説明

地図表示制御装置および地図表示制御制御プログラム。

【課題】地図データの示す地図に現在位置マークを重ねた画像を画像表示装置に表示させるような装置が、現在位置測定精度に比して地図精度が悪い場合に、現在位置における地図データの誤差を適正に補正することができるような新規な技術を提供する。
【解決手段】 車両用ナビゲーション装置は、経路案内処理中に、目的地までの基準距離以下となり(ステップ110)、かつRTK−GPSによる高精度現在位置測定が行われている場合は(ステップ120)、自車両が曲がり角に進入して曲折する度に(ステップ125)、その曲折した位置と地図上の曲がり角との位置との間に基準範囲内の誤差があることに基づいて(ステップ130、135)、曲折位置座標と地図データ中の曲がり角の位置座標との誤差ゼロにするように、地図表示のための表示基準点をずらす(ステップ140)。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、地図データの示す地図に現在位置マークを重ねた画像を画像表示装置に表示させる地図表示制御装置および地図表示制御プログラムに関する。
【背景技術】
【0002】
従来、地図データの示す地図に現在位置マークを重ねた画像を表示するための装置において、現在位置の測定方法として、精度の異なる2種類の測定方法を使い分ける技術が提案されている。例えば、ナビゲーション装置において、経路案内中、目的地に近づくまでは誤差10メートル程度の通常のGPS方式による現在位置測定を行い、目的地付近ではRTK−GPS、D−GPS等のより高精度な現在位置測定方法を用いる技術が種々提案されている。
【0003】
また、現在位置測定方法が高精度となると、相対的に地図データの精度が低くなってしまうことに着目した技術が、特許文献1および特許文献2に記載されている。
【0004】
この特許文献1および特許文献2に記載のナビゲーション装置は、経路案内開始前に目的地周辺の地図データの誤差補正値を算出し、その補正値で案内中の自位置を補正し、地図上に正しく表示するようになっている。
【特許文献1】特開2002−340589号公報
【特許文献2】特開2002−340591号公報
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0005】
しかしながら、地図データと実際の地形との誤差は、地点ごとに異なる。したがって、目的地について行われた誤差補正が、目的地から離れた場所でも適正な補正となっているとは限らない。
【0006】
本発明は上記点に鑑み、地図データの示す地図に現在位置マークを重ねた画像を画像表示装置に表示させるような装置が、現在位置測定精度に比して地図精度が悪い場合に、現在位置における地図データの誤差を適正に補正することができるような新規な技術を提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0007】
上記目的を達成するための請求項1に記載の発明は、ある場合には、第1の現在位置測定方法によって測定された現在位置座標に基づいて、地図データの示す地図上に現在位置マークを重ねた画像を画像表示装置に表示させ、また別の場合には、前記第1の現在位置測定方法よりも測定精度の高い第2の現在位置測定方法によって測定された現在位置座標に基づいて、前記地図データの示す地図上に現在位置マークを重ねた画像を前記画像表示装置に表示させる地図表示制御手段と、前記地図表示制御手段が、前記第2の現在位置測定方法によって測定された現在位置座標に基づいて、地図上に現在位置マークを重ねた画像を前記画像表示装置に表示させている場合に、自らの走行経路が曲折したことに基づいて、その曲折位置座標と地図データ中の曲がり角の位置座標との誤差を低減するように、前記画像表示装置に表示させる画像中の地図と現在位置マークとの相対位置を修正する修正手段と、を備えた地図表示制御装置である。
【0008】
このように、地図表示制御装置は、自らが曲折したことに基づいて、第2の現在位置測定方法によって測定されたその曲折位置(すなわち現在位置近傍の位置)の座標と、地図データ中の曲がり角の位置座標との誤差が低減されるように、画像表示装置中の地図と現在位置マークとの相対位置を修正するので、現在位置における地図データの誤差が適正に補正された上での画像表示を行うことができる。
