説明

基板処理装置および基板処理方法

【課題】本発明は、必要とする台車の数を低減して、機構の簡素化を図り、よってコストの低減に繋げられる基板処理装置および基板処理方法を提供しようとするものである。
【解決手段】互いに異なる雰囲気および/もしくは温度管理された複数のチャンバである、搬入側真空・大気室30と、加熱室31と、冷却室32と、搬出側真空・大気室33に順次基板10を搬送し、各チャンバにおいて互いに異なる複数の処理をなす基板処理装置であって、互いに隣接するチャンバ相互間に設けられる開閉式のゲート34a〜34eと、1つ置きの各チャンバ(搬入側真空・大気室と冷却室)内に設けられ基板を把持し、かつ解除自在なリフタ機構43A,43Bと、これらチャンバとは異なる1つ置きのチャンバ(加熱室と搬出側真空・大気室)をホームポジションとして、リフタ機構を備えた隣接するチャンバとの間のみに基板を授受し搬送する台車40A,40Bとを具備する。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、たとえば対向配置された基板間に複数の表示素子を有し真空外囲器となす平板型画像表示装置を製造するにあたって、基板に対するベーキング処理を行うのに最適な基板処理装置および基板処理方法に関する。
【背景技術】
【0002】
近年、画像表示装置として、効率的な空間利用あるいはデザイン的な要素から、平面型の画像表示装置が注目されている。中でも、フィールド・エミッション・デバイス(以下、FEDと称する)のような電子放出型の画像表示装置は、高輝度、高分解能、低消費電力等のメリットから優れたディスプレイであると期待されている。
また、前記FEDの一種として、たとえば[特許文献1]に開示されているように、表面伝導型の電子放出素子を備えた表示装置(以下、SEDと称する)の開発が進められている。
【0003】
このSEDは、所定間隔をおいて対向配置されるとともに、それぞれガラス板で構成された2枚のガラス基板を備えている。これら2枚のガラス基板は、周縁部相互が互いに封着されて真空外囲器を構成している。この真空外囲器内部での真空度が低い場合は、電子放出素子の寿命が低下してしまい、その結果、画像表示装置としての耐久性が損なわれてしまう。
上述したSEDでは、真空外囲器内部の真空度をたとえば10−5〜10−6Paに保つ必要がある。そのため、従来の工程では、2枚のガラス基板を約300℃程度まで加熱し、そのあと冷却するベーキング処理をなして、ガラス基板表面に付着している有害なガス分を放出させるようにしている。
【特許文献1】特開平9−82245号公報
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
当初は、真空外囲器(以下、基板と呼ぶ)を真空雰囲気とした1つの炉の中に収納し、この炉において加熱処理と冷却処理をなしていた。しかしながら、1つの炉で加熱と冷却をなすには温度管理が困難であるとともに、炉を構成する部材が急激な温度変化に耐えられずに、早期に脆性化して耐久性が損なわれる。
そこで、加熱処理をなす真空チャンバと、冷却処理をなす真空チャンバとを互いに独立して備え、かつ直列に並べて、これらのチャンバ間を基板を支持し搬送する搬送手段である台車を移動させることで、上述の不具合の解消を図るようにしている。
【0005】
当然、加熱処理をなす真空チャンバ(以下、加熱室と呼ぶ)と、冷却処理をなす真空チャンバ(以下、冷却室と呼ぶ)との間、および加熱室の搬入側と冷却室の搬出側にはゲートが介設され、それぞれで処理をなす際には閉成される。処理が終了して基板を支持する台車を移動するときは、ゲートが開放される。
また、加熱室の搬入側が大気圧状態になっていると、ここに基板を搬入する際にゲートを開放しただけで、即、加熱室の真空雰囲気が把持されなくなる。そして、冷却室の搬出側が大気圧状態になっていると、ここから基板を搬出する際にゲートを開放しただけで、即、冷却室の真空雰囲気が把持されなくなる。
そこで、加熱室の搬入側にもう一つのチャンバを備えて、基板を加熱室に搬入する以前に、そのチャンバにおいて真空雰囲気を把持し、ゲートを開放したときに加熱室内の真空雰囲気が損なわれないようにしている。同様に、冷却室の搬出側にもう一つのチャンバを備えて、基板を冷却室から搬出する以前に、そのチャンバにおいて真空雰囲気を把持し、ゲートを開放したときに冷却室内の真空雰囲気が損なわれないようにしている。
