説明

基板把持機構

【課題】駆動源を必要とせず、単純な構成でシリコンウェハ等の基板を適切に把持する基板把持機構の提供。
【解決手段】開放端部において把持部材11のそれぞれを支持するアーム部21を有し、把持部材11を基板100の中心軸回りに一体的に回転させる回転機構20と、基板100の中心軸を中心とする環状を呈するリング8と、アーム部21にリング8をフローティングマウントするフローティングマウント機構311と、一端部にリング押え311bを支持し、アーム部21の開放端部に揺動自在に支持された揺動部材312を有し、リング8に発生する慣性力を、把持部材11の回転を開始又は停止する際に揺動部材312の他端部を基板100の端縁から中心軸に向かう方向に揺動させる揺動力に変換する伝達機構31と、を備える。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
この発明は、複数の把持部材を用いてシリコンウェハ等の基板を把持する基板把持機構に関する。
【背景技術】
【0002】
半導体の製造に用いられるシリコンウェハ等の円形薄型基板(以下、単に基板という。)には、製造プロセスにおいて必要とされる結晶方向を明示するため、予め基板の外周部に直線部分(オリフラ)又はV字状の切欠き(ノッチ)が形成されている。半導体の製造プロセスでは、一般に、複数枚の基板がカセットケースに収納されており、ロボットアームを介してカセットケースから1枚ずつ基板を取り出してプロセス装置に搬入される。
【0003】
通常、カセットケースには、複数枚の基板が中心軸周りにおける互いの角度位置を統一せずに収納されているため、カセットケースから基板を取り出した後、プロセス装置に搬入する前に、オリフラ又はノッチを基準にして基板を中心軸周りにおける所定の角度位置に補正する必要がある。
【0004】
そこで、複数のアーム部のそれぞれの開放端部に把持部材を備えた基板角度位置補正装置が使用されている(例えば、特許文献1参照。)。基板は、搬送ロボットのハンドによって搬送され、この補正装置の基板受部に載置された後に複数の把持部材に把持される。具体的には、基板受部に載置された後に複数のアーム部の一つを基板の中心軸から離隔する方向に移動させつつ、基板の高さ位置まで上昇させ、且つ、その他のアーム部も基板の高さ位置まで上昇させる。その後、離隔したアーム部を離隔する前の当初の位置に戻すことで、このアーム部の開放端部に位置する把持部材を基板の端縁に当接させ、複数の把持部材の全体で基板の端縁を把持する。
【特許文献1】特開2003−163258号公報
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0005】
しかしながら、上述の特許文献1の構成では、基板を把持するためにアーム部の一つを基板の中心軸から接離させる駆動源、この駆動源からの駆動力を伝達するための駆動機構が必要となるので、構成が複雑となり、またコストアップの要因となっていた。
【0006】
この発明の目的は、駆動源を必要とせず、単純な構成で基板を適切に把持することができる基板把持機構を提供することにある。
【課題を解決するための手段】
【0007】
(1)基板の端縁周りに位置する複数の把持部材を備え、
前記複数の把持部材のうちの少なくとも1つは、回転軸によって揺動自在に支持され、前記基板の端縁を複数の把持部材に載置した際に該基板の重量によって該基板の端縁から中心に向かう方向に揺動し、他の前記把持部材とともに該基板の端縁を把持することを特徴とする。
【0008】
この構成においては、載置した基板の重量によって揺動する把持部材が少なくとも1つ含まれている。したがって、複数の把持部材に基板の端縁が載置された際、把持部材の少なくとも1つが揺動して基板の端縁を中心軸に向かって当接するので、他の把持部材に基板の端縁が当接し、複数の把持部材の全体で基板が把持される。
【0009】
(2)前記基板の中心軸から延びたアーム部であって開放端部において前記複数の把持部材のそれぞれを支持する複数のアーム部を有し、前記複数の把持部材を前記基板の中心軸回りに一体的に回転させる回転機構と、
前記中心軸を中心とする環状を呈するリングと、
前記回転軸は、前記アーム部の開放端部に位置し、
前記回転軸が位置する前記アーム部に前記リングをフローティングマウントするフローティングマウント機構と、を有し、