【0009】
また、請求項2に記載の発明は、請求項1に記載の地図表示装置において、目的地までの誘導経路の案内を行う経路案内手段を備え、前記修正手段は、前記経路案内手段が経路案内を終了したことに基づいて、それまでに行った修正を破棄することを特徴とする。
【0010】
このようになっているので、地図表示制御装置は、経路案内の終了後は、それまでの誤差修正をひきずらないので、次の経路案内等において過去の修正の影響が出ることがなくなる。
【0011】
また、請求項3に記載の発明は、請求項1または2に記載の地図表示制御装置において、前記第2の現在位置測定方法を用いることができないことに基づいて、その旨の警告を報知装置に報知させる報知制御手段を備えたことを特徴とする。
【0012】
このようになっているので、ユーザが、詳細な現在位置測定を行えないことを容易に察知することができるようになる。
【0013】
また、請求項4に記載の発明は、ある場合には、第1の現在位置測定方法によって測定された現在位置座標に基づいて、地図データの示す地図上に現在位置マークを重ねた画像を画像表示装置に表示させ、また別の場合には、前記第1の現在位置測定方法よりも測定精度の高い第2の現在位置測定方法によって測定された現在位置座標に基づいて、前記地図データの示す地図上に現在位置マークを重ねた画像を前記画像表示装置に表示させる地図表示制御手段、および、前記地図表示制御手段が、前記第2の現在位置測定方法によって測定された現在位置座標に基づいて、地図上に現在位置マークを重ねた画像を前記画像表示装置に表示させている場合に、自らの走行経路が曲折したことに基づいて、その曲折位置座標と地図データ中の曲がり角の位置座標との誤差を低減するように、前記画像表示装置に表示させる画像中の地図と現在位置マークとの相対位置を修正する修正手段として、コンピュータを機能させる地図表示制御プログラムである。
【0014】
このように、プログラムとしも本発明を捉えることができる。
【発明を実施するための最良の形態】
【0015】
以下、本発明の一実施形態について説明する。図1に、本実施形態に係る車両用ナビゲーション装置1のハードウェア構成を示す。この車両用ナビゲーション装置1は、位置検出器11、操作スイッチ群12、画像表示装置13、スピーカ14、RAM16、ROM17、外部記憶媒体18、および制御回路19を有している。
【0016】
位置検出器11は、GPS受信機11a、ジャイロスコープ11b、車速センサ11c等のセンサを有しており、これらセンサの各々の性質に基づいた、車両の現在位置や向きを特定するための測定情報を制御回路19に出力する。
【0017】
GPS受信機11aは、複数のGPS衛星から送信される航法データに基づいて自車両の3次元位置を特定する通常のGPS方式(第1の現在位置測定方法に相当する)による現在位置の測定に加え、周知のRTK−GPS方式(第2の現在位置測定方法に相当する)による現在位置の測定を行い、その測定結果の3次元現在位置座標(緯度、経度、高度)を制御回路19に出力する。通常のGPS方式による位置測定の誤差は10メートル程度であり、RTK−GPS方式による位置測定の誤差は1センチメートル程度である。
【0018】
GPS受信機11aは、これら2つの測定方式のいずれを用いるかを、制御回路19からの制御信号に基づいて切り替える。ただし、十分な数のGPS衛星を受信できない場合や、基準局との通信ができなかったりする場合には、GPS受信機11aからRTK−GPS方式を用いるよう要求する制御信号を受けても、RTK−GPS方式が使用不能である旨の信号を返し、通常のGPS方式による現在位置測定を続ける。
【0019】
ジャイロスコープ11bは、自車両の旋回角、ロール角等を検出し、その検出角を制御回路19に出力する。車速センサ11cは、車速に反比例する周期で制御回路19にパルス信号を出力する。
【0020】
操作スイッチ群12は、車両用ナビゲーション装置1に設けられた複数のメカニカルスイッチ、画像表示装置13の表示面に重ねて設けられたタッチパネル等の入力装置から成り、ユーザによるメカニカルスイッチの押下、タッチパネルのタッチに基づいた信号を制御回路19に出力する。
【0021】
