説明

圧着装置、圧着方法、実装体および押圧板

【課題】高さの相違する電子部品を基板に圧着実装する場合または裏面に電子部品が実装された基板に他の電子部品を圧着実装する場合においても、圧着部に均一な圧力を加える。
【解決手段】圧着装置100は、第1押圧部としての下部押圧部102と第2押圧部としての上部押圧部104とを備え、下部押圧部102および上部押圧部104に挟まれた、たとえば基板および複数の電子部品を押圧して、基板と複数の電子部品とを圧着する圧着装置であって、下部押圧部102または上部押圧部104は、ダイラタンシー流体116を有する。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、圧着装置、圧着方法、実装体および押圧板に関する。本発明は、特に、高さの相違する電子部品を基板に圧着実装する場合または裏面に電子部品が実装された基板に他の電子部品を圧着実装する場合においても、圧着部に均一な圧力を加えることができる圧着装置、圧着方法、実装体および押圧板に関する。
【背景技術】
【0002】
従来、圧着装置のヘッドまたは受け台にシリコンゴムなどのエラストマーを備えた圧着装置が報告されている(たとえば、特許文献1および特許文献2)。エラストマーを備えた圧着装置は、高さの異なる複数の電子部品を基板に対して一括圧着させることができるので、電子部品の凹凸のために従来の金属製のヘッドを使用できない場合にも用いることができる。エラストマーを備えた圧着装置を用いて圧着することにより、電子部品と基板との接続信頼性も向上する。
【特許文献1】特開2007−227622号公報
【特許文献2】特許3921459号
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0003】
しかし、最近、ファインピッチ接続が加速されるとともに、実装方法においてもファインピッチ接続に対応できる接続方法が期待されている。最近では、ICの高密度実装が進み、基板電極の裏面に部品を備えた状態で、圧着工程に進む場合も多い。このような場合にも信頼性の高い接続の実現が期待される。
【課題を解決するための手段】
【0004】
上記課題を解決するために、本発明の第1形態においては、第1押圧部と第2押圧部とを備え、前記第1押圧部および前記第2押圧部に挟まれた、第1被圧着物および第2被圧着物を押圧して、前記第1被圧着物と前記第2被圧着物とを圧着する圧着装置であって、前記第1押圧部または前記第2押圧部は、ダイラタンシー流体を有する圧着装置が提供される。
【0005】
上記圧着装置において、前記第1押圧部または前記第2押圧部は、第1被圧着物または第2被圧着物を加熱する加熱部を有してよい。上記圧着装置において、前記第1押圧部および前記第2押圧部は、略水平に配され、前記第1押圧部は、前記ダイラタンシー流体を有し、前記第2押圧部は、前記第1押圧部より上方に配されてよい。上記圧着装置において、前記ダイラタンシー流体の上面を覆う被覆シートと、前記被覆シートを搬送する搬送部と、前記第1押圧部の端部に配され、前記ダイラタンシー流体が、前記被覆シートとともに搬送されることを抑制する摺り切り部とをさらに備え、前記第1押圧部は、前記被覆シートを介して、第1被圧着物または第2被圧着物を挟んでよい。
【0006】
本発明の第2の形態においては、第1被圧着物および第2被圧着物を準備する段階と、前記第1被圧着物と前記第2被圧着物との相対的な位置関係を調整する段階と、前記第1被圧着物および前記第2被圧着物を、第1押圧部および第2押圧部の間に挟み、押圧する段階と、を備える圧着方法であって、前記第1押圧部または前記第2押圧部は、ダイラタンシー流体を有する圧着方法が提供される。上記圧着方法において、前記位置関係を調整する段階の後に、前記第1被圧着物と、異方性導電膜と、前記第2被圧着物とを、この順に配する段階をさらに備えてよい。
【0007】
本発明の第3形態においては、第1電子部品と、第2電子部品とを備える実装体であって、前記第1電子部品と前記第2電子部品との相対的な位置関係を調整して、前記第1電子部品および前記第2電子部品を、少なくとも一方がダイラタンシー流体を有する第1押圧部および第2押圧部の間に挟み、押圧して得られた実装体が提供される。
