説明

基準位置算出システム、および基準位置算出方法

【課題】撮像装置によって撮像された熱画像において基準に用いられる位置の画像座標系における座標値を高い精度で算出することができる基準位置算出システムを提供する。
【解決手段】反射部材51が、遠赤外線を反射する。熱源52が、放射した遠赤外線が反射部材51によって反射される位置に設置される。撮像装置70が、位置測定用装置50を撮像した熱画像を画像処理装置60に出力する。座標値算出手段61が、撮像装置70が出力した熱画像において、単位面積当たりの遠赤外線の強度が所定の値以上である領域の中心の画素の画像座標系における座標値を算出する。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、撮像手段によって撮像された熱画像にもとづく撮像対象の位置または移動速度の計測に用いられる基準位置算出システム、および基準位置算出方法に関する。
【背景技術】
【0002】
カメラによって撮像された画像にもとづいて、撮像対象が存在することを検出したり、当該撮像対象の位置および移動速度を計測したりする方法がある。
【0003】
特許文献1には、照明の有無による影響を防ぐために、赤外線カメラによって撮像された画像にもとづいて、夜間の道路上の車両や歩行者等を検出したり、検出した車両や歩行者等の位置や移動速度を計測したりする装置が記載されている。
【0004】
特許文献1に記載された装置で、車両や歩行者等の撮像対象の位置や移動速度を高い精度で計測するためには、赤外線カメラから出力された画像における撮像対象の画像座標系における座標値を計測し、計測した座標値を世界座標系における座標値に変換する必要がある。
【0005】
非特許文献1や非特許文献2には、画像座標系における座標値を世界座標系における座標値に変換する方法が記載されている。
【0006】
非特許文献1や非特許文献2に記載されている方法では、透視投影やTsaiのカメラモデル等のモデルを設定して、画像座標系における座標値を世界座標系における座標値に変換する。
【0007】
非特許文献1や非特許文献2に記載されている方法において、モデルを設定するためには、画像座標系における座標値および世界座標系における座標値が既知の位置である対応点を予め複数個用意する必要がある。
【0008】
そして、対応点を用意するために、世界座標系における座標値が知られている位置に光源等のマーカを設置し、カメラによって撮像された画像における当該マーカの画像座標系の座標値を計測して、当該マーカの世界座標系における座標値と画像座標系における座標値とを対応付ける。なお、カメラが遠赤外線カメラである場合には、一般に、マーカに熱源が用いられる。
【0009】
道路監視システム等において、道路上を移動する物体の位置を計測する場合に、一般に、画像座標系の座標値と世界座標系の座標値とを対応付ける対応テーブルが予め用意される。そして、当該対応テーブルで各座標値を対応付けるために、非特許文献1や非特許文献2に記載されている方法が用いられる。さらに、各対応点の間を直線補間して世界座標系上に道路面を作成し、作成した世界座標系上の道路面と画像座標系上の道路面とを対応付ける。すると、道路面を移動する物体を撮像した画像にもとづいて、物体の位置または移動速度が計測することが可能になる。従って、正確に世界座標系上の道路面と画像座標系上の道路面とを対応付けるために、画像座標系の座標値と世界座標系の座標値とを正確に対応付けることが求められている。
【0010】
特許文献2には、カメラで撮像した画像における撮像対象の輪郭にもとづいて撮像対象の画像座標値を算出し、算出した画像座標値に対応する世界座標系の座標値を算出する方法が記載されている。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0011】
【特許文献1】特開2000−348282号公報(段落0010〜0019、図1)
【特許文献2】特開2001−264037号公報(段落0022〜0115、図1)
【非特許文献】
【0012】
【非特許文献1】徐剛、辻三郎著,「三次元ビジョン」,初版,日本,共立出版株式会社,1998年4月20日,p.79−82
