説明

基板処理装置及び半導体装置の製造方法

【課題】基板温度の上昇を抑えサーマルバジェットを抑制しつつ、基板を均一に加熱することができる基板処理装置及び半導体装置の製造方法を提供する。
【解決手段】
基板を処理する処理室と、前記処理室内に設けられ基板を支持する基板支持部と、マイクロ波源から供給されたマイクロ波を処理室に輻射するマイクロ波輻射部を有し、前記マイクロ波輻射部は回転するよう構成され、前記基板支持部で支持された基板の処理面側からマイクロ波を供給するマイクロ波供給部と、前記マイクロ波供給部と前記基板支持部の間に設けた仕切りと、前記基板支持部に設けた冷却部と、各構成を制御する制御部とを備える基板処理装置。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、基板上にIC(Integrated Circuit)等の半導体装置を製造する基板処理技術に係り、特に、マイクロ波を用いて、半導体ウェハ(以下、ウェハという。)等の基板を処理し、半導体装置を製造する半導体製造装置や、基板を処理する基板処理装置、あるいは、半導体装置の製造方法に関する。
【背景技術】
【0002】
半導体製造工程の1つに基板(シリコンウェハやガラスなどをベースとする微細な電気回路のパターンが形成された被処理基板)の表面に所定の成膜処理を行うCVD(Chemical Vapor Deposition)工程がある。これは、気密な反応室に基板を装填し、室内に設けた加熱手段により基板を加熱し、成膜ガスを基板上へ供給しながら化学反応を起こし、基板上に設けた微細な電気回路のパターン上へ薄膜を均一に形成するものである。このようなCVD工程により、例えば、成膜原料に有機化学材料を使って、誘電率の高い絶縁膜である高誘電体(High−k)膜として、酸化ハフニウム(HfO)膜、酸化ジルコニウム(ZrO)膜等を形成することができる。
【0003】
形成されたHigh−k膜を安定させるため、基板をアニール処理する必要があるが、加熱する上でサーマルバジェットが蓄積されると、熱に弱い材質を基板に形成している場合など、その材料に悪影響を及ぼす可能性がある。
【0004】
下記の特許文献には、成膜工程では基板上にハフニウムを含む薄膜を形成し、改質工程ではアルゴンラジカルを基板上に供給して、成膜工程において形成した膜中の不純物元素を除去する技術が開示されている。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0005】
【特許文献1】特開2004−296820号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0006】
本発明の目的は、上述した課題を解決し、基板温度の上昇を抑えサーマルバジェットを抑制しつつ、基板を均一に加熱することができる基板処理装置及び半導体装置の製造方法を提供するものである。
【課題を解決するための手段】
【0007】
本発明では、マイクロ波を用いて基板上の誘電体を加熱して改質し、さらに、基板を冷却することにより、基板のサーマルバジェットを抑制するものである。本発明に係る基板処理装置の代表的な構成は、次のとおりである。
基板を処理する処理室と、前記処理室内に設けられ基板を支持する基板支持部と、マイクロ波源から供給されたマイクロ波を処理室に輻射するマイクロ波輻射部を有し、前記マイクロ波輻射部は回転するよう構成され、前記基板支持部で支持された基板の処理面側からマイクロ波を供給するマイクロ波供給部と、前記マイクロ波供給部と前記基板支持部の間に設けた仕切りと、前記基板支持部に設けた冷却部と、各構成を制御する制御部とを備える基板処理装置。
【0008】
更には、基板を処理する処理室と、前記処理室内に設けられ基板を支持する基板支持部と、マイクロ波源から供給されたマイクロ波を処理室に輻射するマイクロ波輻射部を有し、前記マイクロ波輻射部は回転するよう構成され、前記基板支持部で支持された基板の処理面側からマイクロ波を供給するマイクロ波供給部と、前記マイクロ波供給部と前記基板支持部の間に設けた仕切りと、前記基板支持部に設けた冷却部と、前記処理室に不活性ガスを供給する不活性ガス供給部と、各構成を制御する制御部とを備える基板処理装置を用いた半導体装置の製造方法であって、前記基板支持部に基板を載置した後、前記不活性ガス供給部から不活性ガスを供給する不活性ガス供給工程と、前記不活性ガス供給工程の後、前記マイクロ波輻射部を回転させながら、マイクロ波を処理室に供給するマイクロ波供給工程と、マイクロ波供給工程の後、マイクロ波の供給を停止するマイクロ波供給停止工程とを有する半導体装置の製造方法。
【発明の効果】
【0009】
上記のように基板処理装置や半導体装置の製造方法を構成すると、基板温度の上昇を抑えサーマルバジェットを抑制しつつ、基板を加熱することができる。
【図面の簡単な説明】
【0010】
【図1】本発明の実施形態に係る基板処理装置の垂直断面図である。
【図2】本発明の実施形態に係るスロット式アンテナの図である。
【図3】本発明の実施形態に係る基板処理工程のフロー図である。
【図4】本発明の実施形態に係る基板処理装置の制御構成を示す図である。
【発明を実施するための形態】
【0011】
HfO膜などの高誘電体材料は、有機材料に起因するCH、OHなどの不純物が数%と多量に含まれているため、そのままでは、電気的絶縁性が不十分である。このような薄膜の電気的絶縁性、およびその安定性を確保するため、HfO膜を酸素(O2)や窒素(N2)雰囲気中で650℃〜800℃前後の高速アニール処理を施すことにより、炭素(C)や水素(H)等の不純物を離脱させて緻密化し安定した絶縁体薄膜に改質しようとする試みが行われている。この緻密化は、結晶化まではさせないが、アモルファス状態の平均原子間距離を縮めるために行なわれる。このような高速アニール処理では、HfO膜を改質処理するために、基板全体を高温に加熱することになる。
