説明

圧粉磁心およびその製造方法

【課題】高周波特性と量産性の両立を図るうえで好適な構成を有する圧粉磁心およびその製造方法を提供する。
【解決手段】磁性粉末と結着剤との混合物を加圧成形して成形体を得る工程を有する圧粉磁心の製造方法であって、前記磁性粉末は、酸化鉄粉末と炭素を含有する粉末との混合粉末を非酸化性雰囲気中で熱処理して得られたものであり、Feを主成分とする金属微粒子と、前記金属微粒子を被覆するグラファイトを備え、前記磁性粉末の平均粒径が2.0〜15.0μmであり、前記加圧成形後の圧粉磁心における前記磁性粉末の占積率を70〜98vol%の範囲とすることを特徴とする。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、ノイズ除去素子、インダクタその他の各種インダクタンス素子に用いられる圧粉磁心に関する。
【背景技術】
【0002】
各種電子機器の高機能・多機能化に伴い大電流に対応した電源が必要とされている。それに使用されるチョークコイル等の巻線部品の磁心に用いられる軟磁性材料においても、大電流でも特性変化の小さいこと、すなわち優れた直流重畳特性と低損失が求められる。これらの要請に対し、従来、軟磁性粒子表面に絶縁被膜処理を施した複合粒子、あるいは軟磁性粒子表面に絶縁体粒子を分散させた複合粒子に、結着剤を混合して圧密化した高密度のバルク形状体等が供されてきた。例えば、軟磁性粒子として、高い飽和磁化を有する磁性金属粒子を用いた圧粉磁心は、高い磁束密度まで飽和しないため、優れた直流重畳特性を示す。一般に金属粒子を用いた圧粉磁心の製造においては、使用する磁性金属粒子が塑性変形しにくいため、圧密化に際して高圧を必要とする。したがって大掛かりな加圧成形装置が必要となるとともに、成形効率も低いものであった。しかも、磁性金属粒子が小さくなればなるほど圧密化に対してより高圧が必要となるため、20〜200μm程度の粒径の大きい磁性金属粒子が用いられるのが一般的である(例えば特許文献1)。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0003】
【特許文献1】特開2001−135514号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
しかしながら、電子機器の高速化に伴い高周波帯域を使用する用途では、透磁率が高周波まで維持されること、すなわち高周波特性に優れることが必要であるが、粒径の大きい磁性金属粒子を用いた圧粉磁心は周波数特性に劣るため不利である。そのため、例えば1MHz以上の高周波用途に対応し、高周波特性と量産性を両立した圧粉磁心を実現することは困難であった。そこで、本発明は、高周波特性と量産性の両立を図るうえで好適な構成を有する圧粉磁心およびその製造方法を提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0005】
本発明の圧粉磁心の製造方法は、磁性粉末と結着剤との混合物を加圧成形して成形体を得る工程を有する圧粉磁心の製造方法であって、前記磁性粉末は、酸化鉄粉末と炭素を含有する粉末との混合粉末を非酸化性雰囲気中で熱処理して得られたものであり、Feを主成分とする金属微粒子と、前記金属微粒子を被覆するグラファイトを備え、前記磁性粉末の平均粒径が2.0〜15.0μmであり、前記加圧成形後の圧粉磁心における前記磁性粉末の占積率を70〜98vol%の範囲とする。かかる熱処理で得られた磁性粉末は、細かい粒子であっても容易に圧密化することができる。かかる磁性粉末を用いた前記構成によれば、高周波特性に優れた圧粉磁心を簡易な方法で製造することができる。なお、Feを主成分とするとは、構成元素のうちFeの含有量が重量換算で最も多いことを意味する。また、平均粒径は湿式のレーザー回折法で測定されるd50を用いる。占積率は、圧粉磁心に占める磁性粉末の体積比率を示すものであり、以下のようにして算出する。磁性粉末の飽和磁化を測定し、磁性粉末における、Feを主成分とする金属微粒子の体積比率Rpを算出する。一方、圧粉磁心の飽和磁化を測定し、圧粉磁心における、Feを主成分とする金属微粒子の体積比率Rcを算出する。Ro=100×Rc/Rpより占積率Roを算出する。
【0006】
また、前記圧粉磁心の製造方法において、前記混合粉末には、さらにCrを含有する粉末が混合され、FeとCr全体のうちCrの割合が7.5質量%以下(但し0を含まず)となるようにFeの一部がCrで置換されていることが好ましい。かかるCrを添加することで、圧粉磁心の透磁率の周波数依存性を改善することができる。
【0007】
さらに、前記圧粉磁心の製造方法において、前記加圧成形の成形圧力が600MPa以下であることことが好ましい。成形圧力を低くすることによって、減衰率を低減することができるとともに、成形装置の簡略化にも寄与する。
