説明

基板処理装置および基板処理方法

【課題】マイクロバブルまたはナノバブルを含む処理液を使用する基板処理装置および基板処理方法において、基板に対してマイクロバブルまたはナノバブルを効果的に作用させることができる技術を提供する。
【解決手段】マイクロバブル洗浄処理部40は、圧送される洗浄液中に注入する窒素ガスの流量を調節することにより、洗浄液中に含まれるマイクロバブルのサイズを調節することができる。このため、除去対象となるパーティクルのサイズに応じて最適なサイズのマイクロバブルを多量に供給することができ、基板に対してマイクロバブルを効果的に作用させることができる。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、液晶表示装置用ガラス基板、PDP用ガラス基板、半導体ウエハ、磁気/光ディスク用のガラス/セラミックス基板などの各種基板に処理液を供給して基板を処理する基板処理装置および基板処理方法に関する。
【背景技術】
【0002】
従来より、基板の製造工程においては、基板の表面に処理液を供給して基板を処理する基板処理装置が知られている。特に、近年では、マイクロバブルを含む処理液を基板の表面に供給し、基板に対する処理効果を向上させる試みがなされている。マイクロバブルを含む処理液を使用すれば、例えば、基板の表面に付着したパーティクルを効率よく除去することができる。
【0003】
従来の基板処理装置では、例えば、気液混合ポンプ、旋回加速器、および分散器を有するマイクロバブル発生装置や、ガス溶解ユニットを有するマイクロバブル発生装置を使用して処理液中にマイクロバブルを発生させていた。マイクロバブルを利用した従来の基板処理装置については、例えば、特許文献1〜3に開示されている。
【0004】
【特許文献1】特開2004−121962号公報
【特許文献2】特開2005−93873号公報
【特許文献3】特開2006−179764号公報
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0005】
しかしながら、従来のマイクロバブル発生装置から発生するマイクロバブルのサイズは、所定の径を中心としたほぼ正規分布状のばらつきを有しており、そのサイズを制御することは困難であった。このため、処理対象の基板に応じて最適なサイズのマイクロバブルを多量に供給することはできなかった。例えば、基板の洗浄工程にマイクロバブルを利用する場合には、除去対象となるパーティクルのサイズに応じて最適なサイズのマイクロバブルを多量に供給することはできなかった。したがって、従来の基板処理装置では、基板に対してマイクロバブルを必ずしも効果的に作用させることはできなかった。
【0006】
本発明は、このような事情に鑑みなされたものであり、マイクロバブルまたはナノバブルを含む処理液を使用する基板処理装置および基板処理方法において、基板に対してマイクロバブルまたはナノバブルを効果的に作用させることができる技術を提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0007】
上記課題を解決するため、請求項1に係る発明は、マイクロバブルまたはナノバブルを含む処理液により基板を処理する基板処理装置において、処理液中にマイクロバブルまたはナノバブルを発生させるバブル発生手段と、処理液中のマイクロバブルまたはナノバブルのサイズを調節するサイズ調節手段と、マイクロバブルまたはナノバブルを含む処理液を基板に供給する処理液供給手段とを備えることを特徴とする。
【0008】
請求項2に係る発明は、請求項1に記載の基板処理装置において、前記処理液供給手段は、基板に向けて処理液を吐出するノズルと、前記ノズルに処理液を圧送するための配管とを有し、前記バブル発生手段は、前記配管内の処理液中に気体を注入する気体注入手段を有することを特徴とする。
【0009】
請求項3に係る発明は、請求項2に記載の基板処理装置において、前記ノズルは、基板に向けて処理液を平面状の飛沫として吐出することを特徴とする。
【0010】
請求項4に係る発明は、請求項2または請求項3に記載の基板処理装置において、前記サイズ調節手段は、前記気体注入手段により注入される気体の流量を調節する流量調節手段を有することを特徴とする。
