説明

基板を分離並びに搬送する装置、及び、基板を分離並びに搬送する方法

【課題】本発明は、例えばソーラーウェハなどの盤状基板(3)を分離、偏向及び搬送することに関する。
【解決手段】液体内に基板スタック(5)の形状で、送り方向に相前後して順次配置された複数の盤状基板(3)を分離、偏向及び搬送する装置(1)であって、少なくとも2つの搬送ベルト(11、11’’)を含む垂直方向のベルトコンベア(9)を備え、ベルトコンベア(9)の搬送域(10)がスタック(5)の一方端の前方側(12)に前方側(12)と平行に配置されており、ベルトコンベア(9)は真空装置(16)を有し、スタック(5)のうち最前方の基板(3)が真空装置(16)によって少なくとも第1の搬送ベルト(11)に対して吸引可能であり、垂直方向のベルトコンベア(9)のうち少なくとも2つの搬送ベルト(11、11’’)が隣接する領域で相互に同一平面上に配置されている。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、DE 10 2006 011 870 B4に開示された技術を更に発展させたものであり、盤(ディスク)状で脆い基板を分離及び搬送する装置に関する。
【0002】
更に本発明は、基板スタック(積み重ね)の状態で与えられる基板を分離及び搬送する方法に関する。
【0003】
ここで、「基板」は盤状もしくは板状で、通例矩形である。各基板は、基板ブロックをソーイング処理して得られる。各基板は、ほぼ直線状の連続した縁を有し、各コーナーは直角、円形、または面取り形状とし得る。
【背景技術】
【0004】
「基板スタック」は、上下に重ねられたまたは横に並べて配置された複数の基板によって形成される。本発明では、基板面が水平なスタックを、水平に重ねられた基板の「水平置き」スタックと称し、基板面が垂直な場合を、並べて立てられた基板の「直立置き」スタックと称する。個々の基板は、ソーイング処理に必要な保持手段からすでに取り外され、相互に独立したフリーの状態で積み重ねられている。但し意図せず、前のソーイング処理の状況で、個々の基板が相互の面で付着したままのこともある。従ってその後の処理のためには、通常そのように積み重ねられた基板を分離する必要がある。つまり、直立状態にある基板スタックの端にある基板を、装置によって基板スタックから取り出し、次の処理工程に搬送しなければならない。
【0005】
基板スタック内における基板の「スタック方向」は、分離すべき基板の姿勢によって決まる。個々の基板は、それぞれの面が相互に隣接した状態で直立するように配置されている。基板面が正確且つ完全に隣接して配置された特別の場合、スタック方向は基板に垂直な面の方向と正確に対応し、正の方向が、次の基板がそこから分離されるべき側のスタック端の方を向いている。分離すべき次の基板がキャリア装置内に配置された「直立」基板スタックの右側に位置する場合、スタック方向は右矢印の方向である。
スタックの「送り方向」及び「搬送方向」は、スタック方向とほぼ一致する。
【0006】
「スタックの開始端」及び「スタックの前方側」は、分離すべき次の基板が位置する方の基板スタックの端を指す。これは、送り方向を向いた端である。但し、一般に「スタック端」と言う場合、スタックの開始端またはその対向端どちらを意味するのか明らかでない。
【0007】
ほぼ直角つまり直立に位置した基板スタックは、「キャリア装置」内に、各基板の一縁がキャリア装置に支持された状態で配される。キャリア装置は、例えばソーイング後及び/又は初期のソーイングされていない基板を保持プレート上に固定するのによく使われる接着剤の除去後に基板スタックを持ち上げ、分離を行う抜き出し(アンローディング)装置に搬送する。キャリア装置は、基板スタック全体を持ち上げるように、すなわち個々の基板がそれぞれ隣接して続くまたは前後する状態でほぼ直立するように設計されるのが好ましい。
【0008】
特に、基板が装填されたキャリア装置での搬送を簡単にするため、キャリア装置は、側方に相互に平行に配置され且つ送り方向に延びた2つのブラシストリップを装備可能であるのが好ましく、各基板はそれらのブラシストリップにより、場合によってはそれぞれが取り出されるまで、スタック内の所定位置に保持可能である。そのために、ブラシストリップは適切なヒンジ(蝶番)もしくは旋回手段によってキャリア装置に接続され、基板をキャリア装置に容易に装着可能とし、且つ各基板を、所望ならそれぞれが取り出されるまで、所定位置に確実に保持可能とされる。ブラシストリップのヒンジ性能または旋回性能に基づき、それらの保持機能は必要に応じて利用可能である。
【0009】
本発明によれば、「付着」とは、2つの基板間に作用し、それら2つの基板面が相互に接近した状態にあることから生じる力を意味する。本発明で述べる付着力は流体内で生じるため、2つの基板間に存在する流体容積を減少させることが必要であり、この減少は一般に、流体の排除及び/又は吸引による抽出によって達成できる。基板をできるだけ穏やか(丁寧)に取り扱うという本発明の目的に沿い、容積の減少は、流体もしくは液体の膜が基板間に残る程度にだけ行われる。
【0010】
「抜き出しもしくは分離装置」は、基板を基板スタックから抜き出すもしくは分離及び搬送する役割を果たす。ここで、基板スタックの一端に位置する基板が、抜き出しもしくは分離装置により吸引装置を用いて持ち上げられ、基板スタックから引き離されて分離され、次の処理もしくは搬送処理に送られる。抜き出し装置は、基板を基板スタックから分離するように位置変えする役割を果たし、「抜き出し」もしくは「分離」はそれぞれほぼ垂直方向に行われる。言い換えれば、分離すべき基板は、後の基板に対して基板の面方向にシフトすることで、上方に好ましくはキャリア装置の面にほぼ直角に、シフトもしくは引き離される。そのため、好ましくは、2つの基板間にせん断力だけが生じる。
【0011】
抜き出し方向に応じ、異なる大きさの異なる力が分離すべき基板及びスタック内にまだある基板に作用し、それらの力は特に、ちょうど抜き出されつつある基板に続く基板に作用する。
【0012】
基板スタックからの基板分離のため、基板スタックはキャリア装置と共に流体内に配置されるが、ここで「流体」とは、実質上液体の媒体を意味すると理解されるべきである。流体内に「流動装置」が設けられ、流体を基板スタックに対して、片側あるいは両側側方及び/又は下方あるいは上方からそれぞれ吹き付ける。この吹きつけは、流動が基板スタックへと向かい、その結果個々の基板の「吹き分け」が生じ、各基板間に距離が保たれるように行われる。これは、個々の基板間に流体が満たされた隙間が発生し、その隙間が流体緩衝クッションの機能を果たす。