【0008】
本発明の第4の形態においては、第1電子部品と、異方性導電膜と、第2電子部品とを備える実装体であって、前記第1電子部品と前記第2電子部品との相対的な位置関係を調整して、前記第1電子部品と、前記異方性導電膜と、前記第2電子部品とをこの順に配して、前記第1電子部品および前記第2電子部品を、少なくとも一方がダイラタンシー流体を有する第1押圧部および第2押圧部の間に挟み、押圧して得られた実装体が提供される。
【0009】
本発明の第5の形態においては、基板と、前記基板に実装される複数の電子部品とを備える実装体であって、前記複数の電子部品は、第1電子部品、第2電子部品および第3電子部品を、前記基板の主面に略平行な方向に、この順に有し、前記基板の主面に略垂直な方向における、前記第1電子部品および第3電子部品と、前記第2電子部品との距離の最大値は、1mm以上であり、前記基板の主面に略平行な方向における、前記第1電子部品と前記第3電子部品との距離の最小値は、0.8mm以下である実装体が提供される。
【0010】
本発明の第6の形態においては、ダイラタンシー流体と、前記ダイラタンシー流体を保持する基台とを備える、複数の電子部品を圧着して電気的に結合する圧着装置に用いられる押圧板が提供される。
【0011】
なお、上記の発明の概要は、本発明の必要な特徴の全てを列挙したものではない。また、これらの特徴群のサブコンビネーションもまた、発明となりうる。
【発明を実施するための最良の形態】
【0012】
以下、発明の実施の形態を通じて本発明を説明するが、以下の実施形態は特許請求の範囲にかかる発明を限定するものではない。また、実施形態の中で説明されている特徴の組み合わせの全てが発明の解決手段に必須であるとは限らない。
【0013】
図1は、本実施形態の圧着装置100の一例を示す。圧着装置100は、基板に複数の電子部品を圧着して基板と電子部品とを電気的に結合する。なお、本明細書において「電子部品」の文言には「配線基板」を含むものとする。配線基板は、ガラスエポキシ、ベーク板等の絶縁板またはポリイミド等フレキシブル絶縁シートに銅箔等導電膜の配線を有するものが例示できる。図1において重力方向を下方向として記載する。
【0014】
圧着装置100は、下部押圧部102、上部押圧部104、可動部106、被覆シート108、搬送部110、電源111、制御部112および押え部材114を備える。下部押圧部102は、ダイラタンシー流体116、基台118および加熱部120を有する。
【0015】
下部押圧部102は、第1押圧部の一例であってよく、圧着装置100に用いられる押圧板として機能する。下部押圧部102に有するダイラタンシー流体116は、せん断応力(ずり応力)がかかると液体状態から固体状態に変化する物質であってよい。小さいせん断応力であれば流動性を帯びるが、せん断応力が大きくなれば固体状になるので、被圧着物の形状に合わせて変形することができるとともに、被圧着物の受け台にもなり得る。ダイラタンシー流体116は、粒径のそろった粉体であり、真球度が1.5μm以下、平均粒径が0.05μm〜30μmの粉体であることが好ましい。真球度は、JIS B 1501に規定される玉軸受用鋼球の測定方法により測定できる。
【0016】
ダイラタンシー流体116は、緩やかに加圧した場合には被圧着物の形状に応じて接触面の形状が変化する一方、加圧力を適切に選択すれば適度に固まり加圧力に対する抗力を生じる。よって、ダイラタンシー流体116は、被圧着物の全体をダイラタンシー流体116に沈み込ませることなく、被圧着物に均一な圧力を加えることができる。
【0017】
基台118は、ダイラタンシー流体116を保持する。基台118は、ダイラタンシー流体116を受け台として機能する状態に保てればよく、ダイラタンシー流体116を劣化させることなくダイラタンシー流体116により劣化しない材料、たとえば金属であればよい。基台118は、端部に擦り切り部122を含んでよい。擦り切り部122は、被覆シート108が押え部材114により押さえつけられ、被覆シート108を交換するときの搬送により、ダイラタンシー流体116が被覆シート108とともに搬送されることを抑制する。
