説明

基板研磨方法及びその装置

【課題】円形状基板を保持回転機構により保持して回転させ、テープ移送機構により研磨テープを間欠的又は連続的に移送させ、圧接機構によりテープ研磨機構の迂回研磨部と円孔の内周端面とを圧接し、研磨部揺動機構により迂回研磨部を円孔の内周端面に対向する方向に間欠的又は連続的に揺動運動させて研磨することにより円孔の内周端面をC面又はR面に研磨することができる。
【解決手段】研磨テープTを間欠的又は連続的に移送させるテープ移送機構Cと、迂回案内部Cにより側方に迂回案内された研磨テープの側方迂回部分Tを円孔Qの内周端面Mを研磨可能な迂回研磨部Kとするテープ研磨機構Dと、迂回研磨部を円孔の内周端面に対向する方向に間欠的又は連続的に揺動運動させて迂回研磨部により円孔の内周端面をC面又はR面に研磨するための研磨部揺動機構Fとを備えてなる。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、例えばハードディスク用プラッターとして用いられるガラス基板やアルミニウム基板などの磁気記録媒体用基板やCD、DVD、BDなどの光記録媒体用基板など、中心部に円孔を有する円形状基板の円孔の内周端面の研磨に用いられる基板研磨装置に関するものである。
【背景技術】
【0002】
ここにいう上記円形状基板とは、例えば、2.5インチ径、1.8インチ径、1.0インチ径、0.85インチ径の基板とされ、このうち、2.5インチ径にあっては、外周径が65mm、円孔の内周径は20mm、厚さは0.635mmとされ、又、1.8インチ径にあっては、外周径が48mm、円孔の内周径は12mm、厚さは0.508mmとされ、又、1.0インチ径にあっては、外周径が27.4mm、円孔の内周径は7mm、厚さは0.381mmとされ、又、0.85インチ径にあっては、外周径が21.6mm、円孔の内周径は6mm、厚さは0.381mmとされている。
【0003】
従来、この種の円形状基板の円孔の内周端面を研磨する方法として、遊離砥粒を含有した研磨液を用いて研磨ブラシ又は研磨パッドと回転接触させて研磨する方法が知られている。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0004】
【特許文献1】特開平11−221742号
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0005】
しかしながら上記従来構造の場合、円形状基板の内周端面に付着しているガラスや樹脂のパーティクル等の異物の除去性能、並びに、近年における円形状基板の記録密度の高密度化及び薄型化、さらには、高速回転化に伴い、円形状基板の仕様により決定される内周端面や外周端面のC面又はR面の表面粗さを含む鏡面研磨性能等の加工品質の向上に対応できないことがあるという不都合を有している。
【課題を解決するための手段】
【0006】
本発明はこのような不都合を解決することを目的とし、本発明のうちで、請求項1記載の方法の発明は、中心部に円孔を有する円形状基板の該円孔の内周端面を研磨するに際し、研磨テープを行戻移送案内すると共に該行戻移送案内される研磨テープの折返部分を側方に迂回案内して該研磨テープの側方迂回部分を上記円孔の内周端面を研磨可能な迂回研磨部とする研磨テープを用い、上記円形状基板を保持回転させ、該研磨テープを間欠的又は連続的に移送すると共に該迂回研磨部と該円孔の内周端面とを圧接し、かつ、該迂回研磨部を該円孔の内周端面に対向する方向に間欠的又は連続的に揺動運動させて該迂回研磨部により該円孔の内周端面をC面又はR面に研磨することを特徴とする基板研磨方法にある。
【0007】
又、請求項2記載の方法の発明は、上記迂回研磨部と上記円孔の内周端面とが圧接する内側圧接位置から上記迂回研磨部と上記円孔の外周端面とが圧接する外側圧接位置へと切替移動させて該円形状基板の内周端面及び外周端面を研磨することを特徴とするものである。
【0008】
