説明

固体撮像装置および電子情報機器

【課題】裏面照射型の固体撮像装置において、隣接画素間の混色(クロストーク)を抑制することを目的とする。
【解決手段】複数の画素を配列してなり、画素毎に撮像信号を生成する撮像領域と、該画素を構成する回路素子を駆動する駆動回路とを備えた固体撮像装置100において、画素は、半導体基板101の裏面側領域に形成され、入射光を光電変換する光電変換部102と、該半導体基板の表面側に形成され、該入射光の光電変換により得られた光電変換信号を該光電変換部から該撮像信号として読み出す信号処理回路とを有し、該半導体基板の裏面上の隣接する画素の境界部分に、光反射性部材からなる隆起部112が選択的に形成され、該半導体基板の裏面上に絶縁膜113aが、該隆起部による段差が反映されて、該入射光を該光電変換部に集光する凹レンズが形成されるよう形成されている。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、固体撮像装置および電子情報機器に関し、特に、裏面照射型の固体撮像装置において隣接画素間の混色(クロストーク)を抑制する構造、およびこのような構造を有する固体撮像装置を搭載した電子情報機器に関するものである。
【背景技術】
【0002】
近年、CMOSセンサを始めとする固体撮像装置は、例えば、デジタルスチルカメラやビデオムービー、また監視カメラ等の多様な用途で使われている。中でも単一の画素アレイで複数の色情報を取得する単版式撮像素子がその主流となっている。
【0003】
ところが、近年の多画素化や光学サイズ縮小の要請により、画素サイズが縮小される傾向にある。例えば、近年デジタルカメラ等で多く使われているCMOSセンサの画素サイズは0.8μmから3μm程度である。そのような微細画素では以下のような問題点がある。
【0004】
まず、単位画素の面積が縮小されると、単位画素で受光できるフォトン(photon)の数が単位画素面積に比例して減少してしまう結果、光ショットノイズに対するS(Signal)/N(Noise)比が低下することである。S/N比が維持できないと、再生画面における画質が劣化してしまい再生画像の品質が落ちてしまうという問題が生ずる。
【0005】
また、単位画素の面積が縮小されると、隣接画素間でのクロストークが増大するために、本来各画素はそれぞれ固有の波長領域のみに感度があるべきところを、本来感度を持つべきではない波長領域で感度を持つようになるため、混色が発生し、再生画面上での色再現性が著しく劣化するという問題が起こる。
【0006】
従って、画素を縮小してもS/N比を維持するために、できるだけ感度が落ちないようにしてS/N比の低下を防ぎ、また画素を縮小しても色再現性が劣化しないようにするためにできるだけ混色が発生しないようにする必要がある。
【0007】
そこで、このような問題に対する対策を施した構成として、例えば、特許文献1に開示の裏面照射型の固体撮像装置がある。
【0008】
この特許文献1に開示の裏面照射型の固体撮像装置では、入射光は、信号走査回路及びその配線層が形成されるシリコン表面(表面)とは反対側のシリコン表面(裏面)から入射光が照射される。
【0009】
このように、信号走査回路及びその配線層が形成されるシリコン表面側とは反対側のシリコン表面から入射させる裏面照射型の構成では、画素に入射する光が配線層に阻害されることなくシリコン基板内に形成された受光領域に到達することができる。そのため、微細な画素においても高い量子効率を実現することができる。
【0010】
一方で、配線層に阻害されることがないために、入射光が隣接画素に漏れこんでしまい混色(クロストーク)となってしまうという問題がある。
【0011】
この裏面照射型のCMOSイメージセンサーにおける混色(クロストーク)抑制方法として、図14に示されるように隣接する前記単位画素の境界部分に設けられ、素子領域、つまり個々の単位画素を区画する絶縁膜を備える構造が提案されている。
【0012】
以下、特許文献1に記載の従来の固体撮像装置について詳しく説明する。
【0013】
図12は、この特許文献1に記載の固体撮像装置の全体構成例を示すシステムブロック図であり、画素アレイのカラム位置にAD変換回路が配置された場合の構成例を示している。図13は、画素アレイの構成例を示す等価回路図である。
【0014】
この固体撮像装置10は、複数の画素(以下、単位画素ともいう。)1を配列してなり、画素毎に撮像信号を生成する撮像領域(画素アレイ)12と、該画素を構成する回路素子を駆動する駆動回路領域14とを有している。該画素1は、半導体基板の裏面側領域に形成され、入射光を光電変換する光電変換部と、該半導体基板の表面側に形成され、該入射光の光電変換により得られた光電変換信号を該光電変換部から該撮像信号として読み出す信号処理回路とを有している。
【0015】
