説明

基板収納容器用蓋体及び基板収納容器

【課題】 蓋体の狭いスペースに施錠機構を設けることができ、しかも、蓋体用の開閉機構の複雑化防止を図ることのできる基板収納容器用蓋体及び基板収納容器を提供する。
【解決手段】 半導体ウェーハを整列収納する正面視略横長の容器本体と、容器本体の開口した正面を開閉する正面視略横長の蓋体30とを備え、蓋体30に、容器本体の正面に嵌合された際に施錠する施錠機構40を内蔵する。そして、施錠機構40を、蓋体30に支持され、容器本体の正面に蓋体30が嵌合された場合に容器本体の正面内周部両側に対向する一対の進退動係止体41と、容器本体の正面に蓋体30が嵌合された場合に容器本体の正面内周部両側に進退動係止体41を進出させてその先端部を干渉接触させる一対のコイルバネ47とから構成する。横長の蓋体30に小型の施錠機構40を横にして配置するので、狭い内蔵スペースに施錠機構40を適切に取付けることができる。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、スモールフープ(SMALL FOUP)と呼ばれる基板収納容器の基板収納容器用蓋体及び基板収納容器に関するものである。
【背景技術】
【0002】
口径200mmや口径300mmの大きさにスライスされた薄い半導体ウェーハには各種の加工処理が施されるが、この半導体ウェーハの加工処理時間は、画一的に定まったものではなく、ICチップの性能、製品化の時期、製品の仕様等により少なからず変動する。
【0003】
例えば、メモリーデバイスメーカ等で加工処理される場合、特に加工処理対象が汎用製品の場合には、大量生産が要求されるので、多くの工程を通じ、長時間(例えば30日〜40日)かけて加工処理が施される。これに対し、LSIメーカ等で加工処理される場合には、多品種少量生産の要請、試作品の試作、少ロット品に対応する必要に迫られるので、短時間(例えば14日〜20日)のうちに加工処理される必要がある。
【0004】
そこで、半導体ウェーハは、LSIメーカ等で加工処理される場合には、複数枚(例えば25、26枚)を収納可能な既存の基板収納容器ではなく、専用の基板収納容器に僅か数枚(例えば1枚〜3枚)が収納され、一枚当たりの加工時間の短縮が図られることが好ましい(特許文献1参照)。
【0005】
この種の専用の基板収納容器は、図示しない正面視横長の容器本体と、この容器本体の開口した正面を開閉する正面視横長の蓋体とを備え、この蓋体に、容器本体の正面に嵌合された蓋体を施錠する施錠機構を内蔵する構成が検討されている。施錠機構は、複数枚の半導体ウェーハを収納可能な既存の基板収納容器用の構成、具体的には蓋体内の回転プレートが外部からロードポートの開閉機構に回転操作されることにより、蓋体内の一対の進退動プレートを進出させ、各進退動プレートの先端部の係止爪を容器本体の正面内周に係止させる構成が検討されている(特許文献2参照)。
【特許文献1】特開2006‐245206号公報
【特許文献2】特開2002‐368074号公報
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0006】
しかしながら、一枚当たりの加工時間の短縮を図る専用の基板収納容器は、既存のタイプよりも背の低い小型に構成され、蓋体の施錠機構の内蔵スペースも狭く乏しくなるので、既存のタイプ用の大きな施錠機構を流用して内蔵することが困難であるという問題がある。また、既存の基板収納容器用の施錠機構は、蓋体内の回転プレートが外部から回転操作されることを要するので、蓋体を開閉する開閉機構の構成が複雑化してしまうおそれが少なくない。
【0007】
本発明は上記に鑑みなされたもので、蓋体の狭いスペースに施錠機構を設けることができ、しかも、蓋体用の開閉機構の複雑化防止を図ることのできる基板収納容器用蓋体及び基板収納容器を提供することを目的としている。
【課題を解決するための手段】
【0008】
本発明においては上記課題を解決するため、三枚以下の基板を収納する正面視略横長の容器本体の開口した正面を開閉する蓋体に、容器本体の正面に嵌め合わされた蓋体を施錠する施錠機構を設けたものであって、
施錠機構は、正面視略横長の蓋体に支持され、容器本体の正面に蓋体が嵌め合わされる場合に容器本体の正面内周に対向する進退動係止体と、容器本体の正面に蓋体が嵌め合わされる場合に容器本体の正面内周に進退動係止体を進出させてその先端部を干渉させる弾性付勢体とを含んでなることを特徴としている。
