説明

基板保持装置、基板処理装置、マスク、および画像表示装置の製造方法

【課題】永電磁石を有するキャリヤの状態を検知することにより確実な基板操作可能な基板保持装置を提供する。
【解決手段】基板保持装置は、磁性材料を含むマスク200を基板300を介して磁気吸引することによりマスクおよび基板を保持するキャリヤと、永電磁石101から出る磁界を検知する磁気センサ180によりキャリヤの状態を検知する検知部185とを備える。キャリヤは、永電磁石を含み、永電磁石は、極性が可変の極性可変磁石と、極性可変磁石の極性を変更するための磁界を発生するコイルと、極性が固定された極性固定磁石とを含み、キャリヤの状態は、コイルが発生する磁界によって極性可変磁石の極性を制御することによって、極性可変磁石および極性固定磁石が発生する磁界によってマスクおよび基板を保持する第1状態と、マスクおよび基板を保持しない第2状態とのいずれかに設定される。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、基板保持装置、基板処理装置、マスク、および画像表示装置の製造方法に関する。
【背景技術】
【0002】
フラットパネルディスプレイの製造において、ガラス基板などの基板にパターンが形成される。パターンの形成方法としては、例えば、真空蒸着法、スパッタリング法、フォトリソグラフィ法、スクリーン印刷法などが存在する。
【0003】
特許文献1、2には、磁力を利用してマスクを基板に密着させて、その状態で蒸着を行う方法が開示されている。微細なパターンを基板に形成するためには、マスクのパターン部分を薄くすること、パターン部分と基板との密着性を向上させること、パターン部分に撓みや皺などが発生しないことなどが求められる。このような目的に関連して、特許文献2には、厚さが500μm以下の金属製マスクに張力をかけながら該金属製マスクを枠に固定する方法が開示されている。
【0004】
一方、基板処理装置による基板の処理能力を向上させるための方式として、インライン方式(特許文献3)や、それを改善したインターバック方式が知られている。いずれの方式も、相互に区切られた複数の処理室を通して基板を搬送しながら該基板を処理するものである。このような方式において、基板は、キャリヤによって保持されてコロ搬送されうる。
【0005】
基板にパターンを形成するために、基板は、マスクとともにキャリヤによって保持された状態で搬送されうる。特許文献4には、基板を保持するためのプレートに永久磁石と電磁石とを備え、基板を介して磁性材料からなるマスクを磁気吸引することによって基板を保持する構成が開示されている。この構成では、永久磁石の磁力によりマスクが保持され、電磁石が発生する磁力で永久磁石が発生する磁力を相殺することによってマスクの保持が解除される。
【0006】
特許文献5には、金型固定装置として、永電磁石が組み込まれた永電磁チャックが開示されている。この永電磁チャックは、ネオジューム磁石と、アルニコ磁石と、アルニコ磁石に巻かれたコイルとを有する。アルニコ磁石の極性は、コイルに流す電流の方向によって制御され、コイルに流れる電流を遮断しても、その極性は維持される。金型を吸着しようとするときは、ネオジューム磁石とアルニコ磁石とによって形成される磁束が吸着面を通過するようにアルニコ磁石の極性が制御され、金型の吸着を解除しようとするときは、ネオジューム磁石とアルニコ磁石とによって形成される磁束が吸着面を通過しないようにアルニコ磁石の極性が制御される。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0007】
【特許文献1】特開平10−41069号公報
【特許文献2】特許3539125号公報
【特許文献3】特開2002−203885号公報
【特許文献4】特開平10−152776号公報
【特許文献5】特開2005−246634号公報 特許文献5に記載された金型の固定用の永電磁チャックは、コイルの通電を停止しても、吸着状態または非吸着状態が維持される点で優れている。しかしながら、永電磁チャックの状態を吸着状態又は非吸着状態に設定するためのシーケンスを実行したとしても、予定したとおりに永電磁チャックの状態が設定されていることは保証されない。例えば、永電磁チャックを吸着状態に制御するシーケンスを実行したにも拘わらず永電磁チャックが非吸着状態であるとすると、永電磁チャックを搬送さしたり操作したりしたときに金型が落下しうる。或いは、永電磁チャックを非吸着状態に制御するシーケンスを実行したにも拘わらず永電磁チャックが吸着状態であるとすると、永電磁チャックから金型を取り去ろうとしたときに金型に過度な力が加わりうる。 このような問題は、永電磁石を有するキャリヤをフラットパネルディスプレイの製造のために基板およびマスクを保持するキャリヤに応用した場合により深刻になりうる。キャリヤを吸着状態に制御するシーケンスを実行したにも拘わらずキャリヤが非吸着状態であるとすると、キャリヤを搬送さしたり操作したりしたときに基板やマスクが落下しうる。或いは、キャリヤを非吸着状態に制御するシーケンスを実行したにも拘わらずキャリヤが吸着状態であるとすると、キャリヤから基板やマスクを取り去ろうとしたときにそれらに過度な力が加わりうる。
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0008】
本発明は、上記の課題認識を契機としてなされたものであり、例えば、永電磁石を有するキャリヤの状態を確実に検知することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0009】
本発明の第1の側面は、基板保持装置に係り、前記基板保持装置は、永電磁石を含んで構成され磁性材料を含むマスクを基板を介して磁気吸引することにより前記マスクおよび前記基板を保持するキャリヤと、前記永電磁石から出る磁界を検知する磁気センサにより前記キャリヤの状態を検知する検知部とを備え、前記永電磁石は、極性が可変の極性可変磁石と、前記極性可変磁石の極性を変更するための磁界を発生するコイルと、極性が固定された極性固定磁石とを含み、前記キャリヤの状態は、前記コイルが発生する磁界によって前記極性可変磁石の極性を制御することによって、前記極性可変磁石および前記極性固定磁石が発生する磁界によって前記マスクおよび前記基板を保持する第1状態と、前記マスクおよび前記基板を保持しない第2状態とのいずれかに設定される。
