説明

基板上に物質を位置付けるインクジェット装置、基板の上に物質を位置付ける方法、及び、インクジェット装置の使用

本発明は、基板の上に物質を位置付けるためのインクジェット装置を提供し、当該装置は、少なくとも、物質を含む液滴を噴出するよう設けられるノズルを含み、当該装置は、基板が、基板上への液滴の着座前に、着座中に、及び/又は、着座後に加熱され得るよう、少なくとも1つの加熱素子をさらに含む。


【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、基板上に物質を位置付けるためのインクジェット装置に関する。本発明は、さらに、インクジェット装置を使用して、基板上に物質を位置付けるための方法に関する。本発明は、さらに、インクジェット装置の使用に関する。
【背景技術】
【0002】
本発明は、基板上に物質を位置付けるためのインクジェット装置、方法、及び、インクジェット装置の使用を開示している。特に医療診断のために、特殊な物質が極めて精密且つ正確な方法で位置付けられる基板が必要とされる。これらの物質は、普通、数多くの生化学的試験又は基板上の反応を遂行するために基板上に位置付けられる。本発明に従ったインクジェット装置、基板上に物質を位置付けるための方法、及び、インクジェット装置の使用は、好ましくは、基板上への物質の印刷プロセスに適用され、そこでは、物質は基板の材料のスポット領域の上に或いは内に特殊な方法で位置付けられる。基板のスポット領域内で物質の集中及び物質の分配を制御し得ることが重要である。
【0003】
インクジェット装置は一般的に既知である。例えば、米国特許出願2004/0196319A1は、複数のノズルを有する記録ヘッドと、カートリッジと、移動機構と、駆動機構と、射出データを光学的に検出する検出機構と、コントローラとを含む画像記録装置を開示している。複数のノズルは、複数のノズル群に分割されている。コントローラは、ノズル群のそれぞれの射出タイミングを如何なる他のノズル群の射出タイミングからも異ならせる。上記に引用される米国特許出願に従った記録ヘッド又は複数の記録ヘッドは、制御動作が遂行され得るよう、印刷地域の外側に位置付けられ得る。制御動作は、例えば、インクがノズル又は類似物を塞いでいる故に1つ又は複数の印刷ヘッド又は印刷ノズルが正しく作動しないか否かの質問への回答を提供し得る。印刷ヘッドが制御又は検出地域内の印刷地域の外側に位置付けられるとき、印刷ヘッド又は印刷ノズルは、印刷ヘッドがインク液滴を印刷地域内に塗布する記録媒体に面しない。検出地域では、液滴の軌道は光検出器によって検出される光ビームと交差し、印刷ヘッドの正しい作動の制御をもたらす。既知の装置の1つの欠点は、基板のスポット領域内での物質の分配は作用可能でないことである。これはさらなる診断目的のために被印刷物質を使用する可能性を制限する。何故ならば、特に、例えば、蛍光粒子の最低検出可能濃度は重要だからである。
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
基板のスポット地域又はスポット領域内の被印刷物質の制御可能な所定の分布の可能性を有する基板上への物質の液滴の制御された位置付けのためのインクジェット装置を提供することが本発明の目的である。
【課題を解決するための手段】
【0005】
上記の目的は、本発明に従って基板の上に物質を位置付けるためのインクジェット装置及び方法によって並びに本発明に従ったインクジェット装置の使用によって達成される。基板の上に物質を位置付けるためのインクジェット装置は、少なくとも、物質を含む液滴を噴出するよう設けられるノズルを含み含む。インクジェット装置は、基板が、基板上への液滴の着座前に、着座中に、及び/又は、着座後に加熱され得るよう、少なくとも1つの加熱素子をさらに含む。
【0006】
基板を加熱することによって、スポット地域内の被印刷物質の所定分布をもたらすことが極めて有利に可能であり、それは、特に、とりわけ、被印刷地域の間のスポット地域で起こる生化学反応の結果を検出する可能性を増大するために極めて有益である。例えば、より小さな地域内の被印刷物質の分子のより高い濃度を伴う被印刷物質の分配は、(具体的には蛍光標識を用いて)標識分子がより高い濃度でその地域に固定され或いは結合されることを可能にし、それによって、より良好な光検出性をもたらす。
