説明

地図表示装置

【課題】地図の取り扱いに注意を払う必要のある特定地域を違和感なく表示させることができる地図表示装置を提供する。
【解決手段】地図表示装置は、現在位置を算出する現在位置算出部と、特定地域内でのみ使用が許可されている地図データを格納した特定地域専用データベースと、特定地域外で特定地域内の表示を許可されたデータを格納した特定地域使用許可データベースと、特定地域内および特定地域外の両方で使用できる特定地域外の地図データを格納した特定地域外データベースと、現在位置が特定地域外である場合は特定地域外データベースから取得した地図データを用いて特定地域外に地図を表示させる表示データを生成する(ST17)とともに特定地域使用許可データベースから取得したデータを用いて特定地域内に許可された地図属性の画像表示データを生成する制御部と、生成された地図または許可された地図属性の画像を表示する表示部を備えている。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
この発明は、車両に搭載されて自車位置周辺の地図を表示する地図表示装置に関し、特に自車が居る地域によって地図表示の可否を制御する技術に関する。
【背景技術】
【0002】
記憶媒体から地図データを読み出して地図表示を行う地図表示装置を使用する際に、地図表示装置に格納されている地図データの取り扱いに注意を払う必要のある地域が存在する。例えば、ある国では地図表示装置に格納される地図データの国外での使用が禁止されており、地図表示装置を搭載した車両が国外へ移動する際は、国内の地図データを用いた地図表示を禁止する必要がある。
【0003】
このような地図の取り扱いに注意を払う必要のある地域に対応するために、特許文献1は、特定地域の地図データを読み出すことが可能な状態で地図表示装置が特定地域外で使用されることを未然に防止できるようにした地図表示装置を開示している。この地図表示装置は、現在位置が特定地域の境界付近にあるか否かを調べ、境界付近にあると判定した場合、記憶装置に記憶されている地図データの読み出しを不能にするか否かをユーザに確認する確認画面を表示し、ユーザの操作によって地図データの読み出しを不能にすることが許可された場合、記憶装置からの地図データの読み出しを不能にする処理を実施する。これにより、ユーザが気付かずに地図を表示できる状態で地図データを国外で使用されることがないように、国境付近で、特定地域の地図表示をロックすることができる。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0004】
【特許文献1】特開2009−53222号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0005】
ところで、上述した特許文献1に開示された地図表示装置のように、特定地域の地図表示をロックした状態で該特定地域以外を走行すると、特定地域内の表示が空白となり、使い勝手が非常に悪いという問題がある。
【0006】
この発明は、上述した問題を解消するためになされたものであり、その課題は、地図の取り扱いに注意を払う必要のある特定地域を違和感なく表示させることができる地図表示装置を提供することにある。
【課題を解決するための手段】
【0007】
この発明に係る地図表示装置は、現在位置を算出する現在位置算出部と、特定地域内でのみ使用が許可されている地図データを格納した特定地域専用データベースと、特定地域外で特定地域内を表示することを許可されたデータを格納した特定地域使用許可データベースと、特定地域内および特定地域外の両方で使用できる特定地域外の地図データを格納した特定地域外データベースと、現在位置算出部で計算された現在位置が特定地域外である場合は特定地域外データベースから取得した地図データを用いて特定地域外に地図を表示させる表示データを生成するとともに特定地域使用許可データベースから取得したデータを用いて特定地域内に許可された地図属性の画像を表示させる表示データを生成し、現在位置算出部で計算された現在位置が特定地域内である場合は特定地域外データベースから取得した地図データを用いて特定地域外に地図を表示させる表示データを生成するとともに特定地域専用データベースから取得した地図データを用いて特定地域内に地図を表示する表示データを生成する制御部と、制御部で生成された表示データに基づき地図または許可された地図属性の画像を表示する表示部を備えている。
