説明

基板ホルダ及び真空成膜装置

【課題】基板を密着して保持することができ、基板の温度を正確に調整することができ、基板に高品質な膜を成膜を形成することができる真空成膜装置を提供すること。
【解決手段】基板と当接する基板保持面を備え、基板保持面が曲面形状であるホルダと、基板と基体支持面との接触状態を検出する接触検出機構と、ホルダの基板保持面の外側に配置され、基板の端面に対して荷重を付与し、基板を支持する荷重付与機構と、接触検出機構の出力に基づいて荷重付与機構が基板に付与する荷重を制御する制御部とを有する構成とすることで、上記課題を解決する。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、基板を保持する基板ホルダ及び基板ホルダに保持した基板上に真空成膜法により成膜する真空成膜装置に関するものである。
【背景技術】
【0002】
従来より、医療用の診断画像の撮影や工業用の非破壊検査などに、被写体を透過した放射線(X線、α線、β線、γ線、電子線、紫外線等)を電気的な信号として取り出すことにより放射線画像を撮影する、放射線画像検出器が利用されている。
この放射線画像検出器としては、放射線を電気的な画像信号として取り出す放射線固体検出器(いわゆる「Flat Panel Detector」 以下「FPD」ともいう。)や、放射線像を可視像として取り出すX線イメージ管などがある。
【0003】
また、FPDには、アモルファスセレン等の光導電膜とTFT(Thin Film Transistor)等を用い、放射線の入射によって光導電膜が発した電子−正孔対(e−hペア)を収集してTFTによって電化信号として読み出す、いわば放射線を直接的に電気信号に変換する直接方式と、放射線の入射によって発光(蛍光)する蛍光体で形成された蛍光体層(シンチレータ層)を有し、この蛍光体層によって放射線を可視光に変換し、この可視光を光電変換素子で読み出す、いわば放射線を可視光として電気信号に変換する間接方式との、2つの方式がある。
【0004】
ここで、基板上に蛍光体層や、アモルファスセレンなどの光導電膜等の膜を形成する装置としては、一定圧力に減圧した真空チャンバ内で、蒸発材料を蒸発させることにより基板上に蒸着膜を形成する真空蒸着装置がある。
【0005】
真空蒸着装置では、蒸発源から蒸発されて蒸気として上昇する蒸発材料を蒸着させることで基板に蒸着膜を形成するため、基板を蒸発源よりも鉛直方向上側に配置する。そのため、蒸着装置では、基板ホルダにより蒸発材料が蒸着される面を鉛直方向下側に開放した状態で基板を保持する。
【0006】
基板を保持する基板ホルダとしては、例えば、引用文献1に基板支持面が筒状の凹面であるベースと、このベースの基板支持面上の基板の湾曲していない2辺の端面を、当該基板支持面に沿って内向きに押さえつける複数の弾性体とを備えることを特徴とする基板ホルダ(基板保持装置)が記載されている。
【0007】
【特許文献1】特開平10−147865号公報
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0008】
引用文献1に記載の基板ホルダのように、基板を湾曲させ、さらに、基板の端面を内向きに押さえ付けることにより、基板を基板支持面上に密着させて保持することができ、さらに、基板が熱膨張しても、その熱膨張を吸収することができ、基板に変形や割れ等の不具合が生じるのを防止することができる。
【0009】
しかしながら、引用文献1に記載の基板ホルダでは、装着時には、基板と基板ホルダとが密着しているが、基板への成膜中に徐々に基板ホルダと基板とが離れる、つまり基板がホルダに対して浮くことがある。基板ホルダに対して基板が浮くと基板に形成される蒸着膜にむらが生じるという問題がある。特に、基板ホルダからの伝熱により基板の温度調節を行う場合は、基板に温度ムラが生じるため蒸着膜のむらが大きくなる問題となる。
他方、基板の浮きを防ぐために予め基板に大きな荷重をかけると、基板の座屈等の原因となり、大きな荷重を付加し、収縮した基板に成膜すると、成膜した蒸着膜が不均一になることがあるという問題もある。
【0010】
本発明の目的は、上記従来技術に基づく問題点を解消し、基板との密着性が高く、基板に熱を均一に伝熱することができる基板ホルダを提供することにある。
また、本発明の他の目的は、上記従来技術に基づく問題点を解消し、基板を密着して保持することができ、基板の温度を正確に調整することができ、基板に高品質な膜を成膜を形成することができる真空成膜装置を提供することにある。
【課題を解決するための手段】
【0011】
上記課題を解決するために、本発明の第1の態様は、成膜される基板を保持する基板ホルダであって、曲面形状であり、前記基板と当接する基板支持面を有する基体部と、前記基板と前記基体支持面との接触状態を検出する接触検出機構と、前記基体部の前記基板支持面の外側に配置され、前記基板の端面に対して荷重を付与し、前記基板を支持する荷重付与機構と、前記接触検出機構の出力に基づいて前記荷重付与機構が前記基板に付与する荷重を制御する制御部とを有する基板ホルダを提供するものである。
【0012】
上記課題を解決するために、本発明の第2の態様は、真空成膜法によって基板に成膜を行なう真空成膜装置であって、前記基板と当接する基板保持面を備え、前記基板保持面が曲面形状であるホルダと、前記基板と前記基体支持面との接触状態を検出する接触検出機構と、前記ホルダの前記基板保持面の外側に配置され、前記基板の端面に対して荷重を付与し、前記基板を支持する荷重付与機構と、前記接触検出機構の出力に基づいて前記荷重付与機構が前記基板に付与する荷重を制御する制御部とを有する真空成膜装置を提供するものである。
