説明

基板処理システムの処理レシピ最適化方法,基板処理システム,基板処理装置

【課題】ホストコンピュータからの指令に応じて基板処理装置がデータ処理装置に処理レシピの最適化計算を行わせる。
【解決手段】所定の処理レシピに基づいて被処理基板のプロセス処理を実行する熱処理装置100と,処理レシピの最適化計算を行うデータ処理装置400と,ホストコンピュータ500と,をネットワーク310で接続した基板処理システムの処理レシピ最適化方法であって,基板処理装置は,ホストコンピュータから処理レシピ最適化処理実行指令を受けてデータ処理装置に計算に必要なデータを送信して処理レシピの最適化計算を実行させて,その結果に基づいて処理レシピを更新する。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は,基板処理システムの処理レシピ最適化方法,基板処理システム,基板処理装置に関する。
【背景技術】
【0002】
半導体デバイスの製造においては,被処理基板例えば半導体ウエハ(以下,単に「ウエハ」とも称する)に対して成膜,拡散,アニール,エッチングなどの処理を施すために,様々な基板処理装置が使用される。このような基板処理装置として,例えばウエハに対して熱処理を施すことによってウエハ上に酸化膜などの薄膜を成膜する熱処理装置が挙げられる。例えば縦型の熱処理炉を備える縦型熱処理装置では,ウエハボートと呼ばれる保持具に多数枚のウエハを棚状に保持し,このウエハボートを熱処理炉の中に搬入して成膜処理を行う。
【0003】
ところで,ウエハの成膜処理は,例えば成膜すべき薄膜の種類,膜厚などに応じて,設定圧力,ヒータ設定温度,ガス流量などの処理条件からなる処理レシピ(処理パラメータの設定値)に基づいて行われるようになっている。処理レシピは,実際にウエハボートに調整用ウエハ(ダミーウエハ)を満載して成膜処理を行いつつ,処理レシピを調整する作業を繰り返しながら最適化される。
【0004】
このような処理レシピの最適化処理は,膜厚測定装置によってウエハ上に成膜された薄膜の膜厚を測定し,測定した膜厚データを例えばフロッピー(登録商標)ディスクなどの記録媒体を用いたオペレータによる熱処理装置側の操作で取り込んだり,熱処理装置側の動作で膜厚データを受信したりして,その膜厚データの測定膜厚と目標膜厚とのずれがなくなるような処理レシピを熱処理装置において算出するようになっていた(例えば特許文献1,2参照)。
【0005】
ところが,処理レシピを最適化するためのデータ処理を熱処理装置などの基板処理装置で行うのは負担が大きく,基板処理装置のウエハ処理のスループットが低下してしまう。このため,従来は,データ処理装置(例えばアドバンスド・グループ・コントローラ)を基板処理装置にネットワークを介して接続し,このデータ処理装置に必要なデータをすべて送信して処理レシピを最適化するための計算処理を行わせるようにしていた(例えば特許文献3参照)。
【0006】
【特許文献1】特開2001−217233号公報
【特許文献2】特開2002−43300号公報
【特許文献3】特開2003−217995号公報
【特許文献4】特開2004−319574号公報
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0007】
ところで,近年の半導体デバイスの製造においては,ホストコンピュータによる生産管理が行われるようになっており,ウエハに対するプロセス処理の目標値(例えばウエハに形成する薄膜の目標膜厚)などについてもホストコンピュータ側で管理して,その目標値からずれている場合には処理レシピを最適化するための計算処理をホストコンピュータ側からの指令で実行できることが望まれている。
【0008】
しかしながら,従来は,基板処理装置側で膜厚の目標値などを管理し,基板処理装置側からの指令で処理レシピを最適化するための計算処理を行うようになっていたので,ホストコンピュータ側からの指令で処理レシピを最適化する処理を行うことはできなかった。
【0009】
この点,ホストコンピュータ側で膜厚データと処理データを受信して最適化計算を実行し,プロセスレシピを最適化するものも知られている(例えば特許文献4参照)。ところが,このようにホストコンピュータ側でウエハ処理条件の最適化計算を含めたすべての処理を行うようにすると,ホストコンピュータ側の負担が増大し,工場全体のスループットが低下してしまう。
【0010】
そこで,本発明は,このような問題に鑑みてなされたもので,その目的とするところは,ホストコンピュータからの指令に応じて基板処理装置がデータ処理装置に処理レシピの最適化計算を行わせることができる基板処理システムの処理レシピ最適化方法等を提供することにある。
【課題を解決するための手段】
【0011】
上記課題を解決するために,本発明のある観点によれば,所定の処理レシピに基づいて被処理基板の成膜処理を実行する基板処理装置と,前記処理レシピの最適化計算を行うデータ処理装置と,ホストコンピュータと,をネットワークで接続した基板処理システムの処理レシピ最適化方法であって,前記ホストコンピュータは,前記基板処理装置で成膜処理された被処理基板を測定して得られた膜厚が目標膜厚からずれていた場合,そのずれが許容範囲を超える場合には前記基板処理装置に処理レシピ最適化処理実行指令を送信し,前記基板処理装置は,前記ホストコンピュータから処理レシピ最適化処理実行指令を受信すると,前記データ処理装置に計算に必要なデータを送信して目標膜厚が得られるような最適な処理レシピを算出する処理レシピ最適化計算を実行させて,その結果に基づいて処理レシピを更新することを特徴とする基板処理システムの処理レシピ最適化方法が提供される。
【0012】
このような本発明によれば,基板処理装置はホストコンピュータからの指令を受けてデータ処理装置に処理レシピの最適化計算を行わせる。これによれば,ホストコンピュータからの指令によって基板処理装置に処理レシピ最適化処理を実行させることができる。これにより,プロセス処理の目標値(例えば目標膜厚)などについてもホストコンピュータ側で管理することができ,処理レシピ最適化処理を実行するか否かの判断もホストコンピュータ側で行うことができる。このため,目標値からどの程度ずれている場合に処理レシピ最適化処理を実行させるかなどについても,ホストコンピュータ側で自由に設定して管理することができる。また,本発明によれば,ホストコンピュータ側からの指令により自動的に処理レシピの最適化を行うことができる。
【0013】
また,上記最適化計算によって得られた処理レシピは,ホストコンピュータ側に送信して指示を待つことなく,基板処理装置側で更新することにより処理レシピ最適化処理をいったん終了させることができる。これにより,ホストコンピュータ側からの指示待ちによって処理レシピ最適化処理がビジー状態となって,基板処理装置が他の処理を受け付けられなくなることを防止できる。
【0014】
また,上記基板処理装置は,処理レシピを更新したときには,その更新後の処理レシピを前記ホストコンピュータに送信し,前記ホストコンピュータは,前記基板処理装置から更新後の処理レシピを受信すると,その更新後の処理レシピを許容できるか否かを判断することが好ましい。これによれば,ホストコンピュータ側で,基板処理装置に次の被処理基板の処理実行指令を送信する前に,更新した処理レシピを許容できるか否かを判断することができる。また,処理レシピ最適化計算によって自動的に得られた処理レシピが許容できないまま,次の被処理基板の処理が実行されることを防止できる。