【0013】
好ましい実施形態によれば、上記の吹き分けは、特に吹き分け領域に位置された超音波変換器など、追加の適切な手段によって支援可能である。この点は特に、相互に接した基板間の付着力が強く、支援がなければ、流体の進入が極めてゆっくりとしか生じない場合に有利である。
【0014】
WO 01/28745 A1 は、ディスク状基板の引き離し方法及び装置であって、分離が乾状態、つまり流体浴の外で行われる方法及び装置を開示している。基板の加湿は、ノズルによってのみ可能である。ロボット型の装置が、(真空ポンプなどで気体真空を能動的に発生させる)吸引装置を介して、引き離すべき基板を把持し、装置の振れ運動によって、基板が保持手段から引き離される。振れ運動は、異なる方向にも可能である。分離すべき基板の把持は、基板面の上方に配置され、ロボット型装置に固定された吸引装置によって行われる。基板を解放する際は、過圧状態の気体が吸引装置内に発生され、引き離された基板がロボット型装置から再び取り外し可能となる。
【0015】
DE 199 00 671 A1 は、特にウェハなど、ディスク状基板の引き離し方法及び装置を開示している。すなわち、ソーイング処理直後で相互に付着し、それぞれの一辺(縁)が保持装置にまだ固定されている基板を、高度に方向付けされた流体ジェットで相互に離れた状態にすることが提案されている。ウェッジ装置が、引き離すべき基板を保持装置から分離する役割を果たす。それと同時に、分離された基板が、吸引装置を有するグリッパアーム様の装置によって保持装置から取り出される。
【0016】
DE 697 22 071 T2 は、基板ブロックを各記憶(storage)エレメントにソーイングして得られたウェハを配置する装置を開示している。円形または矩形断面の基板を把持し、それらの基板をスタンド様の支持体に移送する取り扱い装置が提案されている。その際、数枚の基板が同時に持ち上げられ、分離された基板を受け取る配置領域に移送される。
【0017】
DE 199 04 834 A1 は、薄くて、脆く、ディスク状の各基板を引き離す装置を開示している。すでにソーイング処理された基板を含む基板ブロックが、流体の満たされたタンク内に位置される。その他の従来装置と対照的に、保持装置に固定されたままの基板を含む保持装置が垂直に配置され、分離すべき基板が流体の表面と平行に配されている。ウェッジ装置が基板を、ガラス板から離れた状態に引き離す。基板に近接して配置されたコンベアベルトが、引き離されて浮いた基板を搬送する役割を果たす。保持装置が常に同じ位置に維持され且つウェッジ装置に対し水平に移動されて各基板の引き離しを行うことを、押圧装置によって保証している。コンベアベルトの反対側に、分離された基板をスタンドに自動的に挿入する装置が設けられている。引き離す意図は、分離されたディスク状基板を保持装置から取り出した後積み重ね、所定の装置に挿入したり、またはそれぞれの上に直接及び隣接して配置することにある。
【0018】
EP 0 762 483 A1 も、特に平面状の基板を分離可能な装置を開示している。すでに分離されている基板がキャリア装置内に配され、各基板はそこにある間それぞれの面が接して位置している。相互の分離及び収納器内への移送のため、基板はプッシャー及び所望ならローラ及び/又は流体ジェットとの協働によってスタックから搬送され、この場合には、各基板が水平状態つまり横たわる状態にあることが必須である。上記の説明のように、各基板はそれぞれ横たわって重ねられた「水平置き」基板スタックの形状で配置されている。また上記文献は、把持及び搬送処理の全体を通じて気体真空が供給される吸引グリッパーで、基板と直接接触するつまり吸引グリッパーと基板面との間に保護流体膜を有さずに接触する吸引グリッパーを用いた分離も開示している。
【0019】
しかしながら、上記従来技術では、それぞれの基板の最大限穏やかな分離を実施するのは困難であり、多くの欠点が生じる。
【0020】
手動操作を取り除くことが望ましい場合、分離のための移動が必要となり、複雑な装置が要求される。しかし、基板は非常に脆くて薄い、板状であるため、通常のシステムのようなグリッパーで、各基板を無造作に持ち上げることはできない。従って、非常に精確で高感度の装置を設ける必要がある。
【0021】
そこで、上記した当該技術の状況では、それぞれの基板を吸引装置によって把持する装置がかなり開示されている。吸引装置が分離すべき基板の平坦面に向かって移動された直後、気体真空が吸引装置と分離すべき基板との間に真空ポンプによって発生され、その結果取り扱い装置に対する基板の吸い付けが可能となる。但し、低圧が強すぎると、分離すべき基板が破損する可能性があるため、注意を払わねばならない。
【0022】
少なくとも1mbarの真空もしくは低圧を2つの面の間で調整しなければならない上記の方法と対照的に、流体もしくは液体の膜を維持した本発明による付着は、真空よりもはるかに弱い、0.3と0.5bar 間の範囲、好ましくは約0.4bar の低圧によって得られる。
【0023】
その際、それぞれの基板に、取り扱い装置を接近させねばならない、つまり取り扱い装置と接触させねばならないことから、別の重要な問題点が生じる。いずれにせよ基板を取り扱い装置によって押し動かしてはならないため、精確な位置決めが必要である。しかし、その精確な位置決めは、次の理由により困難である。すなわち一方において、分離すべき基板を保持装置の領域内で位置決めするため、保持装置に相対的な動きが与えられることから、それに対応した自由度が保持装置自体に与えられている。その結果、分離すべき基板の損傷を引き起こす可能性のある公差が起こりえる。他方において、上記のような動きは通常流体内で行われるため、個々の装置の動き、特に基板へ向かう動きから生じる流動圧によって、基板の位置がずれたり、または破損さえ起きるリスクが存在する。
【0024】
また手動で行われる分離は、特に付着力が増加して、非常に薄くて脆い、ディスク状の基板が破損するリスクを含んでいる。
【0025】