画像表示装置13は、制御回路19から出力された映像信号に基づいた映像をユーザに表示する。表示映像としては、例えば現在地を中心とする地図等がある。具体的には、画像表示装置13は、2次元に並んだ複数(例えば横640ドット×縦480ドット)の画素を有し、制御回路19から、画像表示装置13中のどの位置の画素にどのような輝度および色を表示させるかを示す信号を受け、この信号に基づいて各画素の発色を制御する。なお、各画素は、その位置に基づいて、それぞれ固有の2次元座標(以下画素座標と記す)が割り振られている。例えば、ユーザから見て画面左下の画素座標は(0,0)であり、画面右下の画素座標は(640,0)であり、画面左上の画素座標は(0,480)であり、画面右上の画素座標は(640,480)である。
【0022】
外部記憶媒体18は、HDD等の不揮発性の記憶媒体であり、制御回路19が読み出して実行するプログラム、経路案内用の地図データ等を記憶している。
【0023】
地図データは、道路片(リンク)および交差点(ノード)の位置座標(緯度、経度)、種別、交差点と道路片との接続関係情報等を含む道路データ、および施設データを有している。施設データは、施設毎のエントリを複数有しており、各エントリは、対象とする施設の名称情報、所在位置座標(緯度、経度)、施設種類情報等を示すデータを有している。
【0024】
制御回路(コンピュータに相当する)19は、ROM17および外部記憶媒体18から読み出した車両用ナビゲーション装置1の動作のためのプログラムを実行し、その実行の際にはRAM16、ROM17、および外部記憶媒体18から情報を読み出し、RAM16および外部記憶媒体18に対して情報の書き込みを行い、位置検出器11、操作スイッチ群12、画像表示装置13およびスピーカ14と信号の授受を行う。
【0025】
制御回路19がプログラムを実行することによって行う具体的な処理としては、現在位置特定処理、地図表示制御処理、誘導経路探索処理、経路案内処理等がある。
【0026】
現在位置特定処理は、位置検出器11からの信号に基づいて車両の現在位置座標(緯度、経度、高度)や向きを特定する処理である。また、現在位置特定処理において、制御回路19は、必要に応じて、GPS受信機11aに対して通常のGPS方式による現在位置測定を行わせる制御信号、および、RTK−GPS方式による現在位置測定を行わせる制御信号を出力する。
【0027】
地図表示制御処理は、画像表示装置13に、地図データが示す道路や施設から成る地図画像を、その道路や施設の位置座標の配置通りに表示させ、さらに画像表示装置13に、表示地図中の、現在位置特定処理によって特定した現在位置座標に相当する位置に、現在地マークを重ねさせる処理である。具体的には、地図データ中の地図のうち、どの部分を画像表示装置13に表示させるかを決定し、この決定によって確定した地図中の位置座標と画像表示装置13中のドットとの対応関係に基づいて、どのドットにどの輝度および色を表示させるかを決定し、その決定に基づく信号を画像表示装置13に出力する。
【0028】
どの部分を画像表示装置13に表示させるかの決定は、表示基準点に対応する地図中の位置座標(緯度、経度)および地図の縮尺を決定することに相当する。なお、以降は地図中の位置座標を地図座標と記す。図2に、地図データの示す地図31と、画像表示装置13の表示画面の範囲を示すビューウィンドウ32との関係を示す。表示基準点33は、ビューウィンドウ32に対して固定されている。例えば、表示基準点33は、ビューウィンドウ32に固定された画素座標中の左上部座標位置(5,475)に固定される点である。したがって、したがって、表示基準点33の地図座標位置が決まると、その地図座標位置が画像表示装置13中のどの位置に表示されるかが決まる。また、地図の縮尺が決まると、地図座標と画素座標とを対応付けるときの比率が定まるので、ビューウィンドウ32に収まる地図中の範囲が定まる。なお、表示基準点の地図座標および縮尺は、現在位置特定処理によって特定された現在位置座標がビューウィンドウ内に収まるような値に決めるようになっている。
【0029】