【0011】
請求項5に係る発明は、請求項2から請求項4までのいずれかに記載の基板処理装置において、基板に供給される処理液中のマイクロバブルまたはナノバブルの数を調節するバブル数調節手段を更に備えることを特徴とする。
【0012】
請求項6に係る発明は、請求項5に記載の基板処理装置において、前記バブル数調節手段は、前記配管内において圧送される処理液の圧力を調節する圧力調節手段を有することを特徴とする。
【0013】
請求項7に係る発明は、請求項2から請求項6までのいずれかに記載の基板処理装置において、前記処理液供給手段は、前記配管の前記気体注入手段よりも上流側の位置に介挿されたフィルタを有することを特徴とする。
【0014】
請求項8に係る発明は、マイクロバブルまたはナノバブルを含む処理液により基板を処理する基板処理方法において、処理液中にマイクロバブルまたはナノバブルを発生させるバブル発生工程と、処理液中のマイクロバブルまたはナノバブルのサイズを調節するサイズ調節工程と、マイクロバブルまたはナノバブルを含む処理液を基板に供給する処理液供給工程とを備えることを特徴とする。
【発明の効果】
【0015】
請求項1〜7に記載の発明によれば、基板処理装置は、処理液中にマイクロバブルまたはナノバブルを発生させるバブル発生手段と、処理液中のマイクロバブルまたはナノバブルのサイズを調節するサイズ調節手段と、マイクロバブルまたはナノバブルを含む処理液を基板に供給する処理液供給手段とを備える。このため、処理対象の基板に対してマイクロバブルまたはナノバブルを効果的に作用させることができる。
【0016】
特に、請求項2に記載の発明によれば、処理液供給手段は、基板に向けて処理液を吐出するノズルと、ノズルに処理液を圧送するための配管とを有し、バブル発生手段は、配管内の処理液中に気体を注入する気体注入手段を有する。処理液中に注入された気体の一部は処理液中に溶解し、ノズルから吐出される際の圧力低下により微小なマイクロバブルまたはナノバブルとなって発生する。また、処理液中に注入された残余の気体は気泡の状態で配管内を流れ、圧送される処理液中において剪断されてマイクロバブルまたはナノバブルとなる。このため、大型のマイクロバブル発生装置を使用することなく、簡易な構成でマイクロバブルまたはナノバブルを発生させることができる。
【0017】
特に、請求項3に記載の発明によれば、ノズルは、基板に向けて処理液を平面状の飛沫として吐出する。このため、基板の表面に隙間なく洗浄液を供給することができるとともに、基板の上面に所定の物理的衝撃を与えることができる。
【0018】
特に、請求項4に記載の発明によれば、サイズ調節手段は、気体注入手段により注入される気体の流量を調節する流量調節手段を有する。このため、配管内において結合されるマイクロバブルまたはナノバブルの量を調節することにより、基板上に供給されるマイクロバブルまたはナノバブルのサイズを容易に制御することができる。
【0019】
特に、請求項5に記載の発明によれば、基板に供給される処理液中のマイクロバブルまたはナノバブルの数を調節するバブル数調節手段を更に備える。このため、処理対象の基板に応じてマイクロバブルまたはナノバブルを十分に作用させることができる。
【0020】
特に、請求項6に記載の発明によれば、バブル数調節手段は、配管内において圧送される処理液の圧力を調節する圧力調節手段を有する。このため、基板に供給される処理液中のマイクロバブルまたはナノバブルの数を容易に調節することができる。
【0021】
特に、請求項7に記載の発明によれば、処理液供給手段は、配管の気体注入手段よりも上流側の位置に介挿されたフィルタを有する。このため、処理液中の異物を濾過して清浄な処理液を供給することができる。また、マイクロバブルまたはナノバブルはフィルタよりも下流側で発生するため、マイクロバブルまたはナノバブルがフィルタに塞き止められることはなく、マイクロバブルまたはナノバブルを効率よく基板に供給することができる。
【0022】
