との積層構造を有する積層構造部と、2次元方向に周期性を有する周期構造部であって、透過波長域ごとに周期が異なる周期構造部と、を有する。
【解決手段】実施形態によれば、固体撮像素子は、2次元配列された複数の光電変換部を有する基板と、前記基板に対して積層され、前記各光電変換部に向けて特定の波長域の光を透過させる複数のカラーフィルタと、を備える。前記各カラーフィルタは、相対的に屈折率の異なる第1の層と第2の層との積層構造を有する積層構造部と、2次元方向に周期性を有する周期構造部であって、透過波長域ごとに周期が異なる周期構造部と、を有する。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明の実施形態は、固体撮像素子、その製造方法、カメラに関する。
【背景技術】
【0002】
近年、固体撮像素子の応用範囲は、デジタルカメラ、携帯電話などの各種モバイル端末や、監視カメラ、インターネットを介したチャット用のウェブカメラなど、広範な範囲に拡がりつつある。
【0003】
カラー画像を得るためには、カラーフィルターが用いられる。現在、製品化されている固体撮像素子のカラーフィルターは、ほとんどが有機樹脂材料を用いた顔料カラーフィルターである。また、無機材料を用いたフォトニックカラーフィルターが提案されてはいるが、実用化するにあたっては、さらなる特性の改善が求められる。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0004】
【特許文献1】特開2008−170979号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0005】
混色を抑えた固体撮像素子、その製造方法、カメラを提供する。
【課題を解決するための手段】
【0006】
実施形態によれば、固体撮像素子は、2次元配列された複数の光電変換部を有する基板と、前記基板に対して積層され、前記各光電変換部に向けて特定の波長域の光を透過させる複数のカラーフィルタと、を備える。前記各カラーフィルタは、相対的に屈折率の異なる第1の層と第2の層との積層構造を有する積層構造部と、2次元方向に周期性を有する周期構造部であって、透過波長域ごとに周期が異なる周期構造部と、を有する。
【図面の簡単な説明】
【0007】
【図1】第1実施形態に係る固体撮像素子の模式断面図。
【図2】実施形態のカラーフィルタの周期構造部の一例を示す模式図。
【図3】(a)は、第1実施形態の固体撮像素子におけるカラーフィルタと、顔料カラーフィルタとで、透過スペクトルを比較した特性図であり、(b)は、比較例のカラーフィルタの透過スペクトル特性図。
【図4】第1実施形態に係る固体撮像素子の第1の変形例を示す模式断面図。
【図5】第1実施形態に係る固体撮像素子の第2の変形例を示す模式断面図。
【図6】第1実施形態に係る固体撮像素子の第3の変形例を示す模式断面図。
【図7】第2実施形態に係る固体撮像素子におけるカラーフィルタの模式断面図。
【図8】第2実施形態に係る固体撮像素子におけるカラーフィルタの透過スペクトル特性図。
【図9】第3実施形態に係る固体撮像素子の模式断面図。
【図10】第3実施形態に係る固体撮像素子の変形例の模式断面図。
【図11】第4実施形態に係るカメラの模式図。
【図12】実施形態に係る固体撮像素子の製造方法を示す模式断面図。
【図13】実施形態に係る固体撮像素子の製造方法を示す模式断面図。
【図14】実施形態に係る固体撮像素子の製造方法を示す模式断面図。
【図15】実施形態に係る固体撮像素子の製造方法を示す模式断面図。
【図16】実施形態に係る固体撮像素子の製造方法を示す模式断面図。
【発明を実施するための形態】
【0008】
以下、図面を参照し、実施形態について説明する。なお、各図面中、同じ要素には同じ符号を付している。
【0009】
実施形態に係る固体撮像素子は、CMOS(Complementary Metal Oxide Semiconductor)型エリアセンサ構造、あるいはCCD(Charge-Coupled Device)型エリアセンサ構造を有する。
【0010】
(第1実施形態)
図1は、第1実施形態に係る固体撮像素子の模式断面図である。
【0011】
本実施形態の固体撮像素子は、基板10と、配線層13と、カラーフィルタ20B、20G、20Rと、マイクロレンズ51とを有する。
【0012】
基板10は、例えばシリコン基板である。基板10は、画素領域と、その画素領域の周辺に形成された周辺回路領域とを有する。図1は、画素領域の断面を表す。
【0013】
基板10における画素領域には、光電変換部としてフォトダイオード11B、11G、11Rが形成されている。基板10表面を上から見た平面視で、複数のフォトダイオード11Bと、複数のフォトダイオード11Gと、複数のフォトダイオード11Rが、マトリクス状(碁盤目状、ハニカム状等)に2次元配列されている。各フォトダイオード11B、11G、11Rの平面形状は、例えば正方形状である。各フォトダイオード11B、11G、11Rは、pn接合を有する。
【0014】
フォトダイオード11B、11G、11Rの1つが1画素に対応する。各フォトダイオード11B、11G、11Rは、後述するカラーフィルタ20B、20G、20Rの作用によって、受光する光の波長域が異なる。例えば、フォトダイオード11Bは青色帯域の光を、フォトダイオード11Gは緑色帯域の光を、フォトダイオード11Rは赤色帯域の光を、それぞれ受光する。
【0015】
基板10における図示しない周辺回路領域には、フォトダイオード11B、11G、11Rで光電変換されて出力される電気信号(画素信号)を処理する信号処理回路や、フォトダイオード11B、11G、11Rを駆動して画素信号の出力を制御する駆動制御回路などを構成するトランジスタが形成されている。
【0016】
基板10の表面上には、配線層13が設けられている。配線層13は、配線14と層間絶縁膜15とを有する。配線14は、複数層(図示では2層であるが、これに限らない)設けられている。あるいは、単層の配線14であってもよい。層間絶縁膜15は、配線14と配線14との間、基板10と最下層の配線14との間、および最上層の配線14とカラーフィルタ20B、20G、20Rとの間に設けられている。
【0017】
配線14は、フォトダイオード11B、11G、11Rと、周辺回路とを電気的に接続する。配線14としては、例えば、銅(Cu)、チタン(Ti)、モリブデン(Mo)、タングステン(W)等の高融点金属、あるいはTiSi、MoSi、WSi等の高融点金属のシリサイドを用いることができる。層間絶縁膜15としては、例えば酸化シリコン(SiO2)を用いることができる。
【0018】
配線14は金属材料からなり遮光体であるので、フォトダイオード11B、11G、11Rの受光領域への光の入射を遮る位置には設けられていない。また、配線層13内に、配線14以外の遮光膜や、電荷転送部への転送電極を形成してもよい。
【0019】
配線層13上に、カラーフィルタ20B、20G、20Rが設けられている。カラーフィルタ20Bは、フォトダイオード11Bの上方に設けられ、フォトダイオード11Bに向けて特定の波長域(例えば青色帯域)の光を透過させる。カラーフィルタ20Gは、フォトダイオード11Gの上方に設けられ、フォトダイオード11Gに向けて特定の波長域(例えば緑色帯域)の光を透過させる。カラーフィルタ20Rは、フォトダイオード11Rの上方に設けられ、フォトダイオード11Rに向けて特定の波長域(例えば赤色帯域)の光を透過させる。
【0020】
カラーフィルタ20B、20G、20R上には、カラーフィルタ20B、20G、20Rの厚さの違いによる上面の段差を被覆するように、層間膜41が設けられている。層間膜41の上面は平坦であり、その上面上にはマイクロレンズ51が設けられている。マイクロレンズ51は、各画素(各カラーフィルタ20B、20G、20R)ごとに設けられている。
【0021】
マイクロレンズ51は例えば凸型レンズであり、入射光はマイクロレンズ51で集光される。マイクロレンズ51で集光された入射光は、各カラーフィルター20B、20G、20Rによって分光されて、各フォトダイオード11B、11G、11Rに入射する。
【0022】
各フォトダイオード11B、11G、11Rに入射した光は光電変換される。この光電変換で発生した電荷は、図示しない転送トランジスタ、配線14などを介して、周辺回路に出力される。
【0023】
次に、カラーフィルタ20B、20G、20Rについて詳細に説明する。
【0024】
カラーフィルタ20Bは、積層構造部21Bと周期構造部31Bとを有する。カラーフィルタ20Gは、積層構造部21Gと周期構造部31Gとを有する。カラーフィルタ20Rは、積層構造部21Rと周期構造部31Rとを有する。
【0025】
周期構造部31Bは、フォトダイオード11Bの上方の配線層13上に設けられている。周期構造部31Gは、フォトダイオード11Gの上方の配線層13上に設けられている。周期構造部31Rは、フォトダイオード11Rの上方の配線層13上に設けられている。
【0026】
積層構造部21Bは、周期構造部31B上に設けられている。積層構造部21Gは、周期構造部31G上に設けられている。積層構造部21Rは、周期構造部31R上に設けられている。
【0027】
各積層構造部21B、21G、21Rは、積層方向に対称的な構造を有する上部ミラー層24と下部ミラー層25とを有する。上部ミラー層24は、相対的に屈折率の異なる第1の層26と第2の層27との積層構造を有する。第1の層26は、第2の層27よりも屈折率が高い。第1の層26と第2の層27の積層数は任意である。