【0008】
また、本発明の圧粉磁心の製造方法において、前記成形体を熱処理する工程を有し、前記成形体を熱処理する温度が250℃以下であることが好ましい。成形後の熱処理温度を250℃以下とすることで、Feを主成分とする金属微粒子の酸化を抑制することができる。また、簡易な熱処理装置を用いて低温で熱処理を行うことができるため、製造コストを抑えることができる。
【0009】
本発明の圧粉磁心は、磁性粉末と結着剤とを圧密化してなる圧粉磁心であって、前記磁性粉末はFeを主成分とする金属微粒子と、前記金属微粒子を被覆するグラファイトとを備え、前記圧粉磁心はくびれを持つ粒子とくびれを持たない粒子で構成された複合組織を有し、25℃において印加磁界1.36MA/mで測定したときの飽和磁束密度が1.40〜1.70Tであるとともに、1MHzでの初透磁率をμ、10MHzでの初透磁率μ10としたとき、100×(μ−μ10)/μで表される減衰率αが20%以下であることを特徴とする。かかる構成によれば、量産性と磁気特性に優れた圧粉磁心を提供することができる。
【発明の効果】
【0010】
本発明によれば、磁気特性とコストの両立を図るうえで好適な構成を有する圧粉磁心およびその製造方法を提供することができる。
【図面の簡単な説明】
【0011】
【図1】本発明に係る一実施形態の圧粉磁心の組織を示す図である。
【図2】本発明に係る他の実施形態の圧粉磁心の組織を示す図である。
【図3】本発明に係る他の実施形態の圧粉磁心の組織を示す図である。
【図4】本発明に係る他の実施形態の圧粉磁心の組織を示す図である。
【図5】比較例の圧粉磁心の組織を示す図である。
【図6】比較例の圧粉磁心の組織を示す図である。
【図7】比較例の圧粉磁心の組織を示す図である。
【図8】比較例の圧粉磁心の組織を示す図である。
【図9】磁性粉末の走査電子顕微鏡写真である。
【発明を実施するための形態】
【0012】
以下、本発明について具体的に説明する。本発明の圧粉磁心の製造方法は、磁性粉末と結着剤との混合物を加圧成形して成形体を得る工程を有する圧粉磁心の製造方法に関する。前記磁性粉末は、酸化鉄粉末と炭素を含有する粉末との混合粉末を非酸化性雰囲気中で熱処理して得られたものであり、Feを主成分とする金属微粒子と、前記金属微粒子を被覆するグラファイトを備え、該磁性粉末の平均粒径が2.0〜15.0μmである。さらに、加圧成形後の圧粉磁心における前記磁性粉末の占積率Roを70〜98vol%の範囲とする。以下、各構成について説明する。
【0013】
本発明に係る圧粉磁心は、Feを主成分とする金属微粒子と、前記金属微粒子を被覆するグラファイトとを備える磁性粉末と結着剤とが圧密化されたものである。ここで、Feを主成分とするとは、構成元素のうちFeの含有量が重量換算で最も多いことを意味する。該Feの含有量はEDXで確認すればよい。本発明に係る金属微粒子は、鉄を主成分とするものであればよく、Fe単体の他、CoやNiなどの磁性金属元素、Feとの合金組織中のγ相生成を抑制しうるAl、Be、Cr、Ga、Mo、P、Sb、Si、Sn、Ti、V、W、Znなどの元素、その他の不可避不純物を含有したものでもよい。Feを主成分とする金属微粒子は、強磁性でありさえすればよいが、高飽和磁束密度を得る観点からはFe単体がより好ましい。
【0014】
例えば、金属微粒子にCrを含有させることで圧粉磁心の高周波特性を向上させることができる。具体的には、金属微粒子のFeの一部がCrで置換されており、FeとCr全体のうちCrの割合が7.5質量%以下(但し0を含まず)である構成が好ましい。かかるCrを含有することで、透磁率がより高い周波数まで維持され、圧粉磁心の透磁率の周波数依存性を改善することができる。さらにCrの割合を1.5〜7.5質量%の範囲にすることがより好ましい。透磁率μiが10MHzの条件で評価した値に対して10%低下するときの周波数をf(μi−10%)とすると、Crの割合をかかる範囲にすれば、前記f(μi−10%)を500MHz以上とし、Crを含有しない場合の1.7倍以上に増加させることも可能である。また、金属微粒子のFeの一部をSiで置換し、金属微粒子にSiを含有させても、圧粉磁心のf(μi−10%)を向上させることができる。さらに、FeとSi全体のうちSiの割合が2.0〜10.0質量%の範囲にすることがより好ましい。直流重畳特性を、直流印加磁界の増加により透磁率が1%低下したときの直流印加磁界の大きさH(μ−1%)で表すとき、Siの割合をかかる範囲にすれば、H(μ−1%)を2000A/m以上とし、Siを含有しない場合の1.1倍以上に増加させることも可能である。より好ましくは、前記Siの割合は6.0〜10.0質量%の範囲である。
【0015】
