説明

基板処理装置

【課題】各プロセス室内の室内条件が維持された状態で、基板の搬入及び搬出が可能な複数のプロセス室を備えた基板処理装置を提供する。
【解決手段】基板処理装置1は、第1、第2及び第3の室内条件をそれぞれ有する第1、第2及び第3のプロセス室Pa,Pb,Pcと、第1、第2及び第3のプロセス室Pa,Pb,Pcを基板が通過するように基板を所定の方向に搬送可能な基板搬送機構としての浮上チャック40と、第1、第2及び第3のプロセス室Pa,Pb,Pcの周囲にそれぞれ配置され、搬送される基板W、及び該基板Wと対向する各シール面21a,21b,21cとの間の隙間を密封する第1及び第2の差動排気シール20a,20b,20cと、を備え、浮上チャック40は、基板Wと各シール面21a,21b,21cとの間の隙間が所定の微小隙間Δとなるように、搬送される基板Wの歪みを除去する歪み除去手段としても機能する。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、基板処理装置に関し、特に、基板製造時の複数の工程がそれぞれ行なわれる複数のプロセス室を備えた基板処理装置に関する。
【背景技術】
【0002】
従来、真空や特殊ガス雰囲気に維持したプロセス室内で、基板をステージに載置して移動させ、基板を加工処理することが行なわれている(例えば、特許文献1,2参照。)。特許文献1に記載の装置では、基板を載置するテーブルの移動軸を筐体に対して相対移動させる構成において、移動軸の両面と筐体との間に一対の差動排気シールを設け、テーブルの滑らかな動作を許容しつつ、プロセス室のシール性を図っている。
【0003】
特許文献2に記載の装置では、電子ビームが出射される中心領域の周囲に環状のアパーチャーを形成し、このアパーチャーからエアを吸引することで、該中心領域を高真空とする。この状態で、半導体ウェハー等のワークを移動させながら、電子ビームによりワークを加工する。
【0004】
また、真空チャンバーを塗布されたレジストの真空乾燥装置として適用することが種々考案されている(例えば、特許文献3〜5参照。)。特許文献3,4に記載の装置では、カラーフィルタ等のガラス基板に塗布されたレジストを乾燥させる際、真空チャンバーを真空乾燥装置として適用することが記載されている。特許文献3の真空乾燥装置では、プロセス室内を0.00001気圧〜0.1気圧とすることが記載されており、また、特許文献4の乾燥方法では、プロセス室内を6秒以上かけて100Torrとした後、さらに1Torr以下で乾燥させることが記載されている。特許文献5に記載の装置では、プリント基板にレジストを塗布した後、プリント基板をローラにて、ラビリンスシールを有する真空乾燥炉に搬送してレジストを乾燥させることが記載されている。
【特許文献1】特許4016418号公報
【特許文献2】特開昭60−71038号公報(第1、2図)
【特許文献3】特開2008−170972号公報
【特許文献4】特開2000−241623号公報
【特許文献5】特開2006−297241号公報(第11図)
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0005】
ところで、差動排気シールを備えた真空チャンバーにおいては、基板の処理時間を短縮するため、プロセス室内を所望の真空圧に保った状態のまま基板をプロセス室内に搬送して基板が処理されることが望ましい。しかしながら、自重や搬送条件等により基板に歪みが生じたまま基板が真空チャンバーに搬送されてくると、差動排気シールのシール面と基板と間の隙間にばらつきが生じてしまい、プロセス室内に所望の真空圧が得られない可能性がある。上述した特許文献1〜5では、上記課題について考慮されておらず、特許文献3〜5では、差動排気シールについて何ら記載されていない。
【0006】
また、工程毎に複数のプロセス室を備える基板処理装置は、各プロセス室の室内条件が維持されるように、各プロセス室を密封することが望ましい。さらに、スループットの観点からは、各プロセス室の密封性が保たれたまま、基板が複数のプロセス室に搬送されて処理されることが望ましい。
【0007】