又、請求項3記載の装置の発明は、中心部に円孔を有する円形状基板を保持して回転させる保持回転機構と、少なくとも、該円形状基板の円孔の内周端面を研磨する研磨加工機構とからなり、上記研磨加工機構には、研磨テープを間欠的又は連続的に移送させるテープ移送機構と、該研磨テープを行戻移送案内可能な行案内部及び戻案内部を有すると共に該行戻移送案内される研磨テープの折返部分を側方に迂回案内可能な迂回案内部を有し、該迂回案内部により側方に迂回案内された研磨テープの側方迂回部分を上記円孔の内周端面を研磨可能な迂回研磨部とするテープ研磨機構と、該迂回研磨部又は円形状基板を圧接移動して該迂回研磨部と該円孔の内周端面とを圧接可能な圧接機構と、該迂回研磨部を該円孔の内周端面に対向する方向に間欠的又は連続的に揺動運動させて該迂回研磨部により該円孔の内周端面をC面又はR面に研磨するための研磨部揺動機構とを備えてなることを特徴とする基板研磨装置にある。
【0009】
又、請求項4記載の装置の発明は、上記保持回転機構又は、上記研磨加工機構のうち、少なくとも上記テープ研磨機構と上記研磨部揺動機構とを、上記迂回研磨部と上記円孔の内周端面とが圧接する内側圧接位置から該迂回研磨部と該円孔の外周端面とが圧接する外側圧接位置へと切替移動させて該円形状基板の内周端面及び外周端面を研磨するための切替移動機構を備えてなることを特徴とするものであり、又、請求項5記載の装置の発明は、上記テープ研磨機構を上記迂回研磨部での上記研磨テープの移送方向と交差する方向に揺振運動させる揺振機構を設けてなることを特徴とするものであり、又、請求項6記載の装置の発明は、上記迂回案内部に上記研磨テープの行側部分及び戻側部分のうちの行側部分を行案内部から側方に折返すと共に戻側部分を側方から戻案内部に折返す二つの折返面部及び該両折返面部により側方に折り返された研磨テープを迂回案内すると共に研磨圧力を受ける受圧面部を設けてなることを特徴とするものであり、又、請求項7記載の装置の発明は、上記受圧面部はゴム又は合成樹脂等の弾性材或いは硬質材からなることを特徴とするものであり、又、請求項8記載の装置の発明は、上記研磨テープからなる上記迂回研磨部による研磨構造は乾式構造又は湿式構造であることを特徴とするものである。
【発明の効果】
【0010】
本発明は上述の如く、請求項1又は3記載の発明にあっては、円形状基板を保持回転機構により保持して回転させ、テープ移送機構により研磨テープを間欠的又は連続的に移送させ、圧接機構によりテープ研磨機構の迂回研磨部と円孔の内周端面とを圧接し、研磨部揺動機構により迂回研磨部を円孔の内周端面に対向する方向に間欠的又は連続的に揺動運動させて研磨することにより円孔の内周端面をC面又はR面に研磨することができ、円形状基板の内周端面に付着しているガラスや樹脂のパーティクル等の異物の除去性能、並びに、内周端面の鏡面研磨性能等の加工品質を向上することができ、かつ、内周端面をC面又はR面に容易に研磨することができ、さらには、研磨テープは行案内部及び戻案内部により行戻移送案内され、迂回案内部により研磨テープの折返部分を側方に迂回案内し、迂回案内部により側方に迂回案内された研磨テープの側方迂回部分を上記円孔の内周端面を研磨可能な迂回研磨部としているので、コンパクトで小さな迂回研磨部を形成することができ、それだけ周囲の部材に邪魔されることなく、円形状基板の円孔の内周端部を良好に研磨することができ、加工位置及び配置の融通性を高めることができる。
【0011】
又、請求項2又は4記載の発明にあっては、上記保持回転機構又は、上記研磨加工機構のうち、少なくとも上記テープ研磨機構と上記研磨部揺動機構とを、上記迂回研磨部と上記円孔の内周端面とが圧接する内側圧接位置から迂回研磨部と円孔の外周端面とが圧接する外側圧接位置へと切替移動させて円形状基板の内周端面及び外周端面を研磨するための切替移動機構を備えてなるから、円形状基板の外周端面をもC面又はR面に研磨することができ、円形状基板の内周端面及び外周端面を研磨することができ、加工作業性を向上することができる。
【0012】