【0028】
上部ミラー層24と下部ミラー層25との間には、制御層28が設けられている。制御層28は、透過波長ごとに厚さ(厚さがゼロの場合も含む)、もしくは屈折率が異なる。あるいは、上部ミラー層24と下部ミラー層25との境界で隣接する互いの第1の層26どうしの積層体が制御層として機能することもできる。
【0029】
上部ミラー層24と下部ミラー層25は、それぞれ、互いに反射面を対向させた誘電体多層膜ミラーとして機能する。第1の層26及び第2の層27の膜厚Dは、
D=λ/(4×n)で決定される。
【0030】
λは、例えば可視領域の中心波長(例えば550nm)であり、nは屈折率である。なお、透過特性を最適化するため、各層の膜厚を上式から変更してもかまわない。
【0031】
制御層28は、上部ミラー層24と下部ミラー層25との間に設けられている。制御層28の厚さと屈折率を適切に設計することにより、上部ミラー層24及び下部ミラー層25の反射面で多重反射した光のうち特定の波長だけを透過させることができる。すなわち、積層構造部21B、21G、21Rは、ファブリーペロー干渉計と同じ原理に基づいて透過波長を設計することができる。
【0032】
第1の層26、第2の層27、制御層28としては、無機材料が用いられる。例えば、それらの材料として、酸化チタン(TiO2)、酸化シリコン(SiO2)、窒化シリコン(SiN)、シリコン(Si)、多結晶シリコン、非晶質シリコンなどを用いることができる。
【0033】
各周期構造部31B、31G、31Rは、基板10の主面に対して略平行な方向である2次元方向に周期性を有する。各周期構造部31B、31G、31Rは、透過波長ごとに周期が異なる。
【0034】
周期構造部31B、31G、31Rは、周期構造部31B、31G、31Rよりも屈折率が低い下地層30中に設けられている。
【0035】
周期構造部31B、31G、31R、下地層30としては、無機材料が用いられる。例えば、それらの材料として、シリコン(Si)、多結晶シリコン、酸化シリコン(SiO2)などを用いることができる。
【0036】
周期構造部31B、31G、31Rの周期、幅、厚さを適切に設計することにより、特定の波長域の光(フォトダイオードに導きたくない波長域の光)を反射及び吸収させることができる。すなわち、周期構造部31Bは、緑色帯域と赤色帯域の光の反射率及び吸収率が高い。周期構造部31Gは、青色帯域と赤色帯域の光の反射率及び吸収率が高い。周期構造部31Rは、青色帯域と緑色帯域の光の反射率及び吸収率が高い。
【0037】
積層構造部21B、21G、21Rと、周期構造部31B、31G、31Rとの相乗的効果によって、カラーフィルタ20B、20G、20Rの透過スペクトルを望む特性に制御することができる。
【0038】
周期構造部31B、31G、31Rを、2次元方向に例えば正方格子状にレイアウトすると、所望の透過スペクトル特性に制御するための設計が容易になる。また、周期構造部31B、31G、31Rの横断面を例えば円形状にすると、所望の透過スペクトル特性に制御するための設計が容易になる。
【0039】
例えば、図2(a)に示すように、ドットパターンで周期構造部31が形成される。図2(a)における周期構造部31は、前述した周期構造部31B、31G、31Rに対応する。
【0040】
あるいは、図2(b)に示すように、ホールパターンで周期構造部31aが形成される。図2(b)における周期構造部(ホール)31aは、前述した周期構造部31B、31G、31Rに対応する。周期構造部(ホール)31a内には、下地層30が埋め込まれている。
【0041】
周期構造部31B、31G、31Rは、2次元方向の周期構造であるため、製造が容易であり、またカラーフィルタ20B、20G、20Rの薄型化を妨げない。
【0042】
フォトダイオード11B、11G、11Rのピッチは、例えば約1.4(μm)程である。配線層13の厚さは、例えば2〜3(μm)程である。各カラーフィルタ20B、20G、20Rは、例えば一辺が1.4(μm)程の正方形状の平面形状で形成されている。各カラーフィルタ20B、20G、20Rの厚さは、例えば0.5(μm)程である。マイクロレンズ51の厚さは、例えば0.5(μm)以下である。
【0043】
図3(a)は、本実施形態のカラーフィルタ20B、20G、20Rと、顔料カラーフィルタの、光学シミュレーションによって得られた透過スペクトル特性を表す。
【0044】
横軸は光の波長(μm)を表し、縦軸は透過率(×100%)を表す。透過率は、RCWA(Rigorous Coupled Wave Analysis)法で計算した。
【0045】
実施形態のカラーフィルタ20B、20G、20Rの透過スペクトル特性を、それぞれ、B1、G1、R1で表す。シミュレーションした各カラーフィルタ20B、20G、20Rにおける、第1の層26は酸化チタン(TiO2)であり、第2の層27及び制御層28は酸化シリコン(SiO2)であり、周期構造部31B、31G、31Rはシリコンであり、下地層30は酸化シリコン(SiO2)である。
【0046】
本実施形態のカラーフィルタ20B、20G、20Rにおける制御層28の厚さをD(μm)、周期構造部31B、31G、31Rの厚さをT(μm)、周期構造部31B、31G、31Rの周期をP(μm)、周期構造部31B、31G、31Rの幅をW(μm)とする。
【0047】
D=0(μm)、T=0.1(μm)、P=0.23(μm)、W=0.7×P(μm)の場合は、特性B1に示されるように、主に青色帯域の光の透過率が高くなる。
【0048】
D=0.04(μm)、T=0.1(μm)、P=0.27(μm)、W=0.75×P(μm)の場合は、特性G1に示されるように、主に緑色帯域の光の透過率が高くなる。
【0049】
D=0.09(μm)、T=0.1(μm)、P=0.15(μm)、W=0.7×P(μm)の場合は、特性R1に示されるように、主に赤色帯域の光の透過率が高くなる。
【0050】
B2は青色顔料フィルタの特性を、G2は緑色顔料フィルタの特性を、R2は赤色顔料フィルタの特性を表す。
【0051】
図3(a)に示すシミュレーション結果より、本実施形態のカラーフィルタ20B、20G、20Rは、顔料カラーフィルタに比べて、透過させるべき波長域の透過率は上回っており、混色の原因となる透過させるべきではない波長域の透過率は下回っている。
【0052】
したがって、本実施形態のカラーフィルタ20B、20G、20Rは、顔料カラーフィルタよりも、受光感度が高く、且つ隣接する画素間でのクロストークが抑制され、混色を低減できる。
【0053】
また、本実施形態のカラーフィルタ20B、20G、20Rは無機材料が用いられている。このため、有機樹脂材料を用いた顔料カラーフィルタに比べて、製造環境や使用環境に対する耐性が高く、製造工程中に劣化しにくく、長時間使用しても劣化しにくい。したがって、本実施形態は、信頼性の高い固体撮像素子を提供できる。
【0054】
固体撮像素子では、高解像度化や低コスト化のために画素(フォトダイオード)の微細化が進んでいる。画素の微細化は、隣接する顔料カラーフィルタ間のクロストークの原因になり得る。現状、顔料カラーフィルタでは、透過させたくない光に対する十分な遮断効果を得るために、0.7〜0.8(μm)程度の膜厚が必要である。画素サイズが2(μm)以下になると、0.7〜0.8(μm)の膜厚の顔料カラーフィルタのアスペクト比(幅に対する厚さの比)が高くなり、クロストークが生じやすくなる。すなわち、S/N比が低下し、画質低下の原因になる。
【0055】
これに対して、本実施形態では、前述した無機材料の積層構造部21B、21G、21Rと周期構造部31B、31G、31Rとを組み合わせることで、カラーフィルタ20B、20G、20Rを薄膜化でき、画素の微細化が進んでも、顔料カラーフィルタに比べてアスペクト比の増大をまねかず、クロストークが生じにくい。
【0056】
また、図3(b)は、前述した本実施形態のカラーフィルタ20B、20G、20Rにおいて、周期構造部31B、31G、31Rを設けなかった比較例の構造についての透過スペクトル特性B3、G3、R3の光学シミュレーションの結果を表す。図3(a)と同様、横軸は光の波長(μm)を表し、縦軸は透過率(×100%)を表す。透過率は、RCWA法で計算した。
【0057】
この比較例の構造におけるカラーフィルタは、積層構造部21B、21G、21Rのみから構成される。その他条件は、図3(a)のシミュレーション時と同じである。
【0058】
図3(b)の結果と図3(a)の結果を比較すると、周期構造部31B、31G、31Rを設けなかった比較例は、周期構造部31B、31G、31Rを設けた実施形態よりも、透過させたくない波長域の透過率が高く、混色を抑制できていない。
【0059】
本実施形態のカラーフィルタ20B、20G、20Rにおいて、積層構造部21B、21G、21Rは、主として、透過させたい波長域の透過率を高め、周期構造部31B、31G、31Rは、主として、透過させたくない波長域の反射率及び吸収率を高める機能を担う。結果的に、これら積層構造部21B、21G、21Rと周期構造部31B、31G、31Rとの相乗効果により、受光感度が高く、且つ色再現性に優れた固体撮像素子を提供できる。
【0060】
なお、図4に示すように、基板10の表面上にカラーフィルタ20B、20G、20Rを設け、そのカラーフィルタ20B、20G、20R上に配線層13を設けてもよい。マイクロレンズ51は、配線層13上に設けられる。カラーフィルタ20B、20G、20Rにおける周期構造部31B、31G、31Rは、基板10の表面上に設けられ、その周期構造部31B、31G、31R上に積層構造部21B、21G、21Rが設けられる。
