説明

基材への物質塗布を制御する装置及びその方法

基材への物質塗布を制御する装置及び方法は、物質を基材からブロックするか、又は、物質を基材に引き付けるゲート剤を用いることを含む。この装置及び方法では、インクジェット技術を用いて、ゲート剤を、基材に直接塗布するか、又は、媒介物の表面に塗布する。物質は、インキ、導電性材料、磁性材料、治療用物質や診断用物質もしくはインキ以外のマーキング物質のキャリア、又は、あらゆる他の種類の物質用のキャリアであり得る。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、基材への物質塗布を制御する装置及びその方法に関する。
【0002】
(関連出願の相互参照)
本出願は、2007年2月21日に出願された米国特許出願第11/709,497号、第11/709,428号、第11/709,599号、第11/709,429号、第11/709,555号、及び、第11/709,396号の部分継続出願であり、また、2006年2月21日及び2006年7月7日にそれぞれ出願された米国仮出願第60/775,511号及び第60/819,301号の利益を主張する。加えて、本出願は、2007年8月20日に出願された米国仮出願第60/965,361号、2007年8月21日に出願された米国仮出願第60/965,634号、2007年8月22日に出願された米国仮出願第60/965,753号、2007年8月23日に出願された米国仮出願第60/965,861号、2007年8月22日に出願された米国仮出願第60/965,744号、及び、2007年8月22日に出願された米国仮出願第60/965,743号の利益を主張する。上述の全ての出願における全内容が参照によって本明細書に組み込まれる。
【背景技術】
【0003】
平版印刷技術及びグラビア印刷技術は、長年にわたって改善や改良が続けられてきている。平版印刷の基本的原理は、インキ受容領域とインキ反発領域との両方を有する表面から、インキを転写するステップを含む。オフセット印刷では、インキの中間転写が行われる。例えば、オフセット平版印刷機では、版胴からゴムブランケット胴へとインキが転写され、このブランケット胴から表面(例えば、紙ウェブ)にイメージが転写される。グラビア印刷では、インキが入る凹型のくぼみが刻まれた版胴が紙ウェブに接触し、帯電によりインキの紙への転写を促進する。
【0004】
初期の平版印刷技術では、隆起した部分のみにインキが付着するようにプレート上に形成された、印刷されるイメージのレリーフを利用していた。現在の平版印刷の印刷工程では、材料科学の原理を活用している。例えば、印刷される部分が疎水性を有するように、印刷されるイメージが親水性プレート(版)にエッチングされる。このプレートをインキ塗布の前に水で湿しておくと、油性インキは、プレートの疎水性部分(すなわち、湿し水工程で濡れなかった部分)のみに付着する。
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0005】
従来、これらの印刷技術のいずれもが、同じイメージが何度も繰り返し印刷されるという点において、同様の問題を抱えている。これは、従来の平版印刷で用いられるプレートが、各々、レリーフイメージ又はエッチングされた疎水性イメージ等の、固定の(すなわち、不変の)イメージを有することによるものである。また、グラビア印刷でも、版胴に刻まれた凹型のインキくぼみによる固定イメージが用いられている。平版印刷機に用いられるプレート、又は、グラビア印刷機に用いられる版胴もしくは版胴スリーブを作成するには、かなりの費用がかかる。このため、少ない部数を印刷するジョブ(すなわち、短期的ジョブ)を平版印刷機又はグラビア印刷機で行うのはコスト効率が悪い。また、高コストで低速ではあるがインクジェットヘッドを備えて改良された印刷機を除いて、従来の平版印刷機及びグラビア印刷機は、可変データ(例えば、請求書、財務表、ターゲット広告等)の印刷には用いられていない。通常、短期的ジョブ及び/又は可変性を必要とするジョブは、レーザープリンタ(静電トナー等)及び/又はインクジェットプリンタによって行われることが多い。
【0006】
従来、書籍や雑誌等の出版物は、多くのポストプレス工程(後処理工程)を含む印刷工程を経て印刷されている。例えば、雑誌では、1つのページ又はページ群が5,000回印刷される。この後、次のページ又はページ群が5,000回印刷される。雑誌の全ページが印刷されるまでの間、各ページ又はページ群について上記工程が繰り返される。そして、印刷されたページ又はページ群は後工程に送られて、集版及び裁断が行われ、最終製品になる。
【0007】
このような従来の作業フローは、時間及び作業集約型である。もし平版印刷の画質及び速度で可変イメージ(すなわち、ページごと又はページ群ごとに変わるイメージ)を印刷することができれば、雑誌は連続するページ(又はページ群)順に印刷され、完成した雑誌がそのまま印刷機から出てくるようになるであろう。これは、雑誌印刷の速度を劇的に上げ、雑誌印刷の費用を大幅に削減することになる。
【0008】
インクジェット印刷技術は、可変機能を有するプリンタを備えている。インクジェット技術には、バブルジェット(登録商標)方式(すなわち、サーマル方式)と圧電方式とを含む複数の方式がある。いずれの方式でも、微小なインキ液滴がページに噴射される(すなわち、吹き付けられる)。バブルジェット(登録商標)プリンタでは、熱源によりインキを気化させて、バブル(気泡)を発生させる。気泡の膨張により液滴が形成され、この液滴がプリントヘッドから噴射(吐出)される。圧電方式では、インクタンクの後ろ側にあるピエゾクリスタル素子を用いる。交流電位を用いて、クリスタル素子を振動させる。クリスタル素子の往復動作によって1滴分のインキが引き込まれ、このインキが紙に噴射される。
【0009】
高速カラーインクジェット印刷の品質は、通常、オフセット平版印刷及びグラビア印刷の品質よりも桁違いに低い。更に、最速のインクジェットプリンタであっても、通常は、平版印刷又はグラビア印刷よりも印刷速度がかなり低い。従来のインクジェット印刷では、紙に水性インキを塗布することによる影響も問題になっている。水性インキを用いると、紙に水分が過剰に吸収されて、印刷されたウェブにシワ及び波打ちが生じることがあり、また、不注意で湿気にさらされることにより、ウェブが容易に破損することもある。この現象を抑制するために、インクジェットプリンタでは特殊な紙やコーティングが用いられる。このような紙は、従来の工業用印刷に使われるウェブ紙に比べて、非常に高価であることが多い。
【0010】
更に、インクジェット技術をカラー印刷に用いた場合には、インキの被覆面積及び水の吸収量が多くなる。これは、カラーイメージを生成するのに4つのカラー処理が用いられるためである。4つのカラー処理は、シアン、マゼンタ、イエロー、及び、ブラック(すなわち、CMYK)のインキの塗布量を調整することにより、ページに色を付けることを含む。このため、ページの部分によっては、所望の色を出すために4色全てのインキの層が重なることがある。また、インクジェットプリンタによって形成されたドットが広がって、ぼやけたイメージになってしまうことがある。更に、インクジェットプリンタで使用されるインキは、従来の平版印刷及びグラビア印刷で使用されているインキと比べて非常に高価である。この経済的要因のみにより、インクジェット技術は、商業印刷用途にはほとんど利用されず、特に、長期間用途には利用されない。
【0011】
現在のところ、レーザー印刷の高速可変印刷化には限度がある。これは、その生産速度が、まだ、オフセット印刷及びグラビア印刷に比べて非常に低いこと、及び、その資材コスト(例えば、トナー等)が、市販のオフセットインキ又はグラビアインキの価格と比べて非常に高価であること、に起因している。レーザーカラー印刷では、印刷されたページを折り曲げた際にひび割れが発生することが多いので、雑誌及び他の製本出版物に対してレーザーカラー印刷を用いるのも難しい。
【0012】
印刷技術は、他の製品(例えば、トランジスタ及び他のデバイスを含む電気部品)の製造に有用であることが知られている。また更に、印又は他のマーキングが、紙以外の基材(プラスチックフィルムや金属基材等)に印刷されている。この印刷技術には、上述した紙基材印刷用の技術を用いることが可能であるが、この場合でも、この技術には同様の欠点がある。他の場合では、平版印刷のように、プレートの印刷前処理を必要とするフレキソ印刷が用いられる。
【課題を解決するための手段】
【0013】
本発明の一態様に従い、主物質を転写する方法は、受容面と接触するイメージ化表面に、主物質を区別なく(無差別的な方法(indiscriminate manner)により)塗布することを含む。また、イメージ化表面が主物質を受容面に付着させるパターンを画定するゲート剤が、受容面における選択可能領域に塗布される。また、主物質の第1の部分が、上記パターンに基づいて、イメージ化表面から受容面に転写される。
【0014】
本発明の別の態様に従い、印刷システムは、受容面と接触するイメージ化表面に、主物質を区別なく付着させる主物質用塗布装置を含む。また、この印刷システムは、イメージ化表面が主物質を受容面に付着させる領域を画定するゲート剤を、受容面における選択可能領域に付着させるゲート剤用塗布装置も含む。また、この印刷システムは、ゲート剤を付着させるゲート剤用塗布装置を制御するコントローラを更に含む。
【0015】
本発明の更に別の態様に従い、主物質を転写する方法は、主物質を表面に塗布すること、及び、主物質における選択可能部分の上面にゲート剤を塗布すること、を含む。また、ゲート剤によって覆われない主物質の第1の部分を、表面から受容面に転写することも含む。
【0016】
本発明の他の態様に従い、主物質を転写する装置は、主物質を表面に塗布する塗布装置と、主物質における選択可能部分の上面にゲート剤を付着させる付着装置と、を含む。また、この装置は、ゲート剤によって覆われない主物質の少なくとも一部を表面から受容面に転写する手段も含む。
【0017】
基材への物質塗布を制御する装置及びその方法の更なる特徴、これらの本質、及び、様々な効果については、以下の詳細な説明及び添付図面によって明らかとなるであろう。
【図面の簡単な説明】
【0018】
【図1】従来技術における印刷システムの側面図である。
【図2】例示的実施形態における基材への物質塗布を制御する装置の側面図である。
【図3】例示的実施形態における基材への物質塗布を制御する装置の側面図である。
【図4】例示的実施形態における基材への物質塗布を制御する装置の側面図である。
【図5】例示的実施形態における基材への物質塗布を制御する装置の側面図である。
【図6】例示的実施形態における基材への物質塗布を制御する装置の側面図である。
【図7】図6に示す装置の側面図の部分拡大図である。
【図8】例示的実施形態における基材への物質塗布を制御する装置の側面図である。
【図9】例示的実施形態における基材への物質塗布を制御する装置の側面図である。
【図10】例示的実施形態における基材への物質塗布を制御する装置の側面図である。
【図11】図10に示す装置によって実現可能な出力の例を示す図である。
【図12】例示的実施形態における基材への物質塗布を制御する装置の概略図である。
【図13】図2〜図10に示す装置の一部分の正面図である。
【図14】図2〜図10に示す装置の一部分の正面図である。
【図15】図2〜図10に示す装置の一部分の正面図である。
【図16】図2〜図10に示す装置の一部分の正面図である。
【図17】実現可能な一連の出力の例を示す図である。
【図18】例示的実施形態における基材への物質塗布を制御する装置の側面図である。
【図19】例示的実施形態における基材への物質塗布を制御する装置の側面図である。
【図20】例示的実施形態における基材への物質塗布を制御する装置の側面図である。
【図21】例示的実施形態における基材への物質塗布を制御する装置の側面図である。
【図22】本開示における各方法を実行する制御システムのブロック図である。
【図23】本開示における1つ以上の方法を実行可能にする印刷システムの等角図である。
【図24A】図23に示すシステムにて用いられる塗布装置の概略図である。
【図24B】図23に示すシステムにて用いられる塗布装置の概略図である。
【図25A】別の実施形態に従う他の方法を示す概略図である。
【図25B】他の実施形態に従う他の方法を示す概略図である。
【図25C】他の実施形態に従う他の方法を示す概略図である。
【発明を実施するための形態】
【0019】
図1は、従来型のオフセット平版印刷装置100を示している。従来の平版印刷工程においては、印刷されるイメージが親水性プレート102にエッチングされてインキが付着する疎水性部分が形成される。親水性プレート102は、版胴104に取り付けられ、回転して湿しシステム106及びインキシステム108を通過する。湿しシステム106は水供給装置107を含み、また、インキシステム108はインキ供給装置109を含む。親水性プレート102の親水性部分は、湿しシステム106によって湿らされる。油性のインキを用いることにより、インキは、プレート102の疎水性部分のみに付着する。
【0020】
ブランケット胴110が用いられる場合は、インキイメージが版胴104からブランケット胴110へと転写される。そして、このインキイメージが、ブランケット胴110と圧胴114との間のウェブ112(例えば、紙)に転写される。圧胴114を用いたウェブ112へのイメージ転写は、印刷されるイメージとウェブ112とを実質的に均等な圧力又は力で押圧することにより行われる。版胴104とウェブ112との間に媒介物としてゴムブランケットが用いられる場合には、この工程は一般に「オフセット印刷」と呼ばれる。プレート102は、エッチングが行われて版胴104に取り付けられているので、平版印刷は同一のイメージを何度も印刷する際に用いられる。平版印刷は、高品質の出力が得られるという点で、望ましい。4台の印刷装置を連続して配置することにより、雑誌品質の4色のイメージ印刷が可能になる。
【0021】
図2には、本発明に従う装置が例示されている。図2は、平版印刷業界で知られているような、インキシステム202、プレート204、版胴206、ブランケット胴208、及び、圧胴210を有する印刷装置200を示している。プレート204は、その全体が親水性である(例えば、標準アルミニウム平版プレート)。但し、図1の湿しシステム106は、図2では、クリーニングシステム212及び水溶液ジェットシステム214に置き換えられている。
【0022】
水溶液ジェットシステム214は、一連のインクジェットカートリッジ(例えば、バブルジェット(登録商標)カートリッジ、サーマルカートリッジ、圧電カートリッジ等)を有する。バブルジェット(登録商標)は、ヒータの作動によりインキ液滴を噴射する。圧電システムは、圧電アクチュエータの作動によりインキ液滴を噴射する。インキ液滴は、インクジェットカートリッジに設けられた小さな孔から噴出する。カートリッジには、多数の孔があけられている。一般的な例としては、インクジェットカートリッジは600個の孔を有しており、300個ずつ2列に配置されることが多い。
【0023】
水溶液ジェットシステム214は、水溶液(例えば、水、エチレングリコール、プロピレングリコール、又は、これらの組み合わせ)を噴射するために用いられる。本開示のある実施形態では、水溶液は1つ以上の界面活性剤(例えば、Air Products社製のSurfynol(登録商標))を含有する。この種の界面活性剤は、各分子の一端に親水基を有する一方、その他端に親油基を有する。1つ以上の界面活性剤を水溶液に添加することにより、水溶液の表面張力特性を改善することができる。
【0024】
インクジェットを用いて1枚の紙にインキ液滴を配置するのとほぼ同様に、水溶液ジェットシステム214の水溶液ジェットを用いて、親水性プレートに水溶液を配置することが可能である。ある実施形態では、水溶液は従来型のインクジェットノズル(すなわち、ヘッド)を通して噴出される。このようなインクジェットノズルには、例えば、HP、Lexmark、Spectra、Canon等の各社製のインクジェットノズルが含まれる。ある実施形態では、水溶液ジェットシステム214は、様々な印刷速度及び出力解像度をサポートする。
【0025】
水溶液ジェットシステム214は、印刷されるイメージのネガイメージの全部又はその一部を、版胴206上に「プリント」又は噴射するために用いられる。例えば、図12に関して詳細を後述するように、イメージコントローラがデータシステムからイメージデータを受信することができる。このイメージデータは、印刷されるイメージ又は印刷されるネガイメージを表現する。このイメージデータには、比較的頻繁に変更される(例えば、ページごとに異なる)可変イメージデータ、変更頻度の少ない(例えば、100ページごとに異なる)準固定イメージデータ、不変の固定イメージデータ、及び、可変・準固定・固定の各イメージデータの組み合わせが含まれる。イメージデータの一部又は全部は、バイナリデータ、ビットマップデータ、ページ記述コード、又は、これらの組み合わせとして保存される。例えば、ある実施形態では、ポストスクリプト(PostScript)又はプリンタコマンド言語(PCL)等のページ記述言語(PDL)が、イメージデータを定義及び解釈するために用いられる。そして、データシステムは、水溶液ジェットシステム214を電子制御して、様々なタイプのイメージデータの一部又は全部が表現するイメージ(又はそのネガイメージ)を水溶液で版胴206にプリントする。ネガイメージは、紙にインキが付着しない各部分のイメージである。このため、版胴206上のあるポイントが水溶液ジェットシステム214を通過した後、そのポイントに水溶液滴が配置されていない場合には、インキシステム202からのインキのみがそのポイントに付着することになる。
【0026】
