説明

基板処理方法及び装置

【課題】配線間の電流リークが少なく、しかも配線へのダメージを少なくして、配線デバイスとしての信頼性を高めた配線を形成できるようにする。
【解決手段】絶縁膜内に配線用凹部を形成した基板表面にバリア膜を形成し、該バリア膜の表面に配線材料を形成して該配線材料を前記配線用凹部の内部に埋込んだ基板を用意し、基板表面に形成した余剰の配線材料及びバリア膜を除去して配線用凹部内に埋込んだ配線材料で配線を形成し、基板上の汚染物質を、カルボン酸を含む雰囲気下でカルボン酸と加熱反応させて除去する。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、例えば半導体デバイスの製造工程において、半導体ウエハ等の基板の表面を清浄化するための基板処理方法及び装置に関し、特に半導体ウエハ等の基板の表面に設けた微細な配線用凹部の内部に銅等の配線材料(金属)を埋込んで配線を形成したり、該配線の表面を金属保護膜で選択的に覆って保護したりするのに使用される基板処理方法及び装置に関する。
【背景技術】
【0002】
近年、半導体ウエハ等の基板上に配線回路を形成するための配線材料として、アルミニウムまたはアルミニウム合金に代えて、電気抵抗率が低くエレクトロマイグレーション耐性が高い銅(Cu)を用いる動きが顕著になっている。この種の銅配線は、基板の表面に設けた微細な配線用凹部の内部に銅を埋込むことによって一般に形成される。この銅配線を形成する方法としては、CVD、スパッタリング及びめっきといった手法があるが、いずれにしても、基板のほぼ全表面に銅を成膜し、化学機械的研磨(CMP)により不要の銅を除去するようにしている。
【0003】
また、特に45nmノード以降において、例えば銅配線のエレクトロマイグレーション耐性の更なる向上を主目的として、銅配線の露出表面を、例えばCoWP合金等の金属保護膜で選択的に覆って保護することが求められている。この金属保護膜を無電解めっきで形成する場合には、基板表面を高濃度の金属イオンや有機成分を含むめっき液や有機成分を含む洗浄液等の薬液に接触させる必要があり、このため、薬液と配線材料とが錯体を形成し、その残渣物等のディフェクトによる金属汚染や有機化合物汚染の危険性が高まる。
【0004】
図1及び図2は、半導体装置における銅配線形成例を示す。先ず、図1(a)に示すように、下層絶縁膜10の表面にエッチストッパ膜12を形成し、このエッチストッパ膜12の表面に堆積した、例えばSiOからなる酸化膜やLow−k材膜等からなる上層絶縁膜(層間絶縁膜)14の内部に、例えばリソグラフィ・エッチング技術により、配線用凹部としての配線溝16を形成し、この上層絶縁膜14の表面にTaやTaNや等からなるバリア膜18、更にバリア膜18の表面に、必要に応じて、電解めっきの給電層としてのシード層(図示せず)をスパッタリング等により形成した基板Wを用意する(ステップ1)。
【0005】
そして、図1(b)に示すように、基板Wの表面に銅めっきを施すことで、基板Wの配線溝16の内部に銅を充填させるとともに、上層絶縁膜14上に銅膜20を堆積させる(ステップ2)。その後、化学機械的研磨(CMP)などにより、上層絶縁膜14上のバリア膜18及び銅膜20を除去して、配線溝16内に充填させた銅膜20の表面と上層絶縁膜14の表面とをほぼ同一平面にする(ステップ3)。これにより、図1(c)に示すように、上層絶縁膜14の内部に銅膜20からなる配線(銅配線)22を形成する。次に、基板Wの表面を洗浄し、純水等でリンス(水洗)した後、スピンドライ等によって基板Wを乾燥させる(ステップ4)。
【0006】
図3及び図4は、前述のようにして形成した配線22を、CoWP合金からなる金属保護膜で保護するようにした例を示す。先ず、図1(c)に示す、上層絶縁膜14の内部に配線(銅配線)22を形成し乾燥させた基板Wを用意する(ステップ1)。そして、この基板Wの表面にめっき前処理を施して、配線22の表面に触媒としてのPdを選択的に付着させる(ステップ2)。これは、銅からなる配線22の上に直接めっきするのが困難なためであり、この処理は、例えば硫酸パラジウム液中に基板表面を晒すことで行われる。
【0007】
次に、基板Wの表面を無電解めっき液に接触させて、図3(a)に示すように、Pdを核として成長した、例えばCoWP合金からなる金属保護膜24を配線22の表面に選択的に形成して配線22を保護する(ステップ3)。この金属保護膜24の膜厚は、例えば10nm程度である。
【0008】
そして、図3(b)に示すように、例えばロールブラシ26を使用しためっき後処理を行って、金属保護膜24の選択性を向上させる(ステップ4)。つまり、例えば、基板Wの表面に純水を供給しながら、ロールブラシ26を機械的に擦りつけるスクラブ洗浄を行って、図3(c)に示すように、基板Wの表面に残った残渣等を除去する。この後洗浄の他の例としては、ペンシル状のブラシを回転させつつ機械的に擦りつけて残渣等を除去する方法や、メガソニックによって基板表面に圧力波を与えて残渣等を除去する方法、更には、有機酸液により基板表面の残渣等をエッチング除去する方法等が知られている。次に、基板Wの表面を純水等でリンス(水洗)し、スピンドライ等によって基板Wを乾燥させる(ステップ5)。
【0009】
なお、半導体プロセスにおける銅配線上の酸化銅を、氷酢酸を使ってエッチング除去するようにしたもの(例えば、非特許文献1参照)、微細孔底の銅表面や当該孔側壁、及び層間絶縁膜表面の清浄化を図る手段として、酢酸を含む気体中に被処理物を曝すようにしたもの(例えば、特許文献1参照)、及び銅配線表面の酸化膜をギ酸蒸気により還元処理するようにしたもの(例えば、特許文献2参照)等が提案されている。
【0010】
【非特許文献1】K. L. Chavezand D. W. Hess: Journal of The Electrochemical. Society, Vol.148, No.11,G640-643 (2001)