本発明は、前述した課題に鑑みてなされたものであり、その目的は、各プロセス室内の室内条件が維持された状態で、基板の搬入及び搬出が可能な複数のプロセス室を備えた基板処理装置を提供することにある。
【課題を解決するための手段】
【0008】
本発明の上記目的は、下記の構成により達成される。
(1) 第1の室内条件を有する第1のプロセス室と、
第2の室内条件を有する第2のプロセス室と、
前記第1及び第2のプロセス室を基板が通過するように前記基板を所定の方向に搬送可能な基板搬送機構と、
前記第1及び第2のプロセス室の周囲にそれぞれ配置され、前記搬送される基板、及び該基板と対向する各シール面との間の隙間を密封する第1及び第2の差動排気シールと、
前記基板と前記各シール面との間の隙間が所定の微小隙間となるように、前記搬送される基板の歪みを除去する歪み除去手段と、
を備えることを特徴とする基板処理装置。
(2) 前記第1の室内条件として、室内の圧力が真空圧に設定され、
前記第2の室内条件として、前記第2のプロセス室内の温度は、前記第1のプロセス室内の温度より高温に設定されることを特徴とする(1)に記載の基板処理装置。
(3) 第2のプロセス室は、前記基板の反プロセス室側から加熱されることを特徴とする(1)または(2)に記載の基板処理装置。
(4) 前記第2の室内条件として、室内の雰囲気が前記基板、及び前記基板に塗布された物体と化学反応しない流体であることを特徴とする(2)または(3)に記載の基板処理装置。
(5) 第3の室内条件を有し、前記第2のプロセス室に対して前記第1のプロセス室と反対側で前記基板搬送機構によって前記基板が通過する第3のプロセス室をさらに備え、
前記基板が通過する前記3のプロセス室の周囲には、前記搬送される基板、及び該基板と対向するシール面との間の隙間を密封する第3の差動排気シールが配置されることを特徴とする(1)〜(4)のいずれかに記載の基板処理装置。
(6) 前記第3のプロセス室は、前記基板の反プロセス室側から冷却されることを特徴とする(5)に記載の基板処理装置。
(7) 前記第3の室内条件として、室内の雰囲気が前記基板、及び前記基板に塗布された物体と化学反応しない流体であることを特徴とする(5)または(6)に記載の基板処理装置。
(8) 第1の室内条件を有する第1のプロセス室と、
第2の室内条件を有する第2のプロセス室と、
前記第1及び第2のプロセス室を基板が通過するように前記基板を所定の方向に搬送可能な基板搬送機構と、
前記第1及び第2のプロセス室の周囲にそれぞれ配置され、前記搬送される基板、及び該基板と対向する各シール面との間の隙間を密封する第1及び第2の差動排気シールと、
前記基板と前記各シール面との間の隙間を所定の微小隙間に保つ隙間調整手段と、
を備えることを特徴とする基板処理装置。
(9) 前記隙間調整手段は、前記プロセス室毎に、前記プロセス室を構成する筐体を前記基板の表裏面に垂直な方向に移動可能な駆動機構を有することを特徴とする(8)に記載の基板処理装置。
(10) 前記第1の室内条件として、室内の圧力が真空圧に設定され、
前記第2の室内条件として、前記第2のプロセス室内の温度は、前記第1のプロセス室内の温度より高温に設定されることを特徴とする(8)または(9)に記載の基板処理装置。
(11) 第2のプロセス室は、前記基板の反プロセス室側から加熱されることを特徴とする(8)〜(10)のいずれかに記載の基板処理装置。
(12) 前記第2の室内条件として、室内の雰囲気が前記基板、及び前記基板に塗布された物体と化学反応しない流体であることを特徴とする(10)または(11)に記載の基板処理装置。
(13) 第3の室内条件を有し、前記第2のプロセス室に対して前記第1のプロセス室と反対側で前記基板搬送機構によって前記基板が通過する第3のプロセス室をさらに備え、
前記基板が通過する前記3のプロセス室の周囲には、前記搬送される基板、及び該基板と対向するシール面との間の隙間を密封する第3の差動排気シールが配置されることを特徴とする(8)〜(12)のいずれかに記載の基板処理装置。
(14) 前記第3のプロセス室は、前記基板の反プロセス室側から冷却されることを特徴とする(13)に記載の基板処理装置。