【0007】
さらに、スポット地域内で被印刷物質の所定分布をもたらすことは、スポット地域で起こる(生化学)反応(具体的にはハイブリッド形成法反応)の可能性を増大するためにも極めて有益である。
【0008】
極めて好ましくは、印刷ヘッドは、基板の第一の側に設けられ、少なくとも1つの加熱素子は、第一の側と反対側の基板の第二の側に設けられる。これは、基板の第一の側の空間が加熱素子のために使用される必要がないという利点を有する。これは特に重要である。何故ならば、印刷ヘッドの回りの空間は高価だからである。何故ならば、印刷ヘッドが基板に近接して位置付けられれば位置付けられるほど、液滴の着座はより正確だからである。
【0009】
さらに、液滴は、基板上への液滴の着座前に加熱素子によって直接的に加熱されない。
【0010】
さらに、加熱素子は、光源、具体的には、LED(発光ダイオード)及び/又は赤外光源及び/又は赤外光と異なる吸収波長で放射する光源である。それによって、加熱素子を提供する極めて費用効率的な方法が本発明に従って選択される。
【0011】
本発明の好適実施態様において、インクジェット装置は、複数の加熱素子を含む。これは、基板の関連領域のみを加熱することが可能であるのに対し、印刷プロセスが起こらない基板の他の領域は加熱される必要がないという利点を有する。
【0012】
基板は、複数の基板地域を含み、各基板地域は、好ましくは、膜ホルダによって保持される分離された膜であることが、さらに好ましい。それによって、複数の分離された膜が、発明的なインクジェット装置の使用によって生ずることが可能である。
【0013】
極めて好ましくは、少なくとも1つの加熱素子が、各基板地域に割り当てられる。これは、一層より良好でより適合された基板の加熱が可能であるという利点を有する。
【0014】
インクジェット装置は、印刷テーブル及び取付プレートを含み、取付プレート又は取付プレートは、各膜ホルダのための凹部又は孔を含み、且つ/或いは、各基板地域に割り当てられる加熱素子は、凹部又は孔内に設けられることが、さらに好ましい。それによって、異なる膜地域の精密な加熱が可能である。
【0015】
本発明によれば、インクジェット装置を使用することが一層好ましく、インクジェット装置は、さらに、(好ましくは安定的で重い)印刷テーブル及び印刷ブリッジと、線形ステージに剛的に取り付けられ、印刷テーブルに対して第一方向(X方向)に沿う線形動作を可能にする取付プレートとを含み、印刷ヘッドは、印刷ヘッドホルダの上に取り付けられ、印刷ヘッドホルダは、線形ステージに取り付けられ、第二方向(Y方向)に沿う印刷ブリッジに対する線形動作を可能にする。それによって、印刷物の製造が極めて費用効率的に行われ得るよう、物質の液滴を塗布の大きな地域に印刷し或いは解放することが可能である。何故ならば、大きな基板又は個々の膜は1つのバッチとして印刷され得るからである。
【0016】
本発明によれば、基板は、平坦な基板、構造化された基板、又は、多孔性の基板であることが好ましい。より好ましくは、基板は、ナイロン膜、ニトロセルロース膜、又は、PVDFである。基板は好ましくは多孔性であるので、スポット又は液滴は、表面上に位置するのみならず、膜内に浸透する。
【0017】
さらに好ましくは、基板は、複数の基板場所を含み、基板場所は、基板場所の1つに位置付けられる液滴の少なくとも平均直径によって互いに分離される。それによって、物質の異なる液滴を基板上の精密な位置に精密に独立して配置することが可能である。複数の液滴を同一の基板場所に配置することも可能であり且つ有利である。
【0018】
本発明によれば、基板は透明であり或いは強く半透明であることが極めて一層好ましい。極めて好ましくは、物質は、異なる分子又は異なる化合物、特に、生体分子が存在する水溶液である。もちろん、生体分子が安定的であり且つ印刷可能である、あらゆる種類の溶剤が、本発明に従って使用され得る。例えば、溶剤中に色素をもたらすことによって、加熱素子の放射線を吸収する溶剤を使用することも可能である。
【0019】
