説明

基板処理装置および基板処理方法

【課題】低流速で高い霧化効率を得て、微細な電気配線を有するデバイスに対してダメージを与えず、気体使用量を削減できる基板処理装置および基板処理方法を提供する。
【解決手段】基板処理装置10は、気体と液体を混合させて液体を基板Wに吐き出すことで基板を処理する基板処理装置であって、基板Wに対して液体を吐き出す中央通路を有する内筒31と、内筒31の周囲に配置されて気体を吐き出す外周リング状通路34を有する外筒33とを有する供給ノズル30を備え、液体を吐き出す内筒31の出口部43には、出口部43において液体を拡散するために、内筒31の外周面側が内筒31の内周面側に比べて、内筒31の中心軸CLに平行に突出するように傾斜する傾斜面44が形成されており、傾斜面44の形成角度θは、内筒31の中心軸CLに対して直交する方向に対して、0度<形成角度θ≦30度の範囲で形成されている。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、基板処理装置および基板処理方法に関し、特に処理対象物である例えば半導体ウエハ等の基板を処理する際に、気体と液体を混合させて供給する2流体ノズルを有する基板処理装置および基板処理方法に関する。
【背景技術】
【0002】
一例として、基板処理装置は、ウエハ等の基板の製造工程において基板に対して純水や薬液等の液体を供給して処理を行う。この種の基板処理装置は、基板に付着したパーティクルを除去することで洗浄する。
【0003】
基板の面には、微細化された電気配線が形成されているが、このような微細な電気配線に付着しているパーティクルが洗浄対象である。電気配線の微細化に伴ってパーティクルの直径はますます小さくなっており、高効率な洗浄技術が要求されてきている。
【0004】
この種のパーティクルを洗浄するために、特許文献1に記載されているような高い洗浄物理力を持った2流体ノズルが使われるようになってきている。特許文献1に開示されている2流体ノズルは、液体吐出口と、そのまわりに円環状に形成された気体吐出口を有する。
【特許文献1】特開2007―227878号公報
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0005】
ところが、特許文献1に記載されている2流体ノズルを使用すると、高い洗浄物理力によって微細化された電気配線ではパターン倒れと呼ばれるダメージが発生することがある。
【0006】
図6は吐き出した液滴の衝突過程の例を示しており、2流体ノズルの洗浄物理力は、次の式で表すことができる。
【0007】

洗浄物理力(せん断力)Fd=Cd・(πD/4)・P
ここで、Cd:効力係数
D :パーティクル直径
P :衝撃圧(∝V0)
V0:衝突前の速度
Vf:衝突後の速度
である。
【0008】
図6に示すように、洗浄物理力は、衝突した吐き出し液滴が横方向に広がることで、せん断力を発生させる。洗浄物理力は、微細化された電気配線の洗浄はできるが、微細な電気配線を有するデバイスでは、微細な電気配線を有するデバイスに対してダメージを与えず、電気配線がせん断力に負けてしまい倒れてしまう。
【0009】
2流体ノズルは、気体と液体を混合させて液体を、霧吹き現象を利用して高速ミストにして吐き出すものであり、気体の高速流速で負圧を発生させて液体の霧化を起こす構造である。しかし、気体の流速が大きい場合には液体の霧化の粒径が大きくなり、気体使用量が増加してしまい、液体の霧化の粒径が大きくなることで微細化された電気配線に対してダメージを与える要因となる。
【0010】
本発明は、上記に鑑みてなされたものであり、その目的は、低流速の気体で液体の高い霧化効率を得て、微細な気体使用量を削減できる基板処理装置および基板処理方法を提供することである。
【課題を解決するための手段】
【0011】
本発明の基板処理装置は、気体と液体を混合させて前記液体を処理対象物である基板に吐き出すことで基板を処理する基板処理装置であって、前記基板に対して前記液体を吐き出す中央通路を有する内筒と、前記内筒の周囲に配置されて前記気体を吐き出す外周リング状通路を有する外筒と、を有する供給ノズルを備え、前記液体を吐き出す前記内筒の出口部には、前記出口部において前記液体を拡散するために、前記内筒の外周面側が前記内筒の内周面側に比べて、前記内筒の中心軸に平行に突出するように傾斜する傾斜面が形成されており、前記傾斜面の形成角度は、前記内筒の中心軸に対して直交する方向に対して、0度<形成角度θ≦30度の範囲で形成されていることを特徴とする。