【非特許文献2】ロジャー・ワイ・ツァイ(Roger Y. Tsai)著,「ア バーサタイル カメラ キャリブレーション テクニック フォー ハイアキュラシー スリーディー マシン ビジョン メトロロジー ユージング オフザシェルフ ティービー カメラズ アンド レンズィス(A Versatile Camera Calibration Technique for High−Accuracy 3D Machine Vision Metrology Using Off−the−Shelf TV Cameras and Lenses)」,(米国),アイトリブルイー ジャーナル オブ ロボディクス アンド オートメーション(IEEE Journal of Robotics and Automation),Vol.RA3,No.4,1987年8月,p.323−344
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0013】
遠赤外線カメラによってマーカである熱源が撮像された画像では、当該熱源が複数の画素に跨って撮像されていたり、当該熱源によって発せられた熱が周囲の物体に伝導されて、当該熱源の輪郭が不鮮明になっていたりして、画像座標系における熱源の座標値を高い精度で1画素の座標値に定めることはできない。
【0014】
従って、特許文献1に記載されている装置において、熱源を用いて、画像座標系における座標値を世界座標系における座標値に正確に対応付けることができず、道路監視システム等において世界座標系上に作成される道路面と画像座標系上の道路面とを正確に対応付けることができない。
【0015】
よって、特許文献1に記載されている装置では、画像座標系における座標値が世界座標系における座標値に正確に対応付けられていないので、撮像対象の移動前および移動後に計測された画像座標系における撮像対象の座標値に応じて算出した世界座標系における撮像対象の移動前および移動後の座標値にもとづいて、撮像対象の位置や移動速度を高い精度で測定することはできない。
【0016】
そこで、本発明は、撮像装置によって撮像された熱画像において基準に用いられる位置の画像座標系における座標値を高い精度で算出することができる基準位置算出システムおよび基準位置算出方法を提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0017】
本発明による基準位置算出システムは、熱画像にもとづく撮像対象の位置または移動速度の計測に用いられる基準位置算出システムであって、遠赤外線を反射する反射部材と、放射した遠赤外線が反射部材によって反射される位置に設置される熱源を含む位置測定用装置と、撮像対象が撮像される位置に応じた位置に設置された位置測定用装置を撮像した熱画像を出力する撮像装置と、撮像装置によって出力された熱画像にもとづいて、熱画像の画像座標系における位置測定用装置の座標値を算出する座標値算出手段を含む画像処理装置とを備え、画像処理装置の座標値算出手段は、撮像装置が出力した熱画像において、単位面積当たりの遠赤外線の強度が所定の値以上である領域の中心の画素の画像座標系における座標値を算出することを特徴とする。
【0018】
本発明による基準位置算出方法は、熱画像にもとづく撮像対象の位置または移動速度の計測に用いられる基準位置の座標を算出する基準位置算出方法であって、遠赤外線を反射する反射部材、および放射した遠赤外線が反射部材によって反射される位置に設置される熱源を含み、撮像対象が撮像される位置に応じた位置に設置された位置測定用装置が撮像装置によって撮像された熱画像において、単位面積当たりの遠赤外線の強度が所定の値以上である領域の面積を変化させるために、反射部材を支持する支持部材の水平面に対する角度および水平面における所定の方向に対する角度を変化させ、反射部材の支持部材の水平面に対する角度または水平面における所定の方向に対する角度が変化されたタイミングで、撮像装置に撮像を指示し、撮像装置によって出力された熱画像において、領域の面積を示す面積情報を生成し、撮像装置によって出力された熱画像のうち、生成された面積情報によって示される面積が最も広い熱画像において単位面積当たりの遠赤外線の強度が所定の値以上である領域の中心の画素の画像座標系における座標値を算出することを特徴とする。
【発明の効果】
【0019】
本発明によれば、撮像装置によって撮像された熱画像において基準に用いられる位置の画像座標系における座標値を高い精度で算出することができる。
【図面の簡単な説明】
【0020】
【図1】本発明の実施形態の基準位置算出システムの構成例を示す説明図である。
【図2】マーカの構成例を示す説明図である。
【図3】支持部材のパン角の変化を示す説明図である。
【図4】支持部材のチルト角の変化を示す説明図である。
【図5】撮像装置が出力した熱画像の例を示す説明図である。
【図6】本発明の実施形態の基準位置算出システムの動作を示すフローチャートである。
