基礎構造、その施工方法、および建物
【構成】 基礎構造10では、コンクリート基礎12の立上り部14に挿通孔20が形成され、その挿通孔20の内部に、管部材22を介して、アンカーボルト16が挿通される。アンカーボルト16の下部は、コンクリート基礎12に埋設され、それよりも上側には、線材を螺旋状に巻回させることによって形成したコイルばね部28が形成される。また、管部材22とアンカーボルト16との間には、コイルばね部28の上方および下方を覆う弾性部材42が設置される。
【効果】 簡単かつ安価に基礎構造を施工でき、しかもその基礎構造が長期的に地震低減効果を発揮することができる。
【効果】 簡単かつ安価に基礎構造を施工でき、しかもその基礎構造が長期的に地震低減効果を発揮することができる。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
この発明は、基礎構造、その施工方法、および建物に関し、特にたとえば、コンクリート基礎を有する建物に伝わる地震入力エネルギを低減させるための、基礎構造、その施工方法、および建物に関する。
【背景技術】
【0002】
従来、住宅などの建物に伝わる地震入力エネルギを低減させるための手段として、地盤からの振動を沈静化させるオイルダンパや、地盤からの振動を水平方向のすべりによって吸収するすべり支承や、同じく転がりによって振動を吸収する転がり支承などが採用されている。
【0003】
たとえば、特許文献1に記載された免震装置では、基礎の上に取り付けられる下台と建物の下に据え付けられる上台との間に転がり支承が移動可能に設けられる。そして、下台および上台に転がり支承の前後左右を塞ぐダンパを設け、このダンパによって、転がり支承を下台と上台との間の所定位置に停止させる。
【0004】
また、住宅などの建物に伝わる地震入力エネルギを低減させるための手段として、土台やコンクリート基礎に免震処理を施すことも考えられる。たとえば、特許文献2に記載された技術では、コンクリート製基礎に埋設されたアンカーボルトの軸部が木製土台の挿通孔に通され、軸部と挿通孔との間には免震ゴム体が介在される。
【特許文献1】特開2006−292155号[F16F 15/02]
【特許文献2】特開平9−184217[E04B 1/98]
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0005】
しかしながら、特許文献1の技術では、転がり支承のみならず、この転がり支承を所定位置に停止させるダンパなどの設備を取り付ける必要があり、その施工に手間や時間がかかる。そして、コストの面でも、より安価で費用対効果が高いものが求められる。
【0006】
また、特許文献2の技術では、免震ゴム体によって、コンクリート製基礎からアンカーボルトに伝わった地震の水平振動でアンカーボルトと木製土台とが直に激突することが防止されるものの、地震の際の水平動ないし上下(垂直)動がアンカーボルトにかかることで、アンカーボルトが繰り返し曲げ伸ばしされて塑性変形してしまうと、金属疲労によってアンカーボルトの強度が大幅に低下するという問題があった。そして、アンカーボルトの強度が低下した場合には、十分な地震力低減効果を発揮することができなくなってしまう。
【0007】
それゆえに、この発明の主たる目的は、新規な、基礎構造、その施工方法、および建物を提供することである。
【0008】
この発明の他の目的は、簡単かつ安価に施工でき、しかも長期的に地震低減効果を発揮することができる、基礎構造、その施工方法、および建物を提供することである。
【課題を解決するための手段】
【0009】
本発明は、上記の課題を解決するために、以下の構成を採用した。なお、括弧内の参照符号および補足説明などは、本発明の理解を助けるために後述する実施の形態との対応関係を示したものであって、本発明を何ら限定するものではない。
【0010】
第1の発明は、コンクリート基礎を有する建物に伝わる地震入力エネルギを低減させるための基礎構造であって、コンクリート基礎の立上り部に形成される挿通孔、その一部が立上り部に埋設された状態で挿通孔内に挿通されるアンカーボルト、アンカーボルトを構成する線材を少なくとも1巻き以上螺旋状に巻回することによって一部よりも上側に形成され、挿通孔内に収容されるコイルばね部、およびアンカーボルトと挿通孔との間に介在され、コイルばね部の上方および下方の少なくともいずれか一方を覆う弾性部材を備える、基礎構造である。
【0011】
第1の発明では、基礎構造(10)は、たとえばスチールハウス(100)などの建物の耐力壁(102)に伝わる地震入力エネルギを低減させるためのものである。コンクリート基礎(12)の立上り部(14)には、挿通孔(20)が形成されおり、その挿通孔の内部には、アンカーボルト(16)が挿通されている。アンカーボルトの下部はコンクリート基礎に埋設されており、それよりも上側には、線材を螺旋状に巻回させることによって形成したコイルばね部(28)が形成されている。さらに、挿通孔とアンカーボルトとの間には、たとえばコイルばね部の上方および下方を覆う弾性部材(42)が設置されている。このような基礎構造においては、地震等によりコンクリート基礎が振動しても、その振動による運動エネルギをアンカーボルトのコイルばね部に吸収させるとともに、コイルばね部の引っ張り曲げ変形による耐力壁の回転を利用して、地震入力エネルギの一部を位置エネルギに変換することによって、住宅に伝わる地震入力エネルギが低減される。また、アンカーボルトのコイルばね部が変形する際には、そのアンカーボルトを弾性部材によって受け止めることにより、アンカーボルトの変形を抑え、さらに変形によってアンカーボルトに生じる応力を弾性部材で覆っている範囲全体に拡散させることで、応力集中によるアンカーボルトの負担を軽減させる。
【0012】
第1の発明によれば、簡単かつ安価に基礎構造を施工でき、しかもその基礎構造が長期的に地震低減効果を発揮することができる。
【0013】
第2の発明は、第1の発明に従属し、挿通孔の内部に配置される管部材をさらに備え、アンカーボルトが管部材の内部に挿通され、弾性部材がアンカーボルトと管部材との間に介在される。
【0014】
第2の発明では、コンクリート基礎(12)の立上り部(14)の挿通孔(20)の内部には、管部材(22)が配置される。アンカーボルト(16)は、この管部材を介して、挿通孔の内部に挿通され、コイルばね部(28)が管部材の内部に収容される。また、弾性部材(42)は、アンカーボルトと管部材との間に介在される。
【0015】
第3の発明は、第2の発明の基礎構造の施工方法であって、(a)弾性部材を取り付けたアンカーボルトを型枠内の所定位置に配置するステップ、(b)型枠内にコンクリートを打設して、ステップ(a)で配置したアンカーボルトの下部を一体的に埋め込んだコンクリート基礎を形成するステップ、(c)ステップ(b)で形成したコンクリート基礎の上面の、アンカーボルトに対応する位置に管部材を配置して、当該管部材内にアンカーボルトのコイルばね部および弾性部材を収容するステップ、および(d)ステップ(c)で配置した管部材を一体的に埋め込んだ打ち増しコンクリート部を形成するステップを含む、基礎構造の施工方法である。
【0016】
第3の発明では、ステップ(a)において、コンクリート基礎(12)を形成するための型枠内の所定位置に、弾性部材(42)を取り付けたアンカーボルト(16)を配置する。ステップ(b)において、型枠内にコンクリートを打設して、アンカーボルトの下部を一体的に埋め込んだコンクリート基礎を形成する。ステップ(c)において、コンクリート基礎の上面に管部材(22)を配置して、その管部材内にアンカーボルトのコイルばね部(28)と弾性部材とを収容する。ステップ(d)において、管部材を一体的に埋め込んだ打ち増しコンクリート部(18)を形成する。
【0017】
第4の発明は、第1または2の発明の基礎構造を備える建物。
【0018】
第4の発明では、コンクリート基礎(12)の立上り部(14)に埋設されたアンカーボルト(16)がたとえばスチールハウス(100)などの建物の耐力壁(102)に固定され、この耐力壁に伝わる地震入力エネルギを低減させる。
【発明の効果】
【0019】
この発明によれば、建物に伝わる地震入力エネルギをアンカーボルトのコイルばね部によって低減させるとともに、そのアンカーボルトの負担を弾性部材によって軽減させるようにしたため、長期的に地震低減効果を発揮できる基礎構造を簡単かつ安価に施工できる。
【0020】
この発明の上述の目的,その他の目的,特徴および利点は、図面を参照して行う以下の実施例の詳細な説明から一層明らかとなろう。
【図面の簡単な説明】
【0021】
【図1】この発明の一実施例の基礎構造を示す概略断面図である。
【図2】図1の基礎構造を示す概略断面図である。
【図3】図1の基礎構造を示す上面図である。
【図4】図1のアンカーボルトを示す斜視図である。
【図5】図1の弾性部材を示す斜視図である。
【図6】図4のアンカーボルトに図5の弾性部材を取り付けた様子を示す斜視図である。
【図7】スチールハウスの耐力壁を示す図解図である。
【図8】図7の耐力壁の構造を模式的に示す図解図である。
【図9】コンクリート基礎の振動がスチールハウスの耐力壁に伝わる様子を示す図解図である。
【図10】アンカーボルトのせん断試験の様子を示す図解図である。
【図11】図10のせん断試験の測定結果を示すグラフであり、(a)は、アンカーボルトのひずみ量の測定結果であり、(b)は、アンカーボルトの移動量の測定結果である。
【図12】アンカーボルトのせん断試験の様子を示す図解図である。
【図13】図12のせん断試験の測定結果を示すグラフであり、(a)は、アンカーボルトのひずみ量の測定結果であり、(b)は、アンカーボルトの移動量の測定結果である。
【図14】この発明の別の実施例の基礎構造を示す概略断面図である。
【図15】図14のアンカーボルトのせん断試験の測定結果を示すグラフであり、(a)は、アンカーボルトのひずみ量の測定結果であり、(b)は、アンカーボルトの移動量の測定結果である。
【図16】この発明のさらに別の実施例の基礎構造を示す概略断面図である。
【図17】図16のアンカーボルトのせん断試験の測定結果を示すグラフであり、(a)は、アンカーボルトのひずみ量の測定結果であり、(b)は、アンカーボルトの移動量の測定結果である。
【図18】この発明のさらに別の実施例の基礎構造を示す概略断面図である。