【0015】
また,上記ホストコンピュータは,更新後の処理レシピを許容できると判断した場合は,前記基板処理装置に次の基板処理実行指令を送信し,更新後の処理レシピを許容できないと判断した場合は,前記基板処理装置に処理レシピを更新前の処理レシピに戻す処理レシピ復元指令を送信するようにしてもよい。これにより,更新前の処理レシピで被処理基板の成膜処理を実行させた上で再び処理レシピの最適化計算を実行させることができる。
【0016】
なお,上記ホストコンピュータは,このホストコンピュータに接続された膜厚測定装置によって測定させた膜厚データに基づいて,前記基板処理装置で成膜処理された被処理基板の膜厚を取得するようにしてもよく,前記基板処理装置に接続された膜厚測定装置によって測定させた膜厚データに基づいて,前記基板処理装置で成膜処理された被処理基板の膜厚を取得するようにしてもよい。
【0017】
上記課題を解決するために,本発明の別の観点によれば,所定の処理レシピに基づいて被処理基板のプロセス処理を実行する基板処理装置と,前記処理レシピの最適化計算を行うデータ処理装置と,ホストコンピュータと,をネットワークで接続した基板処理システムの処理レシピ最適化方法であって,前記基板処理装置は,前記ホストコンピュータから処理レシピ最適化処理実行指令を受けて前記データ処理装置に計算に必要なデータ(例えば処理レシピのデータ及びその処理レシピによる処理結果である前記被処理基板の膜厚のデータ)を送信して前記処理レシピの最適化計算を実行させて,その結果に基づいて処理レシピを更新することを特徴とする基板処理システムの処理レシピ最適化方法が提供される。このような本発明によれば,ホストコンピュータからの指令によって処理レシピ最適処理を実行させることができる。
【0018】
また,上記基板処理装置は,処理レシピを更新したときには,その更新後の処理レシピを前記ホストコンピュータに送信し,その後,前記基板処理装置は,前記ホストコンピュータから基板処理実行指令を受信した場合には,更新後の処理レシピに基づいて被処理基板のプロセス処理を実行し,前記ホストコンピュータから処理レシピ復元指令を受信した場合には,処理レシピを更新前の処理レシピに戻すことが好ましい。これによれば,基板処理装置は処理レシピを更新していったん処理レシピ最適化処理を終了すると,その後はホストコンピュータ側からの指令に応じて処理を行う。これにより,ホストコンピュータ側からの指示待ちによって処理レシピ最適化処理がビジー状態となって,基板処理装置が他の処理を受け付けられなくなることを防止できる。
【0019】
上記課題を解決するために,本発明の別の観点によれば,所定の処理レシピに基づいて被処理基板のプロセス処理を実行する基板処理装置と,前記処理レシピの最適化計算を行うデータ処理装置と,ホストコンピュータと,をネットワークで接続した基板処理システムであって,前記ホストコンピュータは,前記基板処理装置でプロセス処理された被処理基板のプロセスデータを取得し,そのプロセスデータに基づいて処理レシピを最適化するか否かを判断し,処理レシピを最適化すると判断した場合には,前記基板処理装置に処理レシピ最適化処理実行指令を送信し,前記基板処理装置は,前記ホストコンピュータから処理レシピ最適化処理実行指令を受信すると,前記データ処理装置に計算に必要なデータ(例えば処理レシピのデータ及びその処理レシピによるプロセス処理結果である前記被処理基板のプロセスデータ)を送信して前記処理レシピの最適化計算を実行させて,その結果に基づいて処理レシピを更新することを特徴とする基板処理システムが提供される。これによれば,このような本発明によれば,ホストコンピュータからの指令によって処理レシピ最適化処理を実行させることができる。
【0020】
また,上記基板処理装置は,処理レシピを更新したときには,その更新後の処理レシピを前記ホストコンピュータに送信し,前記ホストコンピュータは,前記基板処理装置から更新後の処理レシピを受信すると,前記基板処理装置に次の被処理基板の処理実行指令を送信する前に,その更新後の処理レシピを許容できるか否かを判断することが好ましい。これによれば,ホストコンピュータ側で,基板処理装置に次の被処理基板の処理実行指令を送信する前に,更新した処理レシピを許容できるか否かを判断することができる。
【0021】
このとき,上記ホストコンピュータは,更新後の処理レシピを許容できると判断した場合は,前記基板処理装置に次の被処理基板の処理実行指令を送信し,更新後の処理レシピを許容できないと判断した場合は,前記基板処理装置に処理レシピを更新前の処理レシピに戻す処理レシピ復元指令を送信するようにしてもよい。これにより,更新前の処理レシピで被処理基板の成膜処理を実行させた上で再び処理レシピの最適化計算を実行させることができる。
【0022】
上記課題を解決するために,本発明の別の観点によれば,所定の処理レシピに基づいて被処理基板のプロセス処理を実行する複数の基板処理装置と,前記処理レシピの最適化計算を行うデータ処理装置と,ホストコンピュータと,をネットワークで接続した基板処理システムであって,前記ホストコンピュータは,前記各基板処理装置でプロセス処理された被処理基板のプロセスデータを取得し,そのプロセスデータに基づいて処理レシピを最適化するか否かを判断し,処理レシピを最適化すると判断した場合には,前記各基板処理装置に処理レシピ最適化処理実行指令を送信し,前記各基板処理装置は,前記ホストコンピュータから処理レシピ最適化処理実行指令を受信すると,前記データ処理装置に計算に必要なデータ(例えば処理レシピのデータ及びその処理レシピによるプロセス処理結果である前記被処理基板のプロセスデータ)を送信して前記処理レシピの最適化計算を実行させて,その結果に基づいて処理レシピを更新することを特徴とする基板処理システムが提供される。
【0023】
このような本発明によれば,ホストコンピュータからの指令によって各基板処理装置に対して処理レシピ最適化処理を実行させることができる。これにより,各基板処理装置についてのプロセス処理の目標値(例えば目標膜厚)などについてホストコンピュータ側で一元管理することができ,各基板処理装置について処理レシピ最適化処理を実行するか否かの判断もホストコンピュータ側で集中して行うことができる。
【0024】
上記課題を解決するために,本発明の別の観点によれば,被処理基板のプロセス処理を所定の処理レシピに基づいて実行する処理室を備え,前記処理レシピの最適化計算を行うデータ処理装置と,ホストコンピュータとにネットワークを介して接続される基板処理装置であって,前記ホストコンピュータからの処理レシピ最適化処理実行指令に応じて,前記データ処理装置に計算に必要なデータを送信して前記処理レシピの最適化計算を実行させて,その結果に基づいて前記処理レシピを更新することを特徴とする基板処理装置が提供される。このような本発明によれば,ホストコンピュータからの指令によって処理レシピ最適化処理を実行させることができる。
【発明の効果】
【0025】
本発明によれば,ホストコンピュータからの指令によって基板処理装置に処理レシピ最適化処理を実行させることができる。これにより,プロセス処理の目標値(例えば目標膜厚)などについてもホストコンピュータ側で管理することができ,その目標値からずれている場合には処理レシピ最適化処理をホストコンピュータ側からの指令で自動的に実行させることができる。