【図7】撮像装置が撮像した画像の例を示す説明図である。
【図8】画像座標系の座標値と世界座標系の座標値との対応を示す説明図である。
【図9】本発明の概要を示すブロック図である。
【発明を実施するための形態】
【0021】
本発明による基準位置算出システムの実施形態について、図面を参照して説明する。図1は、本発明の実施形態の基準位置算出システムの構成例を示す説明図である。
【0022】
図1に示すように、本発明の実施形態の基準位置算出システムは、撮像した熱画像を出力する撮像装置20、撮像装置20によって撮像されるマーカ10、および撮像装置20およびマーカ10を制御する画像処理装置30を含む。
【0023】
撮像装置20は、撮像対象を撮像可能な場所に設置される。具体的には、撮像装置20は、例えば、撮像対象である自動車が走行する道路を撮像可能な場所に設置される。そして、マーカ10は、撮像装置20によって撮像される熱画像において基準に用いられる位置に応じた場所に設置される。具体的には、マーカ10は、例えば、撮像装置20によって撮像される自動車が通過する道路に応じた道路面を、直線補間により世界座標系上に作成して画像座標系と対応付けるために、世界座標系における座標値と画像座標系における座標値とを対応付ける位置に応じた場所に設置される。
【0024】
図2は、マーカ10の構成例を示す説明図である。図2に示すように、マーカ10は、放射状に(つまり、同心球状に)、遠赤外線を発する熱源12、内壁が放物面状の凹形状に成形された反射板11、熱源12を固定する固定部材13、反射板11を支持する支持部材15、および支持部材15の角度(水平面における所定の方向に対する角度(パン角という)と垂直面における水平面に対する角度(チルト角という))とを制御する駆動部14を含む。
【0025】
固定部材13は、放射状に遠赤外線を発する熱源12を放物面状に成形された反射板11の焦点に固定する。具体的には、固定部材13は、例えば、熱源12の中心を反射板11の焦点に固定する。
【0026】
反射板11は、例えば、内壁が放物面状に成形されて遠赤外線を反射する鏡である。また、本実施形態における反射板11は、放物面状に成形された凹形状の反射板11の内壁の焦点が凹形状によって形成される開口面の内側に位置するように成形されている。従って、反射板11の内壁は、焦点に固定された熱源12によって発せられた遠赤外線を一定の方向に反射する。よって、撮像装置20によって撮像された熱源12によって発せられた遠赤外線の熱画像において、反射板11の輪郭を明確にすることができる。
【0027】
また、本実施形態における反射板11は、反射板11の開口面の方向が、放物面状に成形された反射板11の内壁の対称軸線と平行であるように成形されている。従って、本実施形態における反射板11の開口面の形状は円形である。
【0028】
よって、駆動部14によって支持部材15が制御され、撮像装置20の位置が反射板11の正面の位置(反射板11の開口面に正対する位置)である場合に、当該撮像装置20によって撮像された熱画像には、熱源12によって発せられ、反射板11の内壁によって反射された遠赤外線が円形に撮像される。そして、撮像装置20の位置が反射板11の正面以外の位置である場合よりも、反射板11の内壁によって反射された遠赤外線が撮像される領域(つまり、熱画像における開口面の領域)の面積が広い。
【0029】
駆動部14は、画像処理装置30の指示に応じて、支持部材15のパン角とチルト角とを制御する。図3は、支持部材15のパン角の変化を示す説明図である。図3に示すように、駆動部14は、画像処理装置30の指示に応じて、支持部材15を0°≦パン角<360°の範囲に制御する。
【0030】
図4は、支持部材15のチルト角の変化を示す説明図である。図4に示すように、駆動部14は、画像処理装置30の指示に応じて、支持部材15を0°≦チルト角<180°の範囲に制御する。なお、チルト角が0°である場合に、反射板11の正面は水平方向を向いているとする。
【0031】
熱源12は、マーカ10の周囲の温度よりも高い温度になり、放射状に遠赤外線を発する。熱源12は、例えば、電気ヒータである。
【0032】
撮像装置20は、撮像して熱画像を出力する機能を有する装置であり、例えば、遠赤外線カメラである。撮像装置20は、熱画像を画像処理装置30に出力する。図5は、撮像装置20が出力した熱画像の例を示す説明図である。図5には、マーカ10の熱源12によって発せられた遠赤外線を反射する反射板11の内壁の領域が白画素で示されている。つまり、図5に示す例において、反射板11の開口面が白画素で示されている。
【0033】