【0010】
本発明の第2の側面は、基板を処理する基板処理装置に係り、前記基板処理装置は、上記の基板保持装置と、前記基板保持装置の前記キャリヤによってマスクとともに保持された基板に膜を形成するための処理室とを備える。
【0011】
本発明の第3の側面は、マスクに係り、前記マスクは、マスクパターン部と、前記マスクパターン部を支持する磁性材料を含むマスク枠とを備え、磁気センサが挿入される穴が前記マスク枠に設けられている。
【0012】
本発明の第4の側面は、画像表示装置を製造する製造方法に係り、前記製造方法は、前記の基板処理装置により基板に膜を形成する工程を含む。
【発明の効果】
【0013】
本発明によれば、例えば、永電磁石を有するキャリヤの状態を確実に検知することができる。
【図面の簡単な説明】
【0014】
【図1A】本発明の好適な実施形態の基板保持装置の構成を示す模式図である。
【図1B】マスクの例示的な平面図である。
【図2A】キャリヤ側の接点(第1接点)と電流供給部(制御部)側の接点(第2接点)との接続方法を例示的に示す図である。
【図2B】本発明の好適な実施形態の温調システムの構成を模式的に示す図である。
【図3】本発明の好適な実施形態の基板処理装置の概略構成を示す図である。
【図4】図3に示す基板処理装置を製造工程の一部において使用して製造され画像表示装置の例を示す図である。
【図5】図3に示す基板処理装置を製造工程の一部において使用して製造される画像表示装置の他の例を示す図である。
【図6】図5に示す画像表示装置の製造工程の例を示す図である。
【図7】永電磁石の構成例を示す図である。
【図8】永電磁石の構成例を示す図である。
【図9A】キャリヤによるマスクおよび基板の磁気吸引による保持(吸着)の手順を説明するための図である。
【図9B】キャリヤによるマスクおよび基板の磁気吸引による保持(吸着)の手順を説明するための図である。
【図9C】キャリヤによるマスクおよび基板の磁気吸引による保持(吸着)の手順を説明するための図である。
【図9D】キャリヤによるマスクおよび基板の磁気吸引による保持(吸着)の手順を説明するための図である。
【図10】検知部によってキャリヤの状態を検知する方法の原理を説明するための図である。
【図11】接触状態の検知に関連する部分についての本発明の好適な実施形態の概略構成を示す図である。
【図12】接触状態の検知に関連する部分についての本発明の他の好適な実施形態の概略構成を示す図である。
【発明を実施するための形態】
【0015】
以下、添付図面を参照しながら本発明の好適な実施形態を説明する。
【0016】
図1Aは、本発明の好適な実施形態の基板保持装置の構成を示す模式図である。この基板保持装置500は、磁性材料を含むマスク200を基板300を介して磁気吸引することによりマスク200および基板300を保持するキャリヤ410と、キャリヤ410を制御する制御部420とを備える。キャリヤ410は、基板300を保持する保持面400Sを有する支持体400と、支持体400に埋め込まれた永電磁石101、102X、102Yと、第1接点120(120a、120b、120c)とを含みうる。
【0017】
永電磁石101、102X、102Yの各々は、図7に例示されるように、磁性体102aと、極性が可変の極性可変磁石(例えば、アルニコ磁石)102cと、第1接点120(120a、120b、120c)に電気的に接続されていて第1接点120(120a、120b、120c)を介して供給される電流により極性可変磁石102cの極性を変更するための磁界を発生するコイル102dと、極性が固定された極性固定磁石(例えば、ネオジューム磁石等の希土類磁石)102bとを含む。ここで、極性可変磁石102cは、永久磁石の一種であり、外部から与えられる磁界の向きに応じて2つの極(N極、S極)の各極性が反転し、外部から与えられる磁界が取り除かれてもその極性を維持する磁石である。コイル102dに流す電流の向きを反対にするとコイル102dが発生する磁界の向きが反対になるので、コイル102dに流す電流の向きによって極性可変磁石102cの極性を制御することができる。第1接点120(120a、120b、120c)は、コイル102dに電気的に接続されている。
【0018】
キャリヤ410の状態は、極性可変磁石102cおよび極性固定磁石102bが発生する磁界によって、マスク200および基板300を保持する第1状態(吸引状態あるいは保持状態)と、マスク200および基板300を保持しない第2状態(非吸引状態あるいは非保持状態)とのいずれかに設定(制御)される。キャリヤ410の状態の設定(制御)は、制御部420がコイル102dに流す電流の向き(コイル102dが発生する磁界の向き)を制御することによってなされる。
【0019】
制御部420は、キャリヤ410の第1接点120(120a、120b、120c)に接触して第1接点120(120a、120b、120c)を介してコイル102dに電流を供給するための第2接点121(121a、121b、121c)と、第1接点120(120a、120b、120c)と第2接点121(121a、121b、121c)との接触状態を検知する検知部(後述)と、該接触状態が判定基準を満たす場合に第1接点120(120a、120b、120c)と第2接点121(121a、121b、121c)とを介してコイル102dに電流を供給する電流供給部151とを含む。
【0020】
図1Aには、マスク200と基板300との位置合わせが終了した時点におけるキャリヤ410、マスク200および基板300の状態が例示されている。基板300は、保持面400Sの上に配置され、その上にマスク200が配置される。基板300に対して蒸着等の膜形成方法(成膜方法)によりパターンを形成する際は、一般には、マスク200および基板300を保持した状態でキャリヤ410の天地が反転するように180度回転された状態にされうる。
【0021】
