圧電素子、インクジェットプリントヘッド及びその製造方法
【課題】本発明は圧電素子、インクジェットプリントヘッド及びその製造方法に関する。
【解決手段】本発明の一実施例による圧電素子は、圧電素子用圧電体組成物100重量部に対し、90重量部以上100重量部未満のPb(Zr、Ti)O3を含む圧電セラミックパウダーと、0重量部超過10重量部以下のガラスフリットとを含み、ガラスフリット100重量部に10から20重量部のZnOを含むことができる。
【解決手段】本発明の一実施例による圧電素子は、圧電素子用圧電体組成物100重量部に対し、90重量部以上100重量部未満のPb(Zr、Ti)O3を含む圧電セラミックパウダーと、0重量部超過10重量部以下のガラスフリットとを含み、ガラスフリット100重量部に10から20重量部のZnOを含むことができる。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は圧電素子、インクジェットプリントヘッド及びその製造方法に関し、より具体的には、環境に無害ながらも圧電特性が向上した圧電素子、インクジェットプリントヘッド及びその製造方法に関する。
【背景技術】
【0002】
一般的にインクジェットプリントヘッドは、印刷用インクの微小液滴(droplet)を記録用紙上の所望位置に吐出させ、所定色相の画像で印刷する装置である。該インクジェットプリンターのインク吐出方式には、熱源を利用してインクにバブル(bubble)を発生させ、この力でインクを吐出させる電気熱変換方式(electro−thermal transducer、バブルジェット(登録商標)方式)と、圧電体を利用して圧電体の変形により生じるインクの体積変化によってインクを吐出させる電気機械変換方式(electro−mechanical transducer、圧電方式)とがある。
【0003】
上記圧電方式のインクジェットプリントヘッドは、主にセラミック材料、金属材料または合成樹脂材料などで構成された複数の薄板を切削加工してインク流路を形成し、複数の薄板を積層して製造する。上記インク流路に圧力を加えるようにインクジェットプリントヘッドに圧電素子が搭載される。上記圧電素子に電圧を印加してインク流路に圧力を加えることで、インクを吐出させることができる。
【0004】
上記圧電素子は異なる極に帯電される二つの電極の間に圧電体が配置された構造であり、上記圧電体は圧電体組成物を含む圧電体ペーストが印刷されて形成されることができる。そして、圧電体ペーストを焼結して圧電素子を製造することができる。
【0005】
一般的な圧電体組成物の場合、1000℃以上の焼成温度が求められる。焼成温度が高いと、電極を形成する物質が揮発したり、基板を形成する物質が変性して物性が低下するという問題点が発生し得る。また、焼成温度を低くするために、一般的にCdを用いるが、Cdを用いると、環境規制の対象となる。従って、Cdに代わり、且つ、優れた圧電特性が具現できる多様な物質に対する研究が行われている。
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0006】
本発明の一実施様態は、Cdを用いなくとも低温焼結が可能な圧電体を提供することである。これによって、高温焼結により発生する数多くの問題点を解決する。
【0007】
本発明の他の実施様態は、優れた圧電特性を有する圧電素子を提供することである。印加される電圧により繰り返し性が保障され、微細変位を容易に具現できる圧電素子を提供することである。
【課題を解決するための手段】
【0008】
本発明の一実施例による圧電素子は圧電素子用圧電体組成物100重量部に対し、90重量部以上100重量部未満のPb(Zr、Ti)O3を含む圧電セラミックパウダーと、0重量部超過10重量部以下のガラスフリットとを含み、ガラスフリット100重量部に10から20重量部のZnOを含むことができる。
【0009】
上記圧電セラミックパウダーはxPb(Mg1/3Nb2/3)−y(Ni1/3Nb2/3)−zZr−wTi−O3の組成であり、x、y、z及びwはmol%で、0.15≦x≦0.40、0.05≦y≦0.20、0.20≦z≦0.35及び0.30≦w≦0.45を満たすことができる。
【0010】
上記ガラスフリット100重量部に対し、65から85重量部のBi2O3と5から15重量部のB2O3を含むことができる。
【0011】
上記圧電体ペースト100重量部に対し、80から85重量部の圧電体組成物と、10から14重量部の溶剤と、1から10重量部の添加剤とを含むことができる。
【0012】
上記圧電体ペーストの焼結温度は900から1000℃であってよい。
【0013】
本発明の他の実施例によるインクジェットプリントヘッドは、内部に圧力チャンバを含む基板と、上記基板の上記圧力チャンバ上に形成された第1電極と、本発明の一実施例による圧電素子用圧電体組成物を含む圧電体と、上記圧電体に形成される第2電極とを含むことができる。
【0014】
本発明のさらに他の実施例による圧電素子の製造方法は、第1電極を形成する段階と、圧電体組成物100重量部に対し、90重量部以上100重量部未満のPb(Zr、Ti)O3を含む圧電セラミックパウダーと、0重量部超過10重量部以下のガラスフリットを含み、上記ガラスフリット100重量部に10から20重量部(wt%)のZnOを含む圧電体組成物を含む圧電体ペーストを第1電極に印刷して圧電体を形成する段階と、圧電体上に第2電極を形成する段階と、基板、上記第1電極、上記圧電体及び上記第2電極を焼結する段階とを含むことができる。
【0015】
上記圧電体ペースト100重量部に対し、80から85重量部の圧電体組成物と、10から14重量部の溶剤と、1から10重量部の添加剤とを含むことができる。
【0016】
上記圧電体ペーストの焼結温度は900から1000℃であってよい。
【0017】
上記圧電セラミックパウダーはxPb(Mg1/3Nb2/3)−y(Ni1/3Nb2/3)−zZr−wTi−O3の組成であり、上記x、y、z及びwはmol%で、0.15≦x≦0.40、0.05≦y≦0.20、0.20≦z≦0.35及び0.30≦w≦0.45を満たすことができる。
【0018】
上記ガラスフリット100重量部に対し、65から85重量部のBi2O3と5から15重量部のB2O3を含むことができる。
【0019】
本発明の他の実施例によるインクジェットプリントヘッドの製造方法は、単結晶シリコーンからなり、内部にインク流路が形成された基板を設ける段階と、上記基板に本発明の一実施例による圧電素子を形成する段階とを含むことができる。
【発明の効果】
【0020】
本発明の一実施例によると、Cdを用いなくとも低温焼結が可能な圧電体を提供することができる。これにより、環境規制の対象となるCdを用いなくとも高温焼結により発生する数多くの問題点を解決することができる。即ち、環境に有害な物質を使用しないため、環境に有害な物質を発生させず、安全性が保障される圧電素子を提供することができる。
【0021】
本発明の他の実施例によると、優れた圧電特性を有する圧電素子を提供することができる。優れた誘電率を有する圧電素子を製造することができ、印加される電圧により微細変位運動の繰り返し性が保障されることができる。これにより、微細変位運動を具現すべき多様な電子部品に適用できる圧電素子を製造することができる。
【図面の簡単な説明】
【0022】
【図1】本発明の一実施例によるインクジェットプリントヘッドの概略断面図である。
【図2a】本発明の一実施例によるインクジェットプリントヘッドの製造工程図である。
【図2b】本発明の一実施例によるインクジェットプリントヘッドの製造工程図である。
【図2c】本発明の一実施例によるインクジェットプリントヘッドの製造工程図である。
【図2d】本発明の一実施例によるインクジェットプリントヘッドの製造工程図である。
【図3】本発明の一実施例によるインクジェットプリントヘッドの焼成工程における温度変化を示すグラフである。
【図4a】本発明の一実施例と比較例による圧電素子の断面を示す電子走査顕微鏡写真(SEM)である。
【図4b】本発明の一実施例と比較例による圧電素子の断面を示す電子走査顕微鏡写真(SEM)である。
【図4c】本発明の一実施例と比較例による圧電素子の断面を示す電子走査顕微鏡写真(SEM)である。
【図5】本発明の一実施例によるインクジェットプリントヘッドの位置による平均変位を示すグラフである。
【発明を実施するための形態】
【0023】
以下では、本発明の好ましい実施例を添付の図面に基づいて詳しく説明する。
【0024】
本発明を説明するにおいて、本発明の構成要素を指し示す用語は各々の構成要素の機能を考慮して名づけられたものであるため、本発明の技術的構成要素を限定する意味と理解してはならない。
【0025】
図1は、本発明の一実施例によるインクジェットプリントヘッド1の概略断面図である。
【0026】
以下、本発明をさらに具体的に説明する。
【0027】