又、請求項5記載の発明にあっては、上記テープ研磨機構を上記迂回研磨部での上記研磨テープの移送方向と交差する方向に揺振運動させる揺振機構を設けることにより、研磨テープの揺振運動による研磨作用が付加され、それだけ良好に研磨加工を行うことができ、又、請求項6記載の発明にあっては、上記迂回案内部に上記研磨テープの行側部分及び戻側部分のうちの行側部分を行案内部から側方に折返すと共に戻側部分を側方から戻案内部に折返す二つの折返面部及び両折返面部により側方に折り返された研磨テープを迂回案内すると共に研磨圧力を受ける受圧面部を設けてなるから、研磨テープの側方への迂回移送案内を良好に行うことができ、研磨テープの移送を円滑に行うことができ、又、請求項7記載の発明にあっては、上記受圧面部はゴム又は合成樹脂等の弾性材或いは硬質材からなるから、研磨圧力を良好に受けることができ、請求項8記載の発明にあっては、上記研磨テープからなる上記迂回研磨部による研磨構造を乾式構造又は湿式構造とすることにより、円形状基板の材質や研磨条件等の仕様に対応することができる。
【図面の簡単な説明】
【0013】
【図1】本発明の実施の形態例の全体正面図である。
【図2】本発明の実施の形態例の全体平面図である。
【図3】本発明の実施の形態例の部分側面図である。
【図4】本発明の実施の形態例の部分拡大斜視図である。
【図5】本発明の実施の形態例の部分拡大斜視図である。
【図6】本発明の実施の形態例の研磨テープの部分斜視図である。
【図7】本発明の実施の形態例の研磨テープの部分斜視図である。
【図8】本発明の実施の形態例の内周端面研磨の説明断面図である。
【図9】本発明の実施の形態例の内周端面研磨の説明側面図である。
【図10】本発明の実施の形態例の内周端面研磨の説明断面図である。
【図11】本発明の実施の形態例の内周端面研磨の説明断面図である。
【図12】本発明の実施の形態例の外周端面研磨の説明断面図である。
【図13】本発明の実施の形態例の外周端面研磨の説明側面図である。
【図14】本発明の実施の形態例の外周端面研磨の説明側面図である。
【発明を実施するための形態】
【0014】
図1乃至図14は本発明の実施の形態例を示し、この場合、中心部に円孔Qを有する円形状基板Wとしてのガラス基板の内周端面M及び外周端面NをC面又はR面に研磨する構造となっており、図1の如く、大別して、円形状基板Wを保持して回転させる保持回転機構Aと、円形状基板Wの円孔Qの内周端面M及び外周端面Nを研磨する研磨加工機構Bとからなり、この研磨加工機構Bには、研磨テープTを間欠的又は連続的に移送させるテープ移送機構Cと、研磨テープTを行戻移送案内可能な行案内部C及び戻案内部Cを有すると共に行戻移送案内される研磨テープTの折返部分を側方に迂回案内可能な迂回案内部Cを有し、迂回案内部Cにより側方に迂回案内された研磨テープTの側方迂回部分を上記円孔Qの内周端面Mを研磨可能な迂回研磨部Kとするテープ研磨機構Dと、円形状基板Wを圧接移動して迂回研磨部Kと円孔Qの内周端面M、及び迂回研磨部Kと円孔Qの外周端面Nとを圧接可能な圧接機構Eと、迂回研磨部Kを円孔Qの内周端面Mに対向する方向に間欠的又は連続的に揺動運動させて迂回研磨部Kにより円孔Qの内周端面M及び外周端面NをC面又はR面に研磨するための研磨部揺動機構Fとからなり、かつ、この場合、上記保持回転機構Aを上記迂回研磨部Kと上記円孔Qの内周端面Mとが圧接する内側圧接位置Hから迂回研磨部Kと円孔Qの外周端面Nとが圧接する外側圧接位置Lへと切替移動させて円形状基板Wの内周端面M及び外周端面Nを研磨するための切替移動機構Gとから構成されている。
【0015】
上記保持回転機構Aは、この場合、図1、図3の如く、機台1上に左右移動台2をガイド部2a・2a及び摺動部2b・2bにより摺動自在に設け、左右移動台2に円形状基板Wの外周端面Nを保持可能な固定ロール3a、駆動ロール3b及び押圧ロール3cからなる三個のロール列3を配置し、このうち、固定ロール3aは左右移動台2に軸架した遊転軸3dにより遊転自在に支持され、駆動ロール3bは駆動軸3eを介して左右移動台2に設けた回転用モータ3fにより駆動回転され、押圧ロール3cは支点軸3gを中心として退避揺動可能な支持アーム3hに遊転軸3iにより設けられ、しかして、手動又は図示省略の供給取出機構により円形状基板Wの外周端面Nを固定ロール3a及び駆動ロール3bに供給して支持させ、図3の想像線位置から実線位置へと支持アーム3hを揺動して押圧ロール3cを円形状基板Wの外周端面Nに当接し、固定ロール3a、駆動ロール3b及び押圧ロール3cからなる三個のロール列3により円形状基板Wの三点を保持し、この保持状態において、回転用モータ3fを駆動して駆動ロール3bにより円形状基板Wを円孔Qの中心Qを回転軸線として回転させるように構成している。
