説明

圧電振動片、圧電振動デバイス、および圧電振動片の製造方法

【課題】特性を悪化させずに基板の振動領域の厚さを薄くして高周波化に対応させる。
【解決手段】水晶振動片2では、ATカット水晶片からなる基板20と、基板20に積層した堤部21と、基板20と堤部21との間に介在させて基板20と堤部21との接合補強を行う、軟質の金属材料からなる接合部22と、が設けられている。堤部21と接合部22とが当該水晶振動片2の壁面23として構成されるとともに、基板20が当該水晶振動片2の台部として構成され、かつ、壁面23および台部により当該水晶振動片2の一主面201に凹部27が形成されている。また、凹部27の内底面を含む基板20の両主面201,202に一対の励振電極36が対向して形成されている。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、圧電振動片、圧電振動デバイス、および圧電振動片の製造方法に関する。
【背景技術】
【0002】
近年、各種電子機器の動作周波数の高周波化がすすんでおり、この高周波化にともなって、圧電振動デバイス(例えば水晶振動子等)も高周波化への対応が求められている。
【0003】
この種の圧電振動デバイスでは、その筐体が直方体のパッケージで構成されている。このパッケージはベースと蓋とから構成され、このパッケージ内部には圧電振動片が接着剤を介してベースに接合されて、圧電振動片が保持されている。そして、ベースと蓋とが接合されることで、パッケージの内部の圧電振動片が気密封止されている。
【0004】
また、パッケージに搭載した圧電振動片には、その両主面に一対の励振電極が形成されている。そして、圧電振動片の両主面に形成した一対の励振電極間の基板の厚みを薄くすることで高周波化を図ることができる。
【0005】
そのため、従前から圧電振動片の高周波化を図るために、その主面の励振電極を形成した振動領域を逆メサ構造に形成している(例えば、下記する特許文献1ご参照)。
【特許文献1】特開2002−246873号公報
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0006】
ところで、圧電振動片の基板に逆メサ構造を形成するためには基板をエッチングする必要があり、このエッチングの際に基板の面荒れが発生し、その結果、圧電振動片の特性に悪影響を及ぼす。このことは、特にエッチング量の増加に比例して顕れる。
【0007】
また、現在の高周波化(約200MHz以上)に対応するためには、基板に水晶を用いた場合を例にすると、その基板の最薄肉部の厚さを約8μmまで(もしくはそれ以下まで)エッチングする必要がある。そのため、基板の割れや反りなどの物理的な悪影響も受けることになり、圧電振動片(水晶振動片)の製造が難しい。
【0008】
そこで、上記課題を解決するために、本発明は、特性を悪化させずに基板の振動領域の厚さを薄くして高周波化に対応した圧電振動片、圧電振動デバイス、及び圧電振動片の製造方法を提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0009】
上記の目的を達成するため、本発明にかかる圧電振動片は、圧電振動を行う圧電振動片において、圧電材料からなる基板と、前記基板に積層した堤部と、前記基板と前記堤部との間に介在させて前記基板と前記堤部との接合補強を行う、軟質の金属材料からなる接合部と、が設けられ、前記堤部と前記接合部とが当該圧電振動片の壁部として構成されるとともに、前記基板が当該圧電振動片の台部として構成され、かつ、前記壁部および前記台部により当該圧電振動片の一主面に凹部が形成され、前記凹部の内底面を含む前記基板の両主面に一対の励振電極が対向して形成されたことを特徴とする。
【0010】
本発明によれば、特性を悪化させずに基板の振動領域の厚さを薄くして高周波化に対応させることが可能となる。具体的に、高周波化を図るために前記基板の厚さを薄くした場合であっても、前記接合部と前記堤部を設けることで前記基板の強度を間接的に高めることでき、その結果、前記基板の割れや反りなどの物理的な悪影響も受けることはない。
【0011】
前記構成において、前記基板の前記接合部と接する面が、鏡面加工されてもよい。
【0012】
この場合、前記基板の前記接合部と接する面にボイドが発生するのを抑えることが可能となる。
【0013】
前記構成において、前記接合部と、前記基板の前記接合部と接する面に形成された励振電極とは、同一材料からなってもよい。