【0013】
ここで、前記接触検出機構は、複数の前記検出端子を有し、前記検出端子により、複数箇所の前記基板と前記ホルダとの接触状態を検出することが好ましい。
また、前記検出端子は、前記ホルダの前記基板と接触する面に設置され、前記基板の変位を検出する変位センサであることが好ましい。
または、前記検出端子は、前記ホルダの前記基板と接触する面に設置され、前記基板の温度を検出する温度センサであることも好ましい。
【0014】
また、前記制御部は、前記荷重付与機構が前記基板に付与する荷重を一定量ずつ変化させ、前記基板への荷重を調整することが好ましい。
また、前記ホルダは、前記基板と接触する面に伝熱シートを有することが好ましい。
また、前記荷重付与機構は、前記基板の一方の端面に荷重を付与する第1のアクチュエータと、前記端面に対向する他方の端面に荷重を付与する第2のアクチュエータとを有することが好ましい。
ここで、前記荷重付与機構は、前記第1のアクチュエータ及び第2のアクチュエータをそれぞれ複数有することが好ましい。
前記制御部は、各アクチュエータが基板に付与する荷重を個別に調整することが好ましい。
また、前記荷重付与機構は、前記基板の一方の端面に荷重を付加し、前記端面に対向する他方の端面を固定する機構であることも好ましい。
【発明の効果】
【0015】
本発明の基板ホルダによれば、基板に適切な荷重を付与した状態で基板と基板支持面とを密着させることができる。これにより、基板に熱を均一に伝えることができ、さらに過度な荷重が付与されることを防止できる。これにより、基板の全面を均一な状態で保持することができ、均一な膜を成膜することができる。
また、本発明の真空成膜装置によれば、基板に適切な荷重を付与した状態で基板と基板支持面とを密着させることができるため、過度な荷重を付与することなく、基板の温度を正確に調整することができる。これにより、基板の表面に均一な膜を成膜することができ、基板が変形することも防止できる。
【発明を実施するための最良の形態】
【0016】
本発明に係るに基板ホルダ及び真空成膜装置について、添付の図面に示す実施形態を基に詳細に説明する。
【0017】
図1(A)は、本発明の基板ホルダを用いる本発明の真空成膜装置の一実施形態である真空蒸着装置の概略構成を模式的に示す正面図であり、(B)は、(A)に示す真空蒸着装置の基板ホルダ及びホルダ装着部周辺を拡大して示す拡大正面図である。ここで、図1(A)には、真空蒸着装置10の基板ホルダ13とホルダ装着部14とを密着させた状態を示し、図1(B)には、基板ホルダ13とホルダ装着部14とを密着させていない状態を示す。
【0018】
図1に示す真空蒸着装置10は、真空チャンバ12と、基板ホルダ13と、ホルダ装着部14と、蒸発源16と、真空ポンプ18とバルブ20と排気経路22とでを有する。
真空蒸着装置10は、真空チャンバ12内を減圧して、蒸発源16に収容した蒸発材料を加熱融解して蒸発させることにより、ホルダ装着部14が保持した基板Sの表面に、蒸発材料を成膜する。
なお、本発明の真空蒸着装置10は、図示した部材以外にも、アルゴンなどの不活性ガス等の各種のガスを真空チャンバ12内に導入するためのガス導入手段、蒸発源16からの蒸発蒸気を遮蔽するためのシャッタ、蒸発材料が基板S以外に付着することを防止し、蒸発源16から蒸発した蒸発材料Mを基板Sに案内する防着カバー等、真空蒸着装置もしくは真空蒸着ユニットが有する各種の部材を有してもよいのは、もちろんである。
【0019】
本発明において、使用する基板Sには、特に限定はなく、ガラス板、プラスチック(樹脂)製のフィルムや板、金属板等、製造する製品に応じて種々の材料を用いることができる。
また、基板Sに成膜(形成)する膜にも、特に限定はなく、真空蒸着によって成膜可能なものが、全て利用可能である。
【0020】
ここで、後に詳述するが、本発明の真空成膜装置は、基板の自重の変化など、蒸着時に基板の状態が変化した場合も、基板の温度を正確に測定することができるため、一定の温度で基板上に蒸着膜を形成することができる。
そのため、本発明は、所定温度で一定時間蒸着を行う必要のある厚膜の成膜には特に好適であり、特に200〜1000μm程度の膜厚が必要な、直接方式の放射線画像検出器(フラットパネル検出器(FPD(Flat Panel Detector))の光導電層の成膜に好適に用いることができる。中でも特に、FPDの光導電層となるアモルファスセレンの成膜は、成膜材料であるセレンが低い温度で蒸発するため、より一定の温度条件とすることで好適に均一なアモルファスセレンの蒸着膜を形成することができる。
【0021】
また、本発明の真空成膜装置をFPDの製造に利用する場合には、アモルファスセレン等の光導電膜とTFT(Thin Film Transistor)等を用い、放射線の入射によって光導電膜が発した電子−正孔対(e−hペア)を収集して、TFTのスイッチングを行った個所から電流として感知することで放射線画像を得る、電気読取方式のFPDの製造でもよく、また、アモルファスセレン化合物等から形成される記録用光導電層および読取用光導電層と、両導電層の間に形成されるAs2Se3等から形成される電荷蓄積層とを有し、放射線の照射によって潜像電荷を蓄積し、読取光の照射によって潜像電荷を流して電流として感知することで放射線画像を得る、光読取方式のFPDの製造でもよい。