本発明の改良の基本である DE 10 2006 011 870 B4 の分離装置は、液体が満たされた槽を有し、その中に分離すべき基板のスタックが配置され、スタックの各基板は槽内の液体から直接分離可能なシリコン板である。搬送域(スパン)が、コンベアラインの開始位置から液体内へと至り、スタックの前方側(スタック始端)から一定の距離だけスタック前方側(スタック始端)と平行に延びている。分離はベルトコンベアの搬送ベルトに基板を吸い付けることによって行われ、槽内に存在する液体が、通常の装置で使われている空気とは異なる、ベルトコンベアの真空装置によって吸引される。真空装置はベルトコンベアに設けられ、基板がベルトコンベアに当接し、真空装置の負圧によりベルトコンベアに固定されるまで、スタック中の最前方基板がその基板を取り囲む液体と一緒に吸引される。
【0026】
本装置で分離される各基板は、相互に接していてもよいし、あるいは相互に離れてスタックを形成していてもよく、各基板は常時相互に且つベルトコンベアの搬送域と平行に配置されている。搬送ベルトに固定された基板は、搬送ベルトと一緒に移動され、スタックの前方側と平行にスタックから離れて搬送される。搬送ベルトは、定速または変速で、連続的にまたはペース制御しながら駆動可能である。ペース制御駆動の場合には、例えば搬送域の前方に真空装置の圧力センサーまたはエレクトリックアイとして配置可能なセンサーによって、基板及び/又は搬送ベルトの位置を検出する必要がある。連続駆動の場合には、取り上げ位置で搬送ベルト上に基板が存在しないことをセンサーが検出すると、ベルトコンベアが停止可能であるか、もしくは停止されねばならない。基板が取り上げ位置に来ると、ベルトコンベアが再始動される。
【0027】
ベルトコンベアは水平または垂直のコンベアとして設計可能であり、もしくは両方の搬送方向を組み合わせてもよい。搬送ラインの傾斜に応じ、基板と搬送ベルトとの間で充分な摩擦力が得られるように、基板に作用する力で基板を搬送ベルトに対して押圧する必要がある。この押圧は例えば、真空装置で吸引することで、または支持ベルトや支持ローラで押し付け、基板をそれらと搬送ベルトとの間に挟持することによって行える。つまり、板状の物体を、スタック内の直立した向きから、搬送ラインの終端における横たわる向きに移すことができる。
【0028】
好ましい実施形態において、ベルトコンベアは垂直コンベアであり、分離すべき板状の基板をスタック中の直立した向きから受け取り、その基板を分離して、直立した向きのままスタックから垂直方向に、好ましくは垂直上方に搬送する。ベルトコンベアの搬送ラインは、後段に配置された幾つかの搬送ベルトを具備可能であり、スタックから引き出しを行う少なくとも第1の搬送ベルトは、基板を吸引するための真空装置を有する。搬送ベルトが、並設されて配置され協働する幾つか個々の搬送ベルトによって形成される場合も、好ましい実施形態から除外されるべきでない。搬送ラインが後段に配置された幾つかの搬送ベルトを有する場合、それらの搬送ベルトは共通に駆動可能である。あるいは、搬送ラインの複数の搬送ベルトが、個々の駆動装置を備えることもできる。そのようにすれば、異なるベルト速度を用いて各基板を離したり、または前段の搬送ベルトを一時的に停止させることで、搬送されている板状の基板間により長い距離を与えられる。
【0029】
別の有利な実施形態において、搬送ベルトは非直線状の進路を有する。非直線状の進路は、搬送ベルトを湾曲した経路に沿って案内すること、または後段に配される幾つかの搬送ベルトを、角度を付けて配置することで得られる。
【0030】
有利な構成として、少なくとも1つの搬送ベルト、好ましくはベルトコンベアの搬送ラインの始めに位置するスタックからの引き出し搬送ベルトが、ペース制御駆動される。このことは、スタックからの引き出し搬送ベルトが、基板の吸引中搬送域と対面する基板面の上側をスクラッチせず、特に対象物が脆い場合に、その面を損傷しないという利点をもたらす。分離装置の搬送ベルトは、搬送ベルトに対して基板が吸引されない限り静止したままである。基板が搬送ベルトに当接してそこに付着すると、ベルトコンベアの真空装置のセンサーが搬送ベルトを始動させ、基板は搬送ベルトと相対的な動きを生じることなく搬送ベルトと共に運ばれる。
【0031】
分離装置の別の有利な実施形態では、少なくとも1つの搬送ベルト、特にスタックからの引き出し搬送ベルトが、少なくとも1つの領域において、基板を搬送ベルトに吸引及び固定するための所定の孔パターンを有する。パターン全体は、円形でなくてもよく、また相互に接続されていてもよい1つまたは幾つかの孔を有することができる。所定の孔パターンは基板に応じ、その孔が基板で完全に覆われるように設計されるのが好ましい。搬送ベルトは、上記のような孔パターンをその周回に沿って幾つか有することができ、その場合孔パターンは相互に同じ距離で配置されるのが好ましい。スタックからの引き出し搬送ベルトで基板を受け取るために、ベルトコンベアの孔パターンはスタックの前方側に隣接して位置されてから停止され、スタックがその駆動装置で孔パターンに向かって移動され、搬送ベルトが停止している間に基板が吸引される。真空装置を制御するセンサーで基板が認識されるまで、ベルトコンベアの真空装置は消勢状態に維持可能である。基板を搬送ベルトから解放するために、ベルトコンベアの真空装置は搬送ラインの領域内で動作を停止し、それにより基板は簡単に載置また移送可能である。
【0032】
DE 10 2006 011 870 B4 の好ましい実施形態では、ベルトコンベアが、板状の物体を配向及び/又は偏向させるための案内要素で、板状の物体が真空によって搬送ベルトに保持されていない状態になると直ちにその物体に作用する案内要素を有する。案内要素の設計に応じ、板状の物体は案内要素によってベルトコンベア上の位置に保持したり、搬送ベルト上で向き変えしたり、または搬送ベルトから離れるように案内可能である。
【0033】
分離装置の更なる好ましい実施形態では、搬送域の領域内に分離手段が配置され、この分離手段が、搬送域の最も近くに位置する基板のスタックへの付着を防止する。分離手段は、スタック中の最前方の基板を、当該基板の後方に位置する基板に対して、例えば向きを変えることができ、必要なら分離も可能である。サブエリアで付着している基板の分離は、接触または非接触の操作で行える。分離は例えば、搬送域の最も近くに位置する少なくとも2つの板状基板に作用する機械的なマニピュレータまたは流体の流動手段によって実施可能である。
【0034】
