説明

基板の洗浄処理装置及び洗浄処理方法

【課題】断熱膨張によって生成される基板洗浄用の固体粒子の粒径を基板の表面状態などに応じて制御できるようにした洗浄処理装置を提供することにある。
【解決手段】基板を洗浄処理するための洗浄処理装置であって、
基板が供給されるチャンバ16と、断熱膨張させることで固体粒子を生成する流体をチャンバ内の基板に向けて供給するノズル体28と、ノズル体によって供給される固体粒子の粒径を制御する湿度制御手段36及び温度制御手段37を具備する。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
この発明は流体を断熱膨張させることで生成される固体粒子によって基板を洗浄処理する洗浄処理装置及び洗浄処理方法に関する。
【背景技術】
【0002】
たとえば、半導体装置や液晶表示装置の製造工程においては、半導体ウエハやガラス板などの基板に回路パターンを形成する工程がある。回路パターンを形成する場合、成膜された基板にレジストを塗布してから露光し、露光後に現像液によって現像処理してからエッチング液でエッチング処理することで、基板の表面に回路パターンを精密に形成する。
【0003】
基板に回路パターンを形成したならば、その基板の表面に付着残留するレジスト膜やレジスト残渣などの有機物を剥離液によって除去する。剥離液によって有機物を除去したならば、その基板の板面を洗浄液で洗浄処理するということが繰り返して行われる。
基板を洗浄処理する場合、通常、洗浄液が用いられる。基板の洗浄効果を高めるには、薬液などの有害な洗浄液が用いられることがある。有害な洗浄液を用いると、洗浄後における洗浄液の処理に高価な設備や多くの手間が掛かるということがある。
【0004】
そこで、最近では基板の洗浄を微細な固体粒子を用いて行なうことが実用化されている。固体粒子による基板の洗浄は、たとえば特許文献1に示されているように、液体の二酸化炭素をノズルから噴射させて断熱膨張させることで、粉末状の固体粒子を生成する。そして、この固体粒子を基板の被洗浄面に吹き付けることで、その被洗浄面を洗浄するようにしている。
【特許文献1】特開2003−275695号公報
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0005】
基板には、その種類によって被洗浄面に形成される回路パターンの形状が異なる。たとえば、微細な凹凸が多く形成されている場合や比較的平坦な場合などがある。被洗浄面に固体粒子を吹き付ける場合、その固体粒子の粒径によって被洗浄面が受けるエネルギが異なる。
【0006】
そのため、微細な凹凸が多く形成されている被洗浄面を洗浄する場合には、固体粒子の粒径を小さくして被洗浄面に与える衝撃を小さくすることで、被洗浄面を損傷させることなく洗浄できるようにしたり、比較的平坦な被洗浄面の場合には固体粒子の粒径を大きくして被洗浄面の洗浄を効率よく確実に行なえるようにするなどのことが要求される。
【0007】
しかしながら、基板の被洗浄面を固体粒子で洗浄する従来の洗浄技術では、被洗浄面に吹き付けられる固体粒子の粒径を制御ということが行なわれていなかった。そのため、基板を被洗浄面の凹凸などの状態に応じて損傷させることなく、確実かつ効率よく洗浄することができないということがあった。
【0008】
この発明は、基板に吹き付けられる固体粒子の粒径を制御することができるようにした洗浄処理装置及び洗浄処理方法を提供することにある。
【課題を解決するための手段】
【0009】
この発明は、基板を洗浄処理するための洗浄処理装置であって、
上記基板が供給されるチャンバと、
断熱膨張させることで固体粒子を生成する流体を上記チャンバ内の基板に向けて供給する流体供給手段と、
この流体供給手段によって供給される上記固体粒子の粒径を制御する粒径制御手段と
を具備したことを特徴とする洗浄処理装置にある。
【0010】
上記粒径制御手段は、上記チャンバ内の湿度を制御することが好ましい。
【0011】
上記粒径制御手段は、上記チャンバ内の温度を制御することが好ましい。
【0012】
上記流体供給手段から上記基板に向けて供給される上記固体粒子の粒径を検出する検出手段を有し、
上記粒径制御手段は上記検出手段の検出に基いて制御されることが好ましい。
【0013】
上記流体供給手段は、上記流体が供給されるノズル体と、このノズル体から噴射された流体が周囲に拡散するのを制限する筒状の拡散防止部材とによって構成されていることが好ましい。