光電変換部は、入射光を光電変換して信号電荷を蓄積するフォトダイオードを含む。信号走査回路部は、増幅トランジスタ3等を備え、光電変換部からの信号を読み出し、増幅してAD変換回路15に送信する。ここでは、受光面は、信号走査回路部が形成される半導体基板表面と反対側の半導体基板の裏面側に設けられている。
【0016】
駆動回路領域14には、上記信号走査回路部を駆動するための垂直シフトレジスタ(Vertical Shift register)13およびAD変換回路15等の素子駆動回路が配置されている。
【0017】
垂直シフトレジスタ13は、信号LS1〜LSkを画素アレイ12に出力し、単位画素1を行毎に選択する選択部として機能する。選択された行の単位画素1からはそれぞれ、入射された光の量に応じた光電変換信号がアナログ信号(撮像信号)Vsigとして垂直信号線VSLを介して出力される。
【0018】
AD変換回路(ADC)15は、垂直信号線VSLを介して入力されたアナログ信号Vsigを、デジタル信号に変換する。
【0019】
単位画素(PIXEL)1は、フォトダイオード2、増幅トランジスタ3、読み出しトランジスタ4、リセットトランジスタ9、及びアドレストランジスタ41を備えている。このフォトダイオード2は光電変換部を構成し、増幅トランジスタ3、読み出しトランジスタ4、リセットトランジスタ9、およびアドレストランジスタ41は、信号走査回路部を構成する。
【0020】
フォトダイオード2のカソードは接地されている。増幅トランジスタ3は、浮遊拡散層(フローティングディフュージョン)42からの信号を増幅して出力するように構成されている。増幅トランジスタ3のゲートは浮遊拡散層42に接続され、ソースは垂直信号線VSLに接続され、ドレインはアドレストランジスタ41のソースに接続されている。垂直信号線VSLにより送信される単位画素1の出力信号(撮像信号)は、CDS雑音除去回路8により雑音が除去された後、出力端子81から出力される。
【0021】
読み出しトランジスタ4のゲートは読み出し信号線TRFに接続され、ソースはフォトダイオード2のアノードに接続され、ドレインは浮遊拡散層42に接続されている。リセットトランジスタ9は、増幅トランジスタ3のゲート電位をリセットするように構成されている。リセットトランジスタ9のゲートはリセット信号線RSTに接続され、ソースは浮遊拡散層42に接続され、ドレインはドレイン電源に接続される電源端子5に接続されている。アドレストランジスタ(トランスファゲート)41のゲートは、アドレス信号線ADRに接続されている。また、負荷トランジスタ6のゲートは選択信号線SFに接続され、ドレインは増幅トランジスタ3のソースに接続され、ソースは制御信号線DCに接続されている。
【0022】
次に動作について説明する。
【0023】
まず、読み出し行の行選択トランジスタ41が、垂直シフトレジスタ13から送られる行選択パルスによりオン(ON)状態になる。
【0024】
続いて、同様に垂直シフトレジスタ13から送られたリセットパルスによりリセットトランジスタ9が、オン(ON)状態になり、浮遊拡散層42の電位が電源電圧に近い電圧にリセットされる。その後、リセットトランジスタ9は、オフ(OFF)状態になる。
【0025】
続いて、トランスファゲート4が、オン(ON)状態になり、フォトダイオード2に蓄積された信号電荷が浮遊拡散層42に読み出され、浮遊拡散層42の電位が読み出された信号電荷に応じて変調される。
【0026】
続いて、変調された信号が、ソースフォロワを構成するMOSトランジスタ3により垂直信号線VSLに読み出され、読み出し動作を完了する。
【0027】
このような構成の裏面照射型の固体撮像装置では、図14に示すように、シリコン(Si)基板404の裏面上に、ロウ方向およびカラム方向においてマトリクス状に単位画素(PIXEL)1が配置されている。
【0028】
さらに、シリコン(Si)基板404の裏面上に、隣接する単位画素1の境界部分に素子領域(単位画素)を区画する素子分離絶縁膜(絶縁膜)408が設けられている。そのため、素子分離絶縁膜408は、単位画素1を、ロウ方向およびカラム方向において囲むように格子状に配置されている。
【0029】
ここで、素子分離絶縁膜408は、シリコン(Si)の屈折率より低い屈折率を持つ絶縁膜から形成されている。例えば、素子分離絶縁膜408は、入射される波長400nm−700nm程度の光に対する屈折率が、3.9程度以下である絶縁材料により形成されることが望ましい。より具体的には、例えば、素子分離絶縁膜408は、シリコン酸化膜(SiO膜)、シリコン窒化膜(Si膜)、チタンオキサイド(TiO)膜等の絶縁材料により形成される。
【0030】
また、図示するように、単位画素1のロウ方向およびカラム方向における画素ピッチPは、いずれも共通となるように配置されている。
【0031】
図14(b)は、従来の固体撮像装置が有する画素アレイ12の断面構成例について説明する図であり、図14(a)のVI−VI線に沿った断面の構造を示している。
