説明

圧電発振回路、恒温型圧電発振器

【課題】 固定電位が変動しても、振動子の端子間電位の変動を抑えることで安定した発振周波数を得られる圧電発振回路、恒温型圧電発振器を提供する。
【解決手段】 コルピッツ型発振回路30と、発振周波数を調整するための可変容量のコンデンサーを含む回路からなる第1の回路部20と、抵抗を含む回路からなる第2の回路部50と、前記第1の回路部および前記第2の回路部に接続される第1の端子41と前記コルピッツ型発振回路に接続される第2の端子42とを有する圧電振動子40と、を含み、コルピッツ型発振回路30は、分割抵抗を介して第2の端子42を固定電位に接続し、第2の回路部50は、前記抵抗を介して第1の端子41を前記固定電位に接続する。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、圧電発振回路、恒温型圧電発振器等に関する。
【背景技術】
【0002】
恒温型圧電発振器は、恒温槽によって振動子の動作温度を一定にすることで周波数安定度を高めている。圧電素子として水晶振動子を用いた恒温槽付水晶発振器(OCXO)の例では、周波数偏差は最大でも0.05ppm程度であり 、無線通信基地局や有線ネットワーク機器などで使用されている。
【0003】
特許文献1には、恒温型圧電発振器が例えばパワートランジスタ、温度感応抵抗(サーミスター)、発熱用のチップ抵抗を含むことが書かれている。そして、パワートランジスタがサーミスターの抵抗値によって制御される電力をチップ抵抗に供給することで振動子の動作温度を一定にする。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0004】
【特許文献1】特開2006−311496号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0005】
低温の使用環境において、恒温型圧電発振器は振動子を所定の動作温度で動作させるために大きな電流を流す必要がある。理想的には接地抵抗は無視できるほど小さく接地電位(GND)は使用環境によって変動することはない。しかし、現実には微小な抵抗値を有しており、大きな電流を流した場合には、接地電位が例えば数mV程度浮くことがあり得る。もし、このような接地電位の変動が振動子の一方の端子のみに影響を与えると、振動子の端子間の直流電位差が変動して発振周波数も変わってしまう。
【0006】
本発明はこのような問題点に鑑みてなされたものである。本発明のいくつかの態様によれば、回路構成の工夫により、固定電位が変動しても、振動子の端子間電位の変動を抑えることで安定した発振周波数を得られる圧電発振回路、恒温型圧電発振器等を提供する。
【課題を解決するための手段】
【0007】
(1)本発明は、コルピッツ型発振回路と、発振周波数を調整するための可変容量のコンデンサーを含む回路からなる第1の回路部と、抵抗を含む回路からなる第2の回路部と、前記第1の回路部および前記第2の回路部に接続される第1の端子と前記コルピッツ型発振回路に接続される第2の端子とを有する圧電振動子と、を含み、前記コルピッツ型発振回路は、分割抵抗を介して前記第2の端子を固定電位に接続し、前記第2の回路部は、前記抵抗を介して前記第1の端子を前記固定電位に接続する圧電発振回路である。
【0008】
(2)この圧電発振回路において、前記固定電位は、接地電位であってもよい。
【0009】
これらの発明によれば、圧電振動子の第1の端子および第2の端子は共に抵抗を介してある固定電位に接続されており、この固定電位が変動しても端子間電位の変動を抑えることができるので安定した発振周波数を得られる。この固定電位とは例えば接地電位である。そして、第1の端子と接続されている第1の回路部は、発振周波数を調整するためのコンデンサーを含む。このコンデンサーは、固定容量であってもよいが可変容量であるとする。
【0010】
第1の回路部はそのコンデンサーによって発振周波数を調整することを目的とする。一方、第1の端子と接続されている第2の回路部は、発振周波数を安定させることを目的とする。第2の端子と接続されているコルピッツ型発振回路において、第2の端子は抵抗分割回路の分割抵抗を介して固定電位に接続される。第2の回路部では、第1の端子も同じ固定電位に接続されるようにすることで、端子間電位の変動を抑えて発振周波数を安定させることができる。
【0011】