画像処理装置30は、座標値算出手段31、角度指示手段32、撮像指示手段33、および面積情報生成手段34を含む。座標値算出手段31は、撮像装置20が出力した熱画像において、単位面積当たりの遠赤外線の強度が所定の値以上である領域の中心座標値を算出する。
【0034】
角度指示手段32は、マーカ10の駆動部14に、支持部材15のパン角とチルト角とを指示する。撮像指示手段33は、角度指示手段32の指示に応じてマーカ10の駆動部14が支持部材15のパン角またはチルト角を変化させたタイミングで、撮像装置20に撮像を指示する。面積情報生成手段34は、撮像装置20が出力した熱画像において、単位面積当たりの遠赤外線の強度が所定の値以上である領域の面積を算出する。具体的には、画像処理装置30は、単位面積当たりの遠赤外線の強度が所定の値以上である領域を構成する画素の数(図5に示す例では、白画素の数)を計数する。
【0035】
図1に示すシステムの動作について、図面を参照して説明する。図6は、本発明の実施形態の基準位置算出システムの動作を示すフローチャートである。
【0036】
画像処理装置30の角度指示手段32は、マーカ10の駆動部14に、パン角およびチルト角を0°にするように指示する。駆動部14は、パン角およびチルト角が0°になるように、支持部材15の角度を制御する(ステップS101)。
【0037】
そして、画像処理装置30は、初期化処理を行う(ステップS102)。具体的には、画像処理装置30は、パン角の制御が終了したか否かを示すフラグであるパン角制御終了フラグ「FLG」をリセットする。本実施形態では、画像処理装置30は、パン角制御終了フラグ「FLG」の値に0をセットする。また、画像処理装置30は、白画素の数の最大値を示す変数「MAX」の値に0をセットする。画像処理装置30は、パン角の角度を示す変数「pan」の値に0をセットし、チルト角の角度を示す変数「tilt」の値に0をセットする。
【0038】
また、画像処理装置30は、白画素の数が最大値になった場合のパン角を示す変数「ANG_P」の値と、白画素の数が最大値になった場合のチルト角を示す変数「ANG_T」の値とにそれぞれ0をセットする。
【0039】
撮像装置20によってマーカ10が撮像された熱画像が出力され、画像処理装置30が撮像装置20によって出力された熱画像を受信した場合に(ステップS103)、画像処理装置30は、マーカ10の熱源12によって発せられ、反射板11によって遠赤外線が反射された領域が白画素で表現され、他の領域が黒画素で表現されるように二値化した画像データを生成する(ステップS104)。具体的には、例えば、所定の単位面積当たりの遠赤外線の強度が所定の値以上である領域が白画素で表現され、他の領域が黒画素で表現されるように二値化された画像データを生成する。
【0040】
画像処理装置30の面積情報生成手段34は、ステップS104の処理で二値化された画像データにもとづいて、白画素によって構成される領域の面積を算出する(ステップS105)。具体的には、画像処理装置30は、白画素の数を計数する。以下、ステップS105の処理で算出した面積の値(具体的には、白画素の数)を示す変数を「M」とする。
【0041】
画像処理装置30は、パン角の制御が終了していないと判断した場合に(ステップS106のY)、ステップS107の処理に移行し、パン角の制御が終了したと判断した場合に(ステップS106のN)、ステップS113の処理に移行する。
【0042】
具体的には、画像処理装置30は、ステップS106の処理で、パン角制御終了フラグ「FLG」の値が0である場合に、パン角の制御が終了していないと判断し、パン角制御終了フラグ「FLG」の値が0でない場合に、パン角の制御が終了したと判断する。
【0043】
画像処理装置30は、変数「M」の値が白画素の数の最大値を示す変数「MAX」の値よりも大きい場合に(ステップS107のY)、変数「M」の値を変数「MAX」の値にセットし、パン角の角度を示す変数「pan」の値を白画素の数が最大値になった場合のパン角を示す変数「ANG_P」の値にセットする。そして、画像処理装置30の座標値算出手段31は、画像座標系のX軸における白画素の中心座標値を算出する(ステップS108)。
【0044】
図7は、撮像装置20が撮像した画像の例を示す説明図である。図7に示す例では、画像座標系において、白画素による領域(図7において楕円形で示す領域)のX軸における座標値の最大値がx2であり、最小値がx1であることが示されている。つまり、画像座標系において、白画素による領域のX軸における両端の座標値は、x1とx2とである。画像処理装置30の座標値算出手段31は、(x2−x1)/2の計算を行い、画像座標系における白画素のX軸の中心座標値xcを算出する。