【発明の効果】
【0008】
この発明に係る地図表示装置によれば、特定地域内でしか表示を許可されていない地図を特定地域内で表示する場合は、そのまま表示を行い、特定地域外で特定地域内の地図を表示する場合は、許可された地図属性の画像を表示するように構成したので、地図の取り扱いに注意を払う必要のある特定地域を違和感なく表示させることができる。
【図面の簡単な説明】
【0009】
【図1】この発明の実施の形態1に係る地図表示装置の構成を示すブロック図である。
【図2】この発明の実施の形態1に係る地図表示装置において使用される地図属性の例を示す図である。
【図3】この発明の実施の形態1に係る地図表示装置において、自車が特定地域内に居る場合の地図表示の例を示す図である。
【図4】この発明の実施の形態1に係る地図表示装置において、自車が特定地域外に居る場合の地図表示の例を、従来の地図表示と比較して示す図である。
【図5】この発明の実施の形態1に係る地図表示装置の動作を示すフローチャートである。
【図6】この発明の実施の形態1に係る地図表示装置の動作を説明するための図である。
【図7】この発明の実施の形態1に係る地図表示装置における地図表示を従来の地図表示と比較して示す図である。
【図8】この発明の実施の形態2に係る地図表示装置の構成を示すブロック図である。
【図9】この発明の実施の形態4に係る地図表示装置の構成を示すブロック図である。
【図10】この発明の実施の形態4に係る地図表示装置において使用される地図属性の例を示す図である。
【図11】この発明の実施の形態4に係る地図表示装置で表示される地図のイメージを示す図である。
【発明を実施するための形態】
【0010】
以下、この発明の実施の形態を、図面を参照しながら詳細に説明する。
実施の形態1.
図1は、この発明の実施の形態1に係る地図表示装置の構成を示すブロック図である。この地図表示装置は、CPU(Central Processing Unit)10、内蔵メモリ11、GPS(Global Positioning System)受信機12、車速センサ13、方位センサ14、タッチパネル15、ラジオ受信機16、HDD(Hard Disk Drive)17、CD(Compact Disc)/DVD(Digital Versatile Disk)ドライブ18、暗号化チップ19、携帯電話20、描画チップ21、液晶モニタ22、アンプ23およびスピーカ24を備えている。
【0011】
CPU10は、この発明の制御部に対応し、内蔵メモリ11、GPS受信機12、車速センサ13、方位センサ14、タッチパネル15、ラジオ受信機16、HDD17、CD/DVDドライブ18、暗号化チップ19、携帯電話20、描画チップ21またはアンプ23の少なくとも1つとの間でデータを送受しながら所定の処理を実行することにより地図表示装置の全体を制御する。このCPU10で実行される処理の詳細については、後に説明する。
【0012】
内蔵メモリ11は、例えばRAM(Random Access Memory)から構成されている。この内蔵メモリ11には、HDD17から読み込まれたプログラムD5(詳細は後述する)が展開される。CPU10は、この内蔵メモリ11に展開されたプログラムD5に従って動作する。また、内蔵メモリ11は、CPU10が処理中のデータを一時的に記憶するために使用される。
【0013】
GPS受信機12は、GPS衛星から送信された電波をアンテナ(図示しない)で受信して得られたGPS信号に基づき当該地図表示装置を搭載している車両の現在位置を検出する。このGPS受信機12で検出された車両の現在位置を表す現在位置データは、CPU10に送られる。
【0014】
車速センサ13は、この地図表示装置が搭載された車両から送られてくる車速パルスに基づき車両の移動速度を検出する。この車速センサ13で検出された車両の移動速度を表す速度データは、CPU10に送られる。方位センサ14は、この地図表示装置が搭載された車両の進行方位を検出する。この方位センサ14で検出された車両の進行方位を表す方位データは、CPU10に送られる。