(3)この圧電発振回路において、前記第1の回路部は、可変容量素子として用いるバリキャップを含み、前記バリキャップの静電容量を定める制御電圧を入力してもよい。
【0012】
(4)この圧電発振回路において、前記第1の回路部は、固定容量のコンデンサーを含み、前記バリキャップのアノード端子を、前記可変容量のコンデンサーを介して前記第1の端子に接続するとともに、前記第2の回路部の抵抗とは異なる抵抗を介して前記固定電位に接続し、前記制御電圧が印加される前記バリキャップのカソード端子を、前記固定容量のコンデンサーを介して前記固定電位に接続してもよい。
【0013】
これらの発明によれば、第1の回路部は、入力された制御電圧の変化に応じて容量を変えるバリキャップ(可変容量ダイオード)を含むことによって、より柔軟な発振周波数の調整を行うことができる。なお、第1の回路部が含むバリキャップは1つでも複数であってもよい。また、第1の回路部はバリキャップ以外に固定容量のコンデンサーを含み、バリキャップを発振周波数の微調整目的で用いてもよい。バリキャップによる周波数可変範囲が限られているため、固定容量のコンデンサーと組み合わせることで所望の発振周波数を得やすくなる。
【0014】
(5)この圧電発振回路において、前記第1の回路部は、互いのカソード端子が接続された第1のバリキャップと第2のバリキャップとを含み、前記第1のバリキャップのアノード端子を、前記可変容量のコンデンサーを介して前記第1の端子に接続するとともに、前記第2の回路部の抵抗とは異なる抵抗を介して前記固定電位に接続し、前記第2のバリキャップのアノード端子を、前記固定電位に接続し、前記第1のバリキャップおよび第2のバリキャップのカソード端子に前記制御電圧を印加してもよい。
【0015】
(6)この圧電発振回路において、前記第2の回路部は、直列に接続された第1の抵抗と第2の抵抗とを含み、前記第1の抵抗は前記第2の抵抗と接続された端子と前記第1の端子に接続された端子とを備え、前記第2の抵抗は前記第1の抵抗と接続された端子と前記固定電位に接続された端子とを備え、前記第1の回路部は、互いのカソード端子が接続された第1のバリキャップと第2のバリキャップとを含み、前記第1のバリキャップのアノード端子を、前記可変容量のコンデンサーを介して前記第1の端子に接続するとともに、前記第2の抵抗を介して前記固定電位に接続し、前記第2のバリキャップのアノード端子を、前記固定電位に接続し、前記第1のバリキャップおよび第2のバリキャップのカソード端子に前記制御電圧を印加してもよい。
【0016】
これらの発明によれば、2つのバリキャップを組み合わせて使用することにより、制御電圧で変化させられる周波数可変範囲を拡大することができる。そのため、所望の発振周波数が得やすくなる。
【0017】
(7)この圧電発振回路において、前記第1の回路部は、前記バリキャップのアノード端子を前記第1の端子に接続し、前記制御電圧が印加される前記バリキャップのカソード端子を、前記可変容量のコンデンサーを介して前記固定電位に接続してもよい。
【0018】
(8)この圧電発振回路において、前記第1の回路部は、前記バリキャップのアノード端子を前記固定電位に接続し、前記制御電圧が印加される前記バリキャップのカソード端子を、前記可変容量のコンデンサーを介して前記第1の端子に接続してもよい。
【0019】
これらの発明によれば、第1の回路部を構成する素子を少なくすることができるために、全体としての回路規模が小さくなる。
【0020】
(9)本発明は、前記のいずれかに記載の圧電発振回路を含む恒温型圧電発振器である。
【0021】
本発明によれば、例えば使用環境の変化によって固定電位が変動しても、振動子の端子間電位の変動を抑えることで安定した発振周波数を得られる恒温型圧電発振器等を提供できる。
【図面の簡単な説明】
【0022】
【図1】第1実施形態の圧電発振回路のブロック図。
【図2】第1実施形態の圧電発振回路の回路図。
【図3】第2実施形態の圧電発振回路の回路図。
【図4】第3実施形態の圧電発振回路の回路図。
【図5】第4実施形態の圧電発振回路の回路図。
【図6】第5実施形態の圧電発振回路の回路図。
【図7】比較例の圧電発振回路の回路図。
【図8】図8(A)〜図8(B)は恒温型圧電発振器の説明図。
【発明を実施するための形態】
【0023】
1.第1実施形態
本発明の第1実施形態について図1〜図2を参照して説明する。また、比較例の説明において図7〜図8も参照する。
【0024】
1.1.本実施形態の圧電発振回路の概要