本発明の一実施例によるインクジェットプリントヘッド1は、インク流路が形成された上部基板100、中間基板200及び下部基板300を含み、上記上部基板100に形成された第1電極120、圧電体130及び第2電極140を含む。そして、上記第2電極140に印刷回路基板150を連結して圧電体130に印加される電圧を調節することで、微小液滴(droplet)を具現するインクジェットプリントヘッド1を提供することができる。
【0028】
本発明の一実施例によるインクジェットプリントヘッド1は、複数の薄いプレートが積層及び接合されて形成されることができる。
【0029】
上記インクジェットプリントヘッド1は上部基板100、中間基板200及び下部基板300が順に積層及び接合されて形成されることができる。
【0030】
上記上部基板100には圧電素子の変化によってインク流路に圧力を加える圧力チャンバ111を含み、上部基板100の薄い部分は振動部103であって、圧電素子の変化を圧力チャンバ111に伝達する役割をする。
【0031】
上記中間基板200は上記圧力チャンバ111に連結されるリザーバー201を含むことができる。上記リザーバー201はインクコンテナ(不図示)から流入されたインクを貯蔵し、吐出されるインクが充填される所である。
【0032】
上記下部基板300にはインク誘導部303及びインク吐出部301からなるノズル部が形成される。上記インク誘導部303は上記リザーバー201に連結され、圧力チャンバに圧力が加わると、吐出されるインクをノズル部に誘導する役割をする。また、上記インク吐出部301は外部へインクを吐出させる役割をする。
【0033】
上記上部基板100、上記中間基板200及び上記下部基板300は積層されてインクを吐出させるためのインク流路を形成することができる。上記上部基板100には圧電素子が搭載され、圧電素子は印加された電圧によってその形状が変形され、インク流路に圧力を加えることで、インクを吐出させることができる。
【0034】
本発明の一実施例による圧電素子は第1電極120、圧電体130及び第2電極140からなることができる。
【0035】
圧電素子とは、印加された電圧により圧電物質の収縮及び膨脹を具現することができる素子のことである。圧電素子は印加された電圧の大きさを調節して微細な動きを繰り返して具現することができる。本発明の一実施例によると、圧電素子がインクジェットプリントヘッド1に装着され、インク流路に圧力を加えるのに用いられることを開示したが、必ずしもこれに制限されず、繰り返される微細変位運動を具現すべき多様な製品に適用されることができる。
【0036】
本発明の一実施例によると、上記圧電素子の圧電体としてジルコンチタン酸鉛磁器(PZT;lead Zirconium Titanite Ceramics)を使用することができる。PZTはPb(Zr、Ti)O3の組成で、複合ペロブスカイト(perovskite)構造を有する物質であって、強誘電体または反強誘電体特性を有する物質である。PZTは電気的エネルギーを機械的エネルギーに転換する効率に優れた材料であり、繰り返される微細運動を具現するのに適用することができる。
【0037】
本発明の一実施例によると、圧電素子は圧電体組成物100重量部に対し、90重量部以上100重量部未満のPb(Zr、Ti)O3を含む圧電セラミックパウダー及び0重量部超過10重量部以下のガラスフリットを含むことができる。ガラスフリットの含量が10重量部を超えると、圧電体固有の圧電特性が低下することがある。そして、上記ガラスフリットはガラスフリット100重量部に対し、10から20重量部(wt%)のZnOを含むことができる。
【0038】
本発明の一実施例による圧電体を形成する圧電体組成物は、Pb(Zr、Ti)O3を含む圧電セラミックパウダー、即ち、ジルコンチタン酸鉛磁器(PZT;lead Zirconium Titanite Ceramics)を含むことができる。PZTパウダーは、優れた圧電特性を具現することができる。
【0039】
本発明の一実施例によると、上記圧電セラミックパウダーはxPb(Mg1/3Nb2/3)−y(Ni1/3Nb2/3)−zZr−wTi−O3の組成で、上記x、y、z及びwはmol%であって、0.15≦x≦0.40、0.05≦y≦0.20、0.20≦z≦0.35及び0.30≦w≦0.45を満たすことができる。
【0040】
上記のような組成を有する圧電セラミックパウダーを用いると、優れた圧電特性を有する圧電素子を具現することができ、繰り返される微細運動を容易に具現することができる。
【0041】
本発明の一実施例によると、ガラスは圧電セラミックパウダー間の結合を補助するようにフリット(frit)の状態で提供され、圧電セラミックパウダーの焼結温度を低くすることができ、優れた緻密性を有する圧電体を提供することができる。
【0042】
ガラスフリットは組成通りに、原材料を秤量してから蒸留水とジルコニアボールを入れ、12時間均一に混合する。混合したスラリーは乾燥し、乾燥された粉末をアルミニウム坩堝に入れ、1000℃以上の高温で溶融した後、蒸留水を入れて急冷させてガラス相を作って分解することで、ガラスフリット状態の粉末を提供することができる。本発明の圧電体組成物は上記のような圧電セラミックパウダーとガラスフリットを混合して製造することができる。
【0043】
本発明の一実施例によると、上記ガラスフリットはガラスフリット100重量部に対し、10から20重量部のZnOを含むことができる。
【0044】
上記ZnOは圧電セラミックパウダーの優れた圧電特性を具現し、圧電セラミックパウダーの焼結温度を低くする役割をする。
【0045】
ガラスフリット100重量部に対し、10から20重量部のZnOを含み、10重量部未満では、焼結温度を900℃以下に低くすることができず、20重量部を超えると、圧電特性に影響を及ぼすことがある。従って、900から1000℃の焼結温度を維持し、優れた圧電特性を具現するために、ガラスフリット100重量部に対し、10から20重量部のZnOを含むことができる。
【0046】
本発明の一実施例によると、Bi2O3−B2O3−ZnO系のガラスフリットを使用することができ、これに制限されるものではないが、本発明の圧電体組成物の焼結温度の範囲を満たすために、ガラスフリット100重量部に対し、65から85重量部のBi2O3と5から15重量部のB2O3を含むことができる。Bi2O3の場合、B2O3、ZnOより溶融温度が低くてガラスフリットに含まれる比率が高くなる。しかし、Bi2O3が多くなりすぎると、ガラスフリットの性質を失うため、上記のように、65から85重量部のBi2O3と5から15重量部のB2O3を含むことができる。
【0047】
本発明の一実施例による圧電体組成物は、900から1000℃の焼結温度を有するように形成され、圧電体を介して第1電極及び第2電極を形成して一緒に焼結しても第1及び第2電極を構成する物質が揮発する現象を防止することができる。また、電極を構成する物質がシリコン基板のような隣接する物質と反応するという問題点を解決することができる。
【0048】
また、上記圧電体組成物は、Cdを含まなくても優れた圧電特性を保持し、低温焼結できる圧電体を製造することができる。これによって、環境に有害なCdを放出せずに優れた圧電特性が具現できる圧電素子を製造することができる。
【0049】
本発明の一実施例によると、圧電体を製造するために、上記圧電体組成物、溶剤及び添加剤を含む圧電体ペーストが用いられる。
【0050】
圧電体組成物は上述のように圧電セラミックパウダーとガラスフリットで構成された組成物で、溶剤は上記圧電セラミックパウダーとガラスフリットをペースト状に分散させるために用いられる。添加剤としては、バインダーまたは分散剤のように圧電体ペーストの粘性及び分散性を補助する役割をする多様な添加剤を用いてよい。
【0051】
本発明の一実施例によると、上記溶剤としてテルピネオール(terpineol)またはブチルカルビトールアセテート(butyl carbitol acetate)を用いることができ、これに制限されず、多様な溶剤を用いることができる。
【0052】
添加剤として、分散剤、エチルセルロース(ethylcellulose)のようなバインダーを用いることができるが、必ずしもこれに制限されず、多様な分散剤とバインダーを適用してよい。
【0053】
上記圧電体ペーストは圧電体ペースト100重量部に対し、80から85重量部の圧電体組成物、10から14重量部の溶剤及び1から10重量部の添加剤を含むことができる。
【0054】
本発明の一実施例に従って圧電セラミックパウダーとガラスフリットが混合された圧電体組成物は、圧電素子の圧電特性を具現することができる。上記圧電体組成物として上述したPZTパウダーとZnを含むガラスフリットを使用することができる。
【0055】
圧電体ペースト100重量部に対し、80から85重量部の圧電体組成物を含むことができる。80重量部未満では、圧電体ペーストの粘度が低下してスクリーン印刷などの印刷工程の際、ある程度の厚さが確保しにくくなる。即ち、印刷工程の際、厚さが薄くなり、圧電体に電圧を印加すると、圧電体が破壊(breakdown)し、安定的に駆動できなくなる。85重量部を超えると、圧電体ペーストの粘性が増加してスクリーン印刷などの印刷工程に適用しにくくなることがある。