【特許文献1】特開2001−271192号公報
【特許文献2】特許第3373499号公報
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0011】
配線の更なる微細化に伴って、配線リークによる素子の不良化の可能性がより高まってきている。特に、絶縁膜(層間絶縁膜)として、疎水性の強いLow−k材料を導入すると、図1(c)に示すように、CMP等により不要な配線材料(銅膜)を研磨除去して配線22を形成した後の基板Wの表面に、疎水性の強いLow−k材料からなる絶縁膜14が親水性の配線(銅)22と共に露出する。このため、水洗(リンス)乾燥時に基板の均一な乾燥が行うことができず、水洗乾燥後の基板表面にウォータマークが残りやすくなる。そして、図1(c)に示すように、絶縁膜14の表面に研磨した銅からなる残渣28が除去されずに残っていると、結果的に配線間の電流リークが生じやすくなる。これは、リンス水が配線材料を僅かながら溶解し、それが蒸発することで、ウォータマーク部分に金属汚染が高い部分が生じるからである。
【0012】
特に、65nmノード以降においては、配線材料の研磨時に使用する薬液と配線材料とが錯体を形成し、その残渣物等のディフェクトが配線間リークや次工程での不良の原因となっており、ディフェクト数の大幅な減少が求められている。つまり、この研磨に用いられる研磨剤中には、銅等の配線材料とTa等のバリア膜との硬さ等の性質の違いから、配線材料を保護しながらバリア膜の研磨に優位性を持たせるための有機成分や、防食剤としての有機成分である難分解性のBTA(ベンゾトリアゾール)等が一般に添加されている。このため、研磨後に純水や薬液を使用して基板の洗浄を行っても、配線や絶縁膜の上に研磨した銅と薬液中の有機成分との有機錯体が残渣として僅かに残ってしまう。また、特に層間絶縁膜にLow−k材料を用いた場合、CMP後にウォータマークが残りやすくなり、結果的に配線間の電流リークが生じやすくなる。これは、リンス水が配線材料を僅かながら溶解して有機錯体を形成し、その液が蒸発することでウォータマークに有機化合物汚染の高い部分を生じるからである。
【0013】
配線の表面をCoWP合金からなる金属保護膜で保護する際にあっても、図1(c)に示すように、絶縁膜14の表面にCMP等によって研磨した銅の残渣28が残っていると、この残渣28にPdが付着して、図3(a)に示すように、CoWPが残渣30として絶縁膜14の表面に堆積する。また絶縁膜14上に除去されずに残ったPd残渣を核にして、同様にCoWPが絶縁膜14の表面に堆積して残渣30となる。
配線22や絶縁膜14の表面に、研磨した銅と薬液中の有機成分との有機錯体が残渣として残っていた場合も同様に、有機錯体残渣にPdが付着して、CoWPが残渣30として配線22や絶縁膜14の表面に堆積する。
【0014】
このような残渣30を基板表面から完全に除去することは一般に困難で、これを機械的に除去しようとして除去する力を大きくすると、基板へのダメージを与えることに繋がってしまう。またエッチング力の強い酸を使用して残渣30をエッチング除去しようとすると、配線までもが薬液によって腐食され、配線の抵抗が上昇してしまう。更に、後洗浄後の水洗(リンス)乾燥時においても、CMP後の水洗(リンス)乾燥時におけるウォータマーク発生と同様のことが起きる。
【0015】
何れにしても、絶縁膜上に銅やCoWP、あるいはそれらの塩、有機化合物のような導電体が残渣として除去されずに存在すると、配線間に無視できない電流リークが生じるとともに、配線材料としての銅等が絶縁膜内に拡散し、配線デバイスとしての信頼性が大きく損なわれてしまう。
【0016】
本発明は上記事情に鑑みて為されたもので、配線間の電流リークが少なく、しかも配線へのダメージを少なくして、配線デバイスとしての信頼性を高めた配線を形成できるようにした基板処理方法及び装置を提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0017】
本発明の基板処理方法は、基板上の汚染物質を、カルボン酸を含む雰囲気下でカルボン酸と加熱反応させて除去する。
カルボン酸の供給方法としては加熱気化でもよいし、不活性ガスのバブリンクによるのでも良い。
【0018】
例えば、金属汚染物質としてのCu(OH)を、酢酸を含む雰囲気下で酢酸と加熱反応させると、Cu(CHCOO)が生成され、このCu(CHCOO)は、蒸気圧で蒸発する。このように、基板表面から金属汚染物質を、例えば揮発させて除去することで、例えば配線間のリーク電流を低減させることができる。このことは、基板表面に残った有機化合物汚染物質も同様である。しかも、電気化学的な腐食が発生しない、いわゆるドライ方式で金属汚染物質及び有機化合物汚染物質の除去を行うことで、例えば配線へのダメージを低減させるとともに、洗浄後の基板の乾燥不足によって、配線等の表面に酸化膜が形成されることを抑制することができる。カルボン酸の気化は、例えば減圧気化、加熱気化または不活性ガスのバブリンク等によって行われる。
【0019】
本発明の他の基板処理方法は、絶縁膜内に配線用凹部を形成した基板表面にバリア膜を形成し、該バリア膜の表面に配線材料を形成して該配線材料を前記配線用凹部の内部に埋込んだ基板を用意し、基板表面に形成した余剰の配線材料及びバリア膜を除去して前記配線用凹部内に埋込んだ配線材料で配線を形成し、基板上の汚染物質を、カルボン酸を含む雰囲気下でカルボン酸と加熱反応させて除去する。
【0020】
配線形成後の基板表面には、洗浄などによって、配線間の絶縁膜上に存在する配線材料による金属汚染や薬液の有機成分と配線材料との錯体による有機化合物汚染が生じやすい。特に微細化に伴って配線間隔が飛躍的に小さくなるに従って、金属汚染や有機物化合物汚染による電流リークの危険性がより高まる。更に、絶縁膜として、Low−k材料を導入すると、基板表面に親水と疎水の両方の部分が共存することとなり、リンス後のスピン乾燥において均一な乾燥が困難となる。