前記揺動自在な前記把持部材は、一端部に前記フローティングマウント機構の一部を支持し、他端部に前記基板の端縁が載置され、
前記フローティングマウント機構は、前記リングに発生する慣性力を、前記回転機構が前記複数の把持部材の回転を開始又は停止する際に前記他端部を前記基板の端縁から前記中心軸に向かう方向に揺動させる揺動力に変換する伝達機構と、を含むことを特徴とする。
【0010】
この構成においては、載置した基板の重量によって揺動する把持部材が少なくとも1つ含まれる複数の把持部材のそれぞれが複数のアーム部の開放端部で支持されている。また、リングをアーム部にフローティングマウントするフローティングマウント機構に含まれる伝達機構によって、回転機構が複数の把持部材の回転を開始又は停止する際、把持部材の他端部が基板の端縁から中心軸に向かう方向に揺動する。
【0011】
したがって、複数の把持部材の回転が開始又は停止する際、揺動する把持部材が基板の端縁にさらに強く当接する。
【0012】
(3)前記基板の中心軸から延びたアーム部であって開放端部において前記複数の把持部材のそれぞれを支持する複数のアーム部を有し、前記複数の把持部材を前記基板の中心軸回りに一体的に回転させる回転機構と、
前記中心軸を中心とする環状を呈するリングと、
前記揺動自在な前記把持部材を支持する前記アーム部に前記リングをフローティングマウントするフローティングマウント機構と、一端部に該フローティングマウント機構の一部を支持し、前記アーム部の開放端部に揺動自在に支持された揺動部材と、を有し、前記リングに発生する慣性力を、前記回転機構が前記複数の把持部材の回転を開始又は停止する際に該揺動部材の他端部を前記基板の端縁から前記中心軸に向かう方向に揺動させる揺動力に変換する伝達機構と、を備え、
前記回転軸は、前記揺動部材の他端部に支持されていることを特徴とする。
【0013】
この構成においては、載置した基板の重量によって揺動する把持部材が少なくとも1つ含まれる複数の把持部材のそれぞれが複数のアーム部の開放端部で支持されている。また、アーム部の開放端部で揺動自在に支持された揺動部材において、他端部に回転軸を介して把持部材が支持され、一端部に環状のリングをフローティングマウントしているフローティングマウント機構の一部が支持されている。この揺動部材を備えた伝達機構によって、回転機構が複数の把持部材の回転を開始又は停止する際、揺動部材の他端部とともに把持部材が基板の端縁から中心軸に向かう方向に揺動する。
【0014】
したがって、複数の把持部材の回転が開始又は停止する際、揺動する把持部材が基板の端縁にさらに強く当接する。
【0015】
(4)前記リングは、外周面の一部に内側に凸なる湾曲部を呈し、
前記フローティングマウント機構は、前記湾曲部と、前記伝達機構を構成する前記リングの内周面に当接するリングガイドと、前記湾曲部に当接するリング押えと、を有し、
前記フローティングマウント機構の一部は、前記リング押えであることを特徴とする。
【0016】
この構成においては、リングの内周面にリングガイドが当接し、リングの外周面の湾曲部にリング押えが当接されてリングがアーム部にフローティングマウントされている。そのため、アーム部が回転を始めた際、慣性力によりリングは静止し続けようとするので、湾曲部に当接しているリング押えが回転方向に湾曲形状に沿って摺動する。この時、リング押えは、摺動前よりも中心軸から遠ざかる方向にも移動する。
【0017】
その後、回転が一定速度で安定している間は、リングがアーム部と等しい速度で回転しているので、リング押えは摺動する前に位置していた湾曲部の最も内側の位置に戻る。
【0018】
一方、アーム部の回転が停止する際も、慣性力によりリングは回転し続けようとするため、湾曲部に当接しているリング押えが回転方向とは反対方向に湾曲形状に沿って摺動する。この時、リング押えは、摺動前よりも中心軸から遠ざかる方向にも移動する。その後、リング押えは摺動する前に位置していた湾曲部の最も内側の位置に戻る。
【0019】
したがって、リング押えが把持部材の一端部又は揺動部材の一端部に位置しているので、複数の把持部材の回転が開始又は停止する際、把持部材の他端部又は揺動部材の他端部が基板の端縁から中心軸に向かう方向に揺動する。
【0020】