【0018】
加熱部120は、被圧着物を加熱する。加熱部120は、たとえば抵抗加熱によるヒーター、ランプ加熱によるハロゲンランプであってよい。加熱部120は、電源111により電力が供給され、電源111は制御部112により制御される。本実施形態では、加熱部120は、基台118の内部に配置され、ダイラタンシー流体116を介して被圧着物を加熱する。あるいは、加熱部120は、ダイラタンシー流体116の内部に配置され、ダイラタンシー流体116を介して被圧着物を加熱してもよい。この場合、ダイラタンシー流体116は耐熱性を備える必要がある。加熱部120を下部押圧部102に備えるので、上部押圧部104に加熱部を備える必要がなく、上部押圧部104の機構を簡略化できる。上部押圧部104が上下移動する場合、機構の簡略化のメリットは大きい。
【0019】
上部押圧部104は、第2圧着部の一例であってよく、可動部106によって上下方向に移動する。上部押圧部104は、たとえば金属等の非弾性体、または、エラストマー等の弾性体であってよい。上部押圧部104は、下部押圧部102よりも上方に配され、下部押圧部102および上部押圧部104は、略水平に配される。下部押圧部102および上部押圧部104は、下部押圧部102および上部押圧部104に挟まれた被圧着物を押圧して、被圧着物を圧着する。
【0020】
被圧着物である基板の裏面に既に電子部品が実装されている場合、上部押圧部104は、基板の裏面に実装されている電子部品の形状に応じた凹凸を有してもよい。なお、本実施の形態では、下部押圧部102に加熱部120を有するが、下部押圧部102または上部押圧部104のいずれに加熱部120を有してもよい。上部押圧部104に加熱部を備えない場合は、上部押圧部104の押圧面に耐熱性の乏しいエラストマー材を採用できる。エラストマー材を用いることにより被圧着物に凹凸があった場合にも被圧着物を均一に押圧することができる。下部押圧部102または上部押圧部104は、冷却部を有してもよい。
【0021】
可動部106は、上部押圧部104を上下方向に可動する。可動部106が上部押圧部104を下方向に可動することにより、下部押圧部102および上部押圧部104が被圧着物を挟んで、被圧着物を押圧する。
【0022】
被覆シート108は、ダイラタンシー流体116の上面を覆う。ダイラタンシー流体116と電子部品との間に被覆シート108を挿入することにより、被圧着物である電子部品へのダイラタンシー粉体の付着を防止できる。下部押圧部102は、被覆シート108を介して上部押圧部104とともに被圧着物を挟み、被覆シート108は、被圧着物の形状に応じて延びる。被覆シート108は、被圧着物の形状に応じて延びることができ、かつ破れないような材料および厚さを選択できる。たとえば、ポリテトラフルオロエチレン(PTFE)シートが例示でき、厚さは0.05mmが例示できる。被覆シート108は、圧着操作毎に交換してもよく、この場合、たとえば図面上の矢印A1の方向に長いシート状であってよい。
【0023】
搬送部110は、被覆シート108をたとえば矢印A2方向に巻き取ることにより搬送する。搬送部110は、圧着毎にダイラタンシー流体116の上面を覆う被覆シート108を交換してよい。交換する場合に、擦り切り部122は、ダイラタンシー流体116が、被覆シート108とともに搬送されることを抑制する。
【0024】
制御部112は、可動部106、搬送部110および電源111の動作を制御する。図1において制御部112は、可動部106および搬送部110の一方と接続しているが、制御部112と接続されていない可動部106および搬送部110の他方の動作も制御している。
【0025】
図2は、圧着工程における実装体の断面例を示す。基板202は、第1被圧着物の一例であってよい。基板202は、主面に略平行な方向に、第1電子部品206、第2電子部品210および第3電子部品214が配される。基板202は、たとえばプラスチック、高分子フィルム、シリコン基板、ガラス、これらが積層されたものであってよい。基板202は、基板202と他の電子部品などとを電気的に接続する導電部204を有してよい。