【0009】
なお、施錠機構の進退動係止体は、蓋体に支持されてその内外方向に進退動可能な駆動部材と、この駆動部材の先端部側に設けられ、容器本体の正面に蓋体が嵌め合わされる場合に容器本体の正面内周に接触する係止体とを含むことができる。
また、施錠機構の進退動係止体は、蓋体に支持されてその内外方向に進退動可能な駆動部材と、蓋体に回転可能に支持されて駆動部材の先端部側に回転可能に連結され、容器本体の正面に蓋体が嵌め合わされる場合に容器本体の正面内周に接触する係止体とを含むことができる。
【0010】
また、施錠機構の進退動係止体は、駆動部材に設けられてその過剰な進出を規制する規制部材を含むことができる。
また、施錠機構の進退動係止体は、駆動部材と規制部材の少なくともいずれか一方に設けられて蓋体の外部から操作可能な操作部を含むことが可能である。
【0011】
また、進退動係止体の係止体を屈曲形成してその屈曲部付近を蓋体の内部周縁に回転可能に支持させ、この係止体の自由端部を容器本体の正面に蓋体が嵌め合わされる場合に蓋体の嵌め合わせ方向とは反対の方向に突出させることが可能である。
また、進退動係止体の係止体に、容器本体の正面内周に接触するローラを回転可能に支持させることも可能である。
【0012】
さらに、本発明においては上記課題を解決するため、三枚以下の基板を収納する正面視略横長の容器本体の開口した正面を、請求項1ないし7いずれかに記載の基板収納容器用蓋体により開閉することを特徴としている。
【0013】
ここで、特許請求の範囲における基板には、少なくとも各種の大きさを有するアルミディスク、半導体ウェーハ、石英ガラス、液晶ガラス等が含まれる。容器本体は、透明、不透明、半透明を特に問うものではない。この容器本体については、例えば金型にインサート部品をインサートして型締めし、この型締めした金型に成形材料を射出することにより、インサート部品により少なくとも外形の一部が形成された構成に成形することができる。具体的には、一部が透視可能な背面壁を含む容器本体の後部をインサート部品により形成することができる。
【0014】
蓋体は、透明、不透明、半透明に形成することが可能である。施錠機構は、単数複数を問うものではない。また、進退動係止体の駆動部材と係止体とは、一体でも良いし、別体でも良い。これら駆動部材や係止体としては、各種形状の軸や板体等を適宜使用することができ、係止体には、単数複数のローラを支持させることが可能である。係止体は、断面略板形、楔形、J字形、L字形、T字形、Y字形、γ字形、ピン形等の形に形成することが可能である。
【0015】
規制部材は、駆動部材の後部や末端部等に設けることができる。この規制部材や駆動部材には、蓋体から露出する操作部である操作部材を適宜取り付けたり、蓋体の外部から操作部材を挿入するための操作部である凹部を設けることができる。さらに、弾性付勢体は、コイルバネが主ではあるが、同様の作用効果が期待できるのであれば、板バネ等、他種類のバネでも良い。
【0016】
本発明によれば、容器本体の開口した正面に蓋体を押し付けて嵌め合わせる際、弾性付勢体の付勢作用により進退動係止体の先端部が蓋体から突出し、容器本体の正面内周に進退動係止体の先端部が干渉して容器本体に嵌め合わされた蓋体を施錠する。
【発明の効果】
【0017】
本発明によれば、蓋体の狭いスペースに施錠機構を設けることができ、しかも、蓋体用の開閉機構の複雑化防止を図ることができるという効果がある。
また、進退動係止体の係止体を屈曲形成してその屈曲部を蓋体の内部周縁に回転可能に支持させ、この係止体の自由端部を容器本体の正面に蓋体が嵌め合わされる場合に蓋体の嵌め合わせ方向の反対の方向に突出させれば、容器本体の正面内周と係止体の自由端部との接触に伴う反力により、蓋体をその嵌め合わせ方向に押しやることができ、蓋体の強固な嵌め合わせや施錠が期待できる。
【0018】
さらに、進退動係止体の係止体に、容器本体の正面内周に接触するローラを回転可能に支持させれば、接触に伴う塵埃やパーティクル等の発生を簡易な構成で抑制することができる。
【発明を実施するための最良の形態】
【0019】
