説明

圧電デバイスの製造方法

【課題】 ガラス封止材の内部にガスや気泡が発生せず良好な振動特性を有する圧電デバイスの製造方法を提供することを目的とする。
【解決手段】 圧電デバイスの製造方法は、電圧の印加により振動する圧電振動片を用意する工程(S10)と、圧電振動片を収納する第1板及び第2板を用意する工程(S111、S12)と、第1板又は第2板に所定の転移点を有するガラス封止材を配置する工程(S112)と、ガラス封止材をバインダー及び溶剤が蒸散する蒸散温度まで加熱する第1加熱工程(S14)と、第1加熱工程後、ガラス封止材を蒸散温度よりも高くガラス成分の一部が結晶化する温度より低い温度まで加熱する第2加熱工程(S15)と、第1板と第2板とをガラス封止材により接合する接合工程(S17)と、を備える。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、表面実装型の圧電デバイスの製造方法に関する。
【背景技術】
【0002】
圧電振動子などの圧電デバイスは、表面実装型(SMD:Surface Mounted Device)タイプのパッケージが主に用いられている。圧電デバイスは振動の安定のためにパッケージ内に気密封止されている。
【0003】
例えば、特許文献1に開示された圧電デバイスの製造方法では、パッケージ及び蓋体の前工程と、圧電振動片をパッケージに接合する接合工程と、蓋体とパッケージとを封止する蓋封止工程とを含む。なお、パッケージ及び蓋体の前工程では封止材焼結工程を含み、封止材焼結工程では320℃程度の温度で封止材が焼結される。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0004】
【特許文献1】特開2004−172752号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0005】
しかしながら、特許文献1に開示された圧電デバイスの製造方法では、封止材を封止材焼結工程で封止材の転移点より高い320℃程度の温度で焼結すると、封止材の内部にガスや気泡が発生してしまう。これにより、封止材のパターンが崩れる。つまり、例えば発泡状態でパッケージと蓋体とを封止すれば、真空封止ができず、圧電振動片の振動特性に影響を与えるおそれがある。
【0006】
本発明は、封止材の内部にガスや気泡が発生せず良好な振動特性を有する圧電デバイスの製造方法を提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0007】
第1観点の圧電デバイスの製造方法は、 電圧の印加により振動する圧電振動片を用意する工程と、圧電振動片を収納する第1板及び第2板を用意する工程と、ガラス成分、バインダー及び溶剤を含み、第1板又は第2板に所定の転移点を有するガラス封止材を配置する工程と、ガラス封止材をバインダー及び溶剤が蒸散する蒸散温度まで加熱する第1加熱工程と、第1加熱工程後、ガラス封止材を蒸散温度よりも高くガラス成分の一部が結晶化する温度より低い温度まで加熱する第2加熱工程と、第1板と第2板とをガラス封止材により接合する接合工程と、を備える。
【0008】
第2観点の圧電デバイスの製造方法は、電圧の印加により振動する圧電振動片と圧電振動片を囲む枠体と含む圧電板を用意する工程と、圧電板の枠体の一主面に接合される第1板を用意する工程と、圧電板の枠体の他主面に接合される第2板を用意する工程と、ガラス成分、バインダー及び溶剤を含み、枠体の一主面又は第1板、及び枠体の他主面又は第2板に所定の転移点を有するガラス封止材を配置する工程と、ガラス封止材をバインダー及び溶剤が蒸散する蒸散温度まで加熱する第1加熱工程と、第1加熱工程後、ガラス封止材を蒸散温度よりも高くガラス成分の一部が結晶化する温度より低い温度まで第2加熱工程と、第1板と圧電板と第2板とをガラス封止材により接合する接合工程と、を備える。
【0009】
第3観点の圧電デバイスの製造方法において、第1加熱工程は、ガラス封止材を転移点の110%〜115%に加熱し、第2加熱工程は、ガラス封止材を転移点の125%〜133%に加熱する。
【0010】
第4観点の圧電デバイスの製造方法において、第1板は複数のリッド部を含み、第2板は複数のベース部を含み、圧電振動片がリッド部及びベース部からなるパッケージ内に収納される。
【0011】
第5観点の圧電デバイスの製造方法において、第1板は複数のリッド部を含み、第2板は複数のベース部を含み、圧電板は複数の圧電振動片及び枠体を含み、圧電振動片がリッド部、枠体及びベース部からなるパッケージ内に収納される。
【0012】
第6観点の圧電デバイスの製造方法において、転移点は295℃である。
第7観点の圧電デバイスの製造方法において、接合工程ではガラス封止材を転移点の120%〜125%に加熱して接合する。
【発明の効果】
【0013】
本発明は、封止材の内部にガスや気泡が発生せず良好な振動特性を有する圧電デバイスの製造方法が得られる。