【図19】図18のアンカーボルトのせん断試験の測定結果を示すグラフであり、(a)は、アンカーボルトのひずみ量の測定結果であり、(b)は、アンカーボルトの移動量の測定結果である。
【図20】この発明のさらに別の実施例の基礎構造のアンカーボルトを示す斜視図である。
【発明を実施するための形態】
【0022】
図1−図3を参照して、この発明の一実施例である基礎構造10は、たとえばスチールハウス100などの住宅に適用され、コンクリート基礎12の立上り部14にアンカーボルト16を埋設して、このアンカーボルト16と固定した耐力壁102に伝わる地震入力エネルギを低減させるものである。
【0023】
なお、コンクリート基礎12は、ベタ基礎および布基礎を含み、そのコンクリート基礎12の立上り部14によって囲まれた部分に防湿コンクリートなどが打設されていてもよい。
【0024】
図1−図3に示すように、コンクリート基礎12の立上り部14は、通常の上下方向の長さ(つまり、高さ)よりも高くなるように打ち増し(増打)されており、そこに打ち増しコンクリート部18が形成されている。打ち増しコンクリート部18の高さは、少なくとも、詳細は後述する、アンカーボルト16のコイルばね部28の上下方向の長さ(つまり、高さ)よりも大きく設定されており、たとえば150mmである。また、増打コンクリート部18の上面には、外表面を整えるための均しコンクリートが打設されており、この均しコンクリートが20mm程度の厚みを有している。
【0025】
打ち増しコンクリート部18(立上り部14)の所定位置には、挿通孔20が形成されている。挿通孔20は、打ち増しコンクリート部18を上下方向に貫通する円柱状の孔(空間)であり、その径は、たとえば140mmである。挿通孔20の内部には、管部材22を介して、下部がコンクリート基礎12に埋設された状態のアンカーボルト16が挿通されている。
【0026】
管部材22は、アルミニウム合金、鋼またはステンレス鋼などの金属を素材として、断面略円形の中空パイプ状に形成され、その外面が挿通孔20の内面と密着している。管部材22の内径は、少なくともアンカーボルト16のコイルばね部28を収容可能な所定の大きさに設定され、たとえば130mmである。なお、管部材22の表面には、酸化や劣化を防止するために防錆処理が施されている。
【0027】
図4に示すように、アンカーボルト16は、たとえばJIS G 3101に準拠するSS400などを素材として、断面真円形状を有する線材(棒鋼)を加工することによって成形される。アンカーボルト16の寸法は、M16ボルトとほぼ同等であり、線材の径は、たとえば16mmである。
【0028】
アンカーボルト16は、縦(上下)方向の両端に平坦部24,26を有しており、その平坦部24と平坦部26との間の位置に、コイルばね部28が形成されている。
【0029】
コイルばね部28は、アンカーボルト16の線材を3巻き螺旋状に巻回させることによって筒状に形成され、詳細は後に説明するように、その形状特性により、力が加わることによって弾性変形する。コイルばね部28の径(巻き径)は、たとえば70−100mmに設定される。
【0030】
ここで、線材の径に対するコイルばね部28の巻き径を大きくすれば、その分だけ線材を巻回させるための曲げ加工が容易になるため、コイルばね部28の成形性(加工性)は向上する。しかし、コイルばね部28の巻き径を大きくしすぎると、それに応じてコンクリート基礎12の幅を大きく設定しなければならず、これによって施工の自由度が制限されることとなる。したがって、コイルばね部28の巻き径は、曲げ加工を容易にするためにできるだけ大きくすることと、コンクリート基礎12の幅に対応させてできるだけ小さくすることとの、いわば二律背反的な条件を勘案して決定されることが望ましく、たとえばコイルばね部28の巻き径を線材の径の4−7倍程度に設定すると好適である。
【0031】
また、アンカーボルト16の平坦部24,26には、ねじ30,32が切られており、このねじ30,32に座金34,36とナット38,40が螺合されて締め付けられる。
【0032】
具体的には、図1−図2に示すように、アンカーボルト16の上端側の平坦部24のねじ30には、座金34(たとえば、丸座金)を介して、ねじ30に螺合するナット38が締め付けられ、これによって、詳細は後述する、ホールダウン金物110にアンカーボルト16が固定される。
【0033】
また、アンカーボルト16の下端側の平坦部26のねじ32には、座金36(たとえば、角座金)を介して、ねじ32に螺合するナット40が締め付けられ、この座金36がコンクリート基礎12に埋設されることにより、コンクリート基礎12に対するアンカ効果を発揮する。アンカーボルト16の埋め込み長さは、たとえば320mmである。
【0034】
また、挿通孔20の内部には、アンカーボルト16のコイルばね部28の上方および下方の位置に、弾性部材42が設置される。弾性部材42は、管部材22(挿通孔20)の高さ範囲内に収まるように、アンカーボルト16と管部材22との間に介在される。
【0035】
図5に示すように、弾性部材42は、シリコーンゴム、ウレタンゴム、スチレンブタジエンゴム(SBR)およびエチレンプロピレンゴム(EPDM)等の合成ゴムからなり、略短円柱状に形成される。弾性部材42の径は、管部材22の内径と略等しく設定され、たとえば130mmであり、その上下方向の長さは、たとえば50mmである。
【0036】
弾性部材42の略中心には、アンカーボルト16の平坦部24,26を挿通させるためのボルト孔44が形成されている。また、弾性部材42の上下方向の一方側の面は、弾性部材42の外周縁よりもやや内側からボルト孔44に向けて所定角度で傾斜する傾斜面46によって形成されている。
【0037】
アンカーボルト16に弾性部材42を取り付けるときには、図6に示すように、傾斜面46を下向きにした弾性部材42によってコイルばね部28の上方を覆うとともに、傾斜面46を上向きにした弾性部材42によってコイルばね部28の下方を覆うようにする。
【0038】
ここで、この実施例におけるスチールハウス100の耐力壁102について、この発明の理解に必要な範囲で、簡単に説明する。
【0039】
図7に示すように、スチールハウス100においては、耐力壁102は、スタッド104およびトラック106を含む。スタッド104は、耐力壁102の横方向に設けられる縦材であり、たとえばリップ溝形鋼からなる。トラック106は、耐力壁102の縦方向両端(上下端)に設けられる横架材であり、たとえば溝形鋼からなる。トラック106の内面(溝)は、スタッド104の上下端部を収納可能な幅に設定され、各トラック106の溝どうしが向かい合うようにして配置される。
【0040】
図8に示すように、トラック106の溝内にスタッド104の下端部が差し込まれて、ドリルねじやくぎ等により、スタッド104の一方のフランジ104aとトラック106の一方のフランジ106aとが固着(固定)され、スタッド104の他方のフランジ104bとトラック106の他方のフランジ106bとが固着(固定)される。なお、トラック106の所定位置には、アンカーボルト16を挿通させるためのボルト孔108が形成されている。
【0041】
また、スタッド104の内面(溝)には、ホールダウン金物110が取り付けられる。ホールダウン金物110は、スタッド104(耐力壁102)をアンカーボルト16に固定するためのものであり、そのサイズは、たとえば15kN用程度のものが用いられるが、これに限定される必要はなく、耐力壁102の壁倍率(強度)に応じて適宜選定するとよい。
【0042】
ホールダウン金物110は、主板110a、底板110b、および側板110cを含み、主板110aは、たとえば矩形状等に形成され、その所定位置にドリルねじやくぎ等が打ち込まれることにより、スタッド104のウェブ104cに固定される。
【0043】
また、底板110bは、たとえば矩形状等に形成され、主板110aの下端縁から水平方向に立ち上がって連続的に形成される。底板110bには、アンカーボルト16を挿通させるためのボルト孔112が形成されており、このボルト孔112にアンカーボルト16の上端側のねじ30を挿通させ、座金34を介してナット38で締め付けることによって、ホールダウン金物110がアンカーボルト16に固定される。
【0044】
側板110c,110cは、たとえば台形状等に形成され、主板110aの横方向の両端縁から、底板110bの形成される方向と同方向に立ち上がって連続的に形成される。側板110cは、溶接等によって底板110bの端縁に固定されており、ホールダウン金物110自体の強度および剛性等を向上させる。
【0045】
図1−図3を参照して、上述のような基礎構造10を形成する方法の一例について説明する。
【0046】
先ず、アンカーボルト16に弾性部材42を取り付けて、そのアンカーボルト16を、コンクリート基礎12を形成するための型枠(図示せず)内の所定位置に適宜な固定具等を用いて仮固定する。このとき、アンカーボルト16によるコンクリート基礎12のコーン破壊等を考慮して、コンクリート基礎12の幅をアンカーボルト16のコイルばね部28よりも少なくとも50mm程度大きく設定しておくと好適である。
【0047】
アンカーボルト16に弾性部材42を取り付けるときには、傾斜面46を下向きにした弾性部材42のボルト孔44にアンカーボルト16の上端側の平坦部24を挿入し、そのまま弾性部材42を下方にスライドさせて、弾性部材42の傾斜面46がアンカーボルト16のコイルばね部28の上側を覆うようにする。そして、同じように、傾斜面46を上向きにした弾性部材42のボルト孔44にアンカーボルト16の下端側の平坦部26を挿入して、そのまま弾性部材42を上方にスライドさせて、弾性部材42の傾斜面46がコイルばね部28を覆うようにする。
【0048】
それから、型枠内にコンクリートを打設して、アンカーボルト16の下部を一体的に埋め込んだコンクリート基礎12を形成する。そして、コンクリート基礎12の養生後、型枠を解体する。
【0049】
次に、コンクリート基礎12の上に、打ち増しコンクリート部18用の型枠(図示せず)を形成する。続いて、その型枠内のアンカーボルト16に相当する位置に、管部材22を配置する。具体的には、管部材22の内部に弾性部材42とアンカーボルト16のコイルばね部28とを収容して、そのまま管部材22の下端開口をコンクリート基礎12の上面に当接させて固定する。また、管部材22の上端開口には、テープ等の封止具を装着して、その上端開口を封止する。