【0014】
上記チャンバ内には、上記基板の被処理面との間に空間部を形成するカバーが上記被処理面に対向して配置されていて、
上記流体供給手段は上記空間部に上記流体を供給するよう配置されていることが好ましい。
【0015】
この発明は、基板を洗浄処理するための洗浄処理方法であって、
上記基板をチャンバ内に供給する工程と、
断熱膨張させることで固体粒子を生成する流体を上記チャンバ内に供給された基板に向けて供給する工程と、
上記基板に供給される上記固体粒子の粒径を制御する工程と
を具備したことを特徴とする洗浄処理方法にある。
【0016】
上記基板に向けて供給される固体粒子の粒径を測定する工程を有し、
その測定に基いて上記基板に供給される上記固体粒子の粒径を制御することが好ましい。
【発明の効果】
【0017】
この発明によれば、基板に向けて供給される固体粒子の粒径を制御するため、基板を、その被洗浄面の凹凸形状などの状態に応じた粒径の固体粒子によって確実に洗浄することが可能となる。
【発明を実施するための最良の形態】
【0018】
以下、この発明の実施の形態を図面を参照して説明する。
図1乃至図4はこの発明の第1の実施の形態を示し、図1は基板Wの洗浄処理装置1の概略的構成を示す。この洗浄処理装置1はカセットステーション2を有する。このカセットステーション2はカセット3に未処理の基板Wが収容されたローダ部4と、後述するように処理液によって処理された基板Wをカセット3に回収するアンローダ部5とを備えている。
【0019】
なお、上記洗浄処理装置1では基板Wとして半導体ウエハや液晶表示装置用のガラス板などを処理することが可能であって、この実施の形態では半導体ウエハを処理する例で説明している。
【0020】
上記カセットステーション2には受け渡しユニット7が隣接して設けられている。この受け渡しユニット7には一対のスピン洗浄処理ユニット8が隣接して設けられている。つまり、カセットステーション2、受け渡しユニット7及びスピン洗浄処理ユニット8は一列に配置されている。
【0021】
上記受け渡しユニット7はロボット装置11を備えている。このロボット装置11は図1に矢印で示すX、Y及びθ方向に駆動可能となっていて、処理前の基板Wと処理後の基板Wを別々に扱う一対のアーム12a,12bを有する。そして、一方のアーム12aによって上記ローダ部4のカセット3に収容された未処理の基板Wを取り出して一対のスピン洗浄処理ユニット8に交互に供給する。各アーム12a,12bは伸縮駆動される。第2のアーム12bの動きを図2に鎖線で示す。
【0022】
スピン洗浄処理ユニット8に供給された基板Wはここで洗浄処理される。洗浄処理された基板Wは上記ロボット装置11の他方のアーム12bによって取り出された後、上記アンローダ部5のカセット3に収容される。
【0023】
上記スピン処理ユニット8は図3に示すようにチャンバ16を有する。このチャンバ16の一側壁にはシャッタ17によって開閉される出し入れ口18が形成され、底部には内部の雰囲気や処理液を排出する複数の排出管19が接続されている。排気管19は図示しない排気ポンプに接続されていて、チャンバ1内の雰囲気が排出されるようになっている。なお、排気管19には上記排気ポンプによる排気量を制御するダンパ21が開度調整可能に設けられている。
【0024】
上記チャンバ16内には駆動源22によって回転駆動される回転テーブル23が設けられている。この回転テーブル23は周囲がカップ体24によって覆われている。このカップ体24は下部カップ24aと、この下部カップ24aに対して上下動可能に設けられた上部カップ24bとからなる。なお、上記排出管19は上記カップ体24の内部に連通するよう設けられている。
【0025】
上記回転テーブル23には、基板Wの下面を支持する支持ピン25及び支持ピン25によって支持された基板Wの外周面に係合する係合ピン26が設けられている。それによって、上記出し入れ口18から回転テーブル23に供給された基板Wは、この回転テーブル23と一体に回転するようになっている。
【0026】
回転テーブル23に保持された基板Wの上方には、流体供給手段としてのノズル体28が配設されている。このノズル体28は配管29によって洗浄用流体としての高圧炭酸ガスを貯蔵した供給ボンベ31に接続されている。上記配管29には開閉制御弁32が設けられている。この開閉制御弁32及び上記回転テーブル23の駆動源22は図4に示す制御装置34によって開閉制御されるようになっている。