本発明によれば、配線形成後の基板表面における配線間の絶縁膜上に存在する配線材料やその化合物等の金属汚染物質や有機化合物汚染物質を除去することで、このような状況下にあっても、リーク電流を低減させ、しかも配線へのダメージを低減させることができる。
【0021】
本発明の更に他の基板処理方法は、絶縁膜内に設けた配線用凹部内に配線材料を埋込んで配線を形成した基板を用意し、前記配線の表面に金属保護膜を選択的に形成し、基板上の汚染物質を、カルボン酸を含む雰囲気下でカルボン酸と加熱反応させて除去する。
このように、配線の表面を、CoWP合金等の金属保護膜で選択的に覆って該配線を保護した後に、配線間の絶縁膜上に存在する金属汚染物質や有機化合物汚染物質を、例えば揮発させて除去することで、リーク電流の増加と配線抵抗の上昇を防止し、しかも、汚染除去後の洗浄乾燥を不要となして、金属保護膜表面の酸化も防止することができる。
【0022】
汚染物質には、金属汚染物質、有機化合物汚染物質及びレジスト除去後に基板表面に残ったレジスト残渣が含まれる。
絶縁膜内に配線用凹部を形成した後、不要になったレジストを、例えば薬液洗浄によって完全に除去すると、Low−k材等からなる絶縁膜中に水分が入り電流リークの危険が高まる。アッシャーによってレジストを完全に除去すると、配線や絶縁膜に腐食等のダメージを与えてしまう。これに対して、不要になったレジストを、レジスト残渣を残して、例えば薬液洗浄やアッシャーによって除去し、残ったレジスト残渣を、カルボン酸を含む雰囲気下でカルボン酸と加熱反応させて除去することで、このような弊害を防止することができる。
【0023】
前記配線材料及びバリア膜の除去を、CMP法、電解研磨法またはこれらの組合せで行うことが好ましい。
配線材料及びバリア膜の除去をCMP法で行う時には、1psi(約70hPa)乃至それ以下の低圧で行うことが、配線へダメージを与えないようにする上で好ましい。電解研磨法としては、砥粒を含まない研磨液中で研磨パッドを基板表面に押当てて該表面を平坦化する方法や、砥粒を含む研磨液中で研磨パッドを基板表面に押当てて該表面を平坦化する方法のいずれでも良い。また、配線材料の除去を電解研磨法で行った後、バリア膜をCMP法で除去しても良い。
【0024】
前記金属保護膜の形成を、無電解めっき法によって行うことが好ましい。
前記金属保護膜は、例えば、コバルト、ニッケル、タングステン、バナジウムまたはモリブデン、またはこれらの合金または化合物からなる。
金属保護膜としては、銅等の配線材料との接合力が強く、しかも比抵抗(ρ)が低い、CoWP合金等のCo合金や、NiWP等のNi合金が一般に使用される。
【0025】
前記配線として、配線幅が0.2μm以下の配線が含まれていてもよい。
配線の幅が2μm以下の場合に、配線間の電流リークが一般に問題となる。配線の幅が0.1μm以下、特に65〜45nm程度の場合に、絶縁膜(層間絶縁膜)として、Low−k材料が好適に使用される。
【0026】
前記配線材料は、例えば、銅、銀、タングステン、タンタル、チタン、ルテニウム、金、スズまたは鉛、またはこれらを含む合金からなる。
前記絶縁膜上の汚染物質の除去に先だって、基板表面を水洗することが好ましい。
絶縁膜上の汚染物質の除去に先だって、基板表面を水洗することで、例えば、水洗乾燥後の基板表面に金属汚染や有機化合物汚染の危険性が高いウォータマーク部分が生じても、その後の汚染物質除去処理で、この金属汚染や有機化合物汚染の危険性が高いウォータマーク部分は、例えば揮発、昇華または分解されて除去され、これによって、金属汚染や有機化合物汚染の危険性が高いウォータマーク部分が基板表面に残ることが防止される。
【0027】
前記カルボン酸は、好ましくは、蟻酸、酢酸またはプロピオン酸、またはこれらの混合物からなる。
蟻酸、酢酸またはプロピオン酸等のカルボン酸は、比較的安価であるばかりでなく、常温で液体であるので取扱いが容易であり、金属または有機化合物と反応して気化させることができる。従って、カルボン酸、特に蟻酸、酢酸またはプロピオン酸を使用することで、金属汚染物質または有機化合物を、容易且つ安価に、例えば揮発、昇華または分解させて除去することができる。
前記絶縁膜は、例えばSiO、Low−k材またはポーラスLow−k材からなる。
【0028】
本発明の基板処理装置は、基板上の汚染物質を、カルボン酸を含む雰囲気下でカルボン酸と加熱反応させて除去する汚染物質除去装置を有する。
【0029】
本発明の好ましい一態様において、前記汚染物質除去装置は、真空排気可能で、内部に基板を保持し加熱する基板保持部と該基板保持部で保持した基板に向けて気相のカルボン酸を供給するガス供給ヘッドを有する気密チャンバと、前記ガス供給ヘッドに気相のカルボン酸を供給するカルボン酸供給系を有する。
これにより、汚染物質の除去処理を、気密チャンバ内おいて、電気化学的な腐食が発生せず、しかも乾燥不足による酸化膜形成の問題が生じない、いわゆるドライ方式で行うことができる。
【0030】
本発明の好ましい一態様において、前記基板処理装置は、基板表面を水洗し乾燥する水洗乾燥装置を更に有する。
本発明の好ましい一態様において、前記基板処理装置は、基板表面に形成した余剰の配線材料及びバリア膜を研磨除去する研磨装置を更に有する。
【0031】
本発明の好ましい一態様において、前記基板処理装置は、基板表面の絶縁膜内に設けた配線用凹部内に配線材料を埋込んで形成した配線の表面に金属保護膜を選択的に形成する保護膜形成装置を更に有する。
【発明の効果】
【0032】
