説明

圧電発振回路

【課題】 圧電素子を用いた発振回路で起動時間の早い圧電発振回路が求められていた。
【解決手段】 本発明は、圧電素子と、発振回路からなる圧電発振回路において、発振開始時に使用する起動発振用回路と定常時に使用する定常発振用回路とを持ち、発振開始時に使用する起動発振用回路と定常時に使用する定常発振用回路とを切り替える切り替え回路を備え、起動時と定常時とを判断する判断回路を備えた圧電発振回路により、より早い起動特性を得ている。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、水晶振動子や角速度センサ等の圧電素子を使用する圧電発振器の圧電発振回路に関する。
【背景技術】
【0002】
携帯電話やデジタル機器に使用される水晶振動子やまたカメラや自動車のトラクションコントロールに使用される水晶を用いた角速度センサ用素子が利用されている。水晶振動子は信号源やクロック源として広く利用されている。この水晶振動子も機器の小型化に合わせてどんどん小型化されており、それにつれてだんだんと水晶振動子の等価直列抵抗が高くなってきている。またヨーレートを検出するため、センサ素子には励振部に励振電極と検出部に検出電極とを備えている。最近の小型化により等価抵抗が高くなり、励振部の発振の起動が悪くなるおそれがある。
【0003】
しかし、水晶振動子は等価直列抵抗が高いと発振し始めるのに時間がかかる。特にジャイロセンサ用振動子ではインピーダンスが高く発振しづらいので、発振回路の電源投入時からの時間を短くすることが求められていた。
【0004】
図4は、従来の発振回路である。インバータを用いた例を示している。インバータ10の両端に抵抗11と水晶振動子12が接続されている。またインバータ10の両端と接地間にはコンデンサ13,13‘が接続されている。通常発振させる回路としては問題ないが、等価抵抗の大きな圧電素子では起動時間に時間がかかるため、圧電素子への電流を増やすか、発振回路の負性抵抗を低くしなければならない。またより早い起動時間の圧電発振回路がもとめられていた。
【0005】
【特許文献1】特願平11−89485号公報
【0006】
なお出願人は前記した先行技術文献情報で特定される先行技術文献以外には、本発明に関連する先行技術文献を、本件出願時までに発見するに至らなかった。
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0007】
本発明が解決しようとする課題は、圧電素子やジャイロ用振動子の発振回路をより早く起動することを実現することにある。
【0008】
特許文献1にはインバータと、水晶発振子と、帰還抵抗と、ゲート側コンデンサと、ソース側コンデンサと、インバータに並列に接続され、発振起動 時の一定時間のみオンとなるスリーステートインバータ バッファを備えた発振回路がある。これにより低消費電力で発振起動時間が短い水晶発振 回路が示されている。従来より発振時に発振回路を切り替えたり、特許文献1のように発振時にのみ他の手段を追加する例はある。本発明では、より早く確実に発振させる回路を提案している。
【課題を解決するための手段】
【0009】
本発明は、圧電素子と、発振回路からなる圧電発振回路において、発振開始時に使用する起動発振用回路と定常時に使用する定常発振用回路とを持ち、前記発振開始時に使用する起動発振用回路と前記定常時に使用する定常発振用回路とを切り替える切り替え回路を備え、起動時と定常時とを判断する判断回路を備えた圧電発振回路である。また起動時の発振回路が、インバータを2段用いた回路である。さらに圧電素子がジャイロ用センサ素子である。
【発明の効果】
【0010】
本発明によって、振動子の小型化により等価直列抵抗の高い振動素子であっても高速に起動させ、定常時には安定した周波数を得ることが実現できるようになった。
【発明を実施するための最良の形態】
【0011】
以下、図面を参照しながら実施例を説明する。
図1は、本発明の説明する回路構成図である。まず本発明の回路構成を説明する。圧電素子5を励振する発振回路が2つあり、起動発振用回路1と、定常発振用回路2があり、起動発振用回路1は、通常の発振回路に比べ、起動速度が速い回路を用いている。しかし起動発振用回路の起動特性はいいが、定常発振においては、周波数安定度は劣る場合があるので、起動時と定常時で発振器を変える必要がある。
そこで、定常発振用回路を用意し、切り替えている。この起動発振用回路1と定常発振用回路2を切り替える切替回路3が設けている。