(5)前記揺動自在な前記把持部材に、前記複数の把持部材の回転が停止している間は前記リング押えが前記リングの外周面から前記中心軸に向かう方向のモーメント力を作用させ、前記複数の把持部材が回転している間は前記他端部が前記基板の端縁から前記中心軸に向かう方向にモーメント力を作用させる錘を、前記一端部側に配置したことを特徴とする。
【0021】
この構成においては、把持部材の一端側に錘が配置され、複数の把持部材が回転していない間、錘の重量によってリング押えにリングを当接する当接力が付与され、複数の把持部材が回転している間、錘に作用する遠心力によって把持部材の他端部が基板を当接する当接力が付与される。
【0022】
(6)前記揺動部材に、前記複数の把持部材の回転が停止している間は前記リング押えが前記リングの外周面から前記中心軸に向かう方向のモーメント力を作用させ、前記複数の把持部材が回転している間は前記他端部が前記基板の端縁から前記中心軸に向かう方向にモーメント力を作用させる錘を、前記一端部側に配置したことを特徴とする。
【0023】
この構成においては、揺動部材の一端側に錘が配置され、複数の把持部材が回転していない間、錘によってリング押えにリングを当接する当接力が付与され、複数の把持部材が回転している間、錘に作用する遠心力によって把持部材の他端部が基板を当接する当接力が付与される。
【発明の効果】
【0024】
(1)載置した基板の重量によって揺動する把持部材を少なくとも1つ含んだ複数の把持部材を用いて基板の端縁を把持することによって、駆動源を用いることなく、単純な構成で容易に基板の端縁を把持することができる。
【0025】
(2)リングの慣性力を揺動力に変換する伝達機構を備えることによって、把持された基板が最もずれ易い回転の開始及び停止の際に基板をより強く把持することができる。
【0026】
(3)把持部材の一端部又は揺動部材の一端部に、リングをフローティングマウントしているリング押えを支持することによって、把持された基板が最もずれ易い回転の開始及び停止の際に単純な構成で基板をより強く把持することができる。
【0027】
(4)把持部材の一端側又は揺動部材の一端側に錘を配置することによって、複数の把持部材が回転している間であっても基板の把持力を向上させることができる。
【発明を実施するための最良の形態】
【0028】
図1はこの発明の実施形態に係る基板把持機構を適用した基板角度位置補正装置10の構成を示す概略図であり、図1(A)は平面図、図1(B)は側面図である。基板角度位置補正装置10は、図示しないロボットアームによって搬入された基板100の端縁に形成された単一のノッチを、基板100の中心軸周りにおける所定の角度位置に位置させることで基板100の角度位置が後の処理に適するように一定にする。
【0029】
このため、基板角度位置補正装置10は、3個の把持部材11,12,13、回転機構20、伝達機構31,32,33、エンコーダ4、3個のノッチ検出器(以下、センサという。)51,52,53、図示しない基板昇降ピン及び図示しない昇降モータを備えている。なお、以下において、基板100の中心軸周りにおける角度位置を、回転角度位置という。
【0030】
把持部材11は、図2に示すように回転軸111において揺動自在に支持され、載置部112及び錘部113等から構成されている。
【0031】
載置部112は、回転軸111の配置位置よりも基板100の中心軸側に位置し、基板100の端縁が載置される。錘部113は、回転軸111の配置位置よりも基板100の中心軸から離れる位置にある。
【0032】
そのため、基板100の端縁が載置されてない状態においては、錘部113の重量により作用するモーメント力によって把持部材11は図2において時計回りに揺動し、図示しないストッパーによって図2の2点鎖線に示す状態で停止している。逆に、基板100の端縁が載置された状態においては、基板100の重量により作用するモーメント力によって把持部材11は図2において反時計回りに揺動し、図2の実線に示す状態で停止している。この時、載置部112が基板100の端縁を基板100の中心軸に向かう方向に当接する。
【0033】
また、他の把持部材12,13も把持部材11と同様に構成され、把持部材11,12,13が全体で基板100の端縁を当接し、把持する。
【0034】