【0022】
真空チャンバ12は、鉄,ステンレス,アルミニウム等で形成される気密性の高い容器である。真空チャンバ12としては、真空蒸着装置で利用される種々の真空チャンバ(ベルジャー、真空槽)を用いることができる。また、真空チャンバ12には、排気経路22を介して、真空ポンプ18が接続されている。また、排気経路22には、排気経路22を気密に閉塞し、真空ポンプ18からの排気量を調整するバルブ20が配置されている。バルブ20としては、電磁弁、油圧式弁等種々のバルブを用いることができる。
【0023】
真空ポンプ18は、真空チャンバ12の内部の空気を排気することで、真空チャンバ12内部を所定の真空度に減圧する。
真空ポンプ18は、特に制限はなく、必要な到達真空度を達成できるものであれば、真空蒸着装置で利用されている各種のものが利用可能である。一例として、油拡散ポンプ、クライオポンプ、ターボモレキュラーポンプ等を利用すればよく、また、補助として、クライオコイル等を併用してもよい。
【0024】
次に、基板ホルダ13について説明する。
図2は、本発明の基板ホルダ13の概略構成を模式的に示す正面図であり、図3は、図2に示す基板ホルダ13の上面図である。
基板ホルダ13は、基板Sを保持する基体部30と、後述する温調プレート50から供給される熱を伝える伝熱シート32と、基板Sとの接触状態を検出する接触検出機構34と、基板Sを基体部30に固定するための荷重を付加する荷重付与機構36と、荷重付与機構36が基板Sに付加する荷重を調整する制御部46とを有し、基板Sの蒸着膜を蒸着させる領域を開放した状態で、基板Sを保持する。ここで、図2では、接触検出機構34及び荷重付与機構36と制御部46との関係を示すために図示を省略したが、基板ホルダ13は、図1に示すように、接触検出機構34及び荷重付与機構36と制御部46との情報の送受信を中継するホルダ通信部48を有する。また、後述するホルダ装着部14は、制御部46に接続する基体通信部54を有する。すなわち、接触検出機構34(その温度センサ38)および荷重付与機構36(そのヒータ40)は、ホルダ通信部48および基体通信部54を介して、制御部46に接続される。
【0025】
基体部30は、所定方向(図1(A)中左右方向)の断面の基板Sと接する(正確には、伝熱シート32を介して基板Sと接する)領域が凹、つまり、基板Sと接する面(以下「基板支持面30a」という。)が端部から中央部に向かうに従って基板支持面30aとは反対側の面との距離が短くなる曲線となり、かつ、所定方向に垂直な方向(図1(A)中紙面奥行き方向)の断面の基板支持面30aが直線となる板形状である。
また、曲線方向の両端部、つまり、基板支持面30aの基板Sと接する領域の外側には、突起部30bが設けられれている。
【0026】
伝熱シート32は、熱伝導性の材料で形成されたシート状の部材であり、基体部30の基板支持面30aに配置されている。伝熱シート32を基体部30と基板Sとの間に設けることで、基体部30の熱を効率よく、かつ均一に基板Sに伝えることができる。
伝熱シート32としては、種々の熱伝導性シートを用いることができるが、シリコーン系樹脂、アクリル系樹脂、エチレンプロピレン系樹脂等の樹脂に熱伝導性粒子、熱伝導性フィラー等を分散させたシートを用いることが好ましい。
ここで、伝熱シート32は、基板S側の面に非粘着層を設けることが好ましい。基板S側に非粘着槽を設けることで、基板Sの着脱を容易に行うことができる。さらに、非粘着性層としては、電子線照射等による表面処理層、プラスチックフィルム、非粘着性樹脂のコーティング層を用いたり、熱伝導性シートの基板側の表面にパウダー加工を施したりすることが好ましい。
【0027】
接触検出部34は、図3に示すように、基体部30にマトリックス状(つまり二次元的)に配置されている複数の温度センサ38を有する。
温度センサ38は、先端が基板支持面30aの表面に露出しており、また、温度センサ38に対応する位置の伝熱シート32には、穴が設けられている。
このように、温度センサ38は、基板ホルダ13の基板Sと接触する面に露出し、基板支持面30aに密着して保持されている基板Sと当接して、基体部30に保持されている(正確には、伝熱シート32を介して保持されている)基板Sの温度を測定する。
この温度センサとしては、公知の各種のものが利用可能であり、一例として、種類の異なる2本の金属線の両端を接合して両端の接点に温度差が生じた際に発生する熱起電力で温度を測定する熱電対、温度による抵抗変化で温度を測定する測温抵抗体やサーミスタ等が例示される。
【0028】
荷重付与機構36は、基体部30の両突起部30bに所定間隔離間して配置された複数のアクチュエータ39を有する。つまり、複数のアクチュエータがそれぞれの突起部30bに複数列状に配置されている。
アクチュエータ39は、発熱体等の加熱機構であるヒータ40と、ヒータ40による熱により伸縮する材料で形成されている熱膨張部材42と、断熱材料で形成されており、基板Sの基板支持面30aとは反対側の面を支持して基板Sを係止する突起を備える係止部44とを有し、基板Sの側面から基体部30の基板支持面30aに沿う方向に基板Sへ荷重を付与する。
このアクチュエータ39は、突起部30bの内面から基板Sに向かって、ヒータ40、熱膨張部材42、係止部44の順で配置されている。つまり、アクチュエータ39は、ヒータ40が突起部30bに固定され、係止部44が基板Sと当接し、熱膨張部材42がヒータ40と係止部44との間に配置されている。
【0029】