本発明によれば、例えばCMP等によって余分な配線材料及びバリア膜を除去した後、または配線の表面にCoWP合金等からなる金属保護膜を無電解めっき等で形成した後における配線間の電流リークを、大幅に低減することができる。例えば、絶縁膜の内部に、幅が0.16μmの配線を0.16μm間隔で設けた基板を用意し、この基板表面の絶縁膜上の金属汚染物質を、カルボン酸として蟻酸を用いた雰囲気で除去した時、従来の純水洗浄のみの場合と比較して、リーク電流を、約10分の1に低減できることが確かめられている。この時、2V印加時のリーク電流値を2点測定法のプローバにより測定した。
【0033】
絶縁膜の内部に、幅が0.25μmの配線を0.25μm間隔で設けた基板を用意し、この基板の上の有機化合物汚染物質を、カルボン酸として蟻酸を用いた雰囲気で除去した時、従来の純水洗浄のみの場合と比較して、リーク電流を、約10分の1に低減できることも確かめられている。この時、1V印加時のリーク電流値を2点測定法のプローバにより測定した。
【0034】
また、電気化学的な腐食が発生しない、いわゆるドライ方式を採用することで、配線へのダメージを大幅に低減するとともに、洗浄後の基板の乾燥不足によって、配線や金属保護膜等の表面に酸化膜が形成されることを抑制し、しかも薬液の使用量を少なくて済ますことができる。
【発明を実施するための最良の形態】
【0035】
以下、本発明の実施の形態を図面を参照して説明する。
図5は、本発明の実施の形態の基板処理装置を示す。この基板処理装置は、基板を収納したカセットを搬出入する搬出入部としての一対のロード・アンロード部40を有する装置フレーム42を備えている。この装置フレーム42の内部には、汚染物質除去装置44と、ロード・アンロード部40内に搬入したカセットと汚染物質除去装置44との間で基板の受渡しを行う搬送ロボット46が配置されている。
【0036】
図6は、図5に示す基板処理装置に備えられている汚染物質除去装置44を示す。この汚染物質除去装置44は、開閉自在なゲート弁50を有する気密チャンバ52を備え、この気密チャンバ52は、内部を真空排気する真空ポンプ54を有する真空排気系56に接続され、この真空排気系56の真空ポンプ54の上流側に調圧弁58が、下流側に除害装置60がそれぞれ設けられている。更に、気密チャンバ52内の圧力(真空度)を計測する真空計62が備えられ、この真空計62からの出力で気密チャンバ52内の圧力が所定圧となるように調圧弁58を制御するようになっている。
【0037】
気密チャンバ52の内部には、気密チャンバ52内に入れた基板Wを、表面(被処理面)を上向きにして保持する基板保持部64が収納されている。この基板保持部64の内部には、基板保持部64で保持した基板Wを所定温度に加熱するヒータが内蔵され、周縁部には、リフタ68を介して上下動自在なリフトピン70が基板保持部64の内部を貫通して設けられている。気密チャンバ52内の基板保持部64の上方には、基板保持部64で保持した基板Wに向けて気相のカルボン酸を噴射して供給するガス供給ヘッド72が配置されている。
【0038】
気密チャンバ52の側方に位置して、この例では、例えば窒素ガス等の不活性ガスの液中へのバブリングによって、気相のカルボン酸を順次供給するようにしたカルボン酸供給系74が配置されている。このカルボン酸供給系74は、液状のカルボン酸76を貯留する容器78と、この容器78内の液状のカルボン酸76中に不活性ガスを供給してバブリングする不活性ガス供給管80と、気相となって容器78内の上部に溜まったカルボン酸を順次供給するカルボン酸供給管82を備えている。このカルボン酸供給管82は、ガス供給ヘッド72に連通している。不活性ガス供給管80及びカルボン酸供給管82には、内部を流れる流量を制御するMFC(マスフローコントローラ)84a,84bがそれぞれ設けられている。
【0039】
これによって、不活性ガス供給管80から容器78内に不活性ガスを供給することで気相となって容器78の上部に溜まったカルボン酸は、カルボン酸供給管82を通してガス供給ヘッド72に供給され、このガス供給ヘッド72から気密チャンバ52内に供給される。気密チャンバ52内に気相で供給されるカルボン酸の流量は、MFC84a,84bによって制御される。
【0040】
カルボン酸76は、例えば、蟻酸、酢酸またはプロピオン酸、またはこれらの混合物からなる。蟻酸、酢酸またはプロピオン酸等のカルボン酸は、比較的安価であるばかりでなく、常温で液体であるので取扱いが容易であり、金属または有機化合物と反応して気化させることができる。従って、カルボン酸として、特に蟻酸、酢酸またはプロピオン酸を使用することで、金属汚染物質または有機化合物汚染物質を、容易且つ安価に、例えば揮発、昇華または分解させて除去することができる。
【0041】
なお、この例では、不活性ガスによるバブリングによって、気相のカルボン酸を順次供給するようにした例を示しているが、従来から一般に知られている方法、例えば、気密な容器内でのその雰囲気と温度、圧力に依存した気化や加熱気化等の方法によって、気相のカルボン酸を順次供給するようにしてもよい。不活性ガスによるバブリングの方が、配管中での液化による腐食や爆発などの懸念がないのでより好ましい。また、MFCの代わりに開閉弁や絞り弁を使用してもよい。
【0042】
更に、この例では、ガス供給ヘッド72に窒素ガス等の不活性ガスを導入する不活性ガス導入管85がガス供給ヘッド72に連通して備えられており、この不活性ガス導入管85に、内部を流れる不活性ガスの流量を制御するMFC84cが設けられている。これにより、不活性ガス導入管84からガス供給ヘッド72に不活性ガスを導入することで、ガス供給ヘッド72及び気密チャンバ52の内部をパージしたり、気密チャンバ52内の圧力を調整したりすることができるようになっている。
【0043】
また、蟻酸の爆発限界は18vol%、酢酸の爆発限界は4vol%、プロピオン酸の爆発限界は2.9vol%であるので、これ以上とならないようにすることが安全上好ましい。更に、これらはいずれも毒性を有するものであるので、その排気は、水ないしアルカリスクラバー、熱分解法または燃焼法などを用いた除害装置60により除害処理されて排気される。