また、前記磁性金属微粒子を被覆するとは、粒子表面全体を、または一部分を被覆していることを意味する。耐酸化性の観点からは、粒子表面全体が被覆されていることがより好ましい。耐酸化性の観点からは、一部分を被覆することにより耐酸化性を向上することができ、粒子表面全体が被覆することで優れた耐酸化性を発現できる。また、粒子表面の一部分を被覆している部分被覆粒子によって、加圧成形後の圧粉磁心における前記磁性粉末の占積率も制御することができる。さらに、圧粉成形体製造の観点からは、一部分をグラファイトで被覆した場合には、粒子の摩擦を低減させることができ、低圧で高密度の成形体を製造することができる。
【0016】
核となる金属微粒子をグラファイトで被覆することによって、圧密化が格段に容易になる。すなわち、細かい磁性粉末を用いながらも低圧で圧密化することが可能となる。そのため加圧による応力が抑えられるとともに、高温での熱処理を省略することができる。
【0017】
上記効果のほかに、金属微粒子を被覆するグラファイトは、磁性金属微粒子間の磁気的結合を弱める働きも有する。グラファイトの被覆の厚さはこれを特に限定するものではないが、磁気的結合を十分弱めるためにはグラファイトの平均厚さは5nm以上であることが好ましい。一方、グラファイトが厚くなりすぎると飽和磁束密度が低下するため、グラファイトの平均厚さは300nm以下が好ましい。なお、グラファイトの平均厚さは、透過電子顕微鏡(TEM)写真または断面が観察できるように加工した粒子のTEM写真から算出し、厚さが不均一な場合は、最大厚さと最小厚さの平均を被覆の厚さとすればよい。これを五つの粒子で測定して、その平均を取って平均厚さを算出する。金属微粒子を被覆するグラファイトは、圧粉磁心の製造工程中およびその後において、核である金属微粒子の酸化抑制にも寄与する。
【0018】
Feを主成分とする金属微粒子と、前記金属微粒子を被覆するグラファイトとを備える磁性粉末は、酸化鉄粉末と炭素を含有する粉末との混合粉末を非酸化性雰囲気中で熱処理して得られた磁性粉末を用いる。かかる磁性粉末について、以下さらに詳述する。酸化鉄粉末と炭素を含有する粉末とを混合し、混合後の粉末を非酸化性雰囲気中で熱処理すると、Feを主成分とする金属微粒子の周りがグラファイトで被覆された粉末が得られる。酸化鉄がFeに還元されるとともに、その表面にグラファイトの被覆が形成されるので、他の製法では回避が困難な、Feの表面(Feとグラファイトの界面の部分)の酸化を防ぐことができる。この場合、グラファイト被覆は、その六方晶のc面((002)面)が、Feを主成分とする核(磁性金属微粒子)の表面に平行になるように積層した形態を有する。出発原料の構成元素であるFeは、グラファイト層形成の触媒の役割を果たしていると考えられる。また、該磁性粉末は熱処理後に徐冷して得られることから、アトマイズ粉のように粉末作製の際に熱応力や欠陥が導入されることを抑えることができる。以上記載のように、酸化鉄粉末と炭素を含有する粉末との混合粉末を非酸化性雰囲気中で熱処理して得られた磁性粉末は本発明の圧粉磁心の製造方法に特に好適なものである。
【0019】
炭素を含有する粉末は、グラファイトやカーボンブラック、天然黒鉛等の炭素粉が適しているが、炭素を含む化合物であってもよい。すなわち石炭や活性炭、コークスや脂肪酸、ポリビニルアルコールなどの高分子、B−C化合物、金属を含む炭化物であってもよい。ただし、被覆の炭素純度を高くするためには、炭素粉を用いるとよい。酸化鉄粉末はFeやFe等を用いることができる。酸化鉄の粉末の平均粒径を変化させることによって、得られる磁性粉末の平均粒径を制御することができる。酸化鉄粉末の平均粒径を大きくすると、得られる磁性粉末の平均粒径も大きくなる。酸化鉄の粉末の平均粒径は0.01〜3μmが好ましい。平均粒径0.01μm未満の粉末は作製困難であり実用的でない。平均粒径が3μmを越える酸化鉄の製造は困難であり、実用的ではない。また、粒の中心部まで十分に還元しにくくなる。
【0020】
なお、Fe以外の元素を含有する場合は、それらの元素は、単体、酸化物粉その他化合物粉の形で酸化鉄粉等と混合して熱処理を行えばよい。例えば上述のように金属微粒子にCrを含有させる場合は、混合粉末には、酸化鉄粉末と炭素を含有する粉末に加えて、さらにCrを含有する粉末が混合され、FeとCr全体のうちCrの割合が7.5質量%以下(但し0を含まず)となるようにFeの一部がCrで置換されればよい。Crを含有する粉末は、Cr単体の粉末、CrN、CrCを用いればよい。また、例えば上述のように金属微粒子にSiを含有させる場合は、混合粉末には、酸化鉄粉末と炭素を含有する粉末に加えて、さらにSiを含有する粉末が混合され、FeとSi全体のうちSiの割合が所定の割合となるようにFeの一部がSiで置換されればよい。Siを含有する粉末は、Si単体の粉末、SiC、SiNなどを用いればよい。
【0021】