このように、荷重付与機構36は、両突起部30bにそれぞれ配置したアクチュエータ39の係止部44により基板Sを基板支持面30aに向けて付勢することで、基板Sを伝熱シート32を介して基板支持面30aに密着させつつ(以下単に「基板支持面30aに密着させつつ」とする。)、固定する。上述したように基板保持面30aは、凹面形状であるため、基板Sの端部を基板保持面30aに沿う方向に付勢することで、基板Sを固定する。
【0030】
さらに、アクチュエータ39は、ヒータ40により熱膨張部材42を加熱し、熱膨張部材42を膨張させることで係止部44を移動させることができる。
荷重付与機構36は、各アクチュエータ39の係止部44を移動させ、対向する突起部30bに配置された係止部44間の距離を調整することで、基板Sに付与する荷重を調整することができる。
なお、本実施形態では、ヒータにより熱膨張部材を加熱したが、ヒータに替えて加熱冷却機構を用いてもよい。加熱冷却機構を用いることで、熱膨張部材を伸縮させることができ、基板Sに付与する荷重を増減させることができる。
【0031】
制御部46は、接触検出部34の温度センサ38及び荷重付与機構36の各アクチュエータ39のヒータ40と接続している。
制御部46は、温度センサ38が検出した温度に基づいて、基板Sを基体部30の基板支持面30aとの接触状態を判断し、その判断結果に基づいて、各アクチュエータ39のヒータの加熱量を調整することで、基板Sに付加する荷重を調整する。
一例としては、温度センサ38が検出する温度が単位時間で一定温度以上低下した場合は、基板Sが温度センサ38から離れたと判断し、離れた位置の基板に対応する位置のアクチュエータ39のヒータ40を加熱する。該当するアクチュエータ39のヒータ40を加熱することで、係止部44を移動され、基板Sに加える荷重が大きくなり、基板Sが基板保持面30a側に押される。
このようにして、基板保持面30aと離れていた基板Sを、基体部30の基板支持面30aと密着させる。
【0032】
ここで、制御部46が、基板Sに付加する荷重を調整する方法は、特に限定されず、例えば、ヒータ40が熱膨張部材42を加熱する加熱量を一定量大きくして、アクチュエータ39が付与する荷重を変化させて、荷重を変化させる毎に接触検出機構34が検出した接触状態が所望の状態となっているかを確認し、所望の接触状態となるまで付与荷重を段階的に変化させる方法や、予め算出した、接触検出機構34の検出値と膜厚と付与荷重の関係に基づいて、アクチュエータ39により付与する荷重を変化させる方法等を用いることができる。
【0033】
ここで、図3では図示を省略したが、基板ホルダ13は、さらに、ホルダ通信部48を有する。
ホルダ通信部48は、基体部30の端部に配置され、接触検出部34の温度センサ38及び荷重付与機構36の各アクチュエータ39のヒータ40と接続している。ホルダ通信部48は、接触検出部34が検出した温度測定信号を、後述する基体通信部54に出力する。
なお、ホルダ通信部48は、接触検出部34(温度センサ38)による温度の測定信号(電気信号)を、そのまま基体通信部54に出力してもよく、あるいは、接触検出部34による温度測定信号をデジタルの信号に変換して基体通信部54に出力してもよい。
【0034】
ホルダ装着部14は、基板ホルダ13及び基板Sを加熱及び/または冷却する温調プレート50と、基板ホルダ13を支持する支持部52と、基板ホルダ13のホルダ通信部46から出力された信号を受信する基体通信部54とを有する。
【0035】
温調プレート50は、内部に温調機構50aが配置された板状部材であり、真空チャンバ12の上面に配置されている。
温調プレート50は、基板ホルダ13を加熱、冷却し、基板Sの温度を調節する。
ここで、温調機構50aとしては、温調プレート50内に管路を通し、その管路内に温媒を循環させることで温調プレート50を加熱冷却する方法、温調プレート内にペルチェ素子を配置し印加電流を制御することで、温調プレートを加熱冷却する方法等が例示される。また、温調プレート50を加熱のみで温度制御する場合は、電熱線を配置し、加熱する方法も用いることができる。
【0036】
支持部52は、温調プレート50に配置され、基板ホルダ13の外周を支持するフックを有する。また、支持部52のフックは、昇降機構により図1中上下方向に移動する。
支持部52は、基板Sを支持するフックを温調プレート50側(図1(A)に示す位置)に移動させて、基板ホルダ13の蒸着源16側の面から、基板ホルダ13の縁部を支持し、基板ホルダ13の基体部30(の基板保持面30aとは反対側の面)と温調プレート50とを密着させる。
また、蒸着を終了した後等の基板ホルダ13を支持部52から取り外す場合は、支持部52は、フックを蒸発源16側(図1(B)に示す位置)に移動させ、基板ホルダ13を密着した上体から開放し、基板ホルダ13を取り外す。
ここで、昇降機構としては、例えば、リニア機構、バネの付勢力により移動させる機構、ワイヤにより移動させる機構等を用いることができる。
【0037】
基体通信部54は、温調プレート50の基板ホルダ13側の面に配置される。基体通信部54は、基板ホルダ13の支持時に、基板ホルダ13のホルダ通信部48と接触し、ホルダ通信部48から出力された信号を受信する。
図4(A)に、ホルダ通信部48および基体通信部54を拡大した模式図を示す。ホルダ通信部48は、温度センサ38に電気的に接続するソケット49(49aおよび49b)を有する。他方、基体通信部54は、互いに独立した信号線(電気信号線)に接続する、個々のソケット49に個々に挿入されて係合する端子55(55aおよび55b)を有する。なお、本発明においては、ホルダ通信部48が端子55を有し、基体通信部54がソケット49を有する構成でもよい。