DE 10 2006 011 870 B4 に開示された、板状の基板をベルトコンベアにより、直立配置のスタックから個々に提供する方法においては、ベルトコンベアが単数または複数の搬送ベルトを備え、その搬送域はスタックの前方側にスタックの前方側と平行に配置されると共に、搬送域の方向にスタックを移動する駆動装置を備えており、さらにベルトコンベアが真空装置を有し、その真空装置によってスタック中の最上(最前方)の基板が少なくとも1つの第1の搬送ベルトに対して吸引可能であり、その基板の分離が次の工程で行われる:
(A)シリコン板からなる板状基板のスタックを、ベルトコンベアの搬送域の前方で、液体を収容した槽内に入れる;
(B)第1の搬送ベルトの所定の孔パターンを、槽内にスタックの前方側に隣接して位置させる;
(C)スタックを第1の搬送ベルトの方向に、吸引位置へと移動する;
(D)第1の搬送ベルトに近接した基板の吸引位置及び槽内における基板のスタックからの分離位置を検出する;
(E)槽内の基板を、真空によって第1の搬送ベルトの孔パターンに対して吸引する;
(F)吸引された基板を検出し、第1の搬送ベルトの搬送シーケンスをトリガーする;
(G)搬送ベルトによって基板を槽から外へ移動し、ベルトコンベアによる搬送中にスタックの前方側に対して基板を旋回させる;
(H)対象物(基板)を、第1の搬送ベルトから引き離して分離する;
(I)搬送ベルトの搬送シーケンスが終了したら、スタックの前方側に対して第1の搬送ベルトの所定の孔パターンを位置決めする;及び
(J)スタックが完全に分離されるまで、上記工程(C)から(I)を繰り返す。
【0035】
DE 10 2006 011 870 B4 に開示された方法の最適な変形例では、搬送ベルトに最も近接した基板がその吸引位置で検出されると、真空装置が付勢される。
【0036】
上記した方法の有利な別の実施形態では、第1の搬送ベルトに対して吸引された基板がスタックの前方側から、第1の搬送ベルトに続く第2の搬送ベルトへ搬送され、第2の搬送ベルトは第1の搬送ベルトよりも小さい傾斜角を有し、対象物は第2の搬送ベルト上に移されて更に搬送される。
【0037】
別の好適な処理シーケンスによれば、対象物が第2の搬送ベルトに移されると、真空装置が消勢される。
【0038】
以上、DE 10 2006 011 870 B4 に開示された技術のうち、本発明で改良しなければならなかった特性について説明した。分離処理に関する補足の情報並びに詳細な説明については、図1及び図1の下記の説明を参照のこと。本技術によれば、スタック状態で与えられた各基板は比較的穏やかに、自動的に分離可能である。しかしながら、欠点として、合計3個の搬送ベルトを用いているため構造的に複雑であり、またベルトコンベアの案内要素によって搬送中の基板が損傷を生じるリスクがある。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0039】
【特許文献1】独国特許発明第102006011870号明細書
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0040】
従って本発明の目的は、薄くて脆い、積み重ね状態にある基板のほぼ損傷を伴わない取り出しを、比較上著しく低い機器的負担で可能とする改良された装置、その改良された装置を用いた方法を提供する。
【課題を解決するための手段】
【0041】
本発明で必要な構成要素並びにそれらの動作モードについては、DE 10 2006 011 870 B4 に記載された関連技術に関する説明を、参照することで明らかとなろう。そのため、当該関連技術と比べた場合の本発明における相違点だけを、以下説明する。
【0042】
上記の目的は本発明によれば、請求の範囲の第1項に記載の改良装置、並びに請求の範囲の第7項に記載の、改良装置を用いた方法を用いることで達成される。
【0043】
本発明は、液体内に基板スタックの形状で、送り方向に相前後して順次配置された複数の盤状基板を分離、偏向及び搬送する装置であって、少なくとも2つの直接隣接して配置された搬送ベルトを含む垂直方向のベルトコンベアを備え、前記ベルトコンベアの搬送域が前記スタックの一方端の前方側に前方側と平行に配置されており、前記ベルトコンベアは真空装置を有し、前記スタックのうち最前方の基板が前記真空装置によって少なくとも第1の搬送ベルトに対して吸引可能であり、垂直方向のベルトコンベアのうち少なくとも2つの搬送ベルトが隣接する領域で相互に同一平面上に配置されている装置に係わる。本発明によれば、前記第1の搬送ベルトと同一平面上に配置された第2の搬送ベルト領域の長さが、垂直の搬送方向において基板の長さの少なくとも1/3に対応しており、前記第2の搬送ベルトはその同一平面領域に続く2つの搬送区間を備えている。
【0044】
DE 10 2006 011 870 B4 に記載された装置と比べた最大の相違は、特に吸引バンドと平行に配置された搬送ベルトを含む支持バンドなど、前述した案内要素の全てを省略可能なことである。
【0045】
前述したように、DE 10 2006 011 870 B4 の好ましい実施形態では、基板と搬送ベルトとの間に充分な摩擦力を発生させるために、基板に対して作用する力で基板を搬送ベルトに対して押圧する必要がある。従って、基板を効果的に挟持し、送り方向と反対の方向に落下しないように固定するため、吸引バンドもしくはその搬送ベルトと平行に配置された支持バンドもしくは支持ベルトを使用することが特に提案されている。
【0046】
本発明によれば、驚くべきことに、真空によって取り出され吸引バンドの第1の搬送ベルトに固定された基板は、取り出し方向に沿って第1の搬送ベルトに直接続く運搬バンドの第2の搬送ベルト上への引渡し中も、ベルトコンベアに確実に付着したままであること、及び基板は送り方向と反対の方向に落下しないように保護されることが判明した。前述したように本発明によれば、吸引バンドの一部である第1の搬送ベルトには、少なくとも1mbarの範囲の真空でなく、例えば0.3と0.5bar の間の値、好ましくは約0.4bar というより弱い負圧が与えられる。こうした弱い負圧は、基板に作用して所望の付着力を形成する力を減少させ、各基板の表面と搬送ベルトとの間に流体膜または液膜が維持されるのを可能とする。
【0047】