【0044】
次に、この基板処理装置の操作について説明する。先ず、基板を収納しロード・アンロード部40に搬入されたカセットから、1枚の基板Wを搬送ロボット46のハンドで取出す。そして、気密チャンバ52のゲート弁50を開き、リフトピン70を上昇させた状態で、搬送ロボット46のハンドで取出した基板Wを気密チャンバ52内に入れ、リフトピン70で支持させてハンドを気密チャンバ52から引抜く。次に、ゲート弁50を閉じるとともに、リフトピン70を下降させて、基板Wを基板保持部64で保持する。
【0045】
この状態で、基板保持部64で保持した基板Wをヒータで加熱して、基板Wの温度を、例えば150℃以上の200℃に維持し、気密チャンバ52内が所定の圧力、例えば約400Paとなるように気密チャンバ52内を真空排気しつつ、気密チャンバ52内にガス供給ヘッド72から所定量の気相のカルボン酸、例えばガス量約30sccmの蟻酸を供給する。これによって、基板Wの表面の金属汚染物資や有機化合物汚染物質を、カルボン酸を含む雰囲気下でカルボン酸と加熱反応させて除去する。基板Wの加熱温度は、例えばLow−k材料上の汚染物質を除去する際には、Low−k材料が耐え得る300℃以下であることが好ましい。
【0046】
例えば、金属(銅)汚染物質としてのCu(OH)やCuOを、蟻酸(HCOOH)を含む雰囲気下で蟻酸と加熱反応させるとCu(HCOO)が生成され、このCu(HCOO)は、蒸気圧で蒸発する。このように、基板表面から金属汚染物質を除去することで、例えば配線間のリーク電流を低減させることができる。このことは、基板表面に残った有機化合物汚染物質(有機錯体)も同様である。しかも、電気化学的な腐食が発生しない、いわゆるドライ方式で金属汚染物質及び有機化合物汚染物質の除去を行うことで、例えば配線へのダメージを低減させるとともに、洗浄後の基板の乾燥不足によって、配線等の表面に酸化膜が形成されることを抑制することができる。
【0047】
この処理を所定の時間、例えば10分間継続して基板Wの表面の金属汚染物質及び有機化合物汚染物質の除去を終了した後、気相のカルボン酸(蟻酸)の気密チャンバ52内への供給及び基板Wの加熱を停止し、気密チャンバ52内を大気圧に戻す。そして、リフトピン70を上昇させて基板Wを基板保持部64から持上げた後、ゲート弁50を開き、このゲート弁50から搬送ロボット46のハンドを気密チャンバ52内に挿入する。搬送ロボット46のハンドは、リフトピン70から基板Wを受け取って、ロード・アンロード部40のカセットに戻す。
【0048】
なお、基板表面の金属汚染物質の除去する他の例としては、室温大気圧下で、窒素ガス500ml/minを酢酸中に供給してバブリングして得た約1%の窒素希釈酢酸ガスを、大気圧下の気密チャンバ52内で200℃に保持した基板Wに5分間供給するようにしたものが挙げられる。
【0049】
図7は、本発明の他の実施の形態の基板処理装置を示す。この基板処理装置は、図5に示す基板処理装置に以下の構成を付加したものである。つまり、装置フレーム42の内部には、2台の汚染物質除去装置44が備えられ、更に4台の研磨装置86と、各2台のロール型またはペンシル型等の洗浄装置88及び水洗乾燥装置(スピンドライヤ)90と、これらの間で基板Wを搬送する第2搬送ロボット92が配置されている。
【0050】
研磨装置86は、この例では、1psi(約70hPa)乃至それ以下の低圧で化学機械的研磨を行うことで、配線へダメージを与えないようにした一対のCMP装置86aと、砥粒を含まない研磨液中で研磨パッドを基板表面に押当てて該表面を平坦化するか、または砥粒を含む研磨液中で研磨パッドを基板表面に押当てて該表面を平坦化するようにした電解研磨装置86bで構成され、配線材料の除去を電解研磨装置86bで行った後、バリア膜をCMP装置86aで除去するようにしている。なお、全ての研磨装置86を、CMP装置または電解研磨装置の一方で構成してもよい。
洗浄装置88として、基板の表面を純水等で水洗(リンス)し、スピンドライ等によって乾燥させる機能を有するものを使用した時には、水洗乾燥装置90を省略しても良い。
【0051】
この基板処理装置の操作を、図8及び図9を参照して説明する。先ず、図8(a)に示すように、下層絶縁膜10の表面に形成したエッチストッパ膜12の表面に堆積した上層絶縁膜14の内部に、配線用凹部としての配線溝16を形成し、この上層絶縁膜14の表面にバリア膜18、更に必要に応じて、電解めっきの給電層としてのシード層(図示せず)を順次形成し、表面に銅めっきを施すことで、配線溝16の内部に銅を充填させるとともに、上層絶縁膜14上に銅膜20を堆積させた基板Wを用意する(ステップ1)。
【0052】
そして、この基板Wを収納しロード・アンロード部40に搬入したカセットから、1枚の基板Wを搬送ロボット46のハンドで取出して、第2搬送ロボット92に受け渡す。第2搬送ロボット92は、受け取った基板Wを研磨装置86に搬入する。この研磨装置86では、この例では、上層絶縁膜14上の銅膜20を電解研磨装置86bで除去し、引き続いてバリア膜18をCMP装置86aで除去して、配線溝16内に充填させた銅膜20の表面と上層絶縁膜14の表面とをほぼ同一平面にする(ステップ2)。これにより、図8(b)に示すように、上層絶縁膜14の内部に銅膜20からなる配線(銅配線)22を形成する。
【0053】
この配線22の幅Bは、一般的には2μm以下である。これは、配線22の幅Bが2μm以下の場合に、隣接する配線22間の電流リークが一般に問題となるからである。配線22の幅Bが0.1μm以下、特に65〜45nm程度の場合に、絶縁膜(層間絶縁膜)14として、Low−k材料が好適に使用される。
配線材料としては、銅の他に、銀、タングステン、タンタル、チタン、ルテニウム、金、スズまたは鉛、またはこれらを含む合金等が使用される。