【0016】
上記テープ移送機構Cは、この場合、図1、図2の如く、機台1の上方に配置されたテープ機体4に繰出リール5及び巻取リール6を回転自在に配置し、繰出リール5に巻回された研磨テープTにバックテンション機構7のバックテンション用モータ7aによりバックテンションを付与しつつ送り機構8としての送り用モータ8aにより回転する送りロール8b及び挟圧ロール8cによって、繰出リール5側から上記テープ研磨機構Dを経て巻取リール6側へと研磨テープTを間欠的又は連続的に移送すると共に送り用モータ8aによりベルト機構8dを介して巻取リール6を回転させて巻取リール6に巻き取るように構成されている。
【0017】
上記研磨テープTは、この場合、例えば、ポリエステルフィルム、メタル、クロス、発泡体フィルム、植毛布等の基材に酸化アルミニウム、酸化クロム、シリコンカーバイド、ダイヤモンド等の所定粒度の固定砥粒をコーティング又は結合してなるものが用いられている。尚、このような基材に固定砥粒を固着した構造の研磨テープを用いて潤滑剤を用いない乾式研磨構造や基材に固定砥粒を固着した構造の研磨テープを用いて潤滑剤を供給しつつ研磨する湿式研磨構造、或いは、固定砥粒を固着していない織布、不織布、発泡体フィルム、植毛布を研磨テープとして用いて遊離砥粒を含む研磨剤を供給する湿式研磨構造を採用することがあり、よって、ここでいう研磨テープTは、固定砥粒を固着した構造の研磨テープや固定砥粒を固着していない構造の研磨テープをも含むものである。
【0018】
上記テープ研磨機構Dは、この場合、上記機台1の上方に配置されたテープ機体4に取付台9を取付け、図4、図5の如く、取付台9に研磨テープTを行戻移送案内可能な溝状の行案内部C及び溝状の戻案内部Cを有すると共に行戻移送案内される研磨テープTの折返部分を側方に迂回案内可能な四角柱状の迂回案内部Cを有し、迂回案内部Cにより側方に迂回案内された研磨テープTの側方迂回部分Tを上記円孔Qの内周端面Mを研磨可能な迂回研磨部Kとしてなり、この場合、迂回案内部Cに研磨テープTの行側部分T及び戻側部分Tのうちの行側部分Tを行案内部Cから側方に折返すと共に戻側部分Tを側方から側方迂回部分Tを介して戻案内部Cに折返す45度に切欠されてなる二つの折返面部10・11及び両折返面部10・11により側方に折り返された研磨テープTを迂回案内すると共に研磨圧力を受ける遊転ロール状の受圧面部12を設けて構成している。
【0019】
この場合、上記受圧面部12はゴム又は合成樹脂等の弾性材或いは硬質材からなるものが用いられ、弾性材からなる受圧面部12の場合には過大な研磨圧力を吸収することになる。
【0020】
上記圧接機構Eは、この場合、図2、図3の如く、上記左右移動台2の摺動ガイド用のガイド部2a・2aに圧接台13を摺動部13a・13aにより摺動自在に設け、圧接台13に圧接用シリンダ13bのシリンダ部13cを取付け、圧接用シリンダ13bのシリンダロッド13dを左右移動台2に連結し、圧接台13に左右移動台2の立ち上げ部を貫通して圧接位置調節用のストッパーボルト13eを螺着し、ストッパーボルト13eの頭部を左右移動台2の圧接位置を調節可能なストッパー部に形成し、円形状基板Wを圧接移動して迂回研磨部Kと円孔Qの内周端面M、及び迂回研磨部Kと円孔Qの外周端面Nとを圧接可能に構成している。
【0021】