回転機構20は、3つのアーム部21,22,23、回転モータ24等から構成され、把持された基板100を回転させる。また。アーム部21,22,23は、開放端部において把持部材11,12,13を支持し、基板100の中心軸周りに120度の角度間隔で配置されている。なお、本実施形態では、3つのアーム部21,22,23及び把持部材11,12,13を等角度間隔に配置しているが特にこれに限定されるものではなく、2以上のアーム部及び2以上の把持部材を等角度間隔に配置した構成であればよい。アーム部21,22,23は、基部において支持板25に固定されている。回転モータ24は、アーム部21,22,23を支持板25とともに一体的に回転させる。
【0035】
伝達機構31は、図2に示すように、フローティングマウント機構311、揺動部材312等から構成されている。フローティングマウント機構311は、リングガイド311a、リング押え311b等から構成され、リング8をアーム部21にフローティングマウントする。
【0036】
リングガイド311aは、アーム部21に支持され、リング8の内周面に当接している。リング押え311bは、揺動部材312の一端側に支持され、図3(A),(B)に示すようにリング8の外周面の湾曲部81に当接している。
【0037】
揺動部材312は、回転軸314によってアーム部21の開放端部において揺動自在に支持され、一端部にリング押え311b及び錘313、他端部に把持部材11を支持する回転軸111が支持されている。
【0038】
錘313は、揺動部材312の一端部におけるリング押え311bに対向する位置にある。また、錘313は、把持部材11,12,13の回転が停止している間、揺動部材312に時計回り方向(リング押え311bがリング8に当接する方向)のモーメント力を作用させる。逆に、把持部材11,12,13が回転している間、揺動部材312に反時計回り方向(把持部材11が基板100の端縁に当接する方向)にモーメント力を作用させる。伝達機構32,33も伝達機構31と同様に構成されている。
【0039】
リング押え311bは、湾曲部81の範囲内で摺動自在に当接している。そのため、把持部材11,12,13の回転が停止している際(基板100が載置されている状態を含む。)、リング押え311bは、図3(A)に示すように湾曲部81の最も内側に位置する。この時、把持部材11は、図2の2点鎖線及び実線に示す状態となる。
【0040】
把持部材11,12,13の回転が開始される際、リング8には停止し続けようとする慣性力が発生しているので、リング押え311bは、図3(B)に示すようにリング8よりも先に回転を開始し、湾曲部81上を把持部材11,12,13の回転方向に摺動する。この時、把持部材11は、図2の2点鎖線及び実線に示す状態から反時計回りに揺動して図2の点線に示す状態となる。
【0041】
さらに、把持部材11,12,13の回転が停止される際についても、リング8には回転し続けようとする慣性力が発生しているので、リング押え311bは、リング8よりも先に減速(停止)し、把持部材11,12,13の回転方向とは逆方向に摺動する。この時、把持部材11は、図2の実線に示す状態から反時計回りに揺動して図2の点線に示す状態となる。
【0042】
これによって、把持された基板が最もずれ易い回転の開始及び停止の際に単純な構成で基板100をより強く把持することができる。
【0043】
なお、錘313は、リング押え311bの摺動範囲が湾曲部81内となるような当接力を付与でき、且つ、回転時及び回転停止時に関わらず常にリング8が脱落しないよいうにリング押え311bの当接力を維持することができる重量であればよい。
【0044】
また、錘313は、回転時に遠心力が働いて揺動部材312を反時計回りに揺動させるので、把持部材11,12,13が回転している間であっても基板100の把持力を向上させることができる。
【0045】
エンコーダ4は、回転モータ24の回転軸に取り付けられており、アーム部21,22,23の回転角度位置を検出する。
【0046】
センサ51,52,53は、基板100の中心軸周りに120度の角度間隔で配置されている。なお、本実施形態では、3つのアーム部21,22,23及び3つの把持部材11,12,13を用いているので3つのセンサ51,52,53を等角度間隔に配置しているが特にこれに限定されるものではなく、アーム部及び把持部材と同数且つ等角度間隔が同一になるように複数のセンサを配置した構成であればよい。