【0012】
一方、最近の半導体デバイスにおいては、微細化に伴い浅接合化が進んでおり、サーマルバジェット(熱履歴)を小さくすることが求められている。そのため、上述したHigh−k膜の形成工程においても、小さいサーマルバジェットで不純物を離脱させて緻密化することが求められている。
【0013】
また、High−k膜の高い誘電率特性を実現するために、特に立方晶あるいは正方晶状態の結晶化が求められている。これはHigh−k膜の比誘電率がその結晶構造に依存するためである。
【0014】
例えばDRAMのキャパシタの場合、下部電極であるチタン窒化膜の上にHigh−k膜を成膜することになるが、酸化剤の酸化能力不足やプロセス条件の不完全性、低温化要求などによってHigh−k膜を構成する全ての原料を完全に酸化ができないこと、及びHigh−k膜の比誘電率を向上させるために結晶化アニールを行う際に酸素が遊離してしまうことなどの理由により、High−k膜中に酸素が欠損したり、炭素(C)が残留してしまうなど膜中欠陥が発生してしまう場合がある。このような膜中欠陥を経路として電流が流れることによりキャパシタのリーク電流を増大させてしまったり、キャパシタが劣化するなどの不良現象が発生する。また、結晶化アニールの最適化が不十分で、High−k膜の結晶構造が十分に制御されていない場合、即ち立方晶あるいは正方晶状態の結晶状態でない場合、比較的低誘電率を持つ結晶相が支配的になることにより要求される比誘電率が実現できない、大きな結晶粒が発生することによるリーク電流の増大などの不具合が発生する。
【0015】
また、熱に弱いメタル材料を電気回路として用いた基板をアニールする場合が考えられる。アニール処理によって基板全体が加熱される場合、メタル材料も加熱されてしまい、メタル材料の酸化や膜剥がれなどが懸念される。更には、基板に注入された活性種が拡散される恐れもある。
以上の懸念事項を解決する装置及び方法について、以下に説明する。
【0016】
(第1実施形態)
本発明の第1実施形態に係る基板処理装置の構成について、図1を用いて説明する。図1は、本発明の第1実施形態に係る基板処理装置の垂直断面図である。基板処理装置100は、処理室10と搬送室(不図示)とマイクロ波供給部19とを備える。処理室10は、半導体基板としてのウェハ11を処理する。マイクロ波供給部19は、マイクロ波発生部20と導波路21と導波口22とを備える。
【0017】
<マイクロ波発生部>
マイクロ波発生部20は、例えば、固定周波数マイクロ波を発生する。マイクロ波発生部20としては、例えばマイクロトロン、クライストロン、ジャイロトロン等が用いられる。マイクロ波発生部20で発生したマイクロ波は、導波路21を介して、マイクロ波輻射部としての金属製のスロット式アンテナ23に設けられた導波口22から処理室10内に輻射される。導波路21には、導波路21内部の反射電力を少なくするマッチング機構26が設けられる。スロット式アンテナ23は回転機構24に接続され、制御部80が回転機構を制御することでスロット式アンテナ23を回転する。スロット式アンテナ23は、例えば図2のような形状とする。図2は、スロット式アンテナ23を下側(ウェハ側)から見た図である。導波口22はスロット状であり、複数設けている。スロット式アンテナ23を回転させることで、ウェハ11の表面側に均一にマイクロ波を照射することができる。
処理室10内に供給されたマイクロ波は、ウェハ11に向かって照射される。処理室10内のウェハ11に当たったマイクロ波はウェハ11に吸収され、ウェハ11はマイクロ波により誘電加熱される。
マイクロ波発生部20、導波路21、導波口22を有するスロット式アンテナ23、回転機構24、マッチング機構26でマイクロ波供給部19が構成される。
【0018】
<処理室>
処理室10を形成する処理容器18は、例えばアルミニウム(Al)やステンレス(SUS)など金属材料により構成されており、処理室10と外部とをマイクロ波的に遮蔽する構造となっている。
【0019】
<基板支持部>
処理室10内には、ウェハ11を支持する基板支持機構としての基板支持ピン13が設けられている。具体的には、ウェハ11は基板支持ピン13の上端で支持される。基板支持ピン13は、支持したウェハ11の中心と処理室10の中心とが垂直方向で略一致するように設けられている。
【0020】
基板支持ピン13は、例えば石英やセラミックス、サファイア、又はテフロン(登録商標)等、伝熱性が低く、電気的に絶縁性が良好な材質で形成される。このような材質とすることで、基板支持ピン13そのものが加熱されることを抑制し、更にはウェハ11から基板支持ピン13への熱逃げを抑制することができる。熱逃げを抑制することができるため、基板面内を均一に加熱することが可能となる。また、基板支持ピン13の加熱を防ぐことで、基板支持ピン13の熱変形を防ぐことができ、結果熱変形によるウェハ高さを一定にすることができるので、1スロット辺りのウェハ加熱を再現性良く加熱することが可能となる。
基板支持ピン13は、複数(本実施形態においては3本)で構成され、その上端でウェハ11を支持する。
【0021】
基板支持ピン13のそれぞれは台座14に搭載されている。台座14は図示しない位置制御機構を有しており、制御部80が位置制御機構を制御することで、上下に動くよう、更には特定の位置で基板支持ピンを停止するよう構成される。台座14を上下に動かすことで、基板支持ピン13も共動して上下に動かすことが可能となる。
【0022】