図1は本実施形態の圧電発振回路10のブロック図である。圧電発振回路10は、第1の回路部20、コルピッツ型発振回路30、圧電振動子40、第2の回路部50を含む。
【0025】
第1の回路部20は、少なくとも1つのコンデンサーを含んでおり、その負荷容量によって発振周波数を調整する。第1の回路部20は、圧電振動子40の一方の端子である第1の端子41に接続されている。コルピッツ型発振回路30は、圧電振動子40の他方の端子である第2の端子42に接続されている。
【0026】
本実施形態の圧電発振回路10は、更に第2の回路部50を第1の端子41に接続することによって発振周波数を安定させる。コルピッツ型発振回路30において第2の端子42は抵抗を介して固定電位に接続されている。この固定電位は、本実施形態では接地電位であるが、接地電位に限るものではない。本実施形態では、第2の回路部50によって第1の端子41も抵抗を介して接地電位に接続される。すると、接地電位が変動したとしても第1の端子41と第2の端子42に等しく影響を与えるために、圧電振動子40の端子間の直流電位差は変化しない。よって、本実施形態の圧電発振回路10は、発振周波数を安定させることができる。
【0027】
1.2.比較例の圧電発振回路との比較
本実施形態の圧電発振回路の回路図を示す前に、比較例の圧電発振回路と恒温型圧電発振器に適用した場合の問題について図7〜図8を用いて説明する。比較例の圧電発振回路を説明した後に、図2を用いて本実施形態の圧電発振回路の回路図を示して比較する。
【0028】
1.2.1.比較例の圧電発振回路
図7は、比較例の圧電発振回路110の回路図である。圧電発振回路110は、第1の回路部120、コルピッツ型発振回路130、圧電振動子140を含む。これらの構成要素は、それぞれ第1実施形態の圧電発振回路10における第1の回路部20、コルピッツ型発振回路30、圧電振動子40に対応する。しかし、比較例の圧電発振回路110は、第1実施形態の第2の回路部50に対応する回路は含まない。
【0029】
第1の回路部120は、発振周波数を調整するためのコンデンサーを含む素子で構成されている。具体的には、コンデンサー121、123、バリキャップ122、抵抗124によって図7のように構成される。この例では、周波数調整用のコンデンサー121、123のうち、コンデンサー121は可変容量コンデンサーであるが、コンデンサー123の容量は固定されている。なお、コンデンサー121の容量が固定されていてもよいし、逆にコンデンサー123の容量が可変であってもよい。コンデンサー121、123の容量によって発振周波数が概ね決定されて、バリキャップ122は発振周波数の微調整に用いられる。バリキャップ122の制御電圧VCINは入力抵抗160を介して供給されてもよい。抵抗124は、バリキャップ122のアノード端子の直流電位を固定して、バリキャップ122の静電容量を確定させるために必要である。第1の回路部120は、圧電振動子140の第1の端子141に接続されている。具体的には、コンデンサー121の一方の端子が第1の端子141に接続されている。
【0030】
なお、第1の回路部120では、コンデンサー123の存在によってサイン波である内部信号161がクリップされることを防ぐことができる。つまり、内部信号161のサイン波は制御電圧VCINに基づく電位に重畳されるが、制御電圧VCINが変化してもコンデンサー123が存在するために接地電位でクリップされることを防ぐことができる。また、バリキャップ122は整流作用を有するため、制御電圧VCINのレベルによってはサイン波がクリップされ得る。しかし、この回路では、抵抗124の抵抗値を適当に選択することでこの問題の回避が可能である。
【0031】
コルピッツ型発振回路130は、発振用トランジスタ136、抵抗131、132、133、137、コンデンサー134、135で図7に示すように構成される。コルピッツ型発振回路130は圧電振動子140の第2の端子142と接続されている。第2の端子142からの信号は、抵抗(分割抵抗)131、133で構成される抵抗分割回路により与えられるバイアス電圧によりレベルを調整されて、発振用トランジスタ136のゲートに入力される。コルピッツ型発振回路130は、例えば内部信号163に基づいて出力信号を生成してもよい。
【0032】
1.2.2.比較例の圧電発振回路の問題点