【0050】
それから、型枠内にコンクリートを打設して、打ち増しコンクリート部18を形成する。打ち増しコンクリート部18の養生後、外表面を整えるための均しコンクリートを打設し、この均しコンクリートが乾いたら、管部材22における均しコンクリートの天面よりも上部に露出している部分を適宜切断する。ただし、増打コンクリート部18と略等しい高さを有する管部材22を使用するのであれば、管部材22の長さを調整する必要はない。
【0051】
その後、トラック106のボルト孔108とホールダウン金物110のボルト孔112とをアンカーボルト16の位置に対応させて、コンクリート基礎12上に耐力壁102を構築する。そして、アンカーボルト16のねじ30を、座金32を介してナット34で締め付けることによって、アンカーボルト16にホールダウン金物110、つまり耐力壁102を固定する。
【0052】
なお、アンカーボルト16のねじ30をホールダウン金物110にナット34で締め付けるときには、規定のトルクで締め付けることができるようにトルクレンチを使用することもできるが、ねじ30に予め定めた適正な締め付け位置をマーキングしておくようにしてもよい。
【0053】
このような基礎構造10においては、地震、または不同沈下等に伴ってコンクリート基礎12が振動しても、図9に示すように、アンカーボルト16のコイルばね部28がその振動に対応して変形することによって、振動による運動エネルギが吸収される。
【0054】
具体的には、地震の縦波(上下動)等によりコンクリート基礎102が垂直方向に揺れても、アンカーボルト16のコイルばね部28が軸方向に伸縮、変形することによって、振動による運動エネルギが吸収される。また、地震の横波(水平動)等によりコンクリート基礎102が水平方向に揺れても、アンカーボルト16のコイルばね部28が軸方向に曲げ変形することによって、振動による運動エネルギが吸収される。つまり、振動による運動エネルギをアンカーボルト16のコイルばね部28に吸収させることにより、スチールハウス100の耐力壁102に伝わる地震入力エネルギを低減させることができる。
【0055】
さらに、ある大きさ以上の水平動が生じると、耐力壁102(スチールハウス100)がその力方向に揺すれ、これが左右繰り返して応答することにより、耐力壁102の重心が上方に移動することとなるが、この実施例によれば、このコイルばね部28の引っ張り曲げ変形による耐力壁102の回転を利用して、地震入力エネルギの一部を位置エネルギに変換することにより、スチールハウス100の耐力壁102に伝わる地震入力エネルギを低減させることができる。
【0056】
以上のように、この実施例によれば、振動による運動エネルギをアンカーボルト16のコイルばね部28に吸収させるとともに、このコイルばね部28の引っ張り曲げ変形による耐力壁102の回転を利用して、地震入力エネルギの一部を位置エネルギに変換することで、スチールハウス100の耐力壁102に伝わる地震入力エネルギを低減させて、スチールハウス100の揺れを抑えることができる。
【0057】
しかも、この基礎構造10は、特許文献1のように転がり支承やダンパなどの設備を取り付ける場合と比較して、簡単に施工することができ、また、製品コストや取り付けなどの施工コストを抑えることができるため、経済的である。つまり、この実施例によれば、簡単かつ安価に基礎構造10を施工することができる。
【0058】
また、この実施例によれば、地震等に伴ってコンクリート基礎12が振動し、アンカーボルト16のコイルばね部28が変形したときに、アンカーボルト16を弾性部材42によって受け止めて、アンカーボルト16の変形を抑えることができる。したがって、アンカーボルト16が弾性限界を超えて塑性変形を起こしたりせず、その効果を発揮し続ける。
【0059】
その上、アンカーボルト16のコイルばね部28が変形したときに、その変形によって生じる応力を弾性部材42で覆っている範囲全体に拡散させることができる。したがって、応力集中によるアンカーボルト16の負担が軽減されるので、金属疲労によって破損等が生じることも少なくなる。
【0060】
ここで、本願発明者等は、アンカーボルト16のせん断耐力や弾性限界について、弾性部材42の寄与を評価するための試験を行った。具体的な試験内容は、以下の通りである。
【0061】
図10に示すように、アンカーボルト16の一方側(以下、「支点側」ということがある)の平坦部26を固定して当該アンカーボルト16を水平方向に延ばし、アンカーボルト16の他方側(以下、「力点側」ということがある)の平坦部24に垂直下方向の荷重(N)をかけて、その荷重(N)ごとに、“A:支点側平坦部”、“B:支点側曲部表側”、“C:支点側曲部裏側”、“D:支点側コイルばね部”、“E:力点側コイルばね部”、“F:力点側曲部表側”、“G:力点側曲部裏側”および“H:力点側平坦部”の各測定ポイントでのひずみ量(%)を測定した。そして、それと同時に、荷重(N)ごとの、アンカーボルト16の荷重がかかっている部分の垂直下方向への移動量(mm)を測定した。その測定結果を図11に示す。
【0062】
また、図12に示すように、コイルばね部28の軸方向の両側に弾性部材42を取り付けたアンカーボルト16の支点側の平坦部26を固定し、弾性部材42を下方向に動かないように木台等によって支持して、アンカーボルト16の力点側の平坦部24に垂直下方向に荷重(N)をかけ、その荷重(N)ごとに、“A:支点側平坦部”、“B:支点側曲部表側”、“C:支点側曲部裏側”、“D:支点側コイルばね部”、“E:力点側コイルばね部”、“F:力点側曲部表側”、“G:力点側曲部裏側”および“H:力点側平坦部”の各測定ポイントでひずみ量(%)を測定した。そして、それと同時に、荷重(N)ごとに、アンカーボルト16の荷重がかかっている部分の垂直下方向への移動量(mm)を測定した。その測定結果を図13に示す。
【0063】
なお、図中では、荷重をかけた方向、すなわち垂直下方向へのひずみ量(%)ないし移動量(mm)を正の数で表わしている。また、各グラフは、測定したデータの集合体によって構成されている。さらに、弾性部材42を下方向に動かないように支持した理由は、上記実施例と近似させた状態、すなわちアンカーボルト16の軸方向と直交する方向への弾性部材42の動きを拘束した状態でアンカーボルト16のひずみ量(%)ないし移動量(mm)を測定するためである。
【0064】
図11(a)に示すように、アンカーボルト16に弾性部材42を取り付けていない場合には、“A:支点側平坦部”において、荷重が1400Nを超えたあたりから、ひずみ量(%)の増加率(つまり、グラフの傾き)が急に大きくなっている。また、図11(b)に示すように、アンカーボルト16の移動量(mm)の増加率も、荷重が1400Nを超えたあたりから急に大きくなっており、このような結果から、アンカーボルト16の“A:支点側平坦部”では、荷重が1400Nを超えたあたりで弾性限界を過ぎて塑性変形の領域にはいったと推察できる。
【0065】
一方、図13(a)に示すように、アンカーボルト16に弾性部材42を取り付けている場合には、アンカーボルト16に弾性部材42を取り付けていない場合(図11参照)と比較して、荷重(N)に対するひずみ量(%)が全体的に低く(小さく)なっており、このような結果から、アンカーボルト16のせん断耐力が向上されていることが分かる。特に、“A:支点側平坦部”、“B:支点側曲部表側”、“C:支点側曲部裏側”、“D:支点側コイルばね部”、および“E:力点側コイルばね部”の各測定ポイントにおいては、荷重が6000Nを超えてもひずみ量(%)の増加率が大きくなる傾向が見られず、荷重(N)とひずみ量(%)とがほぼ比例した状態が保たれている。また、図13(b)に示すように、アンカーボルト16の移動量(mm)についても、荷重が6000Nを超えても移動量(mm)の増加率が大きくなる傾向が見られず、このような結果から、アンカーボルト16の弾性限界が向上されていることが分かる。
【0066】
以上の結果から分かるように、アンカーボルト16と管部材22(挿通孔20)との間に弾性部材42を設置し、この弾性部材42によってコイルばね部28の上方および下方を覆うようにすることで、アンカーボルト16のせん断耐力や弾性限界を向上させることが可能である。したがって、上述したように、アンカーボルト16が弾性限界を超えて塑性変形を起こしたりせず、その効果を発揮し続ける。また、応力集中によるアンカーボルト16の負担が軽減されるので、金属疲労によって破損等が生じることも少なくなる。つまり、アンカーボルト16の長寿命化を実現することが可能であり、延いては、基礎構造10が長期的に地震低減効果を発揮することができる。
【0067】
ところで、上述の実施例では、アンカーボルト16の線材を3巻き螺旋状に巻回させることによってコイルばね部28を形成したが、これに限定される必要はなく、コイルばね部28は、線材を少なくとも1巻き以上螺旋状に巻回させることによって形成可能である。
【0068】
たとえば、図14に示すように、アンカーボルト16の線材を1巻き螺旋状に巻回させることによってコイルばね部28を形成し、そのようなアンカーボルト16を用いて、基礎構造10を形成するようにしてもよい。
【0069】
なお、本願発明者等は、線材を1巻き螺旋状に巻回させることによってコイルばね部28を形成したアンカーボルト16のせん断耐力についても、上述した図12の試験内容と同じ要領で試験を行った。その測定結果を図15に示す。
【0070】
図15(a)に示すように、“B:支点側曲部表側”、“C:支点側曲部裏側”、“D:支点側コイルばね部”、および“E:力点側コイルばね部”の各測定ポイントにおいては、荷重が6000Nを超えてもひずみ量(%)の増加率が大きくなる傾向が見られず、また、“A:支点側平坦部”、“G:力点側曲部裏側”および“H:力点側平坦部”の各測定ポイントにおいても、荷重が4000Nを超えたあたりまでひずみ(%)の増加率が大きくなる傾向が見られない。また、図15(b)に示すように、アンカーボルト16の移動量(mm)についても、荷重が6000Nを超えても移動量(mm)の増加率が大きくなる傾向が見られない。ただし、線材を3巻き螺旋状に巻回させることによってコイルばね部28を形成したアンカーボルト16の測定結果(図13参照)と比べると、“D:支点側コイルばね部”、および“E:力点側コイルばね部”を除いて、荷重(N)に対するひずみ量(%)が全体的に高く(大きく)なっていることが分かる。
【0071】