また、請求項8に記載の発明によれば、基板処理方法は、処理液中にマイクロバブルまたはナノバブルを発生させるバブル発生工程と、処理液中のマイクロバブルまたはナノバブルのサイズを調節するサイズ調節工程と、マイクロバブルまたはナノバブルを含む処理液を基板に供給する処理液供給工程とを備える。このため、処理対象の基板に対してマイクロバブルまたはナノバブルを効果的に作用させることができる。
【発明を実施するための最良の形態】
【0023】
以下、本発明の好適な実施形態について、図面を参照しつつ説明する。
【0024】
<1.基板処理システムの全体構成>
図1は、本発明に係る基板処理装置1の全体構成を示した概略図である。基板処理装置1は、液晶表示装置用の角形ガラス基板(以下、単に「基板」という)9の表面を洗浄し、基板9上に付着した有機物やパーティクル等の異物を除去するための装置である。図1に示したように、基板処理装置1は、主としてUV処理部10と、ブラシ処理部20と、置換水洗部30と、マイクロバブル洗浄処理部40と、リンス処理部50とを備えている。また、基板処理装置1は、基板9を搬送するための複数の搬送ローラ60を備えており、複数の搬送ローラ60を回転させることにより、基板9を図中矢印ARの方向に搬送する。
【0025】
UV処理部10は、基板9の上面に紫外線を照射し、基板9の上面に付着した有機物を分解するための処理部である。UV処理部10は、搬送ローラ60上の基板9の上面に向けて、例えば180〜240nm程度の波長を有する紫外線を照射する。基板9の上面に付着した有機物は、紫外線の照射により分解され、基板9の上面から遊離しやすい状態となる。
【0026】
ブラシ処理部20は、UV処理部10において分解された分解物を基板9の上面から遊離させるための処理部である。ブラシ処理部20は、基板9の上面に洗浄液を供給するとともにブラシを摺接させ、上記分解物を基板9の上面から十分に遊離させる。なお、基板9上に供給される洗浄液は、洗浄能力の高い薬液であってもよく、あるいは、純水であってもよい。
【0027】
置換水洗部30は、基板9上に残存する洗浄液や分解物等を洗い流すための処理部である。置換水洗部30は、純水供給源に接続された図示しないノズルを有しており、当該ノズルから基板9の上面に純水を吐出することにより、基板9上の洗浄液や分解物等を洗い流す。これにより、基板9の表面は、洗浄液に被覆された状態から純水に被覆された状態に置換される。
【0028】
マイクロバブル洗浄処理部40は、マイクロバブルを含む洗浄液により、基板9の上面に付着した微細なパーティクル(例えば、0.1μm〜数μm程度のパーティクル)を除去するための処理部である。マイクロバブル洗浄処理部40は、70μm以下の微小気泡であるマイクロバブルを含む洗浄液を所定のノズルから吐出させ、基板9上に付着した微小なパーティクルを洗い流して除去する。マイクロバブル洗浄処理部40の詳細な構成については後述する。
【0029】
リンス処理部50は、基板9の上面に残存する洗浄液を洗い流すための処理部である。リンス処理部50は、純水供給源に接続された図示しないノズルを有しており、当該ノズルから基板9の上面に純水を吐出することにより、基板9上の洗浄液を洗い流す。これにより、基板9の表面は純水に被覆された状態となる。
【0030】
このような基板処理装置1において基板9を処理するときには、搬送ローラ60を動作させて基板9を搬送しつつ、UV処理部10、ブラシ処理部20、置換水洗部30、マイクロバブル洗浄処理部40、およびリンス処理部50における上記の各処理を基板9に対して順次に行う。
【0031】
<2.マイクロバブル洗浄処理部>
図2は、上記のマイクロバブル洗浄処理部40の詳細な構成を示した図である。図2に示したように、マイクロバブル洗浄処理部40は、搬送ローラ60の上方に配置されたスプレーノズル41と、スプレーノズル41に洗浄液を供給する洗浄液供給部42とを備えている。
【0032】
スプレーノズル41は、基板9の搬送方向と直交する水平方向にのびる柱状の外形を有している。スプレーノズル41の内部には洗浄液を貯留するための空洞が形成されており、また、スプレーノズル41の下部には洗浄液を吐出するための複数の吐出孔41aが形成されている。このため、洗浄液供給部42から供給された洗浄液は、スプレーノズル41内の空洞を通って複数の吐出孔41aから基板9の上面に吐出する。