この実施形態では、複数組の永電磁石、具体的には、3組の永電磁石101、102X、102Yが設けられていて、それらは制御部420によって互いに独立に制御されうる。第1組の永電磁石101は、マスク枠200aを磁気吸引するように配置されている。第2組の永電磁石102Xは、マスクパターン部200b内の領域における中央部を磁気吸引するように配置されている。第3組の永電磁石102Yは、マスクパターン部200b内の領域における周辺部(中央部の外側)を磁気吸引するように配置されている。制御部420の電流供給部151は、第1組の永電磁石101に電流を供給する第1ユニット151cと、第2組の永電磁石102Xに電流を供給する第2ユニット151aと、第3組の永電磁石102Yに電流を供給する第3ユニット151bとを含みうる。
【0022】
マスク200は、マスクパターン部200bと、マスクパターン部200bを支持するマスク枠200aとを含む。マスクパターン部200bは、マスクパターンを有するシート状の部材である。マスク枠200aおよびマスクパターン部200bは、磁性材料(例えば、鉄を主成分とする材料)を含んで構成される。該磁性材料としては、例えば、蒸着時における輻射入熱による熱膨張を小さくするために、インバー材(鉄64%、ニッケル36%で構成される合金)などの低熱膨張材料が好適である。マスクパターン部200bには、エッチングなどの方法によりマスクパターンが形成される。マスクパターン部200bは、マスクパターンの高精細化に伴い、その厚みを薄くすることが求められている。
【0023】
図1Bは、マスク200の例示的な平面図である。この例では、マスク200は、36面取りのマスクである。マスク枠200aで囲まれた個々の長方形の領域が一面(例えば、1つの表示デバイス)に相当する。パターン領域であるマスクパターン部200bの厚みが厚いと、微細な開口部内における周辺の膜厚が薄くなるという問題が生じるため、マスクパターン部の200bは、マスク枠200aよりも薄くされ、例えば、0.05mm以下の厚さにされることもある。マスクパターン部200bを薄くすることによって、微細な開口に斜め方向から入射する成膜粒子をも基板に到達させることができる。マスクパターン部200bは、事前に張力を加えた状態で、マスク枠200aに包囲されるようにマスク枠200aに溶接などの方法により固定されうる。
【0024】
マスク枠200aには、マスクパターン部200bに加えた張力に対する反力により発生する変形を許容値内に収めるための剛性が与えられる。その結果、マスク200全体の重量が大きくなり、一例を挙げると、基板サイズ1300mm×800mm程度のマスクにおいての重量は300kgにも及びうる。
【0025】
続いて、基板300およびマスク200の保持(磁気吸引)およびその解除の手順を説明する。図1Aは、作業位置(通常は、キャリヤ410が停止する位置)においてキャリヤ410に制御部420が接続され、基板300およびマスク200がキャリヤ410に磁気吸引される直前の状態を例示している。キャリヤ410は、基板処理装置の所定の作業位置に位置決めされうる。その後、キャリヤ410側の接点である第1接点120と制御部420側の接点である第2接点121とが接続される。ここで、第1接点120と第2接点121との接続は、不図示の操作機構によってなされうる。図1Aでは、第1接点120と第2接点121の構造は、特定のものには限定されず、例えば、雄型のコネクタを雌型のコネクタに圧入するタイプのものでもよいし、一方を他方に押し付けるタイプのものでもよいし、他のタイプのものでもよい。
【0026】
第1接点120と第2接点121とが接続された状態で、電流供給部151(151a、151b、151c)から第1接点120および第2接点121を介して永電磁石101、102X、102Yのコイル102dに対して、キャリヤ410の状態を第1状態(吸引状態あるいは保持状態)に設定するための電流が供給される。これにより、マスク200が基板300を介して永電磁石101、102X、102Yによって磁気吸引され、マスク200および基板300がキャリヤ410の保持面400S上に保持される。以後、キャリヤ410の状態を第2状態(非吸引状態あるいは非保持状態)に設定するための電流がコイル102dに対して供給されない限り、第1状態が維持される。
【0027】
マスク200および基板300がキャリヤ410の保持面400S上に保持された後、コイル102dに対する電流の供給が遮断され、第1接点120と第2接点121との接続が解除される。この状態でキャリヤ410が基板処理装置において搬送され、基板300に膜(マスクパターン部200bに従うパターン)が形成されうる。
【0028】
マスク200および基板300の保持を解除する際は、再び第1接点120と第2接点121とを接続し、その状態で、電流供給部151(151a、151b、151c)から第1接点120および第2接点121を介して永電磁石101、102X、102Yのコイル102dに対して、キャリヤ410の状態を第2状態(非吸引状態あるいは非保持状態)に設定するための電流を供給すればよい。
【0029】
図7および図8を参照しながら永電磁石101、101X、101Yの構成例を説明する。永電磁石は、前述のように、磁性体102aと、極性が可変の極性可変磁石(例えば、アルニコ磁石)102cと、第1接点120(120a、120b、120c)に電気的に接続されていて第1接点120(120a、120b、120c)を介して供給される電流により極性可変磁石102cの極性を変更するための磁界を発生するコイル102dと、極性が固定された極性固定磁石(例えば、ネオジューム磁石)102bとを含む。第1接点120(120a、120b、120c)とコイル102dとを接続する導電線は、空間102fに収められうる。図7および図8において、Lは、極性固定磁石102bが発生する磁界の磁力線を模式的に示している。また、NはN極、SはS極を示している。
【0030】