以上の結果から分かるように、線材を1巻き螺旋状に巻回させることによってコイルばね部28を形成するようにしても、アンカーボルト16のせん断耐力や弾性限界を向上させて、アンカーボルト16の長寿命化を実現することが可能である。さらに、このようにアンカーボルト16の線材を螺旋状に巻回させる数を少なくすることで、コイルばね部28を形成するときの施工コストを抑えることができ、延いては、アンカーボルト16の製品コストを抑えることができる。
【0072】
また、図16に示すように、アンカーボルト16の線材を5巻き螺旋状に巻回させることによってコイルばね部28を形成し、そのようなアンカーボルト16を用いて、基礎構造10を形成するようにしてもよい。
【0073】
なお、本願発明者等は、線材を5巻き螺旋状に巻回させることによってコイルばね部28を形成したアンカーボルト16のせん断耐力についても、上述した図12の試験内容と同じ要領で試験を行った。その測定結果を図17に示す。
【0074】
図17(a)に示すように、“A:支点側平坦部”、“B:支点側曲部表側”、“C:支点側曲部裏側”、“D:支点側コイルばね部”、“E:力点側コイルばね部”、“F:力点側曲部表側”、および“G:力点側曲部裏側”の各測定ポイントにおいて、荷重が6000Nを超えてもひずみ量(%)の増加率が大きくなる傾向が見られない。また、図17(b)に示すように、アンカーボルト16の移動量(mm)についても、荷重が6000Nを超えても移動量(mm)の増加率が大きくなる傾向が見られない。
【0075】
以上の結果から分かるように、線材を5巻き螺旋状に巻回させることによってコイルばね部28を形成するようにしても、アンカーボルト16のせん断耐力や弾性限界を向上させて、アンカーボルト16の長寿命化を実現することが可能である。
【0076】
ここで、線材を螺旋状に巻回させる数を多くすれば、その分だけコイルばね部28が水平方向に容易に曲げ変形するようになるため、コイルばね部28に振動による運動エネルギを吸収させることが困難になる。しかし、こうすることにより、コイルばね部28の引っ張り曲げ変形による耐力壁102の回転がより効果的に機能するため、より多くの地震入力エネルギを位置エネルギに変換することが可能になる。
【0077】
つまり、アンカーボルト16のコイルばね部28の巻き数をむやみに増やしても、地震入力エネルギの一部を位置エネルギに変換する割合が増える一方で、振動による運動エネルギをコイルばね部28に吸収させる割合が減ってしまうため、単純にアンカーボルト16の地震低減効果そのものが向上するということはない。したがって、アンカーボルト16の施工コストを抑えつつ、基礎構造10に地震低減効果を発揮させるためには、アンカーボルト16の線材を螺旋状に巻回させる数は、1巻き以上5巻き未満程度に設定すると好適であると考えられる。
【0078】
逆に言えば、地震入力エネルギを位置エネルギに変換する機構を優先的に利用して基礎構造10に地震低減効果を発揮させるためには、アンカーボルト16のコイルばね部28の巻き数を5巻き以上に設定すればよい。
【0079】
また、上述の実施例では、アンカーボルト16のコイルばね部28の上方および下方に弾性部材42を設置したが、これに限定される必要はなく、図18に示すように、コイルばね部28の上方または下方の一方のみに弾性部材42を設置するようにしてもよい。
【0080】
なお、本願発明者等は、コイルばね部28の上方または下方の一方のみに弾性部材42を取り付けたアンカーボルト16のせん断耐力や弾性限界について、上述した図12の試験内容と同じ要領で試験を行った。その測定結果を図19に示す。
【0081】
図19(a)に示すように、コイルばね部28の支点側と力点側とを弾性部材42によって覆った場合の測定結果(図13参照)と比較すると、荷重(N)に対するひずみ量(%)が全体的に高くなっているものの、アンカーボルト16に弾性部材42を取り付けていない場合の測定結果(図11参照)と比較すると、荷重(N)に対するひずみ量(%)が圧倒的に低くなっていることが分かる。また、図19(b)に示すように、アンカーボルト16の移動量(mm)についても、アンカーボルト16に弾性部材42を取り付けていない場合の測定結果(図11参照)と比較すると、低くなっている。
【0082】
以上の結果から分かるように、アンカーボルト16のコイルばね部28の上方または下方の一方のみに弾性部材42を設置するようにしても、アンカーボルト16の負担を軽減させることができる。したがって、アンカーボルト16の長寿命化を実現することが可能であり、基礎構造10は長期的に地震低減効果を発揮することができる。
【0083】
さらに、上述の実施例では、コンクリート基礎12の立上り部14に形成された挿通孔20の内部に、管部材22を介して、アンカーボルト16を挿通させたが、これに限定される必要はなく、挿通孔20の内部に、アンカーボルト16を直接挿通させるようにしてもよい。たとえば、ボール紙等で形成されたボイド管の内部に弾性部材42とアンカーボルト16のコイルばね部28とを収容して、そのボイド管を一体的に埋め込んだ打ち増しコンクリート部18を打設し、打ち増しコンクリート部18の養生後にボイド管を解体するようにすれば、アンカーボルト16が挿通孔20の内部に直接挿通されることとなる。
【0084】
また、上述の実施例では、コンクリート基礎12の立上り部14を通常の高さよりも高くなるように打ち増し(増打)して、その打ち増しコンクリート部18を上下方向に貫通する挿通孔20を形成したが、これに限定される必要はなく、コンクリート基礎12の立上り部14を打ち増しせずに、つまり打ち増しコンクリート部18を形成せずに、そのまま挿通孔20を形成するようにしてもよい。
【0085】
さらにまた、弾性部材42を略C字状に形成して、取り外しが可能なように、アンカーボルト16に外嵌するようにしてもよい。こうすることにより、アンカーボルト16の下部をコンクリート基礎12に埋設した後でも、当該アンカーボルト16に弾性部材42を取り付けることが可能となる。したがって、現場に応じて最適な施工方法および施工手順を選択することができ、基礎構造10を効率よく容易に形成することができる。
【0086】
また、コンクリート基礎12を形成するための型枠にアンカーボルト16を仮固定した後で、その型枠内にコンクリートを打設したが、これに限定される必要はなく、固化する前の半生状態のコンクリートにアンカーボルト16を打ち込むようにしてもよい。
【0087】
さらにまた、上述の実施例では、アンカーボルト16の下端側の平坦部26のねじ32に座金36を介してナット40が締め付けられ、この座金36がコンクリート基礎12に対するアンカ効果を発揮したが、これに限定される必要はない。図20に示すように、アンカーボルト16の下端側の平坦部26を略L字状に曲げて、そこをコンクリート基礎12に対するアンカとして機能させるようにしてもよい。
【0088】
さらに、上述の実施例では、アンカーボルト16をSS400によって形成したが、アンカーボルト16の材質は特に限定されない。たとえば、バネ鋼によってアンカーボルト16を形成した場合には、コストが嵩むものの、線材を螺旋状に巻回させるときの施工性やコイルばね部28の弾性を向上させることが可能である。
【0089】
また、上述の実施例では、管部材22を鋼、アルミニウム合金、またはステンレス鋼などの金属によって形成したが、管部材22の材質は特に限定されない。たとえば、高密度ポリエチレンや塩化ビニル等の合成樹脂によって管部材22を形成した場合には、管部材22が耐食性および耐薬品性が付与されるため、管部材22の表面に防錆処理を施す必要がなくなる。
【0090】
さらにまた、上述の実施例では、スチールハウス100のコンクリート基礎12の立上り部14に基礎構造10が形成されたが、これに限定される必要はなく、スチールハウス以外のたとえば木造住宅に適用して、コンクリート基礎に埋設したアンカーボルト16を住宅の土台等に固定するようにしてもよいし、また住宅のみならず、倉庫や事務所などコンクリート基礎を有する各種建物に適用可能である。ただし、高層ビルなどの重量建物よりも、軽量な建物に好適に用いられる。
【0091】
なお、上述した径や高さ等の具体的数値は、いずれも単なる一例であり、必要に応じて適宜変更可能である。
【符号の説明】
【0092】
10 …基礎構造
12 …コンクリート基礎
14 …立上り部
16 …アンカーボルト
18 …打ち増しコンクリート部
20 …挿通孔
22 …管部材
28 …コイルばね部
42 …弾性部材
100 …スチールハウス
102 …耐力壁
【技術分野】
【0001】
この発明は、基礎構造、その施工方法、および建物に関し、特にたとえば、コンクリート基礎を有する建物に伝わる地震入力エネルギを低減させるための、基礎構造、その施工方法、および建物に関する。
【背景技術】
【0002】
従来、住宅などの建物に伝わる地震入力エネルギを低減させるための手段として、地盤からの振動を沈静化させるオイルダンパや、地盤からの振動を水平方向のすべりによって吸収するすべり支承や、同じく転がりによって振動を吸収する転がり支承などが採用されている。
【0003】
たとえば、特許文献1に記載された免震装置では、基礎の上に取り付けられる下台と建物の下に据え付けられる上台との間に転がり支承が移動可能に設けられる。そして、下台および上台に転がり支承の前後左右を塞ぐダンパを設け、このダンパによって、転がり支承を下台と上台との間の所定位置に停止させる。
【0004】
また、住宅などの建物に伝わる地震入力エネルギを低減させるための手段として、土台やコンクリート基礎に免震処理を施すことも考えられる。たとえば、特許文献2に記載された技術では、コンクリート製基礎に埋設されたアンカーボルトの軸部が木製土台の挿通孔に通され、軸部と挿通孔との間には免震ゴム体が介在される。
【特許文献1】特開2006−292155号[F16F 15/02]
【特許文献2】特開平9−184217[E04B 1/98]
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0005】
しかしながら、特許文献1の技術では、転がり支承のみならず、この転がり支承を所定位置に停止させるダンパなどの設備を取り付ける必要があり、その施工に手間や時間がかかる。そして、コストの面でも、より安価で費用対効果が高いものが求められる。
【0006】