(15) 前記第3の室内条件として、室内の雰囲気が前記基板、及び前記基板に塗布された物体と化学反応しない流体であることを特徴とする(13)または(14)に記載の基板処理装置。
【発明の効果】
【0009】
本発明の基板処理装置によれば、第1及び第2のプロセス室を基板が通過するように前記基板を所定の方向に搬送可能な基板搬送機構と、第1及び第2のプロセス室の周囲にそれぞれ配置され、搬送される基板、及び該基板と対向する各シール面との間の隙間を密封する第1及び第2の差動排気シールと、基板と前記各シール面との間の隙間が所定の微小隙間となるように、前記搬送される基板の歪みを除去する歪み除去手段と、を備える。これにより、差動排気シールのシール面と基板との間の隙間のばらつきが抑えられ、各プロセス室内の室内条件が維持された状態で、基板の搬入及び搬出が可能となり、基板搬送機構によって第1及び第2のプロセス室を通過させながら各室で処理が可能となり、スループットを向上することができる。
また、本発明は、基板とシール面との間の隙間を所定の微小隙間に保つ隙間調整手段を備えることによっても、平行度の調整によって該隙間のばらつきが抑えられ、プロセス室内を所望の真空圧に維持した状態で、基板の搬入及び搬出を行うことができ、スループットを向上することができる。
なお、本発明の真空圧とは、大気圧(760Torr)より低い圧力を意図しており、例えば、フォトリソグラフィー工程のレジスト乾燥に使用される場合には、好ましくは、レジストの中の溶剤の蒸発速度が速まる圧力以下であればよい。
【発明を実施するための最良の形態】
【0010】
以下、本発明に係る基板処理装置の各実施形態について図面に基づいて詳細に説明する。
【0011】
(第1実施形態)
図1に示すように、本実施形態の基板処理装置1は、第1、第2及び第3のプロセス室をそれぞれ形成する3つの筐体11a,11b,11cによって構成される3つのチャンバー10a,10b,10cと、該各筐体11a,11b,11cの下面と対向して第1〜第3プロセス室Pa,Pb,Pcを基板Wが通過するように所定の方向に基板Wを搬送可能な基板搬送機構としての浮上チャック40と、各プロセス室Pのa,Pb,Pc周囲に配置され、搬送される基板W、及び基板Wと対向するシール面21a,21b,21cとの間の隙間を密封する第1、第2及び第3の差動排気シール20a,20b,20cと、所定の方向における各筐体11a,11b,11cの上流側に配置され、基板Wのプロセス室側の表面(以下、「上面」と称す)の高さを検出可能なセンサ31,32,33と、を備える。
【0012】
各筐体11a,11b,11cは、下方に略矩形状に開口した各プロセス室Pa,Pb,Pcとしての凹状ポケット12a,12b,12cを中央に有する。各プロセス室Pa,Pb,Pcでは、簡略化して示す配管を介してポンプP1a,P1b,P1cによりエアを吸引することで、各プロセス室Pa,Pb,Pcの所望の圧力が与えられる。なお、プロセス室Pa,Pb,Pcの所望の圧力が大気圧である場合には、該プロセス室Pa,Pb,Pcには真空ポンプP1a,P1b,P1cを設けなくてもよい。また、プロセス室Pa,Pb,Pcの所望の圧力が陽圧である場合には、該プロセス室Pa,Pb,Pcには吐出ポンプP1a,P1b,P1cを設けてもよい。
【0013】
即ち、第1、第2及び第3プロセス室Pa,Pb,Pcは、基板Wの処理条件に応じて、それぞれ第1、第2及び第3の室内条件を備えている。第1、第2及び第3の室内条件としては、上述した室内の圧力や、室内の温度、室内の雰囲気等が設定される。例えば、図1では、第2のプロセス室Pb内の第2の室内条件として、室内の温度が第1のプロセス室Paより高温が要求される場合には、エネルギー線としてのハロゲンランプ光源34からの光が複数本の光ファイバ35を介して第2のプロセス室Pb内の複数の加熱ヘッド36に導入される。また、第3のプロセス室Pc内の第3の室内条件として、室内の雰囲気を基板W、及び基板Wに塗布された物体と化学反応しない流体として窒素とする場合には、外部のタンク37から窒素が供給され、室内の温度を冷却する必要がある場合には、基板Wの反プロセス室側の裏面(以下、「下面」と称す)で、後述するエアパッド41と干渉しない位置にクーリングプレート38(図1にのみ示す)が設けられる。