本発明は、インクジェット装置を使用して基板の上に物質を位置付けるための方法も含み、インクジェット装置は、少なくとも、物質を含む液滴を噴出するために設けられるノズルを含む印刷ヘッドを含み、インクジェット装置は、基板が、基板の着座前に、着座中に、及び/又は、着座後に加熱され得るよう、少なくとも1つの加熱素子をさらに含む。
【0020】
それによって、基板のスポット領域における極めて有利で制御可能に定められた物質の分布が達成可能である。
【0021】
本発明によれば、基板は、1つのスポットにある物質が、第二の側に面する基板の下半分よりも基板の第一の側に面する基板の上半分により集中されるよう加熱され、印刷ヘッドは、基板の第一の側に設けられ、少なくとも1つの加熱素子は、第一の側と反対側の前記基板の前記第二の側に設けられることが好ましい。それによって、蛍光粒子の検出がより一層簡略化されるよう物質の有利な分布を定めることが可能である。
【0022】
さらに好ましくは、基板は、1つのスポットにある物質が基板の上半分に実質的に配置されるよう加熱される。それによって、標識(例えば、蛍光粒子)のより良好な検出可能性を伴うより一層大きな集中が可能である。
【0023】
一層さらなる好適実施態様では、第一物質が第一基板場所に位置付けられ、第二物質が第二基板場所に位置付けられるよう、複数の異なる物質が基板に塗布される。これは、1つの同一の印刷プロセスを遂行することによって、並びに、印刷するために印刷ヘッド又は物質貯槽を置換するだけによって、基板上の多数の異なる物質が、どれが生化学分析カートリッジ内で使用される得るかを理解するのが可能であるという利点を有する。
【0024】
本発明は、本発明に従った発明的なインクジェット装置の使用も含み、そこでは、物質は、生化学反応物質及び/又は核酸及び/又はポリペプチド及び/又はタンパク質を含む。そのような目的のために発明的なインクジェット装置を使用することによって、基板上に特定の数の物質を極めて正確に精密に配置することが可能である。
【0025】
本発明のこれらの並びに他の特徴、機能、及び、利点は、本発明の原理を一例として例証する付属の図面と共に理解されるならば、以下の詳細な記載から明らかになるであろう。記載は、実施例の目的のために与えられており、本発明の範囲を制限しない。以下に引用される参照図は、添付の図面に言及している。
【発明を実施するための最良の形態】
【0026】
本発明は、特定の図面を参照して具体的な実施態様に関して記載されるが、本発明は、それらに限定されず、請求項によってのみ限定される。記載される図面は、概略的であるに過ぎず、非限定的である。図面中、一部の素子のサイズは、例証の目的のために、誇張され原寸通りに描写されていない。
【0027】
単数名詞に言及するとき、不定冠詞又は定冠詞、例えば、「a」、「an」、「the」が使用される場合には、特段の断りのない限り、これは複数のその名詞を含む。
【0028】
さらに、明細書中並びに請求項中の第一、第二、及び、第三の用語、並びに、類似用語は、類似素子の間の区別のために使用され、必ずしも順次的又は経時的な順序を示していない。そのように使用される用語は、適切な状況下で置換可能であること、並びに、ここに記載される本発明の実施態様は、ここに記載され或いは例証される以外の順序で動作可能であることが理解されよう。
【0029】
その上、明細書中並びに請求項中の頂、底、及び、下の用語、並びに、類似用語は、記載の目的のために使用され、必ずしも相対的な位置を記載していない。そのように使用される用語は、適切な状況下で置換可能であること、並びに、ここに記載される本発明の実施態様は、ここに記載され或いは例証される以外の向きで動作可能であることが理解されよう。
【0030】
本明細書及び請求項中で使用される「含む」という用語は、その後に列挙される手段に限定されるように解釈されるべきではなく、それは他の素子又はステップを排除しないことが留意されるべきである。よって、「手段AとBとを含む装置」という表現の範囲は、構成素子A及びBのみから成る装置に限定されるべきではない。それは、本発明に関して、装置の唯一の関連構成素子が、A及びBであることを意味する。
【0031】