【0015】
車速センサ13からの速度データおよび方位センサ14からの方位データを受け取ったCPU10は、これら速度データおよび方位データに基づいて自立航法により車両の現在位置を検出して現在位置データを生成する。これにより、例えばトンネルまたはビルディングの谷間に入るなどによってGPS受信機12で車両の現在位置を検出できなくなっても、自立航法によって車両の現在位置を検出できるので、常に正しい車両の現在位置を得ることができる。
【0016】
タッチパネル15は、液晶モニタ22の画面上に載置されており、地図表示装置に対する種々の指示を入力するために使用される。このタッチパネル15は、タッチされた位置に応じた信号を発生し、操作データとしてCPU10に送る。CPU10は、この操作データに応答して、例えば、液晶モニタ22の表示モードの変更、画面のスクロール、施設探索、経路探索または誘導案内などを実現するための処理を実行する。なお、タッチパネル15に代えてまたは併用して、リモートコントローラ(リモコン)、ハードスイッチまたは音声認識装置などを用いることもできる。
【0017】
ラジオ受信機16は、ラジオ放送を受信して音声信号を再生し、CPU10に送る。CPU10は、ラジオ受信機16から送られてくる音声信号を、音声データとしてアンプ23に送る。これにより、後述するように、スピーカ24からラジオ放送の音声が出力される。
【0018】
HDD17は、特定地域境界データD1、特定地域専用データベースD2、特定地域使用許可データベースD3、特定地域外データベースD4およびプログラムD5を格納している。特定地域境界データD1は、特定地域と特定地域外との境界(例えば国境)を表すデータである。特定地域専用データベースD2は、特定地域内でのみ使用が許可されている地図データを暗号化して格納している。ここで、「特定地域」とは、地図の使用が制限されている国または地域を言う。
【0019】
特定地域使用許可データベースD3は、特定地域外で使用できる特定地域内のデータ、例えば衛星から撮影された写真(以下、「衛星写真」という)のデータを格納している。ここで、「特定地域外」とは、地図の使用が制限されていない国または地域を言う。特定地域外データベースD4は、特定地域内および特定地域外の両方において使用できる特定地域外の地図データを格納している。プログラムD5は、上述したように、この地図表示装置を動作させる手順が記述されたデータである。このHDD17に格納されている各種のデータは、CPU10によって読み出される。
【0020】
CD/DVDドライブ18は、装着されたCDまたはDVD18aに記録されている情報を再生する。このCD/DVDドライブ18における再生により得られた音声信号および映像信号は、CPU10に送られる。CPU10は、CD/DVDドライブ18から送られてくる映像信号を描画チップ21に送るとともに、音声信号をアンプ23に送る。これにより、後述するように、液晶モニタ22に映像が表示されるとともに、スピーカ24から音声が出力される。
【0021】
暗号化チップ19は、CPU10から送られてくるデータを暗号化または復号化し、該CPU10に戻す。この暗号化チップ19は、特定地域内でしか使用が許可されていない地図データを暗号化してHDD17の特定地域専用データベースD2に格納したり、HDD17の特定地域専用データベースD2から読み出された暗号化された地図データを復号化したりするために使用される。
【0022】
携帯電話20は、当該地図表示装置と外部との間の通信を制御するために使用される。すなわち、携帯電話20は、外部から送信されてくる電波を受信して電気信号に変換し、受信信号としてCPU10に送るとともに、CPU10から送られてくる送信信号を電波に変換して外部に送信する。この携帯電話20は、例えば、外部のサーバから種々の情報を取得するために使用される。
【0023】
描画チップ21は、この発明の表示部の一部に対応し、CPU10から送られてくる表示データに基づき画像を描画し、映像信号として液晶モニタ22に送る。液晶モニタ22は、この発明の表示部の他の一部に対応し、描画チップ21から送られてくる映像信号に基づき画像を表示する。