上記研磨部揺動機構Fは、この場合、図1、図2の如く、機体1に揺動台14を揺動軸14aにより揺動自在に設けると共に揺動軸14aを揺動させる揺動用モータ14bを設け、揺動台14に上下調節台14cを摺動溝部14d及び調節ボルト14eにより上下調節自在に設け、上下調節台14cに前後移動台14fをガイド部14g・14g及び摺動部14h・14hにより摺動自在に設けると共に上下調節台14cに前後移動台14fを前後動作させる前後動用モータ14i及びボールネジ機構14jを設け、この前後移動台14fに前記テープ機体4を取付けて構成している。
【0022】
しかして、前後移動台14fを前進動作させることにより迂回研磨部Kを円形状基板Wの内孔Qの内周端面Mに対向位置させ、揺動台14を揺動軸14aの中心軸線Pを中心として揺動させることにより迂回研磨部Kを揺動自在に設け、上記迂回研磨部Kを円孔Qの内周端面Mに対向する方向に間欠的又は連続的に揺動運動させて迂回研磨部Kにより円孔Qの内周端面MをC面又はR面に研磨するように構成している。
【0023】
上記切替移動機構Gは、この場合、図2、図3の如く、機体1に切替移動用シリンダ15のシリンダ部15aを設け、上記左右移動台2に切替移動用シリンダ15のシリンダロッド15bを連結し、左右移動台2に規制部材16を設けると共に機体1に内側圧接位置H用の規制ボルト16a及び外側圧接位置L用の規制ボルト16bをそれぞれ進退調節自在に設け、しかして、上記保持回転機構Aを上記迂回研磨部Kと上記円孔Qの内周端面Mとが圧接する内側圧接位置Hから迂回研磨部Kと円孔Qの外周端面Nとが圧接する外側圧接位置Lへと切替移動させて円形状基板Wの内周端面M及び外周端面NをC面又はR面に研磨するように構成している。
【0024】
尚、図示を省略しているが、上記テープ研磨機構Dを上記迂回研磨部Kでの上記研磨テープTの移送方向と交差する方向としての図14における矢印方向に揺振運動させる揺振機構を設けることもある。その揺振機構としては、例えば、上記前後移動台14fと上記テープ機体4との間に揺振用モータ、この揺振用モータの主軸に取り付けた偏心輪及び偏心輪の外周面を対向位置を挟装する構造のカム板からなる偏心輪構造の揺振機構を採用することができ、その他、各種構造の揺振機構によりテープ研磨機構Dを揺振運動させることもできる。
【0025】
この実施の形態例は上記構成であるから、人為的又は自動的に保持回転機構Aに円形状基板Wを供給し、円形状基板Wの外周端面Nを保持回転機構Aの三個のロール列3により保持すると共に回転用モータ3fにより回転させ、テープ移送機構Cにより研磨テープTを間欠的又は連続的に移送させ、図8、図9の如く、テープ研磨機構Dの前後移動台14fを前後動用モータ14iにより前進動作させて迂回研磨部Kを円孔Qの内周端面Mに対向位置させ、圧接機構Eの圧接台13に取り付けた圧接用シリンダ13bにより左右移動台2を押動して円形状基板Wの円孔Qの内周端面Mを迂回研磨部Kに圧接し、研磨部揺動機構Fの揺動台14を揺動軸14aを中心として揺動用モータ14bにより間欠的又は連続的に揺動運動させ、この揺動運動により迂回研磨部Kは円孔Qの内周端面Mに対向する方向に間欠的又は連続的に揺動運動し、この間欠的又は連続的な揺動運動によって、円孔Qの内周端面Mを図10に示すC面又は図11に示すR面に研磨することができ、円形状基板の内周端面に付着しているガラスや樹脂のパーティクル等の異物の除去性能、並びに、内周端面の鏡面研磨性能等の加工品質を向上することができ、かつ、内周端面をC面又はR面に容易に研磨することができ、さらには、研磨テープTは行案内部C及び戻案内部Cにより行戻移送案内され、迂回案内部Cにより研磨テープTの折返部分を側方に迂回案内し、迂回案内部Cにより側方に迂回案内された研磨テープTの側方迂回部分Tを上記円孔Qの内周端面Mを研磨可能な迂回研磨部Kとしているので、コンパクトで小さな迂回研磨部Kを形成することができ、それだけ周囲の部材に邪魔されることなく、円形状基板Wの円孔Qの内周端部Mを良好に研磨することができ、加工位置及び配置の融通性を高めることができる。
【0026】
この場合、上記保持回転機構Aを上記迂回研磨部Kと上記円孔Qの内周端面Mとが圧接する内側圧接位置Hから迂回研磨部Kと円孔Qの外周端面とが圧接する外側圧接位置Lへと切替移動させて円形状基板Wの内周端面M及び外周端面Nを研磨するための切替移動機構Fを備えてなるから、図12、図13の如く、円形状基板Wの外周端面NをもC面又はR面に研磨することができ、円形状基板Wの内周端面M及び外周端面Nを研磨することができ、加工作業性を向上することができる。