【0006】
具体的には、以下に述べるようにして基板が搬送され処理される。
図7(A)ないし(F)は、基板に対して、たとえばベーキング処理をなすための基板処理装置の概略構成と、処理方法を順に示す図である。
ここでは、図の左側部から右側部に亘って、搬入側真空・大気室a、加熱室b、冷却室c、搬出側真空・大気室dが順に、かつ一列直状に配置される。各室a〜dの相互間にはゲートe2〜e4が開閉自在に設けられ、さらに搬入側真空・大気室aと搬出側真空・大気室dのそれぞれ搬入・搬出側にもゲートe1,e5が開閉自在に設けられる。
【0007】
各室a〜dのそれぞれ両側部にゲートe1〜e5が設けられることになり、各室a〜dの両側のゲートを閉成した状態で、それぞれの室が完全密閉空間となる。各室a〜dは、全て図示しない真空源に連通されていて、真空雰囲気が確保される真空チャンバとなっている。
搬入側および搬出側の真空・大気室a、dは互いに外部に面しているところから、搬入側および搬出側ゲートe1、e5が開放され基板Pが搬入もしくは搬出される都度、一旦、大気圧に近い状態になる。ただし、ゲートe1、e5を閉成した直後に真空源が作動して、上昇した室内を再び所定の真空圧に戻す。
【0008】
前記加熱室bには図示しない加熱源が収容されていて、内部を約300℃に把持している。前記冷却室cには冷熱源に連通する図示しない冷却プレートが配置されている。いずれも、基板P1〜P4に対する処理条件によって室内温度を正確に管理できるようになっている。
各室a〜dの床面にはレールrが敷設され、それぞれのレールrに台車f1〜f4(図の右側部から左側部にかけて)が移動自在に支持される。各台車f1〜f4上には、図示しないクランプ機構を介して基板P1〜P4が着脱自在に把持されている。各台車f1〜f4は基板P1〜P4を把持した状態で、それぞれの室内a〜dを移動できることは勿論のこと、一方の室から他方の室に亘って搬送可能となっている。
【0009】
図7(A)で、搬入側真空・大気室a、加熱室b、冷却室c、搬出側真空・大気室dのそれぞれにおいて基板P1〜P4を収容し、所定の処理工程をなす。すなわち、搬入側真空・大気室aでは一つ以前の処理で、基板P4を搬入している。この際にゲートe1を開放しなければならず、大気開放がともなうので、同図の状態で所定の真空圧にしている。
加熱室bでは基板P3を約300℃程度で加熱処理する。冷却室cでは温度上昇している基板P2を冷却処理する。搬出側真空・大気室dでは一つ以後の処理で基板P1を搬出しなければならず、大気開放がともなうので、同図の状態で所定の真空圧にしている。
【0010】
図7(B)で、搬出側真空・大気室dの搬出側ゲートe5が開放され、この室にある台車f1が処理装置外部へ搬出される。外部にて、台車f1上の基板P1を図示しないロボットアームが取上げて、後位の処理工程へ移載する。台車f1の搬出後は再びゲートe5が閉じられる。
搬出側真空・大気室dは一旦開放されて大気圧状態になるので、搬出側ゲートe5が閉じられたあと、再び所定の真空圧に戻される。ここから搬出された空の台車f1は、処理装置外部に沿って設けられるリターン機構Gによって搬入側真空・大気室aの搬入位置に戻され、後位の基板を待機する。なお、このとき搬入側真空・大気室aと加熱室bおよび冷却室cでは何らの変化もなく、そのままの状態を保持する。
【0011】
図7(C)で、冷却室cと搬出側真空・大気室d間のゲートe4が開放され、冷却室cにある台車f2が基板P2を支持したまま移動して、基板P2を搬出側真空・大気室dに搬入する。このとき、搬出側真空・大気室dは所定の真空圧になっているので、基板P2に対する真空雰囲気上の影響がない。台車f2が搬出側真空・大気室dに移った直後に、冷却室dと搬出側真空・大気室dとの間のゲートe4が閉成される。
図7(D)で、加熱室bと冷却室c間のゲートe3が開放され、加熱室bにある台車f3が基板P3を支持したまま移動して、基板P3を冷却室cに搬入する。このとき、冷却室cは所定の真空圧になっていることは勿論であり、基板P3に対する真空雰囲気上の影響がない。台車f3が冷却室dに移った直後に、加熱室bと冷却室cとの間のゲートe3が閉成される。
【0012】