【0014】
この場合、前記接合部の金属材料を、前記基板の前記接合部と接する面に形成された励振電極に用いるので、電極のエッチング成形のみで前記励振電極の形成を行うことが可能となる。そのため、前記圧電振動片の凹部に前記励振電極を形成する時に、前記凹部の不必要な位置に間違って電極を形成して電極ショートを起こすことなどの不具合を防止することが可能となり、前記凹部を形成した前記基板の前記接合部と接する面の前記励振電極の形成が容易となる。
【0015】
前記構成において、前記堤部の壁面が、前記基板に対して垂直方向に形成されてもよい。
【0016】
この場合、前記基板上の振動領域(前記励振電極の形成位置)を確保する上で好適である。
【0017】
上記の目的を達成するため、本発明にかかる圧電振動デバイスは、上記した本発明にかかる圧電振動片と、前記圧電振動片に形成した前記励振電極を気密封止する蓋とが設けられたことを特徴とする。
【0018】
本発明によれば、上記した前記圧電振動片が設けられているので、前記圧電振動片の作用効果と同様の作用効果を有することが可能となる。
【0019】
上記の目的を達成するため、本発明にかかる圧電振動片の製造方法は、圧電振動を行う圧電振動片の製造方法において、圧電材料からなる基板と、前記基板に積層する堤部と、前記基板と前記堤部との間に介在させて前記基板と前記堤部との接合補強を行う、軟質の金属材料からなる接合部と、を用いて、前記基板に前記接合部と前記堤部とを順に積層し、前記基板に前記接合部および前記堤部を積層した後に、前記基板の厚さ調整を行うために前記基板の薄肉化を行い、前記基板に前記接合部および前記堤部を積層した後に、前記接合部と前記堤部とをエッチングして当該圧電振動片の一主面に振動領域を内底面とする凹部を形成し、前記凹部の内底面であって前記基板の前記接合部と接する面に励振電極を形成することを特徴とする。
【0020】
本発明によれば、特性を悪化させずに基板の振動領域の厚さを薄くして高周波化(本実施例では600MHz以上)に対応させることが可能となる。具体的に、高周波化を図るために前記基板の厚さを薄くした場合であっても、前記接合部と前記堤部を設けることで前記基板の強度を間接的に高めることでき、その結果、前記基板の割れや反りなどの物理的な悪影響も受けることはない。また、本発明によれば、前記基板の他に前記接合部と前記堤部とを用いているので、前記基板の割れや反りなどを考慮して前記基板を厚く設定する必要はなく、最初から前記基板を薄くすることが可能となる。その結果、前記基板に対して薄肉化を行なった除去量を減らすことが可能となり、前記基板の両主面の面荒れ(平均面粗さ)を抑えることが可能となる。
【0021】
前記方法において、前記基板の前記接合部と接する面を鏡面加工し、鏡面加工した前記に前記接合部と前記堤部とを順に積層してもよい。
【0022】
この場合、前記基板の前記接合部と接する面を鏡面加工するので、前記基板の前記接合部と接する面にボイドが発生するのを抑えることが可能となり、前記基板と前記接合部との接合強度を高めることが可能となる。また、前記基板に前記接合部と前記堤部とを順に積層する前に、前記基板の前記接合部と接する面を鏡面加工するので、励振電極を形成する前に前記凹部を形成した状態の前記基板の鏡面加工を必要とせず、容易に励振電極を基板の前記接合部と接する面に形成することが可能となる。
【0023】
前記構成において、前記接合部と、前記基板の前記接合部と接する面に形成された励振電極とは、同一材料からなってもよい。
【0024】
この場合、前記接合部の金属材料を、前記基板の前記接合部と接する面に形成された励振電極に用いるので、電極のエッチング成形のみで前記励振電極の形成を行うことが可能となる。そのため、前記圧電振動片の凹部に前記励振電極を形成する時に、前記凹部の不必要な位置に間違って電極を形成して電極ショートを起こすことなどの不具合を防止することが可能となり、前記凹部を形成した前記基板の前記接合部と接する面の前記励振電極の形成が容易となる。
【発明の効果】
【0025】
本発明によれば、特性を悪化させずに基板の振動領域の厚さを薄くして高周波化に対応させることが可能となる。
【発明を実施するための最良の形態】
【0026】
以下、本発明の実施の形態について図面を参照して説明する。なお、以下に示す実施例では、圧電振動デバイスとして水晶振動子に本発明を適用した場合を示す。
【0027】