【0056】
圧電体ペースト100重量部に対し、10から14重量部の溶剤を含むことができる。溶剤が10重量部未満では、圧電体組成物の分散性が低下し、14重量部を超えると、焼結体に不純物が含まれたり、圧電体組成物の密度が低下して圧電特性が低下する虞がある。
【0057】
図2aから図2dは、本発明の一実施例によるインクジェットプリントヘッド用圧電素子の製造方法を示す工程図である。
【0058】
図2aから図2dはインクジェットプリントヘッド用圧電素子の製造方法を一実施例で説明したが、必ずしもこれに制限されず、多様な圧電素子の製造方法に適用されることができる。
【0059】
本発明の一実施例による圧電素子の製造方法は、第1電極を形成する段階(図2b)と、上記第1電極に総重量に対して90重量部以上100重量部未満のPb(Zr、Ti)O3を含む圧電セラミックパウダー及び0重量部超過10重量部以下のガラスフリットを含み、上記ガラスフリット100重量部に10から20重量部のZnOを含む圧電体組成物を含む圧電体ペーストを印刷して圧電体を形成する段階(図2c)と、上記圧電体上に第2電極を形成する段階(図2d)と、上記基板、上記第1電極、上記圧電体及び上記第2電極を焼結する段階とを含むことができる。
【0060】
また、本発明の一実施例による圧電素子の製造方法は、特に、インクジェットプリントヘッドを製造するのに用いることができる。この場合、単結晶シリコーンからなり、内部にインク流路が形成された基板を設ける段階(図2a)をさらに含むことができる。
【0061】
図2aを参照すると、インクジェットプリントヘッド用上部基板110を設けることができる。本発明の一実施例に従ってインクジェットプリントヘッドの圧力チャンバ上に圧電素子を形成することができるが、必ずしもこれに制限されず、微細変位運動を具現すべき多様な製品に適用されることができる。
【0062】
より具体的には、内部に圧力チャンバが形成され、圧電素子と結合し振動板として作用できる上記上部基板110を設けることができる。上記上部基板はこれに制限されないが、単結晶シリコンからなる基板を用いることができる。
【0063】
図2bを参照すると、上記上部基板110に第1電極120を形成することができる。上記第1電極120は上部基板110にTi/Ptをスパッタ(sputtering)方式で蒸着して形成することができるが、これに制限されない。
【0064】
より具体的には、Tiスパッタ層上にPtスパッタ層を形成して第1電極を製造することができる。
【0065】
図2cを参照すると、上記第1電極120に圧電体ペースト131をスクリーン印刷(screen printing)方式で印刷して圧電体130を形成することができる。上記第1電極120をマスク400で覆ってスクイザー410を用いて圧電体ペースト131を押す方式により圧電体130を形成することができる。この場合、マスク400に形成された開口部Oの形状に従って圧電体130が形成されることができる。
【0066】
上記圧電体ペースト131は圧電体ペースト100重量部に対し、90重量部以上100重量部未満のPb(Zr、Ti)O3を含む圧電セラミックパウダー及び0重量部超過10重量部以下のガラスフリットを含み、上記ガラスフリット100重量部に10から20重量部のZnOを含む圧電体組成物を含むことができる。
【0067】
本発明の一実施例によると、Pb(Zr、Ti)O3を含む圧電セラミックパウダーを含むため、優れた圧電特性を有する圧電素子を具現することができ、圧電体ペースト100重量部に対し、0重量部超過10重量部以下のガラスフリットを含むため、低温焼結が可能な圧電体ペーストを提供することができる。
【0068】
また、ガラスフリットはZnOを含むため、環境に有害なCdのような物質を用いなくても優れた誘電特性及び圧電特性を具現し、低温焼結が可能な圧電体ペーストを提供することができる。
【0069】
そして、ガラスフリット100重量部に対し、10から20重量部のZnOを含むことができる。10重量部未満では、焼結温度が900℃を超えることがあり、20重量部を超えると、圧電素子の誘電特性及び圧電特性を悪くする原因となり得るため、10から20重量部のZnOを含むことができる。
【0070】
本発明の一実施例によると、上記圧電セラミックパウダーはxPb(Mg1/3Nb2/3)−y(Ni1/3Nb2/3)−zZr−wTi−O3の組成で、上記x、y、z及びwはmol%であって、0.15≦x≦0.40、0.05≦y≦0.20、0.20≦z≦0.35及び0.30≦w≦0.45を満たすことができる。
【0071】
上記のような組成を有する圧電セラミックパウダーを用いるため、優れた圧電特性を有する圧電素子を提供することができ、繰り返し性を有する微細変位運動を容易に具現することができる。
【0072】
本発明の一実施例によると、Bi2O3−B2O3−ZnO系のガラスフリットを使用することができ、これに制限されるものではないが、本発明の圧電体組成物の焼結温度の範囲を満たすために、ガラスフリット100重量部に対し、65から85重量部のBi2O3と5から15重量部のB2O3を含むことができる。
【0073】
本発明の一実施例によると、ZnOがBi2O3及びB2O3とともに混合されてガラスフリット(glass frit)の状態で提供されるため、圧電素子の圧電体の焼結温度を容易に低くすることができ、結晶性に優れた圧電体を製造することができる。
【0074】
図2dを参照すると、上記圧電体130上に第2電極140を印刷することができる。上記第2電極140はこれに制限されず、スクリーン印刷(screen printing)方式で形成されることができる。スクリーン印刷には、Ag−Pd系の電極ペーストを用いることができ、圧電体と同時焼結することができる。
【0075】
本発明の一実施例によると、インクジェットプリントヘッドに形成された圧電素子は、長さLが5000μmで、幅Wが350μmの大きさを有するように印刷されることができる。
【0076】
上記第1電極120と第2電極140に電気が印加されると、その間に配置された圧電体130はその大きさと形状が変形されることがある。それにより、振動板103に該当する部分に圧力が加わってインクが吐出される。印加される電圧の大きさ及び種類を調節することで、圧力の大きさを調節することができる。
【0077】
図3は、本発明の一実施例による圧電体の時間による加工温度を示すグラフである。
【0078】
第1電極120、圧電体130及び第2電極140を含む圧電素子を形成した後、焼結工程に導入するために、圧電素子の温度を次第に高めることができる(区間a)。
【0079】
上記圧電素子は120℃近くでソフトベーキング(soft baking)でき、ソフトベーキングを通じて圧電素子をあらかじめ仮硬化させ、加工をより容易にすることができる。
【0080】
圧電素子は400から450℃近くで1次焼結が行われる(区間b)。1次焼結過程において、圧電素子に含まれたバインダーと添加剤のような物質が除去されることができる。圧電体はペースト状態に製造されるため、1次焼結を行わないと、圧電体内部に不純物が形成されることがある。しかし、1次焼結により不純物の含まれない圧電素子を製造することができる。
【0081】
圧電素子の温度を次第に高くし、2次焼結工程に導入することができる(区間c)。また、900から1000℃で2次焼結を行うことができる(区間d)。2次焼結工程で圧電体は結晶化される。
【0082】
本発明の一実施例によると、所定の組成を有する圧電体セラミックパウダーを用い、ZnOを含むガラスフリットを使用するため、900から1000℃の低温で2次焼結を行うことができる。
【0083】
低温で2次焼結が行われるため、第1電極120が多結晶シリコンで形成された上部基板110と反応する現象を防ぐことができ、第2電極140が揮発する現象も防ぐことができる。また、2次焼結後の圧電素子は冷却することができる(区間e)。
【0084】
本発明の一実施例によると、Cdを用いなくてもZnOをガラスフリット状態で圧電体セラミックと混合するため、900から1000℃の低温で焼結を行うことができる。
【0085】
圧電体の圧電特性は圧電体の誘電率を通じて確認できる。第1電極と第2電極の間に圧電体が形成されてキャパシタンスを形成するため、圧電体の誘電率は次のような式で表されることができる。
【0086】
C=εA/t
【0087】
Cは圧電素子のキャパシタンスで、εは圧電体の誘電率を示す誘電定数で、Aは電極の対向面積を示し、tは圧電体の厚さを示す。
【0088】
圧電素子の電気的特性及び焼結性は、圧電素子のキャパシタンス値を利用して、下記のような式を通じて確認することができる。
【0089】
εA=Ct
【0090】
電極の対向面積Aが同じ値を有する場合、誘電定数εはキャパシタンスCと圧電体の厚さtを掛けた値に比例することが分かる。即ち、キャパシタンスCと圧電体の厚さtの掛けた値が大きくなるほど、誘電定数εの大きい圧電体を具現することができる。即ち、優れた誘電率を有し、焼結性に優れた圧電体を製造することができる。
【0091】
[実施例1]