【0047】
センサ51は、発光部51Aと受光部51B等から構成されている。発光部51Aは、上リング90に固定されている。発光部51Aは、例えば、ライン式レーザ、LED又は光ファイバを用いることができる。受光部51Bは、一例として、CCDラインセンサによって構成されており、下リング95に固定されている。受光部51Bには、カメラを用いることもできる。発光部51Aと受光部51Bとは、基板100の端縁を上下に挟んで対向している。センサ52,53は、センサ51と同様に構成されている。なお、発光部51Aを下リング95に固定し、受光部51Bを上リング90に固定することもできる。
【0048】
また、センサ51は、接続された図示しない制御部に検出信号を出力する。制御部は、基板角度位置補正装置10全体の動作を制御する。
【0049】
図4に示すように、基板100の周縁の一部にノッチ101が形成されている。一例として、ノッチ101がセンサ51に対向した場合、制御部は、センサ51の検出信号に基づいて、ノッチ101の谷部の回転角度位置を算出する
基板昇降ピンは、図示しない支持板に配置されている。昇降モータは、図示しない昇降機構を介して基板昇降ピンを上下に移動させる。基板昇降ピンは、昇降範囲の上限位置において、上リング90の底面と把持部材11,12,13の上面との間隙D内に位置する基板100の端縁に当接する。基板昇降ピンは、下限位置において、把持部材11,12,13に把持された基板100の底面から離間する。
【0050】
基板100は、図示しないロボットアームを介して間隔D内に水平方向に搬入される。このとき、基板100の中心軸は支持板25、上リング90及び下リング95の中心軸に一致する。
【0051】
図5は、上記基板角度位置補正装置10の制御部における処理手順を示すフローチャートである。また、図6は上記基板角度位置補正装置10におけるアーム部21,22,23の回転角度位置の変化状態を示す平面図であり、図6(A)は基板100の搬入時の状態を示し、図6(B)は基板100の回転前の状態を示す図である。
【0052】
制御部は、基板100が搬入される前に、予め、アーム部21,22,23の開放端部における把持部材11,12,13をセンサ51,52,53のいずれにも検出されない回転角度位置である搬入時位置(例えば、図6(A)に示す位置)に停止させておく(S1)。
【0053】
基板100が搬入されると、制御部は、昇降モータを駆動して基板昇降ピンを上昇させ、基板昇降ピン上に基板100を載置させる(S2,S3)。次いで、制御部は、センサ51,52,53の検出結果を読み取り(S4)、基板100のノッチ101がセンサ51,52,53の何れかによって検出されているか否かを判別する(S5)。
【0054】
この時、センサ51,52,53の何れかが基板100のノッチ101を検出している場合には、制御部は、昇降モータを駆動して基板昇降ピンを下降させ、把持部材11,12,13によって基板100を支持させる(S6)。
【0055】
なお、図示しないロボットハンドによって基板100が搬入された時点でセンサ51,52,53によるノッチの検出を行い、この後に把持部材11,12,13を回転させて基板昇降ピンを上昇させてもよい。
【0056】
S5において、センサ51,52,53の何れかもが基板100のノッチ101を検出していない場合には、制御部は、図6(B)に示すように、センサ51,52,53が把持部材11,12,13を検出する支持時位置まで、回転モータ24を駆動して把持部材11,12,13を一体的に回転させる(S7)。把持部材11,12,13の回転位置は、エンコーダ4の出力信号に基づいて管理することもできる。センサ51,52,53が把持部材11,12,13を検出すると、制御部は回転モータ24の駆動を停止し、昇降モータを駆動して基板昇降ピンを下降させ、把持部材11,12,13によって基板100を支持させる(S8)。そして、制御部は、センサ51,52,53の何れかが基板100のノッチ101を検出するまで、回転モータ24を駆動して把持部材11,12,13とともに基板100を回転させる(S9,S10)。
【0057】