本実施例にかかる水晶振動子1では、図1に示すように、水晶振動片2(本発明でいう圧電振動片)と、この水晶振動片2を保持するベース4と、ベース4に保持した水晶振動片2を気密封止するための蓋5が設けられている。
【0028】
この水晶振動子1では、ベース4と蓋5とからパッケージ6が構成され、ベース4と蓋5とが接合されてパッケージ6の内部空間7が形成され、このパッケージ6の内部空間7のベース4上に水晶振動片2が保持されるとともに、パッケージ6の内部空間7が気密封止される。この際、図1に示すように、水晶振動片2は、ベース4に、金属材料からなるバンプ8を用いてFCB法により電気機械的に超音波接合されている。
【0029】
次に、この水晶振動子1の各構成について図1〜3を用いて説明する。
【0030】
ベース4は、図1に示すように、底部41と、この底部41から上方に延出した壁部42とから構成される箱状体に形成されている。このベース4は、セラミック材料からなる平面視矩形状の一枚板上に、セラミック材料の直方体が積層して凹状に一体的に焼成されている。なお、本実施例にかかるベース4の平面視の寸法は、3.2mm×2.5mm以下に設定されている。
【0031】
また、ベース4の壁部42は、底部41の表面外周に沿って成形されている。壁部42の上面は、蓋5との接合領域であり、この接合領域には、蓋5と接合するためのメタライズ層43(例えば、タングステンメタライズ層上にニッケル,金の順でメッキした構成)が設けられている。
【0032】
また、内部空間7におけるベース4の底部41には、水晶振動片2の励振電極26それぞれと電気機械的に接合する2つの電極パッド44が形成されている。これら電極パッド44は、ベース4の外周裏面に形成される端子電極(図示省略)にそれぞれ電気機械的に接合されている。これら端子電極から外部部品や外部機器と接続される。なお、これらの端子電極および電極パッド44は、タングステン、モリブデン等のメタライズ材料を印刷した後にベース4と一体的に焼成して形成される。そして、端子電極および電極パッド44のうち一部のものについては、メタライズ上部にニッケルメッキが形成され、その上部に金メッキが形成されて構成される。なお、ここでいうメッキ形成の工法として、電解メッキ法や無電解メッキ法が挙げられる。
【0033】
蓋5は、例えば金属材料からなり、図1に示すように、平面視矩形状の一枚板に成形されている。この蓋5は、下面にろう材(図示省略)が形成されており、ビーム溶接等の手法によりベース4に接合されて、蓋5とベース4とによる水晶振動子1のパッケージ6が構成される。なお、本実施例にかかる蓋5の平面視の寸法は、3.2mm×2.5mm以下に設定されている。
【0034】
また、蓋5は、例えば、4層の熱膨張係数の異なる金属材料から形成されている。具体的に、ベース4との接続面となる蓋5の下面から、ろう材である銀ろう層、銅層、コバール層及びニッケル層が順に積層されている。
【0035】
水晶振動片2には、図1〜3に示すように、ATカット水晶片の基板20と、基板20に積層した堤部21と、基板20と堤部21との間に介在させて基板20と堤部21との接合補強を行う接合部22と、が設けられている。そして、堤部21と接合部22とが当該水晶振動片2の壁面23として構成されるとともに、基板20が当該水晶振動片2の台部として構成されている。
【0036】
水晶振動片2の基板20は、平面視矩形状の一枚板の直方体に成形され、基板20の外周形は直方体形状からなる。また、基板20の接合部22と接する面(基板20の一主面201)の全面が、鏡面加工されている。なお、本実施例にかかる基板20の主面寸法は、3.2mm×2.5mm以下に設定され、基板20の厚さ寸法は3μm以下に設定されている。
【0037】
また、この基板20の両主面201,202には一対の励振電極26が対向して形成されている。そして、励振電極26を外部電極(本実施例では、ベース4の電極パッド44)と電気機械的に接合するために励振電極26から引出電極(図示省略)が引き出し形成されている。そして、励振電極26が、引出電極からバンプ8を介してベース4の電極パッド44と電気機械的に接合されている。なお、励振電極26及び引出電極は、フォトリソグラフィ法により形成され、例えば、基板20側からクロム、金(Cr−Au)の順に積層して形成されている。なお、本実施例にかかる励振電極26の厚さ寸法は、0.2μm〜0.8μmの範囲に設定されている。
【0038】