【図面の簡単な説明】
【0014】
【図1】第1水晶振動子100の分解斜視図である。
【図2】図1のA−A断面図である。
【図3】第1水晶振動子100の製造方法を示したフローチャートである。
【図4】水晶ウエハ10Wの平面図である。
【図5】ベースウエハ12Wの平面図である。
【図6】リッドウエハ11Wの平面図である。
【図7】第1加熱段階の仮焼成を説明するための図で、第1温度が330℃である。
【図8】第1加熱段階の仮焼成を説明するための図で、第1温度が340℃である。
【図9】第1加熱段階の仮焼成を説明するための図で、第1温度が350℃である。
【図10】第1加熱段階の仮焼成を説明するための図で、第1温度が360℃である。
【図11】第2加熱段階の仮焼成を説明するための図で、第1温度が330℃で第2温度が350℃である。
【図12】第2加熱段階の仮焼成を説明するための図で、第1温度が330℃で第2温度が370℃である。
【図13】第2加熱段階の仮焼成を説明するための図で、第1温度が330℃で第2温度が390℃である。
【図14】第2加熱段階の仮焼成を説明するための図で、第1温度が330℃で第2温度が410℃である。
【図15】第2水晶振動子200の分解斜視図である。
【図16】図15のB−B断面図である。
【図17】第2水晶振動子200の製造方法を示したフローチャートである。
【図18】水晶ウエハ20Wの平面図である。
【図19】ベースウエハ22Wの平面図である。
【発明を実施するための形態】
【0015】
本明細書では、圧電振動片としてATカットの水晶振動片が使われている。つまり、ATカットの水晶振動片は、主面(YZ面)が結晶軸(XYZ)のY軸に対して、X軸を中心としてZ軸からY軸方向に35度15分傾斜されている。このため、ATカットの水晶振動片のX軸方向を基準とし、傾斜された新たな軸をY’軸及びZ’軸として用いる。すなわち、本実施形態では圧電デバイスとしての水晶振動子の長手方向をX軸方向、水晶振動子の高さ方向をY’軸方向、X軸方向及びY’軸方向に垂直な方向をZ’軸方向として説明する。
【0016】
(第1実施形態)
<第1水晶振動子100の全体構成>
第1水晶振動子100の全体構成について、図1及び図2を参照しながら説明する。
図1は第1水晶振動子100の分解斜視図で、図2は図1のA−A断面図である。
【0017】
図1に示されたように、第1水晶振動子100はリッド凹部111を有するリッド部11と、ベース凹部121を有するベース部12と、ベース部12に載置される水晶振動片10とを備える。
【0018】
水晶振動片10は、ATカットされた水晶片101により構成され、その水晶片101の中央付近の両主面に一対の励振電極102a、102bが対向して配置されている。また、励振電極102aには水晶片101の底面(−Y’側)の−X側まで伸びた引出電極103aが接続され、励振電極102bには水晶片101の底面(−Y’側)の+X側まで伸びた引出電極103bが接続されている。
【0019】
ここで、励振電極及び引出電極は例えば下地としてのクロム層が用いられ、クロム層の上面に金層が用いられる。なお、クロム層の厚さは例えば0.05μm〜0.1μmで、金層の厚さは例えば0.2μm〜2μmである。
【0020】
ベース部12は、表面(+Y’側の面)にベース凹部121の周囲に形成された第1端面M1を有している。また、ベース部12はX軸方向の両側に貫通孔BH(図5を参照)を形成した際のZ’軸方向伸びたキャスタレーション122a、122bが形成されている。キャスタレーション122a、122bには側面電極123a、123bがそれぞれ形成されている。また、側面電極123aと電気的に接続された接続電極124aがベース部12の第1端面M1の−X側に形成されている。同様に、側面電極123bと電気的に接続された接続電極124bがベース部12の第1端面M1の+X側に形成されている。さらに、ベース部12は実装面(水晶振動子の実装面)M3に側面電極123a、123bとそれぞれ電気的に接続された一対の実装端子125a、125bを有している。ここで、ベース部12の側面電極、接続電極及び実装端子は水晶振動片10の励振電極及び引出電極と同じ構成である。
【0021】
図2に示されたように、ベース凹部121のX軸方向の長さは水晶振動片10のX軸方向の長さより短く形成される。このため、水晶振動片10を導電性接着剤13でベース部12に載置すると、水晶振動片10のX軸方向の両端がベース部12の第1端面M1に載置される。このとき、水晶振動片10の引出電極103a、103bがベース部12の接続電極124a、124bにそれぞれ電気的に接続される。これにより、実装端子125a、125bが側面電極123a、123b、接続電極124a、124b、導電性接着剤13及び引出電極103a、103bを介して励振電極102a、102bにそれぞれ電気的に接続される。つまり、実装端子125a、125bに交番電圧(正負を交番する電位)を印加したときに、水晶振動片10は厚みすべり振動する。