図7(E)で、搬入側真空・大気室aと加熱室b間のゲートe2が開放され、搬入側真空・大気室aにある台車f4が基板P4を支持したまま移動して、基板P4を加熱室bに搬入する。このとき、加熱室bは所定の真空圧になっていることは勿論であり、基板P4に対する真空雰囲気上の影響がない。台車f4が加熱室bに移った直後に、搬入側真空・大気室aと加熱室bとの間のゲートe2が閉成される。
図7(F)で、搬入側真空・大気室aの搬入側ゲートe1が開放され、先に搬出側真空・大気室dからリターン機構Gを介して搬入側真空・大気室a前に戻されている台車f1が基板P5を支持して搬入側真空・大気室a前に待機している。このとき、搬入側真空・大気室aは所定の真空圧になっているが、搬入側ゲートe1の開放により大気圧に変る。そこで、台車f1が搬入側真空・大気室aに移動し基板P5を搬入した直後にゲートe1が閉まって、再び搬入側真空・大気室aを所定の真空圧に換える。
【0013】
そして、再び図7(A)に示す状態に戻る。以下、上述した工程を繰り返す。各基板Pは所定の処理がなされることになり、所期の効果が得られる。
このようにして、従来の処理装置としては、搬入側真空・大気室aをはじめとする全てのチャンバに台車f1〜f4を配置し、ゲートe5〜e1を順次開放して台車f1〜f4を順送りする方式を採用している。
そのために、搬出側真空・大気室dから出た台車f1〜f4を、順次、搬入側真空・大気室aに戻すためのリターン機構Gが必要であり、設備装置がより大掛かりなものとなってコストに悪影響を与えている。
また、リターン機構Gは装置外部に設けられているところから、当然、大気圧条件となっている。搬出側真空・大気室dからリターン機構Gを介して搬入側真空・大気室aに戻される台車f1〜f4は大気圧に晒され、真空雰囲気に対する有害ガスが付着した状態で搬入側真空・大気室aに導かれてしまう。そのため、処理装置で行われる処理に対して悪影響を及ぼす虞れが大である。
【0014】
また、所定期間内に処理装置内をメンテナンスする必要がある。このとき各チャンバa〜d内に台車f1〜f4が収容されているので邪魔になる。そこで、メンテナンス時には全てのゲートe1〜e5を開放して、全ての台車f1〜f4を同時に1チャンバ分だけ移動する。そして、順次、空いたチャンバに対してメンテナンスを行う。搬出側真空・大気室dに搬入された台車f1〜f4は、一旦外部へ出しリターン機構Gを介して搬入側真空・大気室aに戻す。
このようにして、順次1チャンバ分だけ台車fを移動し、空いたチャンバに対するメンテナンスを行うことができるが、いずれにしても、非常に手間のかかる作業となることは避けられない。
【0015】
本発明は、以上の点に鑑なされたものであり、その目的とするところは、必要とする移送手段の数を低減して、機構の簡素化を図り、よってコストの低減に繋げられる基板処理装置を提供しようとするものである。
【課題を解決するための手段】
【0016】
上記目的を達成するための本発明の基板処理装置は、互いに異なる雰囲気および/もしくは温度管理された複数のチャンバに順次基板を搬送し、各チャンバにおいて互いに異なる複数の処理をなす基板処理装置において、互いに隣接するチャンバ相互間に設けられる開閉式のゲートと、1つ置きの各チャンバ内に設けられ基板を把持し、かつ解除自在な把持手段と、この把持手段を備えたチャンバとは異なる1つ置きのチャンバをホームポジションとして、前記把持手段を備えた隣接するチャンバとの間のみに基板を授受し搬送する移送手段とを具備する。
上記目的を達成するため本発明の基板処理方法は、前記基板処理装置を用いて基板に対する処理をなすにあたって、ゲートは常に1つのみを開放して前記移送手段の通過を待機し、2つ以上のゲートは互いに異なるタイミングで開放し、同時に開放しない。
【発明の効果】
【0017】
本発明によれば、必要とする移送手段の数を低減し、その低減した分を把持手段に代えて、機構の簡素化を図り、よってコストの低減に繋げられる基板処理装置および基板処理方法を提供しようとするものである。
【発明を実施するための最良の形態】
【0018】
以下図面を参照しながら、本発明に係る、たとえば平面型画像表示装置を製造する過程での、一処理工程に適用した実施形態について詳細に説明する。
はじめに、図1ないし図3を参照し、平面型画像表示装置の一例として、SED(Surface-conduction Electron-emitter Display)について説明する。
