説明

基板処理装置

【課題】移載機の加速領域での検知精度の低下を防止する基板処理装置を提供する。
【解決手段】ウエハを検知する透過型光学式センサを移載機に水平方向外向きに取り付ける。前記透過型光学式センサは投光素子から前記ウエハに照射されて前記ウエハを透過した光を受光素子によって受光するように構成する。前記透過型光学式センサは移載エレベータのサーボモータに接続されたPLCに接続する。前記PLCは前記透過型光学式センサからのウエハ検知信号と、前記移載エレベータによる位置信号とによってポッドにおける前記ウエハの位置を検知する。また、前記PLCは前記サーボモータからの回転速度信号によって前記移載機の前記ポッドに対する昇降移動における等速領域を判定する。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、基板処理装置に関する。
例えば、半導体集積回路装置(以下、ICという)の製造方法において、ICが作り込まれる半導体ウエハ(以下、ウエハという)を処理するのに使用して好適な基板処理装置に関する。
【背景技術】
【0002】
ICの製造方法において、ウエハを処理する基板処理装置として、ウエハを多段に保持する基板保持具であるボートと、このボートにウエハを移載する移載機と、ボートに多数枚のウエハを保持した状態でウエハを処理する処理炉、を有するものがある。
このような基板処理装置においては、処理炉内にて昇温された時または処理炉から取り出され冷却された時に、ウエハには熱応力によって割れ、反り等の異常を生じる場合がある。この割れや反りが移載機によって搬送することができない場合には、移載機のツィーザがウエハと衝突してボートを倒す等の重大事故につながる。
【0003】
そこで、光学式センサによってボートのウエハを検知するウエハ検知装置を移載機に搭載した基板処理装置が提案されている(例えば、特許文献1参照)。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0004】
【特許文献1】特開2005−142245号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0005】
しかしながら、ウエハ検知装置を移載機に搭載した基板処理装置においては、移載機の加速領域では、移載機の移動距離とウエハ検知装置の検知データとの関係が一定にならないために、ウエハ検知精度が低下するという問題点があることが、本発明者によって究明された。
【0006】
本発明の目的は、移載機の加速領域での基板検知精度の低下を防止することができる基板処理装置を提供することにある。
【課題を解決するための手段】
【0007】
課題を解決するための手段の代表的なものは、次の通りである。
サーボモータによって移動されて基板を移載する移載機と、前記移載機に搭載され前記基板を検知する光学式センサとを備えており、前記サーボモータからの信号によって前記移載機の移動における等速領域を判定する基板処理装置。
【発明の効果】
【0008】
前記した手段によれば、移載機の加速領域での基板検知精度の低下を防止することができる。
【図面の簡単な説明】
【0009】
【図1】本発明の一実施形態である基板処理装置を示す斜視図である。
【図2】側面断面図である。
【図3】基板処理装置の移載機を示す側面図である。
【図4】ポッド用検知装置を示しており、(a)は平面断面図、(b)は一部省略側面断面図である。
【図5】移載機の移動と光学式センサの出力信号との関係を示すグラフである。
【図6】ボート用検知装置を示しており、(a)は平面断面図、(b)は一部省略側面断面図である。
【発明を実施するための形態】
【0010】
以下、本発明の一実施形態を図面に即して説明する。
【0011】
図1〜図6は本発明の一実施形態を示している。
本実施形態である基板処理装置10は、基板としてのウエハ12に拡散処理やCVD処理等を施すものとして構成されている。
この基板処理装置10は筐体16の前面に付設された入出ステージ18を備えており、入出ステージ18は複数枚のウエハ12を収納したFOUP(以下、ポッドという)14を、外部から筐体16内へ搬入したり、筐体16内から外部へ搬出したりするためのステージを構成している。
基板収納容器(キャリア)であるポッド14は一側壁に開口部が設けられており、開口部を蓋体(図示せず)で塞ぐことで大気からウエハ12を隔離して搬送することができ、蓋体を取り去ることでポッド14内へウエハ12を入出させることができる。ポッド14には例えば25枚のウエハ12が収納される。
筐体16内にはポッド棚22および窒素パージ室24が設けられている。ポッド棚22は搬入されたポッド14を保管する。窒素パージ室24はウエハ12の搬送エリアであり、ボート26の待機空間となっている。窒素パージ室24は、ウエハ12の処理を行う場合に窒素ガス等の不活性ガスで充満され、ウエハ12に自然酸化膜が形成されるのを防止するようになっている。