【0022】
図1及び図2に示されたように、第1水晶振動子100はリッド部11のリッド凹部111とベース部12のベース凹部121によって水晶振動片10を収納するキャビティCTを形成する。キャビティCTは、不活性ガスで満たされたり又は真空状態に気密されたりする。
【0023】
リッド部11はその−Y’側にリッド凹部111の周囲に形成された第2端面M2を有している。また、リッド部11の第2端面M2とベース部12の第1端面M1とは例えば封止材としての低融点ガラスLGにより接合される。
【0024】
低融点ガラスLGは、295℃前後が転移点で350℃前後が軟化点であるバナジウム系ガラスを含む。一般にバナジウム等の金属を含有する量を少なくすると転移点及び軟化点が上昇する。このバナジウム系ガラスはガラス成分(低融点ガラス粉末)にバインダーと溶剤とが加えられてペースト状である。このバナジウム系ガラスは溶融された後固化されることで他の部材と接着する。バナジウム系ガラスの転移点は水晶材又はガラスなどで形成されたリッド部11及びベース部12の転移点より低く、また、このバナジウム系ガラスは接着時の気密性と耐水性・耐湿性などの信頼性が高い。バナジウム系ガラスは空気中の水分がキャビティCT内に進入したりキャビティCT内の真空度を低下させたりすることを防止する。さらに、バナジウム系ガラスはガラス構造を制御することにより熱膨張係数も柔軟に制御できる。
【0025】
また、リッド凹部111の長さが水晶振動片10の長さ及びベース凹部121の長さより大きい。このため、低融点ガラスLGは図2に示されたように、ベース部12の第1端面M1の外側(幅は300μm程度)でリッド部11とベース部12とを接合する。
【0026】
<第1水晶振動子100の製造方法>
図3は、第1水晶振動子100の製造方法を示したフローチャートである。図3において、水晶振動片10の製造ステップS10と、リッド部11の製造ステップS11と、ベース部12の製造ステップS12とは別々に並行して行うことができる。また、図4は水晶ウエハ10Wの平面図で、図5はベースウエハ12Wの平面図で、図6はリッドウエハ11Wの平面図である。
【0027】
ステップS10では、水晶振動片10が製造される。ステップS10はステップS101〜S103を含んでいる。
ステップS101において、図4に示されたように、均一の水晶ウエハ10Wにエッチングにより複数の水晶振動片10の外形が形成される。ここで、各水晶振動片10は接続部104により水晶ウエハ10Wに連接されている。
【0028】
ステップS102において、まずスパッタリングまたは真空蒸着によって水晶ウエハ10Wの両面及び側面にクロム層及び金層が順に形成される。そして、金属層の全面にフォトレジストが均一に塗布される。その後、露光装置(図示しない)を用いて、フォトマスクに描かれた励振電極102a、102b、引出電極103a、103bのパターンが水晶ウエハ10Wに露光される。次に、フォトレジストから露出した金属層がエッチングされる。これにより、図4に示されたように水晶ウエハ10Wの両面及び側面には励振電極102a、102b及び引出電極103a、103bが形成される。
【0029】
ステップS103において、水晶振動片10が個々に切断される。切断工程では、レーザーを用いたダイシング装置、または切断用ブレードを用いたダイシング装置などを用いて図4に示された一点鎖線のカットラインCLに沿って切断する。
【0030】
ステップS11では、ベース部12が製造される。ステップS12はステップS111及びS112を含んでいる。
【0031】
ステップS111において、図5に示されたように、均一のベースウエハ12Wにエッチングにより複数のベース部12の外形が形成される。すなわち、ベースウエハ12Wにベース凹部121が数百から数千個形成される。ベースウエハ12Wには、エッチング又は機械加工によりベース凹部121が形成され、ベース凹部121の周囲には第1端面M1が形成される。同時に、各ベース部12のX軸方向の両辺にはベースウエハ12Wを貫通するように角丸長方形の貫通孔BHが形成される。貫通孔BHが半分割されると1つのキャスタレーション122a、122bになる。
【0032】
ステップS122では、ステップS102で説明されたスパッタ及びエッチング方法によって図5に示されたようにベース部12の実装面M3のX軸方向の両側に一対の実装端子125a、125bが形成される。同時に、貫通孔BHには側面電極123a、123bが形成され、第2端面M2には接続電極124a、124bが形成される。
【0033】
ステップS12では、リッド部11が製造される。ステップS12はステップS1211からS125を含んでいる。
【0034】