【0012】
本発明の基板処理方法は、気体と液体を混合させて前記液体を処理対象物である基板に吐き出すことで前記基板を処理する基板処理方法であって、供給ノズルの内筒の中央通路を通って前記基板に対して前記液体を吐き出し、前記内筒の周囲に配置された前記供給ノズルの外筒が有する外周リング状通路から前記気体を吐き出し、前記液体を吐き出す前記内筒の出口部には、前記内筒の外周面側が前記内筒の内周面側に比べて、前記内筒の中心軸に平行に突出するように傾斜する傾斜面が形成され、前記傾斜面の形成角度は、前記内筒の中心軸に対して直交する方向に対して、0度<形成角度θ≦30度の範囲で形成されており、前記内筒の前記出口部から吐き出された前記液体が前記傾斜面において拡散されることを特徴とする。
【発明の効果】
【0013】
本発明によれば、低流速の気体で高い霧化効率を得て、微細な電気配線を有するデバイスに対してダメージを与えず、気体使用量を削減できる基板処理装置および基板処理方法を提供することができる。
【発明を実施するための最良の形態】
【0014】
本発明の実施形態について図面を参照して説明する。
【0015】
(第1実施形態)
図1は、本発明の基板処理装置の好ましい第1実施形態を示している。
【0016】
図1に示すように、基板処理装置10は、一例として基板Wを洗浄する装置として用いられ、基板保持部11と、供給ノズル30の操作部12と、ダウンフロー用のフィルタ付きファン13と、カップ14と、供給ノズル30と、処理室16を有する。
【0017】
図1に示す基板保持部11は、円板のベース部材17と、回転軸18と、モータ19を有しており、ベース部材17の上には処理対象物である基板Wが着脱可能に固定されている。この基板Wは、例えば半導体ウエハであり、基板Wの面には微細化された電気配線が形成されている。処理室16内には、カップ14と供給ノズル30とベース部材17と回転軸18が収容されている。モータ19が制御部100の指令により動作することで、ベース部材17はR方向に連続回転することができる。
【0018】
図1に示す供給ノズル30は、基板Wの上部に配置されており、供給ノズル30は、操作部12の動作により、Z方向(上下方向)とX方向(基板の半径方向)に移動可能である。
【0019】
図2は、図1に示す供給ノズル30の好ましい構造例を示す縦断面図である。この供給ノズル30は、2流体ノズルである。
【0020】
図2に示すように、供給ノズル30は、内筒31と、この内筒31の周囲に配置される外筒33を有している。
【0021】
図2に示すように、液体供給部22が、配管23とバルブ20を介して、供給ノズル30の内筒31の中央通路32に接続されている。また、気体供給部24が、配管25とバルブ21を介して、供給ノズル30の外筒33が有する外周リング状通路34に接続されている。液体供給部22は、純水等の液体48を内筒31の中央通路32に供給する。気体供給部24は、Nガス等の気体49を外筒33の外周リング状通路34に供給する。バルブ20とバルブ21は、制御部100の指令により開閉量を制御できる。
【0022】
図2に示す供給ノズル30は、霧吹き原理を利用して、気体49の気流が発生する負圧で液体48を霧化させるものである。気体の流速が速いと液滴の粒径が大きくなるが、液滴の粒径が大きくなってしまうと、基板Wにおける微細化された電気配線には洗浄時のダメージが発生する要因となるので、気体49の流速をできるだけ抑えてかつ液体48の霧化効率の良いノズル形状にすることが望ましい。
【0023】
そこで、供給ノズル30は、流体力学の2つの原理である液体の拡散によるキャビテーションと流体剥離現象を融合して、液体48と気体49がお互いに霧化効率を向上させるものである。
【0024】
まず、図2を参照して、供給ノズル30の内筒31の形状について説明する。
【0025】
図2に示す内筒31は、本体部41と、絞り部42と、出口部43を有している。この本体部41は、内筒31の中心軸CLに沿って長さLだけ形成されており、本体部41は、均一の肉厚を有しており、均一の内径Dを有する。
【0026】
絞り部42は、本体部41の下部に連続して形成されており、絞り部42は、内筒31の中心軸CLに沿って長さL1だけ形成されている。絞り部42の内径D1は、本体部41の内径Dに比べて小さく設定されていることで、中央通路32の流路を絞っている。
【0027】