【0024】
アンプ23は、CPU10から送られてくる音声データに基づき音声信号を生成して増幅し、スピーカ24に送る。スピーカ24は、アンプ23から送られてくる増幅された音声信号(電気信号)を音声(音響信号)に変換して出力する。
【0025】
上記のように構成された地図表示装置においては、ユーザがタッチパネル15を操作することにより、例えば、ナビゲーション機能である地図表示、現在地表示、経路探索、経路誘導、地図スクロールまたはPOI(Point of Interest)検索などが行われるとともに、CD/DVDドライブ18によるCDまたはDVD18aの再生、ラジオ放送の受信などが行われる。また、携帯電話20を用いて車外のサーバと通信を行うことにより、種々のサービス情報が取得される。
【0026】
図2は、特定地域外からの使用が許可された特定地域外および特定地域内の地図属性の例を示す図である。この例の場合、特定地域外からの使用が許可された特定地域内の地図属性は、幹線道路、衛星写真、主要都市名、幹線道路ネットワークおよび主要POIである。なお、特定地域外からの使用が許可される特定地域内の地図属性は、原則として、特定地域外から入手可能な地図属性である。
【0027】
図3は、地図表示の例を示す図であり、特定地域内と特定地域外が異なる形態で表示されている場合を示している。地図は、一般に、一定区画領域(タイル、パーセルまたはリージョンなどと呼ばれる)単位で管理される。図3は、自車が特定地域内に居る場合の例を示しており、この場合、全ての地図属性が表示される。また、図3は、車両が特定地域内の地点Aから国境の地点Bを通り、特定地域外の地点Cへのルートを走行する場合を示している。
【0028】
図4(a)は、自車が特定地域外に出た場合の地図表示の例を示す図である。自車位置が国境地点Bを過ぎると、特定地域内には、許可された地図属性として衛星写真が表示され、その上に、破線で幹線道路、幹線道路の経路および主要都市が表示される。なお、図4(b)は、特定地域内で表示を許可された地図属性として衛星写真しか存在しない場合の地図表示の例を示す図である。また、図4(c)は、従来の自車が特定地域外に出た場合の地図表示の例を示す図であり、自車位置が国境地点Bを過ぎると、特定地域内は灰色で空白表示となる。
【0029】
次に、上記のように構成される、この発明の実施の形態1に係る地図表示装置の動作を、図5に示すフローチャートを参照しながら説明する。なお、自車位置が特定地域内にある状態で、特定地域内から特定地域外に至る経路計算は完了しており、図6(a)に示すような地図が表示されているものとする。
【0030】
処理が開始されると、まず、現在位置の計算が行われる(ステップST11)。すなわち、CPU10は、GPS受信機12から受け取った現在位置データ、車速センサ13から受け取った速度データおよび方位センサ14から受け取った方位データに基づき現在位置を計算する。この発明の「現在位置算出部」は、CPU10の現在位置を計算する機能により構成されている。
【0031】
次いで、特定地域内であるかどうかが調べられる(ステップST12)。すなわち、CPU10は、HDD17から特定地域境界データD1を読み出し、ステップST11で計算された現在位置が、該読み出した特定地域境界データD1によって示される境界より特定地域側にあるかどうかを調べる。
【0032】
このステップST12において、特定地域内でないことが判断されると、次いで、特定地域使用許可データベースD3を用いて特定地域内の表示が行われる(ステップST13)。すなわち、CPU10は、HDD17に格納されている特定地域使用許可データベースD3から許可された地図属性の画像、例えば衛星写真のデータを読み出し、表示データとして描画チップ21に送る。
【0033】
次いで、特定地域外データベースD4を用いて特定地域外の表示が行われる(ステップST14)。すなわち、CPU10は、HDD17から特定地域外データベースD4から地図データを読み出し、表示データとして描画チップ21に送る。描画チップ21は、上記ステップST13においてCPU10から送られてきた表示データに基づき衛星写真の画像を描画するとともに、このステップST14においてCPU10から送られてきた表示データに基づき地図を描画し、映像信号として液晶モニタ22に送る。液晶モニタ22は、描画チップ21から送られてくる映像信号に基づき画像を表示する。その後、シーケンスはステップST11に戻り、上述した処理が繰り返される。