センサ51,52,53の何れかが基板100のノッチ101を検出すると、制御部は、回転モータ2の駆動を停止し、センサ51,52,53の何れかの検出結果に基づいてノッチ101の正確な制御回転角度を測定する(S11)。この制御回転角度は、例えば、図示しないプロセス装置に基板100を搬入する際に、ノッチ101が位置すべき回転角度位置を原点として、平面視における時計方向の回転を+、反時計方向を−とした基板100の中心軸周りの角度である。
【0058】
制御部は、エンコーダ4の検出結果を参照しつつ回転モータ24を駆動し、把持部材11,12,13とともに基板100を制御回転角度だけ回転させ、基板100の回転角度位置を補正する(S12)。この後、制御部は、昇降モータを駆動して基板昇降ピンを上昇させ、基板昇降ピン上に基板100を載置させる。次いで、昇降モータを駆動して基板昇降ピンを下降させて基板100を把持できる位置に挿入された図示しないロボットアームに基板100を渡す(S13)。
【0059】
なお、本実施形態では、本発明に係る基板100の重量によって揺動する構成及び伝達機構31,32,33を備えた構成の把持部材11,12,13を用いたが、少なくとも1つの把持部材が、上記構成を有していればよい。
【0060】
(第2実施形態)
本実施形態では、第1実施形態と略同様の構成であるが、把持部材201,202,203によって基板100の端縁が把持される。把持部材201は、一端部にリング押え311b及び錘313が支持され、他端部に載置部112及び錘部113が形成されている。把持部材201は、アーム部21において回転軸221によって揺動自在に支持され、載置部112に基板100の載置することで反時計回りに揺動する。把持部材202,203も把持部材201と同様に構成されているので、揺動により把持部材201,202,203の全体で基板100を把持する。
【0061】
また、把持部材201は、把持部材201,202,203の回転の開始及び停止の際、リング押え311bの湾曲部81上での摺動によって、反時計回りに揺動する。これにより、さらに強く載置部112が基板100の端縁に当接する。つまり、回転軸221が、第1実施形態における回転軸111,314の機能を果たす。
【0062】
なお、本実施形態では、第1実施形態のように揺動部材が用いられておらず、本実施形態における伝達機構31,32,33は、フローティングマウント機構311,321,331に含まれた状態となる。
【0063】
これによって、第1実施形態と同様の効果を得ることができる。なお、本実施形態では、本発明に係る基板100の重量によって揺動する構成及びフローティングマウント機構311,321,331を備えた構成の把持部材201,202,203を用いたが、少なくとも1つの把持部材が、上記構成を有していればよい。
【0064】
第1実施形態及び第2実施形態では、基板把持機構を備えた基板角度位置補正装置10について説明したが、特にこれに限定されるものではなく、スピンコートを実施する装置等にも適用可能である。また、本発明の基板の重量によって複数の把持部材で基板の端縁を把持する構成は、回転機構を備えた装置に限定されず、回転機構を備えていない基板を搬送するロボットハンド等にも適用可能である。
【図面の簡単な説明】
【0065】
【図1】この発明の実施形態に係る基板角度位置補正装置10の構成を示す概略の平面図及び側面図である。
【図2】図1(B)の斜線部を拡大した拡大側面図である。
【図3】上記基板角度位置補正装置10のフローティングマウント機構31の動作を示す拡大下面図である。
【図4】センサ51によるノッチ101の検出状態を示す図である。
【図5】上記基板角度位置補正装置10の制御部における処理手順を示すフローチャートである。
【図6】上記基板角度位置補正装置10における基板100の搬入時及び基板100の回転前の把持部材11,12,13の回転角度位置の変化状態を示す平面図である。
【図7】アーム部21の開放端部周辺の構成を示す拡大側面図である。
【符号の説明】
【0066】
8 リング
10 基板角度位置補正装置
11,12,13 把持部材
20 回転機構
21,22,23 アーム部
31,32,33 伝達機構
81 湾曲部
100 基板
111,221,314 回転軸
311 フローティングマウント機構
311a リングガイド
311b リング押え
312 揺動部材
313 錘

【特許請求の範囲】
【請求項1】
基板の端縁周りに位置する複数の把持部材を備え、