前述のように、支持部52が基板ホルダ26(フック)を上昇させて基板ホルダ13と温調プレート50とを密着させた際に、端子45がソケット49に挿入して係合し、ホルダ通信部48と基体通信部54とが電気的に接続される。
【0038】
ソケット49と端子55の形状には、特に限定はないが、好ましくは、例えば、図4(B)に模式的に示すように、端子55を棒状(円柱状)、ソケット49を円筒状として、端子55をソケット49に圧入(嵌挿)する構成とする。あるいは、図4(C)に模式的に示すように、端子55を棒状として、筒状のソケット39の内部に端子45が圧入可能な導電部材Cを設けて、端子55をソケット49に圧入する構成とする。
正確な温度測定を行なうためには、ホルダ通信部48と基体通信部54(両者のコネクタ部)の接触電気抵抗を防ぐことが重要である。そのため、このような構成とすることにより、ホルダ通信部48と基体通信部54との密着力を向上し、かつ、接触面積も向上して、ホルダ通信部48から基体通信部54へ、より安定した信号の出力が可能となる。
【0039】
蒸発源16は、真空チャンバ12内のホルダ装着部14に対向し、かつホルダ装着部14よりも鉛直方向下側に配置されており、蒸発材料Mを加熱し、溶融させて、基板Sに向けて蒸発させる。
蒸発源16としては、例えば、蒸発材料Mを収容(または貯留)するルツボと、ルツボを加熱し蒸発材料を加熱する加熱源とで構成され、加熱源によりルツボを抵抗加熱することで、蒸発材料Mを加熱し蒸発させる蒸発源を用いることができる。
【0040】
また、蒸発源は、上記構成のものに限定はされず、ルツボには、いわゆるボート型のルツボや、上端面が開放する円筒形などのカップ型のルツボなど、各種のルツボが全て利用可能である。
また、蒸発源の加熱機構としては、抵抗加熱用のルツボに電流を印加し加熱する加熱機構に限定はされず、誘導加熱や電子線(EB)加熱等、蒸着時の真空度などの成膜条件等に応じて利用可能であれば、真空蒸着で利用される各種の加熱機構が全て利用可能である。
【0041】
ここで、蒸発源には、蒸発材料(またはルツボ)の温度を測定する温度測定手段を配置してもよい。ここで、温度測定手段としては、熱電対などが例示される。
温度測定手段により温度を測定し、その測定結果に応じて、蒸発源による加熱量を調整することで、蒸発材料の温度を一定にすることができる。これにより、蒸発材料を安定して蒸発させることができる。
【0042】
なお、本実施形態の真空蒸着装置10では、蒸発源16を1個としたが、本発明はこれに限定されず、複数の蒸発源16を配置してもよく、また、真空蒸着装置10は、互いに異なる蒸発材料を収容する複数の蒸発源16によって、多元の真空蒸着を行うものであってもよい。
【0043】
温度制御部56は、制御部46から送信される基板Sの温度の測定値に基づいて、加熱冷却機構50aの加熱・冷却量を制御し、基板Sの温度を所望の温度にする。
【0044】
以下、図1に示す真空蒸着装置10の作用を説明することにより、本発明の基板ホルダ及び真空成膜装置について、より詳細に説明する。
【0045】
まず、基板Sを基板ホルダ13に収容する。
次に、蒸発源16に所定量の蒸発材料を充填し、かつ、基板Sを収容した基板ホルダ13をホルダ装着部14の所定位置に装着する。具体的には、基板ホルダ13をフックにより固定して、温調プレート50と基板支持面30aとを密着させ、かつ、基体通信部54とホルダ通信部46とを接続する。
【0046】
次いで、真空チャンバ12を閉塞して、真空ポンプ18によって排気して、所定の真空度まで排気する。
真空ポンプ18により排気して、系内(つまり真空チャンバ12内)を高い真空度する。さらに、ガス導入部等からアルゴンガスを系内に導入して、0.01〜3Pa程度の真空度(以下、便宜的に中真空とする)とすることが好ましい。
【0047】
真空チャンバ12内の真空度が所定の真空度になった時点で、蒸発源16に通電して蒸発材料の加熱を開始する。
【0048】
その後、蒸発材料M(及び/または、ルツボ)の温度が所定の温度になった時点で、、基板Sへの蒸着膜の形成を開始する。
基板Sへの蒸着膜の形成時、接触検出部34の温度センサ38は、基板Sの温度を測定し、測定データをホルダ通信部46に送る。ホルダ通信部46に送られた測定データは、基体通信部54に送られ、その後、制御部46に送られる。
制御部46は、接触検出部34の温度センサ38の測定値に基づいて、基板ホルダ13の基体部30の基板支持面30aと基板Sとの(伝熱シート32を介した)接触状態を検出し、検出結果に基づいて、荷重付与機構36が基板Sに付与する荷重を調整する。具体的には、基板Sと基体支持面30aとが離れていること(つまり、密着していない)ことを検出したら、荷重付与機構36のヒータ40により熱膨張部材42を加熱して基板Sに付与する荷重を大きくし、基板Sを基板支持面30aに密着させる。
さらに、温度制御部56は、接触検出部34で測定された測定値に基づいて制御部46で算出された基板Sの温度の測定データに基づいて、温調プレート50の加熱・冷却量を調整する。
このように、基板Sに付与する荷重及び温度プレートの50への加熱・冷却量を調整しつつ、基板Sに蒸着膜を形成する。
【0049】
所定の層厚の蒸着膜を形成したら、蒸発源16の加熱を停止し、真空チャンバ12内を大気圧に戻して、真空チャンバ12を開放して、蒸着膜を形成した基板Sを取り出す。