図1は、前面基板2を部分的に切り欠いた状態のSEDの真空外囲器(以下、表示パネルと称する場合もある)10を示す斜視図であり、図2は、図1の真空外囲器10を線分II-IIで切断した断面図であり、図3は、図2の断面を部分的に拡大した部分拡大断面図である。
【0019】
図1ないし図3に示すように、表示パネル10は、それぞれ矩形のガラス板からなる前面基板2および背面基板4を備え、これらの基板は約1.0〜2.0mmの隙間をおいて互いに平行に対向配置されている。なお、背面基板4は、前面基板2より1回り大きいサイズを有する。また、前面基板2および背面基板4は、ガラスからなる矩形枠状の側壁6を介して周縁部同志が接合され、内部が真空の扁平な平面パネル構造の真空外囲器を構成している。
前面基板2の内面には画像表示面として機能する蛍光体スクリーン12が形成されている。この蛍光体スクリーン12は、赤、青、緑の蛍光体層R、G、B、および遮光層11を並べて構成され、これらの蛍光体層はストライプ状あるいはドット状に形成されている。また、蛍光体スクリーン12上には、アルミニウム等からなるメタルバック14が形成されている。
【0020】
背面基板4の内面には、蛍光体スクリーン12の蛍光体層R、G、Bを励起発光させるための電子を放出する電子放出源として、それぞれ電子ビームを放出する多数の表面伝導型の電子放出素子16が設けられている。これらの電子放出素子16は、画素毎、すなわち蛍光体層R、G、B毎に対応して複数列および複数行に配列されている。
各電子放出素子16は、図示しない電子放出部、この電子放出部に電圧を印加する一対の素子電極等で構成されている。また、背面基板4の内面上には、各電子放出素子16に駆動電圧を与えるための多数本の配線18がマトリックス状に設けられ、その端部は真空外囲器10の外部に引き出されている。
【0021】
接合部材として機能する側壁6は、例えば、低融点ガラス、低融点金属等の封着材20により、前面基板2の周縁部および背面基板4の周縁部に封着され、これらの基板同士を接合している。本実施の形態では、背面基板4と側壁6をフリットガラス20aを用いて接合し、前面基板2と側壁6をインジウム20bを用いて接合した。もし、配線18のある背面基板4と側壁6を低融点金属で封着する場合は、配線18と封着材20の電気ショートを避けるため、中間層として絶縁層を設ける必要がある。
また、表示パネル10は、前面基板2と背面基板4の間にガラスからなる複数の細長い板状のスペーサ8を備えている。本実施の形態において、スペーサ8は、複数の細長いガラス板としたが、矩形板状の金属板からなるグリッド(図示せず)と、グリッドの両面に一体的に立設された多数の柱状のスペーサ(図示せず)と、で構成しても良い。
【0022】
各スペーサ8は、上述したメタルバック14、および蛍光体スクリーン12の遮光層11を介して前面基板2の内面に当接する上端8a、および背面基板4の内面上に設けられた配線18上に当接する下端8bを有する。しかして、これら複数のスペーサ8は、前面基板2および背面基板4の外側から作用する大気圧荷重を支持し、基板間の間隔を所定値に維持している。
さらに、SEDは、前面基板2のメタルバック14と背面基板4との間にアノード電圧を印加する図示しない電圧供給部を備えている。電圧供給部は、例えば、背面基板4の電位を0Vに設定し、メタルバック14の電位を10kV程度にするよう、両者の間にアノード電圧を印加する。
【0023】
そして、上記SEDにおいて、画像を表示する場合、配線18に接続した図示しない駆動回路を介して電子放出素子16の素子電極間に電圧を与え、任意の電子放出素子16の電子放出部から電子ビームを放出するとともに、メタルバック14にアノード電圧を印加する。電子放出部から放出された電子ビームは、アノード電圧により加速され、蛍光体スクリーン12に衝突する。これにより、蛍光体スクリーン12の蛍光体層R、G、Bが励起されて発光し、カラー画像を表示する。
また、上記構造の表示パネル10を製造する場合、予め、蛍光体スクリーン12およびメタルバック14の設けられた前面基板2を用意し、電子放出素子16および配線18が設けられているとともに側壁6およびスペーサ8が接合された背面基板4を用意しておく。そして、真空雰囲気中で前面基板2と背面基板4とを側壁6を介して接合する。これにより、複数のスペーサ8を備えた真空外囲器である表示パネル10が製造される。
【0024】