基板支持ピン13は、例えば基板支持台12の表面からウェハ11の距離を、マイクロ波の1/4波長(λ/4)、もしくはλ/4の奇数倍となるような位置にウェハを維持することができる。言い換えれば、基板支持ピン13の上端13aの基板載置面と基板支持台12の表面との距離をマイクロ波の1/4波長(λ/4)の位置、もしくはλ/4の奇数倍の距離とすることができる。このような距離とすることで、基板上部から基板を通り抜けたマイクロ波が基板支持台12表面にて反射され、再び基板表面に戻ってきた場合、基板の上部から入射されるマイクロ波と干渉し、マイクロ波電界を弱めることを回避することができる。言い換えれば、定在波の基板への影響を抑制することができる。
【0023】
また、基板支持ピン13は、スロット式アンテナ23の内、基板支持台12に対向する対向面と、基板との距離をマイクロ波の1/4波長(λ/4)、もしくはλ/4の奇数倍とするような位置にウェハを維持することができる。言い換えれば、該対向面と基板支持ピン13の上端13aの基板載置面との距離を、マイクロ波の1/4波長(λ/4)の位置、もしくはλ/4の奇数倍の距離とすることができる。このような距離とすることで、基板表面における高周波電界が最大になり、基板表面へマイクロ波エネルギーを効率よく入射することができる。
【0024】
基板支持ピン13の上端13aの下部であってウェハ11の下方には、基板冷却部である導電性の基板支持台12が設けられている。基板支持台12は、例えばアルミニウム(Al)や炭化シリコン(SiC)などの導電体により構成されている。基板支持台12は、上面から見た形がウェハ11の外径よりも大きい円形で、円盤状又は円柱状に形成されている。
【0025】
基板支持台12は導電体であるため、基板支持台12においてはマイクロ波の電位がゼロとなる。したがって、仮にウェハ11を基板支持台12に直接置いた場合、マイクロ波の電界強度が弱い状態となる。そこで、本実施形態では、基板支持ピン13を動かすことで、基板支持台12の表面からマイクロ波の1/4波長(λ/4)の位置、もしくはλ/4の奇数倍の位置にウェハ11を載置するようにする。ここでいう基板支持台12の表面とは、基板支持台12を構成する面の内、ウェハの裏面と対向する面を言う。λ/4の奇数倍の位置では電界が強いため、ウェハ11を効率よくマイクロ波で加熱することができる。本実施形態では、たとえば5.8GHzに固定したマイクロ波を使用し、マイクロ波の波長が51.7mmであるので、基板支持台12からウェハ11までの高さを12.9mmとしている。
更には、基板支持台12が導電体であるため、基板支持台12表面にてマイクロ波エネルギーを消費することないので、基板支持台12からの反射波においてもウェハ11を効率よく加熱することができる。
ここで、基板支持台12と基板支持ピン13とで、基板支持部が構成される。
【0026】
<冷却部>
基板支持台12内には、ウェハ11を冷却するための冷媒を流す冷媒流路31が設けられている。本実施形態では、冷媒として水が使用されるが、この冷媒は冷却チラーなど他の冷媒を用いても良い。冷媒流路31は、処理室10の外部において、冷媒流路31へ冷媒を供給する冷媒供給管32と、冷媒流路31から冷媒を排出する冷媒排出管36に接続され、矢印の方向に冷媒が流れるよう構成されている。冷媒供給管32には、下流から順に、冷媒供給管32を開閉する開閉バルブ33、冷媒流量を制御する流量制御装置34、冷媒源35が設けられている。開閉バルブ33と流量制御装置34は、制御部80と電気的に接続されており、制御部80により制御される。
冷媒流路31、冷媒供給菅32、開閉バルブ33、流量制御装置34、冷媒排出管36とで、冷却部30が構成される。
【0027】
<仕切り>
回転機構24は機構的な構造のため、更にはスロット式アンテナ23が金属製であるため、スロット式アンテナ23が回転する間、部品の接触や過加熱などを原因として、金属などが剥がれ落ち、ウェハの金属汚染に結びつくことが懸念される。更には、回転機構部が複雑な機構を有するため、処理室を気密な構造とすることが難しい。
そこで、基板支持台12とスロット式アンテナ23の間であって、更にはガス供給管52より高い位置に仕切り25を設ける。仕切り25は、処理容器18の内壁に接するように設けられ、処理室10を区画している。
仕切り25は、マイクロ波を透過する材質とする。言い換えれば、この材質は、マイクロ波の損失係数が小さい誘電体材質であって、例えば石英やセラミックスで構成される。損失係数を小さい材質とすることで、エネルギーの損失量が少ない状態のマイクロ波を、ウェハ11上へ照射することが可能となる。
【0028】
<温度検出器>
処理室10内のウェハ11の上方には、ウェハ11の温度を検出する温度検出器15が設けられている。温度検出器15には、例えば、赤外線センサを用いることができる。温度検出器15は、制御部80に電気的に接続されている。温度検出器15によって検出されたウェハ11の温度が、所定の温度よりも高い場合、制御部80は、ウェハ11の温度が所定の温度となるように、開閉バルブ33と流量制御装置34を制御して、冷媒流路31へ流す冷却水の流量を調節する。
【0029】
<ガス供給部>
仕切り25より低い位置であって処理室10の側壁には、例えば窒素(N2)等のガスを供給するガス供給管52が設けられている。ガス供給管52には、上流から順に、ガス供給源55、ガス流量を調整する流量制御装置54、ガス流路を開閉するバルブ53が設けられており、このバルブ53を開閉することで、処理室10内にガス供給管52からガスが供給、又は供給停止される。ガス供給管52から供給されるガスは、ウェハ11を冷却したり、パージガスとして処理室10内のガスや雰囲気を押し出したりするのに用いられる。