また、特許文献2の技術では、免震ゴム体によって、コンクリート製基礎からアンカーボルトに伝わった地震の水平振動でアンカーボルトと木製土台とが直に激突することが防止されるものの、地震の際の水平動ないし上下(垂直)動がアンカーボルトにかかることで、アンカーボルトが繰り返し曲げ伸ばしされて塑性変形してしまうと、金属疲労によってアンカーボルトの強度が大幅に低下するという問題があった。そして、アンカーボルトの強度が低下した場合には、十分な地震力低減効果を発揮することができなくなってしまう。
【0007】
それゆえに、この発明の主たる目的は、新規な、基礎構造、その施工方法、および建物を提供することである。
【0008】
この発明の他の目的は、簡単かつ安価に施工でき、しかも長期的に地震低減効果を発揮することができる、基礎構造、その施工方法、および建物を提供することである。
【課題を解決するための手段】
【0009】
本発明は、上記の課題を解決するために、以下の構成を採用した。なお、括弧内の参照符号および補足説明などは、本発明の理解を助けるために後述する実施の形態との対応関係を示したものであって、本発明を何ら限定するものではない。
【0010】
第1の発明は、コンクリート基礎を有する建物に伝わる地震入力エネルギを低減させるための基礎構造であって、コンクリート基礎の立上り部に形成される挿通孔、その一部が立上り部に埋設された状態で挿通孔内に挿通されるアンカーボルト、アンカーボルトを構成する線材を少なくとも1巻き以上螺旋状に巻回することによって一部よりも上側に形成され、挿通孔内に収容されるコイルばね部、およびアンカーボルトと挿通孔との間に介在され、コイルばね部の上方および下方の少なくともいずれか一方を覆う弾性部材を備える、基礎構造である。
【0011】
第1の発明では、基礎構造(10)は、たとえばスチールハウス(100)などの建物の耐力壁(102)に伝わる地震入力エネルギを低減させるためのものである。コンクリート基礎(12)の立上り部(14)には、挿通孔(20)が形成されおり、その挿通孔の内部には、アンカーボルト(16)が挿通されている。アンカーボルトの下部はコンクリート基礎に埋設されており、それよりも上側には、線材を螺旋状に巻回させることによって形成したコイルばね部(28)が形成されている。さらに、挿通孔とアンカーボルトとの間には、たとえばコイルばね部の上方および下方を覆う弾性部材(42)が設置されている。このような基礎構造においては、地震等によりコンクリート基礎が振動しても、その振動による運動エネルギをアンカーボルトのコイルばね部に吸収させるとともに、コイルばね部の引っ張り曲げ変形による耐力壁の回転を利用して、地震入力エネルギの一部を位置エネルギに変換することによって、住宅に伝わる地震入力エネルギが低減される。また、アンカーボルトのコイルばね部が変形する際には、そのアンカーボルトを弾性部材によって受け止めることにより、アンカーボルトの変形を抑え、さらに変形によってアンカーボルトに生じる応力を弾性部材で覆っている範囲全体に拡散させることで、応力集中によるアンカーボルトの負担を軽減させる。
【0012】
第1の発明によれば、簡単かつ安価に基礎構造を施工でき、しかもその基礎構造が長期的に地震低減効果を発揮することができる。
【0013】
第2の発明は、第1の発明に従属し、挿通孔の内部に配置される管部材をさらに備え、アンカーボルトが管部材の内部に挿通され、弾性部材がアンカーボルトと管部材との間に介在される。
【0014】
第2の発明では、コンクリート基礎(12)の立上り部(14)の挿通孔(20)の内部には、管部材(22)が配置される。アンカーボルト(16)は、この管部材を介して、挿通孔の内部に挿通され、コイルばね部(28)が管部材の内部に収容される。また、弾性部材(42)は、アンカーボルトと管部材との間に介在される。
【0015】
第3の発明は、第2の発明の基礎構造の施工方法であって、(a)弾性部材を取り付けたアンカーボルトを型枠内の所定位置に配置するステップ、(b)型枠内にコンクリートを打設して、ステップ(a)で配置したアンカーボルトの下部を一体的に埋め込んだコンクリート基礎を形成するステップ、(c)ステップ(b)で形成したコンクリート基礎の上面の、アンカーボルトに対応する位置に管部材を配置して、当該管部材内にアンカーボルトのコイルばね部および弾性部材を収容するステップ、および(d)ステップ(c)で配置した管部材を一体的に埋め込んだ打ち増しコンクリート部を形成するステップを含む、基礎構造の施工方法である。
【0016】
第3の発明では、ステップ(a)において、コンクリート基礎(12)を形成するための型枠内の所定位置に、弾性部材(42)を取り付けたアンカーボルト(16)を配置する。ステップ(b)において、型枠内にコンクリートを打設して、アンカーボルトの下部を一体的に埋め込んだコンクリート基礎を形成する。ステップ(c)において、コンクリート基礎の上面に管部材(22)を配置して、その管部材内にアンカーボルトのコイルばね部(28)と弾性部材とを収容する。ステップ(d)において、管部材を一体的に埋め込んだ打ち増しコンクリート部(18)を形成する。
【0017】
第4の発明は、第1または2の発明の基礎構造を備える建物。
【0018】
第4の発明では、コンクリート基礎(12)の立上り部(14)に埋設されたアンカーボルト(16)がたとえばスチールハウス(100)などの建物の耐力壁(102)に固定され、この耐力壁に伝わる地震入力エネルギを低減させる。
【発明の効果】
【0019】
この発明によれば、建物に伝わる地震入力エネルギをアンカーボルトのコイルばね部によって低減させるとともに、そのアンカーボルトの負担を弾性部材によって軽減させるようにしたため、長期的に地震低減効果を発揮できる基礎構造を簡単かつ安価に施工できる。
【0020】
この発明の上述の目的,その他の目的,特徴および利点は、図面を参照して行う以下の実施例の詳細な説明から一層明らかとなろう。
【図面の簡単な説明】
【0021】
【図1】この発明の一実施例の基礎構造を示す概略断面図である。
【図2】図1の基礎構造を示す概略断面図である。
【図3】図1の基礎構造を示す上面図である。
【図4】図1のアンカーボルトを示す斜視図である。
【図5】図1の弾性部材を示す斜視図である。
【図6】図4のアンカーボルトに図5の弾性部材を取り付けた様子を示す斜視図である。
【図7】スチールハウスの耐力壁を示す図解図である。
【図8】図7の耐力壁の構造を模式的に示す図解図である。
【図9】コンクリート基礎の振動がスチールハウスの耐力壁に伝わる様子を示す図解図である。
【図10】アンカーボルトのせん断試験の様子を示す図解図である。
【図11】図10のせん断試験の測定結果を示すグラフであり、(a)は、アンカーボルトのひずみ量の測定結果であり、(b)は、アンカーボルトの移動量の測定結果である。
【図12】アンカーボルトのせん断試験の様子を示す図解図である。
【図13】図12のせん断試験の測定結果を示すグラフであり、(a)は、アンカーボルトのひずみ量の測定結果であり、(b)は、アンカーボルトの移動量の測定結果である。
【図14】この発明の別の実施例の基礎構造を示す概略断面図である。
【図15】図14のアンカーボルトのせん断試験の測定結果を示すグラフであり、(a)は、アンカーボルトのひずみ量の測定結果であり、(b)は、アンカーボルトの移動量の測定結果である。
【図16】この発明のさらに別の実施例の基礎構造を示す概略断面図である。
【図17】図16のアンカーボルトのせん断試験の測定結果を示すグラフであり、(a)は、アンカーボルトのひずみ量の測定結果であり、(b)は、アンカーボルトの移動量の測定結果である。
【図18】この発明のさらに別の実施例の基礎構造を示す概略断面図である。
【図19】図18のアンカーボルトのせん断試験の測定結果を示すグラフであり、(a)は、アンカーボルトのひずみ量の測定結果であり、(b)は、アンカーボルトの移動量の測定結果である。
【図20】この発明のさらに別の実施例の基礎構造のアンカーボルトを示す斜視図である。
【発明を実施するための形態】
【0022】
図1−図3を参照して、この発明の一実施例である基礎構造10は、たとえばスチールハウス100などの住宅に適用され、コンクリート基礎12の立上り部14にアンカーボルト16を埋設して、このアンカーボルト16と固定した耐力壁102に伝わる地震入力エネルギを低減させるものである。
【0023】
なお、コンクリート基礎12は、ベタ基礎および布基礎を含み、そのコンクリート基礎12の立上り部14によって囲まれた部分に防湿コンクリートなどが打設されていてもよい。
【0024】
図1−図3に示すように、コンクリート基礎12の立上り部14は、通常の上下方向の長さ(つまり、高さ)よりも高くなるように打ち増し(増打)されており、そこに打ち増しコンクリート部18が形成されている。打ち増しコンクリート部18の高さは、少なくとも、詳細は後述する、アンカーボルト16のコイルばね部28の上下方向の長さ(つまり、高さ)よりも大きく設定されており、たとえば150mmである。また、増打コンクリート部18の上面には、外表面を整えるための均しコンクリートが打設されており、この均しコンクリートが20mm程度の厚みを有している。
【0025】
打ち増しコンクリート部18(立上り部14)の所定位置には、挿通孔20が形成されている。挿通孔20は、打ち増しコンクリート部18を上下方向に貫通する円柱状の孔(空間)であり、その径は、たとえば140mmである。挿通孔20の内部には、管部材22を介して、下部がコンクリート基礎12に埋設された状態のアンカーボルト16が挿通されている。
【0026】
管部材22は、アルミニウム合金、鋼またはステンレス鋼などの金属を素材として、断面略円形の中空パイプ状に形成され、その外面が挿通孔20の内面と密着している。管部材22の内径は、少なくともアンカーボルト16のコイルばね部28を収容可能な所定の大きさに設定され、たとえば130mmである。なお、管部材22の表面には、酸化や劣化を防止するために防錆処理が施されている。
【0027】
図4に示すように、アンカーボルト16は、たとえばJIS G 3101に準拠するSS400などを素材として、断面真円形状を有する線材(棒鋼)を加工することによって成形される。アンカーボルト16の寸法は、M16ボルトとほぼ同等であり、線材の径は、たとえば16mmである。
【0028】
アンカーボルト16は、縦(上下)方向の両端に平坦部24,26を有しており、その平坦部24と平坦部26との間の位置に、コイルばね部28が形成されている。