【0033】
図3は、スプレーノズル41による吐出の様子を部分的に示した斜視図である。図3に示したように、スプレーノズル41の各吐出孔41aは、基板9の進行方向(矢印ARの方向)に直交する方向に洗浄液を拡散し、洗浄液を平面状の飛沫として吐出する。このため、基板9の上面には隙間なく洗浄液が供給される。また、洗浄液の供給により、基板9の上面には所定の物理的衝撃が与えられる。
【0034】
図2に戻り、洗浄液供給部42は、配管42a〜42c、洗浄液供給源42d、ポンプ42e、フィルタ42f、バルブ42g、三方分岐管42h、窒素ガス供給源42i、増圧弁42j、増圧ガスタンク42k、バルブ42l、流量計42m、およびインジェクト部42nを有している。ポンプ42e、バルブ42g、増圧弁42j、およびバルブ42lは、コンピュータにより構成される制御部43に電気的に接続されており、制御部43からの指令に従って動作する。また、流量計42mと制御部43との間も電気的に接続されており、流量計42mの計測結果は制御部43へ転送される。
【0035】
配管42aは、洗浄液供給源42dと三方分岐管42hの第1のポートとの間を結んでおり、配管42aの経路途中には、ポンプ42e、フィルタ42f、およびバルブ42gが介挿されている。このため、バルブ42gを開放するとともにポンプ42eを動作させると、洗浄液供給源42dから配管42a内に洗浄液が供給され、フィルタ42fを経由して三方分岐管42hの第1のポートへ、洗浄液が導入される。なお、洗浄液は、アンモニア水、SC1液、中性洗剤、アルカリ洗剤等の洗浄能力の高い薬液であってもよく、あるいは、純水であってもよい。
【0036】
上記のポンプ42eには、高圧ポンプが使用されている。このため、洗浄液供給源42dから供給された洗浄液は高圧で下流側へ圧送される。また、バルブ42gには開度調節バルブが使用されている。バルブ42gは、その開度を調節することにより洗浄液の流量を調節し、洗浄液の圧力を調節しつつ、下流側へ洗浄液を送給する。
【0037】
配管42bは、窒素ガス供給源42iと三方分岐管42hの第2のポートとの間を結んでおり、配管42bの経路途中には、増圧弁42j、増圧ガスタンク42k、バルブ42l、および流量計42mが介挿されている。窒素ガス供給源42iから供給される窒素ガスは、増圧弁42jによって加圧され、増圧ガスタンク42kに充填されている。このため、バルブ42lを開放すると、増圧ガスタンク42kに充填された高圧の窒素ガスが流量計42mを経由して三方分岐管42hの第2のポートへ導入される。
【0038】
配管42bは、インジェクト部42nを介して三方分岐管42hの第2のポートに接続されている。図4は、三方分岐管42hとインジェクト部42nとの接続構成を示した図である。図4に示したように、インジェクト部42nは、三方分岐管42hの内部に挿入されており、インジェクト部42nの先端付近には、窒素ガスを吐出するための小孔42oが形成されている。このため、配管42bからインジェクト部42nに供給された窒素ガスは、インジェクト部42nの小孔42oを介して三方分岐管42h内の洗浄液中に吐出される。
【0039】
インジェクト部42nは、例えばSUS等のステンレスにより構成されており、小孔42oは、例えば0.5mm程度の開口径を有する。また、三方分岐管42hの管路の中央付近に小孔42oが配置されるように、インジェクト部42nが取り付けられている。このため、窒素ガスの気泡は、三方分岐管42hの管路の中央付近に直接注入され、管路内に偏在することなく供給される。
【0040】
バルブ42lには、開度調節バルブが使用されている。制御部43は、流量計42mの計測値に基づいてバルブ42lの開度を調節し、窒素ガスの圧力および流量を調節しつつ、インジェクト部42nへ窒素ガスを送給する。三方分岐管42h内において、窒素ガスの圧力は洗浄液の圧力よりもやや高くなるように調整されている。このため、三方分岐管42h内の洗浄液がインジェクト部42n内に進入することはなく、窒素ガスは三方分岐管42h内に良好に吐出される。洗浄液中に吐出された窒素ガスの一部は、洗浄液中に加圧溶解され、他の窒素ガスは気泡の状態で下流側へ送給される。