制御部420がコイル102dに所定時間(例えば、約0.5秒)にわたって第1方向の電流(例えば、100A)を流すと、図7に模式的に示すように、極性可変磁石102cの極性が反転し、極性固定磁石102bと極性可変磁石102cとが同極化する。これにより、磁界(磁束)が永電磁石の保持面400Sの外側に多く漏れて、マスク200が保持面400S側に磁気吸引される。これが第1状態(吸引状態あるいは保持状態)である。
【0031】
一方、制御部420がコイル102dに所定時間(例えば、約0.5秒間)にわたって第1方向と反対方向に電流(例えば、100A)を流すと、極性可変磁石102cの極性が反転し、極性固定磁石102bと極性可変磁石102cが引き合う状態、即ち磁力線が保持面400Sの外側に漏れない状態になり、マスク200の磁気吸引が停止される。これが第2状態(非吸引状態あるいは非保持状態)である。
【0032】
このようなキャリヤ410では、第1状態から第2状態への変更、および第2状態から第1状態への変更においては、コイル102dに電流が供給されるが、それ以外の場合には、コイル102dに電流を供給する必要がない。そのため、コイル102dへの電流供給による発熱は無視可能である。よって、このようなキャリヤ410は、減圧環境や真空環境下での使用において有利である。
【0033】
図2Aは、第1接点120と第2接点121との接続方法を例示的に示す図である。なお、1つの永電磁石のコイルに電流を流すためには、当該コイルの一方の端子と他方の端子にそれぞれ電気的に接続された2つの第1接点120が必要であり、それに対応して2つの第2接点121が必要である。図2Aでは、1つの第1接点120と1つの第2接点121のみが示されている。図2Aに示す例では、第1接点120は、接点支持部120aによって支持され、コイル102dの一方の端子に対して導電線102kを介して接続されている。
【0034】
第1接点120および第2接点121には、永電磁石のコイルを励磁するために必要な高電流(約100A)を安定して流すことができる信頼性が要求される。第1接点120と第2接点121との電気的な接触が不十分であると、前述のように、それらの間で放電(スパーク)が起こり、接点の劣化が進みうる。特に真空環境下では放電が起こりやすいので注意が必要である。
【0035】
この実施形態では、第1接点120(120a、120b、120c)と第2接点121(121a、121b、121c)との接触状態を検知する検知部が制御部420に設けられている。
【0036】
図11は、接触状態の検知に関連する部分についての本発明の好適な実施形態の概略構成を示す図である。制御部420には、1つの第2接点121(121a、121b、121c)に対して1つの検知部220が設けられうる。検知部220は、キャリヤ410側の第1接点120(120a、120b、120c)と制御部420側の第2接点121(121a、121b、121c)との接触部分における抵抗値又は電圧降下に基づいて第1接点120(120a、120b、120c)と第2接点121(121a、121b、121c)との接触状態を検知する。
【0037】
検知部220は、例えば、検査接点201を含み、第2接点121が第1接点120の第1部分120−1に接触し、検査接点201が第1接点120の第2部分120−2に接触した状態で、検査接点201から第1接点120を経由して第2接点121に至る経路における抵抗値又は電圧降下に基づいて接触状態を検知するように構成されうる。ここで、当該経路には、第1接点120(の第1部分120−1)と第2接点121との接触抵抗Rのほかに、抵抗r1、r2が含まれうる。抵抗r1は、第2接点121が有する抵抗、抵抗r2は、第1接点120が有する第1部分120−1と第2部分120−2との間の抵抗である。検知部220は、当該経路の全体の抵抗値又は電圧降下を検知してもよいし、該全体の抵抗値又は電圧降下から接触抵抗Rの抵抗値又はそれによる電圧降下を抽出してもよい。スイッチSWを閉じて、定電流源CSから検査接点201、第1接点120(抵抗r2)、抵抗R、第2接点121(抵抗r1)を含む経路を通して電流iを流し、電圧計VMによって検査接点201と第2接点121との間の電圧降下Vを測定することによって、当該経路の全体の抵抗値を検知することができる。ここで、電圧計VMには電流が流れないので、検査接点201と第1接点120の第2部分120−2との間の抵抗r3は、電圧計VMによる計測値に影響を与えない。
【0038】
接触抵抗Rは、抵抗r1、r2を予め求めておくことによって次式に従って求めることができる。
【0039】
V=i(r1+r2+R)
即ち、
R=V/i−r1−r2
制御部420の電流供給部151は、検知部220によって検知された接触状態(抵抗値又は電圧降下)が判定基準を満たす場合(例えば、抵抗値又は電圧降下が所定値未満である場合)に第1接点120と第2接点121とを介してコイル102dに電流を供給するように構成されうる。
【0040】
図12は、接触状態の検知に関連する部分についての本発明の他の好適な実施形態の概略構成を示す図である。図12に示す実施形態は、図11に示す実施形態の変形例であり、図11に示す実施形態とは、キャリヤ410が第1検査接点120'を含む点で異なる。制御部420側の検査接点(第2検査接点)201は、接触状態の検知時に、キャリヤ410側の第1検査接点120'と接触可能に構成されている。キャリヤ410の第1検査接点120'は、抵抗値r5を有する導電線を介して第1接点120に電気的に接続されている。
【0041】
図3は、本発明の好適な実施形態の基板処理装置の概略構成を示す図である。この基板処理装置30は、例えば、真空処理装置として構成されうる。まず、基板300の搬入及び搬出について説明する。基板処理装置30は、バルブ401a、401b、401cを介して真空ポンプ等の真空排気ユニット402a、402b、402cに連通している。
【0042】
基板300を搬入し、位置決めし、固定(キャリヤ410によって保持)する工程は、搬入室(第1処理室)31で行われる。基板300は、不図示の基板搬送系によって、搬入室31に搬送される。搬送された基板300は、不図示の操作機構により、キャリヤ410の保持面上に載置される。また、マスク200は、不図示のマスク搬送系により、基板300を覆うようにキャリヤ410上に搬送される。
【0043】