本開示のある実施形態では、真空源又は熱源215が水溶液ジェットシステム214の隣に又はその近くに配置される。ある実施形態では、真空源又は熱源215が水溶液ジェットシステム214に組み込まれている。真空源又は熱源は、プレート204又は版胴206にプリントされた後、水溶液に風を当てるか、乾燥させるか、あるいは、加熱することによって、水溶液ジェットシステム214により配置された各水溶液滴のサイズを小さくするために用いられる。代わりに、あらゆる処理条件(湿度等の周囲条件を含む)を操作して、水溶液滴の形成に影響を与えることも可能である。水溶液滴のサイズが制御可能となれば、印刷イメージの品質を高めることができる。
【0027】
版胴206が1回転し、イメージをブランケット胴208に転写した後、版胴はクリーニングシステム212を通過して残留したインキ及び/又は水溶液が除去され、これにより、版胴206は次の回転で(又は所定回転後に)水溶液ジェットシステム214による新たなイメージプリントを行うことができる。クリーニングシステム212は、回転ブラシ、クリーニング液を含んだローラー、ベルト、クリーニング液で処理されたクリーニングウェブ、熱及び/又は空気を供給する装置、静電装置、又は、残留したインキ及び/又は水溶液を版胴206より除去するのに適切なその他の手段を含んで構成される。ある実施形態では、ブランケット胴208についてもクリーニングシステム215と同様のクリーニングシステムが設けられており、イメージをウェブ216に転写した後、ブランケット胴208から残留物が除去される。
【0028】
ある実施形態では、版胴206は、従来の平版印刷技術によりプレート204にエッチングされた、特定の印刷ジョブに対する固定データの全てを有している。そして、水溶液ジェットシステム214を用いて、プレート204の特定部分に、可変又は準固定イメージデータによって表現されるジョブの可変部分のみを、イメージ化することができる。
【0029】
他の実施形態では、プレート204は用いられない。その代わりとして、当該技術分野で知られているように、版胴206の表面に加工や処理又はミーリングを行って、水溶液ジェットシステム214からの水溶液が付着するようにしている。また、版胴206に加工や処理あるいはミーリングを行って、固定データを含むと共に、水溶液を付着させて可変データを取り込めるようにしている。本開示のこれらの及び他の実施形態では、必要に応じて、ブランケット胴208を完全に除去し、イメージをウェブ216に直接転写するようにしてもよい。
【0030】
ある実施形態では、プレート204、版胴206、及び、ブランケット胴208のうちの1つ以上を、水溶液ジェットシステム214又は水溶液が有する様々な特性に応じてカスタマイズ又はデザインしてもよい。例えば、当該技術分野で知られているように、上記プレート及び胴のうちの1つ以上に特別な処理又は加工を行うことにより、特定の解像度やドットサイズのプリントヘッドから噴射された溶液のみが付着するようにすることも可能である。また、プレート及び胴に特別な処理を行い、特定のタイプの水溶液のみを付着させ、他のタイプの水溶液をはじくようにすることも可能である。例えば、特定の体積、比重、粘度、又はその他の所望の特性を有する溶液のみをプレート及び胴に付着させ、所望の条件外の溶液をはじくようにすることが可能である。これにより、例えば、異物の混入を防ぐことができると共に、ある水溶液をプリント工程で用い、他の水溶液(異なる物理的特性を有するもの)をクリーニング工程で用いることができる。他の実施形態では、通常型の、一般用途用のプレート及び胴を用いる。
【0031】
図3に示すように、印刷装置300は水溶液ジェットシステム314とクリーニングシステム312とを有しており、これらのうちの一方又は両方を、版胴306ではなくブランケット胴308に取り付けて用いることができる。図2に関連して述べたように、印刷装置300は、版胴306の上方にインキシステム302を含んでいる。この実施形態では、プレート304を備えた版胴306がインキシステム302を通過すると、その表面全体にインキが付着して完全にインキで覆われる。但し、ブランケット胴308には、上述したように、水溶液で可変イメージが生成されており、インキはブランケット胴308の特定部分のみに転写され、これがブランケット胴308と圧胴310との間にあるウェブ316に転写されることになる。水溶液ジェットシステム314を、版胴306ではなく、ブランケット胴308に用いた場合は、より多量の水溶液を使用することが可能であり、迅速なイメージ化及び再イメージ化が実現される。これは、ブランケット胴308の物性及び表面特性によるものであり、このブランケット胴308には、水溶液滴の広がりを防止するゴム製ブランケットが含まれる。
【0032】
水溶液ジェットシステム及びクリーニングシステムを、他の配置にすることも可能である。図4の例に示すように、印刷装置400では、水溶液ジェットシステム414とクリーニングシステム412との配置がよりフレキシブルになっている。図4の例では、ブランケット胴がエンドレスベルト408に置き換えられている。ある実施形態では、エンドレスベルト408の長さが、様々な追加システム又は水溶液ジェットシステム414及びクリーニングシステム412の配置の利便性に応じて調整可能になっている。水溶液ジェットシステム414及びクリーニングシステム412は、エンドレスベルト408に沿ってあらゆる適切な位置に取り付けられる。図2及び図3に関連して述べたように、印刷装置400は、インキシステム402、版胴406、プレート404、及び、エンドレスベルト408と圧胴410との間のウェブ416を含む。図3のブランケット胴308に関連して述べたように、エンドレスベルト408には水溶液で可変イメージが生成され、インキはエンドレスベルト408の特定部分のみに転写されて、これがウェブ416に転写される。
【0033】
図5及び図6は、他の実施形態を示している。図5に示すように、印刷装置500は版胴506を含み、この版胴506は、ブランケット胴508にインキを転写するために用いられる。上述したように、印刷装置500は、インキシステム502、プレート504、ブランケット胴508、水溶液ジェットシステム514、クリーニングシステム512、ウェブ516、及び、圧胴510も含む。図6の印刷装置600に示すように、ある実施形態では、図5の版胴・ブランケット胴システムが、単一のイメージング胴(イメージ化胴)608に置き換えられる。図5及び図6の両方の実施形態では、インキは、印刷されるイメージにかかわらず、印刷媒体(例えば、ウェブ516又は616)に接触する胴に転写される。インキが胴に転写された後、水溶液ジェットシステム514又は614を用いて、ウェブにインキを転写させない部分のインキ層の上に水溶液を配置させる。換言すれば、印刷されるイメージのネガイメージが、水溶液でインキ層の上にプリントされる。ある実施形態では、水溶液の代わりとして、ゲル(例えば、シリコーンベースのゲル)が用いられる。
【0034】
図7に示すように、水溶液滴又はゲル滴704により、インキ702の印刷媒体(例えば、イメージング胴708と圧胴710との間のウェブ716)への転写が妨げられる。印刷媒体の吸収性が高すぎると、印刷媒体がイメージング胴から離れる前に一部のインキと共に水溶液又はゲルの全ても吸収してしまう。このため、印刷媒体の吸収性が高すぎる場合には、水溶液又はゲルは、これらによって覆われている部分のイメージを薄くする(又は不鮮明にする)ことしか行えない。これに対し、高光沢又はプラスチックの印刷媒体が用いられる場合は、インキ702をブロックする(阻止する)水溶液滴又はゲル滴704が印刷媒体に全く吸収されないので、これらにブロックされたインキは印刷媒体に転写されない。印刷媒体がいずれの場合でも、水溶液滴又はゲル滴704の保護層で覆われていないインキ702は、ウェブ716に転写される。
【0035】
図5〜図7に示すような実施形態では、その利点として、クリーニングシステムを必要としなくなる点が挙げられる。イメージング胴708は、その表面全体が常にインキ702に覆われているので、工程においてインキを除去する必要がない。しかしながら、乾燥又は堆積したインキを除去することが望ましい場合があるので、図5及び図6には、クリーニングシステムが示されている。更に、真空源又は熱源(図2の真空源又は熱源215等)をクリーニングシステムに代えて、又は追加して、用いることができる。イメージング胴が再びインキシステムを通過する前に、イメージング胴にある余分な水溶液を乾燥させるのが好ましい。このため、真空源又は熱源は、再びインキを塗布する前に、残った水溶液を除去するために用いられる。
【0036】
水溶液又はゲルの特性(例えば、粘度又は比重)及び印刷媒体の特性を変えること(例えば、ボンド紙、光沢紙を用いたり、様々なコーティング技術を使用したりすること)により、水溶液ジェットシステムを用いてプリントされる保護ネガイメージと、印刷媒体との間に、好ましい相互作用を生じさせることが可能である。例えば、イメージの鮮明さが求められる場合には、印刷媒体に全く吸収されないような水溶液を選択するとよい。しかしながら、水溶液ジェットシステムからの水溶液で覆われた部分であっても、ある程度のインキ転写が望ましい場合には、水溶液を急速に吸収する印刷媒体を用いることによって、覆われた部分からもある程度のインキを転写することが可能となる。
【0037】
図8は、更に他の実施形態を示している。印刷装置800はインキシステム802を含み、このインキシステム802はイメージング胴808にインキを塗布するために用いられる。次に、水溶液ジェットシステム814は、印刷媒体(例えば、イメージング胴808と圧胴810との間のウェブ816)に転写されるイメージのポジイメージをプリントするために用いられる。水溶液ジェットシステム814は、インキ層の上に、水溶液又はゲルによる上記ポジイメージをプリントする。この「プリントされた」層は、ウェブに転写される領域におけるインキを保護する。
【0038】
ポジイメージが保護されると、回転するイメージング胴808は、次に剥がしシステム818を通過する。剥がしシステム818は、イメージング胴808の保護されていない部分のインキを剥ぎ取るために用いられる。換言すれば、水溶液ジェットシステム814によって保護されていない、すなわち、印刷されるイメージではない部分のインキが、イメージング胴から剥ぎ取られる(除去される)。剥がしシステム818は、例えば、連続するブランクウェブを用いて、保護されていないインキをイメージング胴から取り除くようにすることができる。また代わりに、剥がしシステム818は、後述するような逆転ローラー(reverse form roller)を用いてもよい。保護されたインキイメージは、その後、印刷媒体に転写される。
【0039】
保護されたインキイメージの転写は、水溶液保護層及び保護されたインキの両方をウェブ816に転写することによって行われる。またこれに代えて、剥がしシステム818によって水溶液保護層を除去することにより、水溶液保護層のない、保護されたインキのみをウェブに転写するようにしてもよい。ある実施形態では、剥がしシステム818は、保護されていないインキ(すなわち、水溶液保護層で覆われていないインキ)を除去するときに、水溶液保護層も同時に除去することができ、これにより、もともと保護されていたインキのみがウェブ816に転写される。このような実施形態においては、逆転ローラーを用いて、保護されていないインキ及び水溶液を除去することが可能である。逆転ローラーはまた、除去したインキをインキシステム802に戻すことにも使用され得る。換言すれば、未使用インキは、剥がしシステム818によってリサイクルされることになる。他の適切な方法を用いて、保護されたインキイメージをウェブ816に転写させるようにしてもよい。
【0040】
他の実施形態として、図9に印刷装置900を示す。図9に示すような実施形態において、水溶液ジェットシステム914は、ブロック共重合体(ブロックコポリマー)の界面活性剤を含む水溶液をイメージング胴908にプリントするために用いられる。このような界面活性剤の一例としては、BASF社製のPluronic(登録商標)F-127界面活性剤が挙げられる。これは、エチレンオキシドとプロピレンオキシドとに基づくブロックコポリマーである。このような界面活性剤は、イメージング胴908の表面特性を親水性と親油性との間で変更させるために用いられる。
【0041】
例えば、水溶液ジェットシステム914を用いて、イメージング胴908にポジイメージをプリントする。この後、熱源(例えば、ドライヤー918又はその他の水を蒸発させるのに適切な手段)を用いて、水溶液を乾燥させる。これにより、水溶液ジェットシステム914によってプリントされた箇所には、イメージング胴908に結合したブロックコポリマーが残される。ブロックコポリマーとしては、その一端がイメージング胴の表面材料に結合する一方、他端が親油性を有するものが選ばれる。もともと親水性を有するイメージング胴を用いる場合は、イメージング胴の表面のうち水溶液ジェットシステム914によってブロックコポリマーがプリントされた部分が全て親油性になり、残りの全ての部分が親水性になる。上記イメージング胴は、既知の平版印刷工程において、現在、用いられている。例えば、インキシステム902を用いてインキをイメージング胴908の全体に塗布する。そして、このイメージが、印刷媒体(例えば、イメージング胴908と圧胴910との間のウェブ916)に転写される。
【0042】
図9の実施形態は、クリーニングシステム912も含んでいる。クリーニングシステムは、イメージング胴908に対して選択的に作用するものである。ブロックコポリマーの表面活性剤は、イメージング胴908と物理的に結合しているので、機械的な手段ではこれを取り除くことはできない。換言すれば、イメージング胴は、標準的な平版プレートと同様に、繰り返し用いることが可能である。印刷を制御するデータシステムにより情報の変更が必要であると判断された場合に、クリーニングシステム912は、ブロックコポリマーの一部を選択的に除去する。例えば、ブロックコポリマーとイメージング胴との間の結合を断つような化学薬品を用いて、選択した箇所にあるブロックコポリマーを除去することが可能である。当業者であれば、ブロックコポリマーとイメージング胴908との間の結合を断つのに適切な手段のいずれもが、ブロックコポリマーを選択的に除去することに用いることができることを理解するであろう。例えば、還元剤を用いて、ブロックコポリマーとイメージング胴908との間の結合を断つことができる。
【0043】
図9の実施形態の変形例においては、水溶液ジェットシステム914は、イメージング胴908にネガイメージをプリントする。この変形例では、もともと親油性を有するイメージング胴と、自由端(イメージング胴に結合する側とは反対の端)が親水性を有するブロックコポリマー界面活性剤を含んだ水溶液と、を用いる。この場合においても、結合した界面活性剤だけを残すように水溶液を乾燥させ、また、イメージング胴908を繰り返し用いることが可能である。上述したように、クリーニングシステム912を用いて、適切な中和溶液を適切な時期に使用して、ブロックコポリマーを選択的に除去することができる。
【0044】
図9の実施形態の他の変形例では、帯電したブロックコポリマー界面活性剤分子を用いて、イメージング胴908と界面活性剤との間の結合を電子的に制御する。換言すれば、水溶液ジェットシステム914を用いて、帯電した界面活性剤を所望の位置に配置する。界面活性剤分子の帯電特性により、界面活性剤分子のイメージング胴908への物理的な結合が可能となる。このため、帯電した界面活性剤を除去するためには、それを中和する電荷をクリーニングシステム912から選択的に付与する必要がある。
【0045】
この他、イメージング胴908の表面を帯電させ、イメージング胴の特定の位置における帯電特性を特定の時期で変化させるように制御することが可能である。換言すれば、イメージング胴908のあらゆる位置でプラス帯電とマイナス帯電とを切り替えることにより、印刷工程中の適切な時期に、界面活性剤を引き付け及び反発させることが可能となる。つまり、2つ以上のイメージング胴を用いて、各イメージング胴でイメージ出力の一部をプリントさせるようにした場合に、一方のイメージング胴がインキをはじくように帯電されると、他方のイメージング胴はインキを引き付けるように帯電される。このようにすれば、電荷の反転が製造工程に影響を与えることはない。また更に、システムでの連続印刷中にイメージ化サイクルの合間で回復時間が確保できるように、各イメージング胴ごとのサイズが選定されると共に、各イメージング胴が配置される。
【0046】
以上によって明らかなように、様々な特性を有するブロックコポリマー界面活性剤を様々な物性のイメージング胴に用いることにより、イメージング胴に親油性表面と親水性表面とを選択的に形成することが可能となる。界面活性剤とイメージング胴の表面との間に生じる物理的結合によってイメージング胴を同じイメージで何度も繰り返し使用することができ、又はイメージング胴の任意の回転回数ごとにイメージを選択的に変えることもできる。イメージング胴及びブロックコポリマー界面活性剤の物性を利用することにより、耐久性があり、しかも可変で、既知の平版印刷技術の品質を有するイメージシステムを実現することができる。
【0047】
上述のような界面活性剤は、様々な形態(例えば、固体、粉末、水溶液、ゲル等)で販売されている。本開示に従って、あらゆる形態の界面活性剤を用いることができる。
【0048】
図10は、他の実施形態を示している。図10は、当該技術分野で知られている平版印刷装置1000(例えば、インキシステム1002、版胴1006、ブランケット胴1008、及び圧胴1010)を示している。但し、平版印刷装置1000の上流側には、コーティングシステム1016及び水溶液ジェットシステム1014が設けられている。図10に示すような実施形態では、標準の平版プレートに、任意のジョブの固定情報をエッチングする。但し、プレートの一部は可変情報のために確保しておく(例えば、図11に示すように、プレート1100は、可変イメージボックス1102や1104を含んでいる)。可変イメージボックスに対応する平版プレートの部分は、可変イメージボックスの全体にインキが付着するように形成される(すなわち、平版プレートの可変イメージボックス部分がインキシステムを通過すると、その四角い部分の全体にインキが付着する)。