【0045】
画像処理装置30は、変数「M」の値が白画素の数の最大値を示す変数「MAX」の値以下である場合(ステップS107のN)、またはステップS108の処理後に、パン角の角度を示す変数「pan」の値が360未満であるか否か判断する(ステップS109)。
【0046】
画像処理装置30は、パン角の角度を示す変数「pan」の値が360未満である場合に(ステップS109のN)、パン角の角度を示す変数「pan」の値に0.1を加える(ステップS110)。画像処理装置30の角度指示手段32は、マーカ10の駆動部14に、ステップS110の処理でセットされた変数「pan」の値によって示される角度に支持部材15の角度を制御する指示を送信する。そして、画像処理装置30の撮像指示手段33は、撮像装置20に熱画像の撮像を指示する。
【0047】
また、画像処理装置30は、パン角の角度を示す変数「pan」の値が360未満でない場合に(ステップS109のY)、白画素の数が最大値になった場合のパン角を示す変数「ANG_P」の値をパン角の角度を示す変数「pan」の値にセットし、パン角制御終了フラグ「FLG」の値に1をセットする(ステップS111)。
【0048】
画像処理装置30の角度指示手段32は、マーカ10の駆動部14に、ステップS111の処理でセットされた変数「pan」の値(つまり、白画素の数が最大値になった場合のパン角を示す変数「ANG_P」の値)によって示される角度に支持部材15の角度を制御する指示を送信する。マーカ10の駆動部14は、画像処理装置30の指示に応じたパン角に支持部材15を制御する(ステップS112)。また、画像処理装置30の撮像指示手段33は、撮像装置20に熱画像の撮像を指示し、ステップS103の処理に移行する。
【0049】
画像処理装置30は、パン角の制御が終了したと判断した場合に(ステップS106のN)、画像処理装置30は、変数「M」の値が白画素の数の最大値を示す変数「MAX」の値よりも大きいときに(ステップS113のY)、変数「MAX」の値に変数「M」の値をセットし、白画素の数が最大値になった場合のチルト角を示す変数「ANG_T」の値にチルト角の角度を示す変数「tilt」の値をセットする。そして、画像処理装置30の座標値算出手段31は、画像座標系のY軸における白画素の中心座標値を算出する(ステップS114)。
【0050】
図7に示す例では、画像座標系において、白画素による領域のY軸における座標値の最大値がy2であり、最小値がy1であることが示されている。つまり、画像座標系において、白画素による領域のY軸における両端の座標値は、y1とy2とである。画像処理装置30の座標値算出手段31は、(y2−y1)/2の計算を行い、画像座標系における白画素のY軸の中心座標値ycを算出する。
【0051】
画像処理装置30は、変数「M」の値が白画素の数の最大値を示す変数「MAX」の値以下である場合(ステップS113のN)、またはステップS114の処理後に、チルト角の角度を示す変数「tilt」の値が180未満であるか否か判断する(ステップS115)。
【0052】
画像処理装置30は、チルト角の角度を示す変数「tilt」の値が180未満である場合に(ステップS115のN)、チルト角の角度を示す変数「tilt」の値に0.1を加える(ステップS116)。
【0053】
そして、画像処理装置30の角度指示手段32は、マーカ10の駆動部14に、ステップS116の処理でセットされた変数「tilt」の値によって示される角度に支持部材15の角度を制御する指示を送信する。マーカ10の駆動部14は、画像処理装置30の指示に応じたチルト角に支持部材15を制御する。画像処理装置30の撮像指示手段33は、撮像装置20に熱画像の撮像を指示し、ステップS103の処理に移行する。
【0054】
また、画像処理装置30は、チルト角の角度を示す変数「tilt」の値が180未満でない場合に(ステップS115のY)、白画素の数が最大値になった場合のチルト角を示す変数「ANG_T」の値をチルト角の角度を示す変数「tilt」の値にセットし、画像座標系における白画素の中心座標の座標値pに、p(xc,yc)をセットする(ステップS118)。
【0055】
次に、白画素の数が最大値になった場合のチルト角を示す変数「ANG_T」の値や、白画素の数が最大値になった場合のチルト角を示す変数「ANG_T」の値にもとづいて、画像座標系の座標値pと世界座標系の座標値とを対応付ける方法について説明する。図8は、画像座標系の座標値と世界座標系の座標値との対応を示す説明図である。