水晶振動片2の接合部22は、軟質の金属材料からなり、基板20の一主面201の外周に沿って環状に設けられている。具体的に、本実施例では、クロム、金、クロム(Cr−Au−Cr)が順に積層されてなり、クロムを設けることで接合部22の金と基板20および堤部21との接合を良好にし、金を設けることで基板20や堤部21に生じるボイドに接合部22を充填させることが可能となる。なお、本実施例にかかる接合部22の厚さ寸法は、0.05μm〜2.00μmの範囲に設定されている。
【0039】
また、水晶振動片2の堤部21は、水晶(ATカット水晶基板やZ板など)からなり、基板20の一主面201の外周に沿って接合部22上に環状に設けられている。
【0040】
この水晶振動片2では、基板20上に壁面23を設けることにより当該水晶振動片2の一主面24に凹部27が形成され、この凹部27の内底面が当該水晶振動片2の振動領域28に設定される。また、凹部27の内底面には、上記した励振電極26が形成されている。
【0041】
次に、上記した水晶振動片2の製造方法について図1〜12を用いて説明する。
【0042】
まず、図4に示す基板20となるATカット水晶片を水晶インゴット(図示省略)から成形する。そして、水晶インゴットから成形した基板20の両主面201,202を、ポリッシュ研磨して基板20の両主面201,202を鏡面加工する。なお、基板20の両主面201,202をポリッシュ研磨することで、基板20の両主面201にボイドが発生するのを抑えることができる。
【0043】
両主面201,202を鏡面加工した基板20の一主面201の全面にクロム、金の順に真空蒸着(抵抗加熱蒸着)を行ない、図5に示すように、基板20の一主面201上に接合部22の一部221を形成する。なお、この接合部22の一部221の厚さは、励振電極26の厚さと同一に設定する。
【0044】
また、堤部21を構成する水晶を、基板20と同様にして水晶インゴット(図示省略)から成形する。そして、水晶インゴットから成形した堤部21の両主面211,212を、ポリッシュ研磨して堤部21の両主面211,212を鏡面加工する。なお、堤部21の両主面211,212をポリッシュ研磨することで、堤部21の両主面211,212にボイドが発生するのを抑えることができる。
【0045】
両主面201,202を鏡面加工した堤部21の両主面211,212の全面に、基板20と同様にしてクロム、金の順に真空蒸着(抵抗加熱蒸着)を行ない、図6に示すように、堤部21の一主面211上に保護メタル部3を形成するとともに、他主面212上に接合部22の他部222を形成する。
【0046】
そして、基板20の一主面201上に接合部22の一部221を形成するとともに、堤部21の他主面212上に接合部22の他部222を形成した後に、図7に示すように、接合部22の金同士の常温接合により接合部22を介して基板20上に堤部21を形成する。このように、接合部22の一部221と、接合部22の他部222との接合に常温接合を用いることで、基板20の一主面201と、堤部21の他主面212との接合部22を介した接合強度を高めることができる。具体的に、真空雰囲気下でイオンビームによる常温接合を用いることで、図5に示す接合部22の一部221と、図6に示す接合部22の他部222との金の表面を活性化させ、活性化させた接合部22の一部221の金と他部222の金とを共有結合させて接合部22を構成する。この接合部22の一部221の金と他部222の金との共有結合の結果、接合部22を介した基板20と堤部21との接合を良好にする。なお、ここでいう常温接合とは、温度200℃以下、圧力10-4Pa以下に設定された接合のことをいい、高圧や高温で転移し易い水晶からなる基板20に対して好適な接合である。また、ここでいう常温とは、400〜1000℃ぐらいの温度に対して、これより低温であることをいい、さらに本実施例に示すように200℃以下に設定されることが好適である。
【0047】
保護メタル部3を形成した後に、堤部21を所定の形状(基板20の一主面201の外周に沿った環状)にするために、図8に示すように、フォトリソグラフィ法により保護メタル部3のパターンニングを行う。
【0048】
保護メタル部3のパターンニングを行なった後に、図9に示すように基板20の他主面202を所望の厚さ(本実施例では3μm)になるまで研磨する。なお、この際、基板20の一主面201側に接合部22および堤部21を形成しているので、例えば基板20の厚さを3μm以下にした場合であっても、従来技術とは異なり基板20の反りや割れなどは生じない。
【0049】