なお、第2のプロセス室Pbにおいても、室内の雰囲気を基板W、及び基板Wに塗布された物体と化学反応しない流体として窒素とする場合には、第3のプロセス室Pcと同様に、外部のタンク(図示せず)から窒素が供給される。
【0014】
第1、第2及び第3の差動排気シール20a,20b,20cは、図2及び図3に示すように、各筐体11a,11b,11cの下面を、凹状ポケット12a,12b,12cを囲う矩形状の溝部22a,22b,22cを備えたシール面21a,21b,21cとし、外部のポンプP2a,P2b,P2cによって排気通路23を介して大気中のエアを吸引する。従って、基板Wとシール面21a,21b,21cとの間の隙間空間を減圧し、プロセス室P内と大気圧雰囲気の外部とを密封する。
【0015】
浮上チャック40は、複数のエアパッド41を備えて構成されている。複数のエアパッド41は、図2に示すように、基板Wが搬送される所定の方向、及び、該所定の方向に直交する基板Wの幅方向に亘って基板Wを浮上保持するように、各筐体11a,11b,11cの下方を含め、基板Wが搬送される所定の方向、及び基板Wの幅方向に亘って載置されている。また、各エアパッド41には、図3に示すように、複数の吸気孔42と複数の排気孔43が形成されており、複数の吸気孔42には吸気用ポンプP3が、複数の排気孔43には排気用ポンプP4がそれぞれ接続されている。
従って、排気孔43から吐出されたエアを吸気孔42から吸引することにより、基板Wの下面に作用する圧力を調整し、エアパッド41の支持面41aに対する基板Wの浮上量を高精度に設定することができ、基板Wを安定した高さで水平支持する。
なお、浮上チャック40としては、パッドに形成される吸気孔と排気孔から液体やフロンガスなどの冷媒を供給するようにしてもよい。
【0016】
また、基板Wの搬送は、各エアパッド41によって発生する浮上チャック40の流速によって行なわれてもよいし、基板Wの裏面の任意(縁部や中央など)の位置をクランプ或いはチャックして、図示しない駆動機構によって行なわれてもよい。
【0017】
ここで、各プロセス室Pa,Pb,Pc内が所望の圧力に維持されるためには、基板Wとシール面21a,21b,21cとの間の隙間が所定の微小隙間Δに厳密に管理・設定される必要がある。一方、浮上チャック40によって搬送される基板Wは、自重や搬送条件等により歪みが生じている場合がある。ここで、本実施形態では、浮上チャック40によって、基板Wの上下面の圧力差は自動的に変化し、基板Wの歪みが除去される。従って、基板Wとシール面21a,21b,21cとの間の隙間が所定の微小隙間Δに保たれ、各プロセス室Pa,Pb,Pc内が所望の圧力に維持される。
【0018】
なお、基板Wの上面の高さをセンサ31,32,33によって予め検出し、この検出結果に基づいて、シール面21a,21b,21cの下方に位置するエアパッド41のエアの吐出又は吸引を積極的に制御することで、基板Wの上下面の圧力差を変化させ、基板Wの歪みを除去してもよい。
【0019】
以上説明したように、本実施形態の基板処理装置1によれば、第1、第2及び第3の室内条件をそれぞれ有する第1、第2及び第3のプロセス室Pa,Pb,Pcと、第1、第2及び第3のプロセス室Pa,Pb,Pcを基板が通過するように基板を所定の方向に搬送可能な基板搬送機構としての浮上チャック40と、第1、第2及び第3のプロセス室Pa,Pb,Pcの周囲にそれぞれ配置され、搬送される基板W、及び該基板Wと対向する各シール面21a,21b,21cとの間の隙間を密封する第1及び第2の差動排気シール20a,20b,20cと、を備え、浮上チャック40は、基板Wと各シール面21a,21b,21cとの間の隙間が所定の微小隙間Δとなるように、搬送される基板Wの歪みを除去する歪み除去手段としても機能する。これにより、差動排気シール20a,20b,20cのシール面21a,21b,21cと基板Wとの間の隙間のばらつきが抑えられ、各プロセス室Pa,Pb,Pc内の室内条件が維持された状態で、基板Wの搬入及び搬出が可能となり、浮上チャック40によって第1、第2及び第3のプロセス室Pa,Pb,Pcを通過させながら各室で処理が可能となり、スループットを向上することができる。