以下、図面を参照して本発明の好ましい実施の形態を説明すると、本実施形態における基板収納容器は、図1ないし図9に示すように、二枚の半導体ウェーハWを収納する正面視略横長で不透明の容器本体1と、この容器本体1の開口した正面を開閉する正面視略横長で不透明の蓋体30と、これら容器本体1と蓋体30との間に介在される弾性のガスケット52とを備え、蓋体30に、容器本体1の正面に嵌合された際に施錠する小型の施錠機構40を内蔵するとともに、この施錠機構40を、回転プレートを有しない直線運動機構とするようにしている。
【0020】
半導体ウェーハWは、例えばICチップを効率良く製造することができるよう口径300mm(12インチ)の大きさを有する円板に薄くスライスされ、表面に酸化膜等の膜が選択的に積層形成される。
【0021】
容器本体1、蓋体30、施錠機構40は、例えばポリカーボネート、ポリブチレンテレフタレート、シクロオレフィンポリマー、ポリエーテルイミド、ポリエーテルケトン、ポリエーテルエーテルケトン、ポリアセタール、ポリオキシメチレン、ポリホルムアルデヒド等に、カーボン、炭素繊維、カーボンナノチューブ、金属繊維、金属酸化物、導電性高分子等が選択的に添加された成形材料により成形される。
【0022】
容器本体1は、図1ないし図3に示すように、所定の成形材料を使用してフロントオープンボックスタイプにインサート成形され、正面の長辺と短辺との長さの比が1.6〜25の範囲とされており、上下に並んだ二枚の半導体ウェーハWの整列収納に足るだけの空間を有している。この容器本体1は、その内部、具体的には両側壁内面と内底面の背面側とにティース体2用の嵌合溝7が連続した帯形に凹み形成される(図3、図4参照)。
【0023】
ティース体2は、同図に示すように、容器本体1の両側壁内面に嵌合溝7を介しそれぞれ着脱自在に嵌合されて半導体ウェーハWの裏面周縁部を下方から支持する複数対のティース3と、この複数対のティース3の後部である細い末端部を連結して容器本体1の内底面に嵌合溝7を介し着脱自在に嵌合される連結片4とを備えて平面略U字形に一体成形され、容器本体1の成形前後に容器本体1とは別に射出成形される。複数対のティース3は、半導体ウェーハWを水平に支持する左右一対のティース5が上下方向に所定の間隔で複数配列されることにより形成される。
【0024】
各ティース5は、同図に示すように、例えば半導体ウェーハWの周縁部に沿う平面略半円弧形の平板6と、この平板6の湾曲した前部内側上に形成される前部中肉領域と、平板6の前部外側上に形成されて前部中肉領域の外側、換言すれば、容器本体1の側壁寄りに位置する前部厚肉領域と、平板6の後部上に形成される後部中肉領域とから一体形成される。また、連結片4は、細長い平面略U字形に形成され、複数のティース5の細い末端部から下方に傾斜して容器本体1の背面壁の下方に位置し、半導体ウェーハWの後部周縁や容器本体1の背面壁との干渉を回避するよう機能する。
【0025】
このようなティース5は、前部中肉領域と前部厚肉領域との間に半導体ウェーハ接触用の段差が僅かに形成され、前部中肉領域と後部中肉領域とが半導体ウェーハWを略水平に支持するとともに、前部厚肉領域が収納された半導体ウェーハWの飛び出しを防止するストッパとして機能する。係るティース5の採用により、半導体ウェーハWの支持搭載位置の精度を向上させ、支持時に半導体ウェーハWが上下方向に斜めに傾斜するのを有効に防ぐことができる。
【0026】
容器本体1の底面には図1、図2、図4、図5に示すように、水平外方向に張り出すボトムプレート8が一体形成され、このボトムプレート8の周縁端部が上方に屈曲起立して補強機能を発揮する。ボトムプレート8の後部中央と両側部前方には、図示しない半導体の加工装置に対する位置決め用の位置決め溝9がそれぞれ断面略U字形あるいは略V字形に屈曲形成される。また、ボトムプレート8の後部両側には、蓋体30のカウンターウェイトやバランサーとして機能するウェイト10がそれぞれ内蔵される。
【0027】
ボトムプレート8の後部中央から側方にかけては、図4や図5に示すように、移動体識別装置であるRFIDシステムを構築するICタグ11が選択的に装着されるとともに、容器本体1の洗浄時に機能する複数の水切り孔12が所定の間隔をおいて穿孔される。これらICタグ11や水切り孔12は、必要に応じ、ボトムプレート8の前部、後部、側部に配設される(図4参照)。
【0028】