ガス供給源55とガス供給管52と流量制御装置54とバルブ53から、ガス供給部50が構成される。流量制御装置54とバルブ53は、制御部80と電気的に接続されており、制御部80により制御される。
【0030】
<ガス排出部>
図1に示すように、例えば直方体である処理容器18の下部であって処理室10の側壁には、処理室10内のガスを排気するガス排出管62が設けられている。ガス排出管62には、上流から順に、圧力調整バルブ63と、排気装置としての真空ポンプ64が設けられており、この圧力調整バルブ63の開度を調整することで、処理室10内の圧力が所定の値に調整される。
ガス排出管62と圧力調整バルブ63と真空ポンプ64とで、ガス排出部60が構成される。圧力調整バルブ63と真空ポンプ64は、制御部80と電気的に接続されており、制御部80により圧力調整制御される。
【0031】
<ウェハ搬送部>
図1に示すように、処理容器18の一側面には、処理室10の内外にウェハ11を搬送するためのウェハ搬送口71が設けられている。ウェハ搬送口71には、ゲートバルブ72が設けられており、ゲートバルブ駆動部73によりゲートバルブ72を開けることにより、処理室10内と搬送室内とが連通するように構成されている。
ウェハ搬送口71、ゲートバルブ72、ゲートバルブ駆動部73でウェハ搬送部が構成される。
搬送室内には、ウェハ11を搬送する搬送ロボット(不図示)が設けられている。搬送ロボットには、ウェハ11を搬送する際にウェハ11を支持する搬送アームが備えられている。ゲートバルブ72を開くことによって、搬送ロボットにより処理室10内と搬送室内との間で、ウェハ11を搬送することが可能なように構成されている。
【0032】
<制御部>
基板処理装置100は、この基板処理装置100の各構成部分の動作を制御する制御部80を備え、制御部80は、マイクロ波発生部20、ゲートバルブ駆動部73、搬送ロボット、流量制御装置54,34、バルブ53,33、圧力調整バルブ63等の各構成部の動作を制御する。
【0033】
次に、基板処理装置100における本実施形態の基板処理動作について説明する。図3は、本実施形態に係る基板処理工程のフロー図である。また、図4は、本実施形態に係る基板処理装置の制御構成を示す。また、本実施形態の基板処理は、半導体装置を製造する複数工程の中の一工程を構成するものである。なお、後述する各部の動作は、制御部80により制御される。
<基板搬入工程、ステップS10>
ウェハ11を処理室10に搬入する基板搬入工程において、まず、ゲートバルブ72を開き、処理室10と搬送室とを連通させる。次に、処理対象のウェハ11を、搬送ロボットにより、搬送室内から処理室10内へ搬入する。処理室10内に搬入されたウェハ11は、搬送ロボットにより基板支持ピン13の上端13aに載置され、基板支持ピン13に支持される。次に、搬送ロボットが処理室10内から搬送室内へ戻ると、ゲートバルブ72が閉じられる。
【0034】
<窒素ガス供給工程、ステップS11>
次に、処理室10内を窒素(N2)雰囲気に置換する。ウェハ11を搬入すると処理室10の外の大気雰囲気が巻き込まれるので、この大気雰囲気中の水分や酸素がプロセスに影響しないように処理室10内をN2雰囲気に置き換える。ガス排出管62から、真空ポンプ64により処理室10内のガス(雰囲気)を排出するとともに、ガス供給管52から、N2ガスを処理室10内に供給する。このとき、圧力調整バルブ63により処理室10内の圧力を所定の値、本実施形態ではプラズマが生成されない圧力である大気圧に調整する。仮に、処理室の圧力を大気圧よりかなり低い圧力でマイクロ波を供給した場合、処理室内部でプラズマ生成されてしまう。プラズマはマイクロ波を反射する性質があるので、マイクロ波の基板表面までへの進行を妨げてしまう。そこで、処理室内でのプラズマ生成を抑制するために、キャビティ内の圧力を大気圧以上にする必要性がある。
【0035】
次に、スロット式アンテナ23を回転する(ステップS12)。
【0036】
<加熱処理工程(マイクロ波供給開始)、ステップS13>
スロット式アンテナ23の回転速度が一定になったら、マイクロ波発生部20で発生させたマイクロ波を、導波口22から処理室10内に供給し、ウェハ11の表面側から照射する。このとき、基板支持台12の表面からマイクロ波の1/4波長(λ/4)、もしくはλ/4の奇数倍とするような位置(第一の位置)にウェハを維持する。マイクロ波の周波数は、1GHzから8GHzの内、所望の周波数に設定する。このマイクロ波照射により、ウェハ11表面上のHigh−k膜を100℃〜600℃に加熱し、High−k膜の改質処理、つまり、High−k膜からCやH等の不純物を離脱させて、緻密化し安定した絶縁体薄膜に改質する処理を行う。
High−k膜等の誘電体は、誘電率に応じてマイクロ波の吸収率が異なる。誘電率が高いほどマイクロ波を吸収しやすい。我々の研究によれば、ハイパワーのマイクロ波をウェハに照射し処理すると、ウェハ上の誘電体膜が加熱され改質されることがわかった。また、マイクロ波による加熱の特徴は、誘電率εと誘電正接tanδによる誘電加熱で、この物性値が異なる物質を同時に加熱すると、加熱されやすい物質、すなわち、誘電率が高い方の物質だけ選択的により高温に加熱できることが分かった。
【0037】
以下にHigh−k膜のアニールについて説明する。ウェハの基板材料であるシリコンに比べ、High−k膜は誘電率εが高い。例えば、シリコンの比誘電率εrは3.9であるが、High−k膜であるHfO膜の比誘電率εrは25、ZrO膜の比誘電率εrは35である。よって、High−k膜を成膜したウェハにマイクロ波を照射すると、High−k膜が選択的により高温に加熱される。なお、シリコンとHigh−k膜の温度差は熱伝達により緩和させる事は言うまでも無い。