また、この決定に基づいて、どのドットにどの輝度および色を表示させるかは、以下のようにして決定する。すなわち、表示基準点33の地図座標位置および縮尺に基づいて、ビューウィンドウ32内に収まる地図範囲内の道路や施設等の構成要素毎に、その構成要素の表示基準点に対する地図座標上の相対位置から、その構成要素の画素座標位置を特定し、その画素座標位置を含む所定の範囲のドットに当該構成要素の図形のための輝度および色を割り当てる。例えば、図2中の施設34は、地図座標において経度+x、緯度−yだけ表示基準点33からずれた位置にある。したがって、施設34の画素座標位置は、(x+px、y−py)となる。ここで、(x,y)は、表示基準点33の画素座標位置であり、pは決定された縮尺に基づく係数である。また、現在位置マークについても、表示基準点33の地図座標位置および縮尺に基づいて、現在位置の表示基準点に対する地図座標上の相対位置から、画素座標位置を特定し、その画素座標位置を含む所定の範囲のドットに現在位置マークのための輝度および色を割り当てる。具体的には、図2中の現在位置マーク35は、地図座標において経度+x、緯度−yだけ表示基準点33からずれた位置にある。したがって、現在位置マーク35の画素座標位置は、(x+px、y−py)となる。
【0030】
誘導経路探索処理は、操作スイッチ群12からユーザによる目的地の入力を受け付け、現在位置から当該目的地までの最適な誘導経路を算出する処理である。
【0031】
経路案内処理は、上述の現在位置特定処理および地図表示制御処理を実行させることで、誘導経路探索処理によって特定された誘導経路に沿った自車両の現在位置および地図の表示を行う処理である。また制御回路19は、経路案内処理において、自車両の現在位置が目的地から基準距離(例えば100メートル)を超えた距離にある間は、現在位置特定処理に、通常のGPS方式を用いる旨の信号をGPS受信機11aに出力させ、自車両の現在位置が目的地から基準距離以下となって以降は、現在位置特定処理に、RTK−GPS方式を用いる旨の信号をGPS受信機11aに出力させる。
【0032】
また制御回路19は、図3にフローチャートとして示す誤差補正処理プログラム100を繰り返し実行するようになっている。制御回路19は、この誤差補正処理プログラム100の実行において、まずステップ110で、自車両の現在位置が目的地まで基準距離以内であるか否かを判定する。ここでいう基準距離とは、経路案内処理において通常のGPS方式とRTK−GPS方式との入れ替えのために用いられる基準距離と同じである。したがって、基準距離内にある場合とは、RTK−GPS方式によって現在位置測定が行われているべき場合に相当する。なお、基準距離とは、所定の近接基準(例えば100メートル以内にあるという基準、200メートルと300メートルとの間でランダムに選ばれた距離内にあるという基準)を満たす距離である。基準距離を超えている場合は再度ステップ110を実行し、基準距離以内となった場合、続いてステップ115を実行する。
【0033】
ステップ115では、高精度測位、すなわちRTK−GPSによる現在位置測定が可能であるか否かを判定する。具体的には、一定期間待機し、その期間内にGPS受信機11aからRTK−GPS方式が使用不能である旨の信号を受けなければ、高精度測位可能であると判定し、RTK−GPS方式が使用不能である旨の信号を受ければ、高精度測位不可能であると判定する。高精度測位が可能な場合、続いてステップ125を実行し、不可能な場合、続いてステップ120で、ユーザに対して、高精度測位が行えないので、これ以上経路案内を行うことができない旨の文字および音声による通知を、それぞれ画像表示装置13およびスピーカ14に行わせ、その後誤差補正処理プログラム100の実行を終了する。
【0034】
ステップ125では、自車両が曲がり角を曲折したか否かを判定する。具体的には、現在位置特定処理によって特定している現在位置の軌跡が、急激に(例えば10メートル走行以内に)基準角度(例えば45°)以上曲がった直後である場合に、自車両が曲がり角を曲折したと判定し、それ以外の場合、自車両が曲がり角を曲折していないと判定する。自車両が曲がり角を曲折した場合、続いてステップ130を実行し、曲折していない場合、続いてステップ145を実行する。
【0035】