容器本体1の天井は、複数の段差を備えた平面略多角形に形成され、半導体ウェーハWの後部周縁に対応するよう後部両側がそれぞれ内方向に傾斜形成される。この容器本体1の天井中心部には図2に示すように、略円筒形の被取付リブ13が立設され、この被取付リブ13の外周面から略板形の補強リブ14が起立した状態で半径外方向に複数選択的に伸長されるとともに、各補強リブ14の円柱形を呈した先端部には螺子穴15が穿孔されており、これら被取付リブ13と複数の螺子穴15とには、搬送用の吊持フランジ16が螺子等の締結具を介し水平に螺着される。
【0029】
吊持フランジ16は、図1や図2に示すように、平面略三角形の平板に形成され、図示しない搬送機構に上方から着脱自在に把持される。そして、半導体の加工装置のスライド可能な吊持板に嵌合保持されることにより、基板収納容器が吊持された状態で加工装置にセットされる。
【0030】
容器本体1の正面は、横長の矩形に開口形成され、内周面の両側部には蓋体30用の施錠溝18がそれぞれ上下方向に切り欠かれる(図4参照)。この容器本体1の正面の両側部には図1、図2、図5に示すように、丸い複数の識別孔19が上下方向に並んだ状態でそれぞれ穿孔され、この複数の識別孔19に着脱自在の識別体20が選択的に挿入されることにより、基板収納容器のタイプ、半導体ウェーハWの有無や枚数等が加工装置に識別されることとなる。
【0031】
識別体20は、ポリカーボネート等の所定の合成樹脂を使用してピン形、割りピン形、螺子形、キャップ形等に形成され、加工装置の検出手段、例えば透過式や反射式の光電センサ、フォトセンサ、タッチセンサ等により検出される。
【0032】
容器本体1の背面壁の一部、例えば背面壁の中央部には図3や図5に示すように、透明の覗き窓21が略横長の矩形に形成され、この覗き窓21が看者に視覚的に活用されることにより、収納された半導体ウェーハWの有無やその状態が観察される。この覗き窓21は、必要に応じ、円形、楕円形、多角形等に形成される。
【0033】
蓋体30は、容器本体1の開口した正面に着脱自在に嵌合される断面略皿形で横長の筐体31と、この筐体31の開口した正面を着脱自在に覆う横長の表面プレート32とを備え、自動化に対応可能に構成される。筐体31は、図5や図6に示すように、内部両側に施錠機構40用の略U字形を呈した取付リブ33が複数配設され、裏面には、半導体ウェーハWの前部周縁を弾発的に保持する弾性のフロントリテーナ35が着脱自在に装着される。また、筐体31の周壁両側部には、施錠機構40用の貫通口36がそれぞれ矩形に穿孔され、各貫通口36が容器本体1の正面両側の施錠溝18に対向する。
【0034】
施錠機構40は、図6や図7に示すように、蓋体30の内部両側に支持され、容器本体1の正面に蓋体30が嵌合された場合に容器本体1の施錠溝18に対向する一対の進退動係止体41と、容器本体1の正面に蓋体30が嵌合された場合に容器本体1の施錠溝18に進退動係止体41を進出させてその先端部を干渉接触させる一対のコイルバネ47とを備えて構成される。
【0035】
各進退動係止体41は、筐体31の取付リブ33にスライド可能に貫通支持されて蓋体30の左右内外方向に水平に進退動可能な駆動部材42を備え、この駆動部材42の先端部には、容器本体1の施錠溝18に筐体31の貫通口36を貫通して嵌入する係止爪43が取付けられ、駆動部材42の取付リブ33を貫通した末端部には、蓋体30の表面プレート32の溝孔32aを貫通したロードポートのピン44挿入用の操作孔45が丸く穿孔されており、この操作孔45に挿入されたロードポートのピン44が外部からスライド操作されることにより、進退動係止体41がスライドして突出状態の係止爪43を筐体31内に後退させる。
【0036】
各コイルバネ47は、図6に示すように、駆動部材42の中央部に嵌通されて筐体31の取付リブ33と係止爪43との間に介在し、負荷の作用しない場合に係止爪43を弾圧付勢して筐体31の貫通口36から出没可能に突出させるよう機能する。
【0037】
ガスケット52は、例えばフッ素ゴムやシリコーンゴム等を使用して弾性変形可能なエンドレスの枠形に成形され、容器本体1の正面内周と蓋体30を構成する筐体31の周縁部とに挟持され、かつ圧接変形することにより気密機能を発揮し、半導体ウェーハWの汚染やパーティクルの発生を防止する。
【0038】