【0029】
コイルばね部28は、アンカーボルト16の線材を3巻き螺旋状に巻回させることによって筒状に形成され、詳細は後に説明するように、その形状特性により、力が加わることによって弾性変形する。コイルばね部28の径(巻き径)は、たとえば70−100mmに設定される。
【0030】
ここで、線材の径に対するコイルばね部28の巻き径を大きくすれば、その分だけ線材を巻回させるための曲げ加工が容易になるため、コイルばね部28の成形性(加工性)は向上する。しかし、コイルばね部28の巻き径を大きくしすぎると、それに応じてコンクリート基礎12の幅を大きく設定しなければならず、これによって施工の自由度が制限されることとなる。したがって、コイルばね部28の巻き径は、曲げ加工を容易にするためにできるだけ大きくすることと、コンクリート基礎12の幅に対応させてできるだけ小さくすることとの、いわば二律背反的な条件を勘案して決定されることが望ましく、たとえばコイルばね部28の巻き径を線材の径の4−7倍程度に設定すると好適である。
【0031】
また、アンカーボルト16の平坦部24,26には、ねじ30,32が切られており、このねじ30,32に座金34,36とナット38,40が螺合されて締め付けられる。
【0032】
具体的には、図1−図2に示すように、アンカーボルト16の上端側の平坦部24のねじ30には、座金34(たとえば、丸座金)を介して、ねじ30に螺合するナット38が締め付けられ、これによって、詳細は後述する、ホールダウン金物110にアンカーボルト16が固定される。
【0033】
また、アンカーボルト16の下端側の平坦部26のねじ32には、座金36(たとえば、角座金)を介して、ねじ32に螺合するナット40が締め付けられ、この座金36がコンクリート基礎12に埋設されることにより、コンクリート基礎12に対するアンカ効果を発揮する。アンカーボルト16の埋め込み長さは、たとえば320mmである。
【0034】
また、挿通孔20の内部には、アンカーボルト16のコイルばね部28の上方および下方の位置に、弾性部材42が設置される。弾性部材42は、管部材22(挿通孔20)の高さ範囲内に収まるように、アンカーボルト16と管部材22との間に介在される。
【0035】
図5に示すように、弾性部材42は、シリコーンゴム、ウレタンゴム、スチレンブタジエンゴム(SBR)およびエチレンプロピレンゴム(EPDM)等の合成ゴムからなり、略短円柱状に形成される。弾性部材42の径は、管部材22の内径と略等しく設定され、たとえば130mmであり、その上下方向の長さは、たとえば50mmである。
【0036】
弾性部材42の略中心には、アンカーボルト16の平坦部24,26を挿通させるためのボルト孔44が形成されている。また、弾性部材42の上下方向の一方側の面は、弾性部材42の外周縁よりもやや内側からボルト孔44に向けて所定角度で傾斜する傾斜面46によって形成されている。
【0037】
アンカーボルト16に弾性部材42を取り付けるときには、図6に示すように、傾斜面46を下向きにした弾性部材42によってコイルばね部28の上方を覆うとともに、傾斜面46を上向きにした弾性部材42によってコイルばね部28の下方を覆うようにする。
【0038】
ここで、この実施例におけるスチールハウス100の耐力壁102について、この発明の理解に必要な範囲で、簡単に説明する。
【0039】
図7に示すように、スチールハウス100においては、耐力壁102は、スタッド104およびトラック106を含む。スタッド104は、耐力壁102の横方向に設けられる縦材であり、たとえばリップ溝形鋼からなる。トラック106は、耐力壁102の縦方向両端(上下端)に設けられる横架材であり、たとえば溝形鋼からなる。トラック106の内面(溝)は、スタッド104の上下端部を収納可能な幅に設定され、各トラック106の溝どうしが向かい合うようにして配置される。
【0040】
図8に示すように、トラック106の溝内にスタッド104の下端部が差し込まれて、ドリルねじやくぎ等により、スタッド104の一方のフランジ104aとトラック106の一方のフランジ106aとが固着(固定)され、スタッド104の他方のフランジ104bとトラック106の他方のフランジ106bとが固着(固定)される。なお、トラック106の所定位置には、アンカーボルト16を挿通させるためのボルト孔108が形成されている。
【0041】
また、スタッド104の内面(溝)には、ホールダウン金物110が取り付けられる。ホールダウン金物110は、スタッド104(耐力壁102)をアンカーボルト16に固定するためのものであり、そのサイズは、たとえば15kN用程度のものが用いられるが、これに限定される必要はなく、耐力壁102の壁倍率(強度)に応じて適宜選定するとよい。
【0042】
ホールダウン金物110は、主板110a、底板110b、および側板110cを含み、主板110aは、たとえば矩形状等に形成され、その所定位置にドリルねじやくぎ等が打ち込まれることにより、スタッド104のウェブ104cに固定される。
【0043】
また、底板110bは、たとえば矩形状等に形成され、主板110aの下端縁から水平方向に立ち上がって連続的に形成される。底板110bには、アンカーボルト16を挿通させるためのボルト孔112が形成されており、このボルト孔112にアンカーボルト16の上端側のねじ30を挿通させ、座金34を介してナット38で締め付けることによって、ホールダウン金物110がアンカーボルト16に固定される。
【0044】
側板110c,110cは、たとえば台形状等に形成され、主板110aの横方向の両端縁から、底板110bの形成される方向と同方向に立ち上がって連続的に形成される。側板110cは、溶接等によって底板110bの端縁に固定されており、ホールダウン金物110自体の強度および剛性等を向上させる。
【0045】
図1−図3を参照して、上述のような基礎構造10を形成する方法の一例について説明する。
【0046】
先ず、アンカーボルト16に弾性部材42を取り付けて、そのアンカーボルト16を、コンクリート基礎12を形成するための型枠(図示せず)内の所定位置に適宜な固定具等を用いて仮固定する。このとき、アンカーボルト16によるコンクリート基礎12のコーン破壊等を考慮して、コンクリート基礎12の幅をアンカーボルト16のコイルばね部28よりも少なくとも50mm程度大きく設定しておくと好適である。
【0047】
アンカーボルト16に弾性部材42を取り付けるときには、傾斜面46を下向きにした弾性部材42のボルト孔44にアンカーボルト16の上端側の平坦部24を挿入し、そのまま弾性部材42を下方にスライドさせて、弾性部材42の傾斜面46がアンカーボルト16のコイルばね部28の上側を覆うようにする。そして、同じように、傾斜面46を上向きにした弾性部材42のボルト孔44にアンカーボルト16の下端側の平坦部26を挿入して、そのまま弾性部材42を上方にスライドさせて、弾性部材42の傾斜面46がコイルばね部28を覆うようにする。
【0048】
それから、型枠内にコンクリートを打設して、アンカーボルト16の下部を一体的に埋め込んだコンクリート基礎12を形成する。そして、コンクリート基礎12の養生後、型枠を解体する。
【0049】
次に、コンクリート基礎12の上に、打ち増しコンクリート部18用の型枠(図示せず)を形成する。続いて、その型枠内のアンカーボルト16に相当する位置に、管部材22を配置する。具体的には、管部材22の内部に弾性部材42とアンカーボルト16のコイルばね部28とを収容して、そのまま管部材22の下端開口をコンクリート基礎12の上面に当接させて固定する。また、管部材22の上端開口には、テープ等の封止具を装着して、その上端開口を封止する。
【0050】
それから、型枠内にコンクリートを打設して、打ち増しコンクリート部18を形成する。打ち増しコンクリート部18の養生後、外表面を整えるための均しコンクリートを打設し、この均しコンクリートが乾いたら、管部材22における均しコンクリートの天面よりも上部に露出している部分を適宜切断する。ただし、増打コンクリート部18と略等しい高さを有する管部材22を使用するのであれば、管部材22の長さを調整する必要はない。
【0051】
その後、トラック106のボルト孔108とホールダウン金物110のボルト孔112とをアンカーボルト16の位置に対応させて、コンクリート基礎12上に耐力壁102を構築する。そして、アンカーボルト16のねじ30を、座金32を介してナット34で締め付けることによって、アンカーボルト16にホールダウン金物110、つまり耐力壁102を固定する。
【0052】
なお、アンカーボルト16のねじ30をホールダウン金物110にナット34で締め付けるときには、規定のトルクで締め付けることができるようにトルクレンチを使用することもできるが、ねじ30に予め定めた適正な締め付け位置をマーキングしておくようにしてもよい。
【0053】
このような基礎構造10においては、地震、または不同沈下等に伴ってコンクリート基礎12が振動しても、図9に示すように、アンカーボルト16のコイルばね部28がその振動に対応して変形することによって、振動による運動エネルギが吸収される。
【0054】
具体的には、地震の縦波(上下動)等によりコンクリート基礎102が垂直方向に揺れても、アンカーボルト16のコイルばね部28が軸方向に伸縮、変形することによって、振動による運動エネルギが吸収される。また、地震の横波(水平動)等によりコンクリート基礎102が水平方向に揺れても、アンカーボルト16のコイルばね部28が軸方向に曲げ変形することによって、振動による運動エネルギが吸収される。つまり、振動による運動エネルギをアンカーボルト16のコイルばね部28に吸収させることにより、スチールハウス100の耐力壁102に伝わる地震入力エネルギを低減させることができる。
【0055】
さらに、ある大きさ以上の水平動が生じると、耐力壁102(スチールハウス100)がその力方向に揺すれ、これが左右繰り返して応答することにより、耐力壁102の重心が上方に移動することとなるが、この実施例によれば、このコイルばね部28の引っ張り曲げ変形による耐力壁102の回転を利用して、地震入力エネルギの一部を位置エネルギに変換することにより、スチールハウス100の耐力壁102に伝わる地震入力エネルギを低減させることができる。
【0056】