【0032】
図14(b)に示すように、シリコン基板404の表面上には、層間絶縁膜409を介して、上記増幅トランジスタ3等により構成される信号走査回路部15の回路を成す配線層402が形成されている。
【0033】
一方、シリコン基板404の裏面上には、光電変換により得られた信号電荷を蓄積するn型拡散層403、反射防止膜405、色フィルタ406、マイクロレンズ407、および素子分離絶縁膜408が形成されている。素子分離絶縁膜408は、上記のように、Si基板404中の画素間の境界部分に設けられている。上記のように、素子分離絶縁膜408は、シリコン基板404の屈折率より低い屈折率を持つ絶縁膜から形成されている。n+型拡散層403は、後述するように、信号電荷蓄積領域を成すフォトダイオードを構成する拡散層である。
【0034】
次に製造方法について説明する。
【0035】
次に、図15〜図17を用いて、図14で示す従来の固体撮像装置の製造方法について説明する。
【0036】
まず、図15(a)に示す加工前のシリコン(Si)基板404に対して信号走査回路等が形成される側(表面側)の基板404の表面上に、例えば、シリコン(Si)等からなる第1支持基板31を接着する(図15(b))。
【0037】
次に、信号走査回路等が形成される半導体基板の反対側(裏面側)であって、受光領域となる側のシリコン基板404の表面上を、例えば、RIE(Reactive Ion Etching)法等のエッチングにより、例えば、3〜7μm程度まで薄膜化する(図15(c))。
【0038】
続いて、受光領域が形成されるシリコン基板404の表面上(裏面側)の単位画素の境界部分に対して、例えば、フォトリソグラフィ等により選択的にエッチングを第1支持基板31の表面上まで行い、溝33を形成する(図16(a))。
【0039】
その後、図16(b)に示すように、上記溝33中に、例えば、CVD(Chemical Vapor Deposition)法又はスピンコート等により、シリコン(Si)の屈折率より低い屈折率を持つシリコン酸化膜(SiO膜)やチタンオキサイド(TiO)膜等の絶縁材料を埋め込み、素子分離絶縁膜408を形成する。例えば、素子分離絶縁膜408は、入射される波長400nm−700nm程度の光に対する屈折率が、3.9程度以下である絶縁材料により形成されることが望ましい。
【0040】
次に、素子分離絶縁膜408上に、例えば、CVD法等を用いて絶縁材料を堆積し、基板底面全域に反射防止膜405を形成する(図16(b))。
【0041】
続いて、受光側となるシリコン基板404の裏面側の反射防止膜405上に、例えば、シリコン(Si)等からなる第2支持基板32を接着する(図16(c))。
【0042】
次に、シリコン基板404の表面側に接着させた信号走査回路側の第1支持基板31を、取り外し(図17(a))、続いて、第2支持基板32およびシリコン基板404を反転させ、シリコン基板404の表面上に、例えば、通常のLSI製造プロセスを用いて、p型、n型拡散層403等を形成し、フォトダイオード2や読み出しトランジスタ4(図示せず)等の能動素子を形成する。
【0043】
続いて、シリコン基板404の表面側の上記形成した構成上に、例えば、CVD法等を用いてシリコン酸化膜等を堆積し、層間絶縁間409とともに、トランジスタ等を接続する配線層402を形成し、信号走査回路を形成する(図17(b))。
【0044】
続いて、上記信号走査回路側(表面側)に、第3支持基板(図示せず)をさらに接着し、図17(c)に示すように、反対側(表面側)の第2支持基板32を取り外す。
【0045】
最後に、第3支持基板(図示せず)およびシリコン基板404を反転させ、シリコン基板404の裏面上に、順次、色フィルタ406、マイクロレンズ407を形成する。
【0046】
このような構成の固体撮像装置では隣接画素間でのクロストークを防止して、混色の発生を防止できるため、再生画面上での色再現性の向上に対して有利である。
【0047】
つまり、図14(a)に示すように、この固体撮像装置の構成では、受光面は、隣接する単位画素(PIXEL)1の境界部分に設けられ、素子領域(単位画素)を区画する素子分離絶縁膜408を備えている。このため、図14(b)に示すように、斜め方向に入射した光L2は素子分離絶縁膜408で反射されるため、隣接する単位画素に入射することを防止することができる。従って、クロストークおよび混色を発生させることは無く、再生画面上での色再現性の向上に対して有利である。なお、図中、L1は垂直に入射した光である。
【0048】
また、上記従来の固体撮像装置では、画素の縮小が進行した場合であっても、再生画像の品質劣化を抑制できる。
【0049】