同じ圧電セラミックパウダーに、本発明の一実施例によるガラスフリットと、従来技術の一実施例によるガラスフリットを混合して圧電体組成物を製造した。
【0092】
ペロブスカイト(perovskite)構造を有し、Pb(Zr、Ti)O3の組成を有するPZTパウダーである圧電セラミックパウダーとガラスフリットを1:99wt%で混合して圧電体組成物を製造した。
【0093】
本発明の一実施例である実施例1によるガラスフリットは、Bi2O375wt%、B2O310wt%及びZnO15wt%の組成を有するガラスフリットを使用し、比較例1のガラスフリットとしては、Bi2O360wt%、B2O310wt%及びCdO30wt%の組成を有するガラスフリットを使用した。また、比較例2のガラスフリットとしては、Bi2O365wt%、B2O310wt%、SiO212.5wt%及びAl2O312.5wt%の組成を有するガラスフリットを使用した。
【0094】
【表1】
【0095】
上述のように、圧電素子の焼結性に優れ、優れた圧電特性を有するほど、キャパシタンスと圧電体の厚さを掛けた値が大きくなる。上記表1は実施例1、比較例1及び比較例2の圧電体の厚さt、キャパシタンスC及びt×C値を示したものである。
【0096】
実施例1はt×C値が最も大きく、比較例1は実施例1より10%小さい値で、比較例2は実施例1より27%小さい値であることが分かる。
【0097】
即ち、本発明の一実施例によるZnOを含むガラスフリットを使用すると、Cd(比較例1)又はSi及びAl(比較例2)を含むガラスフリットより優れた誘電特性及び焼結性を有する圧電体を製造することができることが分かる。
【0098】
図4aは本発明の実施例1による圧電体の断面を示す走査電子顕微鏡写真(SEM)であり、図4a及び図4bは本発明の比較例1、2による圧電体の断面を示す走査電子顕微鏡写真(SEM)である。
【0099】
図4b(比較例1)及び図4c(比較例2)は、粒子間の隙間が大きくなり、焼結性が図4a(実施例1)より低下することが確認できる。
【0100】
本発明の一実施例によると、Cdを含まなくともZnOを含むガラスフリットを用いて焼結温度を低くすることができ、また、焼結性に優れ、圧電特性に優れる圧電体を製造することができる。
【0101】
[実施例2]
本発明の実施例2として、ペロブスカイト(perovskite)構造を有し、Pb(Zr、Ti)O3の組成を有するPZTパウダーである圧電セラミックパウダーとガラスフリットを1:99wt%で混合して圧電体組成物を製造した。また、ガラスフリットは、Bi2O375wt%、B2O310wt%及びZnO15wt%の組成を有するものを使用した。
【0102】
また、圧電体組成物82wt%、溶剤としてテルピネオール(terpineol)5wt%とブチルカルビトールアセテート(butyl carbitol acetate)7wt%を使用し、分散剤としてBYK社の分散剤であるBYK−111を1wt%、バインダーとしてエチルセルロース(ethylcellulose)5wt%を使用して圧電体ペーストを製造した。
【0103】
上記圧電体ペーストは25万cpsを有するようにミリング(milling)工程を経て所定の粘性を有するように製造され、スクリーン印刷方式により塗布された。
【0104】
インクジェットプリントヘッドに圧電素子が適用された状態であり、レーザードップラー速度計(laser doppler velocity meter;LDV)を用いて、インクのない状態で振動板上で圧電素子に電圧を印加して変形量をスキャンしながら測定した。2kHzの70Vの電圧を印加して平均変位を測定した。
【0105】
スキャンしたデータから圧電素子の変形量を平均すると、特定地点での圧電素子の平均変位が計算された。そして、圧電素子の位置によって一地点毎に平均変位を測定した。このような圧電素子の位置による平均変位は図5にグラフで示した。
【0106】
図5を参照すると、圧電素子の位置による平均変位は略全領域で一定の値を有することが分かる。即ち、本発明の一実施例によると、圧電素子により具現される微細変位運動は均一で、繰り返し性のある信頼性の高い運動を具現することができることが分かる。
【0107】
また、同じ圧電ペーストの組成からガラスフリットのみを変えて比較例3及び比較例4を製造した。比較例3のガラスフリットとしてはBi2O360wt%、B2O310wt%及びCdO30wt%の組成を有するガラスフリットを使用し、比較例4のガラスフリットとしてはBi2O365wt%、B2O310wt%、SiO212.5wt%及びAl2O312.5wt%の組成を有するガラスフリットを使用した。
【0108】
実施例2、比較例3、比較例4の圧電体の厚さt、平均変位及びt×平均変位値は下記表2に示した。
【0109】
【表2】
【0110】
本発明の実施例2は、平均変位が179nmと最も大きく、比較例3は本発明の実施例2より4%小さい値で、比較例4は本発明の実施例2より48%以上大きい値であることが分かる。
【0111】
即ち、本発明の場合、微細変位も他の比較例より大きく具現することができた。即ち、さらに精密な範囲の微細運動の調節が可能となることが分かった。
【0112】
本発明の一実施例による圧電素子をインクジェットプリントヘッドに具現される場合、吐出されるインクの量をより精密に調節することができる。
【符号の説明】
【0113】
1 インクジェットプリントヘッド
100 上部基板
103 振動部
111 圧力チャンバ
120 第1電極
130 圧電体
140 第2電極
150 印刷回路基板
200 中間基板
201 リザーバー
300 下部基板
301 インク吐出部
303 インク誘導部
【技術分野】
【0001】
本発明は圧電素子、インクジェットプリントヘッド及びその製造方法に関し、より具体的には、環境に無害ながらも圧電特性が向上した圧電素子、インクジェットプリントヘッド及びその製造方法に関する。
【背景技術】
【0002】
一般的にインクジェットプリントヘッドは、印刷用インクの微小液滴(droplet)を記録用紙上の所望位置に吐出させ、所定色相の画像で印刷する装置である。該インクジェットプリンターのインク吐出方式には、熱源を利用してインクにバブル(bubble)を発生させ、この力でインクを吐出させる電気熱変換方式(electro−thermal transducer、バブルジェット(登録商標)方式)と、圧電体を利用して圧電体の変形により生じるインクの体積変化によってインクを吐出させる電気機械変換方式(electro−mechanical transducer、圧電方式)とがある。
【0003】
上記圧電方式のインクジェットプリントヘッドは、主にセラミック材料、金属材料または合成樹脂材料などで構成された複数の薄板を切削加工してインク流路を形成し、複数の薄板を積層して製造する。上記インク流路に圧力を加えるようにインクジェットプリントヘッドに圧電素子が搭載される。上記圧電素子に電圧を印加してインク流路に圧力を加えることで、インクを吐出させることができる。
【0004】
上記圧電素子は異なる極に帯電される二つの電極の間に圧電体が配置された構造であり、上記圧電体は圧電体組成物を含む圧電体ペーストが印刷されて形成されることができる。そして、圧電体ペーストを焼結して圧電素子を製造することができる。
【0005】
一般的な圧電体組成物の場合、1000℃以上の焼成温度が求められる。焼成温度が高いと、電極を形成する物質が揮発したり、基板を形成する物質が変性して物性が低下するという問題点が発生し得る。また、焼成温度を低くするために、一般的にCdを用いるが、Cdを用いると、環境規制の対象となる。従って、Cdに代わり、且つ、優れた圧電特性が具現できる多様な物質に対する研究が行われている。
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0006】
本発明の一実施様態は、Cdを用いなくとも低温焼結が可能な圧電体を提供することである。これによって、高温焼結により発生する数多くの問題点を解決する。
【0007】
本発明の他の実施様態は、優れた圧電特性を有する圧電素子を提供することである。印加される電圧により繰り返し性が保障され、微細変位を容易に具現できる圧電素子を提供することである。
【課題を解決するための手段】
【0008】
本発明の一実施例による圧電素子は圧電素子用圧電体組成物100重量部に対し、90重量部以上100重量部未満のPb(Zr、Ti)O3を含む圧電セラミックパウダーと、0重量部超過10重量部以下のガラスフリットとを含み、ガラスフリット100重量部に10から20重量部のZnOを含むことができる。
【0009】
上記圧電セラミックパウダーはxPb(Mg1/3Nb2/3)−y(Ni1/3Nb2/3)−zZr−wTi−O3の組成であり、x、y、z及びwはmol%で、0.15≦x≦0.40、0.05≦y≦0.20、0.20≦z≦0.35及び0.30≦w≦0.45を満たすことができる。
【0010】
上記ガラスフリット100重量部に対し、65から85重量部のBi2O3と5から15重量部のB2O3を含むことができる。