以上のように、この実施例によれば、振動による運動エネルギをアンカーボルト16のコイルばね部28に吸収させるとともに、このコイルばね部28の引っ張り曲げ変形による耐力壁102の回転を利用して、地震入力エネルギの一部を位置エネルギに変換することで、スチールハウス100の耐力壁102に伝わる地震入力エネルギを低減させて、スチールハウス100の揺れを抑えることができる。
【0057】
しかも、この基礎構造10は、特許文献1のように転がり支承やダンパなどの設備を取り付ける場合と比較して、簡単に施工することができ、また、製品コストや取り付けなどの施工コストを抑えることができるため、経済的である。つまり、この実施例によれば、簡単かつ安価に基礎構造10を施工することができる。
【0058】
また、この実施例によれば、地震等に伴ってコンクリート基礎12が振動し、アンカーボルト16のコイルばね部28が変形したときに、アンカーボルト16を弾性部材42によって受け止めて、アンカーボルト16の変形を抑えることができる。したがって、アンカーボルト16が弾性限界を超えて塑性変形を起こしたりせず、その効果を発揮し続ける。
【0059】
その上、アンカーボルト16のコイルばね部28が変形したときに、その変形によって生じる応力を弾性部材42で覆っている範囲全体に拡散させることができる。したがって、応力集中によるアンカーボルト16の負担が軽減されるので、金属疲労によって破損等が生じることも少なくなる。
【0060】
ここで、本願発明者等は、アンカーボルト16のせん断耐力や弾性限界について、弾性部材42の寄与を評価するための試験を行った。具体的な試験内容は、以下の通りである。
【0061】
図10に示すように、アンカーボルト16の一方側(以下、「支点側」ということがある)の平坦部26を固定して当該アンカーボルト16を水平方向に延ばし、アンカーボルト16の他方側(以下、「力点側」ということがある)の平坦部24に垂直下方向の荷重(N)をかけて、その荷重(N)ごとに、“A:支点側平坦部”、“B:支点側曲部表側”、“C:支点側曲部裏側”、“D:支点側コイルばね部”、“E:力点側コイルばね部”、“F:力点側曲部表側”、“G:力点側曲部裏側”および“H:力点側平坦部”の各測定ポイントでのひずみ量(%)を測定した。そして、それと同時に、荷重(N)ごとの、アンカーボルト16の荷重がかかっている部分の垂直下方向への移動量(mm)を測定した。その測定結果を図11に示す。
【0062】
また、図12に示すように、コイルばね部28の軸方向の両側に弾性部材42を取り付けたアンカーボルト16の支点側の平坦部26を固定し、弾性部材42を下方向に動かないように木台等によって支持して、アンカーボルト16の力点側の平坦部24に垂直下方向に荷重(N)をかけ、その荷重(N)ごとに、“A:支点側平坦部”、“B:支点側曲部表側”、“C:支点側曲部裏側”、“D:支点側コイルばね部”、“E:力点側コイルばね部”、“F:力点側曲部表側”、“G:力点側曲部裏側”および“H:力点側平坦部”の各測定ポイントでひずみ量(%)を測定した。そして、それと同時に、荷重(N)ごとに、アンカーボルト16の荷重がかかっている部分の垂直下方向への移動量(mm)を測定した。その測定結果を図13に示す。
【0063】
なお、図中では、荷重をかけた方向、すなわち垂直下方向へのひずみ量(%)ないし移動量(mm)を正の数で表わしている。また、各グラフは、測定したデータの集合体によって構成されている。さらに、弾性部材42を下方向に動かないように支持した理由は、上記実施例と近似させた状態、すなわちアンカーボルト16の軸方向と直交する方向への弾性部材42の動きを拘束した状態でアンカーボルト16のひずみ量(%)ないし移動量(mm)を測定するためである。
【0064】
図11(a)に示すように、アンカーボルト16に弾性部材42を取り付けていない場合には、“A:支点側平坦部”において、荷重が1400Nを超えたあたりから、ひずみ量(%)の増加率(つまり、グラフの傾き)が急に大きくなっている。また、図11(b)に示すように、アンカーボルト16の移動量(mm)の増加率も、荷重が1400Nを超えたあたりから急に大きくなっており、このような結果から、アンカーボルト16の“A:支点側平坦部”では、荷重が1400Nを超えたあたりで弾性限界を過ぎて塑性変形の領域にはいったと推察できる。
【0065】
一方、図13(a)に示すように、アンカーボルト16に弾性部材42を取り付けている場合には、アンカーボルト16に弾性部材42を取り付けていない場合(図11参照)と比較して、荷重(N)に対するひずみ量(%)が全体的に低く(小さく)なっており、このような結果から、アンカーボルト16のせん断耐力が向上されていることが分かる。特に、“A:支点側平坦部”、“B:支点側曲部表側”、“C:支点側曲部裏側”、“D:支点側コイルばね部”、および“E:力点側コイルばね部”の各測定ポイントにおいては、荷重が6000Nを超えてもひずみ量(%)の増加率が大きくなる傾向が見られず、荷重(N)とひずみ量(%)とがほぼ比例した状態が保たれている。また、図13(b)に示すように、アンカーボルト16の移動量(mm)についても、荷重が6000Nを超えても移動量(mm)の増加率が大きくなる傾向が見られず、このような結果から、アンカーボルト16の弾性限界が向上されていることが分かる。
【0066】
以上の結果から分かるように、アンカーボルト16と管部材22(挿通孔20)との間に弾性部材42を設置し、この弾性部材42によってコイルばね部28の上方および下方を覆うようにすることで、アンカーボルト16のせん断耐力や弾性限界を向上させることが可能である。したがって、上述したように、アンカーボルト16が弾性限界を超えて塑性変形を起こしたりせず、その効果を発揮し続ける。また、応力集中によるアンカーボルト16の負担が軽減されるので、金属疲労によって破損等が生じることも少なくなる。つまり、アンカーボルト16の長寿命化を実現することが可能であり、延いては、基礎構造10が長期的に地震低減効果を発揮することができる。
【0067】
ところで、上述の実施例では、アンカーボルト16の線材を3巻き螺旋状に巻回させることによってコイルばね部28を形成したが、これに限定される必要はなく、コイルばね部28は、線材を少なくとも1巻き以上螺旋状に巻回させることによって形成可能である。
【0068】
たとえば、図14に示すように、アンカーボルト16の線材を1巻き螺旋状に巻回させることによってコイルばね部28を形成し、そのようなアンカーボルト16を用いて、基礎構造10を形成するようにしてもよい。
【0069】
なお、本願発明者等は、線材を1巻き螺旋状に巻回させることによってコイルばね部28を形成したアンカーボルト16のせん断耐力についても、上述した図12の試験内容と同じ要領で試験を行った。その測定結果を図15に示す。
【0070】
図15(a)に示すように、“B:支点側曲部表側”、“C:支点側曲部裏側”、“D:支点側コイルばね部”、および“E:力点側コイルばね部”の各測定ポイントにおいては、荷重が6000Nを超えてもひずみ量(%)の増加率が大きくなる傾向が見られず、また、“A:支点側平坦部”、“G:力点側曲部裏側”および“H:力点側平坦部”の各測定ポイントにおいても、荷重が4000Nを超えたあたりまでひずみ(%)の増加率が大きくなる傾向が見られない。また、図15(b)に示すように、アンカーボルト16の移動量(mm)についても、荷重が6000Nを超えても移動量(mm)の増加率が大きくなる傾向が見られない。ただし、線材を3巻き螺旋状に巻回させることによってコイルばね部28を形成したアンカーボルト16の測定結果(図13参照)と比べると、“D:支点側コイルばね部”、および“E:力点側コイルばね部”を除いて、荷重(N)に対するひずみ量(%)が全体的に高く(大きく)なっていることが分かる。
【0071】
以上の結果から分かるように、線材を1巻き螺旋状に巻回させることによってコイルばね部28を形成するようにしても、アンカーボルト16のせん断耐力や弾性限界を向上させて、アンカーボルト16の長寿命化を実現することが可能である。さらに、このようにアンカーボルト16の線材を螺旋状に巻回させる数を少なくすることで、コイルばね部28を形成するときの施工コストを抑えることができ、延いては、アンカーボルト16の製品コストを抑えることができる。
【0072】
また、図16に示すように、アンカーボルト16の線材を5巻き螺旋状に巻回させることによってコイルばね部28を形成し、そのようなアンカーボルト16を用いて、基礎構造10を形成するようにしてもよい。
【0073】
なお、本願発明者等は、線材を5巻き螺旋状に巻回させることによってコイルばね部28を形成したアンカーボルト16のせん断耐力についても、上述した図12の試験内容と同じ要領で試験を行った。その測定結果を図17に示す。
【0074】
図17(a)に示すように、“A:支点側平坦部”、“B:支点側曲部表側”、“C:支点側曲部裏側”、“D:支点側コイルばね部”、“E:力点側コイルばね部”、“F:力点側曲部表側”、および“G:力点側曲部裏側”の各測定ポイントにおいて、荷重が6000Nを超えてもひずみ量(%)の増加率が大きくなる傾向が見られない。また、図17(b)に示すように、アンカーボルト16の移動量(mm)についても、荷重が6000Nを超えても移動量(mm)の増加率が大きくなる傾向が見られない。
【0075】
以上の結果から分かるように、線材を5巻き螺旋状に巻回させることによってコイルばね部28を形成するようにしても、アンカーボルト16のせん断耐力や弾性限界を向上させて、アンカーボルト16の長寿命化を実現することが可能である。
【0076】
ここで、線材を螺旋状に巻回させる数を多くすれば、その分だけコイルばね部28が水平方向に容易に曲げ変形するようになるため、コイルばね部28に振動による運動エネルギを吸収させることが困難になる。しかし、こうすることにより、コイルばね部28の引っ張り曲げ変形による耐力壁102の回転がより効果的に機能するため、より多くの地震入力エネルギを位置エネルギに変換することが可能になる。
【0077】
つまり、アンカーボルト16のコイルばね部28の巻き数をむやみに増やしても、地震入力エネルギの一部を位置エネルギに変換する割合が増える一方で、振動による運動エネルギをコイルばね部28に吸収させる割合が減ってしまうため、単純にアンカーボルト16の地震低減効果そのものが向上するということはない。したがって、アンカーボルト16の施工コストを抑えつつ、基礎構造10に地震低減効果を発揮させるためには、アンカーボルト16の線材を螺旋状に巻回させる数は、1巻き以上5巻き未満程度に設定すると好適であると考えられる。