出口部43は、絞り部42の下部に形成されている。出口部43は、絞り部42を通過した液体48が開放される形状になっており、出口部43は中心軸CLを中心として全周囲にわたって傾斜面44を有している。この傾斜面44は、面取り部ともいい、出口部43において液体48を拡散するために、内筒31の外周面45側が内筒31の内周面71側に比べて、内筒31の中心軸CLに平行に突出するように傾斜されている。すなわち、傾斜面44は、外周面45側よりも内周面71側が窪むように形成されており、傾斜面44は、中心軸CLと直交する方向Tに対して形成角度θで傾けて形成されている。内筒31の本体部41と絞り部42は、中央通路32を形成している。
【0028】
この出口部43の傾斜面44の形成角度θは、0度<形成角度θ≦30度の範囲に設定されている。もし、この形成角度θが0度であると、液体48が絞り部42を通過して出口部43から吐き出された場合に、液体48を拡散する効率が悪い。
【0029】
また、形成角度θが30度を超えると、気流は円筒状に流れ、傾斜面44の外側端部を超えたところで、剥離現象を起こして負圧になる。ミスト液流は中央通路32を出えた後に、直進しようとするが、傾斜面44のテーパー角度が大きいと、テーパーに沿いながら拡散していく。気流とミスト液流の圧力差が大きいと、ミストは効率的に分断され、粒子径が細くなる。形成角度(テーパー角度)の依存性を調べるために、流体解析を行い、タグチメソッドを使って適性条件を求めた結果、流体解析によると、形成角度θが0度〜30度の間に霧化効率の高い設計デザインが存在することが判った。ここで、タグチメソッドとは、品質特性のばらつきが少ない製品を開発設計段階で作り込むための統計的手法である。
【0030】
さらに、より好ましくは、出口部43の傾斜面44の形成角度θは、15度≦形成角度θ≦30度の範囲である。これにより、負圧が35%以上向上できる。
【0031】
一方、図2に示す外筒33は、軸方向に沿って同じ肉厚を有しており、同じ内径D2を有する。外筒33の中心軸CL方向の長さL2は、内筒31の本体部41の中心軸CL方向の長さLに比べて大きく設定されており、外筒33の下端部47は、絞り部42まで達している。
【0032】
内筒31は、曲面形状部50を有しており、この曲面形状部50は、外筒33の下端部47の出口部51から下方向Z1に向けて徐々に先細りに絞り込まれるように形成されている。曲面形状部50は、中心軸CLに向けて絞るようにして形成されており、曲面形状部50の下端部分の外形寸法dは、内筒31の外形D3に比べて小さくなっている。
【0033】
図2に示す内筒31の外周面45と外筒33の内周面46は、外周リング状通路34を形成している。内筒31の中央通路32と外筒33の外周リング状通路34とは、中心軸CLを中心として同心状に形成されている。
【0034】
図2に示すように、内筒31の中央通路32には、液体の一例である液体48が導入され、外筒33の外周リング状通路34には、気体の一例である気体49が導入される。
【0035】
出口部43は傾斜面44が形成されているので開放された形状になっている。中央通路32を通過した液体48が出口部43から下方向Z1に放出される時に、矢印R1で示すように、液の拡散によるキャビテーション48Hが発生して、液体48自体も液体48の霧化現象に貢献する。このため、低流速の気体49であっても液体48の高い霧化効率を達成でき、気体の使用量を削減できる。
【0036】
しかも、中央通路32には、絞り部42が形成されており、中央通路32の絞り部2を通過した純水48は絞られた後に、出口部43の傾斜面44において、液の拡散によるキャビテーション48Hがさらに効率良く発生できる。このため、気体49が低流速であっても液体48の高い霧化効率を達成でき、さらに気体49の使用量を削減できる。
【0037】
一方、外筒33の出口部51には、内筒31の曲面形状部50を有している。この曲面形状部50は、内筒31の本体部41に比べて、中心軸CLに向けて絞り込んだ形状に形成され、先細り形状になっている。この曲面形状部50が形成されていることにより、液体48と気体49との混合部では、気体49が矢印Sで示すように負圧領域である剥離領域52を形成して、流体剥離現象を引き起こすことで負圧を発生させて、液体48の霧化効率を上げることができる。これにより、気体を高速流速で流して負圧を発生する必要がないので、霧化の粒径が大きくなるのを防いで基板Wの微細化された電気配線にダメージを与えずに、基板Wを洗浄することができる。