【0041】
配管42cは、三方分岐管42hの第3のポートとスプレーノズル41との間を結んでいる。このため、三方分岐管42h内に導入された洗浄液および窒素ガスは、配管42cを通ってスプレーノズル41に供給され、スプレーノズル41の吐出孔41aから吐出される。洗浄液中に溶解している窒素ガスは、吐出孔41aから吐出されるときの圧力の開放によって過飽和となり、洗浄液中に微小なマイクロバブルとなって発生する。
【0042】
一方、洗浄液中に溶解しなかった窒素ガスの気泡は、配管42c内を流れる途中、圧送される洗浄液中において細かく剪断され、多数のマイクロバブルとなる。そして、剪断により生成されたマイクロバブルも、スプレーノズル41の吐出孔41aから洗浄液とともに吐出される。このように、基板9の上面に供給される洗浄液中には、配管42cの流路途中で剪断により生成されたマイクロバブルと、スプレーノズル41から吐出される際に過飽和により生成されたマイクロバブルとが含まれる。
【0043】
図5は、基板9上に供給される洗浄液中のマイクロバブルのサイズの分布を示したグラフである。図5に示したように、マイクロバブルのサイズは、ある径を中心としたほぼ正規分布状のばらつきを有する。そして、バルブ42gの開度を調節して洗浄液の流量を増加させると、図5の矢印71のように、マイクロバブルの供給数も増加する。逆に、バルブ42gの開度を調節して洗浄液の流量を減少させると、図5の矢印72のように、マイクロバブルの供給数も減少する。すなわち、マイクロバブル洗浄処理部40は、洗浄液の流量を調節することにより、マイクロバブルの供給数を調節することができる。
【0044】
また、バルブ42lの開度を調節して窒素ガスの流量を増加させると、洗浄液中に気泡の状態で残存する窒素ガスが増加する。このため、配管42cの流路途中で剪断により発生するマイクロバブルが増加し、マイクロバブル同士が結合して生成されるややサイズの大きいマイクロバブルの数が増加する。したがって、図5の矢印73のように、マイクロバブルのサイズが大径側にシフトする。逆に、バルブ42lの開度を調節して窒素ガスの流量を減少させると、洗浄液中に気泡の状態で残存する窒素ガスが減少する。このため、配管42cの流路途中で剪断により発生するマイクロバブルが減少し、マイクロバブル同士が結合して生成されるややサイズの大きいマイクロバブルの数が減少する。したがって、図5の矢印74のように、マイクロバブルのサイズが小径側にシフトする。すなわち、マイクロバブル洗浄処理部40は、窒素ガスの流量を調節することにより、マイクロバブルのサイズを調節することができる。
【0045】
スプレーノズル41から吐出された洗浄液は、基板9に衝突して基板9の上面に物理的衝撃を与える。また、基板9の上面に供給された洗浄液中のマイクロバブルは、基板9の上面において徐々に縮小し、その一部が消滅(いわゆる「圧壊」)する。マイクロバブルが圧壊するときには、マイクロバブルの内部が断熱圧縮され、マイクロバブルは高温(例えば数千℃)、高圧(例えば数千気圧)の微小領域(いわゆる「ホットスポット」)となって消滅する。このため、ホットスポットから発散されるエネルギーが基板9の上面に作用し、基板9の上面に付着したパーティクルを基板9から遊離させる。
【0046】
このように、基板9の上面には、洗浄液の衝突による物理的衝撃と、マイクロバブルの圧壊によって発散されるエネルギーとが作用し、これらの作用により、パーティクルは基板9の上面から遊離する。特に、洗浄液の衝突による物理的衝撃は、主としてサイズの大きいパーティクルに作用するのに対し、マイクロバブルの圧壊により発散されるエネルギーは、主としてサイズの小さいパーティクルに作用し、それぞれパーティクルを基板9の上面から遊離させる。
【0047】
また、マイクロバブルはパーティクルを吸着する性質を有する。このため、基板9から遊離されたパーティクルは、圧壊していないマイクロバブルに吸着される。マイクロバブルは各気泡のサイズが微小であるため、全体として広い表面積(気液界面の面積)を有する。このため、洗浄液中に浮遊するパーティクルを効率よく吸着する。また、マイクロバブルは帯電性を有するため、静電的作用によってもパーティクルを引き寄せ、効率よく吸着する。このようにしてパーティクルを吸着したマイクロバブルは、洗浄液とともに基板9の外部へ排出される。
