説明

基板ケース洗浄装置

【課題】基板ケースをドライ洗浄で実施するにあたり、被洗浄物が複雑な形状を含む場合であっても洗浄可能な基板ケース洗浄装置を提供する。
【解決手段】シリコンウェハやフォトマスクなどの異物の付着を嫌う基板を保持するドア部2と、前記ドア部2を周囲の雰囲気と遮断することによって保持された基板に異物が付着するのを防止するためのカバー部と、前記ドア部2に設けられたパッキン5であって、前記ドア部2と前記カバー部を密封するためのパッキン5と、を備えている基板ケースの前記ドア部2の洗浄装置1であって、少なくとも前記ドア部を載置し回転させるためのターンユニット3と、前記ドア部2に向って洗浄用ガスを噴出するガス噴出ノズル4と、を備えていることを特徴とする基板ケース洗浄装置1。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、半導体製造工程やフォトマスク製造工程で使用されるSMIF−POD(Standard of Mechanical Interface−POD、シリコンウェハやレチクル搬送用の半導体製造用密閉容器)やFOUP(Front Opening Unified POD、SEMI規格準拠の300ミリウェハ用の正面開口式である搬送/保管用密閉容器)などの基板ケースの洗浄に使用される基板ケース洗浄装置に関する。
【背景技術】
【0002】
半導体製造工程やフォトマスク製造工程は、製品への異物の付着を抑制するためにクリーンルームと呼ばれる清浄(空中に浮遊しているパーティクルをHEPAフィルタなどのエアフィルタを使用して極力除去した状態)な部屋の中に設置されている。処理される物品であるシリコンウェハやフォトマスクは、前の工程での処理が終了すると次の工程へと工程間を搬送されて処理される。これらを繰り返すことによってウェハ処理(半導体前工程)やフォトマスクの製造が行われている。
【0003】
近年、異物の付着を更に低減する目的で、工程間の搬送にSMIF−PODやFOUPなどの基板ケース(シリコンウェハやフォトマスクを収納し、搬送中に異物の付着を抑制する搬送用のケース)が使用されるようになってきている。
【0004】
SMIF−PODは、例えばウェハ処理で使用されている複数枚のウェハを収納可能な密封型ウェハ容器の1種で、容器の底面に開閉機構を持っている。FOUPは、複数枚のウェハを収納可能なキャリアと容器が一体構造となった密封型ウェハ容器であり、容器の前面に開閉機構を持ち、各工程の半導体製造装置とのインターフェース機能を持っていることが特徴である。
【0005】
これらのSMIF−PODやFOUPなどの基板ケースは、カバー部と呼ばれるシリコンウェハやフォトマスクを周囲の空間から隔離する部分と、ドア部と呼ばれるウェハやフォトマスクを保持する部分から構成されている。カバー部とドア部の接触部のドア部側にはフッ素系ゴムからなるパッキンを設けてあり、密封することが可能となっている。また、カバー部とドア部をロックするロック機構を備えている。
【0006】
SMIF−PODやFOUPなどの基板ケースには、密封することを可能にしているパッキンから発塵する問題があり、その影響を抑制する目的で洗浄を行う。洗浄を実施する場合には、カバー部とドア部を分離し、別々に洗浄を実施する。
【0007】
従来の洗浄の方法は、カバー部とドア部を分離後、純水または薬液に浸漬して洗浄する方法(丸洗い洗浄)と浸漬せずに純水を吹き付けて洗浄する方法(吹きかけ洗浄)がある。
丸洗い洗浄は、パッキンの部分や複雑な構造をした部分に純水や薬液が浸入するため、乾燥しにくいことや薬液を洗い流すことが困難であるため、金属部が腐食し、ひいてはその腐食部分から発塵したり、欠陥発生に繋がるガスが発生したりする、という問題を持っている。
【0008】
吹きかけ洗浄は、ドア部パッキンおよびロック機構への純水や薬液の浸入を防ぐため、ドア部パッキンの内側のみを洗浄するものがあるが、その場合はドア部パッキン周辺やドア部の端面部を洗浄することができず、ドア部パッキンやカバー部とドア部の接触部であ
る基板ケース端面部に付着している異物は除去できないといった問題がある。そのような異物は、フォトマスク製造工程において、フォトマスク基板を基板ケースから取り出す際や、収納時において、発塵して飛散し、基板ケース内部に再付着することで、フォトマスク製品などの欠陥を生じる原因となる。
【0009】
特許文献1には、基板ケースに物理吸着した有機物の異物またはイオン性の異物またはイオン性結晶異物のドライ洗浄の方法として、クリーンな空気または不活性ガスの気流中に常温〜80℃の温度範囲で靜置することで、前記異物を脱離除去する方法が開示されている。しかしながら、この方法では、クリーンな空気または不活性ガスの流速がある程度の値以上でないと脱離除去が困難であり、複雑な形状が含まれる被洗浄物には十分な洗浄効果が期待できないという問題を抱えている。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0010】