【0026】
第1電子部品206は、第2被圧着物の一例であってよい。第1電子部品206は、基板202などに接合されて機能する。第1電子部品206は、第1電子部品206と基板202などとを電気的に接続する導電部208を有してよい。
【0027】
第2電子部品210は、第2被圧着物の一例であってよい。第2電子部品210は、基板202などに接合されて機能する。第2電子部品210は、第2電子部品210と基板202などとを電気的に接続する導電部212を有してよい。
【0028】
第3電子部品214は、第2被圧着物の一例であってよい。第3電子部品214は、基板202などに接合されて機能する。第3電子部品214は、第3電子部品214と基板202などとを電気的に接続する導電部216を有してよい。
【0029】
第1電子部品206、第2電子部品210および第3電子部品214は、半田によるボール状電極をディスペンサで格子状に並べたBall grid array(BGA)またはBGAのボール状電極の代わりに平面電極パッドを格子状に並べたLand grid array(LBA)であってよい。基板202の主面に略垂直な方向における、第1電子部品206および第3電子部品214と、第2電子部品210との距離の最大値は、1mm以上、たとえば1mm〜1.5mmであってよい。
【0030】
基板202の主面に平行な方向における、第1電子部品206と第2電子部品210との距離の最小値および第2電子部品210と第3電子部品214との距離の最小値は、0.05mm程度であってよい。基板202の主面に略平行な方向における、第2電子部品210の幅が0.2mmである場合、第1電子部品206と第3電子部品214との距離は、0.3mm程度にすることができ、たとえば、0.3mm〜0.8mmにすることができる。ただし、幅の最小値が0.2mm未満の電子部品が実現できた場合は、基板202の主面に略平行な方向における、第1電子部品206と第3電子部品214との距離の最小値は0.3mmよりも小さい値にすることができる。
【0031】
異方性導電膜220は、加圧および加熱されることにより、たとえば基板202と、第1電子部品206、第2電子部品210および第3電子部品214とを電気的および物理的に接合することができる。異方性導電膜220は、被圧着部材を圧着したときに、被圧着部材間を結着樹脂222で満たすのに十分な厚みを有すればよい。異方性導電膜220は、接着剤として機能する結着樹脂222と、結着樹脂222に分散された導電性粒子224とを有すればよい。異方性導電膜220は、たとえば異方性導電性フィルム(ACF)および異方性導電性ペースト(ACP)であってよい。
【0032】
異方性導電膜220は、基板202と、第1電子部品206、第2電子部品210および第3電子部品214との間で加圧されることにより押し潰されて、導電性粒子224が基板202と第1電子部品206、第2電子部品210および第3電子部品214とを電気的に接続する。異方性導電膜220は、基板202と第1電子部品206、第2電子部品210および第3電子部品214との間で加熱されると、結着樹脂222が硬化することにより、基板202と第1電子部品206、第2電子部品210および第3電子部品214とを物理的に接合する。基板202と、第1電子部品206、第2電子部品210および第3電子部品214との間には、異方性導電膜220に代えて、導電性粒子の混在しないエポキシ樹脂フィルム等のNCF接続ができる部材を配してもよい。
【0033】
図2は、基板202ならびに第1電子部品206、第2電子部品210および第3電子部品214を準備する段階と、基板202と第1電子部品206、第2電子部品210および第3電子部品214との相対的な位置関係を調整する段階と、基板202と、異方性導電膜220と、第1電子部品206、第2電子部品210および第3電子部品214とを、この順に配する段階とを経た状態を示している。
【0034】