単位画素の面積が縮小されると、単位画素で受光できるフォトン(photon)の数が単位画素面積に比例して減少してしまう結果、光ショットノイズに対するS/N比が低下する。S/N比が維持できないと、再生画面における画質が劣化してしまい再生画像の品質が落ちてしまうが、図14に示す固体撮像装置は、裏面照射型であるため、入射光は信号走査回路及びその配線層が形成されるシリコン(Si)表面(表面)とは反対側のシリコン(Si)表面(裏面)から入射光を照射することができる。そのため、画素に入射する光が配線層に阻害されることなくシリコン(Si)基板内に形成された受光領域に到達することができ、微細な画素においても高い量子効率を実現することができる。その結果、画素の縮小が進行した場合であっても、再生画像の品質劣化の抑制できる。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0050】
【特許文献1】特開2009−206356号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0051】
しかしながら、従来の固体撮像装置の構造では、シリコン表面に入射するまでの入射光による混色(クロストーク)に対しては抑制効果を持たない。
【0052】
また、シリコン基板に溝を設けることにより、シリコン基板と絶縁膜界面から電子ノイズが発生し、暗電流増加を招く。
【0053】
本発明は、上記のような問題点を解決するためになされたものであり、裏面側からの入射光による隣接画素間の混色(クロストーク)を抑制することができる固体撮像装置、およびこのような固体撮像装置を搭載した電子情報機器を得ることを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0054】
本発明に係る固体撮像装置は、複数の画素を配列してなり、画素毎に撮像信号を生成する撮像領域と、該画素を構成する回路素子を駆動する駆動回路とを備えた固体撮像装置であって、該画素は、半導体基板の裏面側領域に形成され、入射光を光電変換する光電変換部と、該半導体基板の表面側に形成され、該入射光の光電変換により得られた光電変換信号を該光電変換部から該撮像信号として読み出す信号処理回路とを有し、該半導体基板の裏面上の隣接する画素の境界部分に、光反射性部材からなる隆起部が選択的に形成され、該半導体基板の裏面上に絶縁膜が、該隆起部による段差が反映されて、該入射光を該光電変換部に集光する凹レンズが形成されるよう形成されている、固体撮像装置であり、そのことにより上記目的が達成される。
【0055】
本発明は、上記固体撮像装置において、前記絶縁膜上には、平坦化膜が形成されており、該平坦化膜の屈折率は、該絶縁膜の屈折率より大きいことが好ましい。
【0056】
本発明は、上記固体撮像装置において、前記平坦化膜上には、前記複数の画素の各々に対応するカラーフィルターおよびマイクロレンズが積層されていることが好ましい。
【0057】
本発明は、上記固体撮像装置において、前記複数の画素は行列状に配列されており、前記隆起部は、該複数の画素の各々の光電変換部を囲むよう平面形状を格子形状としたものであることが好ましい。
【0058】
本発明は、上記固体撮像装置において、前記隆起部は金属材料により構成されていることが好ましい。
【0059】
本発明は、上記固体撮像装置において、前記絶縁膜は、透光性の無機材料で構成されており、前記平坦化膜は、透光性の有機材料で構成されていることが好ましい。
【0060】
本発明は、上記固体撮像装置において、前記絶縁膜を構成する透光性の無機材料は1.2〜1.6の範囲の屈折率を有し、前記平坦化膜を構成する透光性の有機材料は1.5〜2.0の範囲の屈折率を有していることが好ましい。
【0061】
本発明は、上記固体撮像装置において、前記金属材料からなる隆起部の高さは、0.1μm〜0.5μmの範囲に設定されていることが好ましい。
【0062】
本発明は、上記固体撮像装置において、前記金属材料は、タングステン、アルミニウム、チタン、窒化チタン、または銅であることが好ましい。
【0063】
本発明に係る電子情報機器は、被写体の撮像を行う撮像部を備えた電子情報機器であって、該撮像部は、上述した本発明に係る固体撮像装置であり、そのことにより上記目的が達成される。
【0064】
次に作用について説明する。
【0065】
本発明においては、撮像領域上に各画素の光電変換部を囲むように隆起部を設け、さらに撮像領域上に絶縁膜を、この隆起部による段差が反映されて凹レンズが形成されるよう形成しているので、固体撮像装置の裏面側から入射する被写体からの光が、絶縁膜が形成する凹レンズにより、効果的に該光電変換部に集光されることとなる。これにより、裏面側からの入射光による隣接画素間の混色(クロストーク)を抑制することができる。
【0066】
また、上記隆起部は金属材料により構成されているので、隣接画素へ散乱した光は金属膜で全反射され、入射光は所望のフォトダイオードにのみ入射するので、より一層混色(クロストーク)の発生を抑制することができる。
【0067】