【0061】
また、図5に示すように、基板10の表面上に周期構造部31B、31G、31Rを設け、その周期構造部31B、31G、31R上に配線層13を設け、その配線層13上に積層構造部21B、21G、21Rを設けてもよい。マイクロレンズ51は、積層構造部21B、21G、21R上に設けられる。
【0062】
さらには、図6に示すように、基板10において、光の入射を受ける表面の反対側の裏面に配線層13を設けた、いわゆる裏面照射型の構造としてもよい。基板10の表面上には、周期構造部31B、31G、31Rが設けられ、その周期構造部31B、31G、31R上に積層構造部21B、21G、21Rが設けられ、その積層構造部21B、21G、21R上にマイクロレンズ51が設けられている。
【0063】
図4〜図6のいずれの構造においても、積層構造部21B、21G、21Rと周期構造部31B、31G、31Rとの相乗効果により、受光感度が高く、且つ色再現性に優れた固体撮像素子を提供できる。
【0064】
また、図4〜図6に示す構造では、基板10の表面上に周期構造部31B、31G、31Rを設けている。この構造の場合、後述するように、周期構造部31B、31G、31Rを、周辺回路等のトランジスタのゲート電極と同時に形成することができ、工程数の削減によるコスト低下を図れる。
【0065】
(第2実施形態)
図7は、第2実施形態に係る固体撮像素子におけるカラーフィルタ20’B、20’G、20’Rの模式断面図である。図7には、カラーフィルタ20’B、20’G、20’Rのみを示すが、他の基板10、配線層13、マイクロレンズ51などの構造は、前述した実施形態と同じである。
【0066】
本実施形態では、制御層28中に周期構造部33B、33G、33Rが設けられている。制御層28は、上部ミラー層24と下部ミラー層25との間に設けられている。したがって、周期構造部33B、33G、33Rは、上部ミラー層24と下部ミラー層25との間に設けられている。
【0067】
周期構造部33B、33G、33Rは、例えばアルミニウム(Al)、銀(Ag)、金(Au)、銅(Cu)、鉄(Fe)、ニッケル(Ni)、タングステン(W)などの金属材料からなる。
【0068】
各周期構造部33B、33G、33Rは、基板10の主面に対して略平行な方向である2次元方向に周期性を有し、透過波長ごとに周期が異なる。周期構造部33B、33G、33Rは、上記実施形態と同様、2次元方向に例えば正方格子状(ドットパターン、ホールパターン等)に形成されている。
【0069】
本実施形態においても、周期構造部33B、33G、33Rの周期、幅、厚さを適切に設計することにより、特定の波長域の光(フォトダイオードに導きたくない波長域の光)を反射及び吸収させることができる。すなわち、周期構造部33Bは、緑色帯域と赤色帯域の光の反射率及び吸収率が高い。周期構造部33Gは、青色帯域と赤色帯域の光の反射率及び吸収率が高い。周期構造部33Rは、青色帯域と緑色帯域の光の反射率及び吸収率が高い。
【0070】
そして、積層構造部21B、21G、21Rと、周期構造部33B、33G、33Rとの相乗的効果によって、カラーフィルタ20’B、20’G、20’Rの透過スペクトルを望む特性に制御することができる。
【0071】
周期構造部33B、33G、33Rは、2次元方向の周期構造であるため、製造が容易であり、また、カラーフィルタ20’B、20’G、20’Rの薄型化を妨げない。
【0072】
図8は、本実施形態のカラーフィルタ20’B、20’G、20’Rの、光学ミュレーションによって得られた透過スペクトル特性を表す。横軸は光の波長(μm)を表し、縦軸は透過率(×100%)を表す。透過率は、RCWA法で計算した。B4はカラーフィルタ20’Bの透過スペクトル特性を表す。G4はカラーフィルタ20’Gの透過スペクトル特性を表す。R4はカラーフィルタ20’Rの透過スペクトル特性を表す。
【0073】
周期構造部33B、33G、33Rは銀(Ag)であり、制御層28は酸化シリコン(SiO2)である。その他条件は、図3(a)のシミュレーション時と同じである。
【0074】
制御層28の厚さをD(μm)、周期構造部33B、33G、33Rの厚さをT(μm)、周期構造部33B、33G、33Rの周期をP(μm)、周期構造部33B、33G、33Rの幅をW(μm)とする。
【0075】
D=0.035(μm)、T=0.035(μm)、P=0.07(μm)、W=0.05(μm)の場合は、特性B4に示されるように、主に青色帯域の光の透過率が高くなる。
【0076】
D=0.065(μm)、T=0.035(μm)、P=0.18(μm)、W=0.16(μm)の場合は、特性G4に示されるように、主に緑色帯域の光の透過率が高くなる。
【0077】
D=0.16(μm)、T=0.035(μm)、P=0.18(μm)、W=0.09(μm)の場合は、特性R4に示されるように、主に赤色帯域の光の透過率が高くなる。
【0078】
図8に示すシミュレーション結果より、本実施形態のカラーフィルタ20’B、20’G、20’Rは、前述した顔料カラーフィルタに比べて、透過させるべき波長域の透過率は上回っており、混色の原因となる透過させるべきではない波長域の透過率は下回っている。
【0079】
本実施形態のカラーフィルタ20’B、20’G、20’Rにおいて、積層構造部21B、21G、21Rは、主として、透過させたい波長域の透過率を高め、周期構造部33B、33G、33Rは、主として、透過させたくない波長域の反射率及び吸収率を高める機能を担う。結果的に、これら積層構造部21B、21G、21Rと周期構造部33B、33G、33Rとの相乗効果により、受光感度が高く、且つ色再現性に優れた固体撮像素子を提供できる。
【0080】
また、本実施形態においても、積層構造部21B、21G、21Rと周期構造部33B、33G、33Rとを組み合わせることで、カラーフィルタ20’B、20’G、20’Rを薄膜化でき、画素の微細化が進んでも、顔料カラーフィルタに比べてアスペクト比の増大をまねかず、クロストークが生じにくい。
【0081】
(第3実施形態)
図9は、第3実施形態に係る固体撮像素子の模式断面図である。
【0082】
マイクロレンズ51上に平坦化層52が設けられ、その平坦化層52上に赤外光カットフィルタ53が設けられている。図9に示すすべての要素は、ウェーハ状態で形成され、その後チップ状に個片化される。
【0083】
カラーフィルタ20B、20G、20R、マイクロレンズ51、平坦化層52および赤外光カットフィルタ53を無機材料で形成すると、プロセス上の制約を受けにくい。すなわち、既に形成された要素が無機材料であると、後の工程で他の要素を形成するときの熱の影響を受けにくい。これにより、デバイスの信頼性を向上できる。
【0084】
また、赤外光カットフィルタ53をウェーハ工程で薄膜として形成することで、カメラモジュールに、チップとは別に赤外光カットフィルタを設けなくてもよくなり、カメラモジュールの部品点数の低減および小型化が図れる。
【0085】
なお、図9の構造において、図10に示すように、赤外光カットフィルタ53上にさらに赤外光カットフィルタ用のマイクロレンズ54を設けてもよい。これにより、フォトダイオード11B、11G、11Rに入射光を効率よく集光することができる。マイクロレンズ54は、各画素ごとに設けられる。
【0086】
(第4実施形態)
図11(a)は、前述した実施形態の固体撮像素子を用いたカメラの模式図である。
【0087】
このカメラは、筐体90と、カメラレンズ91と、固体撮像素子81とを備える。筐体90は、光を取り込む開口を有し、カメラレンズ91はその開口に一部を臨ませて筐体90に支持されている。
【0088】
固体撮像素子81は、前述した実施形態の固体撮像素子である。固体撮像素子81は、筐体90の内部に設けられ、カメラレンズ91に入射した光を受ける。
【0089】
また、固体撮像素子81が前述した赤外光カットフィルタ53を備えない構造の場合には、図11(b)に示すように、固体撮像素子81とは別部品として赤外光カットフィルタ92を設けてもよい。この赤外光カットフィルタ92は、筐体90内におけるカメラレンズ91と固体撮像素子81との間に設けられる。
【0090】
図9、10の実施形態のように赤外光カットフィルタ53を固体撮像素子81に形成した場合には、カメラの部品点数を低減でき、コスト低減を図れる。また、カメラを小型化(低背化)できる。
【0091】
なお、固体撮像素子81がウェーハ状態のときに、その表面にカメラレンズ91を設けてもよい。この後、個片化される。この場合、固体撮像素子81及びカメラレンズ91を一体に取り扱うことができ、カメラモジュールの組立が容易になる。
【0092】
次に、実施形態に係る固体撮像素子の製造方法について、周期構造部の形成方法を中心に説明する。
【0093】
図12(a)〜(d)は、製造方法の第1の具体例を示す。
【0094】
まず、図12(a)に示すように、基板10の表面にフォトダイオード11を形成する。フォトダイオード11は、前述したフォトダイオード11B、11G、11Rに対応する。
【0095】
次に、図12(b)に示すように、フォトダイオード11上に、配線層13を形成する。さらに、配線層13上に下地層30を形成する。あるいは、配線層13の層間絶縁膜15が下地層30を兼ねてもよい。下地層30は、例えば酸化シリコンである。
【0096】