比較例の圧電発振回路110では、第2の端子142が抵抗133を介して接地電位に接続されているのに対し、第1の端子141はコンデンサー121によって、いわゆる浮いた状態となっている。もし、接地電位が変動する場合には、その影響は第2の端子142にだけ及ぶため、圧電振動子140の端子間に変動に伴う直流電位差が生じる。すると、その直流電位差によって発振周波数も変動し、発振周波数が安定しないという問題を生じる。
【0033】
ここで、図8(A)〜図8(B)は、恒温型圧電発振器の例を示す図である。後述のように恒温型圧電発振器は使用動作環境によって接地電位の変動があり得る。そのため、非常に高い周波数安定度を要求される恒温型圧電発振器に比較例の圧電発振回路110を適用すると仕様上の問題を生じる可能性がある。以下に、比較例の圧電発振回路110を恒温型圧電発振器1に適用した場合の問題の具体例を説明する。
【0034】
図8(A)は恒温型圧電発振器1の上面図である。恒温型圧電発振器1は、基板8の上に発振用素子7、感温素子5、温度制御用素子3を配置している。なお、丸い部分は基板や部品の支持材を示している。支持材は部品等を支持するだけでなく、例えば内部に配線を通して電気的な接続を行ってもよい。発振用素子7は、圧電発振回路110のコルピッツ型発振回路130や第1の回路部120を構成する。感温素子5は例えばサーミスターであり、感知する温度に従って抵抗を変化させる。感温素子5が感知する温度とは例えばヒーターから十分に離れた位置における恒温槽内の温度であってもよい。温度制御用素子3は感温素子5や後述する感温素子4の状態から温度を把握して、恒温槽が目標温度に保たれるようにヒーターを制御する。なお、恒温型圧電発振器1は例えば金属製のカバー9で封止されて恒温槽を形成するが、カバー9の図示は省略する。
【0035】
図8(B)は恒温型圧電発振器1の側面図である。図8(B)は、図8(A)の恒温型圧電発振器1を紙面下方から見た場合の図であり、図8(A)と同じ要素には同じ番号を付しており説明は省略する。
【0036】
基板8の下方に、圧電振動子2、パワートランジスタ6、別の感温素子4が支持材によって固定されている。圧電振動子2は、圧電発振回路110の圧電振動子140に対応する。パワートランジスタ6は、恒温槽内を一定の温度に保つためのヒーターとして用いられる。例えばパワートランジスタ6のドレイン電流を温度制御用素子3によって調整することで、恒温槽内の温度を一定に保つことができる。感温素子4はヒーターとして用いられるパワートランジスタ6の温度を直接感知してもよい。温度制御用素子3は、感温素子4や感温素子5の状態から正確に温度を把握して、パワートランジスタ6のドレイン電流を調整する。なお、感温素子4から温度制御用素子3に延びたリード線(図外)が、感温素子4の保持部材としての役割を兼ねていてもよい。
【0037】
この例において、恒温型圧電発振器1の使用環境温度が低下すると、恒温槽内を一定の温度に保つためにパワートランジスタ6に大きなドレイン電流が流れることになる。このとき、恒温型圧電発振器1で用いられる接地電位は現実には微小な抵抗値を有しており、大きなドレイン電流が流れた場合に接地電位が数mV程度浮くことがあり得る。すると、前記のように恒温型圧電発振器1で用いられる比較例の圧電発振回路110において、圧電振動子140の端子間に接地電位の変動に伴う直流電位差が生じる。そのため、発振周波数も変動し、恒温型圧電発振器1の仕様上の周波数安定度(例えば0.05ppm)を満たさなくなるおそれが生じる。
【0038】
1.2.3.本実施形態の圧電発振回路による問題の解決
図2は、本実施形態の圧電発振回路10の回路図である。なお、図1と同じ要素には同じ番号を付しており説明は省略する。
【0039】
本実施形態の圧電発振回路10は、比較例の圧電発振回路110(図7)に第2の回路部50を追加したものである。第1の回路部20、コルピッツ型発振回路30、圧電振動子40はそれぞれ、比較例の圧電発振回路110における第1の回路部120、コルピッツ型発振回路130、圧電振動子140に対応しており、回路構成も同じである。これらの説明は比較例と重複するので省略する。
【0040】
第2の回路部50は、圧電振動子40の第1の端子41を、抵抗51を介して接地電位に接続する。ここで、第2の端子42は、コルピッツ型発振回路30の抵抗分割回路において、分割抵抗33を介して接地電位に接続されている。そのため、第2の回路部50によって、圧電振動子40の両端子が共に抵抗を介して接地電位に接続されることになる。そのため、接地電位が変動したとしても第1の端子41と第2の端子42に等しく影響を与え、圧電振動子40の端子間の直流電位差は変化しない。よって、本実施形態の圧電発振回路10は、比較例に比べて発振周波数を安定させることができる。