【0034】
これらステップST13およびステップST14の処理により、図6(b)に示すような、特定地域に衛星写真が嵌め込まれた地図が表示されるとともに、幹線道路上の経路表示(三角印)は元のままであるが、特定地域の幹線道路が破線で表示され、主要都市の位置と名称(XX1市)が表示され、さらに、特定地域内に存在する「国境」という文字の表示が失われないように特定地域外に移動または表現が変更される。なお、特定地域外の表示は変化しない。
【0035】
上記ステップST12において、特定地域内であることが判断されると、次いで、特定地域専用データベースD2の解読が行われる(ステップST15)。すなわち、CPU10は、HDD17の特定地域専用データベースD2から読み込んだ、暗号化された地図データを暗号化チップ19に送る。暗号化チップ19は、CPU10から送られてきた暗号化された地図データを復号化して、CPU10に戻す。
【0036】
次いで、特定地域専用データベースD2を用いて特定地域内の表示が実行される(ステップST16)。すなわち、CPU10は、ステップST15で復号化された地図データを暗号化チップ19から受け取り、表示データとして描画チップ21に送る。
【0037】
次いで、特定地域外データベースD4を用いて特定地域外の表示が実行される(ステップST17)。すなわち、CPU10は、HDD17に格納されている特定地域外データベースD4から地図データを読み出し、表示データとして描画チップ21に送る。描画チップ21は、上記ステップST16においてCPU10から送られてきた表示データに基づき特定地域内の地図を描画するとともに、このステップST17においてCPU10から送られてきた表示データに基づき特定地域外の地図を描画し、映像信号として液晶モニタ22に送る。液晶モニタ22は、描画チップ21から送られてくる映像信号に基づき画像を表示する。これらステップST15〜ステップST17の処理により、図6(a)に示すような、特定地域内および特定地域外ともに地図が表示される。その後、シーケンスはステップST11に戻り、上述した処理が繰り返される。
【0038】
図7は、この実施の形態1に係る地図表示装置における地図表示と比較するために示した、従来の地図表示装置における地図表示の例を示す図であり、図7(a)は、自車位置が特定地域内の場合の表示例、図7(b)は、自車位置が特定地域外の場合の表示例である。自車位置が特定地域外の場合は、従来の地図表示装置では、図7(b)に示すように、自車位置が特定地域外になった時点または特定地域外から特定地域内に地図をスクロールした時点で特定地域内が灰色で塗り潰されるが、この実施の形態1に係る地図表示装置では、図6(b)に示すように、特定地域内が灰色で塗り潰される代わりに、衛星写真などが表示される。その結果、地図の取り扱いに注意を払う必要のある特定地域を違和感なく表示できる。
【0039】
なお、上述した実施の形態1に係る地図表示装置においては、通常のナビゲーション装置が有する自車位置補正機能、つまり現在位置を特定地域外から特定地域内へ補正する機能を働かせないように構成することができる。
【0040】
また、車両が特定地域内から特定地域外へ移動した場合に、図3に示す国境地点B(この発明の境界地点に対応する)を記憶しておき、復路の経路探索時に、CPU10は、その国境地点Bまでの経路探索を行うように構成することができる。この場合のCPU10は、この発明の経路探索部に対応する。
【0041】
さらに、特定地域外から特定地域内への経路探索を行う場合は、幹線道路ネットワークを利用し、幹線道路から目的地までは仮線で結ぶように構成することもできる。また、特定地域内から特定地域外への経路探索により得られた経路は、自車が特定地域外に出ると表示されず、走行軌跡も消去される。ただし、経路表示が許可されている場合は経路表示は残され、走行軌跡の表示も残される。
【0042】
実施の形態2.