【発明を実施するための最良の形態】
【0026】
以下に添付図面を参照しながら,本発明の好適な実施の形態について詳細に説明する。なお,本明細書及び図面において,実質的に同一の機能構成を有する構成要素については,同一の符号を付することにより重複説明を省略する。
【0027】
(基板処理装置の構成例)
先ず,本発明の実施形態にかかる基板処理システムに適用される基板処理装置について説明する。ここでは,基板処理装置を被処理基板としての例えば半導体ウエハ(以下,単に「ウエハ」ともいう)を多数枚一度に熱処理できるバッチ式の縦型熱処理装置(以下,単に「熱処理装置」という)として構成した場合について図面を参照しながら説明する。図1は,熱処理装置の構成例を示す断面図である。
【0028】
熱処理装置100は,図1に示すようにウエハWに対してプロセス処理を行うための処理室122を備える。処理室122は反応管110とマニホールド112により構成される。反応管110は,石英で作られた内管110a及び外管110bより成る二重管構造により構成され,反応管110の下側には金属性の筒状のマニホールド112が設けられている。内管110aは上端が開口しており,マニホールド112に支持されている。外管110bは有天井に形成され,下端がマニホールド112の上端に気密に接合されている。
【0029】
反応管110内には,多数枚(例えば150枚)のウエハWが水平な状態で,上下に所定の間隔をおいてウエハ保持具であるウエハボート114に棚状に配置されている。このウエハボート114は蓋体116の上に保温筒(断熱体)118を介して保持されている。
【0030】
蓋体116は,ウエハボート114を反応管110内に搬入,搬出するためのボートエレベータ120の上に搭載されており,上限位置にあるときには反応管110とマニホールド112とで構成される処理室122の下端開口部を閉塞する役割を有するものである。
【0031】
なお,このようなウエハボート114には,図示しないカセット容器に収容されたウエハWが図示しない移載装置によって移載されるようになっている。そして,ウエハボート114をボートエレベータ120で反応管110内に搬入してウエハWの処理を行う。その後,ウエハWの処理が終了すると,ウエハボート114をボートエレベータ120で反応管110から搬出して,ウエハボート114のウエハWを上記移載装置によって上記カセット容器に戻す。
【0032】
反応管110の周囲には,例えば抵抗体より成るヒータ130が設けられている。ヒータ130は,例えば5段に配置されたヒータユニット132a〜132eから構成される。ヒータユニット132a〜132eには,電力コントローラ134a〜134eからそれぞれ独立して電力が供給される。
【0033】
内管110aの内面には,垂直方向に一列に例えば5つの内部温度センサSTinが配置されている。内部温度センサSTinは,ウエハWの金属汚染を防止するため,例えば,石英のパイプ等によりカバーされている。同様に,外管110bの外面には,垂直方向に一列に例えば5つの外部温度センサSToutが配置されている。これら,内部温度センサSTinと外部温度センサSToutは,例えば熱電対で構成される。
【0034】
また,マニホールド112には,例えばジクロルシラン,アンモニア,窒素ガス,酸素ガスなどを処理室122内に供給するように複数のガス供給管が設けられている。図1では,理解を容易にするため,3本のガス供給管140a〜140cを示している。各ガス供給管140a〜140cには,ガス流量を調整するためのマスフローコントローラ(MFC)などの流量調整部142a〜142cが備えられている。
【0035】
さらに,マニホールド112には,内管110aと外管110bとの隙間から,反応管110内を排気するように排気管150が接続されている。この排気管150は,反応管110内の圧力を調整するためのコンビネーションバルブ,バタフライバルブ,及びバルブ駆動部などを含む圧力調整部152を介して,真空ポンプ154に接続されている。
【0036】
また,排気管150には,処理室122内の圧力を検出して,圧力調整部152をフィードバック制御するための圧力センサSPが設けられている。圧力センサSPとしては,外気圧の変化の影響を受けにくい絶対圧型を用いることが好ましいが,差圧型を用いてもよい。
【0037】
熱処理装置100は,例えば成膜すべき薄膜の種類,膜厚などに応じて,設定圧力,ヒータ設定温度,ガス流量などの処理条件からなる処理レシピデータに基づいて制御するための制御部200を備えている。制御部200は,内部温度センサSTinと外部温度センサSToutから温度検出信号を取り込むとともに,圧力センサSPから圧力検出信号を取り込み,これらの検出信号に基づいてヒータ130の電力コントローラ134a〜134e,圧力調整部152,流量調整部142a〜142c等を制御する。
【0038】
制御部200は,例えば図2に示すようにCPU(中央処理装置)210,CPU210が行う各種処理のために使用されるメモリ220,操作画面や選択画面などを表示する液晶ディスプレイなどで構成される表示手段230,オペレータによる種々のデータの入力及び所定の記憶媒体への各種データの出力など各種操作を行うための操作パネルやキーボードなどからなる入出力手段240,ネットワークなどを介してのデータのやり取りを行うための通信手段250を備える。
【0039】
その他,制御部200は,熱処理装置100の各部を制御するための各種コントローラ260,CPU210が実行する各種プログラムやプログラムの実行に必要なデータを記憶するハードディスク(HDD)などで構成される記憶手段270などを備える。CPU210は,これらプログラムやデータを必要に応じて記憶手段270から読み出して使用する。
【0040】
各種コントローラ260としては例えば熱処理装置100からの指令に応じて,電力コントローラ134a〜134e等を制御してヒータ130を制御する温度コントローラ,反応管110内の圧力制御を行う圧力コントローラなどが挙げられる。
【0041】
記憶手段270には,例えば成膜すべき薄膜の種類,膜厚などに応じて,設定圧力,ヒータ設定温度,ガス流量などの処理条件からなる複数の処理レシピを有する処理レシピデータ(処理条件データ)272などが記憶される。熱処理装置100では,例えば成膜すべき薄膜の種類,膜厚などに応じて対応する処理レシピを処理レシピデータ272から読み出して,その処理レシピに基づいてウエハWの成膜処理を実行する。
【0042】
(基板処理システムの構成例)
次に,第1実施形態にかかる基板処理システムについて説明する。図3は本実施形態にかかる基板処理システムの概略構成を示すブロック図である。図3に示すように,基板処理システム300は,熱処理装置100と,データ処理装置400と,ホストコンピュータ500とを例えばLAN(Local Area Network)などのネットワーク310を介して接続して構成される。ネットワーク310によるデータ通信は,例えばTCP/IPなどの通信プロトコルに基づいて行われる。
【0043】