【0011】
上記圧電体ペースト100重量部に対し、80から85重量部の圧電体組成物と、10から14重量部の溶剤と、1から10重量部の添加剤とを含むことができる。
【0012】
上記圧電体ペーストの焼結温度は900から1000℃であってよい。
【0013】
本発明の他の実施例によるインクジェットプリントヘッドは、内部に圧力チャンバを含む基板と、上記基板の上記圧力チャンバ上に形成された第1電極と、本発明の一実施例による圧電素子用圧電体組成物を含む圧電体と、上記圧電体に形成される第2電極とを含むことができる。
【0014】
本発明のさらに他の実施例による圧電素子の製造方法は、第1電極を形成する段階と、圧電体組成物100重量部に対し、90重量部以上100重量部未満のPb(Zr、Ti)O3を含む圧電セラミックパウダーと、0重量部超過10重量部以下のガラスフリットを含み、上記ガラスフリット100重量部に10から20重量部(wt%)のZnOを含む圧電体組成物を含む圧電体ペーストを第1電極に印刷して圧電体を形成する段階と、圧電体上に第2電極を形成する段階と、基板、上記第1電極、上記圧電体及び上記第2電極を焼結する段階とを含むことができる。
【0015】
上記圧電体ペースト100重量部に対し、80から85重量部の圧電体組成物と、10から14重量部の溶剤と、1から10重量部の添加剤とを含むことができる。
【0016】
上記圧電体ペーストの焼結温度は900から1000℃であってよい。
【0017】
上記圧電セラミックパウダーはxPb(Mg1/3Nb2/3)−y(Ni1/3Nb2/3)−zZr−wTi−O3の組成であり、上記x、y、z及びwはmol%で、0.15≦x≦0.40、0.05≦y≦0.20、0.20≦z≦0.35及び0.30≦w≦0.45を満たすことができる。
【0018】
上記ガラスフリット100重量部に対し、65から85重量部のBi2O3と5から15重量部のB2O3を含むことができる。
【0019】
本発明の他の実施例によるインクジェットプリントヘッドの製造方法は、単結晶シリコーンからなり、内部にインク流路が形成された基板を設ける段階と、上記基板に本発明の一実施例による圧電素子を形成する段階とを含むことができる。
【発明の効果】
【0020】
本発明の一実施例によると、Cdを用いなくとも低温焼結が可能な圧電体を提供することができる。これにより、環境規制の対象となるCdを用いなくとも高温焼結により発生する数多くの問題点を解決することができる。即ち、環境に有害な物質を使用しないため、環境に有害な物質を発生させず、安全性が保障される圧電素子を提供することができる。
【0021】
本発明の他の実施例によると、優れた圧電特性を有する圧電素子を提供することができる。優れた誘電率を有する圧電素子を製造することができ、印加される電圧により微細変位運動の繰り返し性が保障されることができる。これにより、微細変位運動を具現すべき多様な電子部品に適用できる圧電素子を製造することができる。
【図面の簡単な説明】
【0022】
【図1】本発明の一実施例によるインクジェットプリントヘッドの概略断面図である。
【図2a】本発明の一実施例によるインクジェットプリントヘッドの製造工程図である。
【図2b】本発明の一実施例によるインクジェットプリントヘッドの製造工程図である。
【図2c】本発明の一実施例によるインクジェットプリントヘッドの製造工程図である。
【図2d】本発明の一実施例によるインクジェットプリントヘッドの製造工程図である。
【図3】本発明の一実施例によるインクジェットプリントヘッドの焼成工程における温度変化を示すグラフである。
【図4a】本発明の一実施例と比較例による圧電素子の断面を示す電子走査顕微鏡写真(SEM)である。
【図4b】本発明の一実施例と比較例による圧電素子の断面を示す電子走査顕微鏡写真(SEM)である。
【図4c】本発明の一実施例と比較例による圧電素子の断面を示す電子走査顕微鏡写真(SEM)である。
【図5】本発明の一実施例によるインクジェットプリントヘッドの位置による平均変位を示すグラフである。
【発明を実施するための形態】
【0023】
以下では、本発明の好ましい実施例を添付の図面に基づいて詳しく説明する。
【0024】
本発明を説明するにおいて、本発明の構成要素を指し示す用語は各々の構成要素の機能を考慮して名づけられたものであるため、本発明の技術的構成要素を限定する意味と理解してはならない。
【0025】
図1は、本発明の一実施例によるインクジェットプリントヘッド1の概略断面図である。
【0026】
以下、本発明をさらに具体的に説明する。
【0027】
本発明の一実施例によるインクジェットプリントヘッド1は、インク流路が形成された上部基板100、中間基板200及び下部基板300を含み、上記上部基板100に形成された第1電極120、圧電体130及び第2電極140を含む。そして、上記第2電極140に印刷回路基板150を連結して圧電体130に印加される電圧を調節することで、微小液滴(droplet)を具現するインクジェットプリントヘッド1を提供することができる。
【0028】
本発明の一実施例によるインクジェットプリントヘッド1は、複数の薄いプレートが積層及び接合されて形成されることができる。
【0029】
上記インクジェットプリントヘッド1は上部基板100、中間基板200及び下部基板300が順に積層及び接合されて形成されることができる。
【0030】
上記上部基板100には圧電素子の変化によってインク流路に圧力を加える圧力チャンバ111を含み、上部基板100の薄い部分は振動部103であって、圧電素子の変化を圧力チャンバ111に伝達する役割をする。
【0031】
上記中間基板200は上記圧力チャンバ111に連結されるリザーバー201を含むことができる。上記リザーバー201はインクコンテナ(不図示)から流入されたインクを貯蔵し、吐出されるインクが充填される所である。
【0032】
上記下部基板300にはインク誘導部303及びインク吐出部301からなるノズル部が形成される。上記インク誘導部303は上記リザーバー201に連結され、圧力チャンバに圧力が加わると、吐出されるインクをノズル部に誘導する役割をする。また、上記インク吐出部301は外部へインクを吐出させる役割をする。
【0033】
上記上部基板100、上記中間基板200及び上記下部基板300は積層されてインクを吐出させるためのインク流路を形成することができる。上記上部基板100には圧電素子が搭載され、圧電素子は印加された電圧によってその形状が変形され、インク流路に圧力を加えることで、インクを吐出させることができる。
【0034】
本発明の一実施例による圧電素子は第1電極120、圧電体130及び第2電極140からなることができる。
【0035】
圧電素子とは、印加された電圧により圧電物質の収縮及び膨脹を具現することができる素子のことである。圧電素子は印加された電圧の大きさを調節して微細な動きを繰り返して具現することができる。本発明の一実施例によると、圧電素子がインクジェットプリントヘッド1に装着され、インク流路に圧力を加えるのに用いられることを開示したが、必ずしもこれに制限されず、繰り返される微細変位運動を具現すべき多様な製品に適用されることができる。
【0036】
本発明の一実施例によると、上記圧電素子の圧電体としてジルコンチタン酸鉛磁器(PZT;lead Zirconium Titanite Ceramics)を使用することができる。PZTはPb(Zr、Ti)O3の組成で、複合ペロブスカイト(perovskite)構造を有する物質であって、強誘電体または反強誘電体特性を有する物質である。PZTは電気的エネルギーを機械的エネルギーに転換する効率に優れた材料であり、繰り返される微細運動を具現するのに適用することができる。
【0037】
本発明の一実施例によると、圧電素子は圧電体組成物100重量部に対し、90重量部以上100重量部未満のPb(Zr、Ti)O3を含む圧電セラミックパウダー及び0重量部超過10重量部以下のガラスフリットを含むことができる。ガラスフリットの含量が10重量部を超えると、圧電体固有の圧電特性が低下することがある。そして、上記ガラスフリットはガラスフリット100重量部に対し、10から20重量部(wt%)のZnOを含むことができる。
【0038】
本発明の一実施例による圧電体を形成する圧電体組成物は、Pb(Zr、Ti)O3を含む圧電セラミックパウダー、即ち、ジルコンチタン酸鉛磁器(PZT;lead Zirconium Titanite Ceramics)を含むことができる。PZTパウダーは、優れた圧電特性を具現することができる。
【0039】
本発明の一実施例によると、上記圧電セラミックパウダーはxPb(Mg1/3Nb2/3)−y(Ni1/3Nb2/3)−zZr−wTi−O3の組成で、上記x、y、z及びwはmol%であって、0.15≦x≦0.40、0.05≦y≦0.20、0.20≦z≦0.35及び0.30≦w≦0.45を満たすことができる。
【0040】
上記のような組成を有する圧電セラミックパウダーを用いると、優れた圧電特性を有する圧電素子を具現することができ、繰り返される微細運動を容易に具現することができる。