他方、DE 10 2006 011 870 B4 に開示された装置の運搬バンドで構成された第2の搬送ベルトは、吸引バンドの搬送ベルトに直接続いているが、垂直方向の基板面に対して線接触するだけの領域しか与えず、付着力を形成するのに不十分なため、基板を送り方向と反対の方向に落下しないように固定することはできない。これが、開示の装置において提案されている支持バンドが必須である理由である。これに対し、本発明による垂直方向のベルトコンベアの少なくとも2つの搬送ベルトは、隣接する領域で相互に同一平面状に配置されており、第2の搬送ベルトの垂直部分が、付着力を維持するのに充分な面積で基板面に対して与えられる。一部の構成部品を省略して簡略化した図1及び図2に示すように、第1の搬送ベルトと同一平面上に配置された第2の搬送ベルト領域の長さが、垂直の搬送方向において基板の長さの少なくとも1/3に対応している。本発明によれば、垂直方向の搬送機能に加えて、DE 10 2006 011 870 B4 に記載された運搬バンドの機能も果たす第2の搬送ベルトの引き続く案内は、その文献に記載されているのとほぼ同様に2つの区間23及び24を設けることによって行われ、後者の区間24はほぼ水平方向を向いている。
【0048】
液体に基づく付着で基板を支持するため、第2の搬送ベルトは液体によって加湿もしくは濡れ状態にされるのが好ましく、その加湿は例えば、連続状のベルトのうち、幾何学的な配置上基板との接触面とならない領域で行われる。特に好ましくは、第2の搬送ベルトの区間24に続く(垂直の)部分で加湿を行い、第2の搬送ベルトのうち第1の搬送ベルトと同一平面上を走行する領域において、付着をもたらす液膜が基板に与えられるようにする。最も好ましくは、バネなどによって圧力を調整可能な拭き取りロールを第2の搬送ベルトに作用させ、この拭き取りロールは加湿手段と第2の搬送ベルトの垂直な同一平面領域に配置され、加湿液体の精確な投与、ひいては付着にとって望ましい液膜の精確な調整を可能とする。
【0049】
取り出すべき基板を、吸引バンドの一部である第1の搬送ベルトに確実に固定するためには、動的な方法(ポンプなど)、静的な方法(低圧容器)またはその他の方法によって、装置の内部または外部に発生可能な能動的低圧を備える必要がある。究極的に第1の搬送ベルトと基板が直接接触して、非常に薄い流体膜(数ナノメータから50マイクロメータ)だけがベルトコンベアと基板との間に存在する状態になれば、付着力が狭い隙間に形成され、それ以後は自己作用による付着、つまり搬送ベルトに対する基板の付着が可能となる。従って、能動的低圧の維持はそれ以後必要なくなる。
【0050】
別の実施形態によれば、基板を更に接近させて基板間から流体を搾り出すことで、所望の付着を行うこともでき、本発明では両方の実施形態の組み合わせも考えられる。
【0051】
こうした付着力は後に続く基板に対する付着力よりも格別大きいため、分離すべき基板の搬送ベルトによる抜き出しを、後に続く基板の面方向と平行に行える。その場合、分離すべき基板に対し、せいぜいわずかなせん断力だけが作用するので、破損率は著しく減少する。引張力または圧縮力は回避される。面接触が充分に大きいと、付着力は一時的な低圧によって発生される力よりも大きくなる。基板を、基板スタックから高頻度で抜き出すことが可能になる。更に接着力は、搬送ベルトの幾何学的設計及び基板の重量に応じ、特に基板が基板スタックを取り囲む液体の外に位置するとき、能動的低圧を発生させなくとも基板をベルトコンベアに付着可能とする大きさになる。
【0052】
別の実施形態によれば、特に第1の搬送ベルトは、例えばプラスチックなど適切な素材からなるフレキシブルバンドとして設計可能であり、このバンドは表面が流体を透過可能に設計され、流体が吸収及び放出さらには移動可能であることが最も好ましい。その目的のため、穿孔の形状及び多孔性基材の形状で開口を設けることもできる。
【0053】
本発明によれば、低圧は抜き出し段階の始めに発生される。この低圧は、基板と第1の搬送ベルトの接触領域との間の前記流体膜が得られるまでは維持されねばならないが、基板が第2の搬送ベルトのほぼ水平な部分上に位置するまで維持してもよい。
【0054】
好ましい実施形態によれば、本発明におけるベルトコンベアは別の真空装置を有し、第2の搬送ベルトが別の真空装置によって、前記同一平面領域に続く搬送区間23の領域で加圧可能である。このようにすれば、スタックの前方側に対する基板の旋回または偏向、及び搬送方向と反対側への基板の傾斜が排除される。この最後に述べた効果は、搬送区間23が傾斜していることでかなりの程度保証されている。この実施形態によれば、第2の搬送ベルトは第1の搬送ベルトと同じ特性を有するのが好ましい。
【0055】
キャリア装置は、複数の基板またはウェハからなる少なくとも1つの基板スタックを収容可能に設計されている。さらにキャリア装置は、特に側方に配置されたブラシストリップなどの手段を備え、個々の基板はその手段により、場合によってはそれぞれが取り出されるまで、所定位置に保持可能である。好ましくは、ブラシストリップはキャリア装置に蝶番開閉または旋回可能に取り付けられ、一時的にだけでも使用可能とされる。
【0056】
キャリア装置は、少なくとも一方向に移動可能である。より詳しくは、キャリア装置は送り方向に次のように移動可能であるのが好ましい。まずキャリア装置は、基板スタック中の分離すべき第1の基板がオプションで設けられる位置検出装置に達するまで移動可能である。その後キャリア装置は、例えばステップ単位で移動可能であり、ステップの幅は通常スタック全体にわたり一定の各基板の厚さに対応するのが好ましい。すなわちこのステップ移動は、最終的にスタック中の最後の基板が抜き出し装置に至るまで行われる。あるいは、キャリア装置を静止したままとするように設計してもよい。この場合には、基板スタックをキャリア装置上で送り方向に移動可能とする適切な手段が設けられる。上記に代えてもしくは上記に加えて、搬送ベルト及びオプションで設けられる位置検出装置の配置により大きな自由度をもたせ、それらが送り方向と反対に、スタックの始端の方向に移動可能であるようにしてもよい。
【0057】
設けられるのが好ましい位置検出装置は、分離すべき基板の姿勢及び位置を検出するための装置である。あるいは、例えばタッチセンサーなど、対応する信号を発生して、分離すべき基板をベルトコンベアが分離及び搬送可能とするセンサー素子の使用も可能である。
【0058】