また、シリコン基板の光電変換部が形成された裏面と、隆起部を形成する金属材料層との間には、反射防止膜としてのシリコン窒化膜が形成されているので、上記凹レンズにより集光された光が光電変換部の表面で反射されるのを抑制でき、また、金属膜をパターニングする際のエッチングダメージが該光電変換部に及ぶのを回避することができる。
【0068】
さらに、各画素に対応する光電変換部を囲み、隣接する画素間で該光電変換部を分離する分離壁を、光電変換部とは導電型の異なる拡散層により形成しているので、分離壁の形成のためにシリコン基板にエッチングにより細い溝を形成する必要がなくなり、このエッチングによるダメージや、この溝への絶縁物の埋め込み不良による不具合を回避することができる。
【発明の効果】
【0069】
以上のように、本発明によれば、固体撮像装置を構成する画素を、半導体基板の裏面側領域に形成され、入射光を光電変換する光電変換部と、該半導体基板の表面側に形成され、該入射光の光電変換により得られた光電変換信号を該光電変換部から該撮像信号として読み出す信号処理回路とを有する構造とし、該半導体基板の裏面上の隣接する画素の境界部分に、光反射性部材からなる隆起部を選択的に形成し、該半導体基板の裏面上に絶縁膜を、該隆起部による段差が反映されて、該入射光を該光電変換部に集光する凹レンズが形成されるよう形成したので、裏面側からの入射光による隣接画素間の混色(クロストーク)を抑制することができる固体撮像装置、およびこのような固体撮像装置を搭載した電子情報機器を得ることができる。
【図面の簡単な説明】
【0070】
【図1】図1は、本発明の実施形態1に係る固体撮像装置を説明する図であり、該固体撮像装置の断面構造を示している。
【図2】図2は、本発明の実施形態1に係る固体撮像装置の製造方法を説明する図であり、該シリコン基板の表面領域に光電変換部及び分離壁部を形成する処理を示している。
【図3】図3は、本発明の実施形態1に係る固体撮像装置の製造方法を説明する図であり、画素を構成する能動素子に対する配線を形成する処理を示している。
【図4】図4は、本発明の実施形態1に係る固体撮像装置の製造方法を説明する図であり、シリコン基板の表面側に他のシリコン基板を貼り付ける処理を示している。
【図5】図5は、本発明の実施形態1に係る固体撮像装置の製造方法を説明する図であり、シリコン基板の裏面側をエッチングしてシリコン基板を薄くする処理を示している。
【図6】図6は、本発明の実施形態1に係る固体撮像装置の製造方法を説明する図であり、シリコン基板の、エッチングした裏面上に反射防止膜を形成する処理を示している。
【図7】図7は、本発明の実施形態1に係る固体撮像装置の製造方法を説明する図であり、シリコン基板の反射防止膜上に金属膜を形成する処理を示している。
【図8】図8は、本発明の実施形態1に係る固体撮像装置の製造方法を説明する図であり、シリコン基板の反射防止膜上に形成した金属膜をパターニングして格子状隆起部を形成する処理を示している。
【図9】図9は、本発明の実施形態1に係る固体撮像装置の製造方法を説明する図であり、シリコン基板の反射防止膜上に格子状隆起部を形成した状態を示す平面図である。
【図10】図10は、本発明の実施形態1に係る固体撮像装置の製造方法を説明する図であり、シリコン基板の裏面側に層内レンズ、平坦化膜、カラーフィルター、及びマイクロレンズを形成する処理を示している。
【図11】図11は、本発明の実施形態2として、上記実施形態1の固体撮像装置を撮像部に用いた電子情報機器の概略構成例を示すブロック図である。
【図12】図12は、特許文献1に記載の固体撮像装置の全体構成例を示すシステムブロック図であり、画素アレイのカラム位置にAD変換回路が配置された場合の構成例を示している。
【図13】図13は、上記特許文献1に記載の固体撮像装置における画素アレイの構成例を示す等価回路図である。
【図14】図14は、従来の固体撮像装置の構造を説明する図であり、図14(a)は、その基板裏面側の構造を示し、図14(b)は、図14(a)のVI−VI線に沿った断面の構造を示している。
【図15】図15は、特許文献1に記載の固体撮像装置の製造方法を説明する図であり、シリコン基板の表面側のエッチング処理を工程順(図15(a)〜図15(c))に示している。
【図16】図16は、特許文献1に記載の固体撮像装置の製造方法を説明する図であり、シリコン基板に素子分離絶縁膜を形成する処理(図16(a)、図16(b))、及び他のシリコン基板を貼り合せる処理(図16(c))を示している。
【図17】図17は、特許文献1に記載の固体撮像装置の製造方法を説明する図であり、シリコン基板の裏面側の処理を工程順(図17(a)〜図17(c))に示している。
【発明を実施するための形態】
【0071】
以下、本発明の実施形態について図面を参照しながら説明する。
【0072】
(実施形態1)
図1は本発明の実施形態1による固体撮像装置を説明する図である。
【0073】