この発明の実施の形態2に係る地図表示装置は、特定地域で利用できる特定地域専用データベースD2を、特定地域境界データD1、特定地域使用許可データベースD3、特定地域外データベースD4およびプログラムD5と別の記憶媒体に格納するようにしたものである。
【0043】
図8は、この発明の実施の形態2に係る地図表示装置の構成を示すブロック図である。この地図表示装置は、図1に示した実施の形態1に係る地図表示装置のHDD17の代わりに内蔵SDカード31および着脱可能SDカード32が設けられて構成されている。内蔵SDカード31は、この発明のメモリカードに対応する。
【0044】
内蔵SDカード31は、地図表示装置を構成する部品が搭載された基板に取り付けられており、取り外すことができない構造になっている。この内蔵SDカード31を無理に取り外そうとすると、機械的または電気的に破壊される構造になっている。この内蔵SDカード31は、特定地域境界データD1と特定地域専用データベースD2を格納しており、CPU10によって読み出される。この内蔵SDカード31に格納された特定地域境界データD1と特定地域専用データベースD2は、着脱可能SDカード、書き込み専用ツールまたは通信機器などを利用して更新するように構成できる。
【0045】
着脱可能SDカード32は、特定地域使用許可データベースD3、特定地域外データベースD4およびプログラムD5を格納している。この着脱可能SDカード32に格納されているデータは、CPU10によって読み出される。
【0046】
この実施の形態2に係る地図表示装置の動作は、HDD17からデータを取得する代わりに、内蔵SDカード31および着脱可能SDカード32からデータを取得することを除けば、上述した実施の形態1に係る地図表示装置の動作と同じである。
【0047】
この実施の形態2に係る地図表示装置によれば、地図表示装置を分解して特定地域専用データベースD2が不当に解読されることを防止することができる。なお、特定地域内の道路を、例えば衛星写真または一般に公開されている地図などから取得して特定地域用の簡易的なデータベースを作成し、着脱可能SDカード32に格納して使用するように構成することができる。
【0048】
実施の形態3.
ナビゲーション装置は、一般に、GPS受信機12が受信不能の場合は、デッドレコニング機能により自車位置を特定するが、不当にGPS受信機12の受信を遮り、疑似的な車速データおよび方位データを入力することにより、不当に自車位置が特定地域内とされることが考えられる。このような事態に対処するために、この発明の実施の形態3に係る地図表示装置は、特定地域内であることを再確認するようにしたものである。
【0049】
この実施の形態3に係る地図表示装置の構成は、図1に示した実施の形態1に係る地図表示装置の構成と同じである。この地図表示装置においては、GPS受信機12がGPS衛星から送信された電波を正常に受信できない場合は、CPU10は、HDD17の内部の特定地域専用データベースD2の使用を禁止する。
【0050】
なお、GPS受信機12がGPS衛星から送信された電波を正常に受信できない場合は、トンネルなどの通過に要する所定時間が経過したとき、または所定距離を走行した場合に、特定地域専用データベースD2の使用を禁止するように構成できる。
【0051】
また、GPS受信機12がGPS衛星から送信された電波を正常に受信できない場合は、特定地域専用データベースD2を使用して地図を表示できる領域を、自車位置を中心とする一定範囲に限定したり、特定地域専用データベースD2に格納されている地図属性のうち、使用できる地図属性を制限するように構成することもできる。
【0052】
また、特定地域でしか受信できない電波(アナログ放送波、デジタル放送波または携帯電話20が使用する通信用の電波などを含む)を受信した場合に、特定地域専用データベースD2の使用を許可するように構成できる。また、特定地域では受信できない電波を受信した場合に、特定地域専用データベースD2の使用を禁止するように構成することができる。
【0053】
また、現在位置を図示しないサーバに送信し、該サーバから許可が得られた場合に、特定地域専用データベースD2の使用を許可するように構成できる。また、GPS機能を有する携帯電話20を用い、現在位置がサーバに送信されたときに、サーバで携帯電話20の位置を確認し、携帯電話20の位置が特定地域内である場合に、特定地域専用データベースD2の使用を許可するように構成することができる。
【0054】
さらに、特定地域専用データベースD2の不正使用が検出された場合に、ナビゲーション装置を管理する部署に通報し、該部署からナビゲーション装置を使用不能にするように構成することもできる。
【0055】
実施の形態4.
