説明

報知装置

【課題】眼に対して安全性の高い報知装置を提供
【解決手段】発光表示部4は、反射体21と波長変換素子22と導光体23とから構成される。反射体21は、眼に対して安全性の高い波長領域(0.4μm以下または1.2μm以上の波長)のレーザ光L1(本実施形態では、1.5μmの波長)を波長変換素子22に向けて反射する。波長変換素子22は非線形光学効果を示す材料で構成され、レーザ光L1を、波長が0.5μmの可視光に変換する。また導光体23は、波長変換素子22で波長変換された光を一端23aから導入して他端23bへ伝達する(矢印ILを参照)とともに、導光体23内を進行する光を、内部に分散して設けられた散乱体によって様々な方向に向けて散乱させる(矢印SLを参照)。これにより、眼に対して安全性の高い波長領域のレーザ光を用いて、発光表示部4を可視光で発光させることができる。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、可視光を発生させることにより情報を報知する報知装置に関する。
【背景技術】
【0002】
従来、車両の進行方向の路面上に当該車両から可視光レーザを照射することで、進路方向や進路変更地点などの進路情報を、視線を移動させることなく当該車両の乗員に認識させることを可能とする技術が知られている(例えば、特許文献1を参照)。
【特許文献1】特開平9−210716号公報
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0003】
このような特許文献1に記載の技術に基づいて、車両外ではなく車両内に可視光レーザを照射することで、当該車両の乗員に情報を報知することが可能であると考えられる。
しかし一般に、車両内は可視光レーザに対して反射率が高い材料で構成されていない。このため、車両内に可視光レーザを照射して昼間でも視認性の良好な表示を実現するためには、可視光レーザの強度を大きくする必要がある。
【0004】
これにより、強度を大きくした可視光レーザを車両の乗員が直接覗き込んだり、車両内で使用される手鏡などで反射した可視光レーザが車両の乗員の眼に入ったりすることで、眼の網膜を損傷させてしまうという事態が発生するおそれがあった。
【0005】
本発明は、こうした問題に鑑みなされたものであり、眼に対して安全性の高い報知装置を提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0006】
上記目的を達成するためになされた請求項1に記載の報知装置では、レーザ照射手段が、波長が0.4μm以下または1.2μm以上、より好ましくは1.5μmから1.8μmのレーザ光を照射し、さらに波長変換手段が、レーザ照射手段により照射されるレーザ光の波長を、可視光の波長に変換する。
【0007】
このように構成された報知装置によれば、レーザ照射手段が照射するレーザ光の波長が0.4μm以下または1.2μm以上であるので、眼に対して安全性が高く、このレーザ光が人間の眼に入射しても、眼の網膜の損傷を抑制することができる。
【0008】
なお、波長が0.4μm以下または1.2μm以上のレーザ光が眼に対して安全性が高いということは、レーザ製品の安全基準に関するJIS規格である「JIS C6802−1997」の最大許容露光量(MPE:Maximum Permissible Exposure)の波長依存性(図15を参照)において、レーザ光の波長が0.4μm以下(図15の波長領域R1を参照)と1.2μm以上(図15の波長領域R2を参照)の場合の最大許容露光量(MPE)が、それ以外の波長領域(図15の波長領域R4を参照)よりも大きいことに基づく。
【0009】
さらに、レーザ光の波長が1.5μmから1.8μmである場合の最大許容露光量(MPE)が最大になっている(図15の波長領域R3を参照)。このため、眼に対する安全性を向上させるには、レーザ光の波長を1.5μmから1.8μmに設定することが好ましい。
【0010】
ところで、車室内は狭いために、車室内でレーザ光を照射する場合は、広い空間を有する場所でレーザ光を照射する場合と比較して、照射されたレーザ光が人間の眼に入る可能性が高い。このため、請求項1に記載の報知装置は、請求項2に記載のように、レーザ照射手段が車室内でレーザ光を照射するようにした場合に、特に有効である。
【0011】
また、請求項1または請求項2に記載の報知装置において、レーザ照射手段により照射されるレーザ光の波長を短くするためには、請求項3に記載のように、波長変換手段は、非線形光学効果を示す材料であるようにするとよい。非線形光学効果を示す材料は、入射光の2次高調波、3次高調波、4次高調波、和周波、差周波などを発生させるものであり、入射光の波長をそれぞれ2分の1、3分の1、4分の1などに変換することができるからである。