【0038】
我々の研究によると、ハイパワーのマイクロ波を照射する方が膜の改質効果が大きい。ハイパワーのマイクロ波を照射すると、急速にHigh−k膜の温度を上昇させることができる。
これに対し、比較的低パワーのマイクロ波を長時間照射した場合は、改質プロセス中にウェハ全体の温度が高くなってしまう。時間が経過すると、シリコン自身がマイクロ波により誘電加熱されるのと、マイクロ波が照射されるウェハ表面のHigh−k膜からウェハ裏面側のシリコンへの熱伝導により、シリコンの温度も上昇してしまうからである。
ハイパワーのマイクロ波を照射する場合に膜の改質効果が大きい理由は、ウェハ全体が温度上昇し上限温度に達するまでの時間内に、誘電体を誘電加熱により高い温度まで加熱することができるためと考えられる。例えば、HfO膜の場合、改質時のウェハ温度を約400℃としたとしても、下地の温度はさらに上昇してしまうため、冷却して温度上昇を抑える必要がある。
【0039】
そこで、本実施形態では、マイクロ波を照射する(供給する)間、冷媒流路31に冷媒である冷却水を供給しておくことで、ウェハ11の温度上昇を抑制する。好ましくは、ウェハ11の温度が所定の温度となるように、開閉バルブ33と流量制御装置34を制御して、冷媒流路31へ流す冷却水の流量を調節する。このように、ウェハ11の処理温度を一定とすることにより、複数のウェハを処理した際のプロセス結果の再現性を向上することができる。
【0040】
また、加熱処理工程において、制御部80はバルブ53を開いて、処理室10内にガス供給管52からN2ガスを供給するとともに、圧力調整バルブ63により処理室10内の圧力を所定の値、本実施形態では大気圧に調整しつつ、ガス排出管62から処理室10内のN2ガスを排出する。このようにして、加熱処理工程において、処理室10内を所定の圧力値に維持する。本例では、周波数5.8GHzのマイクロ波をパワー1600W、処理室10内の圧力を大気圧として5分間、加熱処理を行った。なお、処理室10内に供給するN2ガスの流量を制御することで、ウェハ11の冷却を助長することもできる。
積極的にN2ガスの冷却効果を使う場合は、ガス供給管52を基板支持台12に設け、ウェハ11と基板支持台12の間にガスを流すことにより、ガスによる冷却効果向上を図ることもできる。このガスの流量を制御することにより、ウェハ11の温度制御を行うこともできる。
【0041】
なお、HfO2膜のようなHigh−k膜の場合、マイクロ波領域に効率的にエネルギーを吸収し、加熱に利用できる周波数帯域が存在する。これは、マイクロ波による電界を受けた際に発生し、高い誘電率の原因ともなっている分極現象のうち、配向分極による誘電分散のピークが存在する事、および結晶化によってイオン分極の共鳴型のピークが通常の赤外領域ではなくより低い周波数帯域に変化するためである。上記の理由により、特にHigh−k膜においてはマイクロ波の周波数を好適に選択する事により、効率よく加熱を行う事が可能となる。
【0042】
例えば、配向分極による誘電分散のピークは比較的ブロードな分散を示すため、数GHzのマイクロ波を使用すれば、High−k膜のような高い配向分極が容易な(すなわち分極の変位が大きな)材料を選択的に加熱することが可能となる。また、いわゆるミリ波以上の、より高いマイクロ波領域を用いた場合には、イオン分極を利用した加熱効果の有効活用も期待できる。
【0043】
更に、より効率的にHigh−k膜の加熱を実現しようとした場合は、以下の指針に従って好適な周波数帯を決定する事が有効である。すなわち、事前に当該High−k膜の誘電緩和の周波数特性を測定することである。まずHigh−k膜の交流電場・電磁場における誘電緩和の虚数項を測定する。すると対象となるHigh−k膜に特有のピークが得られる。このピークの周波数の1/2以上の周波数のマイクロ波を用いる事が本応用には有効である。
【0044】
ここで、マイクロ波の吸収率は、分布が急峻なDebye型緩和を仮定した場合、上記ピークの位置で飽和値の約半分、1/2の周波数でさらにその約半分となる事から、効率の良い加熱を考えた場合はピークの周波数の1/2以上の周波数のマイクロ波を用いる事が妥当であるといえる。また、High−k膜の緩和のピークは温度上昇とともに高周波側にシフトする傾向があるので、加熱時に温度上昇後の効率を高くとりたい場合は、少なくとも室温でのピーク周波数以上、望ましくは10倍程度以上を選択するのが有効である。また、高温での過加熱を防止したい場合は、逆にピーク周波数より低い周波数を選択し、温度上昇後の加熱効率を上昇前よりも低くするのが有効である。
【0045】
また本実施例ではN2ガスを使用しているが、プロセス的、安全性に問題がなければ、熱伝達率の高い他のガス、たとえば希釈HeガスなどをN2ガスに追加し、基板冷却効果を向上することもできる。
【0046】
基板冷却効果を向上する手法として、マイクロ波を照射している間、基板支持ピン13を下降し、ウェハ11と基板支持台12との距離を短くする第二の位置でウェハ11を維持しても良い。このときの距離は、例えば0.1mmから1.0mmとする。もしくは直接基板支持台12の表面に載置しても良い。ウェハ11と基板支持台12との距離が変わるため、マイクロ波による加熱効率性が落ちるものの、冷却効率が上がるためサーマルバジェット抑制効果が高い。この場合、サーマルバジェットがある程度低下された後、再び基板支持ピン13を上昇させ、マイクロ波の加熱効率の高い位置で、加熱を継続しても良い。
以上のようにして、所定時間、マイクロ波を供給して基板加熱処理を行った後、マイクロ波の供給を停止し(ステップS14)、スロット式アンテナ23の回転を停止する(ステップS15)。
【0047】