次に、下地層30上に、周期構造部31を形成する。周期構造部31は、前述した周期構造部31B、31G、31R、または周期構造部33B、33G、33Rに対応する。
【0097】
具体的には、周期構造部31の材料として例えば多結晶シリコンを下地層30の全面に形成した後、図示しないマスクを用いて例えばRIE(Reactive Ion Etching)法で選択的に除去する。これにより、2次元方向に周期的に配列された周期構造部31が形成される。
【0098】
次に、図12(c)に示すように、周期構造部31を下地層30で覆った後、例えばCMP(Chemical Mechanical Polishing)法で下地層30の上面を平坦化する。
【0099】
次に、図12(d)に示すように、下地層30上に、積層構造部21を形成する。積層構造部21は、前述した積層構造部21B、21G、21Rに対応する。その後、積層構造部21上にマイクロレンズが形成され、さらに必要に応じて赤外光カットフィルタなどが形成される。
【0100】
以上説明した工程はウェーハ状態で行われ、その後個片化される。
【0101】
図13(a)〜(e)は、製造方法の第2の具体例を示す。
【0102】
上記第1の具体例と同様、基板10の表面にフォトダイオード11を形成した後、図13(a)に示すように、フォトダイオード11上に下地層30を形成する。
【0103】
次に、下地層30上に、第1の具体例と同様に、周期構造部31を形成する。次に、図13(c)に示すように、周期構造部31を下地層30で覆った後、例えばCMP法で下地層30の上面を平坦化する。
【0104】
次に、図13(d)に示すように、下地層30上に配線層13を形成する。次に、図13(e)に示すように、配線層13上に積層構造部21を形成する。以降、第1の具体例と同様に工程が進められる。
【0105】
図14(a)〜(c)は、製造方法の第3の具体例を示す。
【0106】
上記第1の具体例と同様、基板10の表面にフォトダイオード11を形成した後、図14(a)に示すように、フォトダイオード11上に下地層30を形成する。
【0107】
次に、下地層30の表面にホール30aを形成する。ホール30aは、例えば図示しないマスクを用いたRIE法で形成される。ホール30aは、2次元方向に周期的に配列されている。
【0108】
次に、図14(b)に示すように、下地層30上に、周期構造部31の材料(例えば多結晶シリコン)を形成する。この材料は、ホール30a内にも埋め込まれる。
【0109】
次に、図14(c)に示すように、下地層30上に形成された上記材料を例えばCMP法で除去する。ホール30a内には上記材料は残される。これにより、周期構造部31が得られる。以降、第2の具体例の図13(d)、(e)と同様に工程が進められる。
【0110】
図15(a)〜(c)は、製造方法の第4の具体例を示す。
【0111】
上記第1の具体例と同様、基板10の表面にフォトダイオード11を形成した後、フォトダイオード11上に下地層30を形成する。この下地層30は、基板10表面に形成される周辺回路等のトランジスタ(図示せず)のゲート絶縁膜も兼ねている。
【0112】
次に、下地層30上に周期構造部31を形成する。この周期構造部31は、上記トランジスタのゲート電極(図示せず)と、同材料で同時に形成される。
【0113】
具体的には、周期構造部31及びゲート電極の材料として例えば多結晶シリコンを下地層30の全面に形成した後、図示しないマスクを用いて例えばRIE法で選択的に除去する。これにより、トランジスタのゲート電極及び2次元方向に周期的に配列された周期構造部31が得られる。したがって、工程数を低減でき、コスト低減を図れる。
【0114】
その後、図15(b)に示すように、周期構造部31上に配線層13が形成され、さらに図15(c)に示すように、配線層13上に積層構造部21が形成される。以降、上記具体例と同様に工程が進められる。
【0115】
図16(a)〜(e)は、製造方法の第5の具体例を示す。
【0116】
この第5の具体例は、光の入射面の反対側に配線層が設けられたいわゆる裏面照射型の構造の製造方法に対応する。
【0117】
フォトダイオード11は、SOI(Silicon On Insulator)層に形成される。すなわち、図16(a)に示すように、基板10上に絶縁層29が形成され、その絶縁層29上に形成されたSOI層にフォトダイオード11が形成される。
【0118】
フォトダイオード11上には、図16(b)に示すように、配線層13が形成される。次に、図16(c)に示すように、配線層13におけるフォトダイオード11とは反対側の面に支持基板100を接着した後、基板10及び絶縁層29を除去する。これにより、フォトダイオード11が形成されたSOI層が露出する。
【0119】
次に、そのSOI層上に、図16(d)に示すように、下地層30を形成し、さらに、下地層30上に周期構造部31を形成する。さらに、図16(e)に示すように、周期構造部31上に積層構造部21を形成する。
【0120】
光は、カラーフィルタ側(図16(e)において下側)から入射し、積層構造部21と周期構造部31とを有するカラーフィルタを介して、フォトダイオード11に入射する。光は、配線層13を通過せずにフォトダイオード11に入射するので、感度を高くすることができる。
【0121】
本発明のいくつかの実施形態を説明したが、これらの実施形態は、例として提示したものであり、発明の範囲を限定することは意図していない。これら新規な実施形態は、その他の様々な形態で実施されることが可能であり、発明の要旨を逸脱しない範囲で、種々の省略、置き換え、変更を行うことができる。これら実施形態やその変形は、発明の範囲や要旨に含まれるとともに、特許請求の範囲に記載された発明とその均等の範囲に含まれる。
【符号の説明】
【0122】
10…基板、11B,11G,11R…フォトダイオード、13…配線層、14…配線、20B,20G,20R,20’B,20’G,20’R…カラーフィルタ、21B,21G,21R…積層構造部、24…上部ミラー層、25…下部ミラー層、26…第1の層(高屈折率層)、27…第2の層(低屈折率層)、28…制御層、30…下地層、31B,31G,31R,33B,33G,33R…周期構造部、51…マイクロレンズ、53…赤外光カットフィルタ、81…固体撮像素子、90…筐体、91…カメラレンズ、92…赤外光カットフィルタ
【技術分野】
【0001】
本発明の実施形態は、固体撮像素子、その製造方法、カメラに関する。
【背景技術】
【0002】
近年、固体撮像素子の応用範囲は、デジタルカメラ、携帯電話などの各種モバイル端末や、監視カメラ、インターネットを介したチャット用のウェブカメラなど、広範な範囲に拡がりつつある。
【0003】
カラー画像を得るためには、カラーフィルターが用いられる。現在、製品化されている固体撮像素子のカラーフィルターは、ほとんどが有機樹脂材料を用いた顔料カラーフィルターである。また、無機材料を用いたフォトニックカラーフィルターが提案されてはいるが、実用化するにあたっては、さらなる特性の改善が求められる。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0004】
【特許文献1】特開2008−170979号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0005】
混色を抑えた固体撮像素子、その製造方法、カメラを提供する。
【課題を解決するための手段】
【0006】
実施形態によれば、固体撮像素子は、2次元配列された複数の光電変換部を有する基板と、前記基板に対して積層され、前記各光電変換部に向けて特定の波長域の光を透過させる複数のカラーフィルタと、を備える。前記各カラーフィルタは、相対的に屈折率の異なる第1の層と第2の層との積層構造を有する積層構造部と、2次元方向に周期性を有する周期構造部であって、透過波長域ごとに周期が異なる周期構造部と、を有する。
【図面の簡単な説明】
【0007】
【図1】第1実施形態に係る固体撮像素子の模式断面図。
【図2】実施形態のカラーフィルタの周期構造部の一例を示す模式図。
【図3】(a)は、第1実施形態の固体撮像素子におけるカラーフィルタと、顔料カラーフィルタとで、透過スペクトルを比較した特性図であり、(b)は、比較例のカラーフィルタの透過スペクトル特性図。
【図4】第1実施形態に係る固体撮像素子の第1の変形例を示す模式断面図。
【図5】第1実施形態に係る固体撮像素子の第2の変形例を示す模式断面図。
【図6】第1実施形態に係る固体撮像素子の第3の変形例を示す模式断面図。
【図7】第2実施形態に係る固体撮像素子におけるカラーフィルタの模式断面図。
【図8】第2実施形態に係る固体撮像素子におけるカラーフィルタの透過スペクトル特性図。
【図9】第3実施形態に係る固体撮像素子の模式断面図。
【図10】第3実施形態に係る固体撮像素子の変形例の模式断面図。
【図11】第4実施形態に係るカメラの模式図。
【図12】実施形態に係る固体撮像素子の製造方法を示す模式断面図。
【図13】実施形態に係る固体撮像素子の製造方法を示す模式断面図。
【図14】実施形態に係る固体撮像素子の製造方法を示す模式断面図。
【図15】実施形態に係る固体撮像素子の製造方法を示す模式断面図。
【図16】実施形態に係る固体撮像素子の製造方法を示す模式断面図。
【発明を実施するための形態】
【0008】
以下、図面を参照し、実施形態について説明する。なお、各図面中、同じ要素には同じ符号を付している。
【0009】