図1には、本発明に従ったインクジェット装置10の概略的な上面図が示されている。(好ましくは重い花崗岩製の)印刷テーブル50の上には、取付プレート55が、線形ステージに固定的に取り付けられ、花崗岩テーブルに対する線形動作を可能にしている。この取付プレート55には、膜41を備える多数の膜ホルダ44が位置付けられている。膜41は、一体的に、基板40を形成する。従って、膜41は、「基板41」とも呼び得る。明瞭性の故に、以下においては、「基板40」という用語は、「膜41」の印刷可能地域の全体に言及する。膜ホルダ44は、基本的には、単なるリング44である。丸い膜41がこのリング上に溶接される。よって、印刷後、膜41を備えるリング44は、一体的に、最終製品である。印刷ブリッジ51が、取付プレート55に対して移動可能に設けられ、印刷テーブル50に対して剛的に取り付けられている。印刷ブリッジ51は、移動可能な印刷ヘッドホルダ50’を支持している。取付プレート55を備えるステージは、第一方向、即ち、X方向に沿って移動可能である。印刷ヘッド20が、印刷ブリッジ51に対して第二方向、即ち、Y方向に沿って移動可能であるよう、移動可能な印刷ヘッドホルダ51’に取り付けられている。もちろん、取付プレート55は第一方向(X方向)及び第二方向(Y方向)の両方に移動可能であること、並びに、印刷ヘッド20が固定されることも可能である。以下には、本発明の範囲を限定することなしに、第一方向(X方向)に移動可能な取付プレート及び第二方向(Y方向)に移動可能な印刷ヘッド20を備える実施態様のみが記載される。本発明によれば、第一方向(X方向)及び第二方向(Y方向)は直交することが好ましい。それによって、印刷ヘッド20は、取付プレート55の特定地域に亘って移動され得るし、貯槽(図示せず)内に貯蔵される物質の液滴を印刷ヘッド20の付近に解放し得る。膜41は、X方向において均一距離で並びにY方向において均一距離で、位置決めプレート55とも呼ばれる取付プレート55内に取り付けられる。X方向における距離は、Y方向における距離と異なり得る。図1の実施態様には、印刷ヘッド20のノズルから噴出される物質の液滴(図2に示されている)が制御カメラによって検出され得るよう、制御カメラ30が設けられている。図1に示される本発明の好適実施態様において、制御カメラ30は、移動可能な印刷ヘッドホルダ51’上で印刷ヘッド20付近に固定的に位置付けられている。
【0032】
印刷テーブル50は、好ましくは、花崗岩テーブルの形態で提供される。代替的に、他の極めて重い材料も使用され得る。本発明によれば、印刷テーブル50は、振動外乱を殆ど有さない環境に配置されなければならない。精密線形ステージが、花崗岩テーブル(印刷テーブル50)に対して取り付けられ、ステージ上に取り付けられる取付プレート55は、本質的に、第一方向(X方向)に移動する。
【0033】
図2には、個々の膜ホルダ44及び取付プレート55の一部の断面図の概略的な表示が示されている。膜ホルダ44は、基板40の一部としての膜ホルダ44を支持している。1つの膜41は、基板地域41との呼ばれる。各個別の膜ホルダ44は、取付プレート55上に配置されている。基板40上には、即ち、各膜41上には、個々の液滴又は液滴の点(図2中に参照記号22によって概略的に示されている)が互いに離間して配置され得るよう、複数の基板場所42が設けられている。それによって、基板場所42のそれぞれの上に異なる種類の物質を計量分配し或いは位置付けることが可能である。膜ホルダ44は、取付プレート55又は位置決めプレート55の孔57内に位置付けられている。
【0034】
基板40は、感染症の検出のために使用される生理活性膜から成る。医療診断は、印刷プロセスの極めて高い信頼性を要求する。蛍光パターンの読出しは、病気を特定の捕捉プローブの位置付けに直接的に関連付ける。従って、基板40上での捕捉プローブの正しい位置付けのために極めて信頼性のあるプロセスを有することが必要である。インクジェット印刷は、基板40上の液滴の実際の存在及び配置に関する如何なるフィードバックもない精密投与技法である。問題は、基板40内の物質の分布に関する、即ち、例えば、物質の浸透深度に関する情報がないことである。本発明は、基板40内の物質の分布を制御する可能性を記載する。通常、液滴22は、基板40上に位置付けられるべき物質23を含有する。液滴22は、通常、溶剤、例えば、水又はアルコールも含有する。溶剤は、通常、液滴22が基板40上に配置された後に気化する。加熱素子70、具体的には、専ら或いはとりわけ、赤外光及び/又は熱放射線を放射する光源(例えば、LED、発光ダイオード)を用いて、基板40上への液滴22の着座前、着座中、及び/又は、着座後に、基板40を制御可能に加熱することが可能である。
