説明

圧縮膨張タービンユニット

【課題】 空気サイクル冷凍冷却システムを適用したコンテナ用冷凍ユニットに用いる場合でも、低速回転で必要な冷凍能力が得られ、効率の向上が可能な圧縮膨張タービンユニットを提供する。
【解決手段】 この圧縮膨張タービンユニット5は、コンプレッサ6および膨張タービン7を備える。コンプレッサ6のインペラ6aの主軸13と膨張タービン7のインペラ7aの主軸14は平行に配置する。これら各主軸13,14はそれぞれ軸受15〜18により支持する。両主軸13,14の間には、回転を伝達する伝達機構22と、この伝達機構を介して前記コンプレッサ6および膨張タービン7のインペラ6a,7aを駆動するモータ26とを配置する。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
この発明は、空気サイクル冷凍冷却システムに適用される圧縮膨張タービンユニットに関する。
【背景技術】
【0002】
空気サイクル冷凍冷却システムは、冷媒として空気を用いるため、フロンやアンモニアガス等を用いる場合に比べてエネルギー効率が不足するが、環境保護の面では好ましい。また、冷凍倉庫等のように、冷媒空気を直接に吹き込むことができる施設では、庫内ファンやデフロストの省略等によってトータルコストを引下げられる可能性があり、このような用途で空気サイクル冷凍冷却システムが提案されている(例えば特許文献1)。
【0003】
また、−30℃〜−60℃のディープ・コール領域では、空気冷却の理論効率は、フロンやアンモニアガスと同等以上になることが知られている。ただし、上記空気冷却の理論効率を得ることは、最適に設計された周辺装置があって、始めて成り立つとも述べられている。周辺装置は、圧縮機や膨張タービン等である。
圧縮機,膨張タービンとしては、コンプレッサ翼車および膨張タービン翼車を共通の主軸に取付けたタービンユニットが用いられている(特許文献1)。
【0004】
なお、プロセスガスを処理するタービン・コンプレッサとしては、主軸の一端にタービン翼車、他端にコンプレッサ翼車を取付け、前記主軸を電磁石の電流で制御するジャーナルおよびスラスト軸受で支承した磁気軸受式タービン・コンプレッサが提案されている(特許文献2)。
また、ガスタービンエンジンにおける提案ではあるが、主軸支持用の転がり軸受に作用するスラスト荷重が軸受寿命の短縮を招くことを回避するため、転がり軸受に作用するスラスト荷重をスラスト磁気軸受により低減することが提案されている(特許文献3)。
【特許文献1】特許第2623202号公報
【特許文献2】特開平7−91760号公報
【特許文献3】特開平8−261237公報
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0005】
上記のように、空気サイクル冷凍冷却システムとして、ディープ・コール領域で高効率となる空気冷却の理論効率を得るためには、最適に設計された圧縮機や膨張タービンが必要となる。
圧縮機,膨張タービンとしては、上記のようにコンプレッサ翼車および膨張タービン翼車を共通の主軸に取付けたタービンユニットが用いられている。このタービンユニットは、膨張タービンの生じる動力によりコンプレッサ翼車を駆動できることで空気サイクル冷凍機の効率を向上させている。
【0006】
しかし、コンテナ用冷凍ユニットに空気サイクル冷凍冷却システムを適用する場合、コンテナ用冷凍ユニットの奥行き寸法が420mm以下に制限されていることから、上記のようにコンプレッサ翼車および膨張タービン翼車を共通の主軸に取付けたタービンユニットを用いるものとすると、その主軸を奥行き方向に配置することが困難である。この場合、コンプレッサ翼車および膨張タービン翼車は小型のものに限られるから、満足する冷凍能力を得ようとすると主軸を高速回転させる必要がある。その結果、軸受損、風損、モータの鉄損が大きくなり、効率の向上が困難となる。
【0007】
この発明の目的は、空気サイクル冷凍冷却システムを適用したコンテナ用冷凍ユニットに用いる場合でも、低速回転で必要な冷凍能力が得られ、効率の向上が可能な圧縮膨張タービンユニットを提供することである。
【課題を解決するための手段】
【0008】