別の視点に基づく本発明によれば、液体内に基板スタックの形状で、送り方向に相前後して順次配置された複数の盤状基板を、少なくとも2つの搬送ベルトを含む垂直方向のベルトコンベアを用いて分離、偏向及び搬送する方法であって、前記ベルトコンベアの搬送域が前記スタックの一方端の前方側に前方側と平行に配置されており、前記ベルトコンベアは真空装置を有し、前記スタックのうち最前方の基板が前記真空装置によって少なくとも第1の搬送ベルトに対して吸引可能であり、垂直方向のベルトコンベアのうち少なくとも2つの搬送ベルトが隣接する領域で相互に同一平面上に配置されており、前記第1の搬送ベルトと同一平面上に配置された第2の搬送ベルト領域の長さが、垂直の搬送方向において基板の長さの少なくとも1/3に対応しており、前記第2の搬送ベルトはその同一平面領域に続く2つの搬送区間23,24を備えた方法が開示される。本方法は以下の工程を含む:
(A)基板スタックを、ベルトコンベアの搬送域の前方で、液体を収容した槽内に入れる;
(B)第1の搬送ベルトの所定の孔パターンを、スタックの前方側に隣接して位置させる;
(C)スタックを第1の搬送ベルトの方向に、吸引位置へと移動する;
(D)第1の搬送ベルトに近接した基板の吸引位置及び槽内における基板のスタックからの分離位置を検出する;
(E)槽内の基板を、真空によって第1の搬送ベルトの孔パターンに対して吸引する;
(F)吸引された基板を検出し、第1の搬送ベルトの搬送シーケンスをトリガーする;
(G)搬送ベルトによって基板を槽から外へ移動し、基板を第2の搬送ベルトに渡す;
(H)スタックの前方側に対して基板を旋回させる;
(I)搬送ベルトの搬送シーケンスが終了したら、スタックの前方側に対して第1の搬送ベルトの所定の孔パターンを位置決めする;及び
(J)スタックが完全に分離されるまで、上記工程(C)から(I)を繰り返す。
【0059】
好ましい実施形態によれば、前記工程(H)による基板の旋回は、前記第2の搬送ベルトの同一平面領域に続く搬送区分(23)の表面で行われる。また、基板に対する付着力の形成を高めるため、前記第2の搬送ベルトは加湿されることが好ましい。さらに、前記ベルトコンベアは別の真空装置を有し、前記第2の搬送ベルトがこの別の真空装置によって、前記同一平面領域に続く前記搬送区間23の領域で加圧可能であることが好ましい。
更なる有利な実施形態は、以下の説明、請求の範囲、並びに図面から明らかとなろう。
【発明の効果】
【0060】
本発明によれば、驚くべきことに、真空によって取り出され吸引バンドの第1の搬送ベルトに固定された基板は、取り出し方向に沿って第1の搬送ベルトに直接続く運搬バンドの第2の搬送ベルト上への引渡し中も、ベルトコンベアに確実に付着したままであること、及び基板は送り方向と反対の方向に落下しないように保護されることが判明した。前述したように本発明によれば、吸引バンドの一部である第1の搬送ベルトには、少なくとも1mbarの範囲の真空でなく、例えば0.3と0.5bar の間の値、好ましくは約0.4bar というより弱い負圧が与えられる。こうした弱い負圧は、基板に作用して所望の付着力を形成する力を減少させ、各基板の表面と搬送ベルトとの間に流体膜または液膜が維持されるのを可能とする。
【図面の簡単な説明】
【0061】
【図1】DE 10 2006 011 870 B4 に開示された関連技術による装置のである。
【図2】本発明による装置の概略側面図である。
【図3】図2に示した実施形態の斜視図である。
【発明を実施するための形態】
【0062】
図1に、DE 10 2006 011 870 B4 に開示された関連技術による装置が、概略的に示してある。この装置は、盤状の基板を分離し搬送するのに適する。
【0063】
分離装置1は槽2を備え、分離すべき板状の基板3、例えばシリコン板が、キャリア装置4内に直立して収容され、直立スタック5を形成している。槽2は、その上縁6に至るまで、液体7で満たされている。槽2は駆動装置8に装着されており、駆動装置8が槽2を移動することで、キャリア装置4をベルトコンベア9に送って基板の分離及び搬送を行う。液体7は洗浄液であり、槽2は洗浄浴である。
【0064】
ベルトコンベア9は搬送域(スパン)10を有し、その搬送ベルト11がスタック5の前方側12に対向して且つ前方側12と平行に配置されている。搬送域10は、搬送ベルト11に加えて、他の2つの搬送ベルト11’及び11’’を備え、これらの搬送ベルトは、図には示してないが sylomere (登録商標)などを塗布して被覆してもよく、シリコン板3を搬送ベルト11から受け取って、それらを更に搬送する。
【0065】
吸引バンド13の一部をなす搬送ベルト11は所定の孔パターン14を有し、この所定の孔パターン14を通して、液体7が真空装置16の一部をなすポンプ15により、槽2から吸引プレート17を介し吸引可能である。位置センサー19が、スタック5の前方側12に位置したシリコン板3の初期位置18を検出するために設けられている。この位置センサー19が、線形軸として設計された駆動装置8を停止させると共に、吸引バルブを作動させ、液体を吸引バンド13の搬送ベルト11を通して吸引させる。それにより、スタック5のうち最前方のシリコン板3が、吸引バンド13の搬送ベルト11へと吸引される。
【0066】
圧力スイッチ21が、シリコン板3の吸引を認識し、吸引バンド13の搬送シーケンスを開始する。圧力スイッチ21は、吸引プレート17内に示してある。圧力スイッチ21はT字状片(図示せず)により、吸引プレート17へと延びる真空装置16の吸引ダクトに接続可能である。シリコン板3は、負圧によってシリコン板が付着する吸引搬送ベルト11の動きに伴い、スタック5の前方側12から取り出される。搬送ベルト11の回動中、シリコン板3が相互に平行に配置された吸引バンド13と支持バンド13’との間の隙間29内へと上方に搬送されるまで、吸引プレート17内に位置した吸引ダクト22によってシリコン板3は吸引バンド13の搬送ベルト11に吸引されたままである。
【0067】
あるいは、搬送ベルト11は連続駆動も可能である。この場合搬送ベルト11の駆動は、搬送ベルト11の孔パターン14上の取り上げ位置にシリコン板3が存在しないときだけ中断される。取り上げ位置にシリコン板3が存在しないことは、圧力スイッチ21によって検出される。シリコン板3が孔パターン14の前方に存在するようになると直ちに、搬送ベルト11は再始動される。
【0068】
搬送ベルト11の孔パターン14が吸引ダクト22を有する吸引プレート17の領域から移動した後、シリコン板3は、支持バンド13’と吸引バンド13及び/又は吸引バンド13に続く運搬バンド13’’との間に挟持され、上方に搬送される。図示した実施形態では、支持バンド13’の搬送ベルト11’及び運搬バンド13’’の搬送ベルト11’’は、孔パターン及び真空装置どちらも有していない。