<冷却工程、ステップS16>
スロット式アンテナ23の回転を停止後、基板支持ピン13を下降し、ウェハ11と基板支持台12との距離が短い第三の位置に、ウェハ11を所定時間維持する。このときの距離は、例えば0.1mmから0.5mmとする。
このようにすることで、加熱されたウェハ11を急激に冷却することが可能となる。本来、加熱されたウェハを大気圧間で移動する場合、基板温度が降下するのに時間がかかり、生産性に支障が生じる恐れがある。そこで、急激に冷却し、温度降下時間を短縮することで、大気圧間を移動する場合でもスループットを高くすることが可能となる。
【0048】
<基板搬出工程、ステップS17>
加熱処理工程が終了すると、上述した基板搬入工程に示した手順とは逆の手順により、加熱処理したウェハ11を処理室10から搬送室内へ搬出する。本実施形態では、比較的低温でウェハ11を処理するので、ウェハ11を冷却するウェハ冷却時間が不要となり、スループットが向上する。
【0049】
上述の第1実施形態によれば、(1)基板のサーマルバジェットを抑制しつつ、基板表面の誘電体を改質することができる、(2)誘電率の高い材質を選択的に加熱することができる、(3)基板支持台を用いるので基板冷却部を構成することが容易となる、(4)スロット式アンテナの回転速度が一定になった後にマイクロ波で加熱することで、加熱を一定にすることができる、(5)基板の高さ位置におけるマイクロ波の電界を強くできるため、基板表面の誘電体を効率よく加熱することができる、(6)基板の冷却度合いをプロセスに応じて制御することができる、(7)基板の処理温度を一定とすることにより、複数の基板を処理した際のプロセス結果の再現性を向上することができる、(8)比較的低温で基板を処理するので、基板を冷却する基板冷却時間が不要となり、スループットが向上する、等の効果のうち、少なくとも1つを奏することができる。
【0050】
(第二実施形態)
続いて、第2実施形態を説明する。
第2実施形態における装置形態は第1実施形態とほぼ同様の装置/処理方法を用いており、加熱工程における第一の位置が異なる。
【0051】
第二の実施例においては、第一の位置を、スロット式アンテナ23の内、基板支持台12と対向する対向面からマイクロ波の1/4波長(λ/4)、もしくはλ/4の奇数倍とするような位置とし、ウェハを維持する。
このような位置とすることで、基板表面におけるマイクロ波の電界強度が最大になり、マイクロ波エネルギーをウェハ表面に効率良く照射することが可能となる。
【0052】
尚、本発明では、マイクロ波供給孔を設けたスロット式アンテナを回転させながらマイクロ波を供給しつつ、基板支持台にて基板を冷却していたが、それに限るものではなく、基板とマイクロ波を相対的に位置変更(例えば回転)することで均一にマイクロ波を供給しつつ基板を冷却する構造であれば良い。
そこで、基板支持台を回転しつつ、基板支持台の冷却機構によって基板を冷却することが考えられるが、基板支持台に冷却液を流しつつ回転するという構造は機構的に非常に複雑であり、且つコストがかさむ恐れがあるため、本件のスロット式アンテナのような、基板支持台以外の構成でマイクロ波供給孔と基板を相対的に移動させることが望ましい。
【0053】
本発明は、上述の実施形態に限定されるものではなく、その要旨を逸脱しない範囲で種々に変更が可能であることはいうまでもない。
上述の各実施形態では、ウェハに処理が施される場合について説明したが、処理対象はホトマスクやプリント配線基板、液晶パネル、コンパクトディスクおよび磁気ディスク等であってもよい。
【0054】
また、本実施例のような高誘電率膜を有するウェハのアニール処理(結晶化制御、不純物低減、欠損酸素補給)する場合について説明したが、それに限らず、ベェアシリコン基板に注入している不純物の活性化、Poly−Siの活性化及び結晶化形状制御、Polymerのキュア、Cu配線のGain size制御、Epi−Si或いはEpi−SiGeの欠陥修復、アモルファス或いはPoly構造を結晶化に応用。LEDプロセスにおいては、GaNの結晶性改善などに基板処理装置及び基板製造方法に適応することができる。
【0055】
また、本実施例ではマイクロ波周波数を固定して処理をしていたが、それに限らずマイクロ波の周波数が時間とともに変化(可変)する形態も可能である。その場合、基板支持台12の表面からウェハ11までの高さは、変化する周波数帯の代表周波数の波長から求めれば良い。たとえば5.8GHz〜7.0GHzまで変化する場合、代表周波数を変化する周波数帯のセンタ周波数とし、代表周波数6.4GHzの波長46mmより、基板支持台12の表面からウェハ11までの高さを11.5mmとすればよい。
更には、固定周波数の電源を複数設け、それぞれから異なる周波数のマイクロ波を切り替えて供給或いは同時に周波数が異なる複数のマイクロ波を供給し、処理するようにしてもよい。
【0056】
<付記1>
基板を処理する処理室と、前記処理室内に設けられ基板を支持する基板支持部と、前記基板支持部で支持された基板の表面側からマイクロ波を供給するマイクロ波供給部と、前記マイクロ波供給部と前記基板支持部の間に設けた仕切りと、前記基板支持部に設けた冷却部と、各構成を制御する制御部とを備える基板処理装置。
【0057】
<付記2>
前記仕切りは、マイクロ波透過材(石英)である付記1記載の基板処理装置。
【0058】
<付記3>
前記マイクロ波供給部は、マイクロ波を処理室に輻射するマイクロ波輻射部(スロット式アンテナ)を有し、前記マイクロ波輻射部は回転するよう構成される付記1記載の基板処理装置。
【0059】
<付記4>