【0020】
(第2実施形態)
図4及び図5は、本発明の第2実施形態に係る基板処理装置1aを示す、第1実施形態の図3に対応する断面図である。本実施形態は、基板Wの下面を静電気により引き寄せる静電チャック50によって基板Wの歪みを除去する歪み除去手段を構成している点において第1実施形態と異なる。
【0021】
本実施形態において、基板Wの裏面(下面)には、導電膜Waが形成されている。静電チャック50は、浮上チャックの各エアパッド41が設けられていない位置に点在して配置されている。静電チャック50は、基台51の上面に複数の電極52を設け、電極52上にセラミック層のような誘電体層53を設け、各電極51に電圧を印加することにより、クーロン力によって基板Wを吸引する。従って、本実施形態では、基板搬送機構を兼ねる浮上チャック40によって基板Wを浮上させつつ、静電チャック50によって基板Wを吸引して、基板Wとシール面21a,21b,21cとの間の隙間が所定の微小隙間Δとなるように、基板Wの歪みを除去することができる。
【0022】
なお、本実施形態の第1の変形例として、図5(a)に示すように、基板Wの裏面に導電膜を設けることなく、イオナイザー(除電器)54によって−の電荷を吹き付け、基板Wの裏面を−の電荷にチャージさせることで、基板Wを吸引するようにしてもよい。或いは、第2の変形例として、図5(b)に示すように、電極52の間隔を狭くしたり、誘電体層53の厚さを薄くすることで、電位差を与えた際に不均一電界を形成し、この不均一電界によるグラディエント力によって基板Wを吸引するようにしてもよい。
また、本実施形態は、基板としてガラス基板に限らず、シリコン(半導体基板)にも適用できる。さらに、図4の構成は、基板Wが導体の場合にも適用可能である。
勿論、第1実施形態の浮上チャック40及び第2実施形態の静電チャック50は、基板Wとシール面21との間の隙間を所定の微小隙間Δに保つ隙間調整手段を構成する。
【0023】
(第3実施形態)
図6は、本発明の第3実施形態に係る真空チャンバー10bを示す、第1実施形態の図1に対応する断面図である。本実施形態は、ボールねじ機構などの駆動機構80と、図示しない案内機構とによって筐体11を上下方向(基板Wの表裏面に垂直な方向)に駆動可能に構成することで、基板Wとシール面21との間の隙間を所定の微小隙間Δに保つ隙間調整手段を構成する。
【0024】
このため、本実施形態では、基板Wの上面の高さをセンサ31によって予め検出し、この検出結果に基づいて、駆動機構80によって筐体11を上下方向に移動させて位置制御することで、基板Wとシール面21との間の隙間を所定の微小隙間Δに保つように平行度を調整し、プロセス室P内を所望の真空圧に維持することができる。
【0025】
なお、駆動機構80としては、ボールねじ機構の代わりに、くさび機構を用いてもよいし、リニアモータによって駆動してもよい。また、筐体11を複数の領域に分割して領域毎に隙間調整手段を設け、基板Wの搬送に併せて領域毎に基板Wとシール面21との間の隙間を調整してもよい。
【0026】
ここで、上記実施形態の基板処理装置1,1a,1bは、フォトリソグラフィー等により所望のパターンをガラス基板に形成する際に、第1のチャンバー10aを塗布されたレジストを乾燥する真空乾燥装置、第2のチャンバー10bを基板を加熱するプリベーク装置、第3のチャンバー10cを基板Wを冷却する冷却装置として使用することができる。
【0027】
例えば、図7に示すように、一般的なフォトリソグラフィー工程では、ガラス基板を洗浄し(ステップS1)、ガラス基板を乾燥させた後(ステップS2)、ガラス基板にレジスト液を薄く均一に塗布する(ステップS3)。そして、塗布されたレジストを第1のチャンバー10aが適用された真空乾燥装置によって乾燥させ(ステップS4)、さらに、第2のチャンバー10bが適用されたプリベーク装置によって所定の温度で加熱してプリベーク(ステップS5)を行い、第3のチャンバー10cが適用された冷却装置によって基板Wが露光装置に投入される際の温度(通常室温20〜25℃に対して±0.1℃に設定)に均一化されるように冷却する(ステップS6)。また、露光工程(ステップS7)において、レジストに光を照射して、レジストの光化学反応が進んだ後、アルカリ溶液で現像して不要部分を除去し(ステップS8)、さらに、ガラス基板を乾燥させてパターンを形成する(ステップS9)。