図3は、圧着工程における実装体の断面例を示す。図3は、基板202ならびに第1電子部品206、第2電子部品210および第3電子部品214を、下部押圧部102および上部押圧部104の間に挟み、押圧する段階を示す。実装体300は、ダイラタンシー流体116を有する下部押圧部102および上部押圧部104の間に挟み、加圧および加熱することにより得られる。
【0035】
図4は、他の圧着工程における実装体の断面例を示す。基板202が有する導電部402は、導電性を有しており、基板202と他の電子部品などとを電気的に接続する。フレキシブルプリント回路404は、第1被圧着物および第2被圧着物の一例であってよい。フレキシブルプリント回路404は、たとえば12μm〜50μmの厚みを有するフィルム状の絶縁体を基材としてもよい。フレキシブルプリント回路404は、フレキシブルプリント回路404と基板202などとを電気的に接続する導電膜406有してもよい。導電膜406は、たとえば銅であってよい。
【0036】
図4は、基板202およびフレキシブルプリント回路404を準備する段階、基板202とフレキシブルプリント回路404との相対的な位置関係を調整する段階および基板202と、異方性導電膜220と、フレキシブルプリント回路404とを、この順に配する段階を経た状態を示す。
【0037】
図5は、他の圧着工程における実装体の断面例を示す。図5は、基板202およびフレキシブルプリント回路404を、下部押圧部102および上部押圧部104の間に挟み、押圧する段階を示す。実装体500は、ダイラタンシー流体116を有する下部押圧部102および上部押圧部104の間に挟み、加圧および加熱することにより得られる。
【0038】
図6は、本実施形態の圧着装置600の変更例の概要を示す。圧着装置600に備わる上部押圧部602は、ダイラタンシー流体604、被覆バッグ606および基台608を有してよい。
【0039】
ダイラタンシー流体604は、ダイラタンシー流体116と同様に作成されてよい。被覆バッグ606は、第1実施形態の被覆シート108と同様の材料で作成される袋状の部材であってよい。被覆バッグ606は、ダイラタンシー流体604が袋内部に封入され、ダイラタンシー流体604を袋外部に漏らさなければよい。基台608は、第1実施形態の基台118と同様に、ダイラタンシー流体604が上部押圧部602として機能する状態に保てばよい。
【0040】
図7は、圧着装置600を用いた圧着工程における実装体の断面例を示す。基板202が有する導電部702は、導電性を有しており、基板202と他の電子部品などとを電気的に接続する。電子部品704は、第1被圧着物および第2被圧着物の一例であってよい。電子部品704は、基板202に接合されて機能する。電子部品704は、電子部品704と基板202などとを電気的に接続する導電部706を有してよい。
【0041】
図7は、圧着装置600を用いた圧着工程において、基板202および複数の電子部品704を準備する段階、基板202と複数の電子部品704との相対的な位置関係を調整する段階および基板202と、異方性導電膜220と、複数の電子部品704とを、この順に配する段階を経た状態を示す。
【0042】
図8は、圧着装置600を用いた圧着工程の実装体の断面例を示す。図8は、基板202および複数の電子部品704を、下部押圧部102および上部押圧部602の間に挟み、押圧する段階を示す。実装体800は、ダイラタンシー流体116を有する下部押圧部102およびダイラタンシー流体604を有する上部押圧部602の間に挟み、加圧および加熱することにより得られる。
【実施例1】
【0043】
図9は、実施例1の実装体300の断面例を示す。実装体300は、基板202と、第1電子部品206、第2電子部品210および第3電子部品214とを圧着して作成した。耐熱性ガラス基材エポキシ樹脂積層板を、基板202として準備した。耐熱性ガラス基材エポキシ樹脂積層を材料にした、3×2mmの表面積および1.35mmの高さを有するダミー素子を、第1電子部品206および第3電子部品214として準備した。0.35mmの高さを有する1005サイズ0Ωジャンパ抵抗体を第2電子部品210として準備した。第2電子部品210の幅は0.5mmである。異方性導電膜220としてACFを準備した。
【0044】