前記基板支持部は、基板を支持する基板支持機構と基板支持台を有し、前記基板支持機構は、前記基板支持機構の上端と前記基板支持台の表面(基板と向かい合う面)との距離を、前記供給されるマイクロ波の1/4波長の奇数倍の距離に制御可能な付記1記載の基板処理装置。
【0060】
<付記5>
前記基板支持部は、基板を支持する基板支持機構を有し、前記アンテナの内、前記基板支持部に対向する対向面と、前記基板支持部との間の距離は、1/4波長の奇数倍の距離に制御可能な付記1記載の基板処理装置
【0061】
<付記6>
前記基板支持部は、基板を支持する基板支持台を有し、前記基板支持台は導電性の高い材質である付記1記載の基板処理装置。
【0062】
<付記7>
前記基板支持部は、基板を支持する基板支持機構を有し、前記基板支持機構低伝熱性で且つ絶縁性である付記1記載の基板処理装置。
【0063】
前記制御部は、前記マイクロ波供給部からマイクロ波を供給している間、前記基板支持機構の上端と前記基板支持台の表面との距離を、前記供給されるマイクロ波の1/4波長の奇数倍である第一の距離に制御し、前記マイクロ波の供給を停止した後、前記基板支持機構の上端と前記基板支持台の表面との距離を前記第一の距離より短くするよう制御する付記4記載の基板処理装置。
【0064】
前記制御部は、前記マイクロ波供給部からマイクロ波を供給している間、前記基板支持機構の上端と前記対向面との距離を、前記供給されるマイクロ波の1/4波長の奇数倍の距離である第一の距離に制御し、前記マイクロ波を供給した状態で、前記基板支持機構の上端と前記基板支持台の表面との距離を前記第一の距離より短くするよう制御する付記4記載の基板処理装置。
【0065】
基板を処理する処理室と、前記処理室内に設けられ基板を支持する基板支持部と、前記基板支持部で支持された基板の表面側からマイクロ波を供給するマイクロ波供給部と、前記マイクロ波供給部と前記基板支持部の間に設けた仕切りと、前記基板支持部に設けた冷却部と、各構成を制御する制御部とを備える基板処理装置であって、前記基板支持部に支持された基板を搬入する工程と、前記マイクロ波供給部からマイクロ波を供給する工程と、前記マイクロ波を供給する間、前記冷却部に冷却媒体を供給する工程と、を有する半導体装置の製造方法。
【0066】
<付記8>
基板を処理する処理室と、前記処理室内に設けられ基板を支持する基板支持部と、マイクロ波源から供給されたマイクロ波を処理室に輻射するマイクロ波輻射部(スロット式アンテナ)を有し、前記マイクロ波輻射部は回転するよう構成され、前記基板支持部で支持された基板の処理面側からマイクロ波を供給するマイクロ波供給部と、前記マイクロ波供給部と前記基板支持部の間に設けた仕切りと、前記基板支持部に設けた冷却部と、各構成を制御する制御部とを備える基板処理装置。これにより、マイクロ波輻射部が回転することで基板表面に形成された膜に対して、均一にマイクロ波を照射できるため、均一に加熱することが可能となる。
【0067】
<付記9>
前記基板支持部は、基板を支持する基板支持機構と基板支持台を有し、前記基板支持機構は、前記基板支持機構の上端と前記基板支持台の表面との距離を、前記供給されるマイクロ波の1/4波長の奇数倍の距離に制御可能な付記8記載の基板処理装置。これにより、マイクロ波のピーク(波形の腹の位置)に基板を位置することができるので、加熱効率が良い。加熱効率が良いと、High−k膜からの熱伝導により他の膜も加熱されてしまうことが考えられるが、冷却部を有する導電製の基板支持台を基板の下に置くことで、High−k膜以外の膜の加熱を抑制できる。
【0068】
<付記10>
前記基板支持部は、基板を支持する基板支持機構を有し、前記マイクロ波輻射部の内、前記基板支持部に対向する対向面と、前記基板支持部との間の距離は、1/4波長の奇数倍の距離に制御可能な付記8記載の基板処理装置。これにより、マイクロ波のピーク(波形の腹の位置)に基板を位置することができるので、加熱効率が良い。特に、マイクロ波の直接波が基板に照射されるため、減衰されていないマイクロ波が供給され、結果効率よく加熱することができる。
【0069】
<付記11>
前記基板支持部は、基板を支持する基板支持台を有し、前記基板支持台は導電性の高い材質である付記8記載の基板処理装置。これにより、高い冷却効果を得られる。
【0070】
<付記12>
前記基板支持部は、基板を支持する基板支持機構を有し、前記基板支持機構は低伝熱性で且つ絶縁性である付記8記載の基板処理装置。低伝熱性材質とすることで基板支持ピンからの熱逃げを防止し、その結果、均一に加熱することができる。
【0071】
<付記13>
前記制御部は、前記マイクロ波供給部からマイクロ波を供給している間、前記基板支持機構の上端と前記基板支持台の表面との距離を、前記供給されるマイクロ波の1/4波長の奇数倍である第一の距離に制御し、前記マイクロ波の供給を停止した後、前記基板支持機構の上端と前記基板支持台の表面との距離を前記第一の距離より短くするよう制御する付記9記載の基板処理装置。これにより、加熱されたウェハを急激に冷却することが可能となる。本来、加熱されたウェハを大気圧間で移動する場合、基板温度が降下するのに時間がかかり、生産性に支障が生じる恐れがある。そこで、急激に冷却し、温度降下時間を短縮することで、大気圧間を移動する場合でもスループットを高くすることができる。
【0072】
<付記14>
前記制御部は、前記マイクロ波供給部からマイクロ波を供給している間、前記基板支持機構の上端と前記基板支持台の表面との距離を、前記供給されるマイクロ波の1/4波長の奇数倍の距離である第一の距離に制御し、前記マイクロ波を供給した状態で、前記基板支持機構の上端と前記基板支持台の表面との距離を前記第一の距離より短くするよう制御する付記9記載の基板処理装置。これにより、冷却効率が上がるためサーマルバジェット抑制効果が高くなる。