また、炭素を含有する粉末の平均粒径は0.01〜100μmが好ましく、さらには0.1〜50μmが好ましい。0.1μm未満の平均粒径の炭素粉末は高価であり実用的でない。また、平均粒径が100μmを越えると混合粉末中での分散に偏りが生じ、最終的に金属微粒子を均一に被覆することが困難になる。酸化鉄粉末と炭素を含有する粉末との混合比は、炭素を含有する粉末が重量比で全体の20〜95%の範囲となることが好ましい。炭素を含有する粉末の配合比が20%未満であると、炭素が不足することにより還元反応が不十分になりやすい。また炭素を含有する粉末の配合比が95%を越えると還元される金属の体積率が極端に小さくなり実用的ではない。また、グラファイト被覆を有する磁性粉末の平均粒径は、炭素量が多いと小さくなる。
【0022】
酸化鉄粉末と炭素を含有する粉末の混合には、湿式または乾式のボールミルやビーズミル、V型混合機、粉砕機(例えば、ライカイ機のように粉砕と混合を兼ねる装置)、乳鉢などを使用する。均一な混合状態を実現するためには、水や有機溶媒を使用した湿式の混合方法を採用することが好ましい。混合粉末を、例えばアルミナ、窒化ほう素、黒鉛等の耐熱ルツボに所定量を充填して所定の条件で加熱処理することにより、Feを主成分とした金属微粒子がグラファイトで被覆された磁性粉末が得られる。熱処理時の雰囲気には、非酸化性雰囲気とする。非酸化性雰囲気としては、例えばアルゴンガス等の不活性ガス、窒素ガス、窒素を主要成分とした不活性ガスと窒素との混合ガスなどを用いることができる。熱処理温度は600℃〜1600℃が好ましく、さらに好ましくは900℃〜1400℃の範囲が好ましい。特に好ましくは、900℃〜1150℃の範囲である。熱処理温度を低くすると得られる磁性粉末の粒径は大きくなる。600℃未満では反応自体が進行しない。900℃未満では反応が完了するまでの所要時間が長くなる。また、非酸化性雰囲気中で1400℃を越えると炉部材として使用している酸化物セラミックスの分解により酸素が放出されることが懸念されると同時に、例えばアルミナ製ルツボが短期間で破損する場合がある。1600℃を越えると、ルツボのみならず設備自体に耐熱部材の使用が不可欠になり、高コストとなり工業化に適さない。熱処理は管状芯を有する固定静止型電気炉、ロータリーキルンなどのように炉心管が熱処理時に動的に動く機能を有する電気炉、流動層などのように粉体自体が飛散された状態で熱を印加される機構を有する装置などを用いることができる。
【0023】
金属微粒子がグラファイトで被覆されている形態を有する磁性粉末は圧密化が容易なので、従来の圧粉磁心に比べて細かい磁性粉末を用いて圧粉磁心を構成することができる。磁性粉末が大きすぎると周波数に対する透磁率の減衰率およびロスが大きくなり、小さすぎると取り扱いが困難になる他、圧密化しにくくなるとともに透磁率が低下する。なお、本願では、前記減衰率として、1MHzでの初透磁率をμ、10MHzでの初透磁率μ10としたときの、100×(μ−μ10)/μで表される減衰率αを用いる。20%以下の減衰率αを得るためには、圧密化前の磁性粉末の状態で、磁性粉末の平均粒径は2.0μm〜15.0μmであることが好ましい。2%以下の減衰率αを得るためには、磁性粉末の平均粒径は、2.0μm〜8.0μmがより好ましい。なお、磁性粉末の平均粒径は、湿式レーザー回折型粒径分布測定器で測定したd50の値である。磁性粉末表面を被覆しているグラファイトは疎水性であるため、水溶液を分散媒として使用すると粒子が凝集してしまう。そのため、分散媒としては、イソプロピルアルコール、エタノールやメタノールといったアルコールを使用することが好ましい。また、鉄を主成分とし、グラファイトで被覆された核(金属微粒子)の部分の粒径は、0.01μm〜50μmの範囲に分布していることが好ましい。0.01μm未満の核があると超常磁性の発現により飽和磁化等の磁気特性の低下を招くようになる。50μm超の核があると渦電流損失が増加し、コアロスが増加しやすい。また、核の部分の粒径が大きくなりすぎると、グラファイトの被覆の形成が不十分になる場合がある。なお、Feを主成分とする核(金属微粒子)の部分の粒径は、SEMによる反射電子像から直接的に測定することができる。該SEM像における最大直径をもって、該核部分の粒子径とすればよい。
【0024】