基板20を所望の厚さまで研磨した後、図10に示すように、堤部21をフッ化アンモニウムによりウエットエッチングする。この際、基板20や堤部21のエッチングを行わない箇所をレジストによりエッチング保護して堤部21のウエットエッチングを行う。
【0050】
堤部21のウエットエッチングを行った後に露出した接合部22に対して、メタルエッチングを行い、図11に示すように基板20の一主面201の振動領域28を露出する。
【0051】
基板20の一主面201を露出した後に、図12に示すように保護メタル部3をメタルエッチングを行って除去し、水晶振動片2の外形を成形する。
【0052】
そして、水晶振動片2の外形を形成した後に、図2,3に示すように基板20の両主面201,202に、フォトリソグラフィ法により、一対の励振電極26を対向して形成するとともに、引出電極を形成して、水晶振動片2を製造する。
【0053】
上記したように、本実施例にかかる水晶振動片2によれば、基板20と堤部21と接合部22とが設けられ、堤部21と接合部22とが水晶振動片2の壁面23として構成されるとともに、基板20が水晶振動片2の台部として構成され、かつ、壁面23および台部により水晶振動片2の一主面24に凹部27が形成され、凹部27の内底面を含む基板20の両主面201,202に一対の励振電極26が対向して形成されるので、特性を悪化させずに基板20の振動領域28の厚さを薄くして高周波化(本実施例では600MHz以上)に対応させることができる。具体的に、高周波化を図るために基板20の厚さを薄くした場合であっても、接合部22と堤部21を設けることで基板20の強度を間接的に高めることでき、その結果、基板20の割れや反りなどの物理的な悪影響も受けることはない。
【0054】
また、基板20の接合部22と接する面(一主面201)が鏡面加工されるので、基板20の一主面201にボイドが発生するのを抑えることができる。
【0055】
また、接合部22の金属材料を、基板20の一主面201に形成された励振電極26に用いるので、電極のエッチング成形のみで励振電極26の形成を行うことができる。そのため、水晶振動片2の凹部27に励振電極26を形成する時に、凹部27の不必要な位置に間違って電極を形成して電極ショートを起こすことなどの不具合を防止することができ、凹部27を形成した基板20の一主面201の励振電極26の形成が容易となる。
【0056】
また、本実施例にかかる水晶振動子1の製造方法によれば、水晶振動片2が設けられるので、上記した水晶振動片2の作用効果と同様の作用効果を有する。
【0057】
また、本実施例にかかる水晶振動片2の製造方法によれば、基板20と堤部21と接合部22とを用いて基板20に接合部22と堤部21とを順に積層し、基板20に接合部22および堤部21を積層した後に、基板20の厚さ調整を行うために基板20の薄肉化を行い(本実施例では、ポリッシュ研磨とウエットエッチングを実施)、基板20に接合部22および堤部21を積層した後に、接合部22と堤部21とをエッチングして水晶振動片2の一主面24に振動領域28を内底面とする凹部27を形成し、凹部27の内底面であって基板20の一主面201に励振電極26を形成するので、特性を悪化させずに基板20の振動領域28の厚さを薄くして高周波化(本実施例では600MHz以上)に対応させることができる。具体的に、高周波化を図るために基板20の厚さを薄くした場合であっても、接合部22と堤部21を設けることで基板20の強度を間接的に高めることでき、その結果、基板20の割れや反りなどの物理的な悪影響も受けることはない。また、本実施例によれば、基板20の他に接合部22と堤部21とを用いているので、基板20の割れや反りなどを考慮して基板20を厚く設定する必要はなく、最初から基板20を薄くすることができる。その結果、基板20に対するエッチング量を減らすことができ、基板20の両主面201,202の面荒れ(平均面粗さ)を抑えることができる。
【0058】
また、本実施例にかかる水晶振動子1の製造方法によれば、基板20の少なくとも一主面201を鏡面加工するので、基板20の一主面201にボイドが発生するのを抑えることができ、基板20と接合部22との接合強度を高めることができる。また、基板20に接合部22と堤部21とを順に積層する前に、基板20の一主面201を鏡面加工するので、励振電極26を形成する前に凹部27を形成した状態の基板20の鏡面加工を必要とせず、容易に励振電極26を基板20の一主面201に形成することができる。
【0059】