【0054】
次に、研磨後の基板Wを第2搬送ロボット92で洗浄装置88に搬送し、この洗浄装置で基板Wの表面を、例えばロール状またはペンシル状のブラシを擦りつけるスクラブ洗浄する(ステップ3)。そして、この洗浄後の基板Wを水洗乾燥装置90に搬送し、純水等でリンス(水洗)した後、スピンドライ等によって乾燥させる(ステップ4)。このように、基板Wの表面をスクラブ洗浄しても、図8(b)に示すように、絶縁膜14の表面に研磨した銅からなる残渣28が除去されずに残っている場合があり、このように絶縁膜14の表面に残渣(銅)28が残っていると、特に配線の微細化や絶縁膜としてLow−k材料の導入等に伴って、水洗(リンス)乾燥後に配線間に電流リークが発生しやすくなる。基板Wの表面に、銅と有機成分との有機錯体からなる残渣が残っている場合も同様である。
【0055】
そこで、この水洗乾燥後の基板Wを第2搬送ロボットで汚染物質除去装置44の気密チャンバ52内に搬入する。そして、例えば前述と同様に、基板Wの温度を200℃に、気密チャンバ52内の圧力を約400Paにそれぞれ維持しつつ、気密チャンバ52内にガス量約30sccmの蟻酸を供給し、これを10分間継続する。これによって、図8(c)に示すように、絶縁膜14の表面の金属汚染物質、例えば絶縁膜14の表面に除去されずに残った残渣(銅)28の化合物であるCu(OH)やCuOを、蟻酸との塩Cu(HCOO)の蒸気として除去する(ステップ5)。同時に、基板Wの表面に残った銅と有機成分との有機錯体も除去する。
【0056】
例えば、絶縁膜の内部に、幅が0.16μmの配線を0.16μm間隔で設けた基板を用意し、この基板表面の絶縁膜上の金属汚染物質を、カルボン酸として蟻酸を用いた雰囲気で除去した時、従来の純水洗浄のみの場合と比較して、リーク電流を、約10分の1に低減できることが確かめられている。この時、2V印加時のリーク電流値を2点測定法のプローバにより測定した。
【0057】
また、電気化学的な腐食が発生しない、いわゆるドライ方式を採用することで、配線へのダメージを大幅に低減するとともに、洗浄後の基板の乾燥不足によって、配線等の表面に酸化膜が形成されることを抑制し、しかも薬液の使用量を少なくて済ますことができる。
そして、絶縁膜上の金属汚染物質及び基板上の有機化合物汚染物質を除去した基板Wを搬送ロボット46で汚染物質除去装置44の気密チャンバ52から取出し、ロード・アンロード部40のカセットに戻す。
【0058】
図10は、本発明の更に他の実施の形態の基板処理装置を示す。この基板処理装置は、図5に示す基板処理装置に以下の構成を付加したものである。つまり、装置フレーム42の内部には、2台の汚染物質除去装置44が備えられ、更に各2台の前洗浄装置94、前処理装置96、無電解めっき装置98及び水洗乾燥装置(スピンドライヤ)90と、これらの間で基板Wを搬送する第2搬送ロボット92が配置されている。
【0059】
この例では、保護膜形成装置として無電解めっき装置98を使用し、更に、これに付帯する処理を行う前洗浄装置94と前処理装置96を備えた例を示している。
前洗浄装置94、前処理装置96及び無電解めっき装置98として、基板の表面を純水等で水洗(リンス)し、スピンドライ等によって乾燥させる機能を有するものを使用した時には、水洗乾燥装置90を省略しても良い。
【0060】
この基板処理装置の操作を、図11及び図12を参照して説明する。先ず、図8(c)に示す、上層絶縁膜14の内部に配線(銅配線)22を形成し乾燥させた基板Wを用意する(ステップ1)。
【0061】
そして、この基板Wを収納しロード・アンロード部40に搬入したカセットから、1枚の基板Wを搬送ロボット46のハンドで取出して、第2搬送ロボット92に受け渡す。第2搬送ロボット92は、受け取った基板Wを前洗浄装置94に搬入する。この前洗浄装置94では、例えば液温が25℃で、希釈HSO等の洗浄液を基板Wの表面に向けて噴射し、絶縁膜14の表面に残った銅等のCMP残渣や配線22上の酸化膜を除去する前洗浄を行う(ステップ2)。そして、この前洗浄後の基板Wを水洗乾燥装置90に搬送し、純水等でリンス(水洗)した後、スピンドライ等によって乾燥させる(ステップ3)。
【0062】
この乾燥後の基板Wを第2搬送ロボットで汚染物質除去装置44の気密チャンバ52内に搬入し、例えば前述と同様にして、絶縁膜14の表面の金属汚染物質を蟻酸等のカルボン酸の金属塩蒸気として、基板表面の有機化合物汚染物質を蟻酸等のカルボン酸の化合物蒸気として除去する(ステップ4)。そして、この金属汚染物質及び有機化合物汚染物質を除去した基板を、第2搬送ロボット92で前処理装置96に搬入する。
【0063】
この前処理装置96では、例えば、液温が25℃の硫酸パラジウム液に基板Wの表面を晒し、これによって、配線22の表面に触媒としてのPdを付着させる前処理を行う(ステップ5)。そして、このめっき前処理後の基板を水洗乾燥装置90に搬送し、純水等でリンス(水洗)した後、スピンドライ等によって乾燥させ(ステップ6)、この水洗乾燥後の基板を第2搬送ロボット92で無電解めっき装置98に搬入する。
【0064】
無電解めっき装置98では、基板Wの表面を無電解めっき液に接触させて、図11(a)に示すように、Pdを核として成長した、例えばCoWP合金からなる金属保護膜24を配線22の表面に選択的に形成して配線22を保護する(ステップ7)。この金属保護膜24の膜厚は、例えば10nm程度である。
金属保護膜24としては、例えばコバルト、ニッケル、タングステン、バナジウムまたはモリブデン、またはこれらの合金または化合物が挙げられるが、銅等の配線材料との接合力が強く、しかも比抵抗(ρ)が低い、CoWP合金等のCo合金や、NiWP等のNi合金が一般に使用される。
【0065】