【0038】
(第2実施形態)
次に、図3と図4を参照して、本発明の第2実施形態を説明する。
【0039】
なお、図3と図4に示す第2実施形態では、供給ノズル30Bの形状が、図2に示す供給ノズル30の形状に比べて異なるが、この供給ノズル30が装着される基板処理装置10Bの構造は、図1に示す基板処理装置10の構造と、実質的に同じであるので、図1における説明を援用する。
【0040】
図4に示す供給ノズル30Bは、2流体ノズルであり、内筒131と、この内筒131の周囲に配置される外筒133を有している。
【0041】
図4に示すように、液体供給部22が、配管23とバルブ20を介して、供給ノズル30Bの内筒131の中央通路132に接続されている。また、気体供給部24が、配管25とバルブ21を介して、供給ノズル30Bの外筒133が有する外周リング状通路134に接続されている。液体供給部22は、純水等の液体48を内筒131の中央通路132に供給する。気体供給部24は、Nガス等の気体49を外周リング状通路134に供給する。
【0042】
図4に示す供給ノズル30Bは、霧吹き原理を利用して、気体49の気流が発生する負圧で液体を霧化させるものである。気体の流速が速いと液滴の粒径が大きくなるが、液滴の粒径が大きくなってしまうと、基板Wの洗浄時のダメージが発生する要因となるので、気体の流速をできるだけ抑えてかつ液体の霧化効率の良いノズル形状にすることが望ましい。
【0043】
供給ノズル30Bは、流体力学の2つの原理である拡散によるキャビテーションと、流体の剥離現象を融合して、液体と気体がお互いに霧化効率を向上させるものである。
【0044】
まず、図4を参照して、供給ノズル30Bの内筒131の形状について説明する。
【0045】
内筒131は、出口部143を有し、内筒131の中心軸CLに沿って長さL4だけ形成されており、均一の肉厚を有しており、均一の内径D4を有する。
【0046】
出口部143は、中心軸CLを中心として全周囲にわたって傾斜面144を有している。この傾斜面144は、面取り部ともいい、中心軸CLと直交する方向Tに対して形成角度θで傾けて形成されている。出口部143において液体48を拡散するために、内筒131の外周面145側が内筒31の内周面171側に比べて、内筒131の中心軸CLに平行に突出するように傾斜されている。すなわち、傾斜面144は、外周面145側よりも内周面171側が窪むように形成されており、傾斜面144は、中心軸CLと直交する方向Tに対して形成角度θで傾けて形成されている。
【0047】
この出口部143の傾斜面144の形成角度θは、0度<形成角度θ≦30度の範囲に設定されている。もし、この形成角度θが0度であると、液体48が絞り部42を通過して出口部43から吐き出された場合に、拡散する効率が悪い。
【0048】
また、形成角度θが30度を超えると、気流は円筒状に流れ、傾斜面44の外側端部を超えたところで、剥離現象を起こして負圧になる。ミスト液流は中央通路32を出えた後に直進しようとするが、傾斜面144のテーパー角度が大きいと、テーパーに沿いながら拡散していく。気流とミスト液流の圧力差が大きいと、ミストは効率的に分断され、粒子径が細くなる。形成角度(テーパー角度)の依存性を調べるために、流体解析を行い、タグチメソッドを使って適性条件を求めた結果、流体解析によると、形成角度θが0度〜30度の間に霧化効率の高い設計デザインが存在することが判った。
【0049】
さらに、より好ましくは、出口部143の傾斜面144の形成角度θは、15度≦形成角度θ≦30度の範囲である。これにより、負圧が35%以上向上できる。
【0050】
一方、図4に示す外筒133は、軸方向に沿って同じ肉厚を有しており、同じ内径D5を有する。外筒133の中心軸CL方向の長さL5は、内筒131の中心軸CL方向の長さL4に比べて短く設定されており、外筒133の下端部147は、傾斜面144付近にまで達している。
【0051】
内筒131の外周面145と外筒133の内周面146は、外周リング状通路134を形成している。内筒131の中央通路132と外筒133の外周リング状通路134とは、中心軸CLを中心として同心状に形成されている。
【0052】
図4に示すように、内筒131の中央通路132には、液体48が導入され、外筒133の外周リング状通路134には、気体49が導入される。
【0053】