データ処理装置400は,例えば図4に示すようにCPU(中央処理装置)410,CPU410が行う各種データ処理のために使用されるメモリ420,操作画面や選択画面などを表示する液晶ディスプレイなどで構成される表示手段430,オペレータによる種々のデータの入力及び所定の記憶媒体等への各種データの出力などを行うための操作パネルやキーボードなどからなる入出力手段440,例えば熱処理装置100とネットワーク310を介してのデータのやり取りを行うための通信手段450,CPU410が実行する各種プログラムやプログラムの実行に必要なデータ等を記憶するハードディスク(HDD)などの記憶手段460などを備える。CPU410は,これらプログラムやデータを必要に応じて記憶手段460から読み出して使用する。このようなデータ処理装置400は例えばコンピュータで構成される。
【0044】
記憶手段460には,膜厚データと処理レシピデータ(例えばヒータ130の設定温度からなる温度レシピデータ)に基づいて最適な処理レシピを算出するための処理レシピ最適化計算用データ462などが記憶される。このような処理レシピ最適化計算用データとしては,例えば処理レシピデータを温度レシピデータとしたときにその温度と膜厚との関係を示す膜厚温度係数,例えば温度を1℃変化させると,膜厚がどれだけ変化するかを示す係数が記憶される。
【0045】
ホストコンピュータ500は,例えば図5に示すようにCPU(中央処理装置)510,CPU510が行う各種データ処理のために使用されるメモリ520,操作画面や選択画面などを表示する液晶ディスプレイなどで構成される表示手段530,オペレータによる種々のデータの入力及び所定の記憶媒体等への各種データの出力などを行うためのキーボードなどからなる入出力手段540,例えば熱処理装置100とネットワーク310を介してデータのやり取りを行うための通信手段550を備える。
【0046】
通信手段550は,ネットワーク310を介して熱処理装置100における制御部200内の通信手段250に接続されている。熱処理装置100の通信手段250は,例えばホストコンピュータ500との論理的なインターフェイス手段例えばHCI(Host Communication Interface)を有し,このHCIによって,ホストコンピュータ500との間での各種データのやりとりをTCP/IP等のプロトコルに基づいて実行する。なお,通信手段250の構成は上記に限られることはない。
【0047】
その他,ホストコンピュータ500は,CPU510が実行する各種プログラムやプログラムの実行に必要なデータ等を記憶するハードディスク(HDD)などの記憶手段560などを備える。CPU510は,これらプログラムやデータを必要に応じて記憶手段560から読み出して使用する。
【0048】
記憶手段460には,目標膜厚及びその許容範囲など予め設定される膜厚条件からなる膜厚条件データ562,処理レシピの許容範囲(例えば温度レシピであればその許容温度範囲)などからなる処理レシピ条件データ564,後述する膜厚測定装置320から受信した膜厚データ566などが記憶される。
【0049】
ホストコンピュータ500には,熱処理装置100で処理されたウエハ上の膜厚を測定する膜厚測定装置320が接続されている。膜厚測定装置320は,例えば装置内に配設された載置台上のウエハ表面の薄膜の膜厚をエリプソメ−タにより測定するように構成される。エリプソメ−タは,落射照明型顕微鏡,分光器及びデ−タ処理部を含む光干渉式膜厚計であり,光源から対物レンズを経てウエハに光が照射され,ここで反射された光を分光器に入射し,ここに入射された反射スペクトルを解析部で解析することにより膜厚が算出される。膜厚測定装置320は,ホストコンピュータ500からの指令に基づいてウエハ上に形成された薄膜の膜厚を測定し,その測定膜厚を膜厚データとしてホストコンピュータ500に送信するようになっている。
【0050】
なお,本実施形態にかかる膜厚測定装置は,図3に示すようにホストコンピュータ500に接続されているが,必ずしもこれに限定されるものではなく,熱処理装置100に接続されていてもよい。その場合には,膜厚測定装置320からの膜厚データを熱処理装置100でいったん取り込んで,ネットワーク310を介してホストコンピュータ500に送信するようにしてもよい。
【0051】
(ウエハの処理と処理レシピ最適化処理)
次に,このような基板処理システム300におけるウエハの処理と処理レシピ最適化処理について図面を参照しながら説明する。処理レシピ最適化処理は,ホストコンピュータ500による判断でウエハの処理の後に必要に応じて行われる。具体的にはウエハの処理と処理レシピ最適化処理は,ホストコンピュータ500,熱処理装置100,データ処理装置400がそれぞれ,所定のプログラムによって制御され,データのやり取りを通じて例えば図6〜図10に示すフローチャートに基づいて行われる。図6はホストコンピュータの処理を示すフローチャートであり,図7〜図9は熱処理装置の処理を示すフローチャートであり,図10はデータ処理装置の処理を示すフローチャートである。
【0052】
本実施形態にかかる基板処理システム300によるウエハの処理は,ホストコンピュータ500からの各種の指令に基づいて実行される。先ず図6に示すようにホストコンピュータ500は,ステップS110にて熱処理装置100に対してウエハ処理実行指令を送信する。
【0053】
このウエハ処理実行指令に応じて,熱処理装置100は図7に示すウエハ処理を行う。すなわち,ステップS210にてホストコンピュータ500からのウエハ処理実行指令を受信すると,ステップS220にて記憶手段270に記憶された処理レシピデータ272の処理条件(処理室内の設定圧力,ヒータの設定温度,ガス流量など)に基づいてウエハ処理を実行する。
【0054】
ここで,ウエハの成膜処理を実行する場合の熱処理装置100の動作について説明する。例えばカセット容器からの未処理ウエハが移載されたウエハボート114を反応管110内に搬入して,ヒータ130を設定温度に基づいて制御して反応管110内を処理温度まで昇温させる。そして例えば酸素ガスを反応管110内に供給してウエハに対して熱処理(例えば酸化処理)を行い,ウエハのシリコン膜の表面部を酸化して薄膜としての酸化膜(シリコン酸化膜)を形成する。
【0055】
そして,熱処理が終了すると,反応管110内を不活性ガス雰囲気にして所定温度(例えば300℃)まで降温し,反応管110内からウエハボート114を搬出し,その後,ウエハボート114から処理済みウエハを搬出してカセット容器に戻す。
【0056】
その後,処理済みウエハが収容されたカセット容器は,例えば図示しない自動搬送ロボットにより膜厚測定装置320に搬送される。そして,膜厚測定装置320において処理済みウエハ上に形成された薄膜の膜厚が測定され,その測定膜厚は膜厚データとしてホストコンピュータ500に送信される。
【0057】
ホストコンピュータ500は,図6に示すステップS120にて膜厚測定装置320から上記処理済みウエハの膜厚データを受信すると,ステップS130にて膜厚データからの測定膜厚と目標膜厚とのずれを求め,そのずれが許容範囲か否かを判断する。ステップS130にて測定膜厚と目標膜厚とのずれが許容範囲であると判断した場合は,ステップS180にて処理終了条件を満たすか否かを判断する。処理終了条件としては,製品用ウエハの処理の場合,例えば連続して実行する熱処理の回数,時間等が挙げられる。また,調整用ウエハの処理の場合,例えば後述する目標膜厚が達成したことを処理終了条件として設定する。
【0058】