本発明の圧粉磁心の製造方法では、磁性粉末と結着剤との混合物を加圧成形する工程を有するが、本発明で特定する部分以外は、従来からの製造方法を適用することができる。結着剤としては、例えば、250℃以下で硬化する熱硬化性樹脂等を用いることができる。、以下、結着剤として樹脂を用いる場合を例に説明する。加圧成形に供する前に磁性粉末と樹脂を混合する。樹脂の混合は、例えば樹脂を有機溶剤に溶解し、これと磁性粉末とを混合し、その後混合物を乾燥し、溶媒を揮発させることにより行う。樹脂は熱硬化性樹脂を用いることができる。この場合において、成形体強度向上に寄与し、絶縁性にも富むエポキシ樹脂を用いることが好ましい。樹脂が混合された磁性粉末は、プレス機を用いて加圧成形され、成形体が得られる。本発明に係る磁性粉末は圧密化が容易であるため、低い成形圧で高密度を得ることができる。かかる成形圧や結着剤である樹脂の量を制御して、加圧成形後の圧粉磁心における磁性粉末の占積率Roを70〜98vol%の範囲とする。占積率Roが70vol%未満であると圧粉磁心の飽和磁束密度が低くなるとともに、圧環強度が60未満程度に低下してしまう。一方、占積率Roが98vol%を超えると減衰率αが20%を超えるようになる。なお、占積率Roは、以下のようにして算出する。磁性粉末の飽和磁化を測定し、磁性粉末における、Feを主成分とする金属微粒子の体積比率Rpを算出する。一方、圧粉磁心の飽和磁化を測定し、圧粉磁心における、Feを主成分とする金属微粒子の体積比率Rcを算出する。Ro=100×Rc/Rpより占積率Roを算出する。飽和磁化はVSM(試料振動型磁力計)を用い、1.36MA/mの印加磁界で測定した値を用いる。
【0025】
樹脂の混合量が多すぎると占積率Roが低くなり、透磁率も低下する。逆に、少なすぎると成形体強度が低くなり、絶縁性も低下する。したがって、磁性粉末100重量部に対し、樹脂の量は0.1〜4.0重量部の範囲とすることが好ましい。成形圧は、前記占積率になるように制御すればよい。成形圧を600MPa以下にすることが特に好ましい。簡易な成形機で成形することができるとともに、例えば1MHz、10mTにおけるロスを400kW/cm以下に抑えることができるからである。成形圧の下限は、所望の最大磁束密度が得られる範囲であれば、これを特に限定するものではないが、高密度の圧粉磁心を得る観点からは300MPa以上であることが好ましい。なお、樹脂の他に粒子の流動性を高めるために、潤滑剤を混合してもよい。こうすることで、十分な特性を備える圧粉磁心が、より低い成形圧で得ることができる。加圧成形では、磁性粉末だけを成形してもよいし、コイルと一体で成形してもよい。上述のように本願発明に係る磁性粉末は低圧で圧密化が可能であるため、成形圧を低くすることによって、巻線内蔵(メタルコンポジット)型インダクタを製造することも可能となる。
【0026】
得られた圧密体は結着剤の硬化や歪み除去のために熱処理を施して、圧粉磁心が得られる。かかる熱処理は省略することも可能である。磁性粉末として、酸化鉄粉末と炭素を含有する粉末との混合粉末を非酸化性雰囲気中で熱処理して得られたものを用いているので、加圧成形後の圧密体を熱処理する温度は、前記混合粉末を熱処理する温度よりも低くする。加圧成形後の熱処理温度が混合粉末の熱処理温度以上となるとグラファイト被覆が損傷するからである。さらに、グラファイトの被覆によっても完全には酸化を抑制することは困難であるので、酸化抑制の観点からは、加圧成形後の熱処理温度は250℃以下であることが好ましい。ここでいう加圧成形後の熱処理は、残留応力や歪み除去を目的とする熱処理、熱硬化樹脂を使用した場合の樹脂硬化処理(キュア)等である。かかる熱処理温度は樹脂硬化の目的であれば樹脂硬化温度以上とする。
【0027】
次に、本発明に係る圧粉磁心について、さらに説明する。本発明に係る圧粉磁心は、磁性粉末と結着剤とを圧密化してなる圧粉磁心であって、上述のように該磁性粉末はFeを主成分とする金属微粒子と、前記金属微粒子を被覆するグラファイトとを備える。さらに、かかる圧粉磁心はくびれを持つ粒子とくびれを持たない粒子で構成された複合組織を有する。くびれを持つ粒子とは、圧粉磁心の一面で観察して、異形状をなしており、粒子の端部以外で、他の部分よりも細くなっている部分を有する粒子である。通常の粒子は、くびれを持たない、略球状の形状である。本発明に係る圧粉磁心では、かかるくびれを持つ粒子とくびれを持たない粒子で構成された複合組織を有する。くびれを持つ粒子とくびれを持たない粒子で圧粉磁心を構成すると成形性が高い。また、くびれを持つ粒子は塑性変形しやすく、粒子同士の結合力が高まるため、高強度の圧粉磁心が得られる。したがって、グラファイト被覆を有するとともに、前記複合組織を有する圧粉磁心は、必ずしも高い成形圧を必要としない。
【0028】
かかる粒子は、上述の、酸化鉄粉末と炭素を含有する粉末との混合粉末を非酸化性雰囲気中で熱処理して得られた磁性粉末であって、平均粒径が2.0μm以上のものを用いることによって実現できる。かかる磁性粉末には前記くびれを持つ粒子が含まれる。平均粒径が小さい磁性粉末では、くびれを持つ粒子が生成しにくい。上記複合組織を有する圧粉磁心を採用することで、占積率を上げて飽和磁束密度の向上を図ることができる。ただし、これを上げすぎると減衰率αやロスが増加してしまう。そこで、25℃において印加磁界1.36MA/mで測定したときの飽和磁束密度を1.40〜1.70Tとし、1MHzでの初透磁率をμ、10MHzでの初透磁率μ10としたとき、100×(μ−μ10)/μで表される減衰率αを20%以下とすることにより、周波数特性、飽和磁束密度等の磁気特性のバランスに優れた圧粉磁心が提供される。飽和磁束密度が1.40T未満となると高飽和磁束密度である圧粉磁心の特徴が失われる。一方、飽和磁束密度が1.70Tを超えると減衰率αが増加し20%を超えるようになってしまう。また、ロスも増加し、400kW/cmを超えるようになってしまう。