【0069】
吸引バンド13と支持バンド13’は垂直方向に走行する直線搬送式のバンドで、両バンドは相互にわずかな距離だけ離して配置されている。それらのバンドは両者間に、隙間29を形成している。シリコン板3を吸引バンド13から受け取る運搬バンド13’’は、屈曲搬送式に設計されている。吸引バンド13と接する運搬バンド13’’の傾斜区間23は、典型例として45( の傾斜角を有する一方、フリー区間24は水平方向に配置されている。つまり、キャリア装置4内に直立して収容されていたシリコン板3は、分離プロセス中にその横方向軸を中心として90( の角度だけ旋回され、ベルトコンベア9の搬送域10の終端において横になった姿勢で与えられる。シリコン板3を確実に搬送する上で45( の傾斜角が大きすぎる場合には、運搬バンド13’’と想像水平線との間の角度を、例えば30( に減少してもよい。その場合、シリコン板3は当初の垂直姿勢から水平姿勢へと、45( づつ2度旋回される代わりに、まず60( 旋回され、次に30( 旋回されて、その後搬送される。
【0070】
搬送ベルト11、11’’は、共通の駆動装置を有することも可能である。各搬送ベルトがそれぞれ個々の駆動装置を有する場合は、異なるベルト速度に設定することで、または両搬送ベルト11、11’’のうち一方を停止し、他方の搬送ベルト11’’、11の駆動を継続することで、分離されたシリコン板3を相互に「離間調整」、すなわちシリコン板間の距離を増(減)可能である。
【0071】
偏向器26が支持バンド13’の上端25に配置され、偏向器26は支持バンド13’と協働してベルトコンベア9の案内要素13’、26を形成し、これらの案内要素は、吸引バンド13の搬送ベルト11に対してシリコン板3がもはや負圧で保持されなくなった後、シリコン板3に作用する。シリコン板3は偏向器26に接触すると、運搬バンド13’’の傾斜区間23上へと倒れ、傾斜区間23に沿ってさらに搬送され、傾斜区間23の終端において運搬バンド13’’の水平区間24上へ自重によって倒れる。シリコン板3を支持バンド13’から確実に引き離すため、及びシリコン板3を運搬バンド13’’上へ倒すために、図示した偏向器26に代え、(図示しないが)1個または数個のブラシストリップを偏向手段として、支持バンド13’の上端の領域に配置してもよい。
【0072】
吸引バンド13は図面には示してないペース制御式の駆動装置を備え、この駆動装置が運搬バンド13’’及び支持バンド13’を直接的もしくは間接的に駆動可能である。つまり、例えば運搬バンド13’’の搬送ベルト11’’に対する吸引バンド13の搬送ベルト11による摩擦接触を利用し、搬送ベルト11’’で支持バンド13’の搬送ベルト11’を両者間に挟持されたシリコン板3を介して駆動することも可能である。
【0073】
搬送ベルト11の孔パターン14の位置は孔パターンセンサー27によって検出され、図示の実施形態において孔パターン14は2箇所に存在する。従って、吸引バンド13の搬送シーケンスは搬送ベルト11の半回転に対応する。孔パターンセンサー27は吸引バンド13の戻り側に配置され、孔パターン14がスタック5の前方側12に隣接した吸引ダクト22上にくると搬送ベルト11を停止する。シリコン板3が搬送域10に接近し、初期位置18にあることが真空装置16を制御する位置センサー19によって認識され、且つシリコン板3が真空装置16によって吸引されるまで、搬送ベルト11は上記の位置に留まる。
【0074】
最前方のシリコン板3のスタック5からの分離を容易化するため、液体7がノズル28及び図面には示してないポンプによって槽2から、孔パターン14に最も近接した2つのシリコン板3間に、それらが分離されるように射出される。
【0075】
図2及び図3に、本発明によってさらに発展された、基板スタック5の分離を行う装置1の好ましい実施形態が示してある。この例示としての実施形態では、基板3が基板スタック5として配され、基板スタック5はキャリア装置(図示せず)に載置されている。個々の基板3は、すでに保持装置から取り外されている。装置1が流体内にあるときは、個々の基板3が不用意にキャリア装置から浮揚もしくは離脱する可能性があるため、キャリア装置は搬送方向に相互に平行に延びた2つの側方ブラシストリップを有するのが好ましく、それらのブラシストリップが各基板をそれぞれが取り出されるまで、例えばキャリア装置を分離装置に搬送する間、側方から一時的に支持する。特に好ましくは、ブラシストリップがキャリア装置に対し取り外し可能もしくは旋回可能に配置される。上記に代えてもしくは上記に加えて、各基板ひいては基板スタックを、キャリア装置内の送り方向または搬送方向に対し、わずかに傾斜させて配置することも可能である。
【0076】
個々の平板状基板3は、それぞれの面が相互に接触するように、相前後して位置している。接触する基板間には、両基板間における非常に小さい隙間や例えば先行するソーイング工程で生じる可能性のある汚染物に基づく付着力が作用する。このように配置された基板3が、所定の送り方向を決定する。
【0077】
さらに本発明によれば、搬送域10を備えたベルトコンベア9と、吸引バンド13及び運搬バンド13’’それぞれの一部を形成する搬送ベルト11及び11’’が設けられている。吸引バンド13の少なくとも1つの孔パターン14が図3に示してあり、この孔パターンは図1を参照した上記の説明と最大範囲で対応している。搬送ベルト11の垂直経路に延長して、搬送ベルト11’’が搬送ベルト11に連結しており、搬送ベルト11’’の垂直走行区分は、搬送方向における基板の長さの少なくとも1/3に対応するのが好ましい。この垂直走行区分に続いて、搬送ベルト11’’は例えば45( の角度で傾斜して走行し、その後第3の区分で水平方向に案内される。別の真空装置20が、搬送傾斜区間23である第2の区分において、第2の搬送ベルト11’’の下方に配置されるのが好ましい。
【0078】
装置のうち少なくとも一定の部分、すなわちキャリア装置、基板スタック5、及びベルトコンベア9の一部は、流体内に配置されるのが好ましい。そうすることで、基板は処理手順の全体を通して、もしくは少なくとも各基板が完全に分離されるまで、乾燥することはない。
【0079】
以上本発明を、シリコンウェハの処理に関連して説明した。プラスチックなどその他の素材からなる盤状基板も、本発明に従い処理可能であることは勿論である。