ステップ130では、ステップ125で曲折したと判定した軌跡の、その曲折部分の頂点(例えばその曲折部分の中央位置、曲率半径が最も小さい位置等)を、曲折位置として特定し、さらに、その曲折部分に最も近い地図上の交差点の中心(またはカーブの頂点)を、曲がり角位置として特定し、この曲折位置の座標(緯度、経度)と曲がり角位置の地図座標(緯度、経度)との間に位置誤差があるか否かを判定する。図4に、図2と同じ形式の地図31、および、この場合において画像表示装置13が表示する地図領域を示すビューウィンドウ42を示す。ここで、ビューウィンドウ42に固定された表示基準点43の地図座標(X,Y)および地図の縮尺は、現在位置マーク45および目的地44がビューウィンドウ42内に入るように定められている。ここで、自車両の曲折位置が現在位置マーク45の位置であり、曲がり角位置が交差点の中央点46である場合、位置誤差は、緯度+α、経度−βとなる(ただしαおよびβは正数)。位置誤差があれば続いてステップ135を実行し、なければ続いてステップ145を実行する。
【0036】
ステップ135では、ステップ130で算出した位置誤差が基準範囲内(例えば距離誤差が50メートル以内)であるか否かを判定する。基準範囲内であれば続いてステップ140を実行し、基準範囲外であれば続いてステップ145を実行する。
【0037】
ステップ140では、ステップ130で算出した位置誤差をなくすように、地図の表示基準位置を補正する。図5に、補正前のビューウィンドウ42および表示基準点43、ならびに補正後のビューウィンドウ52よび表示基準点51を、図2および図4と同じく地図31上に示す。この図に示す通り、表示基準点の補正は、算出した位置誤差が無くなって現在位置マーク45と曲がり角位置46とが一致するように、画像表示装置13上で地図を平行移動させるために行う。したがって、補正後の表示基準点51は、補正前の表示基準点43から、位置誤差と同じ大きさで逆の方向に、すなわち、緯度−α、経度+βだけ、ずれている。ただし、表示基準点の修正があった後は、現在位置マーク45の画素座標位置は、現在位置マーク45の現在位置座標と、修正を受けていないオリジナルの表示基準点43の間の相対位置に基づいて決めるようになる。このようになっているので、図5に示す通り、地図の構成要素である施設47等は、表示基準点51との相対位置に基づいて画素座標が決まり、現在位置マーク45は、表示基準点43との相対位置に基づいて画素座標が決まるので、結果として、画像表示装置13の表示画面52中では、現在位置マーク45は固定されたまま、地図が並行移動することで、現在位置マーク45と曲がり角位置46とが一致する。
【0038】
なお、制御回路19は、このオリジナルの表示基準点の地図座標を記憶するため、表示基準点の位置を、オリジナルの表示基準点の地図座標と、そのオリジナルに対する修正に相当する相対地図座標変位とをRAM16に記録しており、現在の表示基準点は、オリジナルの表示基準点の地図座標に、この相対地図座標変位を加えたものとするようになっている。そして、ステップ140で表示基準点の修正がある度に、その変化分だけ相対地図座標変位の値をずらすようになっている。また、地図表示処理において、表示基準点の修正ではなく、現在位置マークをビューウィンドウ外に出さないようにするためのスクロールを行う場合は、そのスクロール分だけオリジナルの表示基準点の地図座標をずらすようになっている。
【0039】
ステップ140に続いては、ステップ145で、自車両が目的地に到達して経路案内処理が終了したか否かを判定し、到達した場合は続いてステップ155を実行し、到達していない場合は続いてステップ150を実行する。ステップ150では、ユーザの操作スイッチ群12に対する案内終了操作等による、経路案内処理の中断があったか否かを判定し、あれば続いてステップ155を実行し、中断がなければ続いてステップ125を実行する。
【0040】
ステップ155では、補正値をリセットする。具体的には、RAM16中有の相対地図座標変位の値をゼロにする。ステップ155の後、誤差補正処理プログラム100の1回分の実行が終了する。
【0041】
以上のような誤差補正処理プログラム100を実行することで、車両用ナビゲーション装置1は、経路案内処理中に、目的地までの基準距離以下となり(ステップ110参照)、かつRTK−GPSによる高精度現在位置測定が行われている場合は(ステップ120参照)、自車両が曲がり角に進入して曲折する度に(ステップ125参照)、その曲折した位置と地図上の曲がり角との位置との間に基準範囲内の誤差があることに基づいて(ステップ130、135参照)、曲折位置座標と地図データ中の曲がり角の位置座標との誤差ゼロにするように、地図表示のための表示基準点をずらす(ステップ140参照)。