このようにして得られた表示パネル10を製造するためには、後述する基板処理装置で前面基板2と背面基板4をそれぞれベーキング処理し、基板表面の吸着ガスを放出する必要がある。吸着ガスを放出後、別の真空チャンバ内で前面基板2と背面基板4を貼り合わせて封着し、表示パネル10が完成する。
図4は、上記基板処理装置の概略構成を示す図である。ベーキング処理は前面基板2と背面基板4とでは加熱温度および加熱保持時間が違うためそれぞれ別の真空チャンバでベーキングするが、工程そのものは同じ方式のため、ここでは説明の都合上、前面基板2についてのみ説明する。そして、ここでは処理される前記前面基板2を、「基板」と呼ぶ。
【0025】
図の左側部から右側部に亘って、搬入側真空・大気室30、加熱室31、冷却室32、搬出側真空・大気室33が順に、かつ一列直状に配置される。各室30〜33の相互間にはゲート34b〜34dが設けられ、さらに搬入側真空・大気室30と搬出側真空・大気室33のそれぞれ搬入・搬出側にもゲート34a、34eが設けられる。これらゲート34a〜34eは個々に、ゲート駆動機構35a〜35eに連結され、各ゲート34a〜34eは個々に開閉駆動制御されるようになっている。
各室30〜33の両側部に、それぞれゲート34a〜34eが設けられることになり、両側のゲートを閉成した状態で、それぞれの室30〜33が完全密閉空間となる。各室30〜33は、それぞれ高真空を保つために、各チャンバにそれぞれ真空源(真空ポンプ)Sが接続されて、高真空状態を実現している。
【0026】
特に、搬入出側の真空・大気室30,33は外部に面しているところから、ゲート34a,34eが開放され基板Pが搬入もしくは搬出される都度、一旦、大気圧に近い状態になる。ただし、ゲートを閉成した直後に真空源Sが作動して、上昇した室内を再び所定の真空圧に戻す。
前記加熱室31には加熱プレート(加熱源)36が収容されていて、内部を約300℃程度の加熱保持する。前記冷却室32には冷却プレート(冷却源)37が配置され、所定温度に冷却保持する。真空源Sと加熱プレート36および冷却プレート37のいずれもが、制御部(制御手段)38と電気的に接続され、基板10に対する処理条件によって真空雰囲気および室内温度が正確に管理されるようになっている。
【0027】
各室30〜33床面にはレール39が敷設され、走行駆動機構41に連結される台車40A,40B(移送手段)が走行自在である。この走行駆動機構41は、前記制御部38に電気的に接続され、制御部から制御信号を受けるようになっている。ここでは、4室ある真空チャンバ30〜33のうち、一つ置きのチャンバである加熱室31と搬出側真空・大気室33をホームポジションとして2台の台車40A,40Bが用意されている。これら台車40A,40B上には、図示しないクランプ機構を介して基板10を着脱自在に支持できるようになっていて、各台車は基板を支持した状態で後述するように移動できる。
【0028】
すなわち、一方の台車40Aは、搬出側真空・大気室33をホームポジションとしていて、内側のゲート34dが開放され、かつ他方の台車40Bが冷却室32に存在しない状態でのみ、搬出側真空・大気室33と冷却室32との間を移動可能である。
他方の台車40Bは、加熱室31をホームポジションとして、両隣りの真空チャンバである搬入側真空・大気室30と冷却室32との間に、ゲート34b,34cが開放されている場合に移動可能である。当然、台車40Bが加熱室31から冷却室32に移動する際には、冷却室に一方の台車40Aが移動していないことが条件となっている。
【0029】
上記台車40A,40Bがホームポジションとしない一つ置きの真空チャンバである、搬入側真空・大気室30と冷却室32には、駆動機構42A,42Bに連結されたリフタ機構(把持手段)43A,43Bが設けられる。この駆動機構42A,42Bも前記制御部38に電気的に接続されていて、必要な制御信号を受けるようになっている。すなわち、前記リフタ機構43A,43Bは、台車40A,40Bがホームポジションとする真空チャンバ31,33以外の真空チャンバ30,32に設けられている。
それぞれのリフタ機構43A,43Bは、台車40A,40Bが基板10A〜10Dを搬入側真空・大気室30と冷却室32に搬入してきたときは開放状態にあり、台車40A,40Bが停車したタイミングをとって基板10A〜10Dを把持する。リフタ機構43A,43Bが基板10A〜10Dを把持してから台車40A,40Bはホームポジションである真空チャンバ31,33に戻るが、このときリフタ機構43A,43Bは台車40A,40Bと接触しないよう、退避位置に移動するようになっている。