【0041】
本発明の一実施例によると、ガラスは圧電セラミックパウダー間の結合を補助するようにフリット(frit)の状態で提供され、圧電セラミックパウダーの焼結温度を低くすることができ、優れた緻密性を有する圧電体を提供することができる。
【0042】
ガラスフリットは組成通りに、原材料を秤量してから蒸留水とジルコニアボールを入れ、12時間均一に混合する。混合したスラリーは乾燥し、乾燥された粉末をアルミニウム坩堝に入れ、1000℃以上の高温で溶融した後、蒸留水を入れて急冷させてガラス相を作って分解することで、ガラスフリット状態の粉末を提供することができる。本発明の圧電体組成物は上記のような圧電セラミックパウダーとガラスフリットを混合して製造することができる。
【0043】
本発明の一実施例によると、上記ガラスフリットはガラスフリット100重量部に対し、10から20重量部のZnOを含むことができる。
【0044】
上記ZnOは圧電セラミックパウダーの優れた圧電特性を具現し、圧電セラミックパウダーの焼結温度を低くする役割をする。
【0045】
ガラスフリット100重量部に対し、10から20重量部のZnOを含み、10重量部未満では、焼結温度を900℃以下に低くすることができず、20重量部を超えると、圧電特性に影響を及ぼすことがある。従って、900から1000℃の焼結温度を維持し、優れた圧電特性を具現するために、ガラスフリット100重量部に対し、10から20重量部のZnOを含むことができる。
【0046】
本発明の一実施例によると、Bi2O3−B2O3−ZnO系のガラスフリットを使用することができ、これに制限されるものではないが、本発明の圧電体組成物の焼結温度の範囲を満たすために、ガラスフリット100重量部に対し、65から85重量部のBi2O3と5から15重量部のB2O3を含むことができる。Bi2O3の場合、B2O3、ZnOより溶融温度が低くてガラスフリットに含まれる比率が高くなる。しかし、Bi2O3が多くなりすぎると、ガラスフリットの性質を失うため、上記のように、65から85重量部のBi2O3と5から15重量部のB2O3を含むことができる。
【0047】
本発明の一実施例による圧電体組成物は、900から1000℃の焼結温度を有するように形成され、圧電体を介して第1電極及び第2電極を形成して一緒に焼結しても第1及び第2電極を構成する物質が揮発する現象を防止することができる。また、電極を構成する物質がシリコン基板のような隣接する物質と反応するという問題点を解決することができる。
【0048】
また、上記圧電体組成物は、Cdを含まなくても優れた圧電特性を保持し、低温焼結できる圧電体を製造することができる。これによって、環境に有害なCdを放出せずに優れた圧電特性が具現できる圧電素子を製造することができる。
【0049】
本発明の一実施例によると、圧電体を製造するために、上記圧電体組成物、溶剤及び添加剤を含む圧電体ペーストが用いられる。
【0050】
圧電体組成物は上述のように圧電セラミックパウダーとガラスフリットで構成された組成物で、溶剤は上記圧電セラミックパウダーとガラスフリットをペースト状に分散させるために用いられる。添加剤としては、バインダーまたは分散剤のように圧電体ペーストの粘性及び分散性を補助する役割をする多様な添加剤を用いてよい。
【0051】
本発明の一実施例によると、上記溶剤としてテルピネオール(terpineol)またはブチルカルビトールアセテート(butyl carbitol acetate)を用いることができ、これに制限されず、多様な溶剤を用いることができる。
【0052】
添加剤として、分散剤、エチルセルロース(ethylcellulose)のようなバインダーを用いることができるが、必ずしもこれに制限されず、多様な分散剤とバインダーを適用してよい。
【0053】
上記圧電体ペーストは圧電体ペースト100重量部に対し、80から85重量部の圧電体組成物、10から14重量部の溶剤及び1から10重量部の添加剤を含むことができる。
【0054】
本発明の一実施例に従って圧電セラミックパウダーとガラスフリットが混合された圧電体組成物は、圧電素子の圧電特性を具現することができる。上記圧電体組成物として上述したPZTパウダーとZnを含むガラスフリットを使用することができる。
【0055】
圧電体ペースト100重量部に対し、80から85重量部の圧電体組成物を含むことができる。80重量部未満では、圧電体ペーストの粘度が低下してスクリーン印刷などの印刷工程の際、ある程度の厚さが確保しにくくなる。即ち、印刷工程の際、厚さが薄くなり、圧電体に電圧を印加すると、圧電体が破壊(breakdown)し、安定的に駆動できなくなる。85重量部を超えると、圧電体ペーストの粘性が増加してスクリーン印刷などの印刷工程に適用しにくくなることがある。
【0056】
圧電体ペースト100重量部に対し、10から14重量部の溶剤を含むことができる。溶剤が10重量部未満では、圧電体組成物の分散性が低下し、14重量部を超えると、焼結体に不純物が含まれたり、圧電体組成物の密度が低下して圧電特性が低下する虞がある。
【0057】
図2aから図2dは、本発明の一実施例によるインクジェットプリントヘッド用圧電素子の製造方法を示す工程図である。
【0058】
図2aから図2dはインクジェットプリントヘッド用圧電素子の製造方法を一実施例で説明したが、必ずしもこれに制限されず、多様な圧電素子の製造方法に適用されることができる。
【0059】
本発明の一実施例による圧電素子の製造方法は、第1電極を形成する段階(図2b)と、上記第1電極に総重量に対して90重量部以上100重量部未満のPb(Zr、Ti)O3を含む圧電セラミックパウダー及び0重量部超過10重量部以下のガラスフリットを含み、上記ガラスフリット100重量部に10から20重量部のZnOを含む圧電体組成物を含む圧電体ペーストを印刷して圧電体を形成する段階(図2c)と、上記圧電体上に第2電極を形成する段階(図2d)と、上記基板、上記第1電極、上記圧電体及び上記第2電極を焼結する段階とを含むことができる。
【0060】
また、本発明の一実施例による圧電素子の製造方法は、特に、インクジェットプリントヘッドを製造するのに用いることができる。この場合、単結晶シリコーンからなり、内部にインク流路が形成された基板を設ける段階(図2a)をさらに含むことができる。
【0061】
図2aを参照すると、インクジェットプリントヘッド用上部基板110を設けることができる。本発明の一実施例に従ってインクジェットプリントヘッドの圧力チャンバ上に圧電素子を形成することができるが、必ずしもこれに制限されず、微細変位運動を具現すべき多様な製品に適用されることができる。
【0062】
より具体的には、内部に圧力チャンバが形成され、圧電素子と結合し振動板として作用できる上記上部基板110を設けることができる。上記上部基板はこれに制限されないが、単結晶シリコンからなる基板を用いることができる。
【0063】
図2bを参照すると、上記上部基板110に第1電極120を形成することができる。上記第1電極120は上部基板110にTi/Ptをスパッタ(sputtering)方式で蒸着して形成することができるが、これに制限されない。
【0064】
より具体的には、Tiスパッタ層上にPtスパッタ層を形成して第1電極を製造することができる。
【0065】
図2cを参照すると、上記第1電極120に圧電体ペースト131をスクリーン印刷(screen printing)方式で印刷して圧電体130を形成することができる。上記第1電極120をマスク400で覆ってスクイザー410を用いて圧電体ペースト131を押す方式により圧電体130を形成することができる。この場合、マスク400に形成された開口部Oの形状に従って圧電体130が形成されることができる。
【0066】
上記圧電体ペースト131は圧電体ペースト100重量部に対し、90重量部以上100重量部未満のPb(Zr、Ti)O3を含む圧電セラミックパウダー及び0重量部超過10重量部以下のガラスフリットを含み、上記ガラスフリット100重量部に10から20重量部のZnOを含む圧電体組成物を含むことができる。
【0067】
本発明の一実施例によると、Pb(Zr、Ti)O3を含む圧電セラミックパウダーを含むため、優れた圧電特性を有する圧電素子を具現することができ、圧電体ペースト100重量部に対し、0重量部超過10重量部以下のガラスフリットを含むため、低温焼結が可能な圧電体ペーストを提供することができる。
【0068】
また、ガラスフリットはZnOを含むため、環境に有害なCdのような物質を用いなくても優れた誘電特性及び圧電特性を具現し、低温焼結が可能な圧電体ペーストを提供することができる。
【0069】
そして、ガラスフリット100重量部に対し、10から20重量部のZnOを含むことができる。10重量部未満では、焼結温度が900℃を超えることがあり、20重量部を超えると、圧電素子の誘電特性及び圧電特性を悪くする原因となり得るため、10から20重量部のZnOを含むことができる。
【0070】