上記において、基板収納容器の容器本体1を得る場合には図8や図9に示すように、先ず、容器本体1の後部を形成するインサート部品60を予め成形して型開きした金型61のコア型62を形成するコア63の先端部に嵌入支持させ、キャビティ型64の鏡面加工された凹部65に対向するコア型62を嵌入してインサート部品60をインサートするとともに、凹部65を区画形成する複数の対向壁66の奥にインサート部品60を接触させ、金型61を型締めする。
【0039】
こうして金型61を型締めしたら、金型61に溶融した成形材料を射出してインサート部品60により後部が一体形成された中空の容器本体1を射出成形し、金型61を型締めした状態で保圧・冷却し、金型61のコア型62とキャビティ型64とを型開きした後、容器本体1を突き出しピンや突き出し板により突き出して落下させたり、専用のロボットで移送すれば、容器本体1を得ることができる。
【0040】
次いで、成形した容器本体1にティース体2を変形させながら嵌入して嵌合溝7に密嵌・位置決めし、容器本体1のボトムプレート8の後部両側にウェイト10をそれぞれ内蔵するとともに、ボトムプレート8の後部側方にICタグ11を装着し、容器本体1の被取付リブ13と複数の螺子穴15とに吊持フランジ16を螺着すれば、二枚の半導体ウェーハWを高精度に収納可能な容器本体1を完成させることができる。
【0041】
次に、容器本体1の開口した正面を蓋体30で閉じて施錠する場合には、先ず、容器本体1の開口した正面に蓋体30を開閉機構により押圧して嵌合する。すると、容器本体1の正面両側部に突出した各進退動係止体41の係止爪43が接触して蓋体30内に後退する。そしてその後、容器本体1の施錠溝18に係止爪43が対向し、負荷が作用しなくなると、圧縮されたコイルバネ47の復元作用により係止爪43が筐体31の貫通口36から直線的に突出し、容器本体1の施錠溝18に係止爪43が嵌入して蓋体30が強固に施錠されることとなる。
【0042】
上記構成によれば、既存の大きな施錠機構40を流用して内蔵するのではなく、横長の蓋体30に小型の施錠機構40を横にして配置するので、蓋体30の狭い内蔵スペースに施錠機構40を適切かつ容易に取付けることができる。また、回転プレートを外部から回転操作せずとも、各進退動係止体41の係止爪43が出没するので、回転プレートの省略により、蓋体30を開閉する開閉機構の構成が複雑化してしまうおそれを容易に排除することができる。
【0043】
また、容器本体1の開口した正面に蓋体30を嵌入すると、コイルバネ47の付勢作用により、容器本体1の施錠溝18に係止爪43が絶えず嵌入して施錠するので、基板収納容器の移動時に蓋体30の脱落を確実に防止することができる。また、容器本体1とティース体2とを一体成形して複雑化するのではなく、構成の簡素な容器本体1に形状の複雑なティース体2を別体として後から組み付けるので、金型61を簡易に構成することができ、容器本体1を成形する金型61の型開きが複雑化したり、コア型62を分割式にする必要が全くなく、金型61の構造の著しい簡素化を図ることが可能になる。
【0044】
また、ティース体2を別体としてその成形の自由度を向上させるので、ティース5の形状の自由度を大幅に向上させることが可能になる。また、複数対のティース5の末端部を連結片4が連結して一体化を図るので、容器本体1に各ティース5を嵌入して嵌合溝7に一々密嵌する必要が全くなく、組立性や作業性の向上が期待できる他、ティース体2の生産性や量産性の向上、高品質化が期待できる。また、ティース体2の連結片4が覗き窓21の下方に位置するので、覗き窓21を横切って障害物となることがなく、覗き窓21を用いる看者の視界を良好ならしめることが可能になる。
【0045】
また、コア型62のコア63の先端部に支持させたインサート部品60をキャビティ型64の凹部65に接触させて平坦なコア63の自由な先端部の振動を規制するので、例え流動性の成形材料に射出圧力差が生じても、キャビティ型64に嵌入するコア型62のコア63が煽られたり、撓むことがない。したがって、成形する容器本体1の上下左右の肉厚にバラツキの生じることがなく、しかも、コア型62のコア63が揺動して破損するのをきわめて有効に防止することができる。さらに、コア63の先端部にインサート部品60を単に支持させるのではなく、インサート部品60を嵌入してその成形時の位置や姿勢を安定させるので、容器本体1を高品質に成形することができる。
【0046】