【0041】
そして、本実施形態の圧電発振回路10は、非常に高い周波数安定度を要求される恒温型圧電発振器にも適用することができる。例えば、図8(A)および図8(B)の恒温型圧電発振器1における発振用素子7と圧電振動子2で、本実施形態の圧電発振回路10を構成することができる。このとき、比較例の圧電発振回路110を適用した場合と比べて、環境温度が低い場合の使用でも高い周波数安定度を示す恒温型圧電発振器1を実現することができる。
【0042】
なお、圧電発振回路10において、例えば抵抗分割回路を構成する分割抵抗33の抵抗値は数kΩ〜数十kΩ程度であるが、第2の回路部50の抵抗51の抵抗値は数百kΩ〜数MΩ程度であってもよい。そのため、圧電発振回路10は、第2の回路部50を備えることで消費電力が大きくなるといった問題は生じない。また、比較例に比べて、抵抗1個の追加であるため、回路規模もほとんど増大することがない。
【0043】
第1実施形態の圧電発振回路10および圧電発振回路10を適用した恒温型圧電発振器1は、接地電位が変動しても、圧電振動子40の端子間電位の変動を抑えることで安定した発振周波数を得られる。
【0044】
2.第2実施形態
本発明の第2実施形態について図3を参照して説明する。図1〜図2、図7と同じ要素には同じ番号を付しており説明は省略する。また、本実施形態の圧電発振回路も図8に例示した恒温型圧電発振器に好適に適用できる。
【0045】
図3は、第2実施形態の圧電発振回路10の回路図である。本実施形態の圧電発振回路10は、第1実施形態と比べて第1の回路部20Aが異なる。本実施形態では第1実施形態と違って、第1の回路部20Aは、互いのカソード端子が接続された第1のバリキャップ22Aと第2のバリキャップ22Bとを含む。そして、第1のバリキャップ22Aのアノード端子を、可変容量のコンデンサー21を介して第1の端子に接続し、第2のバリキャップ22Bのアノード端子を接地電位に接続する。第1のバリキャップ22Aおよび第2のバリキャップ22Bのカソード端子に入力抵抗60を介して制御電圧VCINが供給される。バリキャップの静電容量を確定させるための抵抗24は第1のバリキャップ22Aにのみ必要である。
【0046】
本実施形態の圧電発振回路10は、2つのバリキャップ22A、22Bを組み合わせて使用することにより、制御電圧VCINで変化させられる周波数可変範囲を拡大することができる。そのため、所望の発振周波数が得やすくなる。
【0047】
3.第3実施形態
本発明の第3実施形態について図4を参照して説明する。図1〜図3、図7と同じ要素には同じ番号を付しており説明は省略する。また、本実施形態の圧電発振回路も図8に例示した恒温型圧電発振器に好適に適用できる。
【0048】
図4は、第3実施形態の圧電発振回路10の回路図である。本実施形態の圧電発振回路10は、第2実施形態と比べて第1の回路部20B、第2の回路部50Aが異なる。本実施形態では第2実施形態と違って、第1の回路部20Bは、第1のバリキャップ22Aの静電容量を確定させるための抵抗を含まない。第1のバリキャップ22Aのアノードは内部信号62によって第2の回路部50Aと接続される。そして、第2の回路部50Aの抵抗51Bを介して接地電位に接続されている。本実施形態の第2の回路部50Aは、直列に接続された抵抗51Aと抵抗51Bとを介して、第1の端子41を接地電位に接続する。
【0049】
本実施形態では、第1のバリキャップ22Aのアノード端子に接続される抵抗を、第1の回路部20Bに含めることなく、第2の回路部50Aに含まれる抵抗51Bを利用して実現する。例えば、圧電発振回路10において、抵抗値や容量を調整するための予備の素子が予めアレイ状に配置されている場合がある。そのアレイ状に配置された一部の抵抗を用いて、又は、コンデンサーを抵抗に置き換えて第2の回路部50Aを構成すれば、回路規模を増加させずに、既存のレイアウトを利用して発振周波数を安定させるための第2の回路部50Aを追加することができる。さらに第1のバリキャップ22Aのアノード端子に接続される抵抗を、第2の回路部50Aの一部で兼用させれば、回路規模を小さくすることが可能である。
【0050】