【実施例】
【0029】
以下、実施例により本発明を説明する。ただし、これら実施例により本発明が限定されるものではない。
【0030】
(実施例1)
平均粒径0.61μmまたは0.76μmのα−Fe粉と平均粒径0.02μmのカーボンブラック粉を秤量し、ボールミルにて1000分間混合した。なお、α−Fe粉とカーボンブラック粉を合わせた全体に対するカーボンブラック粉の割合を17.5〜25wt%の範囲で変化させた。混合粉の合計は50gとした。溶媒はIPAを使用した。得られたスラリーを乾燥し、乾燥後の混合粉は、管状炉内で以下の条件で熱処理した。熱処理の雰囲気は、流量2l/minの窒素ガス気流中とした。室温から3℃/minの速度で昇温した後、900℃〜1100℃の範囲で設定した熱処理温度で2時間保持して室温まで3℃/minの速度で炉冷した。処理後の試料5gをIPA50ml中で10分間超音波照射し、磁石で磁気分離する操作を上澄みが透明になるまで繰り返した。得られた粉末に対してCuKα線を用いてX線回折を行い、その回折パターンからFeとグラファイトの生成を確認した。得られた磁性粉末について、磁気特性の評価を行なった。磁気特性は、VSM(試料振動型磁力計)を用いて1.36MA/mの印加磁界で測定した。また、湿式のレーザー回折法(堀場製作所製LA−920を使用)で平均粒径d50を測定した。分散溶媒としてはイソプロピルアルコールを使用した。結果を表1に示す。また、比較のために用いたカルボニル鉄粉(BASF社製 グレードHQおよびOM)の評価結果も併せて表1に示した。
【0031】
【表1】

【0032】
次に、上記で得られたNo1、No3〜No9の磁性粉末を用いて以下のようにして圧粉磁心を作製した。結着剤としてエポキシ樹脂((株)ソマール社製 EPX−6136)を用いた。エポキシ樹脂量の割合は、磁性粉末100重量部に対して4.0重量部とした。秤量した樹脂をアセトンに溶解し、磁性粉末と混合した。混合物を乾燥し、アセトンを揮発させた。混合物を分級した後、600MPaの条件で加圧成形して成形体を得た。得られた成形体は大気中で、200℃の温度で1時間熱処理した後、炉冷して、圧粉磁心を得た。得られた圧粉磁心の室温(25℃)における磁気特性、圧環強度を評価した。占積率RoはRc/Rp×100から算出した。ここで、Feを主成分とする金属微粒子の体積比率Rpは表1に示す磁性粉末の飽和磁化から算出した。一方、圧粉磁心の飽和磁化を測定し、圧粉磁心における、Feを主成分とする金属微粒子の体積比率Rcを算出した。初透磁率μiはインピーダンス/ゲイン・フェーズアナライザ(アジレント社製、4194A)を用いて、100kHzの条件で評価した。また、最大磁束密度Bmおよび保磁力HcはVSM(東英工業社製)を用いて、1.36MA/mの条件で評価した。ロスはB−Hアナライザ(岩崎通信機社製、SY−8232)を用いて、1MHz、10mTの条件で評価した。圧環強度の評価にはオートグラフ(島津製作所製、AG−50NG)を使用し、外径7.2mm、内径4.0mmのトロイダル状試料を用いた。試料に直径方向に荷重を加えてコアが割れたときの試験力を測定し、圧環強度=試験力×[外径―(外径―内径)/2]/[厚み×{(外径―内径)/2}]の式から圧環強度を算出した。結果を表2に示す。
【0033】
【表2】

【0034】
次に、表1に示す平均粒径3.3μmの磁性粉末を用い、成形圧を300MPa、600MPa、1000MPaと変化させて圧粉磁心を作製し、磁気特性を評価した。結果を表3に示す。
【0035】
【表3】

【0036】
表1に示すように、平均粒径が3.0〜15.0μmの範囲内の磁性粉末を用い、占積率Roを70〜98vol%の範囲としたA〜Dの圧粉磁心は減衰率が20%以下となり、平均粒径が15.0μmを超えるEおよびFの圧粉磁心に比べて、透磁率の周波数依存性が優れることがわかる。また、A〜Dの圧粉磁心はロスも400kW/cm以下であり、ロスにおいても優れることがわかる。特に、平均粒径が3.0〜8.0μmの範囲内の磁性粉末を用いたA〜Cの圧粉磁心は2%以下の優れた減衰率を示した。なお、A〜Dの圧粉磁心はいずれも1.40〜1.70Tの範囲の最大磁束密度と、20以上の初透磁率を示した。また、A〜Dの圧粉磁心はいずれも60MPa以上の圧環強度を有する。特に、平均粒径7.0μm以上の磁性粉末を用いた圧粉磁心は100MPa以上の高い圧環強度を示した。一方、カルボニル鉄を用いたEおよびFの圧粉磁心では、成形体密度が上がらないため、占積率は57%と低く、最大磁束密度、初透磁率および圧環強度がいずれも低いものとなった。