【0048】
以上のように、このマイクロバブル洗浄処理部40は、マイクロバブルを含む洗浄液を基板9の上面に供給することにより、基板9の上面からパーティクルを遊離し、遊離させたパーティクルをマイクロバブルとともに基板9の外部へ排出する。したがって、基板9上に付着したパーティクルを効率よく除去することができる。また、マイクロバブルの洗浄効果を利用しているため、洗浄液中の薬液濃度を低減させることができ、廃水処理や環境に対する負担を軽減させることができる。
【0049】
また、上記のように、このマイクロバブル洗浄処理部40は、洗浄液中に含まれるマイクロバブルのサイズを調節することができる。このため、除去対象となるパーティクルのサイズに応じて最適なサイズのマイクロバブルを多量に供給することができる。例えば、サイズの大きいパーティクルが多い工程ではマイクロバブルのサイズを大きめに設定し、サイズの小さいパーティクルを除去すべき工程ではマイクロバブルのサイズを小さめに設定するというように、複数の工程に対応させることが可能となる。
【0050】
また、本実施形態のマイクロバブル洗浄処理部40は、圧送される洗浄液中にインジェクト部42nを用いて窒素ガスを注入することにより、配管42c内および吐出時にマイクロバブルを発生させる。このため、従来使用されていた大型のマイクロバブル発生装置を使用することなく、簡易な構成でマイクロバブルを発生させることができる。
【0051】
また、本実施形態のマイクロバブル洗浄処理部40は、気体と液体とを含む流体を基板に供給する機構として従来使用されていた「二流体ノズル」と比較しても、簡易な構成で洗浄能力の高い流体を供給することができる。すなわち、二流体ノズルは液体と気体とを混合させて吐出するための複雑で高価な構成となるところ、本実施形態のスプレーノズル41は、吐出孔41aから洗浄液を吐出するだけのシンプルな構成とすることができる。また、本実施形態のマイクロバブル洗浄処理部40は、従来の二流体ノズルの1/2000程度の気体(上記の実施形態では窒素ガス)を使用すれば、十分な量のマイクロバブルを発生させることができるため、気体の消費量を低減させることができる。
【0052】
また、上記のマイクロバブル洗浄処理部では、フィルタ42fよりも下流側の洗浄液中に窒素ガスを注入する。このため、配管42c内において発生したマイクロバブルはフィルタ42fに塞き止められることなくノズル41に到達する。したがって、配管42c内において発生したマイクロバブルを、効率よく基板9に供給することができる。
【0053】
<3.変形例>
以上、本発明の一実施形態について説明したが、本発明は上記の例に限定されるものではない。例えば、上記のマイクロバブル洗浄処理部40は、基板9の上面に洗浄液を供給するものであったが、基板9の下面側に洗浄液を供給するものであってもよく、あるいは、基板9の両面に洗浄液を供給するものであってもよい。
【0054】
また、上記の例では、窒素ガスのマイクロバブルを生成していたが、マイクロバブルを構成する気体は窒素ガス以外の気体であってもよい。ただし、窒素ガスやアルゴンガス等の不活性ガスを使用すれば、基板9に対する例えば表面酸化等の化学的影響を排除することができる。
【0055】
また、上記の例では、圧壊現象を起こす程度のサイズとして、70μm以下のマイクロバブルを発生させる場合について説明したが、本発明において発生させる微小気泡は、いわゆるマイクロバブルに限定されるものではなく、更に微小なナノバブルであってもよい。ナノバブルは、発生時の直径が1μm未満の超微小気泡であるため、圧壊により更に高いエネルギーを得ることができ、また、洗浄液中のパーティクルを更に効率よく吸着して除去することができる。
【0056】
また、上記の例では、有機物除去後のパーティクル除去処理にマイクロバブルを使用する場合について説明したが、ブラシ処理部20や置換水洗部30に上記と同等の洗浄液供給部42を適用し、マイクロバブルを含む洗浄液を供給する構成としてもよい。また、洗浄以外の処理を行う処理装置に上記の洗浄液供給部42と同等の処理液供給部を適用し、マイクロバブルを含む処理液を供給する構成としてもよい。