【0049】
可変イメージを生成するために、可変イメージのネガイメージが水溶液ジェットシステム1014によって直接ウェブ1012上に印刷される。ウェブ1012が水溶液ジェットシステム1014に到達するより前に、ウェブ1012には水溶液の吸収を防止するためのコーティングが施される。このため、ウェブ1012の可変イメージがプリントされる部分が、可変イメージのためのインキを転写するブランケット胴1008の部分に接触すると、ウェブ1012は、水溶液ジェットシステム1014によって前もってプリントされていない部分のみにインキが選択的に付着することになる。標準的な平版印刷装置では、同じイメージ(例えば、四角いベタ塗り(a solid rectangle))を繰り返しプリントする。しかしながら、ウェブ1012には、まず水溶液ジェットシステム1014によってネガイメージがプリントされ、次にブランケット胴1008の四角いベタ塗りインキが選択的に付着されることで、可変イメージがウェブ1012に生成される。
【0050】
コーティングシステム1016は、コーティングを施すために印刷装置のあらゆる箇所に配置され得る。あるいは、コーティングシステム1016は、ウェブ1012にコーティングを施して水溶液の吸収能力を低下させるために好適なあらゆる代替手段であってもよい。例えば、コーティングシステム1016は、適切な溶液をウェブ1012にスプレーする噴霧器を含んでもよい。この溶液によってウェブ1012による水溶液の全部又は一部の吸収が抑制される。
【0051】
上述の実施形態のいずれにおいても、ブランケット胴と版胴との組み合わせを、単一のイメージング胴に置き換えることが可能であり、また、その逆の置き換えも可能である。いずれの場合においても、軟らかいイメージング胴又はブランケット胴と、硬い圧胴との組み合わせ(例えば、シリコーン製のイメージング胴又はブランケット胴と、スチール製の圧胴との組み合わせ)が好ましい。あるいは、硬いイメージング胴又はブランケット胴の場合には、軟らかい圧胴を組み合わせる(例えば、セラミック製のイメージング胴又はブランケット胴と、ゴム製の圧胴との組み合わせ)。
【0052】
ある実施形態においては、「ウォーターレス」システムを実現するために、シリコーン製のイメージング胴を用いることが好ましい。この実施形態では、イメージング胴は全体が疎油性のシリコーン表面を有する。ウォーターレス平版印刷の技術において知られているように、このようなイメージング胴は、その表面の一部が親油性となるように現像(例えば、エッチング)が行われる。シリコーンは本来疎油性であるので、イメージング胴の表面にインキを塗布する前に、イメージング胴を水で湿らせておく必要はない。シリコーン製のイメージング胴を用いた本開示のある実施形態においては、親油性であると共にイメージング胴のシリコーン表面に結合する、シリコーンベースの界面活性剤又はその他の適切な材料を含む水溶液を用いる。従って、イメージング胴には、本開示のような水溶液で可変イメージが生成され得る。必要に応じて、適切なクリーニング装置を用いて、残留した水溶液やインキをイメージング胴から除去するようにしてもよい。
【0053】
図2〜図10に示すような印刷装置を複数直列に配設して印刷を行うことが可能である。このような複数の印刷装置の配置例を、図12の印刷装置1200にて示す。このような配置により、例えば、4色のカラー印刷が可能になる。CMYKの4色処理に従って、各印刷装置1202,1204,1206,1208は、それぞれ、シアン、マゼンタ、イエロー、ブラックのプリントを行う。各印刷装置は、それぞれのラスタイメージプロセッサ(RIP)又はコントローラ(例えば、コントローラ1210,1212,1214,1216)によって制御される。コントローラ1210,1212,1214,1216は、ハードウェアとして、もしくは、プリンタドライバの一部等のソフトウェアとして、実装される。必要に応じて、コントローラ1210〜1216は、4つよりも少ないRIP、又は4つよりも多いRIPに置き換えられてもよい。例えば、単一のRIPが、データを電子的に処理すると共に、印刷装置1202〜1208を制御する。
【0054】
印刷全体は、データシステム1218のような単一のデータシステムによって管理される。このデータシステムは、RIPコントローラ1210,1212,1214,1216を制御し、更にこれらのコントローラがそれぞれ印刷装置1202,1204,1206,1208を制御する。データシステム1218は、データベース1220及び可変データソース1222を介して顧客入力部1224を備えている。データベース1220は、イメージデータ、メッセージ、一対一マーケティングデータ(one-to-one marketing data)等が含まれる。
【0055】
ある実施形態においては、データベース1220には、印刷するジョブについての全てのレイアウト情報及び固定イメージ情報が含まれる一方、可変データソース1222には、全ての可変データが含まれる。例えば、顧客入力部1224から顧客データ(例えば、所望のレイアウト及びコンテンツ)がデータベース1220に与えられる。可変データソース1222には、パーソナライズされたテキスト(例えば、顧客名と所在地)及びグラフィックが保存されている。そして、データシステム1218は、ジョブを印刷するために、データベース1220と可変データソース1222との両方にアクセスする。データベース1220及び可変データソース1222は、あらゆる記憶装置又は記憶機構(例えば、ハードドライブ、光ドライブ、RAM、ROM、ハイブリッドメモリ)を含む。印刷装置1200には、入力部1226からロール紙又はシート紙が供給される。印刷出力部1228においても、ロール紙又はシート紙の形態となる。更に、印刷装置1200の出力部1228では、完全製本されていたり、任意のポストプレス処理に備えたりする場合もある。
【0056】
上述の実施形態で述べた1つ以上の水溶液ジェットシステム、クリーニングシステム、剥がしシステム、真空又は加熱システムは、データシステム1218を介して電子制御され得る。例えば、典型的な使用例においては、データシステム1218は、データベース1220及び/又は可変データソース1222のラスタイメージデータ(又はビットマップデータ、ベクトルグラフィックイメージデータ、又は、これらの組み合わせ等を含む他の様々な種類のイメージデータ)にアクセスする。ある実施形態においては、イメージデータは、例えば、ポストスクリプト(PostScript)、PCL、又はその他のあらゆるPDLコード等のページ記述コードとして保存される。ページ記述コードは、実際の出力ビットマップや出力ラスタイメージよりも高いレベルのイメージデータを示す。イメージデータの保存形態にかかわらず、データシステム1218は、本開示の水溶液ジェットシステムに、イメージデータ(又はその一部)のネガイメージを水溶液でプレートや版胴にプリントさせる。ある実施形態では、上述のように、可変イメージデータに該当するデータのみが水溶液でプレート又は版胴にプリントされる。
【0057】
単一のデータシステム(例えば、データシステム1218)により印刷全体を制御することによって、遅れ生成技法(form lag techniques)を活用することが可能である。遅れ生成とは、同じドキュメントの作業を行う複数の可変印刷装置のタイミングを操作するものである。特定のデータは、ある印刷装置によってプリントされる必要があるのに対し、同じドキュメントの他の部分のデータは、他の印刷装置によってプリントされる必要がある場合がある。このような場合には後者の印刷装置へのデータ転送を遅らせた方がよい。なぜなら、ドキュメントが後者の印刷装置に到達するまでに、いくつかの中間印刷装置を経なければならないからである。遅れ生成を効果的に管理することにより、イメージの解像度及び配置が改善され得る。
【0058】
本開示の様々な実施形態における水溶液ジェットシステムは、数多くの方法による配置が可能である。例えば、図13は、個々の水溶液ジェット装置1302を、胴1300において交互に配置した状態を示している。プリントヘッドをオーバーラップさせて、隣り合うプリントヘッドのプリント幅をつなぎ合わせることは、ステッチングとして知られている。ステッチングでは、複数のプリントヘッドを高精度に位置決めして、その継ぎ目を目立たなくすることが可能である。
【0059】
これらの水溶液ジェット装置としては、HP、Lexmark、Spectra、Canon等の各社製のプリントカートリッジが知られる。各ジェット装置は、水溶液を噴射する多くの小さな孔を有している。図13に示すように、水溶液ジェット装置1302は、水溶液ジェットの間に隙間ができないように、端部が互いにオーバーラップしている。これにより、版胴のあらゆるポイントにイメージが生成されることを可能としている。
【0060】
また、図14の胴1400に示されるように、水溶液ジェット装置1402が一列に並べて配置されてもよい。図15は他の例を示しており、ここでは、胴1500に複数の装置を設置することに代えて、水溶液ジェット1502を単一の装置として設置している。
単一の装置なので、水溶液ジェットの間隔を一定にすることが可能である。メンテナンス及び交換に要する費用を削減する方法としては、複数の装置を用いることが好ましい。水溶液ジェット装置は、水溶液が版胴やブランケット胴の好ましい任意の位置に配置されるように、あらゆる適切な位置に配置される。
【0061】
図16は、水溶液ジェット装置1600に沿った水溶液ジェット1602の配置の一例を示している。水溶液ジェット1602は、一列にあるいは互い違いに配置されるか、又は、版胴かブランケット胴のあらゆる位置に水溶液滴を配置することが可能な他の適切な方法で配置される。
【0062】
図17は、本発明の原理に基づく印刷装置からの出力1702を示している。版胴又はブランケット胴の回転回数1704,1706,・・・,Nごとに、例えば、1つの固定イメージと2つの可変イメージとを含むドキュメント(ドキュメント1705,1710,1712として示される)が印刷される。固定イメージ(固定情報)と可変イメージ(可変情報)とのあらゆる組み合わせが、このような印刷装置によって印刷され得る。また、胴の1回転が出力の1ページに一致している必要はない。胴のサイズに応じて、胴の回転ごとに、複数のページが印刷されることもあれば、出力ページの一部分のみが印刷されることもある。
【0063】
上述から明らかなように、要望通りにインキの塗布をブロックするためにあらゆる薬剤が利用可能である。また、基材(substrate)への物質塗布を促進するために、異なる種類の薬剤が用いられ得る。本開示の実施形態は、ブロック用組成物及び転写補助用組成物のいずれか一方(もしくは、両方)、又は、両方の特性を有する1つ以上の組成物を用いることを含んでいるので、以下、主物質(principal substance)に対するこれらの機能のいずれか一方もしくは両方を有するゲート剤(gating agent)について、説明する。特に、ゲート剤は、主物質の全部、実質的全部、又は一部の転写をブロックするものである。ゲート剤は、その代わりに、あるいは追加的に、主物質の全部、実質的全部、あるいは一部の転写を補助することが可能であり、又は、主物質の一部分をブロックし、かつ、他部分の転写を補助することが可能である。上述の例では、主物質がインキに対応し、基材が紙ウェブに対応し、そして、主物質の選択部分がイメージ領域に対応する。ゲート剤は、1つ以上のインクジェットヘッドを用いて、版胴に塗布されるか、又は、ブランケット胴に直接塗布される。そして、インキが、選択的でない方法で版胴又はブランケット胴に塗布される。この後、インキは、版胴又はブランケット胴上のイメージ領域から紙ウェブに転写される。ゲート剤及びインキがブランケット胴に直接塗布される場合には、版胴を用いる必要はない。固定印刷ジョブ(特に短期間のものであるが、これに限らない)、又は、あらゆるサイズの可変もしくはカスタマイズ可能な印刷ジョブ(例えば、ターゲットメーリング、顧客への取引明細書、壁紙、カスタマイズされた包装紙等)を含む特定の印刷用途にとって有益となり得る。
【0064】
本開示の装置及び方法は、他の産業及び他の技術(例えば、繊維、製薬、生物医学、及び、特に電子工学)にも関連する。可変でカスタマイズ可能なグラフィックもしくはテキスト、又は、シール性が強化された主物質や耐水性もしくは耐火性を有する主物質は、繊維ウェブに選択的に塗布されて、例えば、衣類又は敷物の製造に用いられる。製薬業界では、主物質は、製剤原料、治療用物質、診断用物質、もしくはインキ以外のマーキング用物質であり得、又は、他のあらゆる種類の物質用のキャリアであり得る。生物医学用途では、例えば、主物質は、生物由来材料又は生体適合性ポリマーである。電子工学用途では、主物質は、基材の1つ以上の層に塗布される導電性材料又は電気絶縁性材料であり得る。他の電子工学用途には、製品に取り付けられる無線自動識別(「RFID」)タグの製造が含まれる。主物質の基材への選択的塗布は、他の産業にとっても有益となり得る。例えば、主物質は、製品(例えば、熱交換器、料理用鍋、又は、断熱性の高いコーヒー用マグカップ)の構成部品に選択的に塗布される熱伝導性材料又は断熱性材料である。また、主物質は、吸収性、反射性、又は放射性が強化された材料であってもよく、これらの性質の一部又は全部が他の製品にとって有用となり得る。これは、例えば、主物質を、オーブン、ランプ、又はサングラスの構成部品に選択的に塗布する場合である。また更に、主物質は、カスタマイズ可能な包装フィルム又はホログラムに使用可能である(イメージ生成の前に屈曲くぼみの選択的充填を経る)。更に、この技術は、燃料電池の製造に適用可能であり、この場合に、主物質は、官能性ポリマー、接着剤、及び、三次元(3−D)相互接続構造を含み得る。マイクロ光学素子の製造用途では、主物質は、光学接着剤又は紫外線硬化性ポリマー(UV-curing polymer)であり得る。更なる用途としては、ディスプレー製造があり、この場合に、主物質は、ポリマー発光ダイオード用材料である。
【0065】
ゲート剤は、例えば、インクジェット、又は、他の精密制御可能なスプレー技術又は塗布技術を用いて、基材への選択的な直接噴霧、媒介物(中間物)の表面への選択的な噴霧、又は、主物質への選択的な直接噴霧によって、含水液体の状態で塗布される。含水液体は、通常、低粘度であり、また、障害物の形成を抑制する傾向を有するので、インクジェットヘッドでの使用には有利である。但し、ゲート剤は、含水液体以外の形態で、インクジェット技術を用いて塗布されてもよい。更に、ゲート剤は、液体に限られているわけではなく、固体(例えば、薄膜、ペースト、ゲル、発泡体、又は、母材(matrix)等)の状態で使用されてもよい。ゲート剤は、粉末固体を含んで構成可能であり、この粉末固体は、主物質の塗布を抑制もしくは補助するように帯電され、又は、反対の極性の静電気電荷によって適切な位置に保持される。
【0066】
一例では、溶媒である液状のゲート剤を、1つ以上のインクジェットヘッドによってプレートに塗布し、この後、溶媒中で分散可能な粉末インキ着色剤を、プレートの表面全体にわたって付着させることにより、噴射領域にてその場で液体インキが形成される。非噴射領域の粉末は、(例えば、プレートを反転させて、粉末を真下に落とすことによって、又は、空気圧力や遠心力等によって)除去され、これにより、インキ領域と非インキ領域とが得られる。あるいは、帯電された粉末インキ着色剤を、プレート表面の全体(又は、プレート表面の実質的全体、又は、プレート表面の一部のみ)に塗布して、プレートに印加された静電気電荷によってプレート上に保持させてもよい。この場合には、溶媒をイメージ領域に噴射することにより、この領域に液体インキが形成され、また、静電気電荷を除去することにより、非湿潤領域(非ウェット領域)の粉末が除去される。どちらの場合でも、生成されたイメージは、その後に、基材(例えば、紙ウェブ)に塗布される。
【0067】
本開示のいずれのシステムについても、異なるサイズのゲート剤液滴を形成できるように、変更することが可能である。例えば、1200ドット/インチ(dpi)までの解像度で、約14ピコリットル(pl)の液滴サイズを得るためには、HP社製のインクジェットヘッドを用いることができる。一方で、Xaar社製のインクジェットヘッドは、360dpiで3plの噴射が可能であるが、この他に、6pl、9pl、及び12plの液滴の噴射も可能である。HP社製とSpectra社製との両方のような、異なるインクジェット技術を単一のシステムで用いることにより、広範囲にわたるサイズの液滴を形成することができる。形成されるイメージ領域の解像度については、ゲート剤の塗布に用いられるインクジェットヘッドを適切に選択することによって管理することができる。一般に、比較的大きなサイズの液滴は、イメージ領域における強制湿潤化(強制ウェッティング)の影響を比較的受けやすい。この強制ウェッティングは、イメージが表面間(例えば、プレートとブランケットとの間の押圧(ニップ)領域)で転写されるときに、隣接した噴射液滴が結合することに起因するものであり、プリント濃度の低下によるイメージ品質の低下をもたらすものである。この強制ウェッティングについては、1つ以上の成分の追加もしくは除去、及び/又は、ゲート剤における1つ以上の物理的特性の変更もしくは調整によって最小化することが可能である。例えば、界面活性剤を若干減らすことによって、ゴーストの発生を抑制することができる一方、他の界面活性剤を使用、追加、及び/又は、代用することによっても、イメージ品質を改善することができる。あるいは、胴に塗布されるゲート剤の電荷と反対の極性を有する静電気電荷を胴に印加することも可能である。これにより得られる静電気引力によって、強制ウェッティングが抑制されるか、又は、解消される。
【0068】