【0030】
所定の処理が終了して再び台車40A,40Bがリフタ機構43A,43Bに支持する基板10A〜10Dを受け取りに来れば、そのタイミングをとってリフタ機構43A,43Bからその台車40A,40Bへ基板を移載することが可能である。
なお、搬出側真空・大気室33の搬出側外部と、搬入側真空・大気室30の搬入側外部にはそれぞれ、ロボットアーム(取扱い手段)45A,45Bが設けられている。すなわち、各ロボットアーム45A,45Bは、基台上に前後、上下、回転機構が載設一体化されたものである。ロボットアーム45Aはゲート34eが開放されることにより、基板10を搬出側真空・大気室33から取出して次の工程に送る。また、ロボットアーム45Bはゲート34aが開放されることにより、支持した基板10を搬入側真空・大気室30内へ取入れることができる。
【0031】
つぎに、このようにして構成される基板処理装置の作用について説明する。
図4で、搬入側真空・大気室30、加熱室31、冷却室32、搬出側真空・大気室33のそれぞれにおいて基板10D〜10Aを収容し、基板に対して所定の処理工程をなす。すなわち、搬入側真空・大気室30において、リフタ機構43Aが基板10Dを把持している。この搬入側真空・大気室30では一つ以前の処理で、ゲート34aを開放して基板10Dを搬入している。この際に搬入側真空・大気室30では大気開放がともなうので、同図の状態で所定の真空圧に戻している。
加熱室31では、ここをホームポジションとする第2の台車40B上に基板10Cを支持し、この状態のまま基板を約300℃程度に加熱する。冷却室32ではリフタ機構43Bが基板10Bを把持し、一つ前の処理工程である加熱室31において加熱され温度上昇した基板10Bを冷却する。搬出側真空・大気室33では、ここをホームポジションとする台車40A上に基板10Aを支持している。一つ以後の処理で基板10Aを搬出する際に大気開放がともなうので、同図の状態で所定の真空圧にする。
【0032】
つぎの処理工程は図5(A)〜(D)に示す順であり、さらに図5(D)から図6(A)に移り、図6(A)〜(F)までの順になる。そして、図5と図6では図面の簡略化をなすため、図4で説明した制御部38と、この制御部によって駆動制御される各種機構は図示しておらず、説明を省略する。
図5(A)では、図4の状態で処理を終えた搬出側真空・大気室33の搬出側ゲート34eが開放される。この搬出側にあるロボットアーム45Aの腕が伸びてゲート34eを介して搬出側真空・大気室33内へ挿入され、台車40Aに支持される基板10Aを移載する。この状態で、基板10Aを搬出側真空・大気室33からゲート34eを介して装置外部へ取出し、さらに所定の処理工程へ案内する。
【0033】
基板10Aの搬出後は再びゲート34eが閉じられるが、以上の工程の間、台車40Aは搬出側真空・大気室33で停止状態を保持する。搬出側真空・大気室33が一旦開放されて大気圧になるが、ゲート34eが閉じられたあと再び所定の真空圧に戻される。台車40Aは全く装置外部へ出ないので、大気圧に晒されることによる有害ガスの付着がなく、搬出側真空・大気室33を真空圧に戻した状態で悪影響はない。
また、この処理の最中は、搬入側真空・大気室30、加熱室31および冷却室32において何らの状況変化もない。そのため、各チャンバ内にそのまま姿勢で基板10B〜10Dが収容されている。
【0034】
図5(B)では、冷却室32と搬出側真空・大気室33間のゲート34dが開放され、搬出側真空・大気室33に位置していた台車40Aが冷却室32に移動する。すなわち、搬出側真空・大気室33をホームポジションとする台車40Aが隣りの真空チャンバである冷却室32に移動することになる。
このとき既に、搬出側真空・大気室33は所定の真空圧になっているので、冷却室32においてリフタ機構10Bに把持される基板10Bにおいては何らの影響もない。台車40Aが冷却室32に移っても、冷却室32と搬出側真空・大気室33との間のゲート34dは開放された状態を把持する。
【0035】
図5(C)では、冷却室32に移動し停車した台車40Aに対してリフタ機構10Bが作動し、それまで把持していた基板10Bを解放する。この基板10Bを台車40Aが受けて支持する。このときも、冷却室32と搬出側真空・大気室33との間のゲート34dは依然として開放された状態を把持する。