特定地域外であっても地図データベースの整備具合によって、基本的な地図データが存在しない地域がある。この発明の実施の形態4に係る地図表示装置は、このような事態に対処するものである。
【0056】
図9は、この発明の実施の形態4に係る地図表示装置の構成を示すブロック図である。この実施の形態4に係る地図表示装置の構成は、HDD17に記憶するデータを除けば、図1に示した実施の形態1に係る地図表示装置の構成と同じである。すなわち、HDD17には、地図なし地域境界データD6および地図なし地域用簡易データD7が追加されている。
【0057】
地図なし地域境界データD6は、基本的な地図データが存在しない地域と存在する地域との境界を示すデータである。また、地図なし地域用簡易データD7は、図10の自車位置が特定地域外である場合に使用可能な地図属性に示すように、衛星写真のみが存在するものとする。
【0058】
上記のように構成される実施の形態4に係る地図表示装置の動作を説明する。この地図表示装置の動作は、自車位置が特定地域外にある場合の、特定地域と特定地域外の同一の地図属性の表示方法が、実施の形態1に係る地図表示装置のそれと異なる。
【0059】
図11は、地図表示のイメージを示す図である。自車位置が特定地域内にある場合は、図11(a)に示すように、基本的な地図データが存在しない特定地域外を、衛星写真で表示する。自車位置が特定地域外にある場合は、図11(b)に示すように、特定地域を衛星写真で表示し、幹線道路は破線で表示する。このとき、地図データが無い特定地域外と特定地域とを判別できるように、衛星写真の色合いを変えて表示する。この場合、表示色の異なる地図データを予めHDD17に格納しておくように構成できるし、表示するときに色合いを変更するように構成することもできる。
【0060】
以上説明した各実施の形態では、特定地域を「国」として説明したが、この発明は、州または国内の特定地域で地図の使用が制限されている場合にも適用できる。例えば、ゲーテッドシティ内の住民にのみ開放されている地図データベースが存在する場合は、そのゲーテッドシティを特定地域として、実施の形態1〜実施の形態4に係る地図表示装置を適用することができる。

【特許請求の範囲】
【請求項1】
現在位置を算出する現在位置算出部と、
特定地域内でのみ使用が許可されている地図データを格納した特定地域専用データベースと、
特定地域外で前記特定地域内を表示することを許可されたデータを格納した特定地域使用許可データベースと、
前記特定地域内および特定地域外の両方で使用できる特定地域外の地図データを格納した特定地域外データベースと、
前記現在位置算出部で計算された現在位置が特定地域外である場合は前記特定地域外データベースから取得した地図データを用いて特定地域外に地図を表示させる表示データを生成するとともに前記特定地域使用許可データベースから取得したデータを用いて特定地域内に許可された地図属性の画像を表示させる表示データを生成し、前記現在位置算出部で計算された現在位置が特定地域内である場合は前記特定地域外データベースから取得した地図データを用いて特定地域外に地図を表示させる表示データを生成するとともに前記特定地域専用データベースから取得した地図データを用いて特定地域内に地図を表示する表示データを生成する制御部と、
前記制御部で生成された表示データに基づき地図または許可された地図属性の画像を表示する表示部
とを備えた地図表示装置。
【請求項2】
特定地域使用許可データベースに格納されるデータに基づき生成される画像の地図属性は、表示、探索、誘導またはPOIの各々について許可または不許可が設定される
ことを特徴とする請求項1記載の地図表示装置。
【請求項3】
特定地域使用許可データベースから取得したデータに含まれる幹線道路ネットワークを利用して特定地域外から特定地域内への経路を探索し、幹線道路から目的地までは仮線で結ぶ経路探索部を備えた
ことを特徴とする請求項1記載の地図表示装置。
【請求項4】
特定地域使用許可データベースは、主要POIを示すデータを含む
ことを特徴とする請求項3記載の地図表示装置。
【請求項5】
特定地域使用許可データベースは、特定地域外で得ることができる画像のデータを含むことを特徴とする請求項3記載の地図表示装置。
【請求項6】