この発明の圧縮膨張タービンユニットは、コンプレッサおよび膨張タービンを備え、上記コンプレッサのインペラの主軸と上記膨張タービンのインペラの主軸とを平行に配置し、これら各主軸をそれぞれ軸受により支持し、両主軸の間に、回転を伝達する伝達機構と、この伝達機構を介して前記コンプレッサおよび膨張タービンのインペラを駆動するモータとを配置したことを特徴とする。
この構成によると、コンプレッサのインペラの主軸と膨張タービンのインペラの主軸とを平行に配置し、これら各主軸をそれぞれ軸受により支持しているので、空気サイクル冷凍冷却システムを適用したコンテナ用冷凍ユニットに用いる場合でも、前記主軸をコンテナ用冷凍ユニットの奥行き方向に配置することができる。これにより、コンプレッサおよび膨張タービンのインペラとして大径のものを採用できることから、低速回転で運転しても必要な圧縮比および流量が得られ、小径インペラの場合よりも断熱効率向上が容易で、満足する冷凍能力を得ることができる。低速回転での運転であると、騒音も小さくなり,風損、軸受損、モータ鉄損を小さくできる。
また、両主軸の間に、回転を伝達する例えば歯車列からなる伝達機構と、この伝達機構を介して前記コンプレッサおよび膨張タービンのインペラを駆動するモータとを配置しているので、前記歯車列の増速比などの選択によって各主軸の回転数を任意に設定できる。そのため、コンプレッサおよび膨張タービンの効率が最適となる回転数で各主軸を回転させることができる。また、モータとして低速汎用のモータを使用できるのでコストを低減できる。冷凍冷却も容易となる。その結果、空気サイクル冷凍冷却システムを適用したコンテナ用冷凍ユニットに用いる場合でも、低速回転で必要な冷凍能力が得られ、効率の向上が可能である。
【0009】
この発明において、前記各主軸にインペラの背面側で圧力バランス用板を装着し、この圧力バランス用板の両面にそれぞれ面する空気室を設け、前記圧力バランス用板の片面側の空気室には、インペラの入口空気、他の片面側の空気室には前記インペラの出口空気をそれぞれ導入させる通気路を設けても良い。この構成の場合、インペラの前面と背面の間の圧力差に起因して各主軸に働くスラスト力を補償することができる。その結果、各主軸に過大なアキシアル負荷が負荷されるのを回避できる。
【0010】
この発明において、前記インペラの主軸を支持する軸受として、前記インペラ側に位置する前側軸受と、前記圧力バランス用板側に位置する後側軸受とを設け、前記インペラの背面と前側軸受との間、および前記圧力バランス用板と後側軸受との間を、非接触シールによって隔離しても良い。この構成の場合、インペラの出口空気や入口空気が軸受を通じて空気室に導入されるのを非接触シールで阻止できるので、軸受内の潤滑剤が空気の流れによって漏出するのを防止できる。
【0011】
この発明において、前記軸受にグリース潤滑のアンギュラ玉軸受を用いても良い。グリース潤滑であると、油潤滑と異なり、軸受内の潤滑剤が空気の流れによって漏出するのを確実に防止できる。
【0012】
この発明において、前記コンプレッサおよび膨張タービンが遠心式であっても良い。この発明の圧縮膨張タービンユニットは、上記各タービンが遠心式である場合に、その各効果がより効果的に発揮される。
【0013】
この発明の空気サイクル冷凍冷却システムは、上記構成の圧縮膨張タービンユニットを備えた空気サイクル冷凍冷却システムであって、流入空気に対して、前記圧縮膨張タービンユニットのコンプレッサによる圧縮、他の熱交換器による冷却、前記圧縮膨張タービンユニットの膨張タービンによる断熱膨張、もしくは予圧縮手段による圧縮、熱交換器による冷却、前記圧縮膨張タービンユニットのコンプレッサによる圧縮、他の熱交換器による冷却、前記圧縮膨張タービンユニットの膨張タービンによる断熱膨張、を順次行うものである。
この構成によると、圧縮膨張タービンユニットにおいて、各インペラの主軸の安定した高速回転が得られ、かつ軸受の長期耐久性の向上、寿命の向上が得られることから、圧縮膨張タービンユニットの全体として、しいては空気サイクル冷凍冷却システムの全体としても信頼性が向上する。また、空気サイクル冷凍冷却システムのネックとなっている圧縮膨張タービンユニットの主軸軸受の安定した高速回転、長期耐久性、信頼性が向上することから、空気サイクル冷凍冷却システムの実用化が可能となる。
【発明の効果】
【0014】