【0042】
このように、車両用ナビゲーション装置1は、経路案内中、目的地に近づいたときに、自らが曲折したことに基づいて、高精度な現在位置測定方法によって測定されたその曲折位置(すなわち現在位置近傍の位置)の座標と、地図データ中の曲がり角の位置座標との誤差が低減されるように、画像表示装置13中の地図と現在位置マークとの相対位置を、自車両が曲がり角を曲折する度に繰り返し修正するので、現在位置における地図データの誤差がリアルタイムで適正に補正された上での画像表示を行うことができる。したがって、高精度な現在位置測定に見合った、目的地までの精度のよい経路案内を行うことが可能となる。
【0043】
また、車両用ナビゲーション装置1は、自車両が目的地に到達したり(ステップ145参照)、経路案内処理が中断したりすることによって(ステップ150参照)、経路案内が終了すると、それまでの修正を破棄する(ステップ155参照)。このようになっているので、車両用ナビゲーション装置1は、経路案内の終了後は、それまでの誤差修正をひきずらないので、次の経路案内等において過去の修正の影響が出ることがなくなる。
【0044】
また、車両用ナビゲーション装置1は、高精度の現在位置測定方法を用いることができない場合は(ステップ115参照)、その旨の警告を報知装置に報知させる(ステップ120)ので、ユーザが、詳細な現在位置測定による経路案内を受けられないことを容易に察知することができるようになる。
【0045】
また、車両用ナビゲーション装置1は、曲折した位置と地図上の曲がり角との位置との間に基準範囲を超えた誤差がある場合(ステップ135参照)には、曲折位置座標と地図データ中の曲がり角の位置座標との誤差ゼロにするような修正は行わない。したがって、GPS受信機11aの故障がある場合等、異常な現在位置測定が行われている場合に、その異常な測定に基づいた修正を行う可能性が低くなる。
【0046】
なお、上記の実施形態においては、車両用ナビゲーション装置1が地図表示制御装置に相当する。また、地図表示制御処理のためのプログラム、経路案内処理のためのプログラム、および誤差補正処理プログラム100が、地図表示制御プログラムに相当する。また制御回路19が、地図表示制御処理のためのプログラムを実行することで地図表示制御手段として機能し、経路案内処理のためのプログラムを実行することで経路案内手段として機能する。また制御回路19が、誤差補正処理プログラム100を実行することで修正手段として機能する。
【0047】
(他の実施形態)
なお、上記の実施形態においては、画像表示装置13中で地図をずらすことで、RTK−GPS方式によって測定した現在位置と地図との誤差を解消しているが、画像表示装置13中で現在位置マークを逆にずらしても、同様の効果が達成される。
【0048】
なお、上記の実施形態においては、第2の現在位置測定方法をRTK−GPS方式によるものとしたが、第2の現在位置測定方法としては、例えばD−GPSでもよい。また、第1の現在位置測定方法および第2の現在位置測定方法としては、かならずしもGPS衛星を用いたものでなくともよく、他の衛星航法システムを用いたものでもよい。また、第1の現在位置測定方法および第2の現在位置測定方法としては、必ずしも衛星航法システムを用いたものである必要はない。例えば、第1の現在位置測定方法として、低精度のジャイロスコープを用い、第2の現在位置測定方法として、高精度のジャイロスコープを用いてもよい。また、第1の現在位置測定方法として、低精度の加速度センサを用い、第2の現在位置測定方法として、高精度の車速センサを用いてもよい。つまり、第1の現在位置測定方法が、第2の現在位置測定方法よりもその測定精度が低く、第2の現在位置測定方法の誤差よりもその誤差が大きいような地図に基づく表示が行われるようになっていれば、第1の現在位置測定方法および第2の現在位置測定方法としては、どのようなものでもよい。
【0049】