前記複数の把持部材のうちの少なくとも1つは、回転軸によって揺動自在に支持され、前記基板の端縁を複数の把持部材に載置した際に該基板の重量によって該基板の端縁から中心に向かう方向に揺動し、他の前記把持部材とともに該基板の端縁を把持することを特徴とする基板把持機構。
【請求項2】
前記基板の中心軸から延びたアーム部であって開放端部において前記複数の把持部材のそれぞれを支持する複数のアーム部を有し、前記複数の把持部材を前記基板の中心軸回りに一体的に回転させる回転機構と、
前記中心軸を中心とする環状を呈するリングと、
前記回転軸は、前記アーム部の開放端部に位置し、
前記回転軸が位置する前記アーム部に前記リングをフローティングマウントするフローティングマウント機構と、を有し、
前記揺動自在な前記把持部材は、一端部に前記フローティングマウント機構の一部を支持し、他端部に前記基板の端縁が載置され、
前記フローティングマウント機構は、前記リングに発生する慣性力を、前記回転機構が前記複数の把持部材の回転を開始又は停止する際に前記他端部を前記基板の端縁から前記中心軸に向かう方向に揺動させる揺動力に変換する伝達機構と、を含むことを特徴とする請求項1に記載の基板把持機構。
【請求項3】
前記基板の中心軸から延びたアーム部であって開放端部において前記複数の把持部材のそれぞれを支持する複数のアーム部を有し、前記複数の把持部材を前記基板の中心軸回りに一体的に回転させる回転機構と、
前記中心軸を中心とする環状を呈するリングと、
前記揺動自在な前記把持部材を支持する前記アーム部に前記リングをフローティングマウントするフローティングマウント機構と、一端部に該フローティングマウント機構の一部を支持し、前記アーム部の開放端部に揺動自在に支持された揺動部材と、を有し、前記リングに発生する慣性力を、前記回転機構が前記複数の把持部材の回転を開始又は停止する際に該揺動部材の他端部を前記基板の端縁から前記中心軸に向かう方向に揺動させる揺動力に変換する伝達機構と、を備え、
前記回転軸は、前記揺動部材の他端部に支持されていることを特徴とする請求項1に記載の基板把持機構。
【請求項4】
前記リングは、外周面の一部に内側に凸なる湾曲部を呈し、
前記フローティングマウント機構は、前記湾曲部と、前記伝達機構を構成する前記リングの内周面に当接するリングガイドと、前記湾曲部に当接するリング押えと、を有し、
前記フローティングマウント機構の一部は、前記リング押えであることを特徴とする請求項2又は3に記載の基板把持機構。
【請求項5】
前記揺動自在な前記把持部材に、前記複数の把持部材の回転が停止している間は前記リング押えが前記リングの外周面から前記中心軸に向かう方向のモーメント力を作用させ、前記複数の把持部材が回転している間は前記他端部が前記基板の端縁から前記中心軸に向かう方向にモーメント力を作用させる錘を、前記一端部側に配置したことを特徴とする請求項4に記載の基板把持機構。
【請求項6】
前記揺動部材に、前記複数の把持部材の回転が停止している間は前記リング押えが前記リングの外周面から前記中心軸に向かう方向のモーメント力を作用させ、前記複数の把持部材が回転している間は前記他端部が前記基板の端縁から前記中心軸に向かう方向にモーメント力を作用させる錘を、前記一端部側に配置したことを特徴とする請求項4に記載の基板把持機構。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【図6】
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【図7】
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【公開番号】特開2006−312225(P2006−312225A)
【公開日】平成18年11月16日(2006.11.16)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2005−136649(P2005−136649)
【出願日】平成17年5月9日(2005.5.9)
【新規性喪失の例外の表示】特許法第30条第3項適用申請有り 2004年12月1日から12月3日 SEMIジャパン主催の「セミコン・ジャパン2004」に出品
【出願人】(000108753)タツモ株式会社 (73)
【Fターム(参考)】