【0027】
上記開閉制御弁32が開放されると、供給ボンベ31の高圧炭酸ガスが上記ノズル体28から基板Wの上面である、被洗浄面に向けて噴射される。ノズル体28から噴射された炭酸ガスは断熱膨張して温度が急激に−80度付近まで低下する。それによって、微細な粒径の固体粒子(ドライアイス)が生成される。そして、その固体粒子が基板Wに吹き付けられると、その基板Wの上面、つまり回路パターンが形成された被洗浄面が洗浄されることになる。
【0028】
炭酸ガスの断熱膨張によって生成される固体粒子は水の凝固温度よりも低いから、蒸気圧の関係で固体粒子の近くの水分が結露して凝固し、固体粒子の粒径が大きくなる。したがって、固体粒子が生成されるチャンバ16内の湿度や温度によって固体粒子の粒径を制御することが可能となる。
【0029】
上記チャンバ16には、固体粒子の粒径を制御する粒径制御手段としてチャンバ16内の湿度を制御する湿度制御手段36と、温度を制御する温度制御手段37が設けられている。湿度制御手段36は上記チャンバ16内に乾燥気体としての窒素ガスを供給する乾燥気体供給管38を有する。この乾燥気体供給管38はチャンバ16の外部に導出され、流量制御弁39を介して図示しない窒素ガスの供給源に接続されている。
【0030】
上記チャンバ16内の湿度は湿度計41によって測定される。湿度計41によって測定された湿度は図4に示すように上記制御装置34に入力される。制御装置34は湿度計41が測定した湿度に基いて上記流量制御弁39の開度を制御する。それによって、チャンバ16内の湿度が制御されるから、その湿度に応じて上記ノズル体28から炭酸ガスを噴射することで生成される固体粒子の粒径を制御することができるようになっている。
【0031】
上記温度制御手段37は、上記ノズル体28の先端部に投光面を向けて配置された加熱手段としての投光器44を有する。この投光器44は上記ノズル体28から高圧炭酸ガスが噴射されることで生成される固体粒子に熱線を照射する。
【0032】
それによって、チャンバ16内の固体粒子が生成される部分の雰囲気の温度が上昇するから、断熱膨張によって生成される固体粒子の粒径を変えることができる。上記投光器44は上記制御装置34によってその投光面から出力される熱線の強度が制御されるようになっている。
【0033】
上記ノズル体28から高圧炭酸ガスが噴射されることで生成された固体粒子の粒径は検出手段としての粒径検出器45によって検出される。この粒径検出器45は上記ノズル体28から吹き出される上記固体粒子に向けてレーザ光Lを出力するレーザ発振器46と、固体粒子で散乱するレーザ光L(散乱光)を検出する受光器47を有する。レーザ発振器46は上記制御装置34によって発停が制御される。
【0034】
上記受光器47による受光信号は上記制御装置34に出力される。制御装置34は上記受光器47による受光信号によってチャンバ16内で生成された固体粒子の粒径を算出する。
【0035】
制御装置34は、算出された固体粒子の粒径を予め設定された設定値と比較し、その比較に基いて上記湿度制御手段36又は上記温度制御手段37の少なくともどちらか一方を制御する。それによって、上記チャンバ16内の湿度若しくは固体粒子が生成される雰囲気の温度を制御し、その固体粒子の粒径を上記制御装置34で設定された大きさに制御して基板Wの被洗浄面に吹き付けるようになっている。
【0036】
このように構成された洗浄処理装置1によって基板Wの被洗浄面を洗浄処理する場合、まず、チャンバ16内の回転テーブル23に基板Wを供給する。ついで、回転テーブル23を回転させるとともに、開閉制御弁32を開放して供給ボンベ31の高圧炭酸ガスをノズル体28から基板Wに向けて噴射させる。
【0037】
ノズル体28から噴射された高圧炭酸ガスは断熱膨張して急激に温度低下する。それによって、チャンバ16内には固体粒子(ドライアイス)が生成される。このようにして生成された固体粒子は、高圧炭酸ガスが上記ノズル体28から噴射されるときの圧力によって基板Wの上面である、被洗浄面に向かって吹き付けられる。
【0038】
固体粒子が生成されてから基板Wに向かう途中で、固体粒子の粒径は粒径検出器45によって検出される。検出された固体粒子の粒径は制御装置34に予め設定された設定粒径と比較される。この設定粒径は基板Wの種類に応じて設定される。