実施形態に係る固体撮像素子は、CMOS(Complementary Metal Oxide Semiconductor)型エリアセンサ構造、あるいはCCD(Charge-Coupled Device)型エリアセンサ構造を有する。
【0010】
(第1実施形態)
図1は、第1実施形態に係る固体撮像素子の模式断面図である。
【0011】
本実施形態の固体撮像素子は、基板10と、配線層13と、カラーフィルタ20B、20G、20Rと、マイクロレンズ51とを有する。
【0012】
基板10は、例えばシリコン基板である。基板10は、画素領域と、その画素領域の周辺に形成された周辺回路領域とを有する。図1は、画素領域の断面を表す。
【0013】
基板10における画素領域には、光電変換部としてフォトダイオード11B、11G、11Rが形成されている。基板10表面を上から見た平面視で、複数のフォトダイオード11Bと、複数のフォトダイオード11Gと、複数のフォトダイオード11Rが、マトリクス状(碁盤目状、ハニカム状等)に2次元配列されている。各フォトダイオード11B、11G、11Rの平面形状は、例えば正方形状である。各フォトダイオード11B、11G、11Rは、pn接合を有する。
【0014】
フォトダイオード11B、11G、11Rの1つが1画素に対応する。各フォトダイオード11B、11G、11Rは、後述するカラーフィルタ20B、20G、20Rの作用によって、受光する光の波長域が異なる。例えば、フォトダイオード11Bは青色帯域の光を、フォトダイオード11Gは緑色帯域の光を、フォトダイオード11Rは赤色帯域の光を、それぞれ受光する。
【0015】
基板10における図示しない周辺回路領域には、フォトダイオード11B、11G、11Rで光電変換されて出力される電気信号(画素信号)を処理する信号処理回路や、フォトダイオード11B、11G、11Rを駆動して画素信号の出力を制御する駆動制御回路などを構成するトランジスタが形成されている。
【0016】
基板10の表面上には、配線層13が設けられている。配線層13は、配線14と層間絶縁膜15とを有する。配線14は、複数層(図示では2層であるが、これに限らない)設けられている。あるいは、単層の配線14であってもよい。層間絶縁膜15は、配線14と配線14との間、基板10と最下層の配線14との間、および最上層の配線14とカラーフィルタ20B、20G、20Rとの間に設けられている。
【0017】
配線14は、フォトダイオード11B、11G、11Rと、周辺回路とを電気的に接続する。配線14としては、例えば、銅(Cu)、チタン(Ti)、モリブデン(Mo)、タングステン(W)等の高融点金属、あるいはTiSi、MoSi、WSi等の高融点金属のシリサイドを用いることができる。層間絶縁膜15としては、例えば酸化シリコン(SiO2)を用いることができる。
【0018】
配線14は金属材料からなり遮光体であるので、フォトダイオード11B、11G、11Rの受光領域への光の入射を遮る位置には設けられていない。また、配線層13内に、配線14以外の遮光膜や、電荷転送部への転送電極を形成してもよい。
【0019】
配線層13上に、カラーフィルタ20B、20G、20Rが設けられている。カラーフィルタ20Bは、フォトダイオード11Bの上方に設けられ、フォトダイオード11Bに向けて特定の波長域(例えば青色帯域)の光を透過させる。カラーフィルタ20Gは、フォトダイオード11Gの上方に設けられ、フォトダイオード11Gに向けて特定の波長域(例えば緑色帯域)の光を透過させる。カラーフィルタ20Rは、フォトダイオード11Rの上方に設けられ、フォトダイオード11Rに向けて特定の波長域(例えば赤色帯域)の光を透過させる。
【0020】
カラーフィルタ20B、20G、20R上には、カラーフィルタ20B、20G、20Rの厚さの違いによる上面の段差を被覆するように、層間膜41が設けられている。層間膜41の上面は平坦であり、その上面上にはマイクロレンズ51が設けられている。マイクロレンズ51は、各画素(各カラーフィルタ20B、20G、20R)ごとに設けられている。
【0021】
マイクロレンズ51は例えば凸型レンズであり、入射光はマイクロレンズ51で集光される。マイクロレンズ51で集光された入射光は、各カラーフィルター20B、20G、20Rによって分光されて、各フォトダイオード11B、11G、11Rに入射する。
【0022】
各フォトダイオード11B、11G、11Rに入射した光は光電変換される。この光電変換で発生した電荷は、図示しない転送トランジスタ、配線14などを介して、周辺回路に出力される。
【0023】
次に、カラーフィルタ20B、20G、20Rについて詳細に説明する。
【0024】
カラーフィルタ20Bは、積層構造部21Bと周期構造部31Bとを有する。カラーフィルタ20Gは、積層構造部21Gと周期構造部31Gとを有する。カラーフィルタ20Rは、積層構造部21Rと周期構造部31Rとを有する。
【0025】
周期構造部31Bは、フォトダイオード11Bの上方の配線層13上に設けられている。周期構造部31Gは、フォトダイオード11Gの上方の配線層13上に設けられている。周期構造部31Rは、フォトダイオード11Rの上方の配線層13上に設けられている。
【0026】
積層構造部21Bは、周期構造部31B上に設けられている。積層構造部21Gは、周期構造部31G上に設けられている。積層構造部21Rは、周期構造部31R上に設けられている。
【0027】
各積層構造部21B、21G、21Rは、積層方向に対称的な構造を有する上部ミラー層24と下部ミラー層25とを有する。上部ミラー層24は、相対的に屈折率の異なる第1の層26と第2の層27との積層構造を有する。第1の層26は、第2の層27よりも屈折率が高い。第1の層26と第2の層27の積層数は任意である。
【0028】
上部ミラー層24と下部ミラー層25との間には、制御層28が設けられている。制御層28は、透過波長ごとに厚さ(厚さがゼロの場合も含む)、もしくは屈折率が異なる。あるいは、上部ミラー層24と下部ミラー層25との境界で隣接する互いの第1の層26どうしの積層体が制御層として機能することもできる。
【0029】
上部ミラー層24と下部ミラー層25は、それぞれ、互いに反射面を対向させた誘電体多層膜ミラーとして機能する。第1の層26及び第2の層27の膜厚Dは、
D=λ/(4×n)で決定される。
【0030】
λは、例えば可視領域の中心波長(例えば550nm)であり、nは屈折率である。なお、透過特性を最適化するため、各層の膜厚を上式から変更してもかまわない。
【0031】
制御層28は、上部ミラー層24と下部ミラー層25との間に設けられている。制御層28の厚さと屈折率を適切に設計することにより、上部ミラー層24及び下部ミラー層25の反射面で多重反射した光のうち特定の波長だけを透過させることができる。すなわち、積層構造部21B、21G、21Rは、ファブリーペロー干渉計と同じ原理に基づいて透過波長を設計することができる。
【0032】
第1の層26、第2の層27、制御層28としては、無機材料が用いられる。例えば、それらの材料として、酸化チタン(TiO2)、酸化シリコン(SiO2)、窒化シリコン(SiN)、シリコン(Si)、多結晶シリコン、非晶質シリコンなどを用いることができる。
【0033】
各周期構造部31B、31G、31Rは、基板10の主面に対して略平行な方向である2次元方向に周期性を有する。各周期構造部31B、31G、31Rは、透過波長ごとに周期が異なる。
【0034】
周期構造部31B、31G、31Rは、周期構造部31B、31G、31Rよりも屈折率が低い下地層30中に設けられている。
【0035】
周期構造部31B、31G、31R、下地層30としては、無機材料が用いられる。例えば、それらの材料として、シリコン(Si)、多結晶シリコン、酸化シリコン(SiO2)などを用いることができる。
【0036】
周期構造部31B、31G、31Rの周期、幅、厚さを適切に設計することにより、特定の波長域の光(フォトダイオードに導きたくない波長域の光)を反射及び吸収させることができる。すなわち、周期構造部31Bは、緑色帯域と赤色帯域の光の反射率及び吸収率が高い。周期構造部31Gは、青色帯域と赤色帯域の光の反射率及び吸収率が高い。周期構造部31Rは、青色帯域と緑色帯域の光の反射率及び吸収率が高い。
【0037】
積層構造部21B、21G、21Rと、周期構造部31B、31G、31Rとの相乗的効果によって、カラーフィルタ20B、20G、20Rの透過スペクトルを望む特性に制御することができる。
【0038】
周期構造部31B、31G、31Rを、2次元方向に例えば正方格子状にレイアウトすると、所望の透過スペクトル特性に制御するための設計が容易になる。また、周期構造部31B、31G、31Rの横断面を例えば円形状にすると、所望の透過スペクトル特性に制御するための設計が容易になる。
【0039】
例えば、図2(a)に示すように、ドットパターンで周期構造部31が形成される。図2(a)における周期構造部31は、前述した周期構造部31B、31G、31Rに対応する。
【0040】
あるいは、図2(b)に示すように、ホールパターンで周期構造部31aが形成される。図2(b)における周期構造部(ホール)31aは、前述した周期構造部31B、31G、31Rに対応する。周期構造部(ホール)31a内には、下地層30が埋め込まれている。
【0041】
周期構造部31B、31G、31Rは、2次元方向の周期構造であるため、製造が容易であり、またカラーフィルタ20B、20G、20Rの薄型化を妨げない。
【0042】