図5(D)では、基板10Bを支持した台車40Aが冷却室32から開放されたままのゲート34dを介して再び、ホームポジションである搬出側真空・大気室33に戻る。台車40Aの通過直後に前記ゲート34dは閉成され、冷却室32と搬出側真空・大気室33はそれぞれ密閉状態となり、かつそれぞれ所定の真空圧に保持される。この状態で、それまで搬出側真空・大気室33を除く各真空チャンバに収容されていた基板10B〜10Dが、今度は冷却室32を除く各真空チャンバに収容されるよう変る。
【0036】
つぎに、図6(A)に示すように、加熱室31と冷却室32との間のゲート34cが開放され、加熱室31に収容される台車40Bが基板10Cを支持したまま移動し、ゲート34cを介して冷却室32に位置する。すなわち、加熱室31をホームポジションとする台車40Bが、加熱室31から出て隣りの真空チャンバである冷却室32へ移動する。
このとき、冷却室32は所定の真空圧になっていることは勿論であり、基板10Cに対する影響がない。台車40Bが冷却室32に移っても、加熱室31と冷却室32との間のゲート34cは開放された状態を保つ。
【0037】
図6(B)では、冷却室32に備えられるリフタ機構43Bが作動して、台車40Bに支持される基板10Cを把持する。そのあと、空になった台車40Bは再びホームポジションである加熱室31に戻る。この台車40Bが冷却室32と加熱室31との間のゲート34cを通過した直後に、前記ゲート34cは閉じられる。
図6(C)では、台車40Bがホームポジションである加熱室31に移動したタイミングをとって、搬入側真空・大気室30と加熱室31との間のゲート34bが開放され、空となった台車40Bは、今度は搬入側真空・大気室30へ移動する。
【0038】
すなわち、台車40Bは一旦、ホームポジションである加熱室31に戻るが、そのまま加熱室を通過して隣接するチャンバである搬入側真空・大気室30へ移動する。このあとも、加熱室31と搬入側真空・大気室30との間のゲート34bは開放状態を保持する。
【0039】
図6(D)では、搬入側真空・大気室30に移動し、かつ停車した台車40Bに対してリフタ機構43Aが作動し、それまで把持していた基板10Dを解放する。基板10Dはリフタ機構43Aから台車40B上に移され、台車に支持される。このときも、加熱室31と搬入側真空・大気室30との間のゲート34bは開放状態を継続する。
図6(E)では、搬入側真空・大気室30にある台車40Bが基板10Dを支持したまま、加熱室31へ移動する。すなわち、台車40Bは、隣りのチャンバである搬入側真空・大気室30から出て再びホームポジションである加熱室31に戻る。
【0040】
このとき、加熱室31は所定の真空圧になっていることは勿論であり、基板10Dに対する影響がない。台車10Dが加熱室31に移った直後に、搬入側真空・大気室30と加熱室31との間のゲート34bが閉成される。この状態で、それまで加熱室31を除く各真空チャンバに収容されていた基板10B〜10Dが、今度は搬入側真空・大気室30を除く各真空チャンバに収容されるよう変る。
図6(F)では、搬入側真空・大気室30の搬入側に設けられるゲート34aが開放され、外部に設けられるロボットアーム45Bの腕が伸びて、ここに支持された基板10Eが搬入側真空・大気室30内に取入れられ、リフタ機構43Aに受け渡される。
【0041】
前記基板10Eがリフタ機構43Aに確実に把持された後、ロボットアーム45Bの腕が搬入側真空・大気室30から出る。そのあと、搬入側真空・大気室30の搬入側ゲート34aが閉成される。結局、基板処理装置を構成する全ての真空チャンバ30〜33において、台車40A,40Bもしくはリフタ機構43A、43Bに各基板10B〜10Eが支持されることとなり、先に説明した図4と同一の状態に戻る。そして、上述した各工程を順次繰り返す。
このように上記処理装置においては、真空チャンバ30〜33間で基板10を移動させるために台車搬送を行うが、1チャンバ置きにリフタ機構43A,43Bを備えるとともに、他の1つ置きのチャンバをホームポジションとした台車40A,40Bを備えていて、前記台車はホームポジションのチャンバから両隣りのチャンバとの間を移動可能としている。
【0042】