本発明の実施形態1による固体撮像装置100は、被写体からの光が裏面側から入射される裏面照射型の固体撮像装置であり、半導体基板の表面上での画素及び駆動回路を構成する素子のレイアウトは、従来のものと同一であり、半導体基板の裏面側構造が従来の裏面入射型の固体撮像装置とは異なっている。
【0074】
つまり、この実施形態1の固体撮像装置100は、複数の画素を配列してなり、画素毎に撮像信号を生成する撮像領域と、該画素を構成する回路素子を駆動する駆動回路とを備えている。
【0075】
ここで、画素は、シリコン基板などの半導体基板101の裏面側領域に形成され、入射光を光電変換する光電変換部102と、該半導体基板の表面側に形成され、該入射光の光電変換により得られた光電変換信号を該光電変換部から該撮像信号として読み出す信号処理回路とを有している。ここでは、半導体基板101の表面側には、信号処理回路を構成する素子に接続される配線104が、層間絶縁膜106を介して多層に形成されている。
【0076】
該半導体基板の裏面上の隣接する画素の境界部分に、光反射性部材からなる隆起部112が選択的に形成され、該半導体基板の表面上には絶縁膜113aが、該隆起部による段差が反映されて、該入射光を該光電変換部に集光する凹レンズが形成されるよう形成されている。この絶縁膜上113aには、平坦化膜113bが形成されており、該平坦化膜の屈折率は、該絶縁膜の屈折率より大きくなっている。なお、図1中、111は反射防止膜である。
【0077】
ここで、上記隆起部は金属材料により構成されており、金属材料としては例えばタングステンを用いることができる。また、この隆起部を構成する金属材料としては、タングステン以外に、アルミニウム、チタン、窒化チタンあるいは銅を用いることができる。
【0078】
また、絶縁膜113aを構成する透光性の無機材料は、例えば、1.2〜1.6の範囲の屈折率を有する、例えばシリコン酸化膜であり、平坦化膜113bを構成する透光性の有機材料は1.5〜2.0の範囲の屈折率を有する、例えば透明樹脂膜である。
【0079】
さらに、上記平坦化膜113b上には、複数の画素の各々に対応するカラーフィルター114およびマイクロレンズ115が積層されている。
【0080】
ここで、前記複数の画素は行列状に配列されて画素アレイを構成しており、上記隆起部は、該複数の画素の各々の光電変換部を囲むよう平面形状を格子形状とした格子状金属膜である。また、この金属材料からなる格子状隆起部の高さは、0.1μm〜0.5μmの範囲に設定され、またその線状部分の幅は例えば100nmである。
【0081】
次に製造方法について説明する。
【0082】
まず、シリコン基板(具体的にはシリコンウエハ)101の表面にイオン注入により光電変換部を形成するためのN型拡散領域102を形成し、さらに、このn型拡散領域102が、各画素の光電変換部に分離されるよう、平面格子状のp型拡散領域103を素子分離領域として形成する(図2)。
【0083】
続いて、該シリコン基板101の表面部に、例えば、通常のLSI製造プロセスを用いて、読み出しトランジスタ、増幅トランジスタ、リセットトランジスタ、及び選択トランジスタ(図示せず)等の能動素子を構成するp型及びn型拡散層等を形成し、続いて、シリコン基板404の表面側に、上記形成した能動素子を接続する配線104を、層間絶縁間105を介して形成する(図3)。
【0084】
次に、上記シリコン基板101の表面側に他のシリコン基板(具体的にはシリコンウエハ)201を貼り付け(図4)、その後、該シリコン基板101と他のシリコン基板201とを、シリコン基板101の裏面が上を向くよう反転させ、700μm程度の厚さのシリコン基板101の裏面側を、その厚さが3μm程度となり、拡散領域102及び103の底面が露出する程度まで、CMP(化学機械研磨)などのエッチング処理によりエッチングする(図5)。
【0085】
その後、シリコン窒化膜などの反射防止膜(厚さ50nm)111を、該シリコン基板のエッチングした面上に形成し(図6)、例えばタングステンのスパッタリングなどの成膜処理により金属膜112aを形成し(図7)、該金属膜112aを、各画素に対応する光電変換部102を分離する素子分離領域103上にのみ残るよう選択的にエッチングして、平面格子形状を有する隆起部112を形成する(図8)。図9は、パターニングされた金属膜112a(隆起部)の形状を示す平面図であり、この状態の半導体基板111の裏面側の構造を示している。
【0086】
その後、シリコン基板112の裏面側の隆起部112及び反射防止膜111上に、該隆起部112による段差が反映されて、該入射光を該光電変換部102に集光する凹レンズが形成されるよう絶縁膜113aを形成する。
【0087】
続いて、この絶縁膜113a上に平坦化膜113bを形成し、該平坦化膜13b上に、複数の画素の各々に対応するカラーフィルター114およびマイクロレンズ115を積層する(図10)。
【0088】