この発明の圧縮膨張タービンユニットは、コンプレッサおよび膨張タービンを備え、上記コンプレッサのインペラの主軸と膨張タービンのインペラの主軸とを平行に配置し、これら各主軸をそれぞれ軸受により支持し、両主軸の間に、回転を伝達する伝達機構と、この伝達機構を介して前記コンプレッサおよび膨張タービンのインペラを駆動するモータとを配置したため、空気サイクル冷凍冷却システムを適用したコンテナ用冷凍ユニットに用いる場合でも、低速回転で必要な冷凍能力が得られ、効率の向上が可能となる。
この発明の空気サイクル冷凍冷却システムは、この発明の圧縮膨張タービンユニットを備えた空気サイクル冷凍冷却システムであって、流入空気に対して、前記圧縮膨張タービンユニットのコンプレッサによる圧縮、他の熱交換器による冷却、前記圧縮膨張タービンユニットの膨張タービンによる断熱膨張、もしくは予圧縮手段による圧縮、熱交換器による冷却、前記圧縮膨張タービンユニットのコンプレッサによる圧縮、他の熱交換器による冷却、前記圧縮膨張タービンユニットの膨張タービンによる断熱膨張、を順次行うものとしたため、空気サイクル冷凍冷却システムの全体として信頼性が向上し、空気サイクル冷凍冷却システムの実用化が可能となる。
【発明を実施するための最良の形態】
【0015】
この発明の一実施形態を図1と共に説明する。この圧縮膨張タービンユニット5は、空気サイクル冷凍冷却システムを適用したコンテナ用冷凍ユニットに組み込んだものであり、コンプレッサ6および膨張タービン7を備える。コンプレッサ6および膨張タービン7には、遠心式のものが用いられる。コンプレッサ6のインペラ6aの主軸13と、膨張タービン7のインペラ7aの主軸14とは、冷凍ユニットの奥行き方向に向けて互いに平行に配置されている。これら各主軸13,14は、それぞれ本体ハウジング20内に配置された軸受15,16,17,18により支持されている。これらの軸受15〜18には、グリース潤滑のアンギュラ玉軸受が用いられる。本体ハウジング20は、冷凍ユニットの隔壁を兼ねるものであっても良い。
【0016】
コンプレッサ6は、冷凍ユニットの被冷却空間10に臨ませたインペラ6aと微小の隙間d1を介して対向するコンプレッサ部ハウジング6bを有し、中心部の吸込口6cから軸方向に吸入した空気を、インペラ6aで圧縮し、外周部の出口(図示せず)から矢印6dで示すように排出する。
膨張タービン7は、冷凍ユニットの被冷却空間10に臨ませたインペラ7aと微小の隙間d2を介して対向するタービン部ハウジング7bを有し、外周部のノズル12から矢印7cで示すように吸い込んだ空気を、インペラ7aで断熱膨張させ、中心部の排出口7dから軸方向に排出する。
前記コンプレッサ部ハウジング6b、タービン部ハウジング7b、および本体ハウジング20により、タービンユニットハウジング5aが構成される。
【0017】
前記本体ハウジング20内における両主軸13,14の間には、回転を伝達する伝達機構22と、この伝達機構22を介して前記コンプレッサ6および膨張タービン7のインペラ6a,7aを駆動するモータ26とが配置されている。伝達機構22は、モータ26の出力軸26aに設けられた歯車23と、コンプレッサ6のインペラ6aの主軸13に設けられ前記歯車23に噛み合う歯車24と、膨張タービン7のインペラ7aの主軸14に設けられ前記歯車23に噛み合う歯車25とで構成される。これにより、モータ26の回転出力が、歯車23,24を介してコンプレッサ6のインペラ6aの主軸13に増速して伝達されると共に、歯車23,25を介して膨張タービン7のインペラ7aの主軸14に増速して伝達される。このように、上記伝達機構22は、増速機構として機能するものである。
【0018】
コンプレッサ6のインペラ6aの主軸13には、インペラ6aの背面側である前記本体ハウジング20内に向けた軸端に圧力バランス用板27が装着され、本体ハウジング20内における圧力バランス用板27の周囲には、この圧力バランス用板27の両面にそれぞれ面する空気室29A,29Bが設けられている。圧力バランス用板27のインペラ6a側に向く片面とは反対側の片面に面する空気室29Aには、コンプレッサハウジング6bの吸込口6cに連通して、インペラ6aの入口空気を導入する通気路31が設けられている。また、圧力バランス用板27のインペラ6a側に向く片面に面する空気室29Bには、インペラ6aの背面側に連通して、インペラ6aの出口空気を導入する別の通気路32が設けられている。
【0019】