このようにして搬送された基板300とマスク200は、搬入室31内において、キャリヤ410側の接点(第1接点)120および制御部の電流供給部151側の接点(第2接点)121とを接続して永電磁石のコイルが通電されることにより、キャリヤ410に磁気吸引される。これにより、基板300に膜を形成する準備が完了する。
【0044】
キャリヤ410側の接点(第1接点)120と制御部420の電流供給部151側の接点(第2接点)121との接続が解除された後に、搬入室31の内部に配置された回転機構により、成膜室(第2処理室)32内での成膜のために、基板300およびマスク200を保持したキャリヤ410の天地が反転される。成膜室32では、例えば、蒸着、スパッタリング、化学気相成長等の方法により基板300に膜が形成されうる。
【0045】
その後、基板300およびマスク200を保持したキャリヤ410は、不図示の搬送系により、成膜室(第2処理室)32へ搬送され、成膜室32において、蒸着等により基板300に膜が形成される。膜の形成は、例えば、基板300およびマスク200を保持したキャリヤ410を不図示の搬送系によって搬送しながらなされうる。また、膜の形成は、蒸着源等の材料供給部34から原料を基板300に供給することによってなされうる。
【0046】
膜の形成が完了すると、基板300およびマスク200を保持したキャリヤ410は、不図示の搬送系により搬出室(第3処理室)33に搬送される。
【0047】
その後、搬出室33の内部に配置された回転機構により、基板300およびマスク200を保持したキャリヤ410の天地が反転される。次いで、搬出室33内において、キャリヤ410側の接点(第1接点)120および制御部の電流供給部151側の接点(第2接点)121とを接続して永電磁石のコイルが通電されることにより、キャリヤ410による磁気吸引が解除される。
【0048】
その後、不図示の操作機構によって、キャリヤ410からマスク200および基板300が分離されて、それぞれの搬送系に渡される。基板300は、次工程の装置に搬送される。
【0049】
なお、搬入室31、成膜室32および搬出室33が1つの空間を構成してもよい。
【0050】
上記のように、キャリヤ410は、マスク200および基板300を保持した状態で搬送されたり、回転等の操作を受けたりしうる。したがって、マスク200および基板300がキャリヤ410によって保持されていることを保証することは重要である。また、キャリヤ410にマスク200および基板300が保持されている状態でそれらをキャリヤ410から取り去ろうとすると、マスク200および基板300に過度なストレスが加わりうる。
【0051】
そこで、基板保持装置500は、キャリヤ410の状態を検知する検知部185を備えることが好ましい。検知部185は、例えば、永電磁石101から出る磁界を検知する磁気センサ180を含み、磁気センサ180によってキャリヤ410の状態が第1状態(吸引状態あるいは保持状態)であるか第2状態(非吸引状態あるいは非保持状態)であるかを検知するように構成されうる。
【0052】
図10は、検知部185によってキャリヤ410の状態を検知する方法の原理を説明するための図である。図10(a)は、第1状態(吸引状態あるいは保持状態)を模式的に示している。第1状態では、キャリヤ410の支持体400から外部に磁界(磁束)が出ているので磁気センサ180による測定値が判定基準値よりも大きい値である場合にキャリヤ410が第1状態であると判定することができる。図10(b)は、第2状態(非吸引状態あるいは非保持状態)を模式的に示している。第2状態では、キャリヤ410の支持体400から外部に磁界(磁束)が出ていないか、又は小さいので、磁気センサ180による測定値が判定基準値よりも小さい値である場合にキャリヤ410が第2状態であると判定することができる。
【0053】
検知部185は、磁気センサ180を操作する操作機構182を含むことが好ましい。この実施形態では、図3に模式的に示すように、マスク200のマスク枠200aに穴(好ましくは、貫通孔)200cが設けられている。操作機構182は、その穴200cに磁気センサ180を挿入するように構成されることが好ましい。マスク枠200aに穴200cを設けて、その穴200cに磁気センサ180を挿入する構成は、マスク200がキャリヤ410の上に存在する状態(即ち、マスク200の磁気吸引が可能な状態、或いは、マスク200が磁気吸引された状態)で永電磁石101の状態(キャリヤ410の状態)を検知するために有用である。キャリヤ410に複数の永電磁石101が設けられる場合において、マスク枠200aには、キャリヤ410に設けられた複数の永電磁石101に対応する複数の位置に穴200cが設けられうる。磁気センサ180は、複数の穴200cの全部に挿入され、または、複数の穴200cの少なくとも1つの穴200cに対して選択的に挿入されうる。
【0054】
検知部185は、図3に示す基板処理装置30では、搬入室31および搬出室33に設けられることが好ましい。搬入室31では、永電磁石101、102X、102Yを第1状態(吸引状態あるいは保持状態)に設定する手順が実行された後、永電磁石101が第1状態であることが検知部185によって確認されたことを条件として、キャリヤ410へのマスク200および基板300の固定が完了したものと判断され、キャリヤ410が搬送或いは操作されうる。
【0055】
搬出室33では、永電磁石101、102X、102Yを第2状態(非吸引状態あるいは非保持状態)に設定する手順が実行された後、永電磁石101が第2状態であることが検知部185によって確認されたことを条件として、キャリヤ410からマスク200および基板300が取り去られうる。
【0056】
検知部185は、検知部185への電力供給および制御部420との通信のための構成を単純化すること、または、キャリヤ410の構成を簡単化すること、磁気センサからの脱ガスなどを考慮すると、キャリヤ410とは分離して配置されることが好ましい。ただし、検知部185は、例えばバッテリーおよび無線通信デバイスとともにキャリヤ410に設けられてもよい。
【0057】