さらに,例えば熱処理装置100の異常発生を処理終了条件に加えてもよい。これにより,ステップS180の時点で熱処理装置100の異常が発生している場合にはホストコンピュータ側の処理を終了する。例えば後述するステップS170にて処理レシピの復元を行う必要が生じた場合には,熱処理装置100側で何らかの異常が発生している場合も考えられるので,そのような場合には,ステップS180にて終了処理条件を満たし,ホストコンピュータ500側の処理を終了することができる。その後は,熱処理装置100側でメンテナンスが実行されることによって異常が解消された後は,例えば後述する図11に示すメンテナンス後の処理と同様に,ホストコンピュータ500によって調整用ウエハによる処理レシピ最適化処理を行った上で,製品用ウエハの処理を実行することができる。
【0059】
なお,このように熱処理装置100側で異常が発生した場合には,ステップS180の時点でなくても,熱処理装置100の異常発生を知らせる異常発生信号をホストコンピュータ500で受信できるようにし,図6に示す処理の途中であっても,その異常発生信号を受信した時点でホストコンピュータ500側の処理を終了させるようにしてもよい。
【0060】
ステップS180にて処理終了条件を満たしていないと判断した場合はステップS110の処理に戻り,熱処理装置100にウエハ処理実行指令を送信する。すると,この場合には処理レシピは更新されていないため,熱処理装置100はそのままの処理レシピで次のウエハの処理を実行する。
【0061】
ステップS130にて測定膜厚と目標膜厚とのずれが許容範囲を超えると判断した場合は,処理レシピの最適化処理(ステップS140〜ステップS170)を行う。すなわち,ホストコンピュータ500はステップS140にて熱処理装置100に対して膜厚データと処理レシピ最適化処理実行指令を送信する。
【0062】
この処理レシピ最適化処理実行指令に応じて,熱処理装置100は図8に示す処理レシピ最適化処理を実行する。すなわち,熱処理装置100はステップS310にてホストコンピュータ500から膜厚データとともに処理レシピ最適化処理実行指令を受信すると,ステップS320にてデータ処理装置400に計算に必要なデータとして膜厚データ及び処理レシピデータを送信するとともに,処理レシピ最適化計算指令を送信する。
【0063】
この処理レシピ最適化計算指令に応じて,データ処理装置400は図10に示す処理レシピ最適化計算処理を実行する。すなわち,データ処理装置400はステップS510にて熱処理装置100から膜厚データ及び処理レシピデータとともに処理レシピ最適化計算指令を受信すると,ステップS520にて処理レシピ最適化計算を実行する。
【0064】
ここで,データ処理装置400が実行する処理レシピ最適化計算の具体例について説明する。ここでの最適化の対象とする処理レシピは,処理レシピデータの処理条件のうちのヒータ設定温度とし,膜厚データは膜厚測定装置320で測定された測定膜厚のデータとする。
【0065】
ところで,熱処理装置100によって,同じ処理レシピでウエハ上に薄膜を形成する成膜処理を連続して繰り返し実行すると,その処理結果であるプロセスデータとしての薄膜の膜厚は,熱処理装置100の特性の劣化が進んだり,処理室122内の状態が変化したりすることによって徐々に変化する(経時的変化)傾向にある。また,後述する部品交換などのメンテナンスによって熱処理装置100の状態が改善されて変化する(シフト的変化)場合もある。このため,初めに設定したヒータ設定温度で成膜処理を連続して繰り返していくうちに,ウエハ上に形成された薄膜の膜厚と目標膜厚とのずれ(膜厚偏差)が生じる。従って,このような処理室内の状態変化に応じて初めに設定したヒータ設定温度を最適値に調整することが好ましい。
【0066】
そこで,本実施形態にかかる処理レシピ最適化計算では,膜厚データの測定膜厚と目標膜厚(膜厚設定値)との偏差を求め,この偏差に基づいてヒータ設定温度を調整することによって最適なヒータ設定温度を算出する。
【0067】
具体的にはウエハに酸化膜を成膜する処理を行う場合,例えばヒータ設定温度を900℃とし,酸化膜の膜厚温度係数(ヒータ設定温度を1℃変化させると膜厚がどれだけ変化するかを示す係数)が0.12nm(1.2オングストロ−ム)/℃とすると,測定膜厚が目標膜厚(例えば2nm)よりも0.12nm(1.2オングストロ−ム)だけ大きい場合には,ヒータ設定温度を1℃だけ下げた899℃を最適なヒータ設定温度とする。これにより,目標膜厚が得られるような最適な処理レシピ(ここではヒータ設定温度)を算出することができる。
【0068】
なお,本実施形態では,最適化計算の対象とする処理レシピを,処理レシピデータの処理条件のうちのヒータ設定温度としているので,例えば他の処理条件(設定圧力,ガス流量など)についてはすべて設定した後に,ヒータ設定温度だけを最適化計算によって微調整するという運用が可能となる。但し,必ずしもこれに限定されるものではなく,処理レシピデータの他の処理条件などを最適化計算の対象としてもよく,また処理条件のすべてを最適化計算の対象にしてもよい。
【0069】
また,処理レシピ最適化計算としては,上述した計算方法に限られるものでなく,他の計算方法を用いてもよい。例えば膜厚データと処理レシピデータ(温度レシピデータ)との関係式を統計的手法などを用いて予め求めて,記憶手段460に処理レシピ最適化計算用データとして記憶しておき,この関係式を用いて最適な処理レシピを算出するようにしてもよい。
【0070】
そして,データ処理装置400は,ステップS530にて上述したような処理レシピ最適化計算を実行して得られた処理レシピを熱処理装置100に送信する。熱処理装置100は,図8に示すステップS330にてデータ処理装置400から算出された処理レシピを受信し,ステップS340にて現行の処理レシピを当該算出された処理レシピに置き換えて更新し,その更新後の処理レシピをホストコンピュータ500に送信する。
【0071】
ホストコンピュータ500は,図6に示すステップS150にて熱処理装置100から更新後の処理レシピを受信すると,ステップS160にて更新後の処理レシピでOKか否かを判断する。例えば更新後の処理レシピを構成する設定温度などが許容範囲か否かを判断する。
【0072】
ステップS160にて更新後の処理レシピでOKと判断した場合には,ステップS180にて処理終了条件を満たすか否かを判断する。ステップS180にて処理終了条件を満たさないと判断した場合はステップS110の処理に戻り,熱処理装置100にウエハ処理実行指令を送信する。すると,この場合には処理レシピは更新されているため,熱処理装置100はその更新後の処理レシピで次のウエハの処理を実行する。
【0073】
これに対して,ステップS160にて更新後の処理レシピではOKでないと判断した場合,ホストコンピュータ500はステップS170にて熱処理装置100に処理レシピ復元指令を送信する。
【0074】
熱処理装置100は,処理レシピ復元指令を受信すると,図9にて処理レシピ復元処理を実行する。すなわち,ステップS410にてホストコンピュータ500から処理レシピ復元指令を受信すると,ステップS420にて更新後の処理レシピを破棄し,更新前の処理レシピに戻す。これにより,次のウエハの処理は,更新前の処理レシピに基づいて実行される。
【0075】
こうしてホストコンピュータ500によるウエハの処理及び処理レシピの最適化処理(図6に示すステップS110〜ステップS170)が繰り返される。そして,ステップS180にて処理終了と判断した場合には,一連の処理を終了する。
【0076】