【0035】
インクジェット装置10の印刷ヘッド20は、好ましくは、基板40の第一の側40’(「上」)に配置され、加熱素子70は、好ましくは、基板40の第二の側40”(「下」)に配置され、第二の側40”は、第一の側40’の反対に配置されている。加熱素子70は、図2中に概略的にのみ示されている、即ち、例えば、接続線又は類似物なしに示されている。処理及び/又は制御装置(図示せず)によって加熱素子70を活性化し得るために、そのような接続線が存在しなければならないことは当業者に明らかである。好ましくは、加熱素子70は、光源として設けられる。
【0036】
図3には、複数の膜地域41,41a,41b及び加熱素子70,70a,70bを備える取付プレート55の概略的な上面図が示されている。各膜地域41,41a,41bには、1つの加熱素子70,70a,70bが割り当てられている。これは、例えば、もし加熱素子70aが活性化されるならば、膜地域41aに割り当てられた加熱素子70aが、膜地域41aを加熱し得ることを意味する。同一のことが膜地域41bに割り当てられる加熱素子70b並びに膜地域41に割り当てられる加熱素子70に当て嵌まる。基板40上の異なる位置に配置される、この複数の加熱素子70を用いて、膜地域41を精密に独立的に加熱することが可能である。これによって、液滴22の着座前に、液滴22の着座中に、及び/又は、液滴22の着座後に、膜地域41を加熱することが可能である。
【0037】
図4には、発明的なインクジェット装置10の取付プレート55の代替的な実施態様の概略的な例証が示されている。取付プレート55のこの代替的な実施態様において、膜ホルダ44は、取付プレート55の凹部56内に配置されている。これらの凹部56には、加熱素子70は概略的に示されている。膜ホルダ44上に、膜地域41が配置されている。
【0038】
図5aには、膜41又は基板地域41の一部が上から示されている。基板地域41上には、複数の基板場所42,42a,42bが定められている。基板場所42,42a,42bは、液滴22が本発明に従ったインクジェット装置10によって位置付けられるべき場所である。複数の液滴を単一の基板場所42の上に配置することも可能である。印刷ヘッド20によって噴出され且つ基板40上に着座された液滴22は、互いに対する基板場所42,42a,42bのそれぞれの距離43’(又はピッチ)よりも低い平均直径43を備えて、基板場所42,42a,42bの回りで特定の液滴地域22’又はスポット22’を覆う。極めて好ましくは、スポット22’は、単一の或いは複数の液滴22から成る。
【0039】
図5bには、基板地域41の上面図が示されており、そこでは、複数の基板場所42が、小さな円で表示されている。本発明によれば、診断目的のために基板地域41の膜を使用するために、多くの異なる物質が、これらの異なる基板場所42上に位置付けられ得る。本発明によれば、1つの群42’の基板場所42及びそれらの各物質内で完全な組の試験を遂行するために、幾つかの群42’の基板場所42を定めることが可能である。
【0040】
図6には、物質23のスポット22を備える基板40/膜41のより詳細な断面図が示されている。加熱素子70は、基板40/膜41より下に設けられている。さらに、2つの液滴22が、基板40に向かう、それらの動作中に示されている。液滴22は、概ね、物質23並びに溶剤(図示せず)を含む。溶剤は、膜41上への液滴22の着座後に気化する。溶剤の気化は、液滴22の着座意中の膜41の温度に強く依存する。1つの単一液滴22の溶剤が完全に蒸発される気化時間は、膜の材料内への物質23の浸透深度に影響を及ぼす。膜41上への液滴の着座前及び/又は着座中及び/又は着座後に膜41/基板40を加熱することによって、気化時間真ラビに膜41の材料中への物質23の浸透深度を制御することが可能である。
【0041】