フォトダイオード11B、11G、11Rのピッチは、例えば約1.4(μm)程である。配線層13の厚さは、例えば2〜3(μm)程である。各カラーフィルタ20B、20G、20Rは、例えば一辺が1.4(μm)程の正方形状の平面形状で形成されている。各カラーフィルタ20B、20G、20Rの厚さは、例えば0.5(μm)程である。マイクロレンズ51の厚さは、例えば0.5(μm)以下である。
【0043】
図3(a)は、本実施形態のカラーフィルタ20B、20G、20Rと、顔料カラーフィルタの、光学シミュレーションによって得られた透過スペクトル特性を表す。
【0044】
横軸は光の波長(μm)を表し、縦軸は透過率(×100%)を表す。透過率は、RCWA(Rigorous Coupled Wave Analysis)法で計算した。
【0045】
実施形態のカラーフィルタ20B、20G、20Rの透過スペクトル特性を、それぞれ、B1、G1、R1で表す。シミュレーションした各カラーフィルタ20B、20G、20Rにおける、第1の層26は酸化チタン(TiO2)であり、第2の層27及び制御層28は酸化シリコン(SiO2)であり、周期構造部31B、31G、31Rはシリコンであり、下地層30は酸化シリコン(SiO2)である。
【0046】
本実施形態のカラーフィルタ20B、20G、20Rにおける制御層28の厚さをD(μm)、周期構造部31B、31G、31Rの厚さをT(μm)、周期構造部31B、31G、31Rの周期をP(μm)、周期構造部31B、31G、31Rの幅をW(μm)とする。
【0047】
D=0(μm)、T=0.1(μm)、P=0.23(μm)、W=0.7×P(μm)の場合は、特性B1に示されるように、主に青色帯域の光の透過率が高くなる。
【0048】
D=0.04(μm)、T=0.1(μm)、P=0.27(μm)、W=0.75×P(μm)の場合は、特性G1に示されるように、主に緑色帯域の光の透過率が高くなる。
【0049】
D=0.09(μm)、T=0.1(μm)、P=0.15(μm)、W=0.7×P(μm)の場合は、特性R1に示されるように、主に赤色帯域の光の透過率が高くなる。
【0050】
B2は青色顔料フィルタの特性を、G2は緑色顔料フィルタの特性を、R2は赤色顔料フィルタの特性を表す。
【0051】
図3(a)に示すシミュレーション結果より、本実施形態のカラーフィルタ20B、20G、20Rは、顔料カラーフィルタに比べて、透過させるべき波長域の透過率は上回っており、混色の原因となる透過させるべきではない波長域の透過率は下回っている。
【0052】
したがって、本実施形態のカラーフィルタ20B、20G、20Rは、顔料カラーフィルタよりも、受光感度が高く、且つ隣接する画素間でのクロストークが抑制され、混色を低減できる。
【0053】
また、本実施形態のカラーフィルタ20B、20G、20Rは無機材料が用いられている。このため、有機樹脂材料を用いた顔料カラーフィルタに比べて、製造環境や使用環境に対する耐性が高く、製造工程中に劣化しにくく、長時間使用しても劣化しにくい。したがって、本実施形態は、信頼性の高い固体撮像素子を提供できる。
【0054】
固体撮像素子では、高解像度化や低コスト化のために画素(フォトダイオード)の微細化が進んでいる。画素の微細化は、隣接する顔料カラーフィルタ間のクロストークの原因になり得る。現状、顔料カラーフィルタでは、透過させたくない光に対する十分な遮断効果を得るために、0.7〜0.8(μm)程度の膜厚が必要である。画素サイズが2(μm)以下になると、0.7〜0.8(μm)の膜厚の顔料カラーフィルタのアスペクト比(幅に対する厚さの比)が高くなり、クロストークが生じやすくなる。すなわち、S/N比が低下し、画質低下の原因になる。
【0055】
これに対して、本実施形態では、前述した無機材料の積層構造部21B、21G、21Rと周期構造部31B、31G、31Rとを組み合わせることで、カラーフィルタ20B、20G、20Rを薄膜化でき、画素の微細化が進んでも、顔料カラーフィルタに比べてアスペクト比の増大をまねかず、クロストークが生じにくい。
【0056】
また、図3(b)は、前述した本実施形態のカラーフィルタ20B、20G、20Rにおいて、周期構造部31B、31G、31Rを設けなかった比較例の構造についての透過スペクトル特性B3、G3、R3の光学シミュレーションの結果を表す。図3(a)と同様、横軸は光の波長(μm)を表し、縦軸は透過率(×100%)を表す。透過率は、RCWA法で計算した。
【0057】
この比較例の構造におけるカラーフィルタは、積層構造部21B、21G、21Rのみから構成される。その他条件は、図3(a)のシミュレーション時と同じである。
【0058】
図3(b)の結果と図3(a)の結果を比較すると、周期構造部31B、31G、31Rを設けなかった比較例は、周期構造部31B、31G、31Rを設けた実施形態よりも、透過させたくない波長域の透過率が高く、混色を抑制できていない。
【0059】
本実施形態のカラーフィルタ20B、20G、20Rにおいて、積層構造部21B、21G、21Rは、主として、透過させたい波長域の透過率を高め、周期構造部31B、31G、31Rは、主として、透過させたくない波長域の反射率及び吸収率を高める機能を担う。結果的に、これら積層構造部21B、21G、21Rと周期構造部31B、31G、31Rとの相乗効果により、受光感度が高く、且つ色再現性に優れた固体撮像素子を提供できる。
【0060】
なお、図4に示すように、基板10の表面上にカラーフィルタ20B、20G、20Rを設け、そのカラーフィルタ20B、20G、20R上に配線層13を設けてもよい。マイクロレンズ51は、配線層13上に設けられる。カラーフィルタ20B、20G、20Rにおける周期構造部31B、31G、31Rは、基板10の表面上に設けられ、その周期構造部31B、31G、31R上に積層構造部21B、21G、21Rが設けられる。
【0061】
また、図5に示すように、基板10の表面上に周期構造部31B、31G、31Rを設け、その周期構造部31B、31G、31R上に配線層13を設け、その配線層13上に積層構造部21B、21G、21Rを設けてもよい。マイクロレンズ51は、積層構造部21B、21G、21R上に設けられる。
【0062】
さらには、図6に示すように、基板10において、光の入射を受ける表面の反対側の裏面に配線層13を設けた、いわゆる裏面照射型の構造としてもよい。基板10の表面上には、周期構造部31B、31G、31Rが設けられ、その周期構造部31B、31G、31R上に積層構造部21B、21G、21Rが設けられ、その積層構造部21B、21G、21R上にマイクロレンズ51が設けられている。
【0063】
図4〜図6のいずれの構造においても、積層構造部21B、21G、21Rと周期構造部31B、31G、31Rとの相乗効果により、受光感度が高く、且つ色再現性に優れた固体撮像素子を提供できる。
【0064】
また、図4〜図6に示す構造では、基板10の表面上に周期構造部31B、31G、31Rを設けている。この構造の場合、後述するように、周期構造部31B、31G、31Rを、周辺回路等のトランジスタのゲート電極と同時に形成することができ、工程数の削減によるコスト低下を図れる。
【0065】
(第2実施形態)
図7は、第2実施形態に係る固体撮像素子におけるカラーフィルタ20’B、20’G、20’Rの模式断面図である。図7には、カラーフィルタ20’B、20’G、20’Rのみを示すが、他の基板10、配線層13、マイクロレンズ51などの構造は、前述した実施形態と同じである。
【0066】
本実施形態では、制御層28中に周期構造部33B、33G、33Rが設けられている。制御層28は、上部ミラー層24と下部ミラー層25との間に設けられている。したがって、周期構造部33B、33G、33Rは、上部ミラー層24と下部ミラー層25との間に設けられている。
【0067】
周期構造部33B、33G、33Rは、例えばアルミニウム(Al)、銀(Ag)、金(Au)、銅(Cu)、鉄(Fe)、ニッケル(Ni)、タングステン(W)などの金属材料からなる。
【0068】
各周期構造部33B、33G、33Rは、基板10の主面に対して略平行な方向である2次元方向に周期性を有し、透過波長ごとに周期が異なる。周期構造部33B、33G、33Rは、上記実施形態と同様、2次元方向に例えば正方格子状(ドットパターン、ホールパターン等)に形成されている。
【0069】
本実施形態においても、周期構造部33B、33G、33Rの周期、幅、厚さを適切に設計することにより、特定の波長域の光(フォトダイオードに導きたくない波長域の光)を反射及び吸収させることができる。すなわち、周期構造部33Bは、緑色帯域と赤色帯域の光の反射率及び吸収率が高い。周期構造部33Gは、青色帯域と赤色帯域の光の反射率及び吸収率が高い。周期構造部33Rは、青色帯域と緑色帯域の光の反射率及び吸収率が高い。
【0070】
そして、積層構造部21B、21G、21Rと、周期構造部33B、33G、33Rとの相乗的効果によって、カラーフィルタ20’B、20’G、20’Rの透過スペクトルを望む特性に制御することができる。
【0071】
周期構造部33B、33G、33Rは、2次元方向の周期構造であるため、製造が容易であり、また、カラーフィルタ20’B、20’G、20’Rの薄型化を妨げない。
【0072】
図8は、本実施形態のカラーフィルタ20’B、20’G、20’Rの、光学ミュレーションによって得られた透過スペクトル特性を表す。横軸は光の波長(μm)を表し、縦軸は透過率(×100%)を表す。透過率は、RCWA法で計算した。B4はカラーフィルタ20’Bの透過スペクトル特性を表す。G4はカラーフィルタ20’Gの透過スペクトル特性を表す。R4はカラーフィルタ20’Rの透過スペクトル特性を表す。