【0056】
図8に示すように、図6に示す各処理が実行されているときに設置されていたマーカ10が移動された場合に、撮像装置20によって撮像される熱画像において、画像座標系の座標値pの位置に撮像される地面の位置は点Pである。
【0057】
マーカ10が、GPS(Global Positioning System)衛星から受信したGPS信号にもとづいて、設置されている位置を計測する機能を有する場合に、白画素の数が最大値になった場合のパン角を示す変数「ANG_P」の値と、白画素の数が最大値になった場合のチルト角を示す変数「ANG_T」の値と、マーカ10の支持部材15がマーカ10の筐体に支持されている位置の地面からの高さと、GPS信号にもとづいて計測したマーカ10が設置されていた位置とにもとづいて、点Pの世界座標系の座標値を算出する。算出した点Pの世界座標系の座標値が画像座標系の座標値p(xc,yc)に対応する世界座標系の座標値である。
【0058】
なお、マーカ10が、GPS信号にもとづいて設置されている位置を算出する機能を有していない場合には、例えば、白画素の数が最大値になった場合のパン角を示す変数「ANG_P」の値と、白画素の数が最大値になった場合のチルト角を示す変数「ANG_T」の値と、マーカ10の支持部材15がマーカ10の筐体に支持されている位置の地面からの高さとにもとづいて、マーカ10に対する点Pの距離および方向を算出する。
【0059】
そして、算出結果にもとづく点Pの位置を示す世界座標系の座標値をGPS衛星から受信した信号にもとづいて計測したり、既知の世界座標系の座標値の位置に対する点Pの世界座標系の座標値を巻き尺や物差しを用いて測量したりする。計測または測量された点Pの世界座標系の座標値が画像座標系の座標値p(xc,yc)に対応する世界座標系の座標値である。
【0060】
そして、複数の画像座標系の座標値に対応する世界座標系の座標値をそれぞれ算出または測量することによって、撮像装置20の撮像対象の位置や移動速度を高い精度で計測することができる。
【0061】
具体的には、道路監視システム等において、複数の位置で画像座標系の座標値と世界座標系の座標値とを高い精度で対応づけて、各位置の間を直線補間することにより、高い精度で世界座標系上の道路面と画像座標系上の道路面とを対応づけられる。よって、撮像装置20の撮像対象の位置や移動速度を高い精度で計測することができる。
【0062】
本実施形態によれば、撮像装置20によって撮像された熱画像において基準に用いられる位置の画像座標系における座標値pを高い精度で算出することができる。
【0063】
そして、算出または測量された点Pの世界座標系の座標値と、高い精度で算出された画像座標系の座標値pとを対応付けることができる。
【0064】
さらに、本実施形態によれば、撮像装置20の撮像対象(例えば、自動車)の移動経路において、画像座標系の座標値と世界座標系の座標値とを対応付けることにより、撮像装置20によって撮像された熱画像にもとづいて、撮像対象の位置や移動速度を高い精度で算出することができる。
【0065】
次に、本発明の概要について、図面を参照して説明する。図9は、本発明の概要を示すブロック図である。本発明による基準位置算出システム40は、位置測定用装置50(図2に示すマーカ10に相当)、画像処理装置60(図1に示す画像処理装置30に相当)、および撮像装置70(図1に示す撮像装置20に相当)を含む。
【0066】
位置測定用装置50は、反射部材51(図2に示す反射板11に相当)と熱源52(図2に示す熱源12に相当)とを含む。画像処理装置60は、座標値算出手段61(図1に示す座標値算出手段31に相当)を含む。
【0067】
反射部材51は、遠赤外線を反射する。熱源52は、放射した遠赤外線が反射部材51によって反射される位置に設置される。撮像装置70は、位置測定用装置50を撮像した熱画像を画像処理装置60に出力する。座標値算出手段61は、撮像装置70が出力した熱画像において、単位面積当たりの遠赤外線の強度が所定の値以上である領域の中心の画素の画像座標系における座標値を算出する。
【0068】
そのような構成によれば、撮像装置70によって出力された熱画像において単位面積当たりの遠赤外線の強度が所定の値以上である領域の輪郭が明確になり、撮像対象の位置または移動速度の計測の基準に用いられる当該領域の中心の画像座標系における座標値を高い精度で算出することができる。
【0069】
また、上記の実施形態では、以下の(1)〜(4)に示すような基準位置算出システムも開示されている。