そして、この金属保護膜24を形成した基板Wを水洗乾燥装置90に搬送し、純水等でリンス(水洗)した後、スピンドライ等によって乾燥させる(ステップ8)。このように、基板Wの表面を水洗乾燥しても、図11(b)に示すように、CoWPや残渣30として絶縁膜14の表面に除去されずに残る。また絶縁膜14上に除去されずに残ったPd残渣を核にして、同様にCoWPが絶縁膜14の表面に堆積して残渣30となる。有機錯体が基板Wの表面に残渣として残ることもある。
【0066】
そこで、この水洗乾燥後の基板Wを第2搬送ロボットで汚染物質除去装置44の気密チャンバ52内に搬入し、例えば前述と同様にして、図11(c)に示すように、絶縁膜14の表面の金属汚染物質を蟻酸等のカルボン酸の金属塩蒸気として、有機錯体を蟻酸等のカルボン酸の化合物蒸気として除去する(ステップ9)。
【0067】
この例では、配線22の表面に触媒核としてのPdを付着する前に、金属汚染物質及び有機化合物汚染物質の除去を行うことで、絶縁膜上に残ったCMP残渣や基板上に残った有機化合物汚染物質にPdが付着し、このPdを核にCoWPが堆積してリーク電流が増加するのを防ぐようにしている。しかし、この場合、配線22の目減りにより配線抵抗が上昇してしまうことがある。このため、配線22の目減りによる配線抵抗の上昇が問題となる場合には、配線22の表面に触媒核としてのPdを付着する前に金属汚染物質及び有機化合物汚染物質の除去を行わない方がよい。一方、配線22の表面に触媒核としてのPdを付着した後に金属汚染物質及び有機化合物汚染物質の除去を行う場合は、触媒が失活して反応性が低下するため、このような問題はない。
【0068】
このように金属汚染物質及び有機化合物汚染物質の除去を、溶液中ではなく、気密チャンバ52内で行うことにより、リーク電流の増加と配線抵抗の上昇を防止し、しかも汚染除去後の洗浄乾燥を不要となして、金属保護膜24の表面の酸化も防止することができる。
【0069】
金属汚染物質除去におけるプロセス条件を、例えば蟻酸蒸気の場合、プロセス温度200℃、プロセス圧力約400Pa、ガス量約30sccmとして、約10分間蟻酸ガスに曝露することにより、配線間の電流リークを約十分の一に低減でき、配線の抵抗上昇も、2点測定法のプローバにより測定した結果、従来の純水洗浄のみの場合と比較して、10%低減できることが確かめられている。しかも、走査型電子顕微鏡(SEM)による外観観察でも、配線間の残渣、変質等は観察されなかった。
【0070】
また室温大気圧下で、窒素ガス500ml/minを酢酸中に供給してバブリングして得た約1%の窒素希釈酢酸ガスを、大気圧下の処理室内で200℃に保持した基板に5分間供給した時も、同様の結果が得られた。
そして、絶縁膜上の金属汚染物質及び基板上の有機化合物汚染物質を除去した基板Wを搬送ロボット46で汚染物質除去装置44の気密チャンバ52から取出し、ロード・アンロード部40のカセットに戻す。
【0071】
CMP時に使用される研磨剤の成分の一つで、防食剤として使用される難分解性の有機化合物であるBAT(ベンゾトリアゾール)除去のプロセス評価を行った結果を図13に示す。図13は、有機化合物(BTA)除去におけるプロセス条件を、例えば蟻酸蒸気の場合、プロセス温度200℃、プロセス圧力約400Pa、ガス量約400sccmとして、BTAを含む溶液に浸漬させた基板を蟻酸ガスに曝露しや時の、基板の暴露時間の経過に伴う2次イオン強度の変化をTOF−SIMSにより分析した結果を示す。図13において、2次イオンA、B、Cは、BTA由来と考えられる2次イオンの信号強度である。
図13より、蟻酸ガスの曝露時間の経過とともに、基板に付着したBTAは徐々に減少し、約30秒間蟻酸ガスに暴露することに、基板に付着したBTAをほぼ除去できることが判る。
【0072】
なお、図8(a)に示す、下層絶縁膜10の表面に形成したエッチストッパ膜12の表面に堆積した上層絶縁膜14の内部に、配線用凹部としての配線溝16を形成した後、不要になったレジストを、レジスト残渣を残して、例えば薬液洗浄やアッシャーによって除去し、残ったレジスト残渣を、図6に示す汚染物質除去装置44を使用し、カルボン酸を含む雰囲気下でカルボン酸と加熱反応させて除去するようにしてもよい。
これにより、Low−k材等からなる絶縁膜中に水分が入り込んで電流リークの危険が高まったり、配線や絶縁膜に腐食等のダメージを与えてしまうことを防止することができる。
【図面の簡単な説明】
【0073】
【図1】従来の半導体装置における銅配線形成例を示す図である。
【図2】従来の半導体装置における銅配線形成例を示すフローチャートである。
【図3】従来の半導体装置における金属保護膜形成例を示す図である。
【図4】従来の半導体装置における金属保護膜形成例を示すフローチャートである。
【図5】本発明の実施の形態の基板処理装置の概要を示す平面図である。
【図6】図5に示す基板処理装置の金属汚染物質除去装置の概要図である。
【図7】本発明の他の実施の形態の基板処理装置の概要を示す平面図である。
【図8】図7に示す基板処理装置における配線形成例を示す図である。
【図9】図7に示す基板処理装置における配線形成例を示すフローチャートである。
【図10】本発明の更に他の実施の形態の基板処理装置の概要を示す平面図である。
【図11】図10に示す基板処理装置における金属保護膜形成例を示す図である。
【図12】図10に示す基板処理装置における金属保護膜形成例を示すフローチャートである。
【図13】BAT(ベンゾトリアゾール)除去のプロセス評価を行った結果を示すグラフである。
【符号の説明】
【0074】
14 絶縁膜(層間絶縁膜)
16 配線溝(配線用凹部)
18 バリア膜
20 銅膜
22 配線
24 金属保護膜
40 ロード・アンロード部
42 装置フレーム
44 金属汚染物質除去装置
52 気密チャンバ
54 真空ポンプ
56 真空排気系
58 調圧弁
60 除害装置
62 真空計
64 基板保持部
72 ガス供給ヘッド
74 カルボン酸供給系