内筒31の出口部143は形成角度θで開放された傾斜面144となっているので、中央通路132を通過した純水48が出口部143から下方向Z1に放出される時に、矢印R3で示すように、液の拡散による拡散キャビテーション48Hが発生して、純水48自体も純水48の霧化現象に貢献する。このため、気体が低流速であっても液体の高い霧化効率を達成でき、気体の使用量を削減できる。
【0054】
一方、外筒133の出口部151における液体48と気体49との混合部では、気体49が矢印S4で示すように負圧領域である剥離領域152を形成して、流体剥離現象を引き起こして負圧を発生させるので、液体の霧化効率を上げることができる。これにより、気体を高速流速で流して負圧を発生する必要がないので、霧化の粒径が大きくなるのを防いで基板Wの微細化された電気配線にダメージを与えずに、基板Wを洗浄することができる。
【0055】
ところで、空気抵抗を受ける物体の運動方程式によると、
1) 速度の遅い物体の場合には、
空気抵抗F=k(比例定数)・R(粒径)・V(速度)
であるが、
2) 速度の速い物体の場合には、
空気抵抗F=k1(比例定数)・R・V
である。
【0056】
上述した供給ノズル30,30Bのような2流体ノズルの場合には、速度の速い物体の場合が適用され、抵抗力が質量mの物体移動の減速に作用するとして表現すると、
空気抵抗F=m・α、 質量m∝R
として、上記2)式を整理すると、速度V∝√Rが成り立つ。
【0057】
例えば、粒径が25μmの時に、流速120m/secとして、粒径と流速の相関グラフを作ると、図5に示す粒径/流速の相関例を示す図である。縦軸には流速(m/sec)を示し、横軸には粒子径(μm)を示している。
【0058】
本発明の基板処理装置は、気体と液体を混合させて液体を処理対象物である基板に吐き出すことで基板を処理する基板処理装置であって、基板に対して液体を吐き出す中央通路を有する内筒と、内筒の周囲に配置されて気体を吐き出す外周リング状通路を有する外筒と、を有する供給ノズルを備え、液体を吐き出す内筒の出口部には、出口部において液体を拡散するために、内筒の外周面側が内筒の内周面側に比べて、内筒の中心軸に平行に突出するように傾斜する傾斜面が形成されており、傾斜面の形成角度は、内筒の中心軸に対して直交する方向に対して、0度<形成角度θ≦30度の範囲で形成されている。これにより、内筒の中央通路を通過した液体が、出口部から放出される時に、液の拡散によるキャビテーションが発生して、液体自体も液体の霧化現象に貢献する。このため、低流速の気体であっても液体の高い霧化効率を達成でき、気体の使用量を削減できる。
【0059】
また、内筒の中央通路には、液体の通過を絞るための絞り部を有する。これにより、中央通路の絞り部を通過した液体は絞られた後に、出口部の傾斜面において、液の拡散によるキャビテーションがさらに効率良く発生できる。このため、気体が低流速であっても高い霧化効率を達成でき、さらに気体の使用量を削減できる。
【0060】
さらに、内筒の出口部の外周面には、中心軸に向けて絞って形成された曲面形状部を有する。これにより、液体と気体との混合部では、気体が剥離領域を形成して、流体の剥離現象を引き起こすことで負圧を発生させて、液体の霧化効率を上げることができる。気体を高速流速で流して負圧を発生する必要がないので、霧化の粒径が大きくなるのを防いで基板の微細化された電気配線にダメージを与えずに、基板を洗浄することができる。
【0061】
また、内筒は、中心軸に沿って同じ内径を有する中央通路を有する。これにより、内筒の形状が単純化でき、内筒の中央通路を通過した液体が、出口部から放出される時に、液の拡散によるキャビテーションが発生して、液体自体も液体の霧化現象に貢献する。このため、気体が低流速であっても高い霧化効率を達成でき、気体の使用量を削減できる。
【0062】
また、本発明の基板処理方法では、気体と液体を混合させて液体を処理対象物である基板に吐き出すことで基板を処理する基板処理方法であって、供給ノズルの内筒の中央通路を通って基板に対して液体を吐き出し、内筒の周囲に配置された供給ノズルの外筒が有する外周リング状通路から気体を吐き出し、液体を吐き出す内筒の出口部には、内筒の外周面側が内筒の内周面側に比べて、内筒の中心軸に平行に突出するように傾斜する傾斜面が形成され、傾斜面の形成角度は、内筒の中心軸に対して直交する方向に対して、0度<形成角度θ≦30度の範囲で形成されており、内筒の出口部から吐き出された液体が傾斜面において拡散される。これにより、内筒の中央通路を通過した液体が、出口部から放出される時に、液の拡散によるキャビテーションが発生して、液体自体も液体の霧化現象に貢献する。このため、低流速の気体であっても液体の高い霧化効率を達成でき、微細な電気配線を有するデバイスに対してダメージを与えず、気体の使用量を削減できる。