【0037】
図1〜図8にA〜Hの圧粉磁心の表面の走査電子顕微鏡(SEM)写真を示す。図1に示すように、平均粒径3.0μmの磁性粉末を用いた圧粉磁心において、くびれを持つ粒子1が観察されており、くびれを持つ粒子1とくびれを持たない粒子2で構成された複合組織であることがわかる。かかるくびれの部分に他の粒子が入り込んでいることがわかる。図1〜図6から明らかなように、使用した磁性粉末の粒径が大きくなるにしたがって、くびれを持つ粒子の割合が増加している。A〜Hの各圧粉磁心とも、最大径が6μmを超える粗い粒子における個数割合では、くびれを持つ粒子の方が多い。表2のA〜Hの圧粉磁心において、占積率はあまり変化していないが、圧環強度が大きく変化した。これは磁性粉末の平均粒径が大きくなるにしたがって、くびれを持つ粒子の割合が増えていることに起因すると考えられる。一方、比較例のカルボニル鉄を用いた圧粉磁心GおよびHの組織では、くびれを持つ粒子は観察されなかった。
【0038】
また、表2に示すように、成形圧が高くなるにしたがって占積率が増加した。占積率が98%を超えるKの圧粉磁心では、最大磁束密度Bmが1.70Tを超え、減衰率が20%を大きく超えて40%近くになった。また、ロスも600kW/cm近い高い値となった。成形圧を600MPa以下としたI、Jの圧粉磁心では減衰率が抑えられ、20%以下の減衰率が得られた。成形圧を600MPa以下としたI、Jの圧粉磁心では、最大磁束密度Bmが1.40〜1.70Tの範囲であり、初透磁率も20以上であった。本発明に係る磁性粉末を用いると300MPaという低い成形圧でも十分な圧粉磁心の特性を示した。また、成形圧を300〜1000MPaまで変化させても保磁力は変化せず、熱処理温度が低いにもかかわらず、成形による歪みも少ないことがわかる。
【0039】
図9には上記実施例で用いた磁性粉末の走査電子顕微鏡(SEM)写真を示す。写真中央の粒子は、表面にグラファイトに被覆された部分3(図中の黒色部分)とグラファイトに被覆されていない部分4(図中の白色部分)が形成された、グラファイト部分被覆粒子である。図9に示すグラファイト部分被覆粒子は熱処理の温度を低くすることによって得ることができる。かかるグラファイト部分被覆粒子を含む磁性粉末を用いて、加圧成形後の圧粉磁心における前記磁性粉末の占積率を制御することができる。一部分をグラファイトで被覆した場合には、粒子の摩擦を低減させることができ、低圧で高密度の成形体を製造することができる点で優れる。
【0040】
(実施例2)
平均粒径0.61μmのα−Fe粉と平均粒径0.02μmのカーボンブラック粉と、平均粒径0.05μmのCr粉を、Cr含有量がそれぞれ1.5質量%、3.0質量%、4.5質量%、6.0質量%、7.5質量%になるように秤量し、実施例1と同様にして磁性粉末を得た。但し、熱処理温度は1100℃とした。得られた粉末に対してCuKα線を用いてX線回折を行い、その回折パターンからFeとグラファイトの生成を確認した。得られた磁性粉末について、磁気特性の評価を行なった。磁気特性は、VSM(試料振動型磁力計)を用いて1.36MA/mの印加磁界で測定した。また、湿式のレーザー回折法(堀場製作所製LA−920を使用)で測定した平均粒径d50はいずれも2μmであった。また、Cr粉の代りに平均粒径0.01μmのSiCを用い、Si含有量がそれぞれ2.0質量%、4.0質量%、6.0質量%、10.0質量%になるように秤量し、同様にして磁性粉末を得た。
【0041】
次に、上記で得られた磁性粉末を用いて以下のようにして圧粉磁心を作製した。結着剤としてエポキシ樹脂((株)ソマール社製 E−530)を用いた。磁性粉末100重量部に対するエポキシ樹脂量の割合は4.0重量部とした。秤量した樹脂をアセトンに溶解し、磁性粉末と混合した。混合物を乾燥し、アセトンを揮発させた。混合物を分級した後、300MPaの条件で加圧成形して成形体を得た。得られた成形体は、大気中、150℃の温度で1時間熱処理した後、炉冷して、圧粉磁心を得た。得られた圧粉磁心の室温(25℃)における周波数特性と直流重畳特性を評価した。占積率Roは実施例1と同様にして算出した。初透磁率μiはインピーダンス/マテリアルアナライザ(アジレント社製、4291B)を用いて、10MHzの条件で評価した。周波数特性は、透磁率μiが10MHzの条件で評価した値に対して10%低下するときの周波数f(μi−10%)で評価した。直流重畳特性はプレシジョンLCRメータ(アジレント社製、4284A)を用い、1MHz、重畳電流値0〜20Aの条件で重畳電流に対するインダクタンスの変化を測定した後、試料形状よりインダクタンスを透磁率に、重畳電流値を印加磁界(A/m)にそれぞれ変換して評価した。直流印加磁界の増加により、透磁率が直流磁界印加を印加しない状態での値から1%低下したときの直流印加磁界の大きさH(μ−1%)を直流重畳特性の評価に用いた。評価結果を表4に示す。