なお、本実施例では、図1に示すように、平面視矩形上の一枚板の直方体に成形された蓋5と、凹状に成形されたベース4とを用いているが、これに限定されるものではなく、ベース4と蓋5とにより水晶振動片2を気密封止できれば、ベースと蓋の形状は任意に設定してもよい。例えば、平面視矩形上の一枚板の直方体に成形されたベースと、凹状に成形された蓋とを用いてもよい。
【0060】
また、本実施例では、水晶振動片2の外形を形成した後に基板20の両主面201,202にフォトリソグラフィ法により一対の励振電極26と引出電極を形成しているが、これに限定されずに、例えば、図13に示すように、接合部22を基板20の一主面201に形成する励振電極26および引出電極として用いてもよい。具体的に、接合部22の厚さと基板20の一主面201に形成する励振電極26の厚さとを図13に示すように同一にすることが好適であり、この場合、接合部22と基板20の一主面201に形成する励振電極26を同一工程で一括的に形成(成膜)することができ、その結果、励振電極26の形成工程に関する生産効率の向上を図ることができる。もしくは、基板20の一主面201に励振電極26を形成した後にその励振電極26を所望の厚さまでメタルエッチングを行ってもよい。
【0061】
ところで、凹部27を水晶振動片2の一主面24に設けた状態でその一主面24に電極(励振電極26や引出電極)を形成することは、水晶振動片2の一主面24が平坦面である場合と比較して難しい。しかしながら、図13に示すように接合部22と基板20の一主面201に形成する励振電極26とを同一材料にする構成によれば、接合部22の金属材料を水晶振動片2の一主面24側の励振電極26(および引出電極)に用いるので、電極のエッチング成形のみで励振電極26(および引出電極)の形成を行うことができる。そのため、水晶振動片2の凹部27に励振電極26と引出電極とを形成する時に、凹部27の壁面23などに間違って電極を形成して電極ショートを起こすことなどの不具合を防止することができ、凹部27を形成した水晶振動片2の一主面24側の励振電極26(および引出電極)の形成が容易となる。
【0062】
また、本実施例では、ベース4と蓋5とからなるパッケージ6を用いて水晶振動片2に形成した励振電極26の気密封止を行なっているが、励振電極26の気密封止はこれに限定されるものではなく、例えば、水晶振動片2の両主面24,25それぞれに蓋を接合して励振電極26を気密封止してもよく、この場合、水晶振動子の小型化を図ることが可能となる。具体的に、図2に示す水晶振動片2の場合、図14に示すように、その堤部21の上端面に平面視矩形状の一枚板に成形された蓋51を接合して基板20の一主面201に形成した励振電極26を気密封止し、箱状体の凹状に成形された蓋52を基板20の他主面202に接合して基板20の他主面202に形成した励振電極26を気密封止してもよい。
【0063】
また、本実施例では、ベース5上に水晶振動片2を、その基板20を接合部位として接合しているが、これに限定されるものではなく、ベース5上に水晶振動片2を図1に示す形態に対して上下面逆に配してもよい。具体的に、この構成によれば、図15に示すように、ベース5上に水晶振動片2を、その堤部21の上面を接合部位として接合することになる。この場合、堤部21の厚み(高さ)の分だけ、ベース20と、基板20の一主面201に形成された励振電極26との間隙をつくることができ、その結果、別途ベース20と基板20に形成された励振電極26との間隙を考慮した水晶振動子1の設計を行わなくてもよく、水晶振動子1の低背化に有効である。
【0064】
また、本実施例では、基板20の薄肉化を行なうために、ポリッシュ研磨とウエットエッチングを実施するが、これは好適な例でありこれに限定されるものではなく、単一の薄肉化処理であってもよく、他の薄肉化処理との組合せであってもよい。例えば、ポリッシュ研磨だけでもよく、またはドライエッチングとウエットエッチングとを併用してもよい。
【0065】
また、本実施例では、水晶振動片2の両主面24,25それぞれに1つの励振電極26を形成しているが、これに限定されるものではなく、使用用途に合わせて両主面24,25それぞれに形成される励振電極の数を任意に設定してもよい。例えば、両主面それぞれに2つの励振電極が形成されてもよく、または、一主面に1つの励振電極が形成されるとともに他主面に2つの励振電極が形成されたフィルタ素子構成としてもよい。
【0066】