本発明の一実施例によると、上記圧電セラミックパウダーはxPb(Mg1/3Nb2/3)−y(Ni1/3Nb2/3)−zZr−wTi−O3の組成で、上記x、y、z及びwはmol%であって、0.15≦x≦0.40、0.05≦y≦0.20、0.20≦z≦0.35及び0.30≦w≦0.45を満たすことができる。
【0071】
上記のような組成を有する圧電セラミックパウダーを用いるため、優れた圧電特性を有する圧電素子を提供することができ、繰り返し性を有する微細変位運動を容易に具現することができる。
【0072】
本発明の一実施例によると、Bi2O3−B2O3−ZnO系のガラスフリットを使用することができ、これに制限されるものではないが、本発明の圧電体組成物の焼結温度の範囲を満たすために、ガラスフリット100重量部に対し、65から85重量部のBi2O3と5から15重量部のB2O3を含むことができる。
【0073】
本発明の一実施例によると、ZnOがBi2O3及びB2O3とともに混合されてガラスフリット(glass frit)の状態で提供されるため、圧電素子の圧電体の焼結温度を容易に低くすることができ、結晶性に優れた圧電体を製造することができる。
【0074】
図2dを参照すると、上記圧電体130上に第2電極140を印刷することができる。上記第2電極140はこれに制限されず、スクリーン印刷(screen printing)方式で形成されることができる。スクリーン印刷には、Ag−Pd系の電極ペーストを用いることができ、圧電体と同時焼結することができる。
【0075】
本発明の一実施例によると、インクジェットプリントヘッドに形成された圧電素子は、長さLが5000μmで、幅Wが350μmの大きさを有するように印刷されることができる。
【0076】
上記第1電極120と第2電極140に電気が印加されると、その間に配置された圧電体130はその大きさと形状が変形されることがある。それにより、振動板103に該当する部分に圧力が加わってインクが吐出される。印加される電圧の大きさ及び種類を調節することで、圧力の大きさを調節することができる。
【0077】
図3は、本発明の一実施例による圧電体の時間による加工温度を示すグラフである。
【0078】
第1電極120、圧電体130及び第2電極140を含む圧電素子を形成した後、焼結工程に導入するために、圧電素子の温度を次第に高めることができる(区間a)。
【0079】
上記圧電素子は120℃近くでソフトベーキング(soft baking)でき、ソフトベーキングを通じて圧電素子をあらかじめ仮硬化させ、加工をより容易にすることができる。
【0080】
圧電素子は400から450℃近くで1次焼結が行われる(区間b)。1次焼結過程において、圧電素子に含まれたバインダーと添加剤のような物質が除去されることができる。圧電体はペースト状態に製造されるため、1次焼結を行わないと、圧電体内部に不純物が形成されることがある。しかし、1次焼結により不純物の含まれない圧電素子を製造することができる。
【0081】
圧電素子の温度を次第に高くし、2次焼結工程に導入することができる(区間c)。また、900から1000℃で2次焼結を行うことができる(区間d)。2次焼結工程で圧電体は結晶化される。
【0082】
本発明の一実施例によると、所定の組成を有する圧電体セラミックパウダーを用い、ZnOを含むガラスフリットを使用するため、900から1000℃の低温で2次焼結を行うことができる。
【0083】
低温で2次焼結が行われるため、第1電極120が多結晶シリコンで形成された上部基板110と反応する現象を防ぐことができ、第2電極140が揮発する現象も防ぐことができる。また、2次焼結後の圧電素子は冷却することができる(区間e)。
【0084】
本発明の一実施例によると、Cdを用いなくてもZnOをガラスフリット状態で圧電体セラミックと混合するため、900から1000℃の低温で焼結を行うことができる。
【0085】
圧電体の圧電特性は圧電体の誘電率を通じて確認できる。第1電極と第2電極の間に圧電体が形成されてキャパシタンスを形成するため、圧電体の誘電率は次のような式で表されることができる。
【0086】
C=εA/t
【0087】
Cは圧電素子のキャパシタンスで、εは圧電体の誘電率を示す誘電定数で、Aは電極の対向面積を示し、tは圧電体の厚さを示す。
【0088】
圧電素子の電気的特性及び焼結性は、圧電素子のキャパシタンス値を利用して、下記のような式を通じて確認することができる。
【0089】
εA=Ct
【0090】
電極の対向面積Aが同じ値を有する場合、誘電定数εはキャパシタンスCと圧電体の厚さtを掛けた値に比例することが分かる。即ち、キャパシタンスCと圧電体の厚さtの掛けた値が大きくなるほど、誘電定数εの大きい圧電体を具現することができる。即ち、優れた誘電率を有し、焼結性に優れた圧電体を製造することができる。
【0091】
[実施例1]
同じ圧電セラミックパウダーに、本発明の一実施例によるガラスフリットと、従来技術の一実施例によるガラスフリットを混合して圧電体組成物を製造した。
【0092】
ペロブスカイト(perovskite)構造を有し、Pb(Zr、Ti)O3の組成を有するPZTパウダーである圧電セラミックパウダーとガラスフリットを1:99wt%で混合して圧電体組成物を製造した。
【0093】
本発明の一実施例である実施例1によるガラスフリットは、Bi2O375wt%、B2O310wt%及びZnO15wt%の組成を有するガラスフリットを使用し、比較例1のガラスフリットとしては、Bi2O360wt%、B2O310wt%及びCdO30wt%の組成を有するガラスフリットを使用した。また、比較例2のガラスフリットとしては、Bi2O365wt%、B2O310wt%、SiO212.5wt%及びAl2O312.5wt%の組成を有するガラスフリットを使用した。
【0094】
【表1】
【0095】
上述のように、圧電素子の焼結性に優れ、優れた圧電特性を有するほど、キャパシタンスと圧電体の厚さを掛けた値が大きくなる。上記表1は実施例1、比較例1及び比較例2の圧電体の厚さt、キャパシタンスC及びt×C値を示したものである。
【0096】
実施例1はt×C値が最も大きく、比較例1は実施例1より10%小さい値で、比較例2は実施例1より27%小さい値であることが分かる。
【0097】
即ち、本発明の一実施例によるZnOを含むガラスフリットを使用すると、Cd(比較例1)又はSi及びAl(比較例2)を含むガラスフリットより優れた誘電特性及び焼結性を有する圧電体を製造することができることが分かる。
【0098】
図4aは本発明の実施例1による圧電体の断面を示す走査電子顕微鏡写真(SEM)であり、図4a及び図4bは本発明の比較例1、2による圧電体の断面を示す走査電子顕微鏡写真(SEM)である。
【0099】
図4b(比較例1)及び図4c(比較例2)は、粒子間の隙間が大きくなり、焼結性が図4a(実施例1)より低下することが確認できる。
【0100】
本発明の一実施例によると、Cdを含まなくともZnOを含むガラスフリットを用いて焼結温度を低くすることができ、また、焼結性に優れ、圧電特性に優れる圧電体を製造することができる。
【0101】
[実施例2]
本発明の実施例2として、ペロブスカイト(perovskite)構造を有し、Pb(Zr、Ti)O3の組成を有するPZTパウダーである圧電セラミックパウダーとガラスフリットを1:99wt%で混合して圧電体組成物を製造した。また、ガラスフリットは、Bi2O375wt%、B2O310wt%及びZnO15wt%の組成を有するものを使用した。
【0102】
また、圧電体組成物82wt%、溶剤としてテルピネオール(terpineol)5wt%とブチルカルビトールアセテート(butyl carbitol acetate)7wt%を使用し、分散剤としてBYK社の分散剤であるBYK−111を1wt%、バインダーとしてエチルセルロース(ethylcellulose)5wt%を使用して圧電体ペーストを製造した。
【0103】
上記圧電体ペーストは25万cpsを有するようにミリング(milling)工程を経て所定の粘性を有するように製造され、スクリーン印刷方式により塗布された。
【0104】
インクジェットプリントヘッドに圧電素子が適用された状態であり、レーザードップラー速度計(laser doppler velocity meter;LDV)を用いて、インクのない状態で振動板上で圧電素子に電圧を印加して変形量をスキャンしながら測定した。2kHzの70Vの電圧を印加して平均変位を測定した。
【0105】
スキャンしたデータから圧電素子の変形量を平均すると、特定地点での圧電素子の平均変位が計算された。そして、圧電素子の位置によって一地点毎に平均変位を測定した。このような圧電素子の位置による平均変位は図5にグラフで示した。
【0106】
図5を参照すると、圧電素子の位置による平均変位は略全領域で一定の値を有することが分かる。即ち、本発明の一実施例によると、圧電素子により具現される微細変位運動は均一で、繰り返し性のある信頼性の高い運動を具現することができることが分かる。
【0107】