【0028】
特に、本実施形態の基板処理装置1,1a,1bを上記フォトリソグラフィー工程に適用することで、真空乾燥工程S4〜冷却工程S6まで基板Wを連続的に搬送することが可能となる。カラーフィルタ用のガラス基板Wを本実施形態の基板処理装置1,1a,1bによって真空乾燥、プリベーク、冷却を行なう際、基板Wと差動排気シール20a,20b,20cのシール面21との隙間は、数十〜200μmの所定の微小隙間に管理する。また、ガラス基板Wは0.1〜数mmオーダーで歪んだ状態で搬送される場合があるため、本実施形態の浮上チャック40、静電チャック50、或いは駆動機構80を用いて、基板Wの歪みを除去したり、隙間を調整する。
【0029】
真空管層を行なう第1のプロセス室Paは、第1の室内条件として、室内の圧力を真空ポンプP2aによって1〜5Torr程度の真空圧としている。また、プリベークを行なう第2のプロセス室Pbは、第2の室内条件として、室内の圧力を真空ポンプP2bによって減圧、好ましくは真空圧とし、室内の温度を加熱ヘッド36によって80〜120℃に設定している。さらに、冷却を行なう第3のプロセス室Pcは、第3の室内条件として、室内の圧力を大気圧とし、室内の雰囲気をタンク37によって窒素に設定している。
なお、プリベークを行なう第2のプロセス室Pbは、大気圧としてもよいが、減圧、好ましくは真空圧とすることで、溶剤の沸点が降下してベーキングの反応温度を下げることができ、加熱ヘッド36の設定温度を低くすることができる。
【0030】
また、上記各室内条件を満たす構成としては、図1に示すものの他、図8の変形例に示すものであってもよい。即ち、第2のプロセス室Pbに加熱ヘッド36を設ける代わりに、第2のプロセス室Pbと対向する位置に、基板Wの下面に温風を吹き付ける、或いは、電熱線によって下面を温めるヒーター39が配置されてもよい。
【0031】
図9は、本発明が適用されたレジスト塗布工程から露光工程までの製造ラインを示す模式図である。ローダー60によって基板Wをコーター61に搬送し、コーター61によってレジストが塗布された基板Wは、ローダー62によって真空乾燥装置10aの上流側の搬入位置INに受け渡され、上述した浮上チャック40によって搬送されながら真空乾燥、プリベーク、冷却が行なわれ、搬出位置OUTに搬出される。その後、ローダー63によって、冷却後の基板Wを倣い露光装置64に受け渡して、露光工程S7が行なわれる。なお、露光工程を倣い露光装置64で行なう場合には、冷却装置のクーリングプレート38による制御の精度は低くてもよい。
【0032】
図10は、従来のレジスト塗布工程から露光工程までの製造ラインを示す模式図である。この場合、コーター61によってレジストが塗布された基板Wは、ローダー62によって上下段に分かれた2台の真空乾燥装置65に搬送されて乾燥された後、プリベーク装置66に受け渡される。プリベーク後の基板Wは、ローダー63によって冷却装置67に搬送されて冷却された後、倣い露光装置64へ受け渡される。
【0033】
このため、本発明は、図10の従来のラインに比べ、真空乾燥、プリベーク、冷却の3つの工程においてローダーを使用する必要がなくなり、全体としてのスループットを向上することができると共に、レジストを大気(特に酸素)にできるだけ触れさせずに処理することができる。また、従来、乾燥工程がフォトリソグラフィー工程の律速となっていたため、乾燥装置を2台設けてスループットの向上を図っていたが、本発明では、1台の真空乾燥装置で、前工程のレジスト塗布工程S3から後工程のプリベーク工程S5へガラス基板の受け渡しがスムーズに行なわれる。
【0034】
さらに、従来の製造ラインでは、フットプリント(装置或いはラインの床面積)がガラス基板Wの10〜20倍程度必要であったが、本発明の製造ラインでは、ガラス基板Wの6倍以下とすることができる。また、倣い露光装置64を除いたラインのフットプリントにおいても、従来ではガラス基板Wの8〜10倍程度であったものが、本発明により5倍以下とすることができる。
【0035】