【符号の説明】
【0080】
1 装置
2 槽
3 基板、シリコン板
4 キャリア装置
5 基板スタック、スタック
6 上縁
7 液体
8 駆動装置
9 ベルトコンベア
10 搬送域
11 第1の搬送ベルト(吸引バンド13の一部)
11’ 搬送ベルト(支持バンド13’の一部)
11’’第2の搬送ベルト(運搬バンドの一部)
12 スタックの前方側
13 吸引バンド
13’ 支持バンド
13’’運搬バンド
14 孔パターン
15 ポンプ
16 真空装置
17 吸引プレート
18 初期位置
19 位置センサー
20 別の真空装置
21 圧力スイッチ
22 吸引ダクト
23 運搬バンド13’’の傾斜区間
24 運搬バンド13’’の水平区間
25 支持バンド13’の上端
26 偏向器
27 孔パターンセンサー
28 分離手段
29 隙間

【特許請求の範囲】
【請求項1】
液体内に基板スタック(5)の形状で、送り方向に相前後して順次配置された複数の盤状基板(3)を分離、偏向及び搬送する装置(1)であって、少なくとも2つの搬送ベルト(11、11’’)を含む垂直方向のベルトコンベア(9)を備え、前記ベルトコンベア(9)の搬送域(10)が前記スタック(5)の一方端の前方側(12)に前方側(12)と平行に配置されており、前記ベルトコンベア(9)は真空装置(16)を有し、前記スタック(5)のうち最前方の基板(3)が前記真空装置(16)によって少なくとも第1の搬送ベルト(11)に対して吸引可能であり、垂直方向のベルトコンベア(9)のうち少なくとも2つの搬送ベルト(11、11’’)が隣接する領域で相互に同一平面上に配置されており、前記第1の搬送ベルト(11)と同一平面上に配置された第2の搬送ベルト(11’’)領域の長さが、垂直の搬送方向において基板の長さの少なくとも1/3に対応しているものにおいて、前記第2の搬送ベルト(11’’)はその同一平面領域に続く2つの搬送区間(23,24)を備えることを特徴とする装置。
【請求項2】
前記ベルトコンベア(9)は別の真空装置(20)を有し、前記第2の搬送ベルト(11’’)が別の真空装置(20)によって、前記同一平面領域に続く前記搬送区間(23)の領域で加圧可能であることを特徴とする請求の範囲第1項に記載の装置。
【請求項3】
前記装置は、前記基板スタック(5)の少なくとも一部を吹き分ける分離手段(28)を更に備えることを特徴とする請求の範囲第1又は2項に記載の装置。
【請求項4】
前記装置は、少なくとも一方向に移動可能なキャリア装置(4)を更に備えることを特徴とする前記請求の範囲のいずれか1項に記載の装置。
【請求項5】
前記キャリア装置(4)は、相互に平行に側方に配置された2つのブラシストリップを有することを特徴とする請求の範囲第4項に記載の装置。
【請求項6】
前記ブラシストリップは、折りたたみ可能もしくは旋回可能に配置されていることを特徴とする請求の範囲第5項に記載の装置。
【請求項7】
液体内に基板スタック(5)の形状で、送り方向に相前後して順次配置された複数の盤状基板(3)を、少なくとも2つの搬送ベルト(11、11’’)を含む垂直方向のベルトコンベア(9)を用いて分離、偏向及び搬送する方法であって、前記ベルトコンベア(9)の搬送域(10)が前記スタック(5)の一方端の前方側(12)に前方側(12)と平行に配置されており、前記ベルトコンベア(9)は真空装置(16)を有し、前記スタック(5)のうち最前方の基板(3)が前記真空装置(16)によって少なくとも第1の搬送ベルト(11)に対して吸引可能であり、垂直方向のベルトコンベア(9)のうち少なくとも2つの搬送ベルト(11、11’’)が隣接する領域で相互に同一平面上に配置されており、前記第1の搬送ベルト(11)と同一平面上に配置された第2の搬送ベルト(11’’)領域の長さが、垂直の搬送方向において基板の長さの少なくとも1/3に対応しており、前記第2の搬送ベルト(11’’)はその同一平面領域に続く2つの搬送区間(23,24)を備えているものにおいて、
(A)基板スタック(5)を、ベルトコンベア(9)の搬送域の前方で、液体を収容した槽内に入れる;
(B)第1の搬送ベルト(11)の所定の孔パターン(14)を、スタック(5)の前方側(12)に隣接して位置させる;
(C)スタック(5)を第1の搬送ベルト(11)の方向に、吸引位置へと移動する;
(D)第1の搬送ベルト(11)に近接した基板(3)の吸引位置及び槽内における基板のスタック(5)からの分離位置を検出する;
(E)槽内の基板(3)を、真空によって第1の搬送ベルト(11)の孔パターン(14)に対して吸引する;
(F)吸引された基板(3)を検出し、第1の搬送ベルト(11)の搬送シーケンスをトリガーする;
(G)搬送ベルト(11)によって基板(3)を槽から外へ移動し、基板を第2の搬送ベルト(11’’)に渡す;
(H)スタック(5)の前方側(12)に対して基板(3)を旋回させる;
(I)搬送ベルトの搬送シーケンスが終了したら、スタック(5)の前方側(12)に対して第1の搬送ベルト(11)の所定の孔パターン(14)を位置決めする;及び
(J)スタックが完全に分離されるまで、上記工程(C)から(I)を繰り返す、
工程を含むことを特徴とする方法。
【請求項8】
前記工程(H)による基板の旋回は、前記第2の搬送ベルト(11’’)の同一平面領域に続く搬送区分(23)の表面で行われることを特徴とする請求の範囲第7項に記載の方法。
【請求項9】
基板に対する付着力の形成を高めるため、前記第2の搬送ベルト(11’’)が加湿されることを特徴とする請求の範囲第8項に記載の方法。
【請求項10】
前記ベルトコンベア(9)は別の真空装置(20)を有し、前記第2の搬送ベルト(11’’)が別の真空装置(20)によって、前記同一平面領域に続く前記搬送区間(23)の領域で加圧可能であることを特徴とする請求の範囲第7から9項のいずれか1項に記載の方法。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【公開番号】特開2012−60130(P2012−60130A)
【公開日】平成24年3月22日(2012.3.22)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2011−196739(P2011−196739)
【出願日】平成23年9月9日(2011.9.9)
【出願人】(504382349)レナ ゲーエムベーハー (10)
【Fターム(参考)】