次に、図10ないし図12は本発明の第2の実施形態を示すもので、この場合の各進退動係止体41は、筐体31の取付リブ33にスライド可能に貫通支持されて水平に進退動可能なSUS製の駆動部材42を備え、この駆動部材42の先端部には、容器本体1の施錠溝18に筐体31の貫通口36を貫通して嵌入する先細りの係止爪43が取付けられており、駆動部材42の取付リブ33を貫通した末端部には、筐体31の取付リブ33に接離可能に接触して駆動部材42の過剰な進出を規制する規制ストッパ48が螺着される。
【0047】
係止爪43には、筐体31内から突出したガイド34が遊挿され、規制ストッパ48には、表面プレート32の溝孔32aを遊貫して露出する操作突部49が形成されており、この操作突部49が外部からスライド操作されることにより、進退動係止体41がスライドして突出状態の係止爪43を筐体31内に後退させる。その他の部分については、上記実施形態と略同様であるので説明を省略する。
本実施形態においても上記実施形態と同様の作用効果が期待でき、しかも、進退動係止体41や操作部の構成の多様化を図ることができるのは明らかである。
【0048】
次に、図13は本発明の第3の実施形態を示すもので、この場合には、施錠機構40の進退動係止体41を、蓋体30の筐体31内に支持されてその左右内外方向に水平に進退動可能な駆動部材42と、蓋体30の周壁両側部に揺動可能に軸支されて駆動部材42の先端部に連結され、容器本体1の正面に蓋体30が嵌合された場合に容器本体1の施錠溝18に筐体31の貫通口36を介して嵌入する係止爪43と、駆動部材42に設けられてその過剰な進出を規制する規制ストッパ48とから構成するようにしている。
【0049】
駆動部材42は、細長い軸でも良いが、同図に示すように、複数のガイド34に案内される板でも良いし、組み合わされた複数枚の板でも良い。また、駆動部材42の両側部にピンをそれぞれ取り付け、各ピンを筐体31のガイド34に案内させることもできる。また、係止爪43は、略L字形に屈曲形成されてその屈曲部が蓋体30の貫通口36付近に揺動可能に軸支され、やや湾曲した自由端部50には、容器本体1の施錠溝18の正面側に摺接する複数のローラ51が支持軸を介し回転可能に軸支されており、末端部が駆動部材42の先端部に回転可能に連結軸支される。
【0050】
このような係止爪43は、容器本体1の正面に蓋体30が嵌入される際、コイルバネ47の付勢作用により、自由端部50のローラ51が蓋体30の嵌合方向とは反対の方向に突出する。
【0051】
上記において、容器本体1の開口した正面を蓋体30で閉じて施錠する場合には、容器本体1の開口した正面に蓋体30を開閉機構により押圧して嵌合する。すると、容器本体1の正面両側部に突出状態の各進退動係止体41の係止爪43が接触して蓋体30内に揺動しながら後退する。そして、容器本体1の施錠溝18に係止爪43が対向し、負荷が作用しなくなると、圧縮されたコイルバネ47の復元作用により係止爪43が筐体31の貫通口36から揺動(図13の矢印参照)しながら突出し、施錠溝18の正面側に係止爪43が嵌入して蓋体30が強固に施錠される。その他の部分については、上記実施形態と略同様であるので説明を省略する。
【0052】
本実施形態においても上記実施形態と同様の作用効果が期待でき、しかも、容器本体1の正面に蓋体30が嵌合される際、係止爪43のローラ51が蓋体30の嵌合方向とは反対の方向に突出して施錠溝18の正面側に嵌合接触し、この嵌合接触に伴う反力により、蓋体30をその容器本体1に対する嵌合方向に強く押圧するので、蓋体30の強固な嵌入や施錠が大いに期待できるのは明らかである。また、容器本体1の施錠溝18に係止爪43を直接接触させるのではなく、回転するローラ51を転がり接触させるので、係止爪43の接触に伴うパーティクルの発生を有効に防止することができるのは明らかである。
【0053】
次に、図14は本発明の第4の実施形態を示すもので、この場合には、進退動係止体41の係止爪43を略T字形に屈曲形成してその端部を蓋体30の貫通口36付近に揺動可能に軸支させ、係止爪43の自由端部50に、施錠溝18の正面側と対向する背面側18aに摺接する複数のローラ51を回転可能に軸支させており、係止爪43の末端部を駆動部材42の先端部に回転可能に連結軸支させるようにしている。その他の部分については、上記実施形態と略同様であるので説明を省略する。