また、同じ圧電ペーストの組成からガラスフリットのみを変えて比較例3及び比較例4を製造した。比較例3のガラスフリットとしてはBi2O360wt%、B2O310wt%及びCdO30wt%の組成を有するガラスフリットを使用し、比較例4のガラスフリットとしてはBi2O365wt%、B2O310wt%、SiO212.5wt%及びAl2O312.5wt%の組成を有するガラスフリットを使用した。
【0108】
実施例2、比較例3、比較例4の圧電体の厚さt、平均変位及びt×平均変位値は下記表2に示した。
【0109】
【表2】
【0110】
本発明の実施例2は、平均変位が179nmと最も大きく、比較例3は本発明の実施例2より4%小さい値で、比較例4は本発明の実施例2より48%以上大きい値であることが分かる。
【0111】
即ち、本発明の場合、微細変位も他の比較例より大きく具現することができた。即ち、さらに精密な範囲の微細運動の調節が可能となることが分かった。
【0112】
本発明の一実施例による圧電素子をインクジェットプリントヘッドに具現される場合、吐出されるインクの量をより精密に調節することができる。
【符号の説明】
【0113】
1 インクジェットプリントヘッド
100 上部基板
103 振動部
111 圧力チャンバ
120 第1電極
130 圧電体
140 第2電極
150 印刷回路基板
200 中間基板
201 リザーバー
300 下部基板
301 インク吐出部
303 インク誘導部
【特許請求の範囲】
【請求項1】
圧電素子用圧電体組成物100重量部に対し、90重量部以上100重量部未満のPb(Zr、Ti)O3を含む圧電セラミックパウダーと、0重量部超過10重量部以下のガラスフリットとを含む圧電体組成物を含んで構成され、
上記ガラスフリット100重量部に10から20重量部のZnOを含む圧電素子。
【請求項2】
上記圧電セラミックパウダーはxPb(Mg1/3Nb2/3)−y(Ni1/3Nb2/3)−zZr−wTi−O3の組成で、上記x、y、z及びwはmol%であって、0.15≦x≦0.40、0.05≦y≦0.20、0.20≦z≦0.35及び0.30≦w≦0.45を満たす請求項1に記載の圧電素子。
【請求項3】
上記ガラスフリット100重量部に対し、65から85重量部のBi2O3と5から15重量部のB2O3を含む請求項1または2に記載の圧電素子。
【請求項4】
圧電体ペースト100重量部に対し、80から85重量部の圧電体組成物と、10から14重量部の溶剤と、1から10重量部の添加剤とを含む圧電体製造用圧電体ペーストが印刷されて形成された請求項1から3の何れか1項に記載の圧電素子。
【請求項5】
上記圧電体ペーストの焼結温度は900から1000℃である請求項4に記載の圧電素子。
【請求項6】
内部に圧力チャンバを含む基板と、
上記基板の上記圧力チャンバ上に形成された第1電極と、
請求項1から5の何れか1項に記載の圧電素子用圧電体組成物を含む圧電体と、
上記圧電体に形成される第2電極と
を含む圧電方式のインクジェットプリントヘッド。
【請求項7】
第1電極を形成する段階と、
前記第1電極に、圧電体組成物100重量部に対し、90重量部以上100重量部未満のPb(Zr、Ti)O3を含む圧電セラミックパウダー及び0重量部超過10重量部以下のガラスフリットを含み、前記ガラスフリット100重量部に10から20重量部のZnOを含む圧電体組成物を含む圧電体ペーストを印刷して圧電体を形成する段階と、
前記圧電体上に第2電極を形成する段階と、
前記第1電極、前記圧電体及び前記第2電極を焼結する段階と
を含む圧電素子の製造方法。
【請求項8】
前記圧電体ペースト100重量部に対し、80から85重量部の圧電体組成物と、10から14重量部の溶剤と、1から10重量部の添加剤とを含む請求項7に記載の圧電素子の製造方法。
【請求項9】
前記圧電体ペーストの焼結温度は900から1000℃である請求項7または8に記載の圧電素子の製造方法。
【請求項10】
前記圧電セラミックパウダーはxPb(Mg1/3Nb2/3)−y(Ni1/3Nb2/3)−zZr−wTi−O3の組成で、前記x、y、z及びwはmol%であって、0.15≦x≦0.40、0.05≦y≦0.20、0.20≦z≦0.35及び0.30≦w≦0.45を満たす請求項7から9の何れか1項に記載の圧電素子の製造方法。
【請求項11】
前記ガラスフリット100重量部に対し、65から85重量部のBi2O3と5から15重量部のB2O3を含む請求項7から10の何れか1項に記載の圧電素子の製造方法。
【請求項12】
単結晶シリコーンからなり、内部にインク流路が形成された基板を設ける段階と、
前記基板に請求項7から11の何れか1項に記載の圧電素子の製造方法により圧電素子を形成する段階と
を含むインクジェットプリントヘッドの製造方法。
【請求項1】
圧電素子用圧電体組成物100重量部に対し、90重量部以上100重量部未満のPb(Zr、Ti)O3を含む圧電セラミックパウダーと、0重量部超過10重量部以下のガラスフリットとを含む圧電体組成物を含んで構成され、
上記ガラスフリット100重量部に10から20重量部のZnOを含む圧電素子。
【請求項2】
上記圧電セラミックパウダーはxPb(Mg1/3Nb2/3)−y(Ni1/3Nb2/3)−zZr−wTi−O3の組成で、上記x、y、z及びwはmol%であって、0.15≦x≦0.40、0.05≦y≦0.20、0.20≦z≦0.35及び0.30≦w≦0.45を満たす請求項1に記載の圧電素子。
【請求項3】
上記ガラスフリット100重量部に対し、65から85重量部のBi2O3と5から15重量部のB2O3を含む請求項1または2に記載の圧電素子。
【請求項4】
圧電体ペースト100重量部に対し、80から85重量部の圧電体組成物と、10から14重量部の溶剤と、1から10重量部の添加剤とを含む圧電体製造用圧電体ペーストが印刷されて形成された請求項1から3の何れか1項に記載の圧電素子。
【請求項5】
上記圧電体ペーストの焼結温度は900から1000℃である請求項4に記載の圧電素子。
【請求項6】
内部に圧力チャンバを含む基板と、
上記基板の上記圧力チャンバ上に形成された第1電極と、
請求項1から5の何れか1項に記載の圧電素子用圧電体組成物を含む圧電体と、
上記圧電体に形成される第2電極と
を含む圧電方式のインクジェットプリントヘッド。
【請求項7】
第1電極を形成する段階と、
前記第1電極に、圧電体組成物100重量部に対し、90重量部以上100重量部未満のPb(Zr、Ti)O3を含む圧電セラミックパウダー及び0重量部超過10重量部以下のガラスフリットを含み、前記ガラスフリット100重量部に10から20重量部のZnOを含む圧電体組成物を含む圧電体ペーストを印刷して圧電体を形成する段階と、
前記圧電体上に第2電極を形成する段階と、
前記第1電極、前記圧電体及び前記第2電極を焼結する段階と
を含む圧電素子の製造方法。
【請求項8】
前記圧電体ペースト100重量部に対し、80から85重量部の圧電体組成物と、10から14重量部の溶剤と、1から10重量部の添加剤とを含む請求項7に記載の圧電素子の製造方法。
【請求項9】
前記圧電体ペーストの焼結温度は900から1000℃である請求項7または8に記載の圧電素子の製造方法。
【請求項10】
前記圧電セラミックパウダーはxPb(Mg1/3Nb2/3)−y(Ni1/3Nb2/3)−zZr−wTi−O3の組成で、前記x、y、z及びwはmol%であって、0.15≦x≦0.40、0.05≦y≦0.20、0.20≦z≦0.35及び0.30≦w≦0.45を満たす請求項7から9の何れか1項に記載の圧電素子の製造方法。
【請求項11】
前記ガラスフリット100重量部に対し、65から85重量部のBi2O3と5から15重量部のB2O3を含む請求項7から10の何れか1項に記載の圧電素子の製造方法。
【請求項12】
単結晶シリコーンからなり、内部にインク流路が形成された基板を設ける段階と、
前記基板に請求項7から11の何れか1項に記載の圧電素子の製造方法により圧電素子を形成する段階と
を含むインクジェットプリントヘッドの製造方法。
【図1】
【図2a】
【図2b】
【図2c】
【図2d】
【図3】
【図5】
【図4a】
【図4b】
【図4c】
【図2a】
【図2b】
【図2c】
【図2d】
【図3】
【図5】
【図4a】
【図4b】
【図4c】
【公開番号】特開2013−48206(P2013−48206A)
【公開日】平成25年3月7日(2013.3.7)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2012−19029(P2012−19029)
【出願日】平成24年1月31日(2012.1.31)
【出願人】(594023722)サムソン エレクトロ−メカニックス カンパニーリミテッド. (1,585)
【Fターム(参考)】
【公開日】平成25年3月7日(2013.3.7)
【国際特許分類】
【出願日】平成24年1月31日(2012.1.31)
【出願人】(594023722)サムソン エレクトロ−メカニックス カンパニーリミテッド. (1,585)
【Fターム(参考)】
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