図11(a)及び(b)は、本発明の他の製造ラインを示している。図11(a)に示す製造ラインでは、冷却工程S6後の基板Wを連続的に倣い露光装置64へ搬送して露光工程S7を行なうようにしたので、さらにローダーの数や基板の受け渡し領域を削減することができる。また、図11(b)に示す製造ラインでは、コーター61によってレジスト塗布後の基板Wを連続的に真空乾燥装置10aに搬送して、レジスト塗布工程S3〜露光工程S7まで一つの基板搬送機構によって搬送するように構成しており、さらにローダーの数を削減することができる。
【0036】
尚、本発明は、前述した実施形態に限定されるものではなく、適宜、変形、改良、等が可能である。
【0037】
上記実施形態の基板処理装置では、3つのチャンバーを備える構成として説明したが、第1及び第2の少なくとも2つのチャンバーを備える構成においても、本発明は適用可能である。
【0038】
また、本発明の基板搬送機構は、本実施形態の浮上チャックや静電チャックに限定されるものでなく、基板の下面を密着させて搬送するものやローラによって搬送するものであってもよく、基板の歪みを除去しながら搬送できるものであればよい。
【図面の簡単な説明】
【0039】
【図1】本発明の第1実施形態に係る基板処理装置の正面断面図である。
【図2】図1の筐体及びワークをスケルトンで示す基板処理装置を上方から見た模式図である。
【図3】図1の第1のチャンバーの差動排気シール近傍を拡大して示す断面図である。
【図4】本発明の第2実施形態に係る基板処理装置を示す、図3に対応する断面図である。
【図5】(a)は、第2実施形態の第1変形例に係る真空チャンバーを示す、図3に対応する断面図であり、(b)は、第2変形例に係る真空チャンバーを示す、図3に対応する断面図である。
【図6】本発明の第3実施形態に係る真空チャンバーを示す、図1に対応する断面図である。
【図7】フォトリソグラフィーの工程を説明するためのフロー図である。
【図8】本発明の基板処理装置が真空乾燥、プリベーク、冷却工程に適用される場合の変形例を示す正面断面図である。
【図9】本発明の基板処理装置が適用された製造ラインの模式図である。
【図10】従来の製造ラインの模式図である。
【図11】本発明の基板処理装置が適用された製造ラインの変形例を示す模式図である。
【符号の説明】
【0040】
1,1a,1b 基板処理装置
10a,10b,10c 真空チャンバー
11a,11b,11c 筐体
20a,20b,20c 差動排気シール
21a,21b,21c シール面
31,32,33 センサ
36 加熱ヘッド
38 クーリングプレート
39 ヒーター
40 浮上チャック(基板搬送機構、歪み除去手段、隙間調整手段)
41 エアパッド
50 静電チャック(歪み除去手段、隙間調整手段)
80 駆動機構(隙間調整手段)
Pa,Pb,Pc プロセス室

【特許請求の範囲】
【請求項1】
第1の室内条件を有する第1のプロセス室と、
第2の室内条件を有する第2のプロセス室と、
前記第1及び第2のプロセス室を基板が通過するように前記基板を所定の方向に搬送可能な基板搬送機構と、
前記第1及び第2のプロセス室の周囲にそれぞれ配置され、前記搬送される基板、及び該基板と対向する各シール面との間の隙間を密封する第1及び第2の差動排気シールと、
前記基板と前記各シール面との間の隙間が所定の微小隙間となるように、前記搬送される基板の歪みを除去する歪み除去手段と、
を備えることを特徴とする基板処理装置。
【請求項2】
前記第1の室内条件として、室内の圧力が真空圧に設定され、
前記第2の室内条件として、前記第2のプロセス室内の温度は、前記第1のプロセス室内の温度より高温に設定されることを特徴とする請求項1に記載の基板処理装置。
【請求項3】
第2のプロセス室は、前記基板の反プロセス室側から加熱されることを特徴とする請求項1または2に記載の基板処理装置。
【請求項4】
前記第2の室内条件として、室内の雰囲気が前記基板、及び前記基板に塗布された物体と化学反応しない流体であることを特徴とする請求項2または3に記載の基板処理装置。
【請求項5】
第3の室内条件を有し、前記第2のプロセス室に対して前記第1のプロセス室と反対側で前記基板搬送機構によって前記基板が通過する第3のプロセス室をさらに備え、