また、上記の実施形態においては、車両用ナビゲーション装置1が、地図表示制御装置の一例として示されているが、地図表示制御装置としては、人が持ち運び可能なナビゲーション装置であってもよいし、経路案内を行わず、単に地図に現在位置を重ねた画像を画像表示装置に表示させるような装置であってもよい。
【図面の簡単な説明】
【0050】
【図1】本発明の実施形態に係る車両用ナビゲーション装置1のハードウェア構成図である。
【図2】地図データの示す地図と、その地図中の画像表示装置13への表示部分32との関係を示す図である。
【図3】制御回路19が実行する誤差補正処理プログラム100のフローチャートである。
【図4】曲折時の自車両の位置45と、対応する曲がり角46との間の誤差を示す図である。
【図5】誤差に基づいて、地図中の画像表示装置13への表示部分を修正する様子を示す図である。
【符号の説明】
【0051】
1…車両用ナビゲーション装置、11…位置検出器、11a…GPS受信機、
11b…ジャイロスコープ、11c…車速センサ、12…操作スイッチ群、
13…画像表示装置、14…スピーカ、16…RAM、17…ROM、
18…外部記憶媒体、19…制御回路、31…地図、
32、42、52…ビューウィンドウ、33、43、51…表示基準点、
34、47…施設、35、45…現在位置マーク、44…目的地、
46…曲がり角位置、100…誤差補正処理プログラム。

【特許請求の範囲】
【請求項1】
ある場合には、第1の現在位置測定方法によって測定された現在位置座標に基づいて、地図データの示す地図上に現在位置マークを重ねた画像を画像表示装置に表示させ、また別の場合には、前記第1の現在位置測定方法よりも測定精度の高い第2の現在位置測定方法によって測定された現在位置座標に基づいて、前記地図データの示す地図上に現在位置マークを重ねた画像を前記画像表示装置に表示させる地図表示制御手段と、
前記地図表示制御手段が、前記第2の現在位置測定方法によって測定された現在位置座標に基づいて、地図上に現在位置マークを重ねた画像を前記画像表示装置に表示させている場合に、自らの走行経路が曲折したことに基づいて、その曲折位置座標と地図データ中の曲がり角の位置座標との誤差を低減するように、前記画像表示装置に表示させる画像中の地図と現在位置マークとの相対位置を修正する修正手段と、を備えた地図表示制御装置。
【請求項2】
目的地までの誘導経路の案内を行う経路案内手段を備え、
前記修正手段は、前記経路案内手段が経路案内を終了したことに基づいて、それまでに行った修正を破棄することを特徴とする請求項1に記載の地図表示装置。
【請求項3】
前記第2の現在位置測定方法を用いることができないことに基づいて、その旨の警告を報知装置に報知させる報知制御手段を備えたことを特徴とする請求項1または2に記載の地図表示制御装置。
【請求項4】
ある場合には、第1の現在位置測定方法によって測定された現在位置座標に基づいて、地図データの示す地図上に現在位置マークを重ねた画像を画像表示装置に表示させ、また別の場合には、前記第1の現在位置測定方法よりも測定精度の高い第2の現在位置測定方法によって測定された現在位置座標に基づいて、前記地図データの示す地図上に現在位置マークを重ねた画像を前記画像表示装置に表示させる地図表示制御手段、および、
前記地図表示制御手段が、前記第2の現在位置測定方法によって測定された現在位置座標に基づいて、地図上に現在位置マークを重ねた画像を前記画像表示装置に表示させている場合に、自らの走行経路が曲折したことに基づいて、その曲折位置座標と地図データ中の曲がり角の位置座標との誤差を低減するように、前記画像表示装置に表示させる画像中の地図と現在位置マークとの相対位置を修正する修正手段として、コンピュータを機能させる地図表示制御プログラム。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【公開番号】特開2006−226871(P2006−226871A)
【公開日】平成18年8月31日(2006.8.31)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2005−41880(P2005−41880)
【出願日】平成17年2月18日(2005.2.18)
【出願人】(000004260)株式会社デンソー (27,639)
【Fターム(参考)】