基台118として砂充填受け台を用い、ダイラタンシー流体116として砂を用いた。砂を砂充填受け台に充填して、下部押圧部102とした。砂充填受け台に充填した砂の平均粒径は0.25mmであった。上部押圧部104として金属ヘッドを用いた。
【0045】
耐熱性ガラス基材エポキシ樹脂積層板と、ダミー素子および0Ωジャンパ抵抗体との相対的な位置関係を調整して、耐熱性ガラス基材エポキシ樹脂積層板と、ACFと、ダミー素子および0Ωジャンパ抵抗体とを、この順に配した。耐熱性ガラス基材エポキシ樹脂積層板ならびにダミー素子および0Ωジャンパ抵抗体を、砂充填受け台および金属ヘッドの間に挟み、180℃の温度かつ2MPaの圧力で20秒間熱圧着して、実装体300を作成した。比較例1として、下部押圧部102としてセラミック製受け台を用い、上部押圧部104として弾性体を用いて、実施例1と同様の条件で熱圧着して実装体を作成した。
【0046】
ダミー素子と0Ωジャンパ抵抗体との高さ差を、1.0mmに調整した場合と、1.5mmに調整した場合とについて、0Ωジャンパ抵抗体の導通接触抵抗を評価した。ダミー素子と0Ωジャンパ抵抗体との高さ差Hは、図9の矢印Hで示される。
【0047】
【表1】

【0048】
表1は、実施例1の実装体300および比較例1の実装体の導通接触抵抗の評価結果を示す。「○」は、導通接触抵抗が0.2Ω以下であり導通できると判断した場合、「×」は、導通接触抵抗が0.2Ωを超えており、導通できないと判断した場合を示している。
【0049】
ダミー素子(第1電子部品206および第3電子部品214)と0Ωジャンパ抵抗体(第2電子部品210)との高さ差Hを1.0mmに調整した場合、ダミー素子の間隔D1を1.3mmすなわちダミー素子と0Ωジャンパ抵抗体との間隔を0.4mmまで開けないと比較例1においては導通しない。これに対し、実施例1では、ダミー素子の間隔D1を0.9mmすなわちダミー素子と0Ωジャンパ抵抗体との間隔を0.2mmまで狭くしても導通した。ダミー素子と0Ωジャンパ抵抗体との高さ差Hを1.5mmに調整した場合、ダミー素子の間隔D1を1.5mmすなわちダミー素子と0Ωジャンパ抵抗体との間隔を0.5mmまで開けないと比較例1においては導通しないのに対し、実施例1では、ダミー素子の間隔D1を0.9mmすなわちダミー素子と0Ωジャンパ抵抗体との間隔を0.2mmまで狭くしても導通した。表1の評価結果は、本実施形態の技術を適用すると、実装体に圧着する部品の圧着不良を防ぐことができることを示している。
【実施例2】
【0050】
200μmピッチで導電部を有する、耐熱性ガラス基材エポキシ樹脂を積層したTEG(Test Element Group)基板を、基板202として準備した。基板202の下面には、1005サイズの抵抗体を接合した。200μmピッチで導電部を有するフレキシブルプリント回路をフレキシブルプリント回路404として準備した。
【0051】
フェノキシ樹脂(PKHH、ユニオンカーバイト社製)30質量部、液状エポキシ樹脂(EP828、ジャパンエポキシレジン社製)10質量部、シランカップリング剤(A−187、モメンティブ・パフォーマンス・マテリアルズ社製)1質量部、ゴム成分(SG80H、ナガセケムテックス社製)10質量部、導電性粒子(Ni−Auメッキφ5μm、ソニーケミカル&インフォメーションデバイス社製)9質量部、硬化剤(HX3941HP、旭化成ケミカルズ社製)40質量部にトルエンを加え、固形分50%の樹脂液に調整し、バーコーターを用いて剥離PETフィルム(ソニーケミカル&インフォメーションデバイス社製)に塗布した後80℃のオーブンで溶媒を乾燥させ、厚さ20μmの異方性導電膜220として準備した。
【0052】
基台118として砂充填受け台を用い、ダイラタンシー流体116として砂を用いた。砂を砂充填受け台に充填して、下部押圧部102とした。砂充填受け台に充填した砂の平均粒径は0.25mmであった。上部押圧部104として金属ヘッドを用いた。
【0053】