【0012】
本発明では、起動発振用回路1と定常発振用回路2を切り替える切り替え回路3を設けているが、この切り替え回路3を制御する切り替え判断回路4により行う。切り替え判断回路4は、発振状況モニタにより判断を行っている。発振状況モニタは、発振出力を用いて発振が開始し定常状態になることを高周波信号をモニタすることで行っている。このモニタ信号を整流して直流信号として、切り替え判断回路4に伝える。切り替え判断回路4では、所定のレベルまで達したときに、切り替え回路3に回路を切り替える信号を発して、発振回路を切り替える。
【0013】
切り替え判断回路は、コンパレータを用いることができる。コンパレータにより設定値と比較して、その値に一致したときに切り替え信号が発生し、発振回路を切り替えている。
また切り替え判断回路4は、コンパレータでなくてもインバータを用いて、所定の値になったときに、マイナスからプラス、またはマイナスからプラスに切り替わることを利用している。
さらに切り替え判断回路4として、圧電素子5にモニタ用の電極を用意してその出力をA/D変換し、演算することにより、切り替え回路に命令を送ることでもよい。発振出力レベルで検知してもよく、また周波数をカウンタなどでモニタして、発振状況を判断してもよい。なお、発振状態モニタは、他のものであってもよい。
【実施例】
【0014】
さらに本発明を実施例を挙げて説明する。起動発振用回路1は、本発明では図2に示すとおりインバータ6,7を2段直列に接続した回路を使用している。インバータは、通常1個を使用し、逆相で圧電素子に電荷を与えるが、本回路では理論上では同相となるが、実際の動作では位相のズレがあり、発振している。特に起動時には早く発振を開始する特徴がある。ここではインバータ6,7を2個直列に接続し、ひとつのインバータ6には帰還抵抗8を並列に接続し、圧電素子9は2個のインバータ6,7の直列に接続したものと並列に接続している。このインバータを2個用いる回路の他、増幅率を可変させた発振回路を用いることにより起動を早くした回路を用いてもよい。
切り替え回路3は、物理的に切り替えるリレーの他、電子的に切り替えるアナログスイッチやトランジスタやダイオードを用いたスイッチング回路であってもよい。
【0015】
本発明によって、発振の起動の早い回路と、定常時には安定した回路とを切り替えることによって、起動時を高速化し、定常時には安定な回路で安定した周波数を得ることが出来るようになった。
【産業上の利用可能性】
【0016】
本発明は、通常の発振回路の他、ジャイロ用素子にも利用することが可能である。圧電素子として水晶振動子の他、他の圧電素子であっても利用可能である。
【図面の簡単な説明】
【0017】
【図1】図1は、本発明の実施例実施例を示す回路構成図である。
【図2】図2は、本発明に使用した起動発振用回路の例を示す発振回路である。
【図3】従来より使われている発振回路、及び定常時に使用する発振回路である。
【符号の説明】
【0018】
1 発振起動用回路
2 定常発振用回路
3 切り替え回路
4 切り替え判断回路
5 圧電素子

【特許請求の範囲】
【請求項1】
圧電素子と、発振回路からなる圧電発振回路において、
発振開始時に使用する起動発振用回路と定常時に使用する定常発振用回路とを持ち、前記発振開始時に使用する起動発振用回路と前記定常時に使用する定常発振用回路とを切り替える切り替え回路を備え、起動時と定常時とを判断する判断回路を備えたことを特徴とする圧電発振回路。
【請求項2】
前記発振開始時に使用する起動発振回路が、インバータ回路を直列に2個を直列に接続し、前記2個のインバータと並列に該圧電素子が接続されていることを特徴とする請求項1記載の圧電発振回路。
【請求項3】
該圧電素子がジャイロ用センサ素子であることを特徴とする圧電発振回路。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【公開番号】特開2007−235484(P2007−235484A)
【公開日】平成19年9月13日(2007.9.13)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2006−54113(P2006−54113)
【出願日】平成18年2月28日(2006.2.28)
【出願人】(000104722)京セラキンセキ株式会社 (870)
【Fターム(参考)】