基板300への膜の形成の際にキャリヤ410は、例えば、蒸着源等の材料供給部34からの輻射熱等により加熱されうる。或いは、キャリヤ410には加熱やその後の熱放出により不均一な温度分布が形成されうる。そこで、キャリヤ410の支持体に温度調整用の温調流路230を設けることが好ましい。また、キャリヤ410の移動に伴って温調用の管路が移動することを避けるために、温調流路230に外部の温調装置の管路132a、132b(のジョイント131)と接続しおよび切り離すためのジョイント130を設けることが好ましい。更に、キャリヤ410には、図2Bに例示的に示すように、温調流路230に温調媒体が充填された状態で温調流路230を閉塞するための弁140がジョイント130の内部又は付近に設けられることが好ましい。
【0058】
温調流路230に単一の接続口を設けて、その接続口にジョイント130および弁140が設けられてもよいが、温調流路230に入口および出口を設けて、該入口および出口の双方にジョイント130および弁140を設けることが好ましい。後者においては、2つの弁140を開いた状態で該入口を通して温調流路230に温調媒体を供給し該出口を通して温調流路230から温調媒体を回収しながら、温調流路230を通して温調媒体が循環されうる。
【0059】
温調装置133は、温度制御された温調媒体を管路132a、132bのジョイント131をキャリヤ410側のジョイント130に接続して、管路132a、132bおよびキャリヤ410の温調流路230によって構成される循環経路を通して温調媒体を循環させる。ジョイント131とジョイント130との接続は、不図示の操作機構によってなされうる。
【0060】
温調装置133は、温調媒体を目標温度に制御する制御システムを有する。該制御システムは、例えば、温調器(例えば、冷却器及び/又は加熱器を含む)、温度センサ、目標温度と該温度センサによる測定値との偏差に基づいて操作量を演算して温調器を制御するPID補償器等を含みうる。ここで、温度センサは、温調装置133のほか、キャリヤ410側にも配置されて、キャリヤ410側に配置された温度センサによる温度測定値が無線通信デバイスによって温調装置133に提供されてもよい。キャリヤ410側の温度センサや無線通信デバイスは、バッテリーによって駆動されうる。キャリヤ410側で温度を測定し、それを温調装置133にフィードバックすることにより、キャリヤ410の温度を高い精度で制御することができる。
【0061】
温調装置133は、キャリヤ410を目標温度まで冷却するように構成されてもよいし、目標温度まで加熱するように構成されてもよい、温度の不均一な分布を低減するように構成されてもよい。
【0062】
温調装置133によるキャリヤ410の温度調整が終了すると、キャリヤ410側のジョイント130から温調装置133側のジョイント131が切り離されて、キャリヤ410が搬送されうる。温調装置133は、例えば、前述の搬入室31および/または搬出室33においてキャリヤ410の温度を調整するように構成されうる。温調装置133は、温調のために設けられた温調室においてキャリヤ410の温度を調整するように構成されうる。
【0063】
キャリヤ410側のジョイント130と温調装置133側のジョイント131との接続または切り離し、または温調装置133側の管路132a、132bの操作等によって、液体の温調媒体がキャリヤ410、特に接点120や保持面400Sに付着すると、永電磁石の誤動作、吸着不良、接点120の劣化等を生じさせる可能性がある。そこで、キャリヤ410側のジョイント130から温調装置133側のジョイント131が切り離されたの後に、除去ユニット150によって、キャリヤ410のジョイント130およびその周辺から温調媒体を除去することが好ましい。除去ユニット150は、例えば、キャリヤ410のジョイント130およびその周辺にエアー等を吹き付けるブロワー及び/又はジョイント130およびその周辺をワイピングするワイパーによって温調媒体を除去する。
【0064】
図9A〜図9Dは、キャリヤ410によるマスク200および基板300の磁気吸引による保持(吸着)の手順を模式的に示す図である。永電磁石101、102X、102Yのうち白色で表示している部分は非吸引状態(第2状態)、黒色で表示している場合は吸引状態(第1状態)を示す。
【0065】
図9Aは、マスク200と基板300とを位置合わせする工程を模式的に示している。基板300が支持体400の保持面400S上に配置され、その上にマスク200が配置されている。不図示の位置合わせ装置は、図9Aの状態において、マスク200と基板300とを位置合わせする。位置合わせは、マスク200および基板300のいずれを移動させることによって実施されてもよい。位置合わせは、例えば、基板300の所定箇所およびマスク200上の所定箇所に形成されたアライメントマークをCCDカメラなどの光学観察装置で観察して、その結果に基づいて相互のずれを修正することによってなされうる。マスク200と基板300との相対移動させる際に、マスク200と基板300とが接触していると、基板300に傷を与える可能性がある。そこで、図9Aに模式的に示されているように、マスク200と基板300との間に隙間を設けた状態で位置あわせがなされる。この隙間が大きいと、次の手順においてマスクパターン部200bと基板300とを密着させる際に位置ずれを起こす原因となるため、隙間は微小であることが好ましく、具体的には500μm以下であることが好ましい。
【0066】
図9Bは、位置合わせの終了後に、マスク枠200aの保持のための第1組の永電磁石101のみを電流供給部151の第1ユニット151cによって第1状態(吸引状態あるいは保持状態)に制御して、マスク枠200aがキャリヤ410に磁気吸引により固定された状態を模式的に示している。なお、前述のように、3組の永電磁石101、102X、102Yは、第1ユニット151c、第2ユニット151a、第3ユニット151bによって互いに独立して制御される。
【0067】