本実施形態では、第2実施形態と同様に、2つのバリキャップ22A、22Bを組み合わせて使用することにより、制御電圧VCINで変化させられる周波数可変範囲を拡大することができる。そして、前記のように回路規模の増加を抑えつつ発振周波数を安定させることが可能である。
【0051】
4.第4実施形態
本発明の第4実施形態について図5を参照して説明する。図1〜図4、図7と同じ要素には同じ番号を付しており説明は省略する。また、本実施形態の圧電発振回路も図8に例示した恒温型圧電発振器に好適に適用できる。
【0052】
図5は、第4実施形態の圧電発振回路10の回路図である。本実施形態の圧電発振回路10は、第1実施形態と比べて第1の回路部20Cのみが異なり、第1の回路部20Cの構成をシンプルにすることで回路規模を小さくしている。本実施形態の第1の回路部20Cの構成を第1実施形態(図2参照)と比較しながら説明する。
【0053】
本実施形態の第1の回路部20Cは、第1実施形態のコンデンサー23を省略し、可変容量のコンデンサー21を第1実施形態のコンデンサー23の位置に移動させている。また第2の回路部50の抵抗51は、バリキャップ22の静電容量を確定させる機能も兼ねている。本実施形態の第1の回路部20Cは、第1実施形態の第1の回路部20からコンデンサー23、抵抗24を省略しており、第1実施形態と比べて回路規模が小さくなっている。
【0054】
本実施形態の圧電発振回路10は、回路規模を小さく抑えつつ、固定電位の変動に伴う圧電振動子40の端子間電位の変動を抑えることで安定した発振周波数を得られる。ただし、制御電圧VCINの変化は、発振周波数を定めるコンデンサー21にも影響を与えることに留意する必要がある。
【0055】
5.第5実施形態
本発明の第5実施形態について図6を参照して説明する。図1〜図5、図7と同じ要素には同じ番号を付しており説明は省略する。また、本実施形態の圧電発振回路も図8に例示した恒温型圧電発振器に好適に適用できる。
【0056】
図6は、第5実施形態の圧電発振回路10の回路図である。本実施形態の圧電発振回路10は、第4実施形態と比べて第1の回路部20Dのみが異なり、バリキャップ22とコンデンサー21の位置を入れ換えた回路になっている。
【0057】
本実施形態の圧電発振回路10は、第4実施形態と同様に、回路規模を小さく抑えつつ、固定電位の変動に伴う圧電振動子40の端子間電位の変動を抑えることで安定した発振周波数を得られる。ただし、制御電圧VCINのレベルによっては、バリキャップ22の整流作用によってサイン波がクリップされ得ることに留意する必要がある。
【0058】
これらの例示に限らず、本発明は、実施の形態で説明した構成と実質的に同一の構成(例えば、機能、方法および結果が同一の構成、あるいは目的および効果が同一の構成)を含む。また、本発明は、実施の形態で説明した構成の本質的でない部分を置き換えた構成を含む。また、本発明は、実施の形態で説明した構成と同一の作用効果を奏する構成又は同一の目的を達成することができる構成を含む。また、本発明は、実施の形態で説明した構成に公知技術を付加した構成を含む。
【符号の説明】
【0059】
1…恒温型圧電発振器、2…圧電振動子、3…温度制御用素子、4…感温素子、5…感温素子、6…パワートランジスタ、7…発振用素子、8…基板、9…カバー、10…圧電発振回路、20…第1の回路部、20A…第1の回路部、20B…第1の回路部、20C…第1の回路部、20D…第1の回路部、21…コンデンサー、22…バリキャップ、22A…第1のバリキャップ、22B…第2のバリキャップ、23…コンデンサー、24…抵抗、30…コルピッツ型発振回路、31…抵抗(分割抵抗)、32…抵抗、33…抵抗(分割抵抗)、34…コンデンサー、35…コンデンサー、36…発振用トランジスタ、37…抵抗、40…圧電振動子、41…(圧電振動子の)第1の端子、42…(圧電振動子の)第2の端子、50…第2の回路部、50A…第2の回路部、51…抵抗、51A…抵抗、51B…抵抗、60…入力抵抗、61…内部信号、62…内部信号、63…内部信号、110…圧電発振回路、120…第1の回路部、121…コンデンサー、122…バリキャップ、123…コンデンサー、124…抵抗、130…コルピッツ型発振回路、131…抵抗(分割抵抗)、132…抵抗、133…抵抗(分割抵抗)、134…コンデンサー、135…コンデンサー、136…発振用トランジスタ、137…抵抗、140…圧電振動子、141…第1の端子、142…第2の端子、160…入力抵抗、161…内部信号、163…内部信号

【特許請求の範囲】