このような本実施形態にかかる処理レシピの最適化処理によれば,熱処理装置100はホストコンピュータ500からの指令を受けてデータ処理装置400に処理レシピの最適化計算を行わせる。これによれば,ホストコンピュータ500からの指令によって熱処理装置100に処理レシピ最適化処理を実行させることができる。
【0077】
これにより,プロセス処理の目標値(例えば目標膜厚)などについてもホストコンピュータ500側で管理することができ,処理レシピ最適化処理を実行するか否かの判断もホストコンピュータ500側で行うことができる。このため,目標値からどの程度ずれている場合に処理レシピ最適化処理を実行させるかなどの条件(許容範囲)についても,ホストコンピュータ500側で自由に設定して管理することができる。これにより,ホストコンピュータ500側からの指令により自動的に処理レシピの最適化を行うことができる。
【0078】
さらに,最適化された処理レシピを許容するか否かの判断基準(例えば設定温度などの許容範囲)についてもホストコンピュータ側で管理できるので,自動的に処理レシピの最適化されても,意図しない処理レシピで熱処理装置100が自動的にウエハ処理を実行することを防止することができる。また,このような処理レシピ最適化処理の自動化によって,処理レシピ最適化処理を実行させるか否かや最適化された処理レシピを許容するか否かなどの判断をユーザ側で行わなくてもよいため,ユーザへの負担を軽減することができる。
【0079】
さらに,最適化計算によって得られた処理レシピは,ホストコンピュータ500側に送信して指示を待つことなく,熱処理装置100側で更新することにより処理レシピ最適化処理をいったん終了させることができる。これにより,ホストコンピュータ500側からの指示待ちによって処理レシピ最適化処理がビジー状態となって,熱処理装置100が他の処理を受け付けられなくなることを防止できる。
【0080】
なお,このような処理レシピ最適化処理は,基板処理システム300の様々な運用に適用することができる。例えば基板処理システム300の稼働直後や部品交換などのメンテナンス直後に最適な処理レシピを得る場合に適用することができる。また,基板処理システム300の稼働中に,製品用のウエハの熱処理後にフィードフォワード的に処理レシピを最適化する場合に適用することもできる。この場合には,例えば1バッチの熱処理が終了するごとに処理レシピ最適化処理を適用してもよく,また所定回数バッチの熱処理が終了するごとに処理レシピ最適化処理を適用してもよい。
【0081】
(基板処理システムの運用例)
次に,上記ウエハの処理と処理レシピ最適化処理を利用した基板処理システム300の運用例を図面を参照しながら説明する。ここでは,熱処理装置100によってウエハを熱処理(例えば成膜処理)する場合を例に挙げて説明する。図11は,基板処理システム300の運用例を示すフローチャートである。
【0082】
基板処理システム300を稼働すると,製品用ウエハを処理する前に,先ずステップS610にてホストコンピュータ500からの指令に基づいて予め設定された初期の処理レシピによって調整用ウエハ(ダミーウエハ)に対して成膜処理を実行して,処理レシピの最適化処理を行う。具体的には図6〜図10において,ウエハの処理とあるのを調整用ウエハの処理と置き換えて各処理を実行する。
【0083】
そして,ステップS620にてホストコンピュータ500により目標膜厚が達成できたか否かを判断する。具体的には図6のステップS180において目標膜厚を達成したこと,すなわち測定膜厚と目標膜厚とのずれが許容範囲であることを処理終了条件として処理を実行する。目標膜厚が達成できるまでステップS610にて調整用ウエハの処理と処理レシピの最適化が繰り返される。その後,ステップS620にて目標膜厚が達成できたと判断した場合はステップS630にて最適化された処理レシピを製品用の処理レシピとして記憶手段270の処理レシピデータ272に記憶する。
【0084】
次に,ステップS640にてホストコンピュータ500からの指令に基づいて製品用の処理レシピによって製品用ウエハに対して成膜処理を実行して,処理レシピの最適化処理を行う。具体的には図6〜図10において,ウエハの処理とあるのを製品用ウエハの処理と置き換えて各処理を実行する。
【0085】
ステップS650にて熱処理装置100のメンテナンスがあったか否かを判断する。例えば熱処理装置100の部品交換などのメンテナンスがあると,その情報はホストコンピュータ500に送信され,ホストコンピュータ500側で熱処理装置100のメンテナンスがあったか否かを判断する。
【0086】
これに対して,ステップS650にて熱処理装置100のメンテナンスがないと判断した場合にはステップS660にて処理終了か否かを判断する。具体的には図6のステップS180において例えば成膜処理が所定回数に達したことを処理終了条件として処理を実行する。これにより,成膜処理が所定回数に達するまで,ステップS640にて製品用ウエハの処理と処理レシピの最適化が繰り返される。これにより,常に最適化された処理レシピによってウエハの成膜処理が実行されるので,例えば上述したように熱処理装置100の特性の劣化が進んだり,処理室122内の状態が変化したりしても,処理レシピが修正されることによって常に目標膜厚を達成することができる。
【0087】
一方,ステップS650にて熱処理装置100のメンテナンスがあったと判断した場合には,ステップS610の処理に戻り,再び初期の処理レシピを設定して調整用ウエハ(ダミーウエハ)に対して成膜処理を実行して処理レシピの最適化処理を行い,最終的に最適化された処理レシピを製品用の処理レシピとしてステップS630以降の製品用ウエハの成膜処理と処理レシピ最適化処理を実行する。これにより,上述したように熱処理装置100のメンテナンスによって熱処理装置100の状態が改善して状態の変化が大きくなった後でも,最適な処理レシピが設定し直されることによって常に目標膜厚を達成することができる。
【0088】
こうして,本実施形態による基板処理システムを運用することにより,基板処理システムを稼働直後のみならず,ウエハのバッチ処理を実行している間においても,ホストコンピュータ500からの指令に基づいて自動的に処理レシピが最適化されるので,常に目標膜厚を達成することができる。
【0089】
なお,上記実施形態においては,基板処理装置としてバッチ式の熱処理装置を例に挙げて説明したが,必ずしもこれに限定されるものではなく,基板処理装置は枚葉式の熱処理装置であってもよい。また,プロセス処理としては,成膜処理の他に,酸化処理,拡散処理等に適用してもよい。また,プロセス処理の結果として得られる被処理基板のプロセスデータとして,上記実施形態で例に挙げた膜厚データの他にも,エッチング処理によってウエハ上に形成された素子の微小寸法(例えば素子の幅の寸法や深さの寸法など),エッチングレート,これらのウエハ面内均一性などのプロセス処理後に測定可能なデータを適用することができる。この場合には,図3又は後述する図12に示す膜厚測定装置320の代わりに,上記プロセスデータのうちの本発明に適用するプロセスデータを測定可能な測定装置を用いるようにしてもよい。
【0090】
また,基板処理装置として,上記実施形態で例に挙げた熱処理装置100の他にも,エッチング処理装置,スパッタリング装置など様々な種類のプロセス処理を行う基板処理装置を適用することができる。被処理基板は,半導体ウエハの他に,液晶基板などのFPD(Flat Panel Display)基板であってもよい。