TEG基板と、フレキシブルプリント回路との相対的な位置関係を調整して、TEG基板と、異方性導電膜220と、フレキシブルプリント回路とを、この順に配した。TEG基板およびフレキシブルプリント回路を、砂充填受け台および金属ヘッドの間に挟み、190℃の温度かつ3MPaの圧力で10秒間熱圧着して、実装体500を作成した。比較例2として、下部押圧部102としてラバー受台を用い、上部押圧部104として金属ヘッドを用いて、実施例2と同様の条件で熱圧着して実装体を作成した。比較例3として、下部押圧部102として、基板202の下面に接合された1005Rサイズの抵抗体の形状に応じた凹凸を有した掘り込み受台を用い、上部押圧部104として金属ヘッドを用いて、実施例2と同様の条件で熱圧着して実装体を作成した。比較例4として、下面に電子部品が接合されていないTEG基板にフレキシブルプリント回路を熱圧着して実装体を作成した。
【0054】
85℃の温度および85%RHの湿度の高温高湿の状況下で、1000hrの期間エージングをした。実施例2、比較例2、比較例3および比較例4の実装体の基板とフレキシブルプリント回路との導通抵抗を評価した。導通抵抗の評価は、4端子プロービングを用いて行った。
【0055】
図10は、実施例2、比較例2、比較例3および比較例4の評価結果を示す。比較例2および比較例3は、エージング時間が経過するに従い、導通抵抗が増大した。すなわち、比較例2および比較例3の実装体は、電気的な接続が不安定であった。一方、実施例2は、エージング時間が経過したときの導通抵抗の増大を、比較例4と同程度に抑制できた。実施例2の評価結果は、本実施形態の技術の適用により、実装体の電気的な接続を安定させることができることを示している。
【0056】
上記の実施形態では、いわゆるフェイスダウン方式の圧着装置100および圧着装置600を説明した。しかし圧着装置100および圧着装置600は、フェイスダウン方式に限られず、たとえば複数の電子装置が基板202の上側に配置された状態で押圧するフェイスアップ方式を採用してもよい。また、下部押圧部102および上部押圧部104を水平方向に対向させて配置して、基板を垂直に立てた状態で押圧する方式を採用してもよい。
【0057】
以上、本発明を、実施形態を用いて説明したが、本発明の技術的範囲は上記実施形態に記載の範囲には限定されない。上記実施形態に、多様な変更または改良を加えることが可能であることが当業者に明らかである。その様な変更または改良を加えた形態も本発明の技術的範囲に含まれ得ることが、特許請求の範囲の記載から明らかである。
【図面の簡単な説明】
【0058】
【図1】本実施形態の圧着装置100の概要を示す。
【図2】実装体300の圧着工程における断面例を示す。
【図3】実装体300の圧着工程における断面例を示す。
【図4】実装体500の圧着工程における断面例を示す。
【図5】実装体500の圧着工程における断面例を示す。
【図6】本実施形態の変形例の圧着装置600の概要を示す。
【図7】実装体800の圧着工程における断面例を示す。
【図8】実装体800の圧着工程における断面例を示す。
【図9】実施例1の実装体300の断面例を示す。
【図10】実施例2の評価結果を示す。
【符号の説明】
【0059】
100 圧着装置
102 下部押圧部
104 上部押圧部
106 可動部
108 被覆シート
110 搬送部
111 電源
112 制御部
114 押え部材
116 ダイラタンシー流体
118 基台
120 加熱部
122 擦り切り部
202 基板
204 導電部
206 第1電子部品
208 導電部
210 第2電子部品
212 導電部
214 電子部品
216 導電部
220 異方性導電膜
222 結着樹脂
224 導電性粒子
300 実装体
402 導電部
404 フレキシブルプリント回路
406 導電膜
500 実装体
600 圧着装置
602 上部押圧部
604 ダイラタンシー流体
606 被覆バッグ
608 基台
702 導電部
704 電子部品
706 導電部
800 実装体

【特許請求の範囲】
【請求項1】
第1押圧部と第2押圧部とを備え、
前記第1押圧部および前記第2押圧部に挟まれた、第1被圧着物および第2被圧着物を押圧して、前記第1被圧着物と前記第2被圧着物とを圧着する圧着装置であって、
前記第1押圧部または前記第2押圧部は、ダイラタンシー流体を有する、