図9Cは、マスク枠200aがキャリヤ410に固定された後にマスクパターン部200bの中央部を固定するための第2組の永電磁石102Xを電流供給部151の第2ユニット151aによって第1状態(吸引状態あるいは保持状態)に制御して、マスクパターン部200bの中央部がキャリヤ410に磁気吸引により固定された状態を模式的に示している。この状態では、基板300の中央部とマスクパターン部200bの中央部とが接触している。マスクパターン部200bに張力が加えられた状態でマスクパターン部200bの中央部を基板300に接触させることで、マスクパターン部200bの全面を一度に基板300に接触させる場合に比べて、マスクパターン部200bに皺や位置ずれを生じさせることなく、基板300に密着させることができる。
【0068】
図9Dは、基板300の中央部とマスクパターン部200bの中央部とが接触した後に、マスクパターン部200bの周辺部を固定するための第3組の永電磁石102Yを電流供給部151の第3ユニット151bによって第1状態(吸引状態あるいは保持状態)に制御して、マスクパターン部200bの周辺部がキャリヤ410に磁気吸引により固定され、結果としてマスク枠200a、マスクパターン部200bの中央部及び周辺部がキャリヤ410に固定された状態を模式的に示している。
【0069】
図4(a)、図4(b)は、図3に示す基板処理装置を製造工程の一部において使用して製造される画像表示装置の例を示す図である。電子源基板81とフェースプレート82とを一定の距離を隔てて共に水平に配置した状態で、それらの間にスペーサ(支持部材)89を垂直にするとともに支持枠86で外周を囲む。これにより、電子源基板81、フェースプレート82および支持枠86によって囲まれた気密容器90が構成される。フェースプレート82は、ガラス基板83に蛍光膜84とメタルバック85とが積層された構造を有する。電子源基板81は、Y方向配線24、X方向配線26および導電性膜(素子膜)27等の導電部が積層された構造を有する。
【0070】
気密容器90が高い信頼性で動作するためには、この内側の空間に、黒色導電体91、非蒸発型ゲッタ87、蒸発型ゲッタ88を配置するべきであり、これらは組立前にフェースプレート82の上に成膜される。非蒸発型ゲッタ87および蒸発型ゲッタ88は、所定のパターンを有する必要があるので、上記のようなマスク200を基板300に重ねた状態で保持するキャリヤ410を使って基板処理装置30によって成膜を行うことが好ましい。
【0071】
完成した画像表示装置において、電子源基板81に所定の手順でY方向配線24、X方向配線26を通して導電性膜(素子膜)27に電圧を印加すると、そこから放出された電子が対向するフェースプレート82の蛍光膜84に衝突して画像が形成される。
【0072】
図5および図6は、図3に示す基板処理装置を製造工程の一部において使用して画像表示装置の1つである有機蛍光ディスプレイ(有機ELディスプレイ)の構成および製造方法例示する図である。
【0073】
501はガラス基板、502はアノード、503は素子分離層、504aはホール注入層、504bはホール輸送層504b、505は発光層、506は電子輸送層、507は電子注入層、508はカソードである。なお、図6では、ホール注入層504aおよびホール輸送層504bの積層構造が504として示されている。
【0074】
アノード電極502とカソード電極508との間に電圧が印加されると、アノード電極502によりホールがホール注入層504aに注入される。一方、カソード電極508より電子が電子注入層507に注入される。注入されたホールはホール注入層504aおよびホール輸送層504bを移動し、注入された電子は電子注入層507及び電子輸送層506を移動して発光層505に達する。発光層505に達したホールと電子は再結合して発光する。
【0075】
発光層505の材料を適宜選択することにより、光の三原色である赤(R)、緑(G)及び青(B)の光を発光させることが可能で、その結果、フルカラーの画像表示装置を実現できることができる。
【0076】
次に、図5に示す構造の製造方法を図6を参照しながら説明する。図6には、R、G、Bを発光する部位よりなる一ピクセルが示されている。図6は、有機ELディスプレイの発光部の一般的な製造方法を示す工程図である。まず、前工程で、TFT(Thin Film Transitor)および配線部が形成され、その後、平坦化のための成膜処理がなされたガラス基板等の基板501上に反射率の高い導電膜が形成される。その導電膜を所定の形状にパターニングされることによりアノード電極502が形成される。次に、アノード電極502上の赤、緑、青を発光する部位を囲むようにして絶縁性の高い材料からなる素子分離膜503が形成される。これにより、隣接する発光する部分R、G、Bの間は素子分離膜503により仕切られる。
【0077】
次いで、アノード電極502上にホール注入層504aおよびホール輸送層504bからなる層504、発光層505、電子輸送層506、電子注入層507が蒸着法により順次に形成される。電子注入層507上に透明性導電膜からなるカソード電極508を積層することで、基板501上に有機ELディスプレイの発光部が形成される。
【0078】
最後に、基板上の上記発光部が透湿性の低い材料からなる図示しない封止層で覆われる。
【0079】
ここで、R、G、Bの各発光層505を蒸着法で作製する際には、図6(c)に例示するように基板がマスク510で覆われる。図6(c)においては、Rの発光部を形成するときのマスク510が示されている。したがって、GおよびBの発光部は、マスク510で覆われており、GおよびBの部位に赤Rの発光材料が混入しないようにしている。このような発光層の形成工程は、GおよびBの発光層の形成についても実施される。ここで、例えば、対角5.2インチで320×240ピクセルのフルカラー有機ELディスプレイの場合、ピクセルピッチは0.33mm(330μm)であり、サブピクセルピッチは0.11mm(110μm)である。このような場合、マスクのアライメント精度として、数ミクロン以下の精度が要求される。また、ホール輸送層504b、発光層505、電子輸送層506および電子注入層507の形成は、各有機材料の混入を防止するために互いに異なるチャンバーで行われ、且つそれぞれの専用のマスクが使用される。したがって、それらの成膜プロセスでもマスクを同一の位置に高精度にアライメントする必要がある。