【0039】
たとえば、基板Wの被洗浄面が比較的平坦な場合には大きな粒径の固体粒子に設定し、基板Wの被洗浄面に比較的強い衝撃力を与えて洗浄するようにした方が洗浄効果を上げることができる。基板Wの被洗浄面に形成された回路パターンに微細な凹凸が多い場合には、固体粒子の粒径を小さくして基板Wの被洗浄面に与える衝撃力を小さくすることで、回路パターンを損傷させずに洗浄することが可能となる。
【0040】
すなわち、制御装置34に設定される固体粒子の粒径は、基板Wの種類、たとえば基板Wに形成される回路パターンの形状等に応じて設定され、その設定粒径の値は実験によって予め求めておくことができる。
【0041】
上記粒径検出器45によって検出された固体粒子の粒径と、制御装置34に設定された設定粒径が異なる場合、制御装置34は湿度制御手段36又は温度制御手段37の少なくともどちらか一方を制御し、ノズル体28から高圧炭酸ガスが噴射されることによって生成される固体粒子の粒径を制御する。
【0042】
たとえば、湿度制御手段36による固体粒子の粒径の制御は次のように行なわれる。粒径検出器45によって検出される固体粒子の粒径が制御装置34に設定された設定粒径よりも大きい場合には、チャンバ16に供給される窒素ガスの量が増大するよう、制御装置34によって湿度制御手段36の流量制御弁39の開度が制御される。
【0043】
それによって、チャンバ16内の湿度が低下し、断熱膨張によって生成される固体粒子に付着凝固する水分が減少するから、基板Wに吹き付けられる固体粒子の粒径を小さくすることができる。
【0044】
逆に、粒径検出器45によって検出される固体粒子の粒径が制御装置34に設定された設定粒径よりも小さい場合には、流量制御弁39の開度を小さくしてチャンバ16に供給する窒素ガスの量を減少させる。それによって、チャンバ16内の湿度が高くなるから、断熱膨張によって生成される固体粒子に付着凝固する水分が多くなるため、基板Wに吹き付けられる固体粒子の粒径を大きくすることができる。
【0045】
上記ノズル体28によって生成される固体粒子の粒径を温度制御手段37によって制御する場合には、制御手段34によって温度制御手段37の投光器44から出力される熱線の強さを粒径検出器45が検出する固体粒子の粒径に応じて制御する。測定された粒径が設定粒径よりも大きな場合には熱線を強くする。それによって、チャンバ16内の高圧炭酸ガスが断熱膨張して固体粒子が生成される部分の雰囲気の温度が上昇するから、その雰囲気の温度上昇に応じて固体粒子の粒径が小さくなる。
【0046】
逆に、測定された粒径が設定粒径よりも小さな場合には投光器44の熱線を弱くする。それによって、高圧炭酸ガスが断熱膨張して固体粒子が生成される部分の雰囲気温度が低下するから、その温度低下に応じて固体粒子の粒径が大きくなる。つまり、固体粒子が生成される雰囲気の温度を制御すれば、その温度に応じて固体粒子の粒径を制御することが可能となる。
【0047】
固体粒子の粒径の制御は、制御装置34によって湿度制御手段36と温度制御手段37の両方を同時に制御して行うようにしてもよく、2つの手段36,37を同時に制御して粒径を制御すれば、その制御を迅速に行なうことが可能となる。
【0048】
このように、ノズル体28から高圧炭酸ガスを噴射することで生成される固体粒子の粒径が基板Wの種類に応じて制御装置34によって設定された設定粒径になるよう制御されれば、基板Wの被洗浄面を損傷させるようなことなく確実に、しかも効率よく洗浄処理することが可能となる。
【0049】
上記一実施の形態では、固体粒子の制御を、粒径検出器45により検出された粒径に基いて行なうようにしたが、チャンバ16に供給する窒素ガスの量、つまりチャンバ16内の湿度と固体粒子の粒径との関係や、投光器44から出力される熱線の光量と固体粒子の粒径との関係を予め測定しておき、基板Wの種類に応じて要求される粒径に応じてチャンバ16内の湿度や熱線の光量を設定するようにしてもよい。つまり、粒径検出器45を用いずに、固体粒子の粒径を制御することも可能である。
【0050】
温度制御手段37は高圧炭酸ガスが断熱膨張する部分の雰囲気に向けて投光器44の熱線を照射してチャンバ16内の雰囲気を部分的に温度制御したが、チャンバ16内に温風を供給し、チャンバ16内の雰囲気全体の温度を制御するようにしてもよい。また、温度制御手段37によって温度制御される雰囲気の温度を温度センサで検出し、その検出に基いて投光器による熱線の強さを制御するようにしてもよい。