なお、蒸着膜の層厚(膜厚)は、予め知見した加熱条件に応じた成膜レートによって制御してもよく、変位計等を用いて層厚を直接測定して制御してもよく、水晶振動子等を用いる蒸発量計等によって制御してもよい。
このようにして、真空蒸着装置10は、基板S上に蒸発材料の蒸着膜を形成する。
【0050】
本発明によれば、接触検出機構34の検出結果に基づいて、荷重付与機構36が基板Sに付与する荷重を調整することで、蒸着材料が蒸着して基板の自重が変化した場合でも基板の自重に合わせて適切な荷重を付加することができ、基板Sを基板ホルダ13の基板保持面30aに密着させることができる。つまり、基板Sと基板ホルダ13との密着不良を防止できる。また、基板を基板支持面Sに沿って湾曲させて保持することで、基板が大型化した場合でも基板を撓ませることなく安定して保持することができる。
また、基板Sと基板ホルダ13との接触状態を検出して、付加荷重を調整することで、適切な荷重で基板Sを保持することができ、過度な荷重を付与することで基板Sが変形することを防止できる。
このように、適切な荷重を付加して基板Sと基板ホルダ13とを密着させることで、基板ホルダから基板に安定して伝熱することができ、基板Sの面内温度を均一にすることができ、基板により高品質な蒸着膜を形成することができる。
【0051】
さらに、基板を保持する基板ホルダに配置した接触検出機構の温度センサにより基板の温度を測定することで、基板と測定部との接触状態、接触位置を一定にすることができ、一定の条件で基板の温度を測定することができる、つまり、正確に基板の温度を測定することができる。
さらに、測定値を電気的な信号として基板ホルダから取り出すことにより、ホルダ通信部と基体通信部との接触状態によらず、測定値を取り出すことができる。これにより、基板ホルダを着脱可能な構成としても、検出した測定データをそのまま制御部に送ることができ、基板の接触状態、温度を変動なく検出することができる。
【0052】
測定値を一定条件で検出できることで、基板の温度を安定して調整することができ、基板上に均一で高品質な蒸着膜を形成することができる。
これにより、低温で膜厚の厚い蒸着膜を蒸着させる場合でも、基板上に均一で高品質な蒸着膜を形成することができる。
このように、基板の温度を安定できることで、直接方式の放射線画像検出器(フラットパネル検出器(FPD(Flat Panel Detector))の厚膜の光導電層を好適に形成することができ、中でも特に、FPDの光導電層となるアモルファスセレンの蒸着膜を形成することができる。
【0053】
また、係止部44を断熱材で形成することで、ヒータ40及び熱膨張部材42の熱が基板Sに伝達することを防止でき、また、基板Sの熱が熱膨張部材42に伝達することも防止できる。このように、係止部材により基板Sと熱膨張部材42との間で熱が伝わることを防止することにより、基板Sに付加する荷重の制御を簡単にすることができ、基板Sの温度管理も簡単にすることができる。
【0054】
ここで、接触検出機構の温度センサは、本実施形態のように基体部に複数個配置することが好ましいが、本発明はこれに限定されず、一箇所のみに配置してもよく、あるいは、マトリックス状ではなく一次元的に配列してもよい。
本実施形態のように温度センサを複数箇所に配置し、基板の複数箇所の温度を検出することで、基板の一部が離れた場合でも検出することができ、基板と基板ホルダを確実に密着させることができる。
また、基板の複数箇所の温度を検出することで、基板の温度をより正確に検出することができ、基板のエリア毎の接触状態の検出が可能となる。さらに、基板の複数箇所の温度を検出することで、基板のエリア毎の温度管理も可能となる。
【0055】
また、制御部は、基体部の突起部にそれぞれ複数配置された荷重付与機構のアクチュエータが基板に付与する荷重を個別に調整することが好ましい。
このように、アクチュエータ毎に荷重を調整し、基板の領域毎、特に、基板保持面の断面が直線となる方向毎に付加を調整することで、基板に付与する荷重をより少なくすることができ、また、基板の接触状態をより均一にすることができる。
【0056】
ここで、真空蒸着装置10は、さらに、温調プレート50の下面、つまり、温調プレート50と基板ホルダ13との間に、熱をムラなく均一に基板Sに伝えるための伝熱シート(具体的には、熱伝導性シート)を設けることが好ましい。伝熱シートを配置することで、温調プレート50の熱を効率よく、かつ均一に基板ホルダに伝えることができる。
また、本実施形態では、温調プレートの内部に加熱・冷却機構を設けたが、本発明はこれに限定されず、温調プレートを、基板ホルダを支持する支持板と、支持板の基板ホルダに接する面とは反対側の面に配置された加熱・冷却機構とで構成してもよい。この場合は、支持板と加熱・冷却機構との間にも上述した伝熱シートを設けることが好ましい。
【0057】
また、本実施形態では、基板を固定して成膜したが、本発明はこれに限定されず、蒸発材料の成膜時に、基板を回転させてもよく、または、基板を往復移動させてもよい。
また、本発明の真空成膜装置は、基板S(基板ホルダ13)の搬送手段と複数の連接した真空蒸着装置とで構成し、1つの基板Sに複数層の膜を成膜してもよい。
このように、基板を保持する基板ホルダを移動させて基板上に多層の蒸着膜を成膜する場合も、真空蒸着装置の条件に応じて、適切な荷重を付与することができ、基板上に多層の蒸着膜を形成し、基板の自重が変化しても基板と基板ホルダとを密着させることができ、基板に均一な蒸着膜を形成することができる。また、真空蒸着装置によらず、同様の条件で基板と基板ホルダとの接触状態を検出できる。