図6には、4つの異なる場合の異なる浸透深度が、異なる線構造によって表示されている。物質23の液滴スポット22’の第一浸透深度は、貫通描写線によって表示されている。第一浸透深度の実施例では、物質23は、基板40又は膜41の上半分48内にのみ配置されるのに対し、基板40の下半分は、物質23が全くないか或いは少なくとも実質的にない。物質23の液滴スポット22’の第二浸透深度は、小さなダッシュを備える破線によって表示され、物質の液滴スポット22’の第三浸透深度は、中間ダッシュを備える破線によって表示され、物質23の液滴スポット22’の第四浸透深度は、長いダッシュを備える破線によって表示されている。第三浸透深度、及び、より強く、第二浸透深度は、物質が基板40の下半分49よりも基板40/膜41の上半分48内により集中され、上半分48が第一の側40’(図2参照)に面し、下半分49が第二の側40”(図2参照)に面するよう設けられる。
【0042】
本発明によれば、印刷プロトコルは、好ましくは、以下の方法で処理される。即ち、好ましくは、膜41は、先ず、印刷テーブル50又は取付プレート55に対して整列される。これを行うことによって、液滴22の位置情報が三次元に知られることが確実にされ得る。引接ヘッド20,20a,20bからの液滴22の噴出は、好ましくは、カメラによって検出される。センサ又はカメラからの全ての信号及びデータは、ソフトウェアによって記録され、メモリ内に記憶される。
【0043】
基板地域41上には、例えば、液滴22が印刷され得る130個のスポット又は基板場所42が設けられ得る。各液滴は、例えば、およそ1nlの容積を必要とする。スポット又は液滴22の直径43は、例えば、200μmであり、それらは例えば400μmのピッチを備えるパターンに配置される。もちろん、例えば、300μm、又は、たった200μm、100μm、若しくは、50μmのより小さなピッチのみを必要とする、より小さなスポットを設けることも可能である。130個のスポットは、例えば、1つの単一印刷ヘッド20で、及び/又は、複数の印刷ヘッドと平行に、及び/又は、異なる物質23を備える複数のノズルと平行に印刷される。例えば、取付プレート55上には、140個の膜ホルダ44が配置され、それらはインクジェット装置10によって1バッチの印刷で処理される。液滴スポットのピッチ43’は、本発明に従って、10〜500μmの範囲内に設けられる。液滴22のスポットの直径43は、実際のピッチ43’の20%〜70%の範囲内にある。液滴22の容積は、(例えば、基板が塗布される物質をどこで強く或いは弱く吸収するかに依存して)スポットの好適サイズに並びに使用される基板40の材料に適合されなければならない。典型的には、液滴22の容積は、約0.001nl〜10nlである。また、印刷する物質23の濃度は変更され得る。
【図面の簡単な説明】
【0044】
【図1】本発明のインクジェット装置の実施態様を概略的に示す上面図である。
【図2】基板地域、膜ホルダ、及び、取付プレートを通じて概略的に示す断面図である。
【図3】複数の膜地域及び加熱素子を備える発明的なインクジェット装置の取付プレートを示す概略図である。
【図4】発明的なインクジェット装置の取付プレートの代替的な実施態様を示す概略図である。
【図5a】膜ホルダと共に基板地域の一部を我利略的に示す上面図である。
【図5b】完全な膜を概略的に示す上面図である。
【図6】物質のスポットを備える基板区画をより詳細に示す断面図である。

【特許請求の範囲】
【請求項1】
基板の上に物質を位置付けるためのインクジェット装置であって、当該装置は、少なくとも、前記物質を含む液滴を噴出するよう設けられるノズルを含み、当該装置は、前記基板が、前記基板上への液滴の着座前に、着座中に、及び/又は、着座後に加熱され得るよう、少なくとも1つの加熱素子をさらに含む、インクジェット装置。
【請求項2】
前記印刷ヘッドは、前記基板の第一の側に設けられ、前記少なくとも1つの加熱素子は、前記第一の側と反対側の前記基板の第二の側に設けられる、請求項1に記載のインクジェット装置。
【請求項3】
前記加熱素子は、光源、具体的には、LED及び/又は赤外光源及び/又は赤外光と異なる吸収波長で放射する光源である、請求項1に記載のインクジェット装置。
【請求項4】
当該インクジェット装置は、複数の加熱素子を含む、請求項1に記載のインクジェット装置。
【請求項5】
前記基板は、複数の基板地域を含み、各基板地域は、好ましくは、膜ホルダによって保持される分離された膜である、請求項1に記載のインクジェット装置。