【0091】
また,上記実施形態においては,基板処理装置として1つの熱処理装置100をネットワーク310に接続した場合について説明したが,必ずしもこれに限定されるものではなく,図12に示すように複数の基板処理装置600A,600B,600C,・・・をネットワーク310に接続してもよい。
【0092】
この場合,データ処理装置400は,例えばアドバンスド・グループ・コントローラ(以下,「AGC」と称する)として構成して,各基板処理装置600A,600B,600C,・・・の処理レシピ最適化計算を実行させるようにしてもよい。なお,AGCは,上述した処理レシピ最適化計算機能の他,プロセスデータを対象にその解析処理,統計処理,プロセスデータやその解析/統計結果の集中モニタリング処理,更には解析/統計結果をレシピに反映させる処理等を行うようにしてもよい。AGCは,1台のコンピュータで構成してもよく,複数台のコンピュータで構成してもよい。また,サーバとクライアントに分けて機能を分散させるように構成してもよい。
【0093】
このような図12に示す基板処理システム300においては,各基板処理装置600A,600B,600C,・・・の制御部610A,610B,610C,・・・は,ホストコンピュータ500からの指令を受けてデータ処理装置400に処理レシピの最適化計算を行わせる。これによれば,ホストコンピュータ500からの指令によって各基板処理装置600A,600B,600C,・・・に処理レシピ最適化処理を実行させることができる。これにより,各基板処理装置600A,600B,600C,・・・におけるプロセス処理の目標値(例えば目標膜厚)などについてホストコンピュータ側で一元管理することができ,処理レシピ最適化処理を実行するか否かの判断もホストコンピュータ500側で集中して行うことができる。
【0094】
また,図12に示す構成例では,1つの膜厚測定装置320で各基板処理装置600A,600B,600C,・・・で処理されたウエハの膜厚を測定する。これに限定されることはなく,例えば複数の膜厚測定装置を各基板処理装置600A,600B,600C,・・・にそれぞれ接続して,各基板処理装置600A,600B,600C,・・・ごとにウエハの膜厚を測定するようにしてもよい。その場合には,各膜厚測定装置からの膜厚データを各基板処理装置600A,600B,600C,・・・でいったん取り込んで,ネットワーク310を介してホストコンピュータ500に送信するようにしてもよい。
【0095】
なお,上記実施形態により詳述した本発明については,複数の機器から構成されるシステムに適用しても,1つの機器からなる装置に適用してもよい。上述した実施形態の機能を実現するソフトウエハのプログラムを記憶した記憶媒体等の媒体をシステムあるいは装置に供給し,そのシステムあるいは装置のコンピュータ(又はCPUやMPU)が記憶媒体等の媒体に記憶されたプログラムを読み出して実行することによっても,本発明が達成され得る。
【0096】
この場合,記憶媒体等の媒体から読み出されたプログラム自体が上述した実施形態の機能を実現することになり,そのプログラムを記憶した記憶媒体等の媒体は本発明を構成することになる。プログラムを供給するための記憶媒体等の媒体としては,例えば,フロッピー(登録商標)ディスク,ハードディスク,光ディスク,光磁気ディスク,CD−ROM,CD−R,CD−RW,DVD−ROM,DVD−RAM,DVD−RW,DVD+RW,磁気テープ,不揮発性のメモリカード,ROMなどが挙げられる。また,媒体に対してプログラムを,ネットワークを介してダウンロードして提供することも可能である。
【0097】
なお,コンピュータが読み出したプログラムを実行することにより,上述した実施形態の機能が実現されるだけでなく,そのプログラムの指示に基づき,コンピュータ上で稼動しているOSなどが実際の処理の一部又は全部を行い,その処理によって上述した実施形態の機能が実現される場合も,本発明に含まれる。
【0098】
さらに,記憶媒体等の媒体から読み出されたプログラムが,コンピュータに挿入された機能拡張ボードやコンピュータに接続された機能拡張ユニットに備わるメモリに書き込まれた後,そのプログラムの指示に基づき,その機能拡張ボードや機能拡張ユニットに備わるCPUなどが実際の処理の一部又は全部を行い,その処理によって上述した実施形態の機能が実現される場合も,本発明に含まれる。
【0099】
以上,添付図面を参照しながら本発明の好適な実施形態について説明したが,本発明は係る例に限定されないことは言うまでもない。当業者であれば,特許請求の範囲に記載された範疇内において,各種の変更例または修正例に想到し得ることは明らかであり,それらについても当然に本発明の技術的範囲に属するものと了解される。
【産業上の利用可能性】
【0100】
本発明は,基板処理システムの処理レシピ最適化方法,基板処理システム,基板処理装置に適用可能である。
【図面の簡単な説明】
【0101】
【図1】本発明の実施形態にかかる熱処理装置の構成例を示す断面図である。
【図2】図1に示す制御部の構成例を示すブロック図である。
【図3】同実施形態にかかる基板処理システムの構成例を示すブロック図である。
【図4】同実施形態にかかるデータ処理装置の構成例を示すブロック図である。
【図5】図4に示すホストコンピュータの構成例を示すブロック図である。
【図6】同実施形態にかかるホストコンピュータが行う処理の具体例を示すフローチャートである。
【図7】同実施形態にかかる熱処理装置が行うウエハ処理の具体例を示すフローチャートである。
【図8】同実施形態にかかる熱処理装置が行う処理レシピ最適化処理の具体例を示すフローチャートである。
【図9】同実施形態にかかる熱処理装置が行う処理レシピ復元処理の具体例を示すフローチャートである。
【図10】同実施形態にかかるデータ処理装置が行う処理の具体例を示すフローチャートである。
【図11】同実施形態にかかる基板処理システムの運用例を示すフローチャートである。
【図12】同実施形態にかかる基板処理システムの他の構成例を示すブロック図である。
【符号の説明】
【0102】
100 熱処理装置
110 反応管
110a 内管
110b 外管
112 マニホールド
114 ウエハボート
116 蓋体
118 保温筒(断熱体)
120 ボートエレベータ
122 処理室
130 ヒータ
132a〜132e ヒータユニット
134a〜134e 電力コントローラ
140a〜140c ガス供給管
142a〜142c 流量調整部
150 排気管
152 圧力調整部
154 真空ポンプ
200 制御部
210 CPU
220 メモリ
230 表示手段
240 入出力手段
250 通信手段
260 各種コントローラ
270 記憶手段
272 処理レシピデータ
300 基板処理システム
310 ネットワーク
320 膜厚測定装置
400 データ処理装置
410 CPU
420 メモリ
430 表示手段
440 入出力手段
450 通信手段
460 記憶手段
462 処理レシピ最適化計算用データ
500 ホストコンピュータ
510 CPU
520 メモリ
530 表示手段
540 入出力手段
550 通信手段
560 記憶手段
562 膜厚条件データ
564 処理レシピ条件データ
566 膜厚データ
600A〜600C 基板処理装置
610A〜610C 制御部
W ウエハ