76 カルボン酸
78 容器
86 研磨装置
88 洗浄装置
90 水洗乾燥装置
94 前洗浄装置
96 前処理装置
98 無電解めっき装置

【特許請求の範囲】
【請求項1】
基板上の汚染物質を、カルボン酸を含む雰囲気下でカルボン酸と加熱反応させて除去することを特徴とする基板処理方法。
【請求項2】
絶縁膜内に配線用凹部を形成した基板表面にバリア膜を形成し、該バリア膜の表面に配線材料を形成して該配線材料を前記配線用凹部の内部に埋込んだ基板を用意し、
基板表面に形成した余剰の配線材料及びバリア膜を除去して前記配線用凹部内に埋込んだ配線材料で配線を形成し、
基板上の汚染物質を、カルボン酸を含む雰囲気下でカルボン酸と加熱反応させて除去することを特徴とする基板処理方法。
【請求項3】
絶縁膜内に設けた配線用凹部内に配線材料を埋込んで配線を形成した基板を用意し、
前記配線の表面に金属保護膜を選択的に形成し、
基板上の汚染物質を、カルボン酸を含む雰囲気下でカルボン酸と加熱反応させて除去することを特徴とする基板処理方法。
【請求項4】
前記汚染物質は、金属汚染物質であることを特徴とする請求項1乃至3のいずれかに記載の基板処理方法。
【請求項5】
前記汚染物質は、有機化合物汚染物質であることを特徴とする請求項1乃至3のいずれかに記載の基板処理方法。
【請求項6】
前記汚染物質は、レジスト除去後に基板表面に残ったレジスト残渣であることを特徴とする請求項1記載の基板処理方法。
【請求項7】
前記配線材料及びバリア膜の除去を、CMP法、電解研磨法またはこれらの組合せで行うことを特徴とする請求項2記載の基板処理方法。
【請求項8】
前記金属保護膜の形成を、無電解めっき法によって行うことを特徴とする請求項3記載の基板処理方法。
【請求項9】
前記金属保護膜が、コバルト、ニッケル、タングステン、バナジウムまたはモリブデン、またはこれらの合金または化合物からなることを特徴とする請求項3記載の基板処理方法。
【請求項10】
前記配線として、配線幅が0.2μm以下の配線を含むことを特徴とする請求項2または3記載の基板処理方法。
【請求項11】
前記配線材料が、銅、銀、タングステン、タンタル、チタン、ルテニウム、金、スズまたは鉛、またはこれらを含む合金からなることを特徴とする請求項2または3記載の基板処理方法。
【請求項12】
前記基板上の汚染物質の除去に先だって、基板表面を水洗することを特徴とする請求項1乃至3のいずれかに記載の基板処理方法。
【請求項13】
前記カルボン酸は、蟻酸、酢酸またはプロピオン酸、またはこれらの混合物からなることを特徴とする請求項1乃至3のいずれかに記載の基板処理方法。
【請求項14】
前記絶縁膜は、SiO、Low−k材またはポーラスLow−k材からなることを特徴とする請求項2または3記載の基板処理方法。
【請求項15】
基板上の汚染物質を、カルボン酸を含む雰囲気下でカルボン酸と加熱反応させて除去する汚染物質除去装置を有することを特徴とする基板処理装置。
【請求項16】
前記汚染物質は、金属汚染物質であることを特徴とする請求項15記載の基板処理装置。
【請求項17】
前記汚染物質は、有機化合物汚染物質であることを特徴とする請求項15記載の基板処理装置。
【請求項18】
前記汚染物質は、レジスト除去後に基板の表面に残ったレジスト残渣であることを特徴とする請求項15記載の基板処理装置。
【請求項19】
前記汚染物質除去装置は、
真空排気可能で、内部に基板を保持し加熱する基板保持部と該基板保持部で保持した基板に向けて気相のカルボン酸を供給するガス供給ヘッドを有する気密チャンバと、
前記ガス供給ヘッドに気相のカルボン酸を供給するカルボン酸供給系を有することを特徴とする請求項15記載の基板処理装置。
【請求項20】
基板表面を水洗し乾燥する水洗乾燥装置を更に有することを特徴とする請求項15記載の基板処理装置。
【請求項21】
基板表面に形成した余剰の配線材料及びバリア膜を研磨除去する研磨装置を更に有することを特徴とする請求項15記載の基板処理装置。
【請求項22】
基板表面の絶縁膜内に設けた配線用凹部内に配線材料を埋込んで形成した配線の表面に金属保護膜を選択的に形成する保護膜形成装置を更に有することを特徴とする請求項15記載の基板処理装置。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【図6】
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【図7】
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【図8】
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【図9】
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【図10】
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【図11】
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【図12】
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【図13】
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【公開番号】特開2006−216937(P2006−216937A)
【公開日】平成18年8月17日(2006.8.17)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2005−365536(P2005−365536)
【出願日】平成17年12月19日(2005.12.19)
【出願人】(000000239)株式会社荏原製作所 (1,477)
【Fターム(参考)】