また、非イメージ領域とイメージ領域との間の境界が保持されるように、ゲート剤の粘度及び/又は表面張力を高めたり、サポート剤(supporting agent)を用いたり、非イメージ領域及びイメージ領域のそれぞれに対する機械的構造を採用したりすることによって、拡散を抑制することができ、これにより、品質を改善することができる。この影響を抑制又は解消するためには、他の化学薬品及び/又は材料の科学特性を用いることが可能である。粘度調整剤(viscosity modifying agents)について数例を挙げると、これには、プロピレングリコール、セルロース系材料、キサンタンゴム、又は、BASF社製のJoncryl(登録商標)678が含まれる。ゲート剤には、加圧又は撹拌によって粘度が変わるチキソトロピー液も含まれる。ゲート剤の表面張力を高めることによっても、拡散を抑制することができる。表面張力調整剤(surface tension modifiers)には、特に、ポロキサマー(poloxamer)(例えば、BASF社製のPluronic(登録商標))、又は、Air Product社製のSurfynols(登録商標)が含まれる。加えて、ゲート剤組成物は、他の薬剤(例えば、カール防止剤、シワ入り防止剤、ブロック剤用定着剤、平版インキ調整剤(litho ink modifiers)、受容面調整剤(receiving surface modifier)、消毒剤、殺生物剤(バイオサイド)、pH調整剤、及びpH保持剤)を含有することが可能である。
【0069】
インキ又は他の主物質については、所望の効果が得られるように、その種類、物理的特性、及び/又は、化学組成物を選択又は変更することが可能である。例えば、インキの表面張力を管理することにより、色相互のにじみと、紙裏の透き通しとを抑制することができる。また他の例では、ウォーターレス印刷に用いられる1つ以上のインキが、噴射されるゲート剤と共に用いられ(後者は、水溶性又は非水溶性)、これにより、プレートから紙へのインキ転写がブロック又は促進され得る。水溶性ゲート剤と共にウォーターレス印刷用インキを用いる場合には、このインキの親油性を考慮して、ゲート剤の組成が調整される。この結果、ゲート剤は、必要に応じて又は要望通りに、インキを引き付ける分子構造、及び/又は、インキをはじく分子構造を有する。あるいは、噴射されて、親水性のプレートに最初に塗布されるゲート剤には、プレートに結合する1つ以上の親水性組成物と、インキ分子に結合又は反発する1つ以上の他の組成物と、が含まれる。
【0070】
また、更なる例では、ゲート剤及び主物質の少なくとも一方の相変化を用いて、物質のブロック、又は、転写もしくは回収を抑制するか、又は促進する。例えば、ゲート剤がプレート等の表面に選択的に噴射され、この塗布されたゲート剤を有する表面に主物質が塗布されると、主物質のうち、噴射されたゲート剤と接触する部分は、ゲル又は固体に変化する。あるいは、主物質が、区別なく(換言すれば、非選択的に)プレートに塗布され、この後、プレートのうちイメージ化されない部分(換言すれば、非イメージ領域)にゲート剤が選択的に塗布(噴射)されると、噴射領域内の主物質は、ゲル又は固体に変化する。また更に、2つ(又はそれ以上)の成分で構成されるゲート剤を用いることが可能である。この場合に、これらの成分は、個別かつ選択的に、連続して塗布され(個別に噴射され)、これらの成分が同じ位置に塗布されると、その位置で化学反応又は物理的反応(例えば、エポキシ系の反応と類似又は同一の反応)が起こり、これにより、有益なゲート特性(gating characteristic)を更に向上させることができる。ゲート剤組成物の1つ以上の成分が塗布される前又は後に、主物質(インキ等)が塗布され得る。上述の例のいずれにおいても、基材(紙ウェブ等)は、プレートによりイメージ化される。
【0071】
他の可変処理としては、基材自体の処理がある。紙基材の場合には、適切なサイズ、重量、明るさ(白色度)等を有する、従来のコート紙が用いられる。これには、1つ以上のコーティング剤(例えば、クレー)が塗布され、これにより、主物質及び/又はゲート剤の吸収を遅らすか、又は、抑制する。他の基材(例えば、印刷ブランケット、印刷プレート、印刷胴、回路基板、プラスチックシート、フィルム、布地もしくは他のシート、壁の平面もしくは曲面、又は、他の部材等)の場合には、この基材のうち主物質が塗布される部分の表面が、必要に応じて、又は、要望通りに、適切に事前準備され、物理的もしくは化学的に処理され、機械加工され、粗面加工され、又は、別の方法で修正加工されてもよく、これにより、主物質の一部における転写を、要望通りに補助するか、又は、ブロックする。
【0072】
また更に、主物質が基材に塗布される位置におけるローラーのニップ圧及びローラーの圧縮特性が変更されることにより、ニップローラーの圧縮特性と同様に、イメージ品質が制御される。また、粗面を有するロール又は胴を用いて、要望通りに、主物質の基材への塗布が制御される。この種の粗面を有する胴の例としては、(例えば、ダイヤモンド彫刻、電子ビーム彫刻、レーザー彫刻、酸エッチング等のあらゆる既知の処理によって)表面に彫刻されたセル(くぼみ)の規則的な又は不規則的なパターンを有するグラビア印刷版胴、及び、従来のフレキソ印刷に用いられるアニロックスローラーが挙げられる。後者の場合には、均一な、又は、不均一なラインスクリーニングで形成されたセルを有するアニロックスローラーが用いられてもよい。具体例では、600ライン/インチ(lpi)から3,500lpiまでの間の解像度を有するアニロックスローラーが用いられ、この場合に、各セルの容量は、何らかの手法を介して、ゲート剤を塗布するインクジェットヘッドの液滴量に関連付けられる。例えば、セル容量は、印刷システムにおける特定のインクジェットヘッドの液滴量とほぼ等しくなり得る。あるいは、ゲート剤の液滴がセル内に収容された状態でゲート剤が胴表面よりわずかに突出するように、セル容量が選択されてもよい(これは、この後、紙又は他の基材と接触してゲート液が除去されることを補助するためには、好適である)。また更に、もしくは追加として、ゲート液の液滴の体積量を調節することにより、各セルに収容されるインキの体積量を制御し、これにより、グレースケールを調節することができる。上述のHP社製のインクジェットヘッドの場合では、この種のヘッドにより噴射される14plサイズの液滴を収容するために、600lpiの解像度を有するアニロックスローラーが用いられる。あるいは、600lpiより高いか、又は低い解像度を有するアニロックスローラーが上述のHP社製のヘッドと共に用いられ、この場合には、ヘッドにより噴射された各液滴が、それぞれ、複数のセル内に収容されるか、又は、セルの一部に付着する。いずれにしても(すなわち、特定の解像度のアニロックスローラーを用いる場合でも、特定のサイズのセルを有するグラビア印刷版胴を用いる場合でも)、ゲート剤が、インクジェットヘッドによって、粗面を有するロール又は胴の上に、選択的に噴射されて、その上で保持される。このため、セルを形成する壁の制限作用によって、面上でのゲート剤の拡散が最小化又は抑制される。この後、主物質が非選択的な方法でロール又は胴に塗布され、この際に、主物質が、ロール又は胴における非ウェット領域に流れ込む。そして、ロール又は胴を用いて、要望通りに、イメージが基材(例えば、紙のウェブもしくはシート、又は、媒介物(中間物)の表面)に転写される。
【0073】
これらの実施形態では、セルの形状及び/又は深さ(セルの形状は、ロール又は胴で同じか、又は、異なり、セルの深さについても同様である)は、ゲート剤の界面エネルギーと、ロール又は胴の界面エネルギーとに基づいて、ゲート剤に対して最適化されるか、又は、他の物理過程パラメータに基づいて選択される。また更に、必要に応じて、ランダムスクリーン、又は、擬似ランダムスクリーンに従って配列されたセルを有するロール又は胴を用いてもよい。
【0074】
更なる手法では、グラビア印刷版胴又はアニロックス胴もしくはローラーを用いるが、この手法は、ジェット噴射前に、全てのセルに、第1の物質(好ましくは液体)が、紙又は別の後続の基材との接触でセルから取り出されないレベル(高さ)まで、最初から区別なく充填されるという点で、上述の手法と異なっている。この後、セル内に物質の体積量の大部分が存在しない場合には、紙又は他の基材と接触可能なように、そして、少なくとも一部が選択的に転写されるように、1つ以上のセルに対して、異なる物質又は同じ物質が選択的に塗布される。これらの実施形態では、少量の噴射液によって、セル容量よりも多量の転写がもたらされる。これは、グラビア印刷のような用途で、適正な色濃度を実現するために必要とされている。この手法は、より以前のグラビアインキを用いて、セルを最初に充填させることができるという点でも、有利である。
【0075】
これらの実施形態は、図25A、図25B、及び、図25Cに示されており、胴1798は、好ましくは、規則的な(スクリーン)パターンに予めエッチングされたセル1800を備える。上述のように、液体が、区別なく、そして選択的に塗布された後、後続の基材との接触により、セル収容物が、セル収容物と後続の基材との間の界面張力によって、後続の基材に転写される。
【0076】
図25Aでは、基材が接触する場合に、セル収容物の基材への転写を防止するために、胴の外側表面1802より十分に低い位置にメニスカスが形成されるように、第1の物質(例えば、液状の着色剤)が、セル1800a〜1800dに充填される。1つ以上のインクジェットヘッドを用いて、1つの液滴(図25A)又は複数の液滴(図25B)の第2の物質(これは、第1の物質と異なるものか、又は、同一のもの)が、胴の外側表面1802よりわずかに低い位置か、同等か、又は、わずかに高い位置にメニスカスが形成されるように、選択されたセルに加えられ、この結果、胴1798の接触により、セル収容物が他の基材に転写される。図25Bに示すセル1800bの場合には、1つ以上のインクジェットヘッドの異なるノズルを用いて、2つ以上の液滴1804が、セル内に供給される。他の手法については、セル1800cに関連して図25Bに示されており、この場合には、均一なサイズの複数の液滴1806が単一のノズルからセル内に供給される。また更に別の手法が、セル1800dに関連して示されており、この場合には、異なるサイズの複数の液滴1808が単一のノズルからセル内に供給される。
【0077】
図25Cでは、全てのセル1800a〜1800dが部分的に又は完全に第1の物質により充填されており、そして、セル内に収容される第2の液体の体積量を制御するために、又は、後続の基材に転写されるセル収容物の体積量を制御するために、相対負圧(negative relative pressure)又は相対正圧(positive relative pressure)が用いられる。例示の実施形態では、セルへの区別ない物質塗布の間及び/又はその後に、相対負圧によって、表面1802より低位の第1の物質のレベルを低下させる。他の実施形態では、セルに第1の物質を塗布する間に、セルに相対正圧を加える。セルに第2の物質を選択的に塗布する前に、セルに相対正圧を加えることを停止し、これにより、セル内の第1の物質がセル1800の底部に沈む。この後、選択されたセルの収容物を後続の基材に確実に転写させるために、このセルのレベルを上昇させるように、第2の物質が、図25A及び図25Bに関連して示された手法で、選択的に追加塗布される。また、第2の物質の塗布時に、あるいは、セル収容物の後続の基材への転写の間に、この転写を補助するために、相対正圧を加えることを継続してもよい。
【0078】
好ましい実施形態では、第1の物質がインキであり、第2の物質が、インキ用の溶媒である。あるいは、これらの2つの物質は、インキのみであるか、又は、互いに接触すると、混合するか、もしくは混合しない、任意の2つの同一もしくは異なる材料であり得る。また更に、必要に応じて、第2の物質の各液滴は、複数のセルに流入するのに十分な大きさとなり得る。
【0079】
より一般的な意味では、ゲート剤は、主物質の塗布をブロックもしくは補助するために用いられるが、具体的には、イメージ領域内もしくは非イメージ領域内の主物質を除去もしくはブロックするか又はイメージ領域内もしくは非イメージ領域内に主物質を塗布すること、非イメージ領域内の補助剤を除去すること、特定の領域もしくは全領域における主物質の塗布を防止すること、ゲート剤もしくは主物質の塗布に影響を及ぼすようにゲート剤もしくは主物質の物理的特性もしくは化学的特性(例えば、ゲート剤もしくは主物質の粘度もしくは表面張力)を変化させること、上述のあらゆる組み合わせ、又は、あらゆる他の適切な方法によって、主物質の塗布をブロックもしくは補助する。
【0080】
別の実施形態では、ゲート剤は、表面の非イメージ領域内にある主物質の引力を増大させるために表面上に配置されるブロック剤であり、この場合には、表面上における主物質とブロック剤との間の引力は、主物質と基材との間の引力よりも強く、このため、非イメージ領域では、主物質の基材への塗布がブロックされる。別の例では、追加の主物質を表面に塗布する前に、表面のクリーニングを補助するために、主物質を表面に塗布した後に、主物質と非イメージ領域内の表面との間の引力を弱める目的で、ゲート剤が表面に塗布される。他の実施形態では、ゲート剤は、親油性又は親水性であり、これは、求める効果が、表面に対する主物質の引力を強めることか、それとも弱めることか、によって決められる。
【0081】
更に他の実施形態では、基材に塗布される主物質の塗布量が、障壁性を有するバリア剤又はブロック剤の形でゲート剤を用いることにより変化する。この実施形態では、主物質の基材への塗布が、完全に又は部分的にブロックされ、この結果、主物質は、障壁性を有するバリア剤又はブロック剤の及ぶ範囲で、中間レベルで基材に塗布され、この結果、所望の中間レベルでの主物質塗布に従って、基材上における主物質の密度勾配がもたらされる。
【0082】
別の実施形態では、主物質が表面に塗布される前か、又は、塗布された後に、ブロック剤を表面に塗布することを含み、そして、追加的に、基材にブロック剤を選択的に塗布すること、及び、この後に、表面と共に基材にイメージ化することを含む。例えば、ブロック剤は、その中で分散し、かつ、特定の主物質との親和を阻止する材料を含有してもよい。そして、ブロック剤は、表面及び/又は非イメージ領域の基材に塗布され、ブロック剤内に分散した材料と共に、表面上又は基材上に付着及び保持されるか、又は、その内部に吸収される。この後、表面が基材の近傍を通過すると、主物質が、ブロック剤を有さない領域の基材のみに転写される。これは、ブロック剤内に分散された材料が、主物質の非イメージ領域への塗布を阻止するからである。
【0083】
更に他の実施形態では、表面上又は表面の近傍へのブロック剤の複数回塗布が含まれる。一例では、ブロック剤は、親水性成分と親油性成分とを有するコポリマーであり、この場合に、親水性成分は、表面との結合を確立する傾向がある一方、親油性成分は、主物質との結合を確立する傾向がある。ブロック剤の組成に関係なく、ブロック剤は、非イメージ領域のみに選択的に塗布される。そして、主物質が、表面に区別なく塗布されて、この結果、ブロック剤が塗布されていない領域のみに、主物質が転写される。他の実施形態では、主物質が、ブロック剤の塗布パターンの間の領域に選択的に塗布される。そして、第2の塗布では、同一又は異なる構成のブロック剤が、表面及び/又は表面によってイメージ化される後続の基材(例えば、紙ウェブ)に塗布される。ブロック剤を用いた第2の塗布では、ブロック剤及び/又は主物質を用いた第1の塗布を覆うように、又は、後続の基材に対して、区別して選択的に塗布される。例えば、主物質の基材への塗布において、品質低下が発生する領域、又は、品質低下が発生し得る領域(例えば、縁部、境界部、イメージ濃度の移行部、又は、ハイライト部)が特定され得る。上述のブロック剤を用いた第2の塗布では、ブロック剤が基材に塗布されると、主物質が付着した縁部、境界部、イメージ濃度の移行部、又は、ハイライト部がクリーニングされ、これにより、主物質の塗布を、より精密に、又は、よりシャープにすることができる。ハイライト部の場合では、主物質の塗布前に、表面に対して、ゲート剤が選択的に塗布されるか、又は、主物質の塗布後に、表面及び/又は基材に対して、ゲート剤が選択的に塗布され、これにより、精密に複写されるハイライトイメージ領域が、結果化合物によって形成される。密集したドットのゲート剤の合併又は相互作用を防ぐために、ゲート剤の最初の塗布時に、表面に対して、より小さなサイズのドット及び/又はより少数のドットのゲート剤を塗布することが可能である。この後、第2の塗布では、ゲート剤が、好ましくは後続の基材に対して、後続の基材のうち主物質が塗布されない領域の一部又は全部に、選択的に塗布される。このため、主物質で少し覆われている領域における主物質をより精密に転写させることができる。小さなサイズのドット及び/又は少数のドットのゲート剤を最初に塗布する上述の方法は、主物質で少し覆われる領域以外の領域でも用いられ得る。
【0084】
一実施形態では、より小さなサイズのドット及び/又は少数のドットのゲート剤を塗布する方法が、図23の印刷装置2000によって実現される。印刷装置2000は、ブランケット胴又は他の受容面(付着面)2002と、この胴2002に隣接して配置される第1のゲート剤塗布装置(アプリケータ)2004と、を備えている。印刷装置2000は、胴2006a,2006bで示される第1及び/又は第2のインキトレインを有するインキシステム2006と、加圧ローラー(impression roller)2008と、追加的に胴2002の上流に配置される第2のゲート剤塗布装置2010と、更に備えている。印刷装置2000は、紙ウェブの形態の基材2012にマーキングを印刷するために使用することができ、この紙ウェブは、矢印2014で表されるウェブ方向に移動する。
【0085】