圧着装置。
【請求項2】
前記第1押圧部または前記第2押圧部は、第1被圧着物または第2被圧着物を加熱する加熱部を有する、
請求項1に記載の圧着装置。
【請求項3】
前記第1押圧部および前記第2押圧部は、略水平に配され、
前記第1押圧部は、前記ダイラタンシー流体を有し、
前記第2押圧部は、前記第1押圧部より上方に配される、
請求項1または請求項2に記載の圧着装置。
【請求項4】
前記ダイラタンシー流体の上面を覆う被覆シートと、
前記被覆シートを搬送する搬送部と、
前記第1押圧部の端部に配され、前記ダイラタンシー流体が、前記被覆シートとともに搬送されることを抑制する摺り切り部と、
を、さらに備え、
前記第1押圧部は、前記被覆シートを介して、第1被圧着物または第2被圧着物を挟む、
請求項3に記載の圧着装置。
【請求項5】
第1被圧着物および第2被圧着物を準備する段階と、
前記第1被圧着物と前記第2被圧着物との相対的な位置関係を調整する段階と、
前記第1被圧着物および前記第2被圧着物を、第1押圧部および第2押圧部の間に挟み、押圧する段階と、
を備える圧着方法であって、
前記第1押圧部または前記第2押圧部は、ダイラタンシー流体を有する、
圧着方法。
【請求項6】
前記位置関係を調整する段階の後に、
前記第1被圧着物と、異方性導電膜と、前記第2被圧着物とを、この順に配する段階を、さらに備える、
請求項5に記載の圧着方法。
【請求項7】
第1電子部品と、第2電子部品とを備える実装体であって、
前記第1電子部品と前記第2電子部品との相対的な位置関係を調整して、前記第1電子部品および前記第2電子部品を、少なくとも一方がダイラタンシー流体を有する第1押圧部および第2押圧部の間に挟み、押圧して得られた実装体。
【請求項8】
第1電子部品と、異方性導電膜と、第2電子部品とを備える実装体であって、
前記第1電子部品と前記第2電子部品との相対的な位置関係を調整して、前記第1電子部品と、前記異方性導電膜と、前記第2電子部品とをこの順に配して、前記第1電子部品および前記第2電子部品を、少なくとも一方がダイラタンシー流体を有する第1押圧部および第2押圧部の間に挟み、押圧して得られた実装体。
【請求項9】
基板と、前記基板に実装される複数の電子部品とを備える実装体であって、
前記複数の電子部品は、第1電子部品、第2電子部品および第3電子部品を、前記基板の主面に略平行な方向に、この順に有し、
前記基板の主面に略垂直な方向における、前記第1電子部品および第3電子部品と、前記第2電子部品との距離の最大値は、1mm以上であり、
前記基板の主面に略平行な方向における、前記第1電子部品と前記第3電子部品との距離の最小値は、0.8mm以下である、
実装体。
【請求項10】
ダイラタンシー流体と、
前記ダイラタンシー流体を保持する基台と、
を備える、複数の電子部品を圧着して電気的に結合する圧着装置に用いられる押圧板。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【図6】
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【図7】
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【図8】
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【図9】
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【図10】
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【公開番号】特開2010−62504(P2010−62504A)
【公開日】平成22年3月18日(2010.3.18)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2008−242946(P2008−242946)
【出願日】平成20年9月22日(2008.9.22)
【出願人】(000108410)ソニーケミカル&インフォメーションデバイス株式会社 (595)
【Fターム(参考)】