【0012】
窒素パージ室24の前面壁にはポッドオープナ30が一対設けられている。ポッドオープナ30はポッド14の蓋体を取外し、ポッド14内の雰囲気と窒素パージ室24の雰囲気とを連通させる。
ポッドオープナ30、ポッド棚22および入出ステージ18間のポッド14の搬送は、ポッド搬送装置20によって行われる。このポッド搬送装置20によるポッド14の搬送空間には、筐体16に設けられたクリーンユニット(図示せず)によって清浄化した空気をフローさせるようにしてある。
【0013】
窒素パージ室24の内部には、ボート26と、ウエハ12のノッチ(またはオリエンテーションフラット)の位置を任意の位置に合わせる位置合わせ装置32と、後述する移載機40とが設けられている。
ボート26は複数枚のウエハ12を多段に積載する基板保持具を構成している。ボート26は3本の支柱27を備えており、支柱27は石英や炭化珪素等から形成され、3本の支柱27が垂直方向に平行に配置されている。これら支柱27に形成された支持溝27aにウエハ12を保持する。ボート26は昇降装置であるボートエレベータ28によって処理炉36へロードされ、処理炉36からアンロードされる。ウエハ12の処理中以外は、処理炉36は炉口シャッタ34によって炉口が閉鎖されている。
【0014】
処理炉36はアウタチューブ37を有する。アウタチューブ37は石英(SiO2 )等の耐熱性材料から形成されている。アウタチューブ37は上端が閉鎖され、下端が開口された円筒形状に形成されている。アウタチューブ37内にはインナチューブ38が同心円状に配置されている。アウタチューブ37の外周には、加熱手段としてのヒータ39が同心円状に配置されている。ヒータ39はヒータベース35を介して筐体16上に保持されている。
【0015】
移載機40は昇降装置としてのエレベータ(以下、移載エレベータという)41を備えている。移載エレベータ41は窒素パージ室24内に垂直に配置されている。移載エレベータ41はサーボモータ42によって駆動される送りねじ装置(ねじ式ジャッキ)43を備えており、送りねじ装置43は垂直に設置されている。送りねじ装置43のナット(図示せず)にはアーム44が水平に固定されており、アーム44上にはロータリーアクチュエータ45が設置されている。ロータリーアクチュエータ45上にはリニアアクチュエータ(以下、移載機本体という)46が設置されており、移載機本体46はロータリーアクチュエータ45によって水平面内で回転されるようになっている。
【0016】
移載機本体46上には第一スライダ47および第二スライダ48が、移載機本体46によって往復摺動されるようにそれぞれ設置されている。第一スライダ47には4枚のツィーザ49a,49b,49c,49dが平行に延びるように水平に固定されている。第二スライダ48は第一スライダ47と一体に往復動可能に、かつ、第一スライダ47とは独立して往復動可能に構成されている。第二スライダ48にはツィーザ49eが4枚のツィーザ49a〜49dの下位置で平行に固定されている。
このため、移載機40は5枚のツィーザ49a〜49eにより5枚のウエハ12を一括移載することができるし、最下段のツィーザ49eを用いて1枚のウエハを移載(枚葉移載)することもできる。
ポッド14には、例えば25枚のウエハ12が収納されている。移載機40によりウエハ12をボート26へ移載またはボート26から回収する際に、5つのスロット(スロット群)の中に異常状態のウエハ12が無い場合には、移載機40は5枚のツィーザ49a〜49eにより5枚のウエハ12を一括して移載または回収する。スロット群の中に異常状態のウエハ12がある場合には、移載機40は正常状態のウエハ12のみを最下段のツィーザ49eを用いて回収する。
【0017】
移載機40には、ポッド14およびボート26のウエハ12を検知する検知装置(以下、検知装置という)50が設置されている。
検知装置50は取付具51を備えており、取付具51は移載機本体46のツィーザと反対側に固定されている。取付具51には基板としてのウエハ12を検知する透過型光学式センサ52が水平方向外向きに取り付けられている。透過型光学式センサ52は投光器としての投光素子53と受光器としての受光素子54とを備えている。透過型光学式センサ52は、投光素子53からウエハ12に照射されてウエハ12を透過した光55を受光素子54によって受光するように構成されている。
透過型光学式センサ52はPLC(Programmable Logic Controller)70に接続されており、PLC70には移載エレベータ41のサーボモータ42が接続されている。PLC70は透過型光学式センサ52からのウエハ検知信号と、移載エレベータ41による位置信号とによってポッド14におけるウエハ12の位置を検知するように構成されている。
PLC70はサーボモータ42のロータリーエンコーダのような回転位置検出装置または回転速度(回転数)検出装置からの回転速度信号によって移載機40のポッド14およびボート26に対する昇降移動における等速領域を判定するように構成されている。