ステップS121において、図6に示されたように、均一のリッドウエハ11Wにエッチングにより複数のリッド部11の外形が形成される。すなわち、リッドウエハ11Wにリッド凹部111が数百から数千個形成される。リッドウエハ11Wには、エッチング又は機械加工によりリッド凹部111が形成され、リッド凹部111の周囲には第1端面M1が形成される。
【0035】
ステップS122において、図6に示されたように、スクリーン印刷でリッドウエハ11Wの第2端面M2にペースト状の低融点ガラスLGが印刷される。
【0036】
ステップS123からS125は、低融点ガラスLGの仮焼成工程である。
ステップS123では、低融点ガラスLGの仮焼成工程の第1加熱段階として低融点ガラスLGが第1温度まで加熱される。ここで、低融点ガラスLGの転移点が295℃であるとき、第1温度はこの転移点の110%〜115%であることが好ましい。すなわち、325℃〜340℃である。
【0037】
以下、第1加熱段階の第1温度に関する実験について、図7〜図10を参照しながら説明する。図7(a)は低融点ガラスLGの温度変化グラフで、図7(b)は330℃まで加熱しその後冷却した低融点ガラスLGを顕微鏡で観察した写真である。図7(a)に示されるように低融点ガラスの溶融プロファイルは、低融点ガラスLGの温度を330℃まで上昇させ、30分間加熱した。また、図7(b)は低融点ガラスLGに含まれたバインダー及び溶剤が抜け、低融点ガラスLG内部のガス、気泡を出す状態である。この温度では低融点ガラスLGに含まれたガラス成分は溶けていない。
【0038】
図8(a)は低融点ガラスLGの温度変化グラフで、図8(b)は340℃まで加熱しその後冷却した低融点ガラスLGを顕微鏡で観察した写真である。図8(a)に示されるように低融点ガラスの溶融プロファイルは、低融点ガラスLGの温度を340℃まで上昇させ、30分間加熱した。また、図8(b)は低融点ガラスLGに含まれたバインダー及び溶剤が抜け、低融点ガラスLG内部のガス、気泡を出している状態である。この温度でも低融点ガラスLGに含まれたガラス成分は溶けていない。
【0039】
図9(a)は低融点ガラスLGの温度変化グラフで、図9(b)は350℃まで加熱しその後冷却した低融点ガラスLGを顕微鏡で観察した写真である。図9(a)に示されるように低融点ガラスの溶融プロファイルは、低融点ガラスLGの温度を350℃まで上昇させ、30分間加熱した。また、図9(b)は低融点ガラスLGに含まれたガラス成分が溶け、低融点ガラスLG内部にバインダー及び溶剤からガスでたくさんの孔HEが形成される状態である。
【0040】
図10(a)は低融点ガラスLGの温度変化グラフで、図10(b)は360℃まで加熱しその後冷却した低融点ガラスLGを顕微鏡で観察した写真である。図10(a)に示されるように低融点ガラスの溶融プロファイルは、低融点ガラスLGの温度を360℃まで上昇させ、30分間加熱した。また、図10(b)は低融点ガラスLG内部の溶けたガラスにより小さい気泡が埋められ、大きい気泡が部分的に埋められて孔HEが残っている状態である。
【0041】
上述の説明及び図7〜図10から分かるように、仮焼成工程の第1加熱段階での第1温度を330℃〜340℃にするとバインダー及び溶剤を効率的に蒸散させることができる。一方、350℃以上であるとバインダー及び溶剤が蒸散している最中にガラス成分も溶け始める。このため、バインダー及び溶剤のガスが溶けたガラスの内部に溜まり、低融点ガラスLGの表面には孔HEが残る可能性がある。低融点ガラス内部に気泡、その表面に孔が残ると、後工程である第3温度での接合工程(S14)で長い加熱時間をかけて気泡等を除去する必要がある。このため接合工程の時間が長くなり、製造効率が悪化する。以上から、第1温度は330℃〜340℃にすることが好ましい。
【0042】
ステップS124では、低融点ガラスLGの仮焼成工程の第2加熱段階として低融点ガラスLGが第1温度から第2温度まで加熱される。ここで、低融点ガラスLGの転移点が295℃であるとき、第2温度はこの転移点の125%〜133%であることが好ましい。すなわち、370℃〜390℃である。
【0043】
以下、第2加熱段階の第2温度に関する実験について、図11〜図14を参照しながら説明する。また、図11〜図14では仮焼成工程の第1加熱段階を330℃として説明する。図11(a)は低融点ガラスLGの温度変化グラフで、図11(b)は第2温度として350℃まで加熱しその後冷却した低融点ガラスLGを顕微鏡で観察した写真である。図11(a)に示されるように低融点ガラスの溶融プロファイルは、まず低融点ガラスLGの温度を第1温度の330度まで上昇させて30分間加熱し、その後第2温度の350℃まで上昇させて10分間加熱した。また、図11(b)ではバインダー及び溶剤からガスがほとんど抜けているが、ガラス成分が多少溶けずに孔HEが形成されている状態である。
【0044】