【0027】
又、この場合、上記テープ研磨機構Dを上記迂回研磨部Kでの上記研磨テープTの移送方向と交差する方向に揺振運動させる揺振機構を設けることにより、研磨テープTの揺振運動による研磨作用が付加され、それだけ良好に研磨加工を行うことができ、又、この場合、上記迂回案内部Cに上記研磨テープTの行側部分T及び戻側部分Tのうちの行側部分Tを行案内部Cから側方に折返すと共に戻側部分Tを側方から戻案内部Cに折返す二つの折返面部10・11及び両折返面部10・11により側方に折り返された研磨テープTを迂回案内すると共に研磨圧力を受ける受圧面部12を設けてなるから、研磨テープTの側方への迂回移送案内を良好に行うことができ、研磨テープTの移送を円滑に行うことができ、又、この場合、上記受圧面部12はゴム又は合成樹脂等の弾性材或いは硬質材からなるから、研磨圧力を良好に受けることができ、この場合、上記研磨テープからなる上記迂回研磨部Kによる研磨構造を乾式構造又は湿式構造とすることにより、円形状基板Wの材質や研磨条件等の仕様に対応することができる。
【0028】
尚、図示省略しているが、他の実施の形態例として、上記圧接機構Eは、上記円形状基板Wを圧接移動して迂回研磨部Kと円孔Qの内周端面Mとを圧接する構造となっているが、迂回研磨部Kを圧接移動して迂回研磨部Kと円孔Qの内周端面Mとを圧接する構造を採用しても、同様な作用効果を得ることができる。
【0029】
又、上記切替移動機構Gは、上記保持回転機構Aを、上記迂回研磨部Kと上記円孔Qの内周端面Mとが圧接する内側圧接位置Hから迂回研磨部Kと円孔Qの外周端面Nとが圧接する外側圧接位置Lへと切替移動させて円形状基板の内周端面M及び外周端面Nを研磨する構造を採用しているが、上記研磨加工機構Bのうち、少なくとも上記テープ研磨機構Dと上記研磨部揺動機構Fとを、上記迂回研磨部Kと上記円孔Qの内周端面Mとが圧接する内側圧接位置Hから迂回研磨部Kと円孔Qの外周端面Nとが圧接する外側圧接位置Lへと切替移動させて円形状基板の内周端面M及び外周端面Nを研磨する構造を採用することもできる。
【0030】
又、本発明は上記実施の形態例に限られるものではなく、保持回転機構Aの構造や研磨加工機構B、テープ移送機構C、テープ研磨機構D、圧接機構E、研磨部揺動機構F、切替移動機構G等の構造、研磨テープTの材質や構造等は適宜変更して設計されるものであり、又、加工仕様に応じて乾式研磨又は湿式研磨を採用することもある。
【0031】
以上、所期の目的を充分達成することができる。
【符号の説明】
【0032】
Q 円孔
W 円形状基板
M 内周端面
N 外周端面
A 保持回転機構
B 研磨加工機構
T 研磨テープ
C テープ移送機構
行案内部
戻案内部
迂回案内部
K 迂回研磨部
D テープ研磨機構
E 圧接機構
F 研磨部揺動機構
H 内側圧接位置
L 外側圧接位置
G 切替移動機構
行側部分
戻側部分
側方迂回部分

【特許請求の範囲】
【請求項1】
中心部に円孔を有する円形状基板の該円孔の内周端面を研磨するに際し、研磨テープを行戻移送案内すると共に該行戻移送案内される研磨テープの折返部分を側方に迂回案内して該研磨テープの側方迂回部分を上記円孔の内周端面を研磨可能な迂回研磨部とする研磨テープを用い、上記円形状基板を保持回転させ、該研磨テープを間欠的又は連続的に移送すると共に該迂回研磨部と該円孔の内周端面とを圧接し、かつ、該迂回研磨部を該円孔の内周端面に対向する方向に間欠的又は連続的に揺動運動させて該迂回研磨部により該円孔の内周端面をC面又はR面に研磨することを特徴とする基板研磨方法。
【請求項2】
上記迂回研磨部と上記円孔の内周端面とが圧接する内側圧接位置から上記迂回研磨部と上記円孔の外周端面とが圧接する外側圧接位置へと切替移動させて該円形状基板の内周端面及び外周端面を研磨することを特徴とする請求項1記載の基板研磨方法。
【請求項3】