【0058】
また、基板ホルダは、さらに、基板の荷重付与機構が配置されていない端面側に沿って、ガイドを配置することが好ましい。ガイドを配置することで、基板が基板支持面の断面が直線となる方向にずれることを防止できる。
【0059】
また、本実施形態では、荷重付与機構のアクチュエータを基板の両端面に配置したが、本発明はこれに限定されず、基板の一方の端面側は、固定し、基板の他方の端面側のみにアクチュエータを配置した構成としてもよい。つまり、基板の一方の端面は固定し、基板の他方の端面に付与する荷重のみをアクチュエータにより調整しても、適切な荷重で、基板と基板ホルダとを密着させることができ、基板を均一に加熱することができ、基板上に均一な蒸着膜を形成することができる。
【0060】
また、本実施形態では、基板の向い合う2つの端面に対してアクチュエータを配置したが、基板の4辺に対してアクチュエータを配置し、各アクチュエータにより基板の4辺に付与する荷重を調整してもよい。
【0061】
また、上述したように、基板により適切な荷重を付与することができ、基板と基板ホルダとの密着状態をより精密に調整できるため、アクチュエータを複数を配置することが好ましいが、本発明はこれに限定されず、基板の端面に付与する荷重を1つのアクチュエータで調整してもよい。つまり、基板の両端面にそれぞれ1つずつのアクチュエータを配置した構成としてもよい。
【0062】
また、上記実施形態では、基体部の基板支持面を凹形状、つまり、基板支持面とは反対側の面側に凸となる形状としたが、本発明はこれに限定されず、基体部の基板支持面を凸形状、つまり、基板を接する面側に凸となる形状としてもよい。
図5は、本発明の基板ホルダの他の一例の概略構成を模式的に示す模式図である。
なお、図5に示す基板ホルダ60は、基体部62及び荷重付加機構64の構成を除いて他の構成は、図2に示す基板ホルダ13と同様であるので、基板ホルダ13と同様の構成部分には同様の符番を付し、その詳細な説明は省略し、基板ホルダ60に特有の部分について説明する。
【0063】
基板ホルダ60は、基板Sを保持する基体部62と、伝熱シート32と、接触検出機構34と、荷重付与機構64とを有する。また、図5では、図示を省略したが、図1及び図2に示す基板ホルダ13と同様に、制御部及びホルダ通信部も有する。
【0064】
基体部62は、所定方向(図5(A)中左右方向)の断面の基板Sと接する(正確には、伝熱シート32を介して基板Sと接する)領域が凸、つまり、基板支持面62aが端部から中央部に向かうに従って、基板支持面62aとは反対側の面との距離が長くなる曲線となり、かつ、所定方向に垂直な方向(図5(A)中紙面奥行き方向)の断面の基板支持面62aが直線となる板形状である。
また、基体部62は、基板支持面62aとは反対側の面の端部に、支持部52のフックにより支持される突起部62bが設けられている。
【0065】
荷重付与機構64は、複数のアクチュエータ66を有する。
アクチュエータ66は、それぞれ基板支持面62aと突起部62bとの間の2つの面(つまり、基板支持面62aの曲線の両端となる側の2つの側面)に配置されている。ここで、図4には、両端にそれぞれ1つずつのアクチュエータ66を示すが、アクチュエータ66は、図4中紙面奥行き方向に所定間隔離間して、複数配置されている。
【0066】
このアクチュエータ66は、ヒータ68と、熱膨張部材70と、係止部72とを有し、基体部66の側面にヒータ68、熱膨張部材70、係止部72の順で積層されている。
係止部72は、基板Sの端面の上下面(つまり、蒸着膜が形成される面とその反対側の面)を挟んで支持する。
荷重付与機構64は、アクチュエータ66の係止部72により基板Sを外側に荷重を付与することで(つまり、基板Sを引っ張ることで)、基板支持面62aに密着させて支持する。
また、荷重付与機構64は、ヒータ68により熱膨張部材70を加熱して熱膨張部材70を膨張させ、係止部72をより外側移動させることで、基板Sに付与している引っ張り方向の荷重を大きくすることができる。このように、基板Sを引っ張る力をより大きくすることで、凸状の基板保持面62aにより密着させることができる。これにより、基板Sが基板ホルダ60と離れた場合は、荷重付与機構68が基板Sに付与している引っ張り荷重をより大きくすることで、基板ホルダ60の基体部62の基板保持面62a(より正確には伝熱シート32)に密着させることができる。
【0067】
このように、基体部の基板保持面を凸形状にし、基板に引っ張り荷重を付与することでも基板を基板ホルダに密着させることができる。また、荷重付与機構の荷重を調整することで、適切な荷重で基板と基板ホルダを密着させることができ、基板を変形させることなく、均一な蒸着膜を形成することができる。
【0068】
以上、本発明に係る基板ホルダ及び蒸着装置について詳細に説明したが、本発明は、以上の実施形態に限定されるものではなく、本発明の要旨を逸脱しない範囲において、各種の改良や変更を行ってもよい。
【0069】
また、上述の実施形態では、基板の温度調整にも用いることができ、装置を構成する部材を少なくすることができるため、接触検出機構として、温度センサを用い、温度変化により、基板と基板ホルダとの接触状態を検出したが、本発明はこれに限定されない。