図12(a)は低融点ガラスLGの温度変化グラフで、図12(b)は第2温度として370℃まで加熱しその後冷却した低融点ガラスLGを顕微鏡で観察した写真である。図12(a)に示されるように低融点ガラスの溶融プロファイルは、まず低融点ガラスLGの温度を第1温度の330度まで上昇させて30分間加熱し、その後第2温度の370℃まで上昇させて10分間加熱した。また、図12(b)ではガラス成分が多少溶けずに小さな孔HEが残っている状態である。
【0045】
図13(a)は低融点ガラスLGの温度変化グラフで、図13(b)は第2温度として390℃まで加熱しその後冷却した低融点ガラスLGを顕微鏡で観察した写真である。図13(a)に示されるように低融点ガラスの溶融プロファイルは、まず低融点ガラスLGの温度を第1温度の330度まで上昇させて30分間加熱し、その後第2温度の390℃まで上昇させて10分間加熱した。また、図13(b)では孔がほとんどない状態である。
【0046】
図14(a)は低融点ガラスLGの温度変化グラフで、図14(b)は第2温度として410℃まで加熱しその後冷却した低融点ガラスLGを顕微鏡で観察した写真である。図14(a)に示されるように低融点ガラスの溶融プロファイルは、まず低融点ガラスLGの温度を第1温度の330度まで上昇させて30分間加熱し、その後第2温度の410℃まで上昇させて10分間加熱した。また、図14(b)では気泡が抜けて孔がほとんど埋められているが、低融点ガラスLGのガラス成分の一部が結晶化された状態である。CSで示された箇所には結晶化された小さなガラス成分が見受けられる。ガラス成分の結晶化は低融点ガラスLGの接合強度が落ちることになる。
【0047】
上述の説明及び図11〜図14から分かるように、仮焼成工程の第2加熱段階での第2温度を370℃〜390℃にすることが好ましい。つまり、温度が370℃より低いと気泡が抜けた孔HEが残ることになり、温度が390℃より高いと低融点ガラスLGのガラス成分の一部が結晶化され接合強度が落ちるおそれがある。
【0048】
図3に戻り、ステップS125では、仮焼成工程の第2加熱段階で第2温度まで加熱された低融点ガラスLGを室温まで冷却する。これにより、脱ガス、脱泡された低融点ガラスLGがリッドウエハ11Wに配置される。
【0049】
ステップS13では、ステップS10で製造された水晶振動片10が導電性接着剤13でベース部12の第1端面M1に載置される。このとき、水晶振動片10の引出電極103a、103bとベース部12の第1端面M1に形成された接続電極124a、124bとの位置が合うように水晶振動片10がベース部12の第1端面M1に載置される。(図2を参照)。
【0050】
ステップS14では、再び低融点ガラスLGを第3温度まで加熱させながらリッドウエハ11Wとベースウエハ12Wとを加圧する。その後低融点ガラスLGは常温まで冷やされる。これにより低融点ガラスLGがリッドウエハ11Wとベースウエハ12Wとが確実に接合される。すでに低融点ガラスLGはガス等がない状態で仮焼成されているため、接合工程は短時間で完了する。ここで、第3温度は転移点(295℃)の120%〜125%、すなわち360℃〜375℃である。
【0051】
ステップS15では、接合されたリッドウエハ11Wと、ベースウエハ12Wとが個々に切断される。切断工程では、レーザーを用いたダイシング装置、または切断用ブレードを用いたダイシング装置などを用いて図5及び図6に示された一点鎖線のスクライブラインSLに沿って第1水晶振動子100を単位として個片化する。これにより、数百から数千の第1水晶振動子100が製造される。
【0052】
第1水晶振動子100の製造方法では、リッドウエハ11Wに低融点ガラスLGを配置しているが、ベースウエハ12Wに配置されてもよい。
【0053】
(第2実施形態)
<第2水晶振動子200の全体構成>
第2水晶振動子200の全体構成について、図15及び図16を参照しながら説明する。図15は第2水晶振動子200の分解斜視図で、図16は図15のB−B断面図である。
【0054】
図15に示されたように、第2水晶振動子200はリッド凹部211を有するリッド部21と、ベース凹部221を有するベース部22と、リッド部21及びベース部22に挟まれた水晶フレーム20とを備える。
【0055】
図1及び図2に示されたように、水晶フレーム20はATカットされた水晶材料で形成され、+Y’側の表面Meと−Y’側の裏面Miとを有している。水晶フレーム20は水晶振動片201と水晶振動片201を囲む枠体207とで構成されている。水晶振動片201と枠体207との間には、表面Meから裏面Miまで貫通する貫通開口部206が形成される。貫通開口部206が形成されていない部分が水晶振動片201と枠体207とを連結する連結部208a、208bとなっている。ここで、連結部208a水晶振動片201の−X軸側に接続され、連結部208bは水晶振動片201の+X軸側に接続されている。
【0056】