図24A及び図24Bは、第1及び第2のゲート剤を基材2012に塗布する塗布装置2004及び2010における2つの配置例を示す。まず図24Aを参照すると、塗布装置2004及び2010は、それぞれ、一連の表現用ノズル2004a〜2004dと2010a〜2010dとを備えている。図24Aでは、例えば、基材2012の一方又は両方の端部に平行な第1の長手方向ライン上に、ノズル2004a及び2010aが配置され、また、第1の長手方向ラインに対して平行かつオフセットされた第2の長手方向ライン上に、ノズル2004b及び2010bが配置されるように、塗布装置2004及び2010が整列配置されている。これらのノズルの一部又は全部は、表面2002及び/又は基材2012へのゲート剤塗布に使用可能である。例えば、印刷シーケンス(production sequence)における第1のインターバルの間に、ノズル2004a、2004c、及び、塗布装置2004の連続する残りの1つおきのノズルを作動させて、ゲート剤を表面2002に選択的に塗布する。また、このインターバルの間に、ノズル2010b、2010d、及び、塗布装置2010の連続する残りの1つおきのノズルのみを作動させて、ゲート剤を基材2012に選択的に塗布する。次のインターバルでは、ノズル2004b、2004d、及び、塗布装置2004の連続する残りの1つおきのノズルと、ノズル2010a、2010c、及び、塗布装置2010の連続する残りの1つおきのノズルと、のみを作動させて、ゲート剤を表面2002及び基材2012に選択的に塗布する。あるいは、塗布装置2004のノズルによって構成されたあらゆる第1のサブセットと、塗布装置2010のノズルによって構成されたあらゆる第2のサブセットとを、あるインターバルで作動させて、ゲート剤を表面2002及び/又は基材2012に選択的に塗布してもよい。更に、例えば、塗布装置2004のノズルによって構成されたあらゆる第3のサブセットと、塗布装置2010のノズルによって構成されたあらゆる第2のサブセットとを、別のインターバルで作動させて、ゲート剤を表面2002及び/又は基材2012に選択的に塗布してもよい。
【0086】
これに対して、塗布装置2004及び2010は、図24Bに示すように、中立な構成(non-aligned configuration)で配置されてもよい。この実施形態では、塗布装置2004のノズルが、塗布装置2010のノズルに対して、1/2ピッチの長さ分、オフセットされている。また更に、塗布装置2004のノズルは、塗布装置2010のノズルに対して、任意の距離分、オフセットされていてもよい。塗布装置2004及び2010のノズルは、図24Aに関する記載のあらゆる方法によって作動可能であるが、最適な解像度が得られるように、塗布装置2004及び2010の全てのノズルが、常時作動可能であることが好ましい。
【0087】
図24A及び図24Bに示す実施形態では、塗布装置2004及び2010が、第1及び第2の長手方向ラインに対して90°以外の角度で配置可能である。更に、塗布装置2004,2010は、単一の基材上の、隣接するイメージ部及び/又は異なるイメージのステッチングを行う。また更に、表面上の液滴サイズを連続的に大きくするように、塗布装置2004,2010を、単独で、又は、他の塗布装置と組み合わせて作動させてもよい。これにより、利用可能な液滴サイズの範囲を広げることができる。
【0088】
代わりとして、又は、追加として、補助剤を用いることが可能であり、この補助剤は、その中で分散し、かつ、主物質との親和を促進する材料を含有する。補助剤は、イメージ領域内の表面に塗布され、補助剤内に分散した材料と共に、表面の内側に吸収されるか、又は、表面上で付着もしくは保持される。その表面は、後続の表面(その上に配置された主物質を有する)の近傍を通過し、そして、補助剤を含む領域のみで、主物質が前者の表面に引き寄せられる。図23、図24A、及び、図24Bに示すいずれの実施形態においても、塗布装置2004及び2010の一方もしくは両方によって塗布される補助剤及び/又はブロック剤を使用することができる。どのような場合であっても、塗布装置2004及び2010の一方もしくは両方は、印刷シーケンスにおけるあらゆるポイントで1つ以上の補助剤及び/又は1つ以上のブロック剤を塗布する任意の台数の塗布装置に置き換えられ得る。例えば、後に生産される製品の認証及び/又は追跡を可能にするゲート剤が基材に塗布される。ゲート剤は、ロット番号、シーケンス番号、又は、他の識別情報を識別するマーキング(indicia)の形態で基材に塗布されてもよい。また、ゲート剤は、触れられるくらいに乾かしてもよいが、このような状態でもブロック剤又は補助剤としての効果が持続されるように調合される。また、基材は、しばらく経ってから、最終製品に加工されてもよい。製品の製造前、製造中、又は製造後に、マーキングを識別して、基材及び/又は最終製品を追跡することが可能である。乾燥すると、ゲート剤は、人間の目で見えるか、又は見えなくなり、そして、最終製品になると、ゲート剤及び/又はゲート剤の影響を受けるインキ(又は、他の主物質)は、目で見えるか、又は、見えなくなる。
【0089】
別の実施形態では、表面に対する主物質の引力を弱め、かつ、低粘度液を含有する主物質の希釈剤を含むか、又は、表面に対する主物質の引力を強め、かつ、高粘度液を含有する添加剤を含む。主物質の引力を弱めることにより、主物質とそれが結合される表面との間の結合力が弱められる。結合力を弱めることにより、表面から主物質を取り除くことが容易になる。これに対し、主物質の引力を強めることにより、主物質とそれが塗布される表面との間の結合力が強められる。結合力を強めることにより、後のイメージ転写の間に主物質が表面から基材へ転写されるのを妨げることができる。
【0090】
他の実施形態では、静電気電荷を用いて、主物質の基材への塗布を補助する。例えば、図18に示すように、圧胴4000は、そこに印加された静電気電荷4002を有する。静電気電荷4002は、正電荷又は負電荷であり、圧胴4000の一部又は全部に印加されている。主物質(例えば、インキ4004)は、インキトレイン4008によって、版胴又はブランケット胴4006に均一に塗布され、そして、ブランケット胴4006に結合する。静電気的に帯電したゲート剤は、圧胴4000に印加された電荷と反対の極性の電荷を有し、例えば、負極に帯電された水溶液4010が、インクジェットヘッド4012からブランケット胴4006上のイメージ領域4014に選択的に噴霧される。水溶液4010は、インキ4004とブランケット胴4006との間の結合力よりも強い結合力でインキ4004に結合するように調合される。基材(例えば、紙ウェブ4016)は、圧胴4000とブランケット胴4006との間へと導かれる。圧胴4000及びブランケット胴4006の各面は、各々の間に導かれる紙ウェブの近傍で、共通の方向に移動するように、それぞれが回転する。例えば、圧胴4000は、図示のように、時計回りに回転する一方で、ブランケット胴4006は、図示のように、反時計周りに回転する。ブランケット胴4006が回転すると、イメージ領域4014を覆い、かつ、負極に帯電した水溶液4010が、圧胴4000に静電気的に引き付けられる。負極に帯電した水溶液4010は、ブランケット胴4006から分離され、そして、ブランケット胴4006上のイメージ領域4014内のインキ4004が、紙ウェブ4016上に引き寄せられて、イメージ4018が生成される。負極に帯電した水溶液4010によって覆われていないインキ4020は、ブランケット胴4006に結合されたまま残留する。次のブランケット胴4006の回転により、インキ4004は、インキトレイン4008によって、胴上に均一に補充される。このように、圧胴4000は、この工程の間、帯電したままでいることが可能であり、また、イメージ領域4014の接近に対応して帯電又は放電が行われる。
【0091】
図19に示す別の実施形態は、図18に示した実施形態とほぼ同様である。但し、この実施形態では、紙ウェブ4016が、圧胴4000とブランケット胴4006との間を通過しない。また、追加の胴4023が、ブランケット胴4006と圧胴4000との間に配置されている。ブランケット胴4006が回転すると、イメージ領域4014を覆い、かつ、負極に帯電した水溶液4010が、静電気引力によって、追加の胴4023のうち正極に帯電した部分に引き寄せられる。負極に帯電した水溶液4010は、ブランケット胴4006から分離され、そして、ブランケット胴4006上のイメージ領域4014内のインキ4004が、追加の胴4023の帯電領域上に引き寄せられる。紙ウェブ4016は、追加の胴4023の下方を通り、圧胴4000によって形成されたニップを経て、そして、インキ4004が、追加の胴4023から紙ウェブ4016に転写される。追加の胴4023では、印加された正極の電荷が、ブランケット胴4006の近傍の領域のみに存在すると考えられる。この領域には、インキ4004がブランケット胴4006から追加の胴4023に転写される前に印加された静電気電荷が存在する。インキ4004が転写された後に、追加の胴4023が回転を続けると、インキ4004が紙ウェブ4016に転写される前に、静電気電荷4000が放電される。
【0092】
ブランケット胴4006からのインキ4004の転写は、本明細書で上述したように、「ウォーターレス」システムを構成するシリコーン胴4023を用いて、補助され得る。胴4023は、全体が疎油性のシリコーン表面を有する。ウォーターレス平版印刷の技術において知られているように、このようなシリコーン胴は、その表面の一部が親油性となるように現像(例えば、エッチング)が行われる。シリコーンは本来疎油性であるので、シリコーン胴の表面にインキを塗布する前に、シリコーン胴を水で湿らせておく必要はない。
【0093】
図18及び図19に示した実施形態では、ブランケット胴4006又は追加の胴4023をクリーニングする必要がないという更なる効果がある。好ましくは、全てのインキ及び負極に帯電した水溶液4010が、ブランケット胴4006又は追加の胴4023から紙ウェブ4016に転写される。
【0094】
上述したように、主物質(例えば、インキ)を、基材(例えば、紙ウェブ)に塗布する方法は、多種多様である。各方法は、それぞれ、図19に関連して記載された実施形態で示したように、1つ以上の中間ステップを含む。中間ステップは、各々、主物質及びゲート剤(例えば、インキ4004及び負極に帯電した水溶液4010)を有する1つ以上の層を塗布することも含む。中間ステップでは、各々、受容面を更に含み、この受容面にて、主物質が塗布又は収容される。主物質(例えば、インキ4004)の最終転写先は、紙ウェブ4016である。インキ4004は、追加の胴4023から紙ウェブ4016に塗布されるか、又は、(図18に示すように)ブランケット胴4006から紙ウェブ4016に直接塗布される。ブランケット胴4006には、その上を覆うプレートが取り付けられていないので、典型的な版胴でよく見られるシーム(継ぎ目)がなく、従って、連続的にスムーズな外周面を有する。ブランケット胴4006は、通常、ゴム、又は、他の硬いが可撓性を有する材料によって形成される。追加の胴4023の場合では、この胴は、従来の版胴か、又は、シームレス胴もしくはスリーブ胴であってもよく、必要に応じて選定される。
【0095】
ブランケット胴4006にインキを塗布する中間ステップで、版胴が用いられる場合に、版胴には、インキトレイン4008からインキ4004が塗布される。版胴は、全体が疎油性のシリコーン表面も有し、それゆえ、この表面にインキを塗布する前に、水で湿らせておく必要はない。
【0096】
また、別の実施形態では、静電気的に帯電したブロック剤を用いる。主物質は、表面上に配置されて、非イメージ領域にてブロック剤に覆われ、そして、正極又は負極に帯電されるが、この極性は、基材に印加される電荷と同じ極性である。表面が基材の近傍に移動すると、主物質のうちブロック剤によって覆われている部分が、反発して基材から離れて、表面上に残る。そして、主物質のうちブロック剤によって覆われていない部分によって、所望のイメージが基材上に生成される。
【0097】
更に他の実施形態では、主物質の基材への塗布を制御するために用いられるゲート剤は、ブロック剤と補助剤との組み合わせである。一例では、主物質は、表面に配置され、そして、非イメージ領域では、主物質の基材への塗布を阻止するブロック剤によって覆われている。イメージ領域では、主物質は、補助剤によって覆われる。この補助剤は、主物質と結合する傾向があり、これによって、基材上への塗布が補助される。あるいは、ゲート剤が、表面に配置され、かつ、主物質によって覆われてもよい。一例では、親油性のブロック剤が、表面の非イメージ領域に選択的に配置され、そして、親水性の補助剤が、表面のイメージ領域に選択的に配置される。そして、主物質は、両方のゲート剤により形成された層の上面に配置される。表面上に均一な高さで形成された両方のゲート剤の層により、主物質と補助剤との間の移動が妨げられる。表面が基材の近傍に移動すると、ブロック剤は、主物質が基材に塗布されるのを防止する一方、補助剤は、主物質が基材に塗布されるのを可能にする。いずれにしても、印刷シーケンスの間に用いられる成分(ゲート剤及び他の成分を含む)は、好ましくない結果及び影響(例えば、好ましくない化合物又は状態の形成)が回避される範囲で混合可能でなければならない。
【0098】
別の実施形態では、表面は、平版プレートや版胴等であり、これらの一部を用いて、可変形状の主物質を基材に塗布することによって、主物質の基材への塗布を制御する。この実施形態では、可変記号論、符号化、アドレス指定、番号付け、又は、あらゆる他のタギング技術が、主物質塗布の制御用に確保された表面の一部分で用いられる。主物質は、まず、区別なく表面上に配置される。主物質の塗布のために基材が表面の近傍を通過する前に、ブロック剤が、ある領域内の基材に、選択的に塗布される。この塗布領域は、基材の近傍を後に移動する表面の上記確保部分に対応する領域であり、主物質が所望の形状又はイメージで塗布されるように、ブロック剤が塗布される。より一般的な実施形態では、同様か又は異なる主物質が配置された1つ以上の表面の近傍に、基材が移動し、そこで、ブロック剤及び/又は補助剤が、上記確保部分内の表面から基材に選択的に転写される。ある実施形態では、磁性インキが、これらの表面のうちの1つから基材(例えば紙ウェブ)に転写される。また、1つ以上の非磁性インキが、同じ表面から転写されるか、又は、1つ以上の追加の表面から転写されてもよい。上記確保部分にて所望の形状で紙ウェブに磁性インキを塗布する際に、この塗布をブロックするか、又は、補助するために、ゲート剤を用いることが可能であり、これには、上述のブロック剤及び補助剤を使用するためのいかなる技術も用いることができる。この結果、1刷りごとに変更された磁性インキマーキング(例えば、MICRマーキング、又は、他のコード化された情報)を有する紙ウェブが印刷される。
【0099】
更に別の実施形態では、ゲート剤が、1つ以上のインクジェットヘッドによって、受容面に選択的に塗布され、そして、中間液(例えば、従来の湿し溶液(fountain solution))を引き付けるか、又は、ブロックする。この湿し溶液は、受容面に区別なく塗布されるが、しかし、ゲート剤によってゲートされる。このため、湿し溶液は、インキの塗布に先立って、受容面に選択的に付着する。この実施形態では、ゲート溶液が、湿し溶液と相互作用するように、そして、湿し溶液を制御可能なように調合されており、この点で、インキを制御するものと対照的になっている。別の実施形態では、湿し溶液を中和もしくは機能低下させるか、又は、湿し溶液を受容面から選択的に除去可能としている。より一般的に言うと、これらの実施形態では、区別なく塗布される湿し溶液及びインキと共に選択的に塗布されるゲート剤を用いることを含み、この場合に、湿し溶液が保持される領域を、ゲート剤によって制御する。
【0100】
図2〜図6及び図8〜図10に関連して上述した、どの水溶液ジェットシステムでも、多数の噴射孔を有するあらゆる種類のジェットカートリッジを含んでいる。更に、ジェットシステム用のゲート剤については、柔軟に選択することができ、非水溶性のゲート剤と同様に、水溶性のゲート剤を含んでいる。ゲート剤は、1つ以上の界面活性剤を含むことが可能であり、また、高品質なイメージを生成するのに有利な液滴サイズ及び粘度特性が得られるように、温度制御又は真空制御が行われる。
【0101】
本開示のように、可変印刷のジョブ処理と固定印刷のジョブ処理とを行うというコンセプトを用いる場合には、その利点の1つとして、従来の平版印刷装置に関連する固有速度を挙げることができる。しかし、実際には、従来の平版印刷装置と比較すると、印刷速度は、イメージ領域が形成可能な速度によって制限されており、つまり、イメージ領域を形成する方法によって左右されている。この種の方法は、本明細書で説明されており、また、イメージ領域の形成のためのゲート剤塗布を含んでいる。ゲート剤は、親油性溶液もしくは親水性溶液、又は、静電気電荷が印加された他の溶液であり得る。また、ゲート剤自体が、図19に関連して記載された実施形態で示したように、胴の一部に印加される静電気電荷であってもよい。印刷装置の運転速度は、上述のあらゆるゲート剤が、印刷装置の1つ以上の胴に塗布可能な最高速度によって、制限される。
【0102】
詳細については上述したが、インクジェットカートリッジは、カートリッジの種類に応じた様々な方法によってインキの液滴を噴射する。各種のカートリッジが、それぞれ、最大周波数を有し、この周波数にて、噴射液滴が形成される。単一のインクジェットカートリッジの液滴形成最大周波数によって、印刷装置の運転速度が制限される。この周波数制限を解決するためには、複数のインクジェットカートリッジを用いることが可能である。例えば、2つのインクジェットカートリッジを用いて、各液滴の位相を互いにずらして、各液滴を噴射することにより、単一のカートリッジの2倍の液滴形成周波数を得ることができ、この結果、印刷速度を2倍の速度にすることができる。この論理に従い、3つ以上のインクジェットカートリッジを用いて、各液滴の位相を互いにずらして、各液滴を噴射することにより、印刷速度を更に向上させることができる。更に一般的に言えば、複数のインクジェットカートリッジが、受容面の移動方向に対して直角又は他の角度をなすように、ずらして配置され、これにより、噴射された液滴の解像度を高めることができる。ゲート剤が塗布される基材としては、イメージングブラケット又はイメージング胴の形の、より大径な対象基材を用いることができ、この場合には、より大径であることにより、複数のインクジェットヘッドを、その近傍に配列させることができる。複数のチャネルを有するインクジェットヘッドを用いてもよく、この場合には、各チャネルは、通常、特定の色のインキを基材に塗布するように意図される。このような場合には、インクジェットヘッドを用いて、ゲート剤を、(印刷シーケンスの間の同じ時期か、又は、異なる時期に)各チャネルを介して供給することが可能であり、この結果、より高い解像度、より高い運転速度、又は、他の望ましい効果を得ることができる。