【0063】
本発明では、液体としては純水に限らず他の種類のものを用いることができ、気体としては、窒素ガスなどの不活性ガスに限らず他の種類のものを用いることができる。
【0064】
さらに、本発明の実施の形態に開示されている複数の構成要素を適宜組み合わせることにより種々の発明を形成できる。例えば、本発明の実施の形態に示される全構成要素から幾つかの構成要素を削除してもよい。更に、異なる実施の形態に亘る構成要素を適宜組み合わせてもよい。
【図面の簡単な説明】
【0065】
【図1】本発明の基板処理装置の好ましい第1実施形態を示す図である。
【図2】図1における供給ノズルの好ましい構造例を示す縦断面図である。
【図3】本発明の基板処理装置の好ましい第2実施形態を示す図である。
【図4】図2における供給ノズルの好ましい構造例を示す縦断面図である。
【図5】粒径/流速の相関例を示す図である。
【図6】液滴の衝突過程の例を示す図である。
【符号の説明】
【0066】
10 基板処理装置
11 基板保持部
12 供給ノズルの操作部
22 液体供給部
24 気体供給部
30,30B 供給ノズル(2流体ノズル)
31 内筒
32 中央通路
33 外筒
34 外周リング状通路
41 内筒の本体部
42 内筒の絞り部
43 出口部
44 傾斜面
48 液体
49 気体
131 内筒
132 中央通路
133 外筒
134 外周リング状通路
144 傾斜面
W 基板

【特許請求の範囲】
【請求項1】
気体と液体を混合させて前記液体を処理対象物である基板に吐き出すことで基板を処理する基板処理装置であって、
前記基板に対して前記液体を吐き出す中央通路を有する内筒と、
前記内筒の周囲に配置されて前記気体を吐き出す外周リング状通路を有する外筒と、を有する供給ノズルを備え、
前記液体を吐き出す前記内筒の出口部には、前記出口部において前記液体を拡散するために、前記内筒の外周面側が前記内筒の内周面側に比べて、前記内筒の中心軸に平行に突出するように傾斜する傾斜面が形成されており、
前記傾斜面の形成角度は、前記内筒の中心軸に対して直交する方向に対して、0度<形成角度θ≦30度の範囲で形成されていることを特徴とする基板処理装置。
【請求項2】
前記内筒の前記中央通路には、前記液体の通過を絞るための絞り部を有することを特徴とする請求項1に記載の基板処理装置。
【請求項3】
前記内筒の前記出口部の外周面には、前記中心軸に向けて絞って形成された曲面形状部を有することを特徴とする請求項2に記載の基板処理装置。
【請求項4】
前記内筒は、前記中心軸に沿って同じ内径を有する前記中央通路を有することを特徴とする請求項1に記載の基板処理装置。
【請求項5】
気体と液体を混合させて前記液体を処理対象物である基板に吐き出すことで前記基板を処理する基板処理方法であって、
供給ノズルの内筒の中央通路を通って前記基板に対して前記液体を吐き出し、
前記内筒の周囲に配置された前記供給ノズルの外筒が有する外周リング状通路から前記気体を吐き出し、
前記液体を吐き出す前記内筒の出口部には、前記内筒の外周面側が前記内筒の内周面側に比べて、前記内筒の中心軸に平行に突出するように傾斜する傾斜面が形成され、前記傾斜面の形成角度は、前記内筒の中心軸に対して直交する方向に対して、0度<形成角度θ≦30度の範囲で形成されており、
前記内筒の前記出口部から吐き出された前記液体が前記傾斜面において拡散されることを特徴とする基板処理方法。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【図6】
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【公開番号】特開2010−73849(P2010−73849A)
【公開日】平成22年4月2日(2010.4.2)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2008−238948(P2008−238948)
【出願日】平成20年9月18日(2008.9.18)
【出願人】(000002428)芝浦メカトロニクス株式会社 (907)
【Fターム(参考)】