水晶フレーム20のX軸方向の四隅には、貫通孔CH(図18を参照)を形成した際のキャスタレーション204a、204bがそれぞれ形成されている。具体的には、水晶フレーム20の−X軸側に一対のキャスタレーション204aが形成され、水晶フレーム20の+X軸側に一対のキャスタレーション204bが形成されている。
【0057】
水晶フレーム20は、水晶振動片201の表面Me及び裏面Miに励振電極202a、202bがそれぞれ形成されている。また、励振電極202a、202bから引き出された引出電極203a、203bが連結部208a、208b及び枠体207を介してキャスタレーション204a、204bまで伸びて形成される。具体的には、励振電極202aが連結部208a及び枠体207を介してキャスタレーション204aまで伸びて形成され、励振電極202bが連結部208b及び枠体207を介してキャスタレーション204bまで伸びて形成される。キャスタレーション204a、204bには引出電極203a、203bとそれぞれに導電される側面電極205a、205bが形成されている。なお、表面Meの引出電極203aに導電される側面電極205aは枠体207の裏面Miまで伸びて電極パッド205Mを形成することが好ましい。同様に、裏面Miの引出電極203bに導電される側面電極205bは枠体207の表面Meまで伸びて電極パッド205Mを形成することが好ましい。
【0058】
ベース部22は、ガラス又は水晶材料で形成され、その+Y’側の面の外周に第1端面M1を有している。ベース部22のX軸方向の四隅には、貫通孔BH(図19を参照)を形成した際のキャスタレーション222a、222bが形成されている。具体的には、ベース部22の−X軸側に一対のキャスタレーション222aが形成され、ベース部22の+X軸側に一対のキャスタレーション222bが形成されている。
【0059】
ベース部22において、実装面M3の−X軸側には実装端子225aが形成され、実装面M3の+X軸側には実装端子225bが形成されている。また、キャスタレーション222aには実装端子225aに導電される側面電極223aが形成され、キャスタレーション222bには実装端子225bに導電される側面電極223bが形成される。なお、側面電極223a、223bはベース部22の第1端面M1まで伸びて電極パッド223Mを形成することが好ましい。
【0060】
ここで、励振電極、引出電極、側面電極及び実装端子は例えば下地としてのクロム(Cr)層が用いられ、クロム層の上面に金(Au)層が用いられる。なお、クロム層の厚さは例えば0.05μm〜0.1μmで、金層の厚さは例えば0.2μm〜2μmである。
【0061】
リッド部21は、ガラス又は水晶材料で形成され、その−Y’側の面の外周に第2端面M2を有している。さらに、第2端面M2から凹んだリッド凹部211を有している。
【0062】
また、リッド部21と水晶フレーム20と、及び水晶フレーム20とベース部22とは低融点ガラスLGにより接合される。図1に示されたように、低融点ガラスLGはリッド部21の第2端面M2、水晶フレーム20の枠体207及びベース部22の第1端面M1に対応する領域に配置される。また、低融点ガラスLGは各キャスタレーションが形成される箇所には形成されない。
【0063】
<第2水晶振動子200の製造方法>
図17は、第2水晶振動子200の製造方法を示したフローチャートである。図17において、水晶フレーム20の製造ステップT10と、リッド部21の製造ステップT11と、ベース部22の製造ステップT12とは別々に並行して行うことができる。また、図18は水晶ウエハ20Wの平面図で、図19はベースウエハ22Wの平面図である。
【0064】
ステップT10では、水晶フレーム20が製造される。ステップT10はステップT101及びT102を含んでいる。
ステップT101において、図18に示されたように、均一の水晶ウエハ20Wにエッチングにより複数の水晶フレーム20の外形が形成される。つまり、各水晶フレーム20に水晶振動片201、連結部208a、208b及び枠体207が形成するように、水晶ウエハ20Wを貫通した貫通開口部206が形成される。同時に、各水晶フレーム20の四隅に水晶ウエハ20Wを貫通した円形の貫通孔CHがそれぞれ形成される。ここで、貫通孔CHが四分の一に分割されると1つのキャスタレーション204a、204b(図15を参照)になる。
【0065】
ステップT102において、図18に示されたように、スパッタ及びエッチングにより水晶ウエハ20Wの両面に励振電極202a、202b及び引出電極203a、03bが形成され、水晶ウエハ20Wの貫通孔CHに側面電極205a、205bが形成される。
【0066】
ステップT11では、ベース部12が製造される。ステップT12はステップT111〜T113を含んでいる。
ステップT111において、図19に示されたように、均一のベースウエハ22Wにエッチングにより複数のベース部22の外形が形成される。すなわち、エッチング又は機械加工によりベース凹部221及び貫通孔BHが形成される。