また、水晶振動片2の引き出し電極は、上記した実施例に限定されるものではなく、さらにメッキ形成されてもよい。なお、ここでいうメッキ形成の工法として、電解メッキ法や無電解メッキ法が用いられる。
【0067】
また、本実施例では、ATカット水晶片を基板20に用いているが、これは好適な例でありこれに限定されるものではなく、圧電材料であれば他の材料であってもよい。
【0068】
また、本実施例では、接合部22と励振電極26とを別構成としているが、これに限定されるものでなく、接合部22と基板20の一主面201に形成した励振電極26とが同一材料からなってもよい。
【0069】
また、本実施例では、堤部21に水晶を用いているが、これに限定されるものではなく、ガラスやシリコンなどを用いてもよい。特にシリコンを用いてドライエッチングにより堤部21の壁面23を成形した場合、結晶方向ではなく、基板20に対して任意の方向(特に基板20に対して垂直方向)をエッチング方向とすることができるので、基板20上の振動領域(励振電極26の形成位置)を確保する上で好適である。また、このことは堤部21にガラスを用いた場合も同様であり、ガラスの場合、任意のエッチング方法により、基板20に対して垂直方向をエッチング方向とすることができるので、好適である。
【0070】
また、実施例では、基板20の両主面201,202と、堤部21の両主面211,212とをポリッシュ研磨して鏡面加工しているが、これはボイドの発生を抑制するのに好適な例であり、これに限定されるものではなく、基板20の両主面201,202のみをポリッシュ研磨して鏡面加工してもよい。この場合、堤部21を形成した際にボイドが発生する場合もあるが、接合部22に軟質の金属材料を用いているので、ボイドに接合部22の金属材料が配される(充填される)。その結果、堤部21と接合部22との接合の際に、堤部21と接合部22との間で空間が生じるのを抑制することができ、堤部21と接合部22との接合強度を高めることができる。また、この効果は、基板20と接合部22の接合においても生じるが、基板20の一主面201は鏡面加工されているので、堤部21と比べてボイドの発生などは少ない。
【0071】
また、本実施例では、接合部22は、クロム、金、クロムの順に積層して構成しているが、これに限定されるものではなく、軟質の金属材料であればよく例えば金の代わりにプラチナを用いてもよい。
【0072】
なお、本発明は、その精神や主旨または主要な特徴から逸脱することなく、他のいろいろな形で実施することができる。そのため、上述の実施例はあらゆる点で単なる例示にすぎず、限定的に解釈してはならない。本発明の範囲は特許請求の範囲によって示すものであって、明細書本文には、なんら拘束されない。さらに、特許請求の範囲の均等範囲に属する変形や変更は、全て本発明の範囲内のものである。
【産業上の利用可能性】
【0073】
本発明は、水晶振動片などの基板の材料に水晶を用いた圧電振動片、圧電振動デバイス、および圧電振動片の製造方法に好適である。
【図面の簡単な説明】
【0074】
【図1】図1は、本実施例にかかる水晶振動子の概略構成図である。
【図2】図2は、本実施例にかかる水晶振動片の概略側面図である。
【図3】図3は、本実施例にかかる水晶振動片の概略平面図である。
【図4】図4は、本実施例にかかる水晶振動片の製造方法を示した概略図である。
【図5】図5は、本実施例にかかる水晶振動片の製造方法を示した概略図である。
【図6】図6は、本実施例にかかる水晶振動片の製造方法を示した概略図である。
【図7】図7は、本実施例にかかる水晶振動片の製造方法を示した概略図である。
【図8】図8は、本実施例にかかる水晶振動片の製造方法を示した概略図である。
【図9】図9は、本実施例にかかる水晶振動片の製造方法を示した概略図である。
【図10】図10は、本実施例にかかる水晶振動片の製造方法を示した概略図である。
【図11】図11は、本実施例にかかる水晶振動片の製造方法を示した概略図である。
【図12】図12は、本実施例にかかる水晶振動片の製造方法を示した概略図である。
【図13】図13は、本実施例の他の例にかかる水晶振動片の概略側面図である。
【図14】図14は、本実施例の他の例にかかる水晶振動子の概略構成図である。
【図15】図15は、本実施例の他の例にかかる水晶振動子の概略構成図である。
【符号の説明】
【0075】
1 水晶振動子
2 水晶振動片
20 基板
201,202 基板の両主面
21 堤部
22 接合部
23 壁部
26 励振電極
27 凹部
5,51,52 蓋