【0103】
インクジェットカートリッジが最も使用される運転状態に対応するように、カートリッジからの液滴が効率的に瞬間噴射され、この瞬間噴射によって、対象基材上に所定サイズのインキスポットが形成される。しかし、実際には、インクジェットカートリッジからの液滴噴射は、瞬間的な事象ではなく、現実には、初期、中期、及び終期を有する過渡的な事象である。対象基材が、高速で移動している場合には、インキ液滴が基材に衝突し、そして、基材の移動方向とは反対方向に延びる尾部(テール)を有するインキスポットが形成される。この現象は、テーリング(tailing)として知られており、液滴形成における過渡的性質によって生じる直接的な結果である。高速印刷時に発生するテーリングにより、印刷品質に懸念が生じるので、印刷装置の実効速度が制限され得る。しかし、あるゲート剤が、特定のジェットカートリッジと共に用いられる場合には、噴射液滴のテーリングを抑制又は緩和することが可能であり、これにより、最高印刷速度を制限するファクターであるこの現象が解消される。また、対象基材に対するインクジェットヘッドの位置を調整することにより、テーリングの発生を抑制することができる。例えば、インクジェットヘッドは、対象基材に対してある角度をなして配置され、これにより、液滴が、対象基材の径方向よりずれた噴射方向で噴射される。
【0104】
また、1つ以上の印刷装置用胴の外周部に静電気電荷を発生させることも、印刷装置の運転速度を制限するため、既知の高速処理を用いて、印刷装置用胴を、その内部で帯電させてもよい。例えば、既知の材料(例えば、セレニウムを含む)により作成された印刷装置用胴には、その内部にレーザー又は発光ダイオード(LED)の配列(アレイ)が組み込まれ、これにより、図19に関連して説明したように、胴のうち選択された部分にて、選択的に帯電されるか、又は、放電される。
【0105】
本開示のコンセプトの有用性は、例えば、異なるページが連続する書籍を印刷するような可変ジョブのみに限定されない。このコンセプトは、短期間(ショートラン)の固定ジョブにも有用である。この固定ジョブに、従来の固定プレート型平版印刷方法を用いると、非常に高価となり、また、印刷に時間がかかる。従来、短期間ジョブごとに、その期間でイメージ領域を保持し得るように作成されたプレートが必要であり、そして、その期間が完了すると、印刷装置を停止させて、次の期間で使用される異なったプレートに交換する必要があった。本開示におけるイメージ領域形成方法によって、印刷装置は、連続的に運転可能となると共に、運転中のいかなる時点でもイメージ領域を更新できる機能が備わる。
【0106】
印刷装置を停止させることなくイメージ領域を更新できる機能により、従来の印刷装置(例えば、オフセット印刷装置又はグラビア印刷装置)を用いては実現できない別の機能も促進される。本開示の実施形態では、胴によってイメージ化されるページのサイズが異なっていてもよく、更に、イメージング胴の外周よりも長いページであってもよい。従来のオフセット印刷におけるページサイズは、胴のサイズによって制限されており、換言すれば、胴の外周に一致する整数のページに基づいている。このため、ページをトリミングし、ある程度のゴミを出しながら切り詰めを行って、ページを規定のサイズとすることができるが、基本的には、印刷装置は、一定のサイズの印刷用に購入され、そして、使用される。一方、本実施形態では、可変長さカットオフ機能により、この制限が解決される。この機能は、例えば、郵便物の仕分け順で、異なるサイズの書籍を順番に印刷するのに有用であり、これにより、郵便料金の割引を受けることができる。胴の外周よりも長いプリントイメージの場合には、イメージの尾部が印刷されている間に、既に印刷されたイメージの先頭部が更新される。この連続的な更新・印刷方法を用いることにより、特に、大型の印刷装置を必要とする非常に大きな印刷領域の長寸のバナー又はストリップを印刷することができる。
【0107】
あるいは、1刷りの間に単一の胴で印刷されるように、複数のページのサイズを高速で変更することができる。これが有用となる一例としては、複数の大型イメージが縮小されて、単一のページで一緒に印刷される場合を挙げることができ、この場合には、イメージを並べて見比べたり、対照させたりすることができる。
【0108】
上述の連続可変カットオフ塗布時に、インキ及び関連するゲート剤が胴から紙に完全に転写される場合には、紙へのイメージ塗布と並行して胴のクリーニングが行われるので、先頭部の中間クリーニングが不要となる。但し、胴の中間クリーニングを必要とする方法を採用する場合には、クリーニング用に設計されたクリーニング液が胴に対して選択的に塗布され、これにより、次のイメージが塗布される前に、イメージ領域の先頭部から残留物質をクリーニングすることができる。クリーニング液は、胴に同調しつつ、イメージ領域の先頭部に均一に噴霧される。但し、所望の位置のみに、又は、必要な位置のみにクリーニング液を塗布することは、有益であると考えられる。なぜなら、このような精密塗布により、残留クリーニング液の回収量を削減することができるからである。精密なガイドを容易にするために、クリーニング液は、それ自体が、印加された静電気電荷を有し、この電荷は、胴に印加された静電気電荷と相互に作用する。胴は、その内部から、例えば、上述のように、レーザー又はLEDの配列によって、静電気的に帯電される。上述のような内部からの静電気電荷印加は、胴の所望の部分を対象にすることができ、また、印刷速度に影響を与えないように、可及的速やかに実施される。
【0109】
更に別の実施形態では、イメージ化部材(例えば、プレート、胴、ブランケット等)は、連続するイメージ間の差異に基づいて、イメージ化サイクルの合間に、選択的にクリーニングされる。これは、連続するイメージの塗布の合間に、イメージ変化が起こる部分のみに対して、1つ以上のインクジェットヘッド(ゲート剤をイメージ化部材に塗布するインクジェットヘッドと同じヘッドか、又は、1つ以上の個別ヘッドであってもよい)を用いて、イメージ化部材にクリーニング液を選択的に塗布することによって、実現される。
【0110】
通常のシアン、マゼンタ、イエロー、キー(CMYK)印刷装置では、4色インキが、それぞれ、イメージに塗布されて、全体のイメージが生成される。この従来の方法は、イメージ領域の連続的な更新のコンセプトにも同様に適用可能である。連続的に更新されるイメージは、塗布されるカラーインキごとに1度しか繰り返されない。それゆえ、従来のシステムと同様に、各カラーの塗布を、前回塗布されたカラーに対して精度よく配列させることが重要であり、これにより、イメージが鮮明になると共に、イメージのぼやけを抑制することができる。各イメージ領域における連続カラーの配列は、イメージ領域の電子登録(electronic registration)によって、促進される。この種のシステムは、イメージ領域における1つ以上の部分のすぐ前方の基材(例えば、紙ウェブ)あるいは場合によってはイメージ領域の一部の基材(例えば、紙ウェブ)に設けられた登録マーキングを用いて運用されている。紙ウェブの上方に配置された電子センサは、その下方を登録マーキングが通過したときに、登録マーキングを、光学的に、又は、それ以外の方法で、検知する。イメージ領域を更新するタイミングが、センサ検知時における各印刷装置の紙ウェブの位置に対応するように、タイミング制御が行われる。この方法により、自身の正確な位置が検出及び調整されるサーボモータの必要性がなくなる。この代わりに、電子登録マーキング及びセンサにより追跡される位置が、紙ウェブ自体の正確な位置となる。更に、この種の方法は、インキ及び他の液が紙に塗布されたときに必ず発生する紙ウェブの伸びを把握するために用いられる。イメージ領域内及びイメージ領域の前方に位置する複数の登録マーキングを用いたシステムを用いることにより、非常に高レベルの精度で伸びを把握することができる。この精度が制限を受けるのは、登録マーキングの個数及び間隔、又は、イメージ領域の形成に伴う精度の限界ぐらいのものである。
【0111】
必要に応じて、上述の登録方法は、他のセンサ、装置、制御装置等を用いる登録方法によって置き換えられるか、又は、増強されてもよい。
【0112】
インクジェットヘッド又はカートリッジは、印刷装置のコンポーネントに関連する数多くの位置にて要求される機能に応じて配置される。上述のように、ゲート剤が、インクジェットカートリッジから、版胴上か、ブランケット胴上か、プレプレート胴上か、又は、紙ウェブ上に噴射されるように、1つ以上のインクジェットカートリッジが配置される。更に、1つ以上のインクジェットカートリッジによって、クリーニング液が、版胴における1つ以上のイメージ領域か、又は、ブランケット胴に、塗布される。更に、インクジェットカートリッジは、各コンポーネントに関連させて配置され、例えば、印刷装置を通り抜ける紙ウェブの経路に対する各コンポーネントの上方もしくは下方か、又は、各コンポーネントの前方もしくは後方に配置される。
【0113】
イメージ領域のクリーニングに用いられるインクジェットカートリッジは、インキトレインの後段に配置される。このインクジェットカートリッジは、イメージ領域が固定である間は、アイドル状態を継続する。しかし、第1の固定印刷ジョブにおける最終刷りの塗布と、第2の印刷ジョブにおける最初刷りの塗布との間に、このインクジェットカートリッジにより、クリーニング液がイメージ領域に塗布される。第1の印刷ジョブでのあらゆる潜像インキ(latent image ink)を除去する処理が、このクリーニング液の塗布によって補助され、これにより、クリーニング機構(例えば、図2に関連して記載されたクリーニング機構212)によるインキ除去の可能性を一層高めることができる。クリーニング液は、主としてクリーニング液になるように調合されるのみならず、上述のゲート剤のあらゆる特性を有するように調合されてもよい。主としてクリーニング液として調合される場合には、複数のインクジェットカートリッジを用いて、連続的な噴霧か、もしくは同時の噴霧を行ってもよく、この場合には、堆積されたインキの除去が早められるので、インキ除去処理が、更に補助されることになる。
【0114】
図20を参照すると、クリーニング液を用いて潜像(潜在イメージ)5000をクリーニングする2つの代替手法では、ブロック剤(例えば、湿し溶液)を用いて、潜像5000を一時的に覆う。この潜像5000は、図20では、胴5002の外周面5001で周方向に延びる1組の平行線として、示されている。これらの代替手法により、印刷装置は、潜像5000のクリーニングのための運転停止時間をとらずに、運転を継続することができる。第1の代替手法5003では、第1の固定印刷ジョブにおける最終刷りが、胴5002から塗布された後に、インキ5004が、インキトレイン(図示せず)から胴5002に均一に塗布され、そして、インクジェットカートリッジ5006が、インキ5004上にネガイメージ5010を形成するようにブロック剤5008を塗布して、新規のイメージ領域5012を形成する。従って、印刷装置は、潜像5000が胴5002から完全に除去されるまでの間、ブロック剤5008のネガイメージ5010によりブロック又は覆われた胴5002の潜像5000を保持したまま、運転を継続する。
【0115】
第2の代替手法5013では、第1の固定印刷ジョブにおける最終刷りが、胴5002から塗布された後に、インクジェットカートリッジ5006が、胴5002上にネガイメージ5010を形成するようにブロック剤5008を塗布して、新規のイメージ領域5012を形成する。この後、インキ5004が新規のイメージ領域5012に塗布され、続いて、ブロック剤5008の第2の層5014が、胴5002に選択的に塗布され、これにより、潜像5000が完全に除去されるまでの間、潜像5000が確実に覆われる。
【0116】
上述の潜像5000の除去は、上記2つの代替手法のいずれか一方を用いて、印刷装置の継続運転と同時に進められる。胴の各回転ごとに、潜像領域には、クリーニング液が正確に塗布され、クリーニング機構212は、潜像領域をブラッシングして拭き取り、続いて、インキ5004及びブロック剤5008が、第1の代替手法と同様の手法で塗布されるか、又は、ブロック剤5008、インキ5004、及び、ブロック剤5008の第2の層5014が、第2の代替手法と同様の手法で塗布される。潜像5000の完全除去には、胴5002の数回の回転が必要である。クリーニング液のイメージ領域への塗布は、潜像領域内のインキを直ちに完全除去するためには比較的有効であるが、上述の2つの代替手法を用いると、第1の印刷ジョブで生じた潜像5000を覆うことにより、印刷装置が、第2の印刷ジョブにおいて、高品質なイメージを、直ちに生成することができる。
【0117】
更なる追加事項としては、1つ以上の処理パラメータの温度を調節又は制御することが挙げられる。例えば、表面にゲート剤を塗布する際に、ゲート剤の温度を上昇させることにより、粘着性を改善して、塗布を容易にすることができる。代わりとして、又は、追加として、ゲート剤塗布の間で最初に表面を加熱することにより、粘着性、液滴の形状もしくはサイズ等を制御してもよい。また、ゲート剤塗布後の工程中のある時点で、表面を冷却し(他の構成の場合は、加熱し)、これにより、ゲート剤の粘度を高めて、非ウェット領域へのゲート剤拡散を抑制するようにしてもよい。
【0118】
個別のインクジェット装置によって各別に塗布される複数の異なった液体を更に用いることが可能である。これらの液体が一緒に塗布される場合には、このインクジェット装置は、粘着性、粘度、又は、他の所望の特性の少なくとも1つを向上させたゲート剤を生成する。この液体は、異なるか又は同一の温度、圧力、流量等で塗布され得る。
【0119】
また別の実施形態には、2つ以上の配列(アレイ)又はインクジェットヘッドを用いて、ゲート剤のみを選択的に塗布すること、又は、表面における1つ以上の領域にゲート溶液を選択的に塗布すること、そして、追加的に、表面における1つ以上の残りの領域にインキを塗布することが含まれる。この場合に、1つ以上の配列は、それぞれ、印刷装置の運転中に取り外し可能か、もしくは、切り替え可能であり、又は、次に続くジョブ(例えば、局所的なカスタマイズが要求される場合)のために(位置決めという点で)再構成可能である。
【0120】
印刷ユニットごとにインキタック(ink tack)が変化するため、ユニットごとにゲート剤特性を連続的に変更させて、各ユニットによるインキ転写を効果的に最適化することができる。
【0121】
必要に応じて、通常の工程よりも回転が非常に高速な小径のロール又は胴に、ゲート剤が塗布される。この高回転速度は、塗布された液滴を、小型ローラーの表面における向心力によって、外側に向けて強制的に拡大させる。次に、他の表面(例えば、紙ウェブ)への液体転写に必要な接触圧が、この効果によって抑制され、これにより、ゲート溶液の非ウェット領域への拡散を最小限に抑えることができると共に、スポットサイズを小型化することができる。従って、品質と解像度とが、改善される。
【0122】
スクリーニングでは、異なる物理的角度を採用することが可能であり、例えば、垂直に対して異なる角度をとることにより、ゲート剤のドット形状に影響を与えることができる。更に、ゲート剤の液滴塗布時に、遅延時間(delay)を電子的に挿入させて、スクリーニングを想定してもよく、また、オフセット配列を採用して、オーバーラップをなくしてもよい。ゲート剤が塗布される表面からインクジェットヘッドまでの距離を変更することにより、異なる色に対してドットサイズを変えることができる。
【0123】
空気を、空気源から、ゲート剤が塗布される表面に向かわせることにより、液滴構造を変化させて、テーリングの抑制、薄膜化、又は、液体との相互作用の促進を図ることができる。この場合では、空気に影響を受けやすい液状のゲート剤を用いて、これらを閉鎖環境内で供給することにより、塗布後に空気がゲート剤と反応して、更に好ましい効果を得ることができる。
【0124】
上述のように、液状のゲート剤をプレートに塗布し、この後に、拡散微粒子(diffuse particles)を噴霧して湿った領域に付着させ、そして、紙に転写させる。上述の実施形態とは対照的に、ゲート剤及び拡散微粒子は、粉末の着色剤及び溶媒に限られる必要はなく、あらゆる液体及びあらゆる粒子(又は、固体又は流体のあらゆる種類のあらゆる物質)であり得る。
【0125】
追加の工程ステップは、システムコンポーネントの周期的なクリーニングか、又は非周期的なクリーニングを含み、これは、インラインか、又はオフラインで行われる。また更に、インキ乳化、色濃度、又はあらゆる他のフィードバックパラメータが監視され、これにより、ゲート剤の噴霧量が決定されて色品質が保持されると共に、インキ供給部の変更時期が決定される。1つ以上の工程パラメータが検出され、これを用いて、ロール、プレート、又は他の基材からインクジェットヘッドまでの距離が制御され、この結果、ドットサイズが制御される。
【0126】
また更に、ゲート剤が塗布される表面に凹部を有する中間ロールを用いることが可能であり、これにより、先のゲート剤のブランケットへの塗布時と同様の拡散が抑制される。代わりとして、又は、追加として、インクジェットヘッドは、従来の印刷工程と比べて低回転速度で回転する大径のロールに、ゲート剤(及び、追加的に、インキ)を塗布する。尚、この場合には、多数のインクジェットヘッドがロールの近傍に配置される。更に別の例では、ゲート剤が、インクジェットヘッドによって、貫通孔を有するプレートに選択的に塗布され、また、プレートの裏側で負圧を発生させることにより、液滴のサイズを縮小させることができる。更に一般的に言えば、負圧及び/又は正圧が用いられ得る。胴に空洞が形成されている場合か、又は、胴がその内部に独立構造の空洞を有する場合には、第1の空洞で負圧を発生させることができ、これにより、液滴のサイズを縮小させることができる。空気負圧発生用の空気流は、第2の空洞では正圧であり、この正圧は、胴への塗布用に液滴を噴射するためか、又は、胴のクリーニング用に液滴を放出するために、用いられ得る。ゲート剤と受容面との相互作用(すなわち、塗布及び/又は放出)、及び/又は、ゲート剤と紙との相互作用を最適化するように、これらの圧力が、必要に応じて、又は、要望通りに、調整される。