【0067】
ステップT112では、スパッタ及びエッチング方法によって実装面M3に実装端子225a、225bが形成され、貫通孔BHに側面電極223a、223bが形成され、第2端面M2に接続パッド223Mが形成される。
【0068】
ステップT113において、スクリーン印刷でベースウエハの第1端面M1にペースト状の低融点ガラスLGが印刷される。
【0069】
ステップT12では、リッド部21が製造される。ステップT12はステップT121及びT122を含んでいる。
ステップT111において、均一のリッドウエハにエッチングにより複数のリッド部21の外形が形成される(図6を参照)。
【0070】
ステップT112において、スクリーン印刷でリッドウエハの第2端面M2にペースト状の低融点ガラスLGが印刷される(図6を参照)。
【0071】
ステップT13からT15は、低融点ガラスLGの仮焼成工程である。
ステップT13では、リッドウエハ及びベースウエハ22Wに印刷された低融点ガラスLGの仮焼成工程の第1加熱段階として低融点ガラスLGを第1温度まで加熱する。ここで、低融点ガラスLGの転移点が295℃であるとき、第1温度はこの転移点の110%〜115%であることが好ましい。すなわち、325℃〜340℃である。
【0072】
ステップT14では、リッドウエハ及びベースウエハ22Wに印刷された低融点ガラスLGの仮焼成工程の第2加熱段階として低融点ガラスLGを第1温度から第2温度まで加熱する。ここで、低融点ガラスLGの転移点が295℃であるとき、第2温度はこの転移点の125%〜133%であることが好ましい。すなわち、370℃〜390℃である。
【0073】
ステップT15では、仮焼成工程の第2加熱段階で第2温度まで加熱された低融点ガラスLGを室温まで冷却する。これにより、脱ガス、脱泡された低融点ガラスLGがリッドウエハ及びベースウエハ22Wに配置される。
【0074】
ステップT16では、再び低融点ガラスLGを第3温度まで加熱させながらリッドウエハとベースウエハ22Wとを水晶ウエハ20Wの両面に配置して加圧する。これにより低融点ガラスLGが溶融してリッドウエハ(図6を参照)と水晶ウエハ20Wとベースウエハ22Wとが確実に接合される。すでに低融点ガラスLGはガス等がない状態で仮焼成されているため、接合工程は短時間で完了する。ここで、第3温度は転移点(295℃)の120%〜125%、すなわち360℃〜375℃である。
【0075】
ステップT17では、接合されたリッドウエハと水晶ウエハ20Wとベースウエハ22Wとが個々に切断される。切断工程では、図18及び図19に示された一点鎖線のスクライブラインSLに沿って第2水晶振動子200を単位として個片化する。これにより、数百から数千の第2水晶振動子200が製造される。
【産業上の利用可能性】
【0076】
以上、本明細書では最適な実施形態について詳細に説明したが、当業者に明らかなように、本発明はその技術的範囲内において実施形態に様々な変更・変形を加えて実施することができる。
【0077】
低融点ガラスとして、例えば、酸化亜鉛(PbO)に、B、Bi、ZnO、PbF、CuO、TiO、Nb、Fe、CaO等を微量含有する低融点ガラスが使用されてもよい。また、鉛を含まない環境に対する悪影響が少ない低融点ガラスとしては、例えば、CuO−CuO−P系の低融点ガラス、SiO−SnO−P等の低融点ガラスが使用されてもよい。
【0078】
例えば、本明細書ではATカットされた水晶振動片を一例として説明したが、一対の振動腕を有する音叉型水晶振動片にも適用される。さらに、本発明は水晶振動子以外にも、発振回路を組み込んだICなどをキャビティ内に収容した圧電発振器にも適用できる。
【符号の説明】
【0079】
10、201 … 水晶振動片、10W、20W … 水晶ウエハ
11、21 … リッド部、 11W … リッドウエハ
12、22 … ベース部、 12W、22W … ベースウエハ
20 … 水晶フレーム
100、200 … 水晶振動子
102a、102b、202a、202b … 励振電極
103a、103b、203a、203b … 引出電極
104 … 接続部
111、211 … リッド凹部、 121、221 … ベース凹部
122a、122b、204a、204b、222a、222b … キャスタレーション
123a、123b、205a、205b、223a、223b … 側面電極
124a、124b … 接続電極
125a、125b、225a、225b … 実装端子
206 … 貫通開口部
207 … 枠体
208a、208b … 連結部
CT … キャビティ
LG … 低融点ガラス
SL … スクライブライン


【特許請求の範囲】
【請求項1】
電圧の印加により振動する圧電振動片を用意する工程と、
前記圧電振動片を収納する第1板及び第2板を用意する工程と、