【0042】
【表4】

【0043】
表4から明らかなように磁性粉末に7.5質量%以下のCrを含有させることによって周波数特性が向上することがわかる。圧粉磁心M〜Qではいずれもf(μi−10%)が500MHz以上であり、圧粉磁心Lに比べて優れた周波数特性を示した。また、圧粉磁心M〜Qは、透磁率が1%低下するときの印加磁界H(μ−1%)がいずれも2000A/m以上であり、圧粉磁心Lに比べて高く、直流重畳特性においても優れる。また、Crを置換した磁性分末に対してXPS分析を行ったところ、Crは酸素と結合した形態で、粒子内部よりも粒子表面近傍に多く存在していることが確認された。かかる構成が周波数特性および直流重畳特性の向上に寄与しているものと考えられる。
【0044】
また、表4において、磁性粉末にSiを含有させることによっても周波数特性が向上することがわかる。特に、Siを6.0〜10.0質量%置換した圧粉磁心T、Uではf(μi−10%)が700MHz以上であり、優れた周波数特性を示した。また、Siを2〜10質量%置換した粉末を用いた圧粉磁心R〜Uでは、H(μ−1%)がいずれも2000A/m以上であり、圧粉磁心Lに比べて高く、直流重畳特性においても優れる。特に、Siを6.0〜10.0質量%置換した圧粉磁心T、Uでは3000A/m以上が得られている。但し、Siを多く置換しすぎるとRoが低下し、70%を切るようになる。したがって、Siを置換する場合は、高いRo、高い飽和磁束密度が必要とされない場合に用いることが好ましい。
【符号の説明】
【0045】
1:くびれを持つ粒子 2:くびれを持たない粒子
3:グラファイトに被覆された部分
4:グラファイトに被覆されていない部分

【特許請求の範囲】
【請求項1】
磁性粉末と結着剤との混合物を加圧成形して成形体を得る工程を有する圧粉磁心の製造方法であって、
前記磁性粉末は、酸化鉄粉末と炭素を含有する粉末との混合粉末を非酸化性雰囲気中で熱処理して得られたものであり、Feを主成分とする金属微粒子と、前記金属微粒子を被覆するグラファイトを備え、
前記磁性粉末の平均粒径が2.0〜15.0μmであり、
前記加圧成形後の圧粉磁心における前記磁性粉末の占積率を70〜98vol%の範囲とすることを特徴とする圧粉磁心の製造方法。
【請求項2】
前記混合粉末には、さらにCrを含有する粉末が混合され、FeとCr全体のうちCrの割合が7.5質量%以下(但し0を含まず)となるようにFeの一部がCrで置換されていることを特徴とする請求項1に記載の圧粉磁心の製造方法。
【請求項3】
前記加圧成形の成形圧力が600MPa以下であることを特徴とする請求項1または2に記載の圧粉磁心の製造方法。
【請求項4】
前記成形体を熱処理する工程を有し、
前記成形体を熱処理する温度が250℃以下であることを特徴とする請求項1〜3のいずれかに記載の圧粉磁心の製造方法。
【請求項5】
磁性粉末と結着剤とを圧密化してなる圧粉磁心であって、
前記磁性粉末はFeを主成分とする金属微粒子と、前記金属微粒子を被覆するグラファイトとを備え、
前記圧粉磁心はくびれを持つ粒子とくびれを持たない粒子で構成された複合組織を有し、
25℃において印加磁界1.36MA/mで測定したときの飽和磁束密度が1.40〜1.70Tであるとともに、
1MHzでの初透磁率をμ、10MHzでの初透磁率μ10としたとき、100×(μ−μ10)/μで表される減衰率が20%以下であることを特徴とする圧粉磁心。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【図6】
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【図7】
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【図8】
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【図9】
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【公開番号】特開2009−272615(P2009−272615A)
【公開日】平成21年11月19日(2009.11.19)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2009−53833(P2009−53833)
【出願日】平成21年3月6日(2009.3.6)
【出願人】(000005083)日立金属株式会社 (2,051)
【Fターム(参考)】