【0057】
また、上記の例では、液晶表示装置用の角形ガラス基板9を処理対象とする場合について説明したが、本発明は、PDP用ガラス基板、半導体ウエハ、磁気/光ディスク用のガラス/セラミックス基板などの他の基板を処理対象とするものであってもよい。
【図面の簡単な説明】
【0058】
【図1】本発明に係る基板処理装置の全体構成を示した概略図である。
【図2】マイクロバブル洗浄処理部の詳細な構成を示した図である。
【図3】スプレーノズルによる吐出の様子を部分的に示した斜視図である。
【図4】三方分岐管とインジェクト部との接続構成を示した図である。
【図5】基板上に供給されるマイクロバブルのサイズの分布を示したグラフである。
【符号の説明】
【0059】
1 基板処理装置
10 UV処理部
20 ブラシ処理部
30 置換水洗部
40 マイクロバブル洗浄処理部
41 スプレーノズル
41a 吐出口
42 洗浄液供給部
42a〜42c 配管
42d 洗浄液供給源
42e ポンプ
42f フィルタ
42g バルブ
42h 三方分岐管
42i 窒素ガス供給源
42j 増圧弁
42k 増圧ガスタンク
42l バルブ
42m 流量計
42n インジェクト部
43 制御部
50 リンス処理部
60 搬送ローラ
9 基板

【特許請求の範囲】
【請求項1】
マイクロバブルまたはナノバブルを含む処理液により基板を処理する基板処理装置において、
処理液中にマイクロバブルまたはナノバブルを発生させるバブル発生手段と、
処理液中のマイクロバブルまたはナノバブルのサイズを調節するサイズ調節手段と、
マイクロバブルまたはナノバブルを含む処理液を基板に供給する処理液供給手段と
を備えることを特徴とする基板処理装置。
【請求項2】
請求項1に記載の基板処理装置において、
前記処理液供給手段は、基板に向けて処理液を吐出するノズルと、前記ノズルに処理液を圧送するための配管とを有し、
前記バブル発生手段は、前記配管内の処理液中に気体を注入する気体注入手段を有することを特徴とする基板処理装置。
【請求項3】
請求項2に記載の基板処理装置において、
前記ノズルは、基板に向けて処理液を平面状の飛沫として吐出することを特徴とする基板処理装置。
【請求項4】
請求項2または請求項3に記載の基板処理装置において、
前記サイズ調節手段は、前記気体注入手段により注入される気体の流量を調節する流量調節手段を有することを特徴とする基板処理装置。
【請求項5】
請求項2から請求項4までのいずれかに記載の基板処理装置において、
基板に供給される処理液中のマイクロバブルまたはナノバブルの数を調節するバブル数調節手段を更に備えることを特徴とする基板処理装置。
【請求項6】
請求項5に記載の基板処理装置において、
前記バブル数調節手段は、前記配管内において圧送される処理液の圧力を調節する圧力調節手段を有することを特徴とする基板処理装置。
【請求項7】
請求項2から請求項6までのいずれかに記載の基板処理装置において、
前記処理液供給手段は、前記配管の前記気体注入手段よりも上流側の位置に介挿されたフィルタを有することを特徴とする基板処理装置。
【請求項8】
マイクロバブルまたはナノバブルを含む処理液により基板を処理する基板処理方法において、
処理液中にマイクロバブルまたはナノバブルを発生させるバブル発生工程と、
処理液中のマイクロバブルまたはナノバブルのサイズを調節するサイズ調節工程と、
マイクロバブルまたはナノバブルを含む処理液を基板に供給する処理液供給工程と
を備えることを特徴とする基板処理方法。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【公開番号】特開2008−80230(P2008−80230A)
【公開日】平成20年4月10日(2008.4.10)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2006−261994(P2006−261994)
【出願日】平成18年9月27日(2006.9.27)
【出願人】(000207551)大日本スクリーン製造株式会社 (2,640)
【Fターム(参考)】