【特許文献1】特開2008−053392号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0011】
基板ケースをドライ洗浄で実施するにあたり、被洗浄物が複雑な形状を含む場合であっても洗浄可能な基板ケース洗浄装置を提供することを課題とする。
【課題を解決するための手段】
【0012】
上記の課題を解決する手段として、本発明における請求項1に記載の発明は、シリコンウェハやフォトマスクなどの異物の付着を嫌う基板を保持するドア部と、前記ドア部を周囲の雰囲気と遮断することによって保持された基板に異物が付着するのを防止するためのカバー部と、前記ドア部に設けられたパッキンであって、前記ドア部と前記カバー部を密封するためのパッキンと、を備えている基板ケースの前記ドア部の洗浄装置であって、
少なくとも前記ドア部を載置し回転させるためのターンユニットと、
前記ドア部に向って洗浄用ガスを噴出するガス噴出ノズルと、を備えていることを特徴とする基板ケース洗浄装置である。
【0013】
また請求項2に記載の発明は、被洗浄物に物理吸着により付着していた異物であり、ガス噴出ノズルから噴出したガスで吹き飛ばされることによって生じたカバー部の内部空間を浮遊している異物を、吸引する手段を有することを特徴とする請求項1に記載の洗浄装置である。
【0014】
また請求項3に記載の発明は、洗浄用ガスが、窒素ガスと超低露点の清浄空気とドライアイス粒子を含んだ清浄空気の、少なくとも1つからなることを特徴とする請求項1または2に記載の洗浄装置である。
【発明の効果】
【0015】
本発明の洗浄装置により、ドア部のパッキンおよびロック機構への洗浄液の浸入がなくなると同時に、パッキン周辺やカバー部とドア部の接触部であるケース端面部に付着している異物を除去できるようになった。
【図面の簡単な説明】
【0016】
【図1】本発明の洗浄装置の一例を示す概念図
【図2】SMIF−PODの概念図
【発明を実施するための形態】
【0017】
図1には、SMIF−PODを例として、ドア部2を本発明の洗浄装置1のターンユニット3に載置した状態の概念図を示している。SMIF−PODのドア部には、図には示していないカバー部と密着させて気密性を保つためのパッキン5が備えられている。
図2には、SMIF−PODの概念図を示した。SMIF−PODは、ドア部2とカバー部6から構成されており、シリコンウェハやフォトマスクをドア部2に載置後、カバー部6をパッキン5を介して密着し、図示していないロック機構によりロックし、搬送する。
【0018】
洗浄装置1は、ガス噴出ノズル4を備えており、そこから窒素ガス、超低露点清浄空気(極限まで乾燥させた清浄な空気)などの乾燥しており且つ微粒子を含まないクリーンなガスを噴出させることによって、ドア部3とパッキン5に物理的に吸着した異物、ダストといった付着物を吹き飛ばすことによって洗浄を行う。
【0019】
吹き飛ばされた付着物は、再付着しないように、再付着防止策を講ずる必要がある。
最も単純な方法は、付着物を吹き飛ばす気流の下流に、図1には示していない吸引口を備えることである。ガス噴出ノズル4から噴出されるガスの量と同じ量のガスを吸引するのが適切な方法である。吸引口からのガスの吸引量がガス噴出ノズル4から噴出されるガスの量より多いと、周辺の空間から浮遊している塵埃(元々、浮遊していたダストや噴出されたガスに吹き飛ばされて浮遊している付着物など)を引き寄せてしまうことになる。また、吸引量が少ない場合は、噴出されたガスに吹き飛ばされた付着物を十分に除去できないため、塵埃など(塵埃や欠陥発生に繋がるガス)が増加してゆくことになる。
【0020】
ガスの吸引口の代わりに、ターンユニット3の周囲全体からガスを吸引する装置構成になっていても良い。その場合も、ガス噴出ノズル4から噴出されるガスの量と吸引されるガスの量は、一致していることが望ましい。吸引するガスの量が少ない場合は、吸引されなかった塵埃などの一部が浮遊し続けることになる。吸引するガスの量が多すぎると、周囲の空間から塵埃などを引き寄せることになるためである。
【0021】
また、付着物を吹き飛ばす気流の下流に、電気集塵機と同じ原理を使用した塵埃を除去する機構を設けることでも良い。
【0022】
また、吹き飛ばされた付着物が帯電して、再付着することを抑制する目的で、ガス噴出ノズル4およびターンユニットの周囲にイオナイザーを付加させることは有効である。吹き飛ばされた付着物や洗浄されるドア部2の帯電が抑制されることによって再付着が抑制される。
【0023】
また、ガス噴出ノズル4からガスを噴出させる洗浄の代わりに、ドライアイスブラスト洗浄(ドライアイスの細かい粒子をガスと一緒に噴出させ、被洗浄物の表面にある付着物に固体であるドライアイスの微粒子を衝突させる。)と同じ原理を用いても良い。この方法は、ガスの中に含まれるドライアイスの粒子が付着物に衝突するため、より強固に付着している場合でも除去することが可能である上に、ドライアイスの粒子は昇華してしまうため、乾燥させる必要がない。ガスとしては当然ながら清浄空気や清浄な窒素ガスなどを使用する。ドライアイスブラスト洗浄の場合、ドライアイスの粒子があるため、特に帯電しやすく、イオナイザーによる帯電防止の機構を備えることが望ましい。