膨張タービン7のインペラ7aの主軸14にも、インペラ7aの背面側である前記本体ハウジング20内に向けた軸端に圧力バランス用板28が装着され、本体ハウジング20内における圧力バランス用板28の周囲には、この圧力バランス用板28の両面にそれぞれ面する空気室30A,30Bが設けられている。圧力バランス用板28のインペラ7a側に向く片面とは反対側の片面に面する空気室30Aには、タービン部ハウジング7bの排気口7dに連通して、インペラ7aの出口空気を導入する通気路33が設けられている。また、圧力バランス用板28のインペラ7a側に向く片面に面する空気室30Bには、インペラ7aの背面側に連通して、インペラ7aの入口空気を導入する別の通気路34が設けられている。
【0020】
コンプレッサ6のインペラ6aの主軸13を支持する軸受15,16は、インペラ6a側に位置する前側軸受15と、前記圧力バランス用板27側に位置する後側軸受16とでなり、これら一対の軸受15,16に挟まれる軸方向位置に前記歯車24が設けられている。インペラ6aの背面と前側軸受15との間、および圧力バランス用板27と後側軸受16との間は、それぞれ非接触シール35,36によって隔離されている。
【0021】
膨張タービン7のインペラ7aの主軸14を支持する軸受17,18も、インペラ7a側に位置する前側軸受17と、前記圧力バランス用板28側に位置する後側軸受18とでなり、これら一対の軸受17,18に挟まれる軸方向位置に前記歯車25が設けられている。インペラ7aの背面と前側軸受17との間、および圧力バランス用板28と後側軸受18との間は、それぞれ非接触シール37,38によって隔離されている。
上記各非接触シール35,36,37,38は、隙間を微小隙間とすることで、回転にシール効果を得るものである。
【0022】
この圧縮膨張タービンユニット5によると、コンプレッサ6のインペラ6aの主軸13と膨張タービン7のインペラ7aの主軸14とを平行に配置し、これら各主軸13,14をそれぞれ軸受16,17により支持しているので、空気サイクル冷凍冷却システムを適用したコンテナ用冷凍ユニットに用いる場合でも、前記主軸13,14をコンテナ用冷凍ユニットの奥行き方向に配置することができる。これにより、コンプレッサ6および膨張タービン7のインペラ6a,7aとして大径のものを採用できることから、低速回転で運転しても必要な圧縮比および流量が得られ、小径インペラの場合よりも断熱効率向上が容易で、満足する冷凍能力を得ることができる。低速回転での運転であると、騒音も小さくなり,風損、軸受損、モータ鉄損を小さくできる。
【0023】
また、両主軸13,14の間に、回転を伝達する例えば歯車列からなる伝達機構22と、この伝達機構22を介して前記コンプレッサ6および膨張タービン7のインペラ6a,7aを駆動するモータ26とを配置しているので、前記歯車列の増速比などの選択によって各主軸13,14の回転数を任意に設定できる。そのため、コンプレッサ6および膨張タービン7の効率が最適となる回転数で各主軸13,14を回転させることができる。また、モータ22として低速汎用のモータを使用できるのでコストを低減できる。冷凍冷却も容易となる。
【0024】
また、この実施形態では、各主軸13,14にインペラ6a,7aの背面側で圧力バランス用板27,28を装着し、これら圧力バランス用板27,28の両面にそれぞれ面する空気室29A,29B,30A,30Bを設け、前記各圧力バランス用板27,28の片面側の空気室29A,30Bには、インペラ6a,7aの入口空気を導入する通気路31,34をそれぞれ設けている。また、前記各圧力バランス用板27,28の他の片面側の空気室29B,30Aには、インペラ6a,7aの出口空気を導入する通気路32,33をそれぞれ設けている。これにより、インペラ6a,7aの前面と背面の間の圧力差に起因して各主軸13,14に働くスラスト力を補償することができる。その結果、各主軸13,14に過大なアキシアル負荷が負荷されるのを回避できる。
【0025】
すなわち、コンプレッサ6では、圧力バランス用板27の片面側の空気室29Aに通気路31を通じてインペラ6aの入口空気が導入され、圧力バランス用板27の他の片面側の空気室29Bに通気路32を通じてインペラ6aの出口空気が導入される。これにより、圧力バランス用板27の両面の圧力差は、インペラ6aの前面と背面の圧力差と同じになる。しかも、圧力バランス用板27の圧力差で主軸13に生じるスラスト力は、インペラ6aの圧力差で主軸13に生じるスラスト力に対して反対方向となるので、インペラ6aの圧力差によるスラスト力が圧力バランス用板27の圧力差によるスラスト力で相殺される。