【請求項1】
コルピッツ型発振回路と、
発振周波数を調整するための可変容量のコンデンサーを含む回路からなる第1の回路部と、
抵抗を含む回路からなる第2の回路部と、
前記第1の回路部および前記第2の回路部に接続される第1の端子と前記コルピッツ型発振回路に接続される第2の端子とを有する圧電振動子と、を含み、
前記コルピッツ型発振回路は、
分割抵抗を介して前記第2の端子を固定電位に接続し、
前記第2の回路部は、
前記抵抗を介して前記第1の端子を前記固定電位に接続する圧電発振回路。
【請求項2】
請求項1に記載の圧電発振回路において、
前記固定電位は、接地電位である圧電発振回路。
【請求項3】
請求項1乃至2のいずれかに記載の圧電発振回路において、
前記第1の回路部は、
可変容量素子として用いるバリキャップを含み、
前記バリキャップの静電容量を定める制御電圧を入力する圧電発振回路。
【請求項4】
請求項3に記載の圧電発振回路において、
前記第1の回路部は、
固定容量のコンデンサーを含み、
前記バリキャップのアノード端子を、前記可変容量のコンデンサーを介して前記第1の端子に接続するとともに、前記第2の回路部の抵抗とは異なる抵抗を介して前記固定電位に接続し、
前記制御電圧が印加される前記バリキャップのカソード端子を、前記固定容量のコンデンサーを介して前記固定電位に接続する圧電発振回路。
【請求項5】
請求項3に記載の圧電発振回路において、
前記第1の回路部は、
互いのカソード端子が接続された第1のバリキャップと第2のバリキャップとを含み、
前記第1のバリキャップのアノード端子を、前記可変容量のコンデンサーを介して前記第1の端子に接続するとともに、前記第2の回路部の抵抗とは異なる抵抗を介して前記固定電位に接続し、
前記第2のバリキャップのアノード端子を、前記固定電位に接続し、
前記第1のバリキャップおよび第2のバリキャップのカソード端子に前記制御電圧を印加する圧電発振回路。
【請求項6】
請求項3に記載の圧電発振回路において、
前記第2の回路部は、
直列に接続された第1の抵抗と第2の抵抗とを含み、
前記第1の抵抗は前記第2の抵抗と接続された端子と前記第1の端子に接続された端子とを備え、
前記第2の抵抗は前記第1の抵抗と接続された端子と前記固定電位に接続された端子とを備え、
前記第1の回路部は、
互いのカソード端子が接続された第1のバリキャップと第2のバリキャップとを含み、
前記第1のバリキャップのアノード端子を、前記可変容量のコンデンサーを介して前記第1の端子に接続するとともに、前記第2の抵抗を介して前記固定電位に接続し、
前記第2のバリキャップのアノード端子を、前記固定電位に接続し、
前記第1のバリキャップおよび第2のバリキャップのカソード端子に前記制御電圧を印加する圧電発振回路。
【請求項7】
請求項3に記載の圧電発振回路において、
前記第1の回路部は、
前記バリキャップのアノード端子を前記第1の端子に接続し、
前記制御電圧が印加される前記バリキャップのカソード端子を、前記可変容量のコンデンサーを介して前記固定電位に接続する圧電発振回路。
【請求項8】
請求項3に記載の圧電発振回路において、
前記第1の回路部は、
前記バリキャップのアノード端子を前記固定電位に接続し、
前記制御電圧が印加される前記バリキャップのカソード端子を、前記可変容量のコンデンサーを介して前記第1の端子に接続する圧電発振回路。
【請求項9】
請求項1乃至8のいずれかに記載の圧電発振回路を含む恒温型圧電発振器。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【図6】
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【図7】
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【図8】
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【公開番号】特開2012−95179(P2012−95179A)
【公開日】平成24年5月17日(2012.5.17)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2010−241836(P2010−241836)
【出願日】平成22年10月28日(2010.10.28)
【出願人】(000002369)セイコーエプソン株式会社 (51,324)
【Fターム(参考)】