【0073】
周期構造部33B、33G、33Rは銀(Ag)であり、制御層28は酸化シリコン(SiO2)である。その他条件は、図3(a)のシミュレーション時と同じである。
【0074】
制御層28の厚さをD(μm)、周期構造部33B、33G、33Rの厚さをT(μm)、周期構造部33B、33G、33Rの周期をP(μm)、周期構造部33B、33G、33Rの幅をW(μm)とする。
【0075】
D=0.035(μm)、T=0.035(μm)、P=0.07(μm)、W=0.05(μm)の場合は、特性B4に示されるように、主に青色帯域の光の透過率が高くなる。
【0076】
D=0.065(μm)、T=0.035(μm)、P=0.18(μm)、W=0.16(μm)の場合は、特性G4に示されるように、主に緑色帯域の光の透過率が高くなる。
【0077】
D=0.16(μm)、T=0.035(μm)、P=0.18(μm)、W=0.09(μm)の場合は、特性R4に示されるように、主に赤色帯域の光の透過率が高くなる。
【0078】
図8に示すシミュレーション結果より、本実施形態のカラーフィルタ20’B、20’G、20’Rは、前述した顔料カラーフィルタに比べて、透過させるべき波長域の透過率は上回っており、混色の原因となる透過させるべきではない波長域の透過率は下回っている。
【0079】
本実施形態のカラーフィルタ20’B、20’G、20’Rにおいて、積層構造部21B、21G、21Rは、主として、透過させたい波長域の透過率を高め、周期構造部33B、33G、33Rは、主として、透過させたくない波長域の反射率及び吸収率を高める機能を担う。結果的に、これら積層構造部21B、21G、21Rと周期構造部33B、33G、33Rとの相乗効果により、受光感度が高く、且つ色再現性に優れた固体撮像素子を提供できる。
【0080】
また、本実施形態においても、積層構造部21B、21G、21Rと周期構造部33B、33G、33Rとを組み合わせることで、カラーフィルタ20’B、20’G、20’Rを薄膜化でき、画素の微細化が進んでも、顔料カラーフィルタに比べてアスペクト比の増大をまねかず、クロストークが生じにくい。
【0081】
(第3実施形態)
図9は、第3実施形態に係る固体撮像素子の模式断面図である。
【0082】
マイクロレンズ51上に平坦化層52が設けられ、その平坦化層52上に赤外光カットフィルタ53が設けられている。図9に示すすべての要素は、ウェーハ状態で形成され、その後チップ状に個片化される。
【0083】
カラーフィルタ20B、20G、20R、マイクロレンズ51、平坦化層52および赤外光カットフィルタ53を無機材料で形成すると、プロセス上の制約を受けにくい。すなわち、既に形成された要素が無機材料であると、後の工程で他の要素を形成するときの熱の影響を受けにくい。これにより、デバイスの信頼性を向上できる。
【0084】
また、赤外光カットフィルタ53をウェーハ工程で薄膜として形成することで、カメラモジュールに、チップとは別に赤外光カットフィルタを設けなくてもよくなり、カメラモジュールの部品点数の低減および小型化が図れる。
【0085】
なお、図9の構造において、図10に示すように、赤外光カットフィルタ53上にさらに赤外光カットフィルタ用のマイクロレンズ54を設けてもよい。これにより、フォトダイオード11B、11G、11Rに入射光を効率よく集光することができる。マイクロレンズ54は、各画素ごとに設けられる。
【0086】
(第4実施形態)
図11(a)は、前述した実施形態の固体撮像素子を用いたカメラの模式図である。
【0087】
このカメラは、筐体90と、カメラレンズ91と、固体撮像素子81とを備える。筐体90は、光を取り込む開口を有し、カメラレンズ91はその開口に一部を臨ませて筐体90に支持されている。
【0088】
固体撮像素子81は、前述した実施形態の固体撮像素子である。固体撮像素子81は、筐体90の内部に設けられ、カメラレンズ91に入射した光を受ける。
【0089】
また、固体撮像素子81が前述した赤外光カットフィルタ53を備えない構造の場合には、図11(b)に示すように、固体撮像素子81とは別部品として赤外光カットフィルタ92を設けてもよい。この赤外光カットフィルタ92は、筐体90内におけるカメラレンズ91と固体撮像素子81との間に設けられる。
【0090】
図9、10の実施形態のように赤外光カットフィルタ53を固体撮像素子81に形成した場合には、カメラの部品点数を低減でき、コスト低減を図れる。また、カメラを小型化(低背化)できる。
【0091】
なお、固体撮像素子81がウェーハ状態のときに、その表面にカメラレンズ91を設けてもよい。この後、個片化される。この場合、固体撮像素子81及びカメラレンズ91を一体に取り扱うことができ、カメラモジュールの組立が容易になる。
【0092】
次に、実施形態に係る固体撮像素子の製造方法について、周期構造部の形成方法を中心に説明する。
【0093】
図12(a)〜(d)は、製造方法の第1の具体例を示す。
【0094】
まず、図12(a)に示すように、基板10の表面にフォトダイオード11を形成する。フォトダイオード11は、前述したフォトダイオード11B、11G、11Rに対応する。
【0095】
次に、図12(b)に示すように、フォトダイオード11上に、配線層13を形成する。さらに、配線層13上に下地層30を形成する。あるいは、配線層13の層間絶縁膜15が下地層30を兼ねてもよい。下地層30は、例えば酸化シリコンである。
【0096】
次に、下地層30上に、周期構造部31を形成する。周期構造部31は、前述した周期構造部31B、31G、31R、または周期構造部33B、33G、33Rに対応する。
【0097】
具体的には、周期構造部31の材料として例えば多結晶シリコンを下地層30の全面に形成した後、図示しないマスクを用いて例えばRIE(Reactive Ion Etching)法で選択的に除去する。これにより、2次元方向に周期的に配列された周期構造部31が形成される。
【0098】
次に、図12(c)に示すように、周期構造部31を下地層30で覆った後、例えばCMP(Chemical Mechanical Polishing)法で下地層30の上面を平坦化する。
【0099】
次に、図12(d)に示すように、下地層30上に、積層構造部21を形成する。積層構造部21は、前述した積層構造部21B、21G、21Rに対応する。その後、積層構造部21上にマイクロレンズが形成され、さらに必要に応じて赤外光カットフィルタなどが形成される。
【0100】
以上説明した工程はウェーハ状態で行われ、その後個片化される。
【0101】
図13(a)〜(e)は、製造方法の第2の具体例を示す。
【0102】
上記第1の具体例と同様、基板10の表面にフォトダイオード11を形成した後、図13(a)に示すように、フォトダイオード11上に下地層30を形成する。
【0103】
次に、下地層30上に、第1の具体例と同様に、周期構造部31を形成する。次に、図13(c)に示すように、周期構造部31を下地層30で覆った後、例えばCMP法で下地層30の上面を平坦化する。
【0104】
次に、図13(d)に示すように、下地層30上に配線層13を形成する。次に、図13(e)に示すように、配線層13上に積層構造部21を形成する。以降、第1の具体例と同様に工程が進められる。
【0105】
図14(a)〜(c)は、製造方法の第3の具体例を示す。
【0106】
上記第1の具体例と同様、基板10の表面にフォトダイオード11を形成した後、図14(a)に示すように、フォトダイオード11上に下地層30を形成する。
【0107】
次に、下地層30の表面にホール30aを形成する。ホール30aは、例えば図示しないマスクを用いたRIE法で形成される。ホール30aは、2次元方向に周期的に配列されている。
【0108】
次に、図14(b)に示すように、下地層30上に、周期構造部31の材料(例えば多結晶シリコン)を形成する。この材料は、ホール30a内にも埋め込まれる。
【0109】
次に、図14(c)に示すように、下地層30上に形成された上記材料を例えばCMP法で除去する。ホール30a内には上記材料は残される。これにより、周期構造部31が得られる。以降、第2の具体例の図13(d)、(e)と同様に工程が進められる。
【0110】
図15(a)〜(c)は、製造方法の第4の具体例を示す。
【0111】
上記第1の具体例と同様、基板10の表面にフォトダイオード11を形成した後、フォトダイオード11上に下地層30を形成する。この下地層30は、基板10表面に形成される周辺回路等のトランジスタ(図示せず)のゲート絶縁膜も兼ねている。
【0112】
次に、下地層30上に周期構造部31を形成する。この周期構造部31は、上記トランジスタのゲート電極(図示せず)と、同材料で同時に形成される。
【0113】
具体的には、周期構造部31及びゲート電極の材料として例えば多結晶シリコンを下地層30の全面に形成した後、図示しないマスクを用いて例えばRIE法で選択的に除去する。これにより、トランジスタのゲート電極及び2次元方向に周期的に配列された周期構造部31が得られる。したがって、工程数を低減でき、コスト低減を図れる。
【0114】
その後、図15(b)に示すように、周期構造部31上に配線層13が形成され、さらに図15(c)に示すように、配線層13上に積層構造部21が形成される。以降、上記具体例と同様に工程が進められる。
【0115】
図16(a)〜(e)は、製造方法の第5の具体例を示す。