同様に、膨張タービン7でも、圧力バランス用板28の片面側の空気室30Bに通気路34を通じてインペラ7aの入口空気が導入され、圧力バランス用板28の他の片面側の空気室30Aに通気路33を通じてインペラ7aの出口空気が導入されるので、インペラ7aの圧力差によるスラスト力が圧力バランス用板28の圧力差によるスラスト力で相殺される。
【0026】
また、この実施形態では、インペラ6a,7aの各主軸13,14を支持する軸受15〜18として、インペラ6a,7a側に位置する前側軸受15,17と、圧力バランス用板27,28側に位置する後側軸受16,18とを設け、インペラ6a,7aの背面と前側軸受15,17との間を非接触シール35,37によって隔離し、圧力バランス用板27,28と後側軸受16,18との間を非接触シール36,38によって隔離している。これにより、例えばコンプレッサ6においては、インペラ6aの出口空気が軸受15,16を通じて空気室29Bに導入されるのを非接触シール35,36で阻止でき、軸受15,16内の潤滑剤が空気の流れによって漏出するのを防止できる。ここでは、軸受15,16がグリース潤滑のアンギュラ玉軸受からなるので、油潤滑と異なり、潤滑剤の漏出を確実に防止できる。
膨張タービン7においても、インペラ7aの入口空気が軸受17,18を通じて空気室30Bに導入されるのを非接触シール37,38で阻止できるので、軸受17,18内の潤滑剤が空気の流れによって漏出するのを防止できる。
【0027】
図2は、図1に示す圧縮膨張タービンユニット5を用いた空気サイクル冷凍冷却システムの全体の構成を示す。この空気サイクル冷凍冷却システムは、コンテナ用冷凍ユニットの被冷却空間10の空気を直接に冷媒として冷却するシステムであり、被冷却空間10にそれぞれ開口した空気の取入口1aから排出口1bに至る空気循環経路1を有している。この空気循環経路1に、予圧縮手段2、第1の熱交換器3、圧縮膨張タービンユニット5のコンプレッサ6、第2の熱交換器3、中間熱交換器9、および前記圧縮膨張タービンユニット5の膨張タービン7が順に設けられている。中間熱交換器9は、同じ空気循環経路1内で取入口1aの付近の流入空気と、後段の圧縮で昇温し、冷却された空気との間で熱交換を行うものであり、取入口1aの付近の空気は熱交換器9a内を通る。
【0028】
予圧縮手段2はブロア等からなり、モータ2aにより駆動される。第1の熱交換器3および第2の熱交換器8は、冷却媒体を循環させる熱交換器3a,8aをそれぞれ有し、熱交換器3a,8a内の水等の冷却媒体と空気循環経路1の空気との間で熱交換を行う。各熱交換器3a,8aは、冷却塔11に配管接続されており、熱交換で昇温した冷却媒体が冷却塔11で冷却される。なお、前記予圧縮手段2を含まない構成の空気サイクル冷凍冷却システムでもよい。
【0029】
この空気サイクル冷凍冷却システムは、被冷却空間10を0℃〜−60℃程度に保つシステムであり、被冷却空間10から空気循環経路1の取入口1aに0℃〜−60℃程度で1気圧の空気が流入する。なお、以下に示す温度および気圧の数値は、一応の目安となる一例である。取入口1aに流入した空気は、中間熱交換器9により、空気循環経路1中の後段の空気の冷却に使用され、30℃まで昇温する。この昇温した空気は1気圧のままであるが、予圧縮手段2により1.4気圧に圧縮させられ、その圧縮により、70℃まで昇温する。第1の熱交換器3は、昇温した70℃の空気を冷却すれば良いため、常温程度の冷水であっても効率良く冷却することができ、40℃に冷却する。
【0030】
熱交換により冷却された40℃,1.4気圧の空気が、圧縮膨張タービンユニット5のコンプレッサ6により、1.8気圧まで圧縮され、この圧縮により70℃程度に昇温した状態で、第2の熱交換器8により40℃に冷却される。この40℃の空気は、中間熱交換器9で−30℃の空気により−20℃まで冷却される。気圧はコンプレッサ6から排出された1.8気圧が維持される。