【0127】
更に別の変形例には、印刷面を形成するために、物質の相変化を用いることが含まれる。この一例には、1つ以上の硬化可能かつ除去可能な材料を用いることが含まれる。例えば、液状の紫外線(UV)硬化性ゲート剤をプレート上に付着させ、この後に、これを紫外線(UV)光にさらす。ゲート剤が硬化し、この後、インキがプレートに非選択的に塗布される。インキは、硬化したゲート剤により、引き付けられるか、又は、はじかれ、そして、生成されたイメージが、基材(例えば、紙ウェブ)に塗布される。そして、次のイメージ化に備えて、ゲート剤及びインキ(もし残留しているのであれば)が除去される。この除去は、プレートから残留インキを洗い流すこと、ゲート剤を液相に戻すこと、及び/又は、洗浄等によりゲート剤と残留インキとを除去することによって達成される。
【0128】
必要に応じて、加えられたエネルギーに応答するゲート剤が、イメージ化表面の全体にわたって区別なく塗布され、これにより、ゲート剤が、活性化されるか、又は、不活性化される。例えば、分散型のゲート剤が、紫外線(UV)、赤外線(IR)、又は他の非可視波長エネルギーの供給源に選択的にさらされるか、又は、レーザーからの放射光にさらされ、そして、この種のエネルギーにさらされた表面の各部に、インキ受容領域か、又は、インキ反発領域が形成される。この後、この表面にインキが区別なく塗布され、そして、インキが、さらされた部分か、又は、さらされなかった部分に移動する。この後、上述の実施形態と同様に、この表面を用いて、後続の基材をイメージ化することができる。
【0129】
イメージの印刷又は転写後に、イメージ化表面に残留する残留物を最小限にする紙又は他の種類の基材を用いることにより、印刷継続中のクリーニング工程(inter-imaging cleaning process)を最適化することができる。更に別の実施形態では、胴、プレート、ブランケット等の形式の2つ以上のイメージ化部材を用いて、各々のインキが後続の基材に塗布されることを含み、この場合に、1つ以上であって、かつ、全部よりは少ないイメージング胴、プレート、ブランケット等が、印刷シーケンスのある特定の期間に用いられ、その間、残りのイメージ化部材が、クリーニングされる。印刷シーケンスの終盤の時点で、異なるサブセットのイメージ化部材が用いられる一方、残りのイメージ化部材が、クリーニングされる。この構成によって、印刷速度を、より高速にすることができる。
【0130】
別の実施形態では、水溶液ジェットシステムは、パターン基材上へ、水溶液、又は潜在的多官能性(多官能ポテンシャル)を有する他の組成物をプリント又は噴射することができる。一実施形態では、例えば、その組成物は、潜在的二官能性(二官能ポテンシャル)を有するが、本開示では、いかなる数の官能性(官能基)を有していてもよい。例えば、多官能性組成物には、1つ以上の化合物がそれぞれ多官能ポテンシャルを有する、又は複数の化合物がそれぞれ潜在的単官能性(単官能ポテンシャル)を有することが含まれる。官能ポテンシャル(潜在的官能性)には、化合物に対して付着性及び/又は反発性を与える、化合物の特定の化学的部分及び/又は構造領域に起因する化合物の官能基部分(例えば、親水性領域、親油性領域、レセプター/認識部位(例えば、抗原結合部位(パラトープ))、イオン性領域、当該技術分野における既知の他の部位等)が含まれる。本実施形態では、第1の官能基はパターン基材に対する付着力を与え、第2の官能基は、パターン基材に塗布される1つ以上の主物質に付着性を与える。
【0131】
別の実施形態では、多官能性組成物は、2つ以上の多官能性化合物を含んでもよく、この場合に、各種多官能性化合物は、他の多官能性化合物と共通する少なくとも1つの官能基、及び、他の多官能性化合物と異なる少なくとも1つの官能基を有する。この例では、第1の多官能性化合物及び第2の多官能性化合物は、それぞれ同様のパターン基材上へプリントされるが、この場合において、主物質は、1種類の官能基のみと反応し、また、第1の多官能性化合物及び第2の多官能性化合物の第2の官能基は、主物質が第1又は第2の多官能性化合物のいずれに付着可能であるかに関して異なる特性を有する。別の実施形態では、単官能ポテンシャルを有する化合物は、単一の多官能性化合物の多官能基に類似する多官能基を有する錯体を形成するように相互作用する。この実施形態では、単官能性化合物は、1回でパターン基材上に塗布される単一の組成物に含められてもよく、もしくは同時に付着される分離した組成物に含められてもよく、あるいは、パターン基材上へ連続して付着される分離した組成物に含まれてもよい。
【0132】
本開示で意図される多官能性化合物の一例には、親水性である第1の官能基及び親油性である第2の官能基を有する化合物が含まれる。多官能性組成物は、親水性か又は親油性の表面を有する基材上へ所望のパターンを形成するように噴射される。これにより、表面と組成物との間で同種の官能基が結び付いて、表面に組成物が付着されると共に、組成物の反対の官能基が表面にはじかれて、表面に付着した組成物のパターンが形成される。
【0133】
同種の官能性(例えば、親水性又は親油性)を有するか、あるいは、表面には引き付けられずに、多官能性組成物の第2の官能基に選択的に引き付けられ、そして、基材の露出表面にはじかれるか、あるいは、基材の露出表面に付着不可能である、第2の組成物(例えば、主物質)は、噴射、浸漬、噴霧、ブラッシング、ローリング、又は、当業者に既知のあらゆる他の方法を用いて表面に塗布することができる。主物質の添加により、多官能性組成物のパターンに対応する主物質のパターンが形成され、この結果、主物質のみが、多官能性組成物の第2の官能基によって表面に付着される。更に、主物質の塗布後、1つ以上の追加的なステップ(例えば、クリーニングステップ)が実行され、これにより、主物質が多官能性組成物の第2の官能基のみに部位特異的に確実に付着する。クリーニングステップと同様に考えられる別のステップには、殺菌ステップが含まれる。この後、主物質は、第2の基材(例えば、イメージを印刷媒体に転写する中間(媒介)ローラー)、又は、印刷媒体に直接転写され、これにより、高精度かつクリーンな所望のプリントイメージを形成することができる。このようにして、主物質が後に付着する多官能性組成物を用いて、選択されたパターンが基材上に噴射され、この後、転写され、そして、印刷媒体上で永続的又は一時的に固定される。
【0134】
本開示で意図される多官能性化合物の例には、少なくとも1つの親水性部分と少なくとも1つの親油性部分を有する高分子化合物(例えば、ポロキサマー又はエトキシ化アセチレンジオール)が含まれる。使用に適するポロキサマーは、化学式HO(CHCHO)(CHCHCHO)(CHCHO)Hにより表すことができ、この場合に、x,y及びzは2〜130の範囲の整数を表し、特に、15〜100の値を取る。また、xとzとは同一の値を取るが、これらはyから独立して選択される。これらの中では、ポロキサマー188(x=75,y=30及びz=75)が使用可能であり、これは、BASF社からLutrol(登録商標)F 68(あるいはPluronic(登録商標)F-68)という商品名で入手可能である。また、ポロキサマー185(x=19,y=30及びz=19)が使用可能であり、これは、ISP社からLubrajel(登録商標)WAという商品名で入手可能である。また、ポロキサマー235(x=27,y=39及びz=27)が使用可能であり、これは、BASF社からPluronic(登録商標)F-85という商品名で入手可能である。また、ポロキサマー238(x=97,=39及びz=97)が使用可能であり、これは、BASF社からPluronic(登録商標)F-88という商品名で入手可能である。このタイプにおける別の特定の界面活性剤は、BASF社製のPluronic(登録商標)F-123として知られる、ポリ(エチレンオキシド)−ポリ(プロピレンオキシド)−ポリ(エチレンオキシド)ブロックコポリマーである。加えて、BASF社製のPluronic(登録商標)F-127(ポロキサマー407)という商品名で知られているトリブロックコポリマー(x=106,y=70及びz=106)が使用可能である。更に、例を少し挙げると、ポロキサマー101、108、124、181、182、184、217、231、234、237、282、288、331、333、334、335、338、401、402、及び403が、それぞれ、ゲート剤に含まれ得る。使用に適するエトキシ化アセチレンジオールは、3,5−ジメチル−1−ヘキシン−3−オール(Air Product社製のSurfynol(登録商標)61)、及び/又は、2,4,7,9−テトラ−メチル−5−デシン−4,7−ジオール(Air Product社製のSurfynol(登録商標)104)を特に含む。使用に適する他の界面活性剤は、臭化ヘキサデシルトリメチルアンモニウム(CTAB)、ポリオキシアルキレン・エーテル、ポリ(オキシエチレン)セチル・エーテル(例えば、Atlas Chemicals社製のBrij(登録商標)56、又は、Brij(登録商標)58)を含む。
【0135】
追加的な例には、自己組織化単分子膜の形成に関する物質(例えば、アルキルシロキサン、酸化物材料上の脂肪酸、アルカンチオレート、アルキルカルボキシレート等)が含まれる。本開示では、当業者に既知の他の多官能性化合物が意図される。更に、本開示にて意図される多官能溶液は、1つ以上の多官能性化合物に加えて、例えば、水、水溶性有機化合物、又はこれらの組み合わせを含み得る。好適な水溶性有機化合物は、アルコール(例えば、メチルアルコール、エチルアルコール、n−プロピルアルコール、イソプロピルアルコール、n−ブチルアルコール、sec−ブチルアルコール、又はtert−ブチルアルコール)、アミド(例えば、ジメチルホルムアミド又はジメチルアセトアミド)、カルボン酸、エステル(例えば、酢酸エチル、乳酸エチル、及びエチレンカーボネート)、エーテル(例えば、テトラヒドロフラン、又はジオキサン)、グリセリン、グリコール、グリコールエステル、グリコールエーテル、ケトン(例えば、アセトン、ジアセトンアルコール、又はメチルエチルケトン)、ラクタム(例えば、N−イソプロピルカプロラクタム、又はN−エチルバレロラクタム)、ラクトン(例えば、ブチロラクトン)、有機硫化物(有機スルフィド)、スルホン(例えば、ジメチルスルホン)、有機スルホキシド(例えば、ジメチルスルホキシド、又はテトラメチレンスルホキシド)、及び、これらの派生物、並びに、これらの混合物を含む。多官能溶液にて追加的に意図される成分は、溶媒、防腐剤、粘度調整剤(viscosity modifier)、着色剤、芳香、界面活性剤、ポリマー、発泡剤、塩類、無機化合物、有機化合物、水、pH調整剤(pH modifier)、及び、これらのあらゆる組み合わせを含む。主物質の例には、例えば、平版インキ、染料、タンパク質(例えば、抗体、酵素、プリオン)、核酸(例えば、DNA及び/又はRNAのオリゴヌクレオチド)、小分子(例えば、無機分子及び/又は有機分子)、生体サンプル(例えば、細胞及び/又はウィルスの溶解物、及びこれらの留分)、調合薬(抗生物質及び/又は他の薬剤、及び塩類、前駆体、及びこれらのプロドラッグを含む)、細胞(例えば、原核細胞、真正細菌、及び/又は真核細胞)、及び金属(例えば、酸化ケイ素、導電性金属及びこの酸化物)が含まれる。意図される印刷媒体は、紙、ガラス、ニトロセルロース、布地、織布、金属、プラスチック、フィルム、ゲル、及び、これらの組み合わせを含む。
【0136】
例示として、上述の実施形態を実施するために採用可能な装置の一例を、図21に示す。印刷装置6100は、平版印刷業界で知られているような、主物質塗布システム6102、パターン表面6104、パターン表面胴6106、ブランケット胴6108、及び、圧胴6110を含む。パターン表面6104は、その全体が親水性である(例えば、標準アルミニウム平版プレート)。更に、余分な又は古くなった多官能性組成物及び主物質、又は他の混在物質を除去するクリーニングシステム6112が含まれている(ここでは、パターン胴とブランケット胴との両方に配置した例が示されているが、配置台数をより多くしてもよく、また、より少なくしてもよい)。多官能性組成物の塗布用であり、本開示の水溶液ジェットシステムと同様の水溶液ジェットシステム6114は、パターン表面胴に関連させて図示されているが、この配置は変更可能である。
【0137】
印刷装置6100の運転は、本開示の他の実施形態と同様である。例えば、多官能性組成物は、水溶液ジェットシステム6114により、パターン表面胴6106のパターン表面6104上に噴射される。この後に、主物質が、塗布システム6102を介して、パターン表面6104に塗布される。パターン表面6104がブランケット胴6108の表面に接触すると、主物質は、この表面に転写され、そして、基材6116上に付着するまで、その表面に保持され続ける。この装置では、ブランケット胴6108を省略することが可能であり、この場合には、主物質がパターン表面6104から基材6116に直接的に転写され得ることが、更に考えられる。あるいは、必要に応じて、例えば、追加的な水溶液ジェットシステム6114、塗布システム6102、及びクリーニングシステム6112を備える追加ローラーを追加してもよい。
【0138】
所望の結果が得られるように、本開示の他の実施形態に関連する追加的な変更を、この実施形態に、同様に適用することが可能である。また、多官能性組成物とインクジェット技術との組み合わせを用いて、1つ以上の主物質の、高速で高精度な選択付着を可能にする装置構成(図示せず)を追加することも考えられる。このようにして、例えば、診断テスト、電気チップ、オリゴヌクレオチド配列、タンパク質配列、細胞配列、化学物質配列、薬剤配列、検知システム、印刷物(例えば、パンフレット)、及び、これらの組み合わせを含む製品を製造することができる。
【0139】
図21のジェットシステム6114、又は、本開示のあらゆるジェットシステムを用いて、ゲート剤又は主物質が噴射される。ゲート剤及び主物質には、水溶性又は非水溶性の溶液が含まれ得る。水溶液には、水、水溶性有機化合物、又は、これらの組み合わせが含まれる。好適な水溶性有機化合物は、アルコール(例えば、メチルアルコール、エチルアルコール、n−プロピルアルコール、イソプロピルアルコール、n−ブチルアルコール、sec−ブチルアルコール、又はtert−ブチルアルコール)、アミド(例えば、ジメチルホルムアミド又はジメチルアセトアミド)、カルボン酸、エステル(例えば、酢酸エチル、乳酸エチル、及びエチレンカーボネート)、エーテル(例えば、テトラヒドロフラン、又はジオキサン等のエーテル)、グリセリン、グリコール、グリコールエステル、グリコールエーテル、ケトン(例えば、アセトン、ジアセトンアルコール、又はメチルエチルケトン)、ラクタム(例えば、N−イソプロピルカプロラクタム又はN−エチルバレロラクタム)、ラクトン(例えば、ブチロラクトン)、有機硫化物(有機スルフィド)、
スルホン(例えば、ジメチルスルホン)、有機スルホキシド(例えば、ジメチルスルホキシド、又はテトラメチレンスルホキシド)、及び、これらの派生物、並びに、これらの混合物を含む。本開示の他の実施形態では、ゲート剤又は転写物質は、1つ以上の界面活性剤(例えば、ポロキサマー又はエトキシ化アセチレンジオール)を含む。使用に適するポロキサマーは、化学式HO(CHCHO)(CHCHCHO)(CHCHO)Hにより表すことができ、この場合に、x,y及びzは2〜130の範囲の整数を表し、特に、15〜100の値を取る。また、xとzとは同一の値を取るが、これらはyから独立して選択される。これらの中では、ポロキサマー188(x=75,y=30及びz=75)が使用可能であり、これは、BASF社からLutrol(登録商標)F 68(あるいはPluronic(登録商標)F 68)という商品名で入手可能である。また、ポロキサマー185(x=19,y=30及びz=19)が使用可能であり、これは、ISP社からLubrajel(登録商標)WAという商品名で入手可能である。また、ポロキサマー235(x=27,y=39及びz=27)が使用可能であり、これは、BASF社からPluronic(登録商標)F 85という商品名で入手可能である。また、ポロキサマー238(x=97,=39及びz=97)が使用可能であり、これは、BASF社からPluronic(登録商標)F 88という商品名で入手可能である。このタイプにおける別の特定の界面活性剤は、BASF社製のPluronic(登録商標)123として知られる、ポリ(エチレンオキシド)−ポリ(プロピレンオキシド)−ポリ(エチレンオキシド)ブロックコポリマーである。加えて、BASF社製のPluronic(登録商標)127(ポロキサマー407)という商品名で知られているトリブロックコポリマー(x=106,y=70及びz=106)が使用可能である。更に、例を少し挙げると、ポロキサマー101、108、124、181、182、184、217、231、234、237、282、288、331、333、334、335、338、401、402、及び403が、それぞれ、ゲート剤に含まれ得る。使用に適するエトキシ化アセチレンジオールは、3,5−ジメチル−1−ヘキシン−3−オール(Air Product社製のSurfynol(登録商標)61)、及び/又は、2,4,7,9−テトラ−メチル−5−デシン−4,7−ジオール(Air Product社製のSurfynol(登録商標)104)を特に含む。使用に適する他の界面活性剤は、臭化ヘキサデシルトリメチルアンモニウム(CTAB)、ポリオキシアルキレン・エーテル、ポリ(オキシエチレン)セチル・エーテル(例えば、Atlas Chemicals社製のBrij(登録商標)56、又は、Brij(登録商標)58)を含む。この種の界面活性剤は、各分子の一端に親水基を有する一方、その他端に親油基を有する。1つ以上の界面活性剤をゲート剤又は主物質に添加することにより、各溶液の表面張力特性が改善される。これにより、高度な液滴配置制御が提供され、そして、高品質な印刷イメージが生成される。