【0054】
本実施形態においても上記実施形態と同様の作用効果が期待でき、しかも、進退動係止体41や係止爪43の構成の多様化を図ることができるのは明白である。
【0055】
なお、上記実施形態では容器本体1に半導体ウェーハWを二枚収納したが、何らこれに限定されるものではなく、容器本体1に半導体ウェーハWを一枚あるいは三枚のみ収納するようにしても良い。また、同様の作用効果が期待できるのであれば、容器本体1の両側壁と内底面とに連続しない嵌合溝7を凹み形成しても良い。また、容器本体1とティース体2とを一体化しても良い。また、容器本体1とボトムプレート8とを一体化しても良いが、別体としても良い。また、吊持フランジ16を平面円形や多角形等に形成したり、容器本体1の両側部等に着脱自在に装着することもできる。
【0056】
また、特に支障を来たさなければ、複数対のティース5の後部や中央部を連結片4により連結することもできる。また、上記実施形態では容器本体1の正面内周面の両側部に施錠溝18を形成したが、何らこれに限定されるものではなく、例えば容器本体1の正面内周面の四隅部に施錠溝18をそれぞれ形成するとともに、筐体31の周壁四隅部に施錠機構40用の貫通口36をそれぞれ穿孔し、各貫通口36から進退動係止体41の係止爪43を突出させることもできる。
【0057】
また、容器本体1の正面内周面の対角線上の二隅部に施錠溝18をそれぞれ形成するとともに、筐体31の対角線上の周壁二隅部に施錠機構40用の貫通口36をそれぞれ穿孔し、各貫通口36から進退動係止体41の係止爪43を突出させることもできる。また、駆動部材42の末端部ではなく両側部あるいは側部等に、筐体31から突出した被規制ピンに接触して駆動部材42の過剰な進出を規制する規制ストッパ48を形成しても良い。
【0058】
また、各進退動係止体41を蓋体30の左右内外方向に進退動させる際、筐体31の厚さ方向に傾斜させながら進退動させても良い。さらに、上記実施形態では駆動部材42にコイルバネ47を嵌通させたが、何らこれに限定されるものではない。例えば、筐体31と駆動部材42又は係止爪43とを必要数のバネにより連結し、このバネにより係止爪43を弾圧付勢して筐体31の貫通口36から出没可能に突出させても良い。さらにまた、第1の実施形態の係止爪43の端部に必要数のローラ51を回転可能に軸支させても良い。
【図面の簡単な説明】
【0059】
【図1】本発明に係る基板収納容器用蓋体及び基板収納容器の実施形態を模式的に示す全体斜視説明図である。
【図2】本発明に係る基板収納容器用蓋体及び基板収納容器の実施形態を模式的に示す分解斜視説明図である。
【図3】本発明に係る基板収納容器の実施形態における容器本体を模式的に示す正面説明図である。
【図4】本発明に係る基板収納容器の実施形態における容器本体を模式的に示す断面平面図である。
【図5】本発明に係る基板収納容器用蓋体及び基板収納容器の実施形態を模式的に示す後部斜視説明図である。
【図6】本発明に係る基板収納容器用蓋体及び基板収納容器の実施形態における蓋体と施錠機構を模式的に示す斜視説明図である。
【図7】本発明に係る基板収納容器用蓋体及び基板収納容器の実施形態における蓋体と施錠機構を模式的に示す透視斜視説明図である。
【図8】本発明に係る基板収納容器の実施形態における容器本体用の成形金型を模式的に示す部分断面説明図である。
【図9】本発明に係る基板収納容器の実施形態における成形金型のコア型を模式的に示す平面説明図である。
【図10】本発明に係る基板収納容器用蓋体及び基板収納容器の第2の実施形態を模式的に示す全体斜視説明図である。
【図11】本発明に係る基板収納容器用蓋体及び基板収納容器の第2の実施形態を模式的に示す分解斜視説明図である。
【図12】本発明に係る基板収納容器用蓋体及び基板収納容器の第2の実施形態における施錠機構を模式的に示す断面説明図である。
【図13】本発明に係る基板収納容器用蓋体及び基板収納容器の第3の実施形態における施錠機構を模式的に示す斜視説明図である。
【図14】本発明に係る基板収納容器用蓋体及び基板収納容器の第4の実施形態における施錠機構を模式的に示す断面説明図である。
【符号の説明】
【0060】
1 容器本体
2 ティース体
5 ティース
18 施錠溝
18a 背面側
30 蓋体
31 筐体
32 表面プレート
32a 溝孔
33 取付リブ
34 ガイド