【0116】
この第5の具体例は、光の入射面の反対側に配線層が設けられたいわゆる裏面照射型の構造の製造方法に対応する。
【0117】
フォトダイオード11は、SOI(Silicon On Insulator)層に形成される。すなわち、図16(a)に示すように、基板10上に絶縁層29が形成され、その絶縁層29上に形成されたSOI層にフォトダイオード11が形成される。
【0118】
フォトダイオード11上には、図16(b)に示すように、配線層13が形成される。次に、図16(c)に示すように、配線層13におけるフォトダイオード11とは反対側の面に支持基板100を接着した後、基板10及び絶縁層29を除去する。これにより、フォトダイオード11が形成されたSOI層が露出する。
【0119】
次に、そのSOI層上に、図16(d)に示すように、下地層30を形成し、さらに、下地層30上に周期構造部31を形成する。さらに、図16(e)に示すように、周期構造部31上に積層構造部21を形成する。
【0120】
光は、カラーフィルタ側(図16(e)において下側)から入射し、積層構造部21と周期構造部31とを有するカラーフィルタを介して、フォトダイオード11に入射する。光は、配線層13を通過せずにフォトダイオード11に入射するので、感度を高くすることができる。
【0121】
本発明のいくつかの実施形態を説明したが、これらの実施形態は、例として提示したものであり、発明の範囲を限定することは意図していない。これら新規な実施形態は、その他の様々な形態で実施されることが可能であり、発明の要旨を逸脱しない範囲で、種々の省略、置き換え、変更を行うことができる。これら実施形態やその変形は、発明の範囲や要旨に含まれるとともに、特許請求の範囲に記載された発明とその均等の範囲に含まれる。
【符号の説明】
【0122】
10…基板、11B,11G,11R…フォトダイオード、13…配線層、14…配線、20B,20G,20R,20’B,20’G,20’R…カラーフィルタ、21B,21G,21R…積層構造部、24…上部ミラー層、25…下部ミラー層、26…第1の層(高屈折率層)、27…第2の層(低屈折率層)、28…制御層、30…下地層、31B,31G,31R,33B,33G,33R…周期構造部、51…マイクロレンズ、53…赤外光カットフィルタ、81…固体撮像素子、90…筐体、91…カメラレンズ、92…赤外光カットフィルタ
【特許請求の範囲】
【請求項1】
2次元配列された複数の光電変換部を有する基板と、
前記基板に対して積層され、前記各光電変換部に向けて特定の波長域の光を透過させる複数のカラーフィルタと、
を備え、
前記各カラーフィルタは、
相対的に屈折率の異なる第1の層と第2の層との積層構造を有する積層構造部と、
2次元方向に周期性を有する周期構造部であって、透過波長域ごとに周期が異なる周期構造部と、
を有することを特徴とする固体撮像素子。
【請求項2】
前記基板に対して積層され、前記光電変換部と電気的に接続された配線層をさらに備え、前記基板上に前記配線層が設けられ、前記配線層上に前記周期構造部が設けられ、前記周期構造部上に前記積層構造部が設けられたことを特徴とする請求項1記載の固体撮像素子。
【請求項3】
前記光電変換部の直上に、前記周期構造部が設けられたことを特徴とする請求項1記載の固体撮像素子。
【請求項4】
前記積層構造部は、積層方向に対称的な構造を有する上部ミラー層と下部ミラー層とを有し、
前記上部ミラー層と前記下部ミラー層との間に、前記透過波長域ごとに厚さもしくは屈折率の異なる制御層が設けられたことを特徴とする請求項1〜3のいずれか1つに記載の固体撮像素子。
【請求項5】
前記周期構造部は、前記制御層中に設けられたことを特徴とする請求項4記載の固体撮像素子。
【請求項6】
前記カラーフィルタは、無機材料からなることを特徴とする請求項1〜5のいずれか1つに記載の固体撮像素子。
【請求項7】
前記カラーフィルタにおける前記基板とは反対面側に積層され、無機材料からなるマイクロレンズをさらに備えたことを特徴とする請求項6記載の固体撮像素子。
【請求項8】
前記カラーフィルタにおける前記基板とは反対面側に積層され、無機材料からなる赤外光カットフィルタをさらに備えたことを特徴とする請求項6または7に記載の固体撮像素子。
【請求項9】
2次元配列された複数の光電変換部を有する基板上に、前記各光電変換部に向けて特定の波長域の光を透過させる複数のカラーフィルタを形成する工程を備え、
前記カラーフィルタを形成する工程は、
相対的に屈折率の異なる第1の層と第2の層との積層構造を有する積層構造部を形成する工程と、
2次元方向に周期性を有し、透過波長域ごとに周期が異なる周期構造部を形成する工程と、
を有することを特徴とする固体撮像素子の製造方法。
【請求項10】
筐体と、
前記筐体に支持されたカメラレンズと、
前記筐体の内部に設けられ、前記カメラレンズに入射した光を受ける固体撮像素子と、
を備え、
前記固体撮像素子は、
2次元配列された複数の光電変換部を有する基板と、
前記基板に対して積層され、前記各光電変換部に向けて特定の波長域の光を透過させる複数のカラーフィルタと、
を有し、
前記各カラーフィルタは、
相対的に屈折率の異なる第1の層と第2の層との積層構造を有する積層構造部と、
2次元方向に周期性を有する周期構造部であって、透過波長域ごとに周期が異なる周期構造部と、
を有することを特徴とするカメラ。
【請求項1】
2次元配列された複数の光電変換部を有する基板と、
前記基板に対して積層され、前記各光電変換部に向けて特定の波長域の光を透過させる複数のカラーフィルタと、
を備え、
前記各カラーフィルタは、
相対的に屈折率の異なる第1の層と第2の層との積層構造を有する積層構造部と、
2次元方向に周期性を有する周期構造部であって、透過波長域ごとに周期が異なる周期構造部と、
を有することを特徴とする固体撮像素子。
【請求項2】
前記基板に対して積層され、前記光電変換部と電気的に接続された配線層をさらに備え、前記基板上に前記配線層が設けられ、前記配線層上に前記周期構造部が設けられ、前記周期構造部上に前記積層構造部が設けられたことを特徴とする請求項1記載の固体撮像素子。
【請求項3】
前記光電変換部の直上に、前記周期構造部が設けられたことを特徴とする請求項1記載の固体撮像素子。
【請求項4】
前記積層構造部は、積層方向に対称的な構造を有する上部ミラー層と下部ミラー層とを有し、
前記上部ミラー層と前記下部ミラー層との間に、前記透過波長域ごとに厚さもしくは屈折率の異なる制御層が設けられたことを特徴とする請求項1〜3のいずれか1つに記載の固体撮像素子。
【請求項5】
前記周期構造部は、前記制御層中に設けられたことを特徴とする請求項4記載の固体撮像素子。
【請求項6】
前記カラーフィルタは、無機材料からなることを特徴とする請求項1〜5のいずれか1つに記載の固体撮像素子。
【請求項7】
前記カラーフィルタにおける前記基板とは反対面側に積層され、無機材料からなるマイクロレンズをさらに備えたことを特徴とする請求項6記載の固体撮像素子。
【請求項8】
前記カラーフィルタにおける前記基板とは反対面側に積層され、無機材料からなる赤外光カットフィルタをさらに備えたことを特徴とする請求項6または7に記載の固体撮像素子。
【請求項9】
2次元配列された複数の光電変換部を有する基板上に、前記各光電変換部に向けて特定の波長域の光を透過させる複数のカラーフィルタを形成する工程を備え、
前記カラーフィルタを形成する工程は、
相対的に屈折率の異なる第1の層と第2の層との積層構造を有する積層構造部を形成する工程と、
2次元方向に周期性を有し、透過波長域ごとに周期が異なる周期構造部を形成する工程と、
を有することを特徴とする固体撮像素子の製造方法。
【請求項10】
筐体と、
前記筐体に支持されたカメラレンズと、
前記筐体の内部に設けられ、前記カメラレンズに入射した光を受ける固体撮像素子と、
を備え、
前記固体撮像素子は、
2次元配列された複数の光電変換部を有する基板と、
前記基板に対して積層され、前記各光電変換部に向けて特定の波長域の光を透過させる複数のカラーフィルタと、
を有し、
前記各カラーフィルタは、
相対的に屈折率の異なる第1の層と第2の層との積層構造を有する積層構造部と、
2次元方向に周期性を有する周期構造部であって、透過波長域ごとに周期が異なる周期構造部と、
を有することを特徴とするカメラ。
【図1】
【図2】
【図3】
【図4】
【図5】
【図6】
【図7】
【図8】
【図9】
【図10】
【図11】
【図12】
【図13】
【図14】
【図15】
【図16】
【図2】
【図3】
【図4】
【図5】
【図6】
【図7】
【図8】
【図9】
【図10】
【図11】
【図12】
【図13】
【図14】
【図15】
【図16】
【公開番号】特開2012−64824(P2012−64824A)
【公開日】平成24年3月29日(2012.3.29)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2010−208774(P2010−208774)
【出願日】平成22年9月17日(2010.9.17)
【出願人】(000003078)株式会社東芝 (54,554)
【Fターム(参考)】
【公開日】平成24年3月29日(2012.3.29)
【国際特許分類】
【出願日】平成22年9月17日(2010.9.17)
【出願人】(000003078)株式会社東芝 (54,554)
【Fターム(参考)】
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