特定地域専用データベースは内蔵のメモリカードに格納され、該メモリカードを取り出そうとすると機械的または電気的に地図データが破壊される
ことを特徴とする請求項1記載の地図表示装置。
【請求項7】
制御部は、特定地域でしか受信できない電波を受信した場合に、特定地域専用データベースの使用を許可する
ことを特徴とする請求項1記載の地図表示装置。
【請求項8】
制御部は、特定地域では受信できない電波を受信した場合に、特定地域専用データベースの使用を禁止する
ことを特徴とする請求項1記載の地図表示装置。
【請求項9】
暗号化されたデータを復号化する暗号化チップを備え、
特定地域専用データベースは、特定地域内でのみ使用が許可されている地図データを暗号化して格納し、
制御部は、前記特定地域専用データベースから取得した暗号化された地図データを前記暗号化チップに送り、該暗号化チップで復号化された地図データを用いて特定地域内に地図を表示する表示データを生成する
ことを特徴とする請求項1記載の地図表示装置。
【請求項10】
経路探索部は、特定地域内から特定地域外へ移動した場合に境界地点を記憶しておき、特定地域外から特定地域内への経路探索時は境界地点までの経路を探索する
ことを特徴とする請求項3記載の地図表示装置。
【請求項11】
制御部は、特定地域内から特定地域外に移動した場合に、特定地域内と特定地域外とにまたがる情報を表示できるように表示位置または表現を変更する
ことを特徴とする請求項1記載の地図表示装置。
【請求項12】
制御部は、地図データが存在しない地域と、地図の使用が禁止されている地域とを異なる表現で表示部に表示させる
ことを特徴とする請求項1記載の地図表示装置。
【請求項13】
制御部は、GPSの電波を正常に受信できない場合は、所定時間経過後または所定距離走行後に、特定地域専用データベースの使用を禁止する
ことを特徴とする請求項1記載の地図表示装置。
【請求項14】
制御部は、GPSの電波を正常に受信できない場合は、特定地域専用データベースを使用して地図を表示できる領域を自車位置を中心とする所定範囲に限定する
ことを特徴とする請求項1記載の地図表示装置。
【請求項15】
制御部は、GPSの電波を正常に受信できない場合は、特定地域専用データベースに格納されている地図属性のうち、使用できる地図属性を制限する
ことを特徴とする請求項1記載の地図表示装置。
【請求項16】
特定地域専用データベースは、特定地域使用許可データベースおよび特定地域外データベースとは別の記憶媒体に格納された
ことを特徴とする請求項1記載の地図表示装置。
【請求項17】
制御部は、現在位置を特定地域外から特定地域内へ補正する自車位置補正機能を働かせないようにした
ことを特徴とする請求項1記載の地図表示装置。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【図6】
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【図7】
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【図8】
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【図9】
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【図10】
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【図11】
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【公開番号】特開2012−88328(P2012−88328A)
【公開日】平成24年5月10日(2012.5.10)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2011−268221(P2011−268221)
【出願日】平成23年12月7日(2011.12.7)
【分割の表示】特願2011−540993(P2011−540993)の分割
【原出願日】平成22年2月12日(2010.2.12)
【出願人】(000006013)三菱電機株式会社 (33,312)
【Fターム(参考)】