【0024】
また、図1ではガス噴出ノズル4を、ターンユニットの周囲に固定されているように示しているが、固定されている必要はなく、例えば、自在にガス噴出ノズル4を空間的に移動させ、ガス噴出ノズル4の向きも自在に制御できるロボットを使用しても良い。そのような機構を備えることにより必要な部分の洗浄を過不足無く実施することが可能となる。
【実施例】
【0025】
以下、本発明の基板ケース洗浄装置の実施例について更に具体的に説明する。
【0026】
ターンユニット3上で分解されたSMIF−PODのドア部2の外周には、開口径3mmの噴出口を備えるガス噴出ノズルが設けられている。
このガス噴出ノズルは、開口部の中心を頂点として円錐形状でガス噴出され、ガスは角度90度以上の範囲でガスを噴出され、180度未満の噴出角の範囲で噴出される。噴出角は、特に135度の付近であることが満遍なく噴出できるため望ましい。
【0027】
前記ガス噴出ノズルから、ターンユニット3上で分解された前記SMIF−PODのドア部2に対して、レギュレータにより圧力調整された窒素ガスを0.10MPaの圧力で10秒噴射する。
そして、集塵機構では、ガス噴出ノズルの圧力と同等の圧力で吸引を行ない、離散した塵埃をガス噴出と同期させて、同じ時間、集塵を行なう。
ガス噴出の時間は、10秒に固定されるものでなく、ガス種類、噴出圧力の設定によって適宜設定される。
また、集塵時間については、ガス噴出時間と同等の時間、もしくは2倍程度の時間の範囲で浮遊する塵埃を集塵することが効率的である。
【0028】
ガス噴出ノズルの圧力が0.05MPa未満の場合、SMIF−PODに付着している塵埃を除去することが困難である。そして、0.50MPaを超えるガス噴出ノズルの圧力である場合には、ターンユニット上に固定されたケースを浮揚させてしまうことがあり、装置故障の原因となる場合がある。
そのため、噴出ガス圧力は0.05MPa以上0.50MPa以下の任意の圧力値に設定され、集塵機構においても同等の圧力で集塵を行なうことが好ましく、それらの圧力については、圧力センサ等を設けることにより、検知しておくことが望ましい。
【0029】
また、噴出するガス種類は、SMIF−PODが設置されている雰囲気において不活性、かつ、パーティクルや圧縮機由来のオイルミストが混入していない清浄度が高いガスであることがケース洗浄に用いる場合は望ましい。
なお、噴出するガス種類は、限定されるものではなく、例示された窒素ガスの他、超低露点清浄空気(CDA,Clean Dry Air)、その他の洗浄度の高いガスを採用しても何ら問題はない。
【符号の説明】
【0030】
1・・・洗浄装置
2・・・ドア部
3・・・ターンユニット
4・・・ガス噴出ノズル
5・・・パッキン
6・・・カバー部
7・・・基板ケース

【特許請求の範囲】
【請求項1】
シリコンウェハやフォトマスクなどの異物の付着を嫌う基板を保持するドア部と、前記ドア部を周囲の雰囲気と遮断することによって保持された基板に異物が付着するのを防止するためのカバー部と、前記ドア部に設けられたパッキンであって、前記ドア部と前記カバー部を密封するためのパッキンと、を備えている基板ケースの前記ドア部の洗浄装置であって、
少なくとも前記ドア部を載置し回転させるためのターンユニットと、
前記ドア部に向って洗浄用ガスを噴出するガス噴出ノズルと、を備えていることを特徴とする基板ケース洗浄装置。
【請求項2】
被洗浄物に物理吸着により付着していた異物であり、ガス噴出ノズルから噴出したガスで吹き飛ばされることによって生じたカバー部の内部空間を浮遊している異物を、吸引する手段を有することを特徴とする請求項1に記載の基板ケース洗浄装置。
【請求項3】
洗浄用ガスが、窒素ガスと超低露点の清浄空気とドライアイス粒子を含んだ清浄空気の、少なくとも1つからなることを特徴とする請求項1または2に記載の基板ケース洗浄装置。

【図2】
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【図1】
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【公開番号】特開2012−238649(P2012−238649A)
【公開日】平成24年12月6日(2012.12.6)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2011−105296(P2011−105296)
【出願日】平成23年5月10日(2011.5.10)
【出願人】(000003193)凸版印刷株式会社 (10,630)
【Fターム(参考)】