例えば、変位センサを上述した温度センサと同様に基体部側に配置し、基板Sの裏面の位置の変位を検出してもよく、また基板表面側に変位センサを配置し、基板表面の蒸着膜が形成される速度以上に基板の表面の変位が発生しているかを検出してもよい。
このように、変位を検出する場合は、基板と基板保持面との距離に応じて調整する荷重を調整してもよい。
また、基板が基体部と接触している間は所定電流が流れるようにし、基板と基体部とが離れると電流が流れなくなる電気的なセンサにより、基板と基体部との接触状態を検出してもよい。
なお、接触検出機構として温度センサ以外の検出端子を用いる場合は、検出素子の他に温調プレートによる基板の加熱を調整するために基板の温度を検出する温度センサを設けることが好ましい。
【0070】
また、荷重付与機構に用いるアクチュエータもヒータと熱膨張部材との構成に限定されず、空気圧、電磁力、静電力等の種々の方式の付加する荷重を調整できるアクチュエータを用いることができる。例えば、エアシリンダーを用い、封入する空気の量で伸縮させるアクチュエータ、櫛歯状の電極を用い、ステップで電極を移動させるアクチュエータ等を用いることができる。
【0071】
また、本実施形態では、着脱可能な基板ホルダを用いたが、基板ホルダを所定位置に固定した真空蒸着装置としてもよい。
また、本実施形態では、真空蒸着装置の例について説明したが、本発明は、これに限定はされず、スパッタリング装置、CVD装置等、各種の真空成膜装置(気相堆積法による成膜装置)等、種々の基板上に膜を形成する装置に用いることができる。
【図面の簡単な説明】
【0072】
【図1】(A)は、本発明の真空成膜装置の一実施形態の真空蒸着装置の概略構成を模式的に示す正面図であり、(B)は、真空蒸着装置の基板ホルダ及び基板ホルダを支持する支持部を拡大して示す拡大正面図である。
【図2】図1に示す基板ホルダの概略構成を模式的に示す正面図である。
【図3】図2に示した基板ホルダの上面図である。
【図4】(A)は、図1に示す真空蒸着装置に利用可能なホルダ通信部および基体通信部の概略構成を模式的に示す図、(B)および(C)は、それぞれ、ホルダ通信部と基体通信部との接合の概略構成を模式的に示す部分断面図である。
【図5】本発明の基板ホルダの他の一例の概略構成を模式的に示す正面図である。
【符号の説明】
【0073】
10 蒸着装置
12 真空チャンバ
13 基板ホルダ
14 ホルダ装着部
16 蒸発源
18 真空ポンプ
20 バルブ
22 排気経路
30 基体部
32 伝熱シート
34 接触検出機構
36 荷重付与機構
38 温度センサ
40 ヒータ
42 熱膨張材料
44 断熱材
46 制御部
48 ホルダ通信部
50 温調プレート
52 支持部
54 基体通信部
56 温度制御部
S 基板

【特許請求の範囲】
【請求項1】
成膜される基板を保持する基板ホルダであって、
曲面形状であり、前記基板と当接する基板支持面を有する基体部と、
前記基板と前記基体支持面との接触状態を検出する接触検出機構と、
前記基体部の前記基板支持面の外側に配置され、前記基板の端面に対して荷重を付与し、前記基板を支持する荷重付与機構と、
前記接触検出機構の出力に基づいて前記荷重付与機構が前記基板に付与する荷重を制御する制御部とを有する基板ホルダ。
【請求項2】
真空成膜法によって基板に成膜を行なう真空成膜装置であって、
前記基板と当接する基板保持面を備え、前記基板保持面が曲面形状であるホルダと、
前記基板と前記基体支持面との接触状態を検出する接触検出機構と、
前記ホルダの前記基板保持面の外側に配置され、前記基板の端面に対して荷重を付与し、前記基板を支持する荷重付与機構と、
前記接触検出機構の出力に基づいて前記荷重付与機構が前記基板に付与する荷重を制御する制御部とを有する真空成膜装置。
【請求項3】
前記接触検出機構は、複数の前記検出端子を有し、
前記検出端子により、複数箇所の前記基板と前記ホルダとの接触状態を検出する請求項2に記載の真空成膜装置。
【請求項4】
前記検出端子は、前記ホルダの前記基板と接触する面に設置され、前記基板の変位を検出する変位センサである請求項3に記載の真空成膜装置。
【請求項5】
前記検出端子は、前記ホルダの前記基板と接触する面に設置され、前記基板の温度を検出する温度センサである請求項3に記載の真空成膜装置。
【請求項6】
前記制御部は、前記荷重付与機構が前記基板に付与する荷重を一定量ずつ変化させ、前記基板への荷重を調整する請求項2〜5のいずれかに記載の真空成膜装置。
【請求項7】
前記ホルダは、前記基板と接触する面に伝熱シートを有する請求項2〜6のいずれかに記載の真空成膜装置。
【請求項8】
前記荷重付与機構は、前記基板の一方の端面に荷重を付与する第1のアクチュエータと、前記端面に対向する他方の端面に荷重を付与する第2のアクチュエータとを有する請求項2〜7のいずれかに記載の真空成膜装置。
【請求項9】
さらに、前記ホルダを着脱するホルダ装着機構を有する請求項2〜8のいずれかに記載の真空成膜装置。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【公開番号】特開2009−13435(P2009−13435A)
【公開日】平成21年1月22日(2009.1.22)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2007−173230(P2007−173230)
【出願日】平成19年6月29日(2007.6.29)
【出願人】(306037311)富士フイルム株式会社 (25,513)
【Fターム(参考)】