前記基板が通過する前記3のプロセス室の周囲には、前記搬送される基板、及び該基板と対向するシール面との間の隙間を密封する第3の差動排気シールが配置されることを特徴とする請求項1〜4のいずれかに記載の基板処理装置。
【請求項6】
前記第3のプロセス室は、前記基板の反プロセス室側から冷却されることを特徴とする請求項5に記載の基板処理装置。
【請求項7】
前記第3の室内条件として、室内の雰囲気が前記基板、及び前記基板に塗布された物体と化学反応しない流体であることを特徴とする請求項5または6に記載の基板処理装置。
【請求項8】
第1の室内条件を有する第1のプロセス室と、
第2の室内条件を有する第2のプロセス室と、
前記第1及び第2のプロセス室を基板が通過するように前記基板を所定の方向に搬送可能な基板搬送機構と、
前記第1及び第2のプロセス室の周囲にそれぞれ配置され、前記搬送される基板、及び該基板と対向する各シール面との間の隙間を密封する第1及び第2の差動排気シールと、
前記基板と前記各シール面との間の隙間を所定の微小隙間に保つ隙間調整手段と、
を備えることを特徴とする基板処理装置。
【請求項9】
前記隙間調整手段は、前記プロセス室毎に、前記プロセス室を構成する筐体を前記基板の表裏面に垂直な方向に移動可能な駆動機構を有することを特徴とする請求項8に記載の基板処理装置。
【請求項10】
前記第1の室内条件として、室内の圧力が真空圧に設定され、
前記第2の室内条件として、前記第2のプロセス室内の温度は、前記第1のプロセス室内の温度より高温に設定されることを特徴とする請求項8または9に記載の基板処理装置。
【請求項11】
第2のプロセス室は、前記基板の反プロセス室側から加熱されることを特徴とする請求項8〜10のいずれかに記載の基板処理装置。
【請求項12】
前記第2の室内条件として、室内の雰囲気が前記基板、及び前記基板に塗布された物体と化学反応しない流体であることを特徴とする請求項10または11に記載の基板処理装置。
【請求項13】
第3の室内条件を有し、前記第2のプロセス室に対して前記第1のプロセス室と反対側で前記基板搬送機構によって前記基板が通過する第3のプロセス室をさらに備え、
前記基板が通過する前記3のプロセス室の周囲には、前記搬送される基板、及び該基板と対向するシール面との間の隙間を密封する第3の差動排気シールが配置されることを特徴とする請求項8〜12のいずれかに記載の基板処理装置。
【請求項14】
前記第3のプロセス室は、前記基板の反プロセス室側から冷却されることを特徴とする請求項13に記載の基板処理装置。
【請求項15】
前記第3の室内条件として、室内の雰囲気が前記基板、及び前記基板に塗布された物体と化学反応しない流体であることを特徴とする請求項13または14に記載の基板処理装置。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【図6】
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【図7】
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【図8】
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【図9】
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【図10】
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【図11】
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【公開番号】特開2010−40991(P2010−40991A)
【公開日】平成22年2月18日(2010.2.18)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2008−205509(P2008−205509)
【出願日】平成20年8月8日(2008.8.8)
【出願人】(000004204)日本精工株式会社 (8,378)
【Fターム(参考)】