ガラス成分、バインダー及び溶剤を含み、前記第1板又は前記第2板に所定の転移点を有するガラス封止材を配置する工程と、
前記ガラス封止材を前記バインダー及び溶剤が蒸散する蒸散温度まで加熱する第1加熱工程と、
前記第1加熱工程後、前記ガラス封止材を前記蒸散温度よりも高く前記ガラス成分の一部が結晶化する温度より低い温度まで加熱する第2加熱工程と、
前記第1板と前記第2板とを前記ガラス封止材により接合する接合工程と、
を備える圧電デバイスの製造方法。
【請求項2】
電圧の印加により振動する圧電振動片と前記圧電振動片を囲む枠体と含む圧電板を用意する工程と、
前記圧電板の前記枠体の一主面に接合される第1板を用意する工程と、
前記圧電板の前記枠体の他主面に接合される第2板を用意する工程と、
ガラス成分、バインダー及び溶剤を含み、前記枠体の一主面又は前記第1板、及び前記枠体の他主面又は前記第2板に所定の転移点を有するガラス封止材を配置する工程と、
前記ガラス封止材を前記バインダー及び溶剤が蒸散する蒸散温度まで加熱する第1加熱工程と、
前記第1加熱工程後、前記ガラス封止材を前記蒸散温度よりも高く前記ガラス成分の一部が結晶化する温度より低い温度まで第2加熱工程と、
前記第1板と前記圧電板と前記第2板とを前記ガラス封止材により接合する接合工程と、
を備える圧電デバイスの製造方法。
【請求項3】
前記第1加熱工程は、前記ガラス封止材を前記転移点の110%〜115%に加熱し、前記第2加熱工程は、前記ガラス封止材を前記転移点の125%〜133%に加熱する請求項1又は請求項2に記載の圧電デバイスの製造方法。
【請求項4】
前記第1板は複数のリッド部を含み、
前記第2板は複数のベース部を含み、
前記圧電振動片が前記リッド部及び前記ベース部からなるパッケージ内に収納される請求項1に記載の圧電デバイスの製造方法。
【請求項5】
前記第1板は複数のリッド部を含み、
前記第2板は複数のベース部を含み、
前記圧電板は複数の前記圧電振動片及び前記枠体を含み、
前記圧電振動片が前記リッド部、前記枠体及び前記ベース部からなるパッケージ内に収納される請求項2に記載の圧電デバイスの製造方法。
【請求項6】
前記転移点は295℃である請求項1から請求項5のいずれか一項に記載の圧電デバイスの製造方法。
【請求項7】
前記接合工程では、前記ガラス封止材を前記転移点の120%〜125%に加熱して接合する請求項1から請求項6のいずれか一項に記載の圧電デバイスの製造方法。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【図6】
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【図7】
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【図8】
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【図9】
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【図10】
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【図11】
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【図12】
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【図13】
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【図14】
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【図15】
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【図16】
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【図17】
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【図18】
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【図19】
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【公開番号】特開2012−235387(P2012−235387A)
【公開日】平成24年11月29日(2012.11.29)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2011−103625(P2011−103625)
【出願日】平成23年5月6日(2011.5.6)
【出願人】(000232483)日本電波工業株式会社 (1,148)
【Fターム(参考)】