36 貫通口
40 施錠機構
41 進退動係止体
42 駆動部材
43 係止爪(係止体)
44 ピン
45 操作孔(操作部)
47 コイルバネ(弾性付勢体)
48 規制ストッパ(規制部材)
49 操作突部(操作部)
50 自由端部
51 ローラ
52 ガスケット
W 半導体ウェーハ(基板)

【特許請求の範囲】
【請求項1】
三枚以下の基板を収納する正面視略横長の容器本体の開口した正面を開閉する蓋体に、容器本体の正面に嵌め合わされた蓋体を施錠する施錠機構を設けた基板収納容器用蓋体であって、
施錠機構は、正面視略横長の蓋体に支持され、容器本体の正面に蓋体が嵌め合わされる場合に容器本体の正面内周に対向する進退動係止体と、容器本体の正面に蓋体が嵌め合わされる場合に容器本体の正面内周に進退動係止体を進出させてその先端部を干渉させる弾性付勢体とを含んでなることを特徴とする基板収納容器用蓋体。
【請求項2】
施錠機構の進退動係止体は、蓋体に支持されてその内外方向に進退動可能な駆動部材と、この駆動部材の先端部側に設けられ、容器本体の正面に蓋体が嵌め合わされる場合に容器本体の正面内周に接触する係止体とを含んでなる請求項1記載の基板収納容器用蓋体。
【請求項3】
施錠機構の進退動係止体は、蓋体に支持されてその内外方向に進退動可能な駆動部材と、蓋体に回転可能に支持されて駆動部材の先端部側に回転可能に連結され、容器本体の正面に蓋体が嵌め合わされる場合に容器本体の正面内周に接触する係止体とを含んでなる請求項1記載の基板収納容器用蓋体。
【請求項4】
施錠機構の進退動係止体は、駆動部材に設けられてその過剰な進出を規制する規制部材を含んでなる請求項2又は3記載の基板収納容器用蓋体。
【請求項5】
施錠機構の進退動係止体は、駆動部材と規制部材の少なくともいずれか一方に設けられて蓋体の外部から操作可能な操作部を含んでなる請求項4記載の基板収納容器用蓋体。
【請求項6】
進退動係止体の係止体を屈曲形成してその屈曲部付近を蓋体の内部周縁に回転可能に支持させ、この係止体の自由端部を容器本体の正面に蓋体が嵌め合わされる場合に蓋体の嵌め合わせ方向とは反対の方向に突出させるようにした請求項3、4、又は5記載の基板収納容器用蓋体。
【請求項7】
進退動係止体の係止体に、容器本体の正面内周に接触するローラを回転可能に支持させた請求項2ないし6いずれかに記載の基板収納容器用蓋体。
【請求項8】
三枚以下の基板を収納する正面視略横長の容器本体の開口した正面を、請求項1ないし7いずれかに記載の基板収納容器用蓋体により開閉することを特徴とする基板収納容器。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【図6】
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【図7】
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【図8】
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【図9】
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【図10】
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【図11】
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【図12】
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【図13】
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【図14】
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【公開番号】特開2008−211015(P2008−211015A)
【公開日】平成20年9月11日(2008.9.11)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2007−46833(P2007−46833)
【出願日】平成19年2月27日(2007.2.27)
【出願人】(000190116)信越ポリマー株式会社 (1,394)
【Fターム(参考)】