中間熱交換器9で−20℃まで冷却された空気は、圧縮膨張タービンユニット5の膨張タービン7により断熱膨張され、−55℃まで冷却されて排出口1bから被冷却空間10に排出される。この空気サイクル冷凍冷却システムは、このような冷凍サイクルを行う。
【0031】
この空気サイクル冷凍冷却システムでは、圧縮膨張タービンユニット5において、各翼車6a,7aの適切な隙間d1,d2を保って主軸13,14の安定した高速回転が得られ、かつ軸受15〜18の長期耐久性の向上、寿命の向上が得られることで、軸受15〜18の長期耐久性が向上することから、圧縮膨張タービンユニット5の全体として、しいては空気サイクル冷凍冷却システムの全体としての信頼性が向上する。このように、空気サイクル冷凍冷却システムのネックとなっている圧縮膨張タービンユニット5の主軸軸受15〜18の安定した高速回転、長期耐久性、信頼性が向上するため、空気サイクル冷凍冷却システムの実用化が可能となる。
【図面の簡単な説明】
【0032】
【図1】この発明の一実施形態にかかる圧縮膨張タービンユニットの断面図である。
【図2】同圧縮膨張タービンユニットを適用した空気アイクル冷凍冷却システムの系統図である。
【符号の説明】
【0033】
2…予圧縮手段
3…第1の熱交換器
5…圧縮膨張タービンユニット
6…コンプレッサ
6a…インペラ
7…膨張タービン
7a…インペラ
8…第2の熱交換器
13,14…主軸
15〜18…軸受
22…伝達機構
23,24,25…歯車
26…モータ
27,28…圧力バランス用板
29A,29B,30A,30B…空気室
31〜34…通気路
35〜38…非接触シール

【特許請求の範囲】
【請求項1】
コンプレッサおよび膨張タービンを備え、上記コンプレッサのインペラの主軸と上記膨張タービンのインペラの主軸とを平行に配置し、これら各主軸をそれぞれ軸受により支持し、両主軸の間に、回転を伝達する伝達機構と、この伝達機構を介して前記コンプレッサおよび膨張タービンのインペラを駆動するモータとを配置したことを特徴とする圧縮膨張タービンユニット。
【請求項2】
請求項1において、前記各主軸にインペラの背面側で圧力バランス用板を装着し、この圧力バランス用板の両面にそれぞれ面する空気室を設け、前記圧力バランス用板の片面側の空気室には、インペラの入口空気、他の片面側の空気室には前記インペラの出口空気をそれぞれ導入させる通気路を設けた圧縮膨張タービンユニット。
【請求項3】
請求項2において、前記インペラの主軸を支持する軸受として、前記インペラ側に位置する前側軸受と、前記圧力バランス用板側に位置する後側軸受とを設け、前記インペラの背面と前側軸受との間、および前記圧力バランス用板と後側軸受との間を、非接触シールによって隔離した圧縮膨張タービンユニット。
【請求項4】
請求項1ないし請求項3のいずれか1項において、前記軸受にグリース潤滑のアンギュラ玉軸受を用いた圧縮膨張タービンユニット。
【請求項5】
請求項1ないし請求項4のいずれか1項において、前記コンプレッサおよび膨張タービンが遠心式である圧縮膨張タービンユニット。
【請求項6】
請求項1ないし請求項5のいずれか1項に記載の前記圧縮膨張タービンユニットを備えた空気サイクル冷凍冷却システムであって、流入空気に対して、前記圧縮膨張タービンユニットのコンプレッサによる圧縮、他の熱交換器による冷却、前記圧縮膨張タービンユニットの膨張タービンによる断熱膨張、もしくは予圧縮手段による圧縮、熱交換器による冷却、前記圧縮膨張タービンユニットのコンプレッサによる圧縮、他の熱交換器による冷却、前記圧縮膨張タービンユニットの膨張タービンによる断熱膨張、を順次行うものである空気サイクル冷凍冷却システム。

【図1】
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【図2】
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【公開番号】特開2009−63204(P2009−63204A)
【公開日】平成21年3月26日(2009.3.26)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2007−230454(P2007−230454)
【出願日】平成19年9月5日(2007.9.5)
【出願人】(000102692)NTN株式会社 (9,006)
【Fターム(参考)】