【0070】
(1)位置測定用装置50の反射部材51の内壁が放物面状に成形され、熱源52が内壁による放物面における焦点の位置に設置される基準位置算出システム。そのように構成されている場合には、反射部材51の内壁が、熱源52によって発せられた遠赤外線を一定の方向に反射するので、撮像装置70によって出力される熱画像における単位面積当たりの遠赤外線の強度が所定の値以上である領域の輪郭をより明確にすることができる。
【0071】
(2)位置測定用装置50が、撮像装置70によって出力される熱画像において、単位面積当たりの遠赤外線の強度が所定の値以上である領域の面積を変化させるために、反射部材51を支持する支持部材(図2に示す支持部材15に相当)の水平面に対する角度および水平面における所定の方向に対する角度を変化させる角度制御手段(図2に示す駆動部14に相当)を含み、画像処理装置60が、位置測定用装置50の角度制御手段によって、反射部材51の支持部材の水平面に対する角度または水平面における所定の方向に対する角度が変化されたタイミングで、撮像装置70に撮像を指示する撮像指示手段(図1に示す角度指示手段32に相当)と、撮像装置70によって出力された熱画像において、単位面積当たりの遠赤外線の強度が所定の値以上である領域の面積を示す面積情報を生成する面積情報生成手段(図1に示す面積情報生成手段34に相当)とを含み、座標値算出手段61が、撮像装置70によって出力された熱画像のうち、面積情報生成手段によって生成された面積情報によって示される面積が最も広い熱画像において単位面積当たりの遠赤外線の強度が所定の値以上である領域の中心の画素の画像座標系における座標値を算出する基準位置算出システム。そのように構成されている場合には、算出した画像座標系における座標値に対応する世界座標系における座標値を、面積情報によって示される面積が最も広い熱画像が撮像されたときの支持部材の水平面に対する角度や、水平面における所定の方向に対する角度にもとづいて容易に算出することが可能になる。
【0072】
(3)画像処理装置60が、反射部材51の支持部材の水平面に対する角度および水平面における所定の方向に対する角度を角度制御手段に指示する角度指示手段を含む基準位置算出システム。そのように構成されている場合には、支持部材の水平面に対する角度および水平面における所定の方向に対する角度を変化させて、つまり、撮像装置70に対する反射部材51の角度の変化に応じて、熱画像を当該撮像装置70に出力させることができる。
【0073】
(4)座標値算出手段61が、撮像装置70によって出力された熱画像において、単位面積当たりの遠赤外線の強度が所定の値以上である領域における画像座標系のX軸方向の両端部の座標値の中間の座標値、および当該領域における画像座標系のY軸方向の両端部の座標値の中間の座標値を当該領域の中心の画素の画像座標系における座標値として算出する基準位置算出システム。そのように構成されている場合には、撮像装置70によって出力された熱画像を用いて、撮像対象の位置または移動速度の計測の基準に用いられる位置の画像座標系における座標値を容易に算出することができる。
【産業上の利用可能性】
【0074】
本発明を、撮像手段によって撮像された熱画像にもとづく撮像対象の位置または移動速度の計測に用いられるシステムに適用可能である。
【符号の説明】
【0075】
10 マーカ
11 反射板
12、52 熱源
13 固定部材
14 駆動部
15 支持部材
20、70 撮像装置
30、60 画像処理装置
31、61 座標値算出手段
32 角度指示手段
33 撮像指示手段
34 面積情報生成手段
40 基準位置算出システム
50 位置測定用装置
51 反射部材

【特許請求の範囲】
【請求項1】
熱画像にもとづく撮像対象の位置または移動速度の計測に用いられる基準位置算出システムであって、
遠赤外線を反射する反射部材と、放射した遠赤外線が前記反射部材によって反射される位置に設置される熱源を含む位置測定用装置と、
前記撮像対象が撮像される位置に応じた位置に設置された前記位置測定用装置を撮像した熱画像を出力する撮像装置と、
前記撮像装置によって出力された前記熱画像にもとづいて、前記熱画像の画像座標系における前記位置測定用装置の座標値を算出する座標値算出手段を含む画像処理装置とを備え、
前記画像処理装置の前記座標値算出手段は、前記撮像装置が出力した前記熱画像において、単位面積当たりの遠赤外線の強度が所定の値以上である領域の中心の画素の画像座標系における座標値を算出する
ことを特徴とする基準位置算出システム。