このような構成の裏面照射型の固体撮像装置100では、撮像領域上に各画素の光電変換部を囲むように格子状金属膜(隆起部)112を設け、さらに撮像領域上に、この格子状金属膜112による段差を反映して、絶縁膜113aを凹レンズが形成されるよう形成しているので、固体撮像装置100の裏面側から入射する被写体からの光が、絶縁膜113aが形成する凹レンズにより、効果的に該光電変換部102に集光されることとなる。
【0089】
つまり、マイクロレンズで集光された入射光が凹レンズ(層内レンズ)を介して光電変換部のフォトダイオード中心に入射するとともに、隣接画素へ散乱した光は金属膜で全反射して所望のフォトダイオードにのみ入射するので、混色(クロストーク)の発生を抑制することができる。
【0090】
これにより裏面側からの入射光による隣接画素間の混色(クロストーク)を抑制することができる。
【0091】
また、シリコン基板の光電変換部102が形成された裏面と、隆起部112を形成する金属材料層との間には、反射防止膜としてのシリコン窒化膜111が形成されているので、上記凹レンズにより集光された光が光電変換部102の表面で反射されるのを抑制でき、また、金属膜をパターニングする際のエッチングダメージが該光電変換部102に及ぶのを回避することができる。
【0092】
さらに、本実施形態では、各画素に対応する光電変換部を囲み、隣接する画素間で該光電変換部を分離する素子分離領域を、光電変換部とは導電型の異なる拡散層103により形成しているので、素子分離領域の形成のためにシリコン基板にエッチングにより細い溝を形成する必要がなくなり、このエッチングによるダメージや、この溝への絶縁物の埋め込み不良による不具合を回避することができる。
【0093】
さらに、上記実施形態1では、特に説明しなかったが、上記実施形態1の固体撮像装置を撮像部に用いた、例えばデジタルビデオカメラ、デジタルスチルカメラなどのデジタルカメラや、画像入力カメラ、スキャナ、ファクシミリ、カメラ付き携帯電話装置などの、画像入力デバイスを有した電子情報機器について以下簡単に説明する。
(実施形態2)
図11は、本発明の実施形態2として、実施形態1の固体撮像装置を撮像部に用いた電子情報機器の概略構成例を示すブロック図である。
【0094】
図11に示す本発明の実施形態2による電子情報機器90は、本発明の上記実施形態1の固体撮像装置を、被写体の撮影を行う撮像部91として備えたものであり、このような撮像部による撮影により得られた高品位な画像データを記録用に所定の信号処理した後にデータ記録する記録メディアなどのメモリ部92と、この画像データを表示用に所定の信号処理した後に液晶表示画面などの表示画面上に表示する液晶表示装置などの表示部93と、この画像データを通信用に所定の信号処理をした後に通信処理する送受信装置などの通信部94と、この画像データを印刷(印字)して出力(プリントアウト)する画像出力部95とのうちの少なくともいずれかを有している。
【0095】
また、上記実施形態1及び2では、固体撮像装置としてCMOSイメージセンサを示しているが、本発明の基本原理、つまり、裏面照射型の固体撮像装置において、基板の裏面側の撮像領域上に各画素の光電変換部を囲むように光反射性部材からなる隆起部を設け、撮像領域上に、この隆起部による段差が反映されて凹レンズが形成されるよう絶縁膜を形成することにより、基板裏面からの入射光が上記凹レンズにより効果的に光電変換部に集光し、また、隣接画素への散乱光が上記隆起部により全反射して所望の画素の光電変換部にのみ入射するという原理は、裏面照射型のCCDイメージセンサにも適用可能である。
【0096】
以上のように、本発明の好ましい実施形態を用いて本発明を例示してきたが、本発明は、この実施形態に限定して解釈されるべきものではない。本発明は、特許請求の範囲によってのみその範囲が解釈されるべきであることが理解される。当業者は、本発明の具体的な好ましい実施形態の記載から、本発明の記載および技術常識に基づいて等価な範囲を実施することができることが理解される。本明細書において引用した特許、特許出願および文献は、その内容自体が具体的に本明細書に記載されているのと同様にその内容が本明細書に対する参考として援用されるべきであることが理解される。
【産業上の利用可能性】
【0097】
本発明は、裏面照射型の固体撮像装置及びこのような固体撮像装置を用いた電子情報機器の分野において、被写体からの画像光を光電変換して撮像する半導体素子で構成された例えばCMOSイメージセンサー等の固体撮像装置、及びこの固体撮像装置を画像入力デバイスとして撮像部に用いた例えばデジタルビデオカメラ及びデジタルスチルカメラ等のデジタルカメラや、画像入力カメラ、スキャナ、ファクシミリ、カメラ付き携帯電話装置等の電子情報機器として、隣接画素間の混色(クロストーク)を抑制したものが得られる。
【符号の説明】
【0098】
90 電子情報機器
91 撮像部
92 メモリ部
93 表示部
94 通信部
95 画像出力部