したがって、この基板処理装置では、従来のように搬出側真空・大気室から出た台車を搬入側真空・大気室に戻すためのリターン機構が不要となり、装置構成の簡素化を図れる。そして、台車の数が半減し、その半減した台車に代ってリフタ機構43A,43Bを備えることとなるが、台車40A,40Bよりもリフタ機構43A,43Bが廉価で、かつ運転制御が簡単ですみ、全体として設備費の低減を図れる。
基板処理装置をメンテナンスする際には台車40A,40Bが邪魔になるので、そのチャンバから移動する必要がある。このとき、台車40A,40Bは容易に両隣りのチャンバに移動できて、作業性の向上を図れる。そして、各チャンバを真空状態にしたままのメンテナンスも可能である。
【0043】
なお、本発明においては、各チャンバを真空雰囲気としたが、これに限定されるものではなく、処理方法によっては特別なガスの雰囲気であってもよく、あるいは温度管理のみであってもよい。
また、本発明においては、基板10として表面伝導型電子放出阻止を用いた表示装置である表面伝導型電子放出ディスプレイ(SED)を対象として説明したが、これに限定されるものではなく、電解放出型電子放出阻止を用いた表示装置(FED)であってもよく、また、プラズマ表示パネル(PDP)、エレクトロルミネッセンス(EL)等の他の画像表示装置を対象としても可能である。
【図面の簡単な説明】
【0044】
【図1】本発明の一実施形態に係る、基板であるところのSEDの真空外囲器を示す一部を切欠した斜視図。
【図2】同実施の形態に係る、図1の真空外囲器を線分II‐IIに沿って切断した断面斜視図。
【図3】同実施の形態に係る、図2の断面を部分的に拡大して示す部分拡大断面図。
【図4】同実施の形態に係る、基板処理装置の概略構成と作用説明図。
【図5】同実施の形態に係る、図4から引き続いて行われる基板処理工程を順に示す図。
【図6】同実施の形態に係る、図5(D)から引き続いて行われる基板処理工程を順に示す図。
【図7】従来の基板処理装置における、基板処理工程を順に示す図。
【符号の説明】
【0045】
30…搬入側真空・大気室、31…加熱室、32…冷却室、33…搬出側真空・大気室、34a〜34e…ゲート、43A,43B…リフタ機構(把持手段)、40A,40B…台車(移送手段)、45A,45B…ロボットアーム(取扱い手段)。

【特許請求の範囲】
【請求項1】
互いに異なる雰囲気および/もしくは温度管理された複数のチャンバに順次基板を搬送し、各チャンバにおいて互いに異なる複数の処理をなす基板処理装置において、
互いに隣接するチャンバ相互間に設けられる開閉式のゲートと、
1つ置きの各チャンバ内に設けられ、前記基板を把持し、かつ解除自在な把持手段と、
この把持手段を備えたチャンバとは異なる1つ置きのチャンバをホームポジションとして、前記把持手段を備えた隣接するチャンバとの間のみに基板を授受し搬送する移送手段と
を具備することを特徴とする基板処理装置。
【請求項2】
最も搬入側のチャンバの搬入側外部と、最も搬出側のチャンバの搬出側外部にそれぞれ設けられ、各チャンバ内に基板を取入れ、もしくは取出し可能な取扱い手段を備えたことを特徴とする請求項1記載の基板処理装置。
【請求項3】
前記基板は、平板型画像表示装置を構成するガラス基板であり、各チャンバは真空チャンバであることを特徴とする請求項1記載の基板処理装置。
【請求項4】
前記請求項1記載の基板処理装置を用いて基板に対する処理を行うにあたって、前記ゲートは常に1つのみを開放して前記移送手段の通過を待機し、2つ以上のゲートは、それぞれ異なるタイミングで開放されることを特徴とする基板処理方法。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【図6】
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【図7】
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【公開番号】特開2006−36468(P2006−36468A)
【公開日】平成18年2月9日(2006.2.9)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2004−219174(P2004−219174)
【出願日】平成16年7月27日(2004.7.27)
【出願人】(000003078)株式会社東芝 (54,554)
【Fターム(参考)】