【0080】
よって、マスクアライメントが高い精度で迅速に行えることは、有機ELディスプレイの生産性及び歩留まりの向上を図る上で重要である。
【0081】
また、今後益々大型の表示画面のディスプレイに対する常用が高まると考えられ、その際には重い大型のマスクを高い精度で迅速にアライメントすることに対する要求が益々大きくなることが予想される。
【0082】
上記の基板保持装置および基板処理装置は、上記のような要求に適合したものである。
【符号の説明】
【0083】
30 基板処理装置
101、102X、102Y 永電磁石
102a 磁性体
102b 極性固定磁石
102c 極性可変磁石
102d コイル
102f 空間
102k 導電線
120 接点(第1接点)
120' 検査接点
121 接点(第2接点)
130、131 ジョイント
133 温調装置
140 弁
151 電流供給部
151a 第2ユニット
151b 第3ユニット
151c 第1ユニット
180 磁気センサ
182 操作機構
185 検知部
200 マスク
200a マスク枠
200b マスクパターン部
201 検査接点
220 検知部
300 基板
400 支持体
410 キャリヤ
420 制御部
500 基板保持装置

【特許請求の範囲】
【請求項1】
永電磁石を含んで構成され、磁性材料を含むマスクを基板を介して磁気吸引することにより前記マスクおよび前記基板を保持するキャリヤと、
前記永電磁石から出る磁界を検知する磁気センサにより前記キャリヤの状態を検知する検知部とを備え、

前記永電磁石は、極性が可変の極性可変磁石と、前記極性可変磁石の極性を変更するための磁界を発生するコイルと、極性が固定された極性固定磁石とを含み、
前記キャリヤの状態は、前記コイルが発生する磁界によって前記極性可変磁石の極性を制御することによって、前記極性可変磁石および前記極性固定磁石が発生する磁界によって前記マスクおよび前記基板を保持する第1状態と、前記マスクおよび前記基板を保持しない第2状態とのいずれかに設定される、
ことを特徴とする基板保持装置。
【請求項2】
前記マスクは、マスクパターン部および前記マスクパターン部を支持するマスク枠を含み、前記マスク枠には、穴が設けられていて、
前記検知部は、前記磁気センサを前記穴に挿入するための操作機構を更に含む、
ことを特徴とする請求項1に記載の基板保持装置。
【請求項3】
前記検知部は、前記キャリヤが前記マスクおよび前記基板を受け取る位置および/または前記キャリヤから前記マスクおよび前記基板が取り去られる位置に前記キャリヤが配置された状態で前記キャリヤの状態を検知する、
ことを特徴とする請求項1又は2に記載の基板保持装置。
【請求項4】
前記マスクは、マスクパターン部および前記マスクパターン部を支持するマスク枠を含み、
前記永電磁石は、前記マスクパターン部を磁気吸引するように構成され、
前記キャリヤは、前記マスク枠を磁気吸引するために、前記永電磁石とは独立に制御されるように構成された他の永電磁石を更に備える、
ことを特徴とする請求項1乃至3のいずれか1項に記載の基板保持装置。
【請求項5】
基板を処理する基板処理装置であって、
請求項1乃至4のいずれか1項に記載の基板保持装置と、
前記基板保持装置の前記キャリヤによってマスクとともに保持された基板に膜を形成するための処理室と、
を備えることを特徴とする基板処理装置。
【請求項6】
マスクパターン部と、
前記マスクパターン部を支持する磁性材料を含むマスク枠とを備え、
磁気センサが挿入される穴が前記マスク枠に設けられている、
ことを特徴とするマスク。
【請求項7】
画像表示装置を製造する製造方法であって、
請求項5に記載の基板処理装置により基板に膜を形成する工程を含む、
ことを特徴とする製造方法。

【図1A】
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【図1B】
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【図2A】
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【図2B】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【図6】
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【図7】
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【図8】
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【図9A】
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【図9B】
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【図9C】
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【図9D】
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【図10】
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【図11】
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【図12】
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【公開番号】特開2010−106359(P2010−106359A)
【公開日】平成22年5月13日(2010.5.13)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2009−214852(P2009−214852)
【出願日】平成21年9月16日(2009.9.16)
【出願人】(000227294)キヤノンアネルバ株式会社 (564)
【Fターム(参考)】