【0073】
<付記15>
基板を処理する処理室と、前記処理室内に設けられ基板を支持する基板支持部と、マイクロ波源から供給されたマイクロ波を処理室に輻射するマイクロ波輻射部(スロット式アンテナ)を有し、前記マイクロ波輻射部は回転するよう構成され、前記基板支持部で支持された基板の処理面側からマイクロ波を供給するマイクロ波供給部と、前記マイクロ波供給部と前記基板支持部の間に設けた仕切りと、前記基板支持部に設けた冷却部と、前記処理室に不活性ガスを供給する不活性ガス供給部と、各構成を制御する制御部とを備える基板処理装置を用いた半導体装置の製造方法であって、前記基板支持部に基板を載置した後、前記不活性ガス供給部から不活性ガスを供給する不活性ガス供給工程と、前記不活性ガス供給工程の後、前記マイクロ波輻射部を回転させながら、マイクロ波を処理室に供給するマイクロ波供給工程と、マイクロ波供給工程の後、マイクロ波の供給を停止するマイクロ波供給停止工程とを有する半導体装置の製造方法。アンテナの回転速度が一定になった後、マイクロ波で加熱することで、加熱を一定にすることができる。
【0074】
<付記16>
前記基板支持部は基板を支持する基板支持機構と基板支持台を有し、前記マイクロ波供給部からマイクロ波を供給している間、前記基板支持機構の上端と前記基板支持台の表面との距離を、前記供給されるマイクロ波の1/4波長の奇数倍である第一の距離とし、前記マイクロ波の供給を停止した後、前記基板支持機構の上端と前記基板支持台の表面との距離を前記第一の距離より短くする付記15記載の半導体装置の製造方法。これにより、加熱されたウェハを急激に冷却することができる。本来、加熱されたウェハを大気圧間で移動する場合、基板温度が降下するのに時間がかかり、生産性に支障が生じる恐れがある。そこで、急激に冷却し、温度降下時間を短縮することで、大気圧間を移動する場合でもスループットを高くすることができる。
【符号の説明】
【0075】
10…処理室、11…ウェハ、12…基板支持台、13…基板支持ピン、15…温度検出器、18…処理容器、19…マイクロ波供給部、20…マイクロ波発生部、21…導波路、22…導波口、23…スロット式アンテナ(マイクロ波輻射部)、24…回転機構、25…仕切り、30…冷却部、31…冷媒流路、32…冷媒供給管、33…開閉バルブ、34…流量制御装置、35…冷媒源、36…冷媒排出管、50…ガス供給部、52…ガス供給管、53…開閉バルブ、54…流量制御装置、55…ガス供給源、60…ガス排出部、62…ガス排出管、63…圧力調整バルブ、64…真空ポンプ、71…ウェハ搬送口、72…ゲートバルブ、73…ゲートバルブ駆動部、80…制御部、100…基板処理装置。

【特許請求の範囲】
【請求項1】
基板を処理する処理室と、
前記処理室内に設けられ基板を支持する基板支持部と、
マイクロ波源から供給されたマイクロ波を処理室に輻射するマイクロ波輻射部を有し、前記マイクロ波輻射部は回転するよう構成され、前記基板支持部で支持された基板の処理面側からマイクロ波を供給するマイクロ波供給部と、
前記マイクロ波供給部と前記基板支持部の間に設けた仕切りと、
前記基板支持部に設けた冷却部と、
各構成を制御する制御部と
を備える基板処理装置。
【請求項2】
前記基板支持部は、基板を支持する基板支持機構と基板支持台を有し、前記基板支持機構は、前記基板支持機構の上端と前記基板支持台の表面との距離を、前記供給されるマイクロ波の1/4波長の奇数倍の距離に制御可能な請求項1記載の基板処理装置。
【請求項3】
前記基板支持部は、基板を支持する基板支持機構を有し、前記基板支持機構は低伝熱性で且つ絶縁性である請求項1記載の基板処理装置。
【請求項4】
基板を処理する処理室と、
前記処理室内に設けられ基板を支持する基板支持部と、
マイクロ波源から供給されたマイクロ波を処理室に輻射するマイクロ波輻射部を有し、前記マイクロ波輻射部は回転するよう構成され、前記基板支持部で支持された基板の処理面側からマイクロ波を供給するマイクロ波供給部と、
前記マイクロ波供給部と前記基板支持部の間に設けた仕切りと、
前記基板支持部に設けた冷却部と、
前記処理室に不活性ガスを供給する不活性ガス供給部と、
各構成を制御する制御部と
を備える基板処理装置を用いた半導体装置の製造方法であって、
前記基板支持部に基板を載置した後、前記不活性ガス供給部から不活性ガスを供給する不活性ガス供給工程と、
前記不活性ガス供給工程の後、前記マイクロ波輻射部を回転させながら、マイクロ波を処理室に供給するマイクロ波供給工程と、
マイクロ波供給工程の後、マイクロ波の供給を停止するマイクロ波供給停止工程と
を有する半導体装置の製造方法。
【請求項5】
前記基板支持部は基板を支持する基板支持機構と基板支持台を有し、
前記マイクロ波供給部からマイクロ波を供給している間、前記基板支持機構の上端と前記基板支持台の表面との距離を、前記供給されるマイクロ波の1/4波長の奇数倍である第一の距離とし、前記マイクロ波の供給を停止した後、前記基板支持機構の上端と前記基板支持台の表面との距離を前記第一の距離より短くする請求項4記載の半導体装置の製造方法。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【公開番号】特開2012−124456(P2012−124456A)
【公開日】平成24年6月28日(2012.6.28)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2011−151654(P2011−151654)
【出願日】平成23年7月8日(2011.7.8)
【出願人】(000001122)株式会社日立国際電気 (5,007)
【Fターム(参考)】