【請求項6】
少なくとも1つの加熱素子は、各基板地域に割り当てられる、請求項5に記載のインクジェット装置。
【請求項7】
当該インクジェット装置は、固定の印刷テーブルと、移動可能な取付プレートとを含み、該取付プレートは、各膜ホルダのために凹部又は孔を含む、請求項6に記載のインクジェット装置。
【請求項8】
各基板地域に割り当てられる前記加熱素子は、前記凹部又は孔内に設けられる、請求項7に記載のインクジェット装置。
【請求項9】
当該インクジェット装置は、印刷テーブルと、該印刷テーブルに剛的に取り付けられる印刷ブリッジと、第一方向に沿って前記印刷テーブルに対して移動可能に取り付けられる取付プレートとを含み、前記印刷ヘッドは、前記印刷ヘッドが第二方向に沿って前記印刷ブリッジに対して移動可能であるよう、前記印刷ブリッジに取り付けられる移動可能な印刷ヘッドホルダの上に取り付けられる、請求項1に記載のインクジェット装置。
【請求項10】
前記第一方向及び前記第二方向は、直交する、請求項9に記載のインクジェット装置。
【請求項11】
前記基板は、平坦な基板、構造化された基板、又は、多孔性の膜、好ましくは、ナイロン膜、ニトロセルロース膜、又は、PVDF膜である、請求項1に記載のインクジェット装置。
【請求項12】
前記基板は、複数の基板場所を含み、該基板場所は、基板場所の1つに位置付けられるスポットの少なくとも平均直径によって互いに分離される、請求項1に記載のインクジェット装置。
【請求項13】
複数の液滴が、スポットを形成するよう、1つの基板場所の上に重ね合わされる、請求項1に記載のインクジェット装置。
【請求項14】
前記物質は、透明又は強く半透明である、請求項1に記載のインクジェット装置。
【請求項15】
インクジェット装置を使用して基板の上に物質を位置付けるための方法であって、前記インクジェット装置は、少なくとも、前記物質を含む液滴を噴出するために設けられるノズルを含む印刷ヘッドを含み、前記インクジェット装置は、前記基板が、前記基板の着座前に、着座中に、及び/又は、着座後に加熱され得るよう、少なくとも1つの加熱素子をさらに含む、方法。
【請求項16】
前記基板は、1つのスポットにある前記物質が、第二の側に面する前記基板の下半分よりも前記基板の第一の側に面する前記基板の上半分により集中されるよう加熱され、前記印刷ヘッドは、前記基板の前記第一の側に設けられ、前記少なくとも1つの加熱素子は、前記第一の側と反対側の前記基板の前記第二の側に設けられる、請求項15に記載の方法。
【請求項17】
前記基板は、1つのスポットにある前記物質が、前記基板の前記上半分に実質的に配置されるよう加熱される、請求項16に記載の方法。
【請求項18】
第一物質が第一基板場所に位置付けられ、第二物質が第二基板場所に位置付けられるよう、複数の異なる物質が、前記基板に塗布される、請求項15に記載の方法。
【請求項19】
前記物質は、生化学反応物質及び/又は核酸及び/又はポリペプチド及び/又はタンパク質を含む、請求項1に記載のインクジェット装置の使用。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5a】
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【図5b】
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【図6】
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【公表番号】特表2009−520598(P2009−520598A)
【公表日】平成21年5月28日(2009.5.28)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2008−546797(P2008−546797)
【出願日】平成18年12月19日(2006.12.19)
【国際出願番号】PCT/IB2006/054942
【国際公開番号】WO2007/072417
【国際公開日】平成19年6月28日(2007.6.28)
【出願人】(590000248)コーニンクレッカ フィリップス エレクトロニクス エヌ ヴィ (12,071)
【Fターム(参考)】