【0140】
本開示のあらゆる方法を実施するために用いられる塗布システム(アプリケーションシステム)7000については、その概要が図22に示されている。一連の塗布ユニット7002−1〜7002−Nは、ウェブ材7004を受け入れ、そして、インキ及び/又は他の材料をそれに連続的に塗布する。ここで注目すべき点は、システム7000内に、単一の塗布ユニット7002か、もしくは、2つ以上の塗布ユニット7002が備えられてもよい点と、材料7004が、ウェブ、一連のシート、もしくは他の個別エレメントを含んで構成されてもよい点とである。塗布ユニットは、コントローラ7006によって操作されており、1つ以上のセンサ7008の出力に応答可能である。これらのセンサは、多数のパラメータのうち1つ以上のパラメータ(例えば、上述の登録マーキング、各塗布ユニット7002によって塗布される物質の配置及び/又は品質等)を検知する。コントローラ7006は、後処理装置(例えば、印刷装置の場合は、ステッチャー(stitcher)及びシーター(sheeter)、又は、より一般的なシステムの場合は、包装装置、品質管理装置等)も制御する。コントローラ7006は、ハードウェア、ソフトウェア、又はこれらの組み合わせによって実装可能である。
【0141】
本開示の実施形態における更なる実施例では、イメージのあらゆる部分で、局部的な色補正を行うことができる。この種の色補正の解像度は、従来のオフセット印刷装置の個々のインクキーによって影響が及ぼされる印刷領域の位置に限るものではない。つまり、色補正は、ゲート剤が受容面に塗布される領域での解像度で行われる。更に、色補正は、イメージの一部か、又は、イメージの全体に適用される。また更に、後続の塗布装置にて別の物質を塗布する前に、ある塗布装置にて塗布されるゲート剤に修正を加えることが望ましい。例えば、多色印刷工程では、第1のインキの紙ウェブへの転写をブロック又は補助し、かつ、第1の印刷装置によって塗布される第1のゲート剤は、紙ウェブが第2の印刷装置に達する前に、不活性化される。この場合に、第2の印刷装置にて、第2のゲート剤(これは、第1のゲート剤と同一か、又は異なる)及び第2のインキが、ウェブに塗布される。この不活性化は、あらゆる適切な方法(例えば、第1のインキがウェブに転写された後に、インクジェットヘッドを用いて不活性化用化学物質を選択的に塗布する等)を用いて行われる。あるいは、ゲート剤は、その有益な特性が後続の基材上でも残留するように、他のあらゆる装置を用いて、別の方法によって修正されてもよい。
【0142】
更に別の実施形態では、ゲート剤は、物質の基材への吸収を制御する。例えば、ゲート剤は、グラビアインキの紙ウェブへの吸収を制限するか、あるいは、最適化して、色再現を改善する。上述の実施形態と同様に、ゲート剤は、あらゆる適切な手段(例えば、1つ以上のインクジェットヘッド)により、紙ウェブに塗布される。
【0143】
必要に応じて、主物質及びゲート剤の多重連続層を受容面上に積層可能とするために、そして、この種の多重層を後続の表面に塗布するために、本開示の方法を適応させることができる。また、基材に塗布されるゲート剤が有色である(すなわち、完全に無色ではない)場合には、このことを考慮に入れて、色再現工程で使用されるインキの種類及び/又は塗布量(すなわち、コントローラ(例えば、RIP)によって規定されたイメージのインキ膜厚及び/又はインキ量)を選定するようにしてもよい。また更に、ゲート剤は、塗布された主物質と相互に作用して、所望の効果を生み出す。例えば、カラー印刷工程では、ゲート剤を、塗布されたインキと混合させることにより、インキの色を、要望どおりに修正することが可能となる。代わりとして、又は、追加として、基材に塗布されるゲート剤は、他の塗布された物質と反応し、これにより、偽造検知、完全性チェック、順序チェック等が可能となる。この場合では、他の物質が塗布されるより前か、後か、又は同時に、ゲート剤が塗布される。
【0144】
必要に応じて、2つ以上のイメージ化部材(例えば、プレート、ブランケット、胴等)を用いてもよく、この場合には、イメージ及びゲート剤が、後続の表面に転写され、次に、この表面により、イメージ及びゲート剤が、後続の基材(例えば、紙ウェブ)に転写される。また更に、ゲート剤は、単独で、又は、1つ以上の材料と組み合わせてイメージ化部材に選択的に塗布されてもよく、この場合には、次に、主物質を受ける後続のイメージ化部材に、ゲート剤及び他の材料が塗布される。主物質、ゲート剤、及び他の材料は、後続のイメージ化部材によって、又は、後続のイメージ化部材と基材との間に配置された別のイメージ化部材によって、基材に転写される。例えば、まず、銀の導電トレースが胴上に沈着され、次に電気抵抗材が沈着され、次に半導体材が沈着され、そして、これらの組み合わせが、直接的に、又は、別のイメージ化部材を介して間接的に、後続の基材(例えば、マイラーフィルム、紙ウェブ、回路基板等)に塗布される。
【0145】
特定の用途としては、本開示の高速可変印刷システム及び高速可変印刷方法が、数多くの平版印刷の用途で利用され得る。例えば、本開示のシステム及び方法は、ダイレクトメール、広告、明細書、請求書等の高品質な一対一マーケティングの用途に理想的である。本開示の装置及び方法に適した他の用途としては、パーソナライズされた書籍、定期刊行物、出版物、ポスター、ディスプレー等の印刷が挙げられる。本開示における高速可変印刷システム及び高速可変印刷方法は、上述の製品のポストプレス処理(例えば、製本や仕上げ)も迅速化することができる。
【0146】
以上は、本開示の装置及び方法の原理を例示するためのものに過ぎず、当業者によって本開示の装置及び方法の範囲及び理念から逸脱することなく様々な改変が可能であることは明らかであろう。例えば、記載された手順におけるいくつかのステップの順序は、決定的なものではなく、必要に応じて変更が可能である。また、様々なステップは、様々な技術によって実行され得る。
【産業上の利用可能性】
【0147】
本開示は印刷技術に適用可能であるのみならず、他の産業にとっても有用となり得る。特に、基材にゲート剤が塗布されることにより、イメージ領域又は非イメージ領域での主物質の塗布を規定するための補助を行うことができる。
【0148】
上述の記載を考慮すれば、当業者には、数多くの変更形態があり得ることは明らかであろう。従って、本明細書の記載は単なる例示として解釈されるべきであり、また、当業者が本発明を製造及び使用できるように、そして、当業者が同様に実施するためのベストモードを教示できるように、提示されたものである。添付された特許請求の範囲から逸脱しない限りは、全ての変更形態に対する専有権が留保される。

【特許請求の範囲】
【請求項1】
主物質を転写する方法であって、
受容面と接触するイメージ化表面に、前記主物質を区別なく塗布するステップと、
前記イメージ化表面が前記主物質を前記受容面に付着させるパターンを画定するゲート剤を、前記受容面における選択可能領域に塗布するステップと、
前記パターンに基づいて、前記主物質の第1の部分を、前記イメージ化表面から前記受容面に転写するステップと、
を含んで構成される方法。
【請求項2】
前記受容面を回転させるステップを更に含んで構成される請求項1に記載の方法。
【請求項3】
前記受容面は、円筒状であり、任意的に、前記イメージ化表面は、円筒状である請求項1に記載の方法。
【請求項4】
前記ゲート剤を塗布するステップは、前記主物質の少なくとも第2の部分の転写をブロックするゲート剤を塗布するステップを含んで構成される請求項1に記載の方法。
【請求項5】
前記ゲート剤を塗布するステップは、前記転写するステップを補助するゲート剤を塗布するステップを含んで構成される請求項1に記載の方法。
【請求項6】
前記主物質の前記第1の部分を転写するステップは、前記イメージ化表面と前記受容面との中間に位置する追加の表面に、前記主物質の前記第1の部分を転写するステップを含んで構成される請求項1に記載の方法。
【請求項7】
前記ゲート剤を塗布するステップは、水溶性物質を含んで構成されるゲート剤を塗布するステップを含んで構成される請求項1に記載の方法。
【請求項8】
前記ゲート剤を塗布するステップは、ゲルを含んで構成されるゲート剤を塗布するステップを含んで構成される請求項1に記載の方法。
【請求項9】
前記主物質を塗布するステップは、前記ゲート剤の上面に前記主物質を塗布するステップを含んで構成される請求項1に記載の方法。
【請求項10】
前記受容面、前記イメージ化表面、又は、これらの組み合わせ、をクリーニングするステップを含んで構成される請求項1に記載の方法。
【請求項11】
前記クリーニングするステップは、前記主物質の少なくとも一部を除去するステップを含んで構成される請求項10に記載の方法。
【請求項12】
前記クリーニングするステップは、前記ゲート剤の少なくとも一部を除去するステップを含んで構成される請求項10に記載の方法。
【請求項13】
前記主物質を塗布するステップは、インキ、薬剤、治療用物質、診断用物質、インキ以外のマーキング用物質、生物由来材料、生体適合性ポリマー、導電性物質もしくは電気絶縁性物質、熱伝導性物質もしくは断熱性物質、官能性ポリマー、接着剤、三次元相互接続構造を含んで構成される物質、光学接着剤、紫外線硬化性ポリマー、又は、発光ダイオード用材料もしくは磁性材料を含んで構成される物質、のうち少なくとも1つである主物質を塗布するステップを含んで構成される請求項1に記載の方法。
【請求項14】
受容面と接触するイメージ化表面に、主物質を区別なく付着させる主物質用塗布装置と、
前記イメージ化表面が前記主物質を前記受容面に付着させる領域を画定するゲート剤を、前記受容面における選択可能領域に付着させるゲート剤用塗布装置と、
前記ゲート剤を付着させる前記ゲート剤用塗布装置を制御するコントローラと、
を含んで構成される印刷システム。
【請求項15】
前記受容面は、回転する請求項14に記載の印刷システム。
【請求項16】
前記受容面は、円筒状であり、任意的に、前記イメージ化表面は、円筒状である請求項14に記載の印刷システム。
【請求項17】
前記ゲート剤は、前記主物質の少なくとも第2の部分の転写をブロックする請求項14に記載の印刷システム。
【請求項18】
前記ゲート剤は、前記主物質の第1の部分が前記受容面に転写されることを補助する請求項14に記載の印刷システム。
【請求項19】
前記主物質の第1の部分は、前記イメージ化表面と前記受容面との中間に位置する追加の表面に転写される請求項14に記載の印刷システム。
【請求項20】
前記ゲート剤は、水溶性物質を含む請求項14に記載の印刷システム。
【請求項21】
前記ゲート剤は、ゲルを含む請求項14に記載の印刷システム。
【請求項22】
前記主物質は、前記ゲート剤の上面に塗布される請求項14に記載の印刷システム。
【請求項23】
前記受容面、前記イメージ化表面、又は、これらの組み合わせ、をクリーニングする手段を含んで構成される請求項14に記載の印刷システム。
【請求項24】
前記クリーニング手段は、前記主物質の少なくとも一部を除去する手段を含んで構成される請求項23に記載の印刷システム。
【請求項25】
前記クリーニング手段は、前記ゲート剤の少なくとも一部を除去する手段を含んで構成される請求項24に記載の印刷システム。
【請求項26】
主物質を転写する方法であって、
前記主物質を、表面に塗布するステップと、
前記主物質における選択可能部分の上面に、ゲート剤を塗布するステップと、
前記ゲート剤によって覆われない前記主物質の第1の部分を、前記表面から受容面に転写するステップと、
を含んで構成される方法。
【請求項27】
前記受容面を回転させるステップを更に含んで構成される請求項26に記載の方法。
【請求項28】
前記受容面は、円筒状であり、任意的に、前記表面は、円筒状である請求項26に記載の方法。
【請求項29】
前記主物質の前記第1の部分を転写するステップは、前記表面と前記受容面との中間に位置する追加の表面に、前記主物質の前記第1の部分を転写するステップを含んで構成される請求項26に記載の方法。
【請求項30】
前記ゲート剤を塗布するステップは、水溶性物質を含んで構成されるゲート剤を塗布するステップを含んで構成される請求項26に記載の方法。
【請求項31】
前記主物質を塗布するステップは、インキ、薬剤、治療用物質、診断用物質、インキ以外のマーキング用物質、生物由来材料、生体適合性ポリマー、導電性物質もしくは電気絶縁性物質、熱伝導性物質もしくは断熱性物質、官能性ポリマー、接着剤、三次元相互接続構造を含んで構成される物質、光学接着剤、紫外線硬化性ポリマー、又は、発光ダイオード用材料もしくは磁性材料を含んで構成される物質、のうち少なくとも1つである主物質を塗布するステップを含んで構成される請求項26に記載の方法。
【請求項32】
主物質を転写する装置であって、
前記主物質を、表面に塗布する塗布装置と、
前記主物質における選択可能部分の上面に、ゲート剤を付着させる付着装置と、
前記ゲート剤によって覆われない前記主物質の第1の部分を、前記表面から受容面に転写する手段と、
を含んで構成される装置。
【請求項33】
前記受容面は、回転する請求項32に記載の装置。
【請求項34】
前記受容面は、円筒状であり、任意的に、前記表面は、円筒状である請求項32に記載の装置。
【請求項35】
前記主物質の前記第1の部分を転写する手段は、前記表面と前記受容面との中間に位置する追加の表面に、前記主物質の前記第1の部分を転写する手段を含んで構成される請求項32に記載の装置。
【請求項36】
前記付着装置は、水溶性物質を含んで構成されるゲート剤を付着させる請求項32に記載の装置。
【請求項37】
前記付着装置を制御するコントローラを含んで構成される請求項32に記載の装置。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【図6】
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【図7】
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【図8】
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【図9】
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【図10】
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【図11】
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【図12】
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【図13】
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【図14】
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【図15】
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【図16】
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【図17】
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【図18】
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【図19】
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【図20】
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【図21】
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【図22】
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【図23】
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【図24A】
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【図24B】
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【図25A】
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【図25B】
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【図25C】
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【公表番号】特表2010−536555(P2010−536555A)
【公表日】平成22年12月2日(2010.12.2)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2010−521872(P2010−521872)
【出願日】平成20年8月20日(2008.8.20)
【国際出願番号】PCT/US2008/009910
【国際公開番号】WO2009/025821
【国際公開日】平成21年2月26日(2009.2.26)
【出願人】(509002327)ムーア ウォリス ノース アメリカ、 インコーポレーテッド (11)
【Fターム(参考)】