【0078】
逆に言えば、地震入力エネルギを位置エネルギに変換する機構を優先的に利用して基礎構造10に地震低減効果を発揮させるためには、アンカーボルト16のコイルばね部28の巻き数を5巻き以上に設定すればよい。
【0079】
また、上述の実施例では、アンカーボルト16のコイルばね部28の上方および下方に弾性部材42を設置したが、これに限定される必要はなく、図18に示すように、コイルばね部28の上方または下方の一方のみに弾性部材42を設置するようにしてもよい。
【0080】
なお、本願発明者等は、コイルばね部28の上方または下方の一方のみに弾性部材42を取り付けたアンカーボルト16のせん断耐力や弾性限界について、上述した図12の試験内容と同じ要領で試験を行った。その測定結果を図19に示す。
【0081】
図19(a)に示すように、コイルばね部28の支点側と力点側とを弾性部材42によって覆った場合の測定結果(図13参照)と比較すると、荷重(N)に対するひずみ量(%)が全体的に高くなっているものの、アンカーボルト16に弾性部材42を取り付けていない場合の測定結果(図11参照)と比較すると、荷重(N)に対するひずみ量(%)が圧倒的に低くなっていることが分かる。また、図19(b)に示すように、アンカーボルト16の移動量(mm)についても、アンカーボルト16に弾性部材42を取り付けていない場合の測定結果(図11参照)と比較すると、低くなっている。
【0082】
以上の結果から分かるように、アンカーボルト16のコイルばね部28の上方または下方の一方のみに弾性部材42を設置するようにしても、アンカーボルト16の負担を軽減させることができる。したがって、アンカーボルト16の長寿命化を実現することが可能であり、基礎構造10は長期的に地震低減効果を発揮することができる。
【0083】
さらに、上述の実施例では、コンクリート基礎12の立上り部14に形成された挿通孔20の内部に、管部材22を介して、アンカーボルト16を挿通させたが、これに限定される必要はなく、挿通孔20の内部に、アンカーボルト16を直接挿通させるようにしてもよい。たとえば、ボール紙等で形成されたボイド管の内部に弾性部材42とアンカーボルト16のコイルばね部28とを収容して、そのボイド管を一体的に埋め込んだ打ち増しコンクリート部18を打設し、打ち増しコンクリート部18の養生後にボイド管を解体するようにすれば、アンカーボルト16が挿通孔20の内部に直接挿通されることとなる。
【0084】
また、上述の実施例では、コンクリート基礎12の立上り部14を通常の高さよりも高くなるように打ち増し(増打)して、その打ち増しコンクリート部18を上下方向に貫通する挿通孔20を形成したが、これに限定される必要はなく、コンクリート基礎12の立上り部14を打ち増しせずに、つまり打ち増しコンクリート部18を形成せずに、そのまま挿通孔20を形成するようにしてもよい。
【0085】
さらにまた、弾性部材42を略C字状に形成して、取り外しが可能なように、アンカーボルト16に外嵌するようにしてもよい。こうすることにより、アンカーボルト16の下部をコンクリート基礎12に埋設した後でも、当該アンカーボルト16に弾性部材42を取り付けることが可能となる。したがって、現場に応じて最適な施工方法および施工手順を選択することができ、基礎構造10を効率よく容易に形成することができる。
【0086】
また、コンクリート基礎12を形成するための型枠にアンカーボルト16を仮固定した後で、その型枠内にコンクリートを打設したが、これに限定される必要はなく、固化する前の半生状態のコンクリートにアンカーボルト16を打ち込むようにしてもよい。
【0087】
さらにまた、上述の実施例では、アンカーボルト16の下端側の平坦部26のねじ32に座金36を介してナット40が締め付けられ、この座金36がコンクリート基礎12に対するアンカ効果を発揮したが、これに限定される必要はない。図20に示すように、アンカーボルト16の下端側の平坦部26を略L字状に曲げて、そこをコンクリート基礎12に対するアンカとして機能させるようにしてもよい。
【0088】
さらに、上述の実施例では、アンカーボルト16をSS400によって形成したが、アンカーボルト16の材質は特に限定されない。たとえば、バネ鋼によってアンカーボルト16を形成した場合には、コストが嵩むものの、線材を螺旋状に巻回させるときの施工性やコイルばね部28の弾性を向上させることが可能である。
【0089】
また、上述の実施例では、管部材22を鋼、アルミニウム合金、またはステンレス鋼などの金属によって形成したが、管部材22の材質は特に限定されない。たとえば、高密度ポリエチレンや塩化ビニル等の合成樹脂によって管部材22を形成した場合には、管部材22が耐食性および耐薬品性が付与されるため、管部材22の表面に防錆処理を施す必要がなくなる。
【0090】
さらにまた、上述の実施例では、スチールハウス100のコンクリート基礎12の立上り部14に基礎構造10が形成されたが、これに限定される必要はなく、スチールハウス以外のたとえば木造住宅に適用して、コンクリート基礎に埋設したアンカーボルト16を住宅の土台等に固定するようにしてもよいし、また住宅のみならず、倉庫や事務所などコンクリート基礎を有する各種建物に適用可能である。ただし、高層ビルなどの重量建物よりも、軽量な建物に好適に用いられる。
【0091】
なお、上述した径や高さ等の具体的数値は、いずれも単なる一例であり、必要に応じて適宜変更可能である。
【符号の説明】
【0092】
10 …基礎構造
12 …コンクリート基礎
14 …立上り部
16 …アンカーボルト
18 …打ち増しコンクリート部
20 …挿通孔
22 …管部材
28 …コイルばね部
42 …弾性部材
100 …スチールハウス
102 …耐力壁
【特許請求の範囲】
【請求項1】
コンクリート基礎を有する建物に伝わる地震入力エネルギを低減させるための基礎構造であって、
前記コンクリート基礎の立上り部に形成される挿通孔、
その一部が前記立上り部に埋設された状態で前記挿通孔内に挿通されるアンカーボルト、
前記アンカーボルトを構成する線材を少なくとも1巻き以上螺旋状に巻回することによって前記一部よりも上側に形成され、前記挿通孔内に収容されるコイルばね部、および
前記アンカーボルトと前記挿通孔との間に介在され、前記コイルばね部の上方および下方の少なくともいずれか一方を覆う弾性部材を備える、基礎構造。
【請求項2】
前記挿通孔の内部に配置される管部材をさらに備え、
前記アンカーボルトが前記管部材の内部に挿通され、前記弾性部材が前記アンカーボルトと前記管部材との間に介在される、請求項1記載の基礎構造。
【請求項3】
請求項2記載の基礎構造の施工方法であって、
(a)弾性部材を取り付けたアンカーボルトを型枠内の所定位置に配置するステップ、
(b)前記型枠内にコンクリートを打設して、前記ステップ(a)で配置したアンカーボルトの下部を一体的に埋め込んだコンクリート基礎を形成するステップ、
(c)前記ステップ(b)で形成したコンクリート基礎の上面の、前記アンカーボルトに対応する位置に管部材を配置して、当該管部材内に前記アンカーボルトのコイルばね部および前記弾性部材を収容するステップ、および
(d)前記ステップ(c)で配置した管部材を一体的に埋め込んだ打ち増しコンクリート部を形成するステップを含む、基礎構造の施工方法。
【請求項4】
請求項1ないし3のいずれかに記載の基礎構造を備える建物。
【請求項1】
コンクリート基礎を有する建物に伝わる地震入力エネルギを低減させるための基礎構造であって、
前記コンクリート基礎の立上り部に形成される挿通孔、
その一部が前記立上り部に埋設された状態で前記挿通孔内に挿通されるアンカーボルト、
前記アンカーボルトを構成する線材を少なくとも1巻き以上螺旋状に巻回することによって前記一部よりも上側に形成され、前記挿通孔内に収容されるコイルばね部、および
前記アンカーボルトと前記挿通孔との間に介在され、前記コイルばね部の上方および下方の少なくともいずれか一方を覆う弾性部材を備える、基礎構造。
【請求項2】
前記挿通孔の内部に配置される管部材をさらに備え、
前記アンカーボルトが前記管部材の内部に挿通され、前記弾性部材が前記アンカーボルトと前記管部材との間に介在される、請求項1記載の基礎構造。
【請求項3】
請求項2記載の基礎構造の施工方法であって、
(a)弾性部材を取り付けたアンカーボルトを型枠内の所定位置に配置するステップ、
(b)前記型枠内にコンクリートを打設して、前記ステップ(a)で配置したアンカーボルトの下部を一体的に埋め込んだコンクリート基礎を形成するステップ、
(c)前記ステップ(b)で形成したコンクリート基礎の上面の、前記アンカーボルトに対応する位置に管部材を配置して、当該管部材内に前記アンカーボルトのコイルばね部および前記弾性部材を収容するステップ、および
(d)前記ステップ(c)で配置した管部材を一体的に埋め込んだ打ち増しコンクリート部を形成するステップを含む、基礎構造の施工方法。
【請求項4】
請求項1ないし3のいずれかに記載の基礎構造を備える建物。
【図1】
【図2】
【図3】
【図4】
【図5】
【図6】
【図7】
【図8】
【図9】
【図10】
【図11】
【図12】
【図13】
【図14】
【図15】
【図16】
【図17】
【図18】
【図19】
【図20】
【図2】
【図3】
【図4】
【図5】
【図6】
【図7】
【図8】
【図9】
【図10】
【図11】
【図12】
【図13】
【図14】
【図15】
【図16】
【図17】
【図18】
【図19】
【図20】
【公開番号】特開2012−31570(P2012−31570A)
【公開日】平成24年2月16日(2012.2.16)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2010−169100(P2010−169100)
【出願日】平成22年7月28日(2010.7.28)
【出願人】(510206143)アグロトータルプランニング株式会社 (1)
【Fターム(参考)】
【公開日】平成24年2月16日(2012.2.16)
【国際特許分類】
【出願日】平成22年7月28日(2010.7.28)
【出願人】(510206143)アグロトータルプランニング株式会社 (1)
【Fターム(参考)】
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