【特許請求の範囲】
【請求項1】
圧電振動を行う圧電振動片において、
圧電材料からなる基板と、
前記基板に積層した堤部と、
前記基板と前記堤部との間に介在させて前記基板と前記堤部との接合補強を行う、軟質の金属材料からなる接合部と、が設けられ、
前記堤部と前記接合部とが当該圧電振動片の壁面として構成されるとともに、前記基板が当該圧電振動片の台部として構成され、かつ、前記壁面および前記台部により当該圧電振動片の一主面に凹部が形成され、
前記凹部の内底面を含む前記基板の両主面に一対の励振電極が対向して形成されたことを特徴とする圧電振動片。
【請求項2】
請求項1に記載の圧電振動片において、
前記基板の前記接合部と接する面が、鏡面加工されたことを特徴とする圧電振動片。
【請求項3】
請求項1または2に記載の圧電振動片において、
前記接合部と、前記基板の前記接合部と接する面に形成された励振電極とは、同一材料からなることを特徴とする圧電振動片。
【請求項4】
請求項1乃至3のうちいずれか1つに記載の圧電振動片において、
前記堤部の壁面が、前記基板に対して垂直方向に形成されたことを特徴とする圧電振動片。
【請求項5】
圧電振動デバイスにおいて、
請求項1乃至4のうちいずれか1つに記載の圧電振動片と、前記圧電振動片に形成した前記励振電極を気密封止する蓋とが設けられたことを特徴とする圧電振動デバイス。
【請求項6】
圧電振動を行う圧電振動片の製造方法において、
圧電材料からなる基板と、前記基板に積層する堤部と、前記基板と前記堤部との間に介在させて前記基板と前記堤部との接合補強を行う、軟質の金属材料からなる接合部と、を用いて、前記基板に前記接合部と前記堤部とを順に積層し、
前記基板に前記接合部および前記堤部を積層した後に、前記基板の厚さ調整を行うために前記基板の薄肉化を行い、
前記基板に前記接合部および前記堤部を積層した後に、前記接合部と前記堤部とをエッチングして当該圧電振動片の一主面に振動領域を内底面とする凹部を形成し、
前記凹部の内底面であって前記基板の前記接合部と接する面に励振電極を形成することを特徴とする圧電振動片の製造方法。
【請求項7】
請求項6に記載の圧電振動片の製造方法において、
前記基板の前記接合部と接する面を鏡面加工し、鏡面加工した前記基板に前記接合部と前記堤部とを順に積層することを特徴とする圧電振動片の製造方法。
【請求項8】
請求項6または7に記載の圧電振動片の製造方法において、
前記接合部と、前記基板の前記接合部と接する面に形成された励振電極とは、同一材料からなることを特徴とする圧電振動片の製造方法。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【図6】
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【図7】
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【図8】
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【図9】
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【図10】
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【図11】
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【図12】
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【図13】
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【図14】
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【図15】
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【公開番号】特開2009−124587(P2009−124587A)
【公開日】平成21年6月4日(2009.6.4)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2007−298348(P2007−298348)
【出願日】平成19年11月16日(2007.11.16)
【出願人】(000149734)株式会社大真空 (312)
【Fターム(参考)】