100 固体撮像装置
101 半導体基板(シリコン基板)
102 光電変換部
103 素子分離領域
104 配線
106 層間絶縁膜
112 隆起部
113a 絶縁膜
113b 平坦化膜
114 カラーフィルター
115 マイクロレンズ

【特許請求の範囲】
【請求項1】
複数の画素を配列してなり、画素毎に撮像信号を生成する撮像領域と、該画素を構成する回路素子を駆動する駆動回路とを備えた固体撮像装置であって、
該画素は、
半導体基板の裏面側領域に形成され、入射光を光電変換する光電変換部と、
該半導体基板の表面側に形成され、該入射光の光電変換により得られた光電変換信号を該光電変換部から該撮像信号として読み出す信号処理回路とを有し、
該半導体基板の裏面上の隣接する画素の境界部分に、光反射性部材からなる隆起部が選択的に形成され、
該半導体基板の裏面上に絶縁膜が、該隆起部による段差が反映されて、該入射光を該光電変換部に集光する凹レンズが形成されるよう形成されている、固体撮像装置。
【請求項2】
請求項1に記載の固体撮像装置において、
前記絶縁膜上には、平坦化膜が形成されており、
該平坦化膜の屈折率は、該絶縁膜の屈折率より大きい、固体撮像装置。
【請求項3】
請求項1に記載の固体撮像装置において、
前記平坦化膜上には、前記複数の画素の各々に対応するカラーフィルターおよびマイクロレンズが積層されている、固体撮像装置。
【請求項4】
請求項1に記載の固体撮像装置において、
前記複数の画素は行列状に配列されており、
前記隆起部は、該複数の画素の各々の光電変換部を囲むよう平面形状を格子形状としたものである、固体撮像装置。
【請求項5】
請求項4に記載の固体撮像装置において、
前記隆起部は金属材料により構成されている、固体撮像装置。
【請求項6】
請求項2に記載の固体撮像装置において、
前記絶縁膜は、透光性の無機材料で構成されており、
前記平坦化膜は、透光性の有機材料で構成されている、固体撮像装置。
【請求項7】
請求項6に記載の固体撮像装置において、
前記絶縁膜を構成する透光性の無機材料は1.2〜1.6の範囲の屈折率を有し、
前記平坦化膜を構成する透光性の有機材料は1.5〜2.0の範囲の屈折率を有している、固体撮像装置。
【請求項8】
請求項5に記載の固体撮像装置において、
前記金属材料からなる隆起部の高さは、0.1μm〜0.5μmの範囲に設定されている、固体撮像装置。
【請求項9】
請求項8に記載の固体撮像装置において、
前記金属材料は、タングステン、アルミニウム、チタン、窒化チタン、または銅である、固体撮像装置。
【請求項10】
被写体の撮像を行う撮像部を備えた電子情報機器であって、
該撮像部は、請求項1ないし請求項9のいずれかに記載の固体撮像装置である電子情報機器。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【図6】
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【図7】
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【図8】
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【図9】
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【図10】
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【図11】
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【図12】
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【図13】
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【図14】
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【図15】
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【図16】
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【図17】
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【公開番号】特開2012−84815(P2012−84815A)
【公開日】平成24年4月26日(2012.4.26)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2010−232002(P2010−232002)
【出願日】平成22年10月14日(2010.10.14)
【出願人】(000005049)シャープ株式会社 (33,933)
【Fターム(参考)】