【0051】
図5はこの発明の第2の実施の形態を示す。この実施の形態はノズル体28によって生成された固体粒子が周囲に拡散するのを拡散防止部材51によって制限するようにしている。
【0052】
上記拡散防止部材51は円錐状の筒状部52と、この筒状部52の下端に設けられた平板状のガイド部53を有する。上記ノズル体28は上記筒状部52の上端に取着され、上記ガイド部53は回転テーブル23に保持された基板Wの被処理面に所定の間隔で平行に離間対向するようになっている。上記筒状部52の周壁には窒素ガスを供給する乾燥気体供給管38が接続されている。
【0053】
このような構成によれば、ノズル体28によって生成された固体粒子は、拡散防止部材51の筒状部52によって周囲に拡散されるのが制限されながら基板Wの被処理面に向かって吹き付けられ、上記筒状部52の下端に設けられたガイド部53に沿って基板Wの被処理面の中心部から径方向外方に向かって流れる。
【0054】
そのため、ノズル体28によって生成された固体粒子は基板Wの被洗浄面に効率よく作用することになるから、基板Wの洗浄効率を向上させることができる。
【0055】
しかも、わずかな量の窒素ガスによって固体粒子が生成される筒状部52内の雰囲気の湿度を確実かつ迅速に制御することが可能となるから、湿度による固体粒子の粒径の制御を精密に、しかも経済的に行なうことが可能となる。
【0056】
図6はこの発明の第3の実施の形態を示す。この実施の形態は図5に示す第2の実施の形態の変形例を示す拡散防止部材51Aであって、この拡散防止部材51Aは円錐状の筒状部52だけによって構成されている。このような構成であっても、少ない窒素ガスの使用量によって固体粒子が生成される筒状部52内の雰囲気の湿度を確実に制御することができる。
【0057】
図7はこの発明の第4の実施の形態であって、この実施の形態は回転テーブル23に保持される基板Wの被洗浄面に所定の間隔で離間対向するカバー55を有する。それによって、カバー55と基板Wの間に空間部56が形成される。
【0058】
上記カバー55にはノズル体28と乾燥気体供給管38が先端を上記空間部56に突出させて接続されている。それによって、ノズル体28から上記空間部56に高圧炭酸ガスが噴射されることで、この空間部56で固体粒子が生成されるとともに、空間部56の湿度が乾燥気体供給管38によって供給される窒素ガスによって制御される。
【0059】
このように、カバー55によって基板Wの上方に固体粒子が生成される空間部56を形成すれば、固体粒子が拡散するのを制限できるばかりか、わずかな量の窒素ガスによって上記空間部56の湿度を制御することができるから、基板Wの洗浄を効率よく確実に行なうことが可能となる。
【0060】
図8は、この発明の第5の実施の形態を示すノズル体28Aの変形例である。このノズル体28Aは内管61と外管62との二重管構造になっていて、内管61には高圧炭酸ガスが供給され、外管62には窒素ガスが供給される。
【0061】
それによって、内管61から噴射される高圧炭酸ガスが断熱膨張して固体粒子が生成され、外管62から噴射される窒素ガスによって固体粒子が生成される領域が覆われるから、固体粒子が生成される領域の湿度を、外管62から噴射される窒素ガスによって確実に、しかもわずかな量の窒素ガスによって制御することが可能となる。
【0062】
図9はこの発明の第6の実施の形態を示すノズル体28Bの変形例である。このノズル体28Bは中心管64、中間管65及び外管66の三重管構造になっている。中心管64には基板表面をエッチング処理する、たとえばフッ素ガスなどの機能性ガスが供給され、中間管65には高圧炭酸ガスが供給される。そして、外管66には窒素ガスが供給される。
【0063】
このような構成のノズル体28Bによれば、図8に示すノズル体28Aと同様、固体粒子が生成される雰囲気の湿度を、わずかな使用量の窒素ガスによって確実に制御することが可能となるばかりか、中心管64から機能性ガスを供給することで、基板Wに対して固体粒子による洗浄処理以外の処理、たとえばエッチングなどの処理を行なうことが可能となる。
【0064】
なお、中心管64に供給される機能性ガスはフッ素ガスに限られず、基板Wに対してエッチング以外の処理を行なう他の種類のガスであってもよい。