【特許請求の範囲】
【請求項1】
所定の処理レシピに基づいて被処理基板の成膜処理を実行する基板処理装置と,前記処理レシピの最適化計算を行うデータ処理装置と,ホストコンピュータと,をネットワークで接続した基板処理システムの処理レシピ最適化方法であって,
前記ホストコンピュータは,前記基板処理装置で成膜処理された被処理基板を測定して得られた膜厚が目標膜厚からずれていた場合,そのずれが許容範囲を超える場合には前記基板処理装置に処理レシピ最適化処理実行指令を送信し,
前記基板処理装置は,前記ホストコンピュータから処理レシピ最適化処理実行指令を受信すると,前記データ処理装置に計算に必要なデータを送信して目標膜厚が得られるような最適な処理レシピを算出する処理レシピ最適化計算を実行させて,その結果に基づいて処理レシピを更新することを特徴とする基板処理システムの処理レシピ最適化方法。
【請求項2】
前記基板処理装置は,処理レシピを更新したときには,その更新後の処理レシピを前記ホストコンピュータに送信し,
前記ホストコンピュータは,前記基板処理装置から更新後の処理レシピを受信すると,その更新後の処理レシピを許容できるか否かを判断することを特徴とすることを特徴とする請求項1に記載の基板処理システムの処理レシピ最適化方法。
【請求項3】
前記ホストコンピュータは,更新後の処理レシピを許容できると判断した場合は,前記基板処理装置に次の基板処理実行指令を送信し,更新後の処理レシピを許容できないと判断した場合は,前記基板処理装置に処理レシピを更新前の処理レシピに戻す処理レシピ復元指令を送信することを特徴とする請求項2に記載の基板処理システムの処理レシピ最適化方法。
【請求項4】
前記ホストコンピュータは,このホストコンピュータに接続された膜厚測定装置によって測定させた膜厚データに基づいて,前記基板処理装置で成膜処理された被処理基板の膜厚を取得することを特徴とする請求項1に記載の基板処理システムの処理レシピ最適化方法。
【請求項5】
前記ホストコンピュータは,前記基板処理装置に接続された膜厚測定装置によって測定させた膜厚データに基づいて,前記基板処理装置で成膜処理された被処理基板の膜厚を取得することを特徴とする請求項1に記載の基板処理システムの処理レシピ最適化方法。
【請求項6】
所定の処理レシピに基づいて被処理基板のプロセス処理を実行する基板処理装置と,前記処理レシピの最適化計算を行うデータ処理装置と,ホストコンピュータと,をネットワークで接続した基板処理システムの処理レシピ最適化方法であって,
前記基板処理装置は,前記ホストコンピュータから処理レシピ最適化処理実行指令を受けて前記データ処理装置に計算に必要なデータを送信して前記処理レシピの最適化計算を実行させて,その結果に基づいて処理レシピを更新することを特徴とする基板処理システムの処理レシピ最適化方法。
【請求項7】
前記基板処理装置は,処理レシピを更新したときには,その更新後の処理レシピを前記ホストコンピュータに送信し,
その後,前記基板処理装置は,前記ホストコンピュータから基板処理実行指令を受信した場合には,更新後の処理レシピに基づいて被処理基板のプロセス処理を実行し,前記ホストコンピュータから処理レシピ復元指令を受信した場合には,処理レシピを更新前の処理レシピに戻すことを特徴とする請求項6に記載の基板処理システムの処理レシピ最適化方法。
【請求項8】
所定の処理レシピに基づいて被処理基板のプロセス処理を実行する基板処理装置と,前記処理レシピの最適化計算を行うデータ処理装置と,ホストコンピュータと,をネットワークで接続した基板処理システムであって,
前記ホストコンピュータは,前記基板処理装置でプロセス処理された被処理基板のプロセスデータを取得し,そのプロセスデータに基づいて処理レシピを最適化するか否かを判断し,処理レシピを最適化すると判断した場合には,前記基板処理装置に処理レシピ最適化処理実行指令を送信し,
前記基板処理装置は,前記ホストコンピュータから処理レシピ最適化処理実行指令を受信すると,前記データ処理装置に計算に必要なデータを送信して前記処理レシピの最適化計算を実行させて,その結果に基づいて処理レシピを更新することを特徴とする基板処理システム。
【請求項9】
前記基板処理装置は,処理レシピを更新したときには,その更新後の処理レシピを前記ホストコンピュータに送信し,
前記ホストコンピュータは,前記基板処理装置から更新後の処理レシピを受信すると,前記基板処理装置に次の被処理基板の処理実行指令を送信する前に,その更新後の処理レシピを許容できるか否かを判断することを特徴とする請求項8に記載の基板処理システム。
【請求項10】
前記ホストコンピュータは,更新後の処理レシピを許容できると判断した場合は,前記基板処理装置に次の被処理基板の処理実行指令を送信し,更新後の処理レシピを許容できないと判断した場合は,前記基板処理装置に処理レシピを更新前の処理レシピに戻す処理レシピ復元指令を送信することを特徴とする請求項9に記載の基板処理システム。
【請求項11】
所定の処理レシピに基づいて被処理基板のプロセス処理を実行する複数の基板処理装置と,前記処理レシピの最適化計算を行うデータ処理装置と,ホストコンピュータと,をネットワークで接続した基板処理システムであって,
前記ホストコンピュータは,前記各基板処理装置でプロセス処理された被処理基板のプロセスデータを取得し,そのプロセスデータに基づいて処理レシピを最適化するか否かを判断し,処理レシピを最適化すると判断した場合には,前記各基板処理装置に処理レシピ最適化処理実行指令を送信し,
前記各基板処理装置は,前記ホストコンピュータから処理レシピ最適化処理実行指令を受信すると,前記データ処理装置に計算に必要なデータを送信して前記処理レシピの最適化計算を実行させて,その結果に基づいて処理レシピを更新することを特徴とする基板処理システム。
【請求項12】
被処理基板のプロセス処理を所定の処理レシピに基づいて実行する処理室を備え,前記処理レシピの最適化計算を行うデータ処理装置と,ホストコンピュータとにネットワークを介して接続される基板処理装置であって,
前記ホストコンピュータからの処理レシピ最適化処理実行指令に応じて,前記データ処理装置に計算に必要なデータを送信して前記処理レシピの最適化計算を実行させて,その結果に基づいて前記処理レシピを更新することを特徴とする基板処理装置。


【図1】
image rotate

【図2】
image rotate

【図3】
image rotate

【図4】
image rotate

【図5】
image rotate

【図6】
image rotate

【図7】
image rotate

【図8】
image rotate

【図9】
image rotate

【図10】
image rotate

【図11】
image rotate

【図12】
image rotate


【公開番号】特開2008−91826(P2008−91826A)
【公開日】平成20年4月17日(2008.4.17)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2006−273887(P2006−273887)
【出願日】平成18年10月5日(2006.10.5)
【出願人】(000219967)東京エレクトロン株式会社 (5,184)
【Fターム(参考)】