【0018】
次に、以上の構成に係る基板処理装置10の作用および効果を説明する。
ポッド14はAGVやOHT等により搬送されて来て、筐体16の外部の入出ステージ18に載置される。入出ステージ18に載置されたポッド14は、ポッド搬送装置20によって、ポッドオープナ30上に直接搬送されるか、または、ポッド棚22に一旦ストックされた後に、ポッドオープナ30上に搬送される。
ポッドオープナ30上に搬送されたポッド14は、ポッドオープナ30によってポッド14の蓋体が取外され、ポッド14内が窒素パージ室24と連通される。
【0019】
他方、移載機40は窒素パージ室24内のポッドオープナ30下方に配置される。移載機40は検知装置50をポッド14側に向ける。移載エレベータ41は移載機40をサーボモータ42により上昇させる。移載機40の上昇に伴って、検知装置50はポッド14内のウエハ12の有無を確認(所謂マッピング)する。
この際、移載機40の移動は、図5(a)に示されているように、移載機40の上昇初期においては加速運動になる。加速領域においては、移載機40の移動距離と検知装置50の検知データとの関係が一定にならないために、検知精度が低下するという問題点があることが、本発明者によって究明された。
【0020】
そこで、本実施形態においては、検知装置50によるマッピングを、次のようにして移載機40の等速領域において実行するものとする。
PLC70は、図5(b)に示されたサーボモータ42の出力信号の等速領域到達時点により、図5(a)のように、移載機40すなわち検知装置50の等速領域到達位置を判定し、予め設定された余裕時間をとって、検知装置50のマッピングを開始する。換言すれば、マッピング開始前に、検知装置50は等速領域到達に必要な距離よりも離れた位置に配置される。
【0021】
移載機40が移載エレベータ41によって上昇されて行くと、検知装置50がポッド14の最下段のウエハ12を通過することにより、透過型光学式センサ52は図5(c)に示された出力信号をPLC70に送信する。PLC70はこの出力信号に対して所定の閾値を適用してポッド14の最下段のウエハ12の有無を判定する。すなわち、図4に示されているように、透過型光学式センサ52は投光素子53から照射した光55がウエハ12を透過して受光素子54によって受光された信号を出力するので、PLC70はウエハ12の有無を検知することができる。
移載機40の上昇に伴って、検知装置50すなわちPLC70はそれ以降のウエハ12の有無を検知することができる。この際、移載機40が等速度で上昇するので、検知装置50はマッピングを適正に実行することができる。
【0022】
次に、移載機40によって、窒素パージ室24内と連通した状態のポッド14内からウエハ12を取出す。取出されたウエハ12は位置合わせ装置32によって、任意の位置にノッチまたはオリエンテーションフラットが定まるように位置合わせが行われ、位置合わせ後、ボート26へ搬送される。
【0023】
ここで、ボート26のウエハ搭載枚数(例えば、100〜150枚)はポッド14のウエハ収納枚数(例えば、25枚)よりも多数である。したがって、一対のポッドオープナ30、30において、以上の作用が交互に繰り返される。
【0024】
ボート26へのウエハ12の搬送が完了したならば、処理炉36の炉口シャッタ34を開けて、ボートエレベータ28によりウエハ12を搭載したボート26を処理炉36内に搬入(ボートローディング)する。
ボートローディング後は、処理炉36にてウエハ12に所定の処理が実施される。
処理後は、ボート26が処理炉36から搬出(ボートアンローディング)される。
【0025】
ボート26が窒素パージ室24に搬出されると、移載機40は窒素パージ室24内のボート26下方に配置される。移載機40は検知装置50をボート26側に向ける。移載エレベータ41は移載機40をサーボモータ42により上昇させる。移載機40の上昇に伴って、検知装置50はボート26に搭載された処理済みウエハ12の状態を確認する。
この際も、移載機40の移動は、図5(a)に示されているように、移載機40の上昇初期においては加速運動になる。加速領域においては、移載機40の移動距離と検知装置50の検知データとの関係が一定にならないために、検知精度が低下するという問題点があることが、本発明者によって究明された。
【0026】
そこで、本実施形態においては、検知装置50によるウエハ状態検知を、前述したマッピングと同様にして移載機40の等速領域において実行するものとする。
すなわち、PLC70は、図5(b)に示されたサーボモータ42の出力信号の等速領域到達時点により、図5(a)のように、移載機40すなわち検知装置50の等速領域到達位置を判定し、予め設定された余裕時間をとって、検知装置50のウエハ状態検知を開始する。換言すれば、ウエハ状態検知開始前に、検知装置50は等速領域到達に必要な距離よりも離れた位置に配置される。