【0012】
このように構成された報知装置によれば、レーザ照射手段により照射されるレーザ光を、非線形光学効果を示す材料に入射させるという簡便な方法により、波長を変換することができる。
【0013】
なお請求項1〜請求項3の何れかに記載の報知装置では、請求項4に記載のように、波長変換手段は、レーザ照射手段により照射されるレーザ光の波長を直接、可視光の波長に変換するようにしてもよいし、請求項7に記載のように、レーザ照射手段により照射されるレーザ光の波長を、紫外光の波長に変換する紫外光変換手段と、紫外光変換手段により波長が変換された紫外光の波長を可視光の波長に変換する可視光変換手段とから構成されるようにしてもよい。
【0014】
ここで、例えば、非線形光学効果を示す材料(BIBO(BiB3O6)結晶、LBO結晶(LiB3O5)、KTP結晶(KTiOPO4)結晶など) の大きさは1mm〜10mm程度であり、広い範囲に亘って、可視光を発光させることができない。
【0015】
そこで、請求項4に記載の報知装置では、請求項5に記載のように、波長変換手段により変換された可視光が内部を進行可能であるとともに、内部を進行している可視光を外部に散乱可能に構成された第1導光体を備えるようにするとよい。
【0016】
このように構成された報知装置によれば、波長変換手段により変換された可視光を第1導光体に導入することにより、波長変換手段により変換された可視光が第1導光体の内部を進行し、さらに、第1導光体の内部を進行している可視光が、第1導光体の外部に散乱する。これにより、波長変換手段により変換された可視光を用いて、第1導光体を発光させることができる。
【0017】
このため、波長変換手段が小さい場合でも、第1導光体を広い範囲にわたって配置することによって、可視光を広い範囲にわたって発光させることができる。
また、波長変換手段により変換された可視光の強度が、第1導光体の内部を可視光が進行するにつれて小さくなり、第1導光体における波長変換手段から離れた箇所での発光量が小さくなってしまうことが考えられる。
【0018】
そこで、第1導光体の内部を進行している可視光によって第1導光体が全体にわたって一様に発光するようにするために、請求項5に記載の報知装置では、請求項6に記載のように、第1導光体は、第1導光体の内部を進行している可視光を外部に散乱するための散乱体を、第1導光体の内部に有し、散乱体は、波長変換手段から遠ざかるほど濃度が高くなるように分布するようにするとよい。
【0019】
また、請求項7に記載の報知装置では、請求項8に記載のように、可視光変換手段は、紫外光変換手段により波長を変換された紫外光が内部を進行可能であるとともに、紫外光変換手段により波長を変換された紫外光を可視光に変換する波長変換材料が内部に設けられ、さらに、波長変換材料により変換された可視光が内部を進行可能であるとともに、内部を進行している可視光を外部に散乱可能に構成される第2導光体であるようにするとよい。
【0020】
このように構成された報知装置によれば、紫外光変換手段により波長を変換された紫外光を第2導光体に導入することにより、紫外光変換手段により波長を変換された紫外光が第2導光体の内部を進行し、さらに、第2導光体の内部を進行している紫外光が、第2導光体の内部に設けられた波長変換材料により可視光に変換される。そして、波長変換材料により変換された可視光が第2導光体の内部を進行し、さらに、第2導光体の内部を進行している可視光が、第2導光体の外部に散乱する。これにより、紫外光変換手段により波長を変換された紫外光を用いて、第2導光体を発光させることができる。
【0021】
このため、紫外光変換手段が小さい場合でも、第2導光体を広い範囲にわたって配置することによって、可視光を広い範囲にわたって発光させることができる。
また、第2導光体の内部を進行している紫外光によって第2導光体が全体にわたって一様に発光するようにするために、請求項8に記載の報知装置では、請求項9に記載のように、波長変換材料は、紫外光変換手段から遠ざかるほど濃度を高くなるように分布するようにするとよい。
【0022】
また、請求項4または請求項7に記載の報知装置では、請求項10に記載のように、波長変換手段は、レーザ照射手段により照射されるレーザ光の波長を変換することができる材料を、レーザ光が照射される点を移動することができる面を有する形状に加工したもの(以下、面