上記各実施の形態において、ノズル体を図示しないアームに取付け、このアームを回動させることで、上記ノズル体を基板の径方向に移動させながら基板を処理するようにしてもよい。
【0065】
また、断熱膨張して固体粒子を生成する洗浄用流体として高圧炭酸ガスを挙げて説明したが、高圧炭酸ガスに代わり、高圧のメタンガス、ブタンガスなどであってもよく、更には高圧ガスに代わり液体窒素を用いてもよい。
【図面の簡単な説明】
【0066】
【図1】この発明の第1の実施の形態を示す洗浄処理装置の概略的構成図。
【図2】ロボット装置の平面図。
【図3】スピン洗浄ユニットが設けられたチャンバの断面図。
【図4】制御系統を示すブロック図。
【図5】この発明の第2の実施の形態を示すノズル体が設けられる拡散防止部材の断面図。
【図6】この発明の第3の実施の形態を示すノズル体が設けられる拡散防止部材の断面図。
【図7】この発明の第4の実施の形態を示すノズル体が設けられるカバーの断面図。
【図8】この発明の第5の実施の形態を示すノズル体の一部断面した図。
【図9】この発明の第6の実施の形態を示すノズル体の一部断面した図。
【符号の説明】
【0067】
16…チャンバ、23…回転テーブル、24…カップ体、28…ノズル体、34…制御装置、36…湿度制御手段、37…温度制御手段、38…乾燥気体供給管、41…湿度計、44…投光器、45…粒径検出器、46…レーザ発振器、47…受光器。

【特許請求の範囲】
【請求項1】
基板を洗浄処理するための洗浄処理装置であって、
上記基板が供給されるチャンバと、
断熱膨張させることで固体粒子を生成する流体を上記チャンバ内の基板に向けて供給する流体供給手段と、
この流体供給手段によって供給される上記固体粒子の粒径を制御する粒径制御手段と
を具備したことを特徴とする洗浄処理装置。
【請求項2】
上記粒径制御手段は、上記チャンバ内の湿度を制御することを特徴とする請求項1記載の洗浄処理装置。
【請求項3】
上記粒径制御手段は、上記チャンバ内の温度を制御することを特徴とする請求項1記載の洗浄処理装置。
【請求項4】
上記流体供給手段から上記基板に向けて供給される上記固体粒子の粒径を検出する検出手段を有し、
上記粒径制御手段は上記検出手段の検出に基いて制御されることを特徴とする請求項1記載の洗浄処理装置。
【請求項5】
上記流体供給手段は、上記流体が供給されるノズル体と、このノズル体から噴射された流体が周囲に拡散するのを制限する筒状の拡散防止部材とによって構成されていることを特徴とする請求項1記載の洗浄処理装置。
【請求項6】
上記チャンバ内には、上記基板の被処理面との間に空間部を形成するカバーが上記被処理面に対向して配置されていて、
上記流体供給手段は上記空間部に上記流体を供給するよう配置されていることを特徴とする請求項1記載の洗浄処理装置。
【請求項7】
基板を洗浄処理するための洗浄処理方法であって、
上記基板をチャンバ内に供給する工程と、
断熱膨張させることで固体粒子を生成する流体を上記チャンバ内に供給された基板に向けて供給する工程と、
上記基板に供給される上記固体粒子の粒径を制御する工程と
を具備したことを特徴とする洗浄処理方法。
【請求項8】
上記基板に向けて供給される固体粒子の粒径を測定する工程を有し、
その測定に基いて上記基板に供給される上記固体粒子の粒径を制御することを特徴とする請求項7記載の洗浄処理方法。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【図6】
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【図7】
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【図8】
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【図9】
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【公開番号】特開2007−201374(P2007−201374A)
【公開日】平成19年8月9日(2007.8.9)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2006−21150(P2006−21150)
【出願日】平成18年1月30日(2006.1.30)
【出願人】(000002428)芝浦メカトロニクス株式会社 (907)
【Fターム(参考)】