中心部に円孔を有する円形状基板を保持して回転させる保持回転機構と、少なくとも、該円形状基板の円孔の内周端面を研磨する研磨加工機構とからなり、上記研磨加工機構には、研磨テープを間欠的又は連続的に移送させるテープ移送機構と、該研磨テープを行戻移送案内可能な行案内部及び戻案内部を有すると共に該行戻移送案内される研磨テープの折返部分を側方に迂回案内可能な迂回案内部を有し、該迂回案内部により側方に迂回案内された研磨テープの側方迂回部分を上記円孔の内周端面を研磨可能な迂回研磨部とするテープ研磨機構と、該迂回研磨部又は円形状基板を圧接移動して該迂回研磨部と該円孔の内周端面とを圧接可能な圧接機構と、該迂回研磨部を該円孔の内周端面に対向する方向に間欠的又は連続的に揺動運動させて該迂回研磨部により該円孔の内周端面をC面又はR面に研磨するための研磨部揺動機構とを備えてなることを特徴とする基板研磨装置。
【請求項4】
上記保持回転機構又は、上記研磨加工機構のうち、少なくとも上記テープ研磨機構と上記研磨部揺動機構とを、上記迂回研磨部と上記円孔の内周端面とが圧接する内側圧接位置から該迂回研磨部と該円孔の外周端面とが圧接する外側圧接位置へと切替移動させて該円形状基板の内周端面及び外周端面を研磨するための切替移動機構を備えてなることを特徴とする請求項3記載の基板研磨装置。
【請求項5】
上記テープ研磨機構を上記迂回研磨部での上記研磨テープの移送方向と交差する方向に揺振運動させる揺振機構を設けてなることを特徴とする請求項3又は4記載の基板研磨装置。
【請求項6】
上記迂回案内部に上記研磨テープの行側部分及び戻側部分のうちの行側部分を行案内部から側方に折返すと共に戻側部分を側方から戻案内部に折返す二つの折返面部及び該両折返面部により側方に折り返された研磨テープを迂回案内すると共に研磨圧力を受ける受圧面部を設けてなることを特徴とする請求項3〜5のいずれか1項に記載の基板研磨装置。
【請求項7】
上記受圧面部はゴム又は合成樹脂等の弾性材或いは硬質材からなることを特徴とする請求項3〜6のいずれか1項に記載の基板研磨装置。
【請求項8】
上記研磨テープからなる上記迂回研磨部による研磨構造は乾式構造又は湿式構造であることを特徴とする請求項3〜7のいずれか1項に記載の基板研磨装置。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【図6】
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【図7】
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【図8】
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【図9】
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【図10】
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【図11】
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【図12】
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【図13】
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【図14】
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【公開番号】特開2012−40643(P2012−40643A)
【公開日】平成24年3月1日(2012.3.1)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2010−184018(P2010−184018)
【出願日】平成22年8月19日(2010.8.19)
【出願人】(391005156)株式会社サンシン (11)
【出願人】(390037165)日本ミクロコーティング株式会社 (79)
【Fターム(参考)】