【請求項2】
位置測定用装置の反射部材の内壁は放物面状に成形され、熱源は前記内壁による放物面における焦点の位置に設置される
請求項1記載の基準位置算出システム。
【請求項3】
位置測定用装置は、
撮像装置によって出力される熱画像において、単位面積当たりの遠赤外線の強度が所定の値以上である領域の面積を変化させるために、反射部材を支持する支持部材の水平面に対する角度および前記水平面における所定の方向に対する角度を変化させる角度制御手段を含み、
画像処理装置は、
前記位置測定用装置の前記角度制御手段によって、前記反射部材の支持部材の水平面に対する角度または前記水平面における所定の方向に対する角度が変化されたタイミングで、前記撮像装置に撮像を指示する撮像指示手段と、
前記撮像装置によって出力された熱画像において、前記領域の面積を示す面積情報を生成する面積情報生成手段とを含み、
座標値算出手段は、前記撮像装置によって出力された熱画像のうち、前記面積情報生成手段によって生成された面積情報によって示される面積が最も広い熱画像において単位面積当たりの遠赤外線の強度が所定の値以上である領域の中心の画素の画像座標系における座標値を算出する
請求項1または請求項2記載の基準位置算出システム。
【請求項4】
画像処理装置は、反射部材の支持部材の水平面に対する角度および前記水平面における所定の方向に対する角度を角度制御手段に指示する角度指示手段を含む
請求項3記載の基準位置算出システム。
【請求項5】
座標値算出手段は、撮像装置によって出力された熱画像において、単位面積当たりの遠赤外線の強度が所定の値以上である領域における画像座標系のX軸方向の両端部の座標値の中間の座標値、および前記領域における画像座標系のY軸方向の両端部の座標値の中間の座標値を前記領域の中心の画素の画像座標系における座標値として算出する
請求項1から請求項4のうちいずれか1項記載の基準位置算出システム。
【請求項6】
熱画像にもとづく撮像対象の位置または移動速度の計測に用いられる基準位置の座標を算出する基準位置算出方法であって、
遠赤外線を反射する反射部材、および放射した遠赤外線が前記反射部材によって反射される位置に設置される熱源を含み、前記撮像対象が撮像される位置に応じた位置に設置された位置測定用装置が撮像装置によって撮像された熱画像において、単位面積当たりの遠赤外線の強度が所定の値以上である領域の面積を変化させるために、前記反射部材を支持する支持部材の水平面に対する角度および前記水平面における所定の方向に対する角度を変化させ、
前記反射部材の支持部材の水平面に対する角度または前記水平面における所定の方向に対する角度が変化されたタイミングで、前記撮像装置に撮像を指示し、
前記撮像装置によって出力された熱画像において、前記領域の面積を示す面積情報を生成し、
前記撮像装置によって出力された熱画像のうち、生成された面積情報によって示される面積が最も広い熱画像において単位面積当たりの遠赤外線の強度が所定の値以上である領域の中心の画素の画像座標系における座標値を算出する
ことを特徴とする基準位置算出方法。
【請求項7】
撮像装置によって出力された熱画像において、単位面積当たりの遠赤外線の強度が所定の値以上である領域における画像座標系のX軸方向の両端部の座標値の中間の座標値、および前記領域における画像座標系のY軸方向の両端部の座標値の中間の座標値を前記領域の中心の画素の画像座標系における座標値として算出する
請求項6記載の基準位置算出方法。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【図6】
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【図7】
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【図8】
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【図9】
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【公開番号】特開2011−185886(P2011−185886A)
【公開日】平成23年9月22日(2011.9.22)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2010−54031(P2010−54031)
【出願日】平成22年3月11日(2010.3.11)
【出願人】(000004237)日本電気株式会社 (19,353)
【Fターム(参考)】