【0027】
移載機40が移載エレベータ41によって上昇されて行くと、検知装置50がボート26の最下段のウエハ12を通過することにより、透過型光学式センサ52は図5(c)に示された出力信号をPLC70に送信する。PLC70はこの出力信号に対して所定の閾値を適用してボート26の最下段のウエハ12の有無を判定する。
すなわち、図6に示されているように、透過型光学式センサ52は投光素子53から照射した光55がウエハ12を透過して受光素子54によって受光された信号を出力するので、PLC70はウエハ12の状態を検知することができる。
移載機40の上昇に伴って、検知装置50すなわちPLC70はそれ以降のウエハ12の状態を検知することができる。この際、移載機40が等速度で上昇するので、検知装置50はウエハ状態検知を適正に実行することができる。
【0028】
なお、検知装置50には透過型光学式センサ52が使用されているので、次のようなウエハ12の異常状態を検知することができる。その検知の作用は、特開2005−142245号公報に詳細に説明されているので、省略する。
A.落下/2枚重なり
B.落下/投光側落下(左面落下)
C.落下/受光側落下(右面落下)
D.落下/後方落下(背面落下)
E.落下/前方落下(前面落下)
F.割れ/真中割れ
G.割れ/前方割れ
H.割れ/後方割れ
J.基板無し
K.基板反り
なお、ウエハ12が正常状態にある場合は、1枚のウエハ12が1つの支持溝27aに水平に支持されている。
【0029】
以上のウエハ状態検知ステップが終了すると、移載機40はボート26から処理済みのウエハ12を取り出し、ポッドオープナ30に搬送して、ポッド14に収納(ウエハディスチャージ)する。
ここで、ボート26のウエハ搭載枚数(例えば、100〜150枚)はボート26のウエハ収納枚数(例えば、25枚)よりも多数であるので、移載機40は一対のポッドオープナ30、30にウエハディスチャージを繰り返す。
【0030】
なお、本発明は前記実施の形態に限定されるものではなく、その要旨を逸脱しない範囲で種々に変更が可能であることはいうまでもない。
【0031】
例えば、検知装置には透過型光学式センサを使用するに限らず、反射型光学式センサを使用してもよい。
【0032】
本発明の好ましい態様を付記する。
(1)サーボモータによって移動されて基板を移載する移載機と、前記移載機に搭載され前記基板を検知する光学式センサとを備えており、前記サーボモータからの信号によって前記移載機の移動における等速領域を判定する基板処理装置。
(2)前記光学式センサが透過型光学式センサである(1)に記載の基板処理装置。
(3)前記光学式センサが反射型光学式センサである(1)に移載の基板処理装置。
(4)(1)〜(3)を使用した半導体装置の製造方法において、前記基板を検知する以前に、前記移載機を前記基板から離れた位置に配置する半導体装置の製造方法。
【符号の説明】
【0033】
10…基板処理装置、12…ウエハ(基板)、14…ポッド(FOUP)、16…筐体、18…入出ステージ、20…ポッド搬送装置、22…ポッド棚、24…窒素パージ室、26…ボート、27…支柱、27a…支持溝、28…ボートエレベータ、30…ポッドオープナ、32…位置合わせ装置、34…炉口シャッタ、35…ヒータベース、36…処理炉、37…アウタチューブ、38…インナチューブ、39…ヒータ、
40…移載機、41…移載エレベータ、42…サーボモータ、43…送りねじ装置(ねじ式ジャッキ)、44…アーム、45…ロータリーアクチュエータ、46…移載機本体(リニアアクチュエータ)、47…第一スライダ、48…第二スライダ、49a,49b,49c,49d、49e…ツィーザ、
50…検知装置、51…取付具、52…透過型光学式センサ、53…投光素子(投光器)、54…受光素子(受光器)、55…光、
70…PLC(コントローラ)。

【特許請求の範囲】
【請求項1】
サーボモータによって移動されて基板を移載する移載機と、前記移載機に搭載され前記基板を検知する光学式センサとを備えており、前記サーボモータからの信号によって前記移載機の移動における等速領域を判定する基板処理装置。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【図6】
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【公開番号】特開2011−249642(P2011−249642A)
【公開日】平成23年12月8日(2011.12.8)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2010−122605(P2010−122605)
【出願日】平成22年5月28日(2010.5.28)
【出願人】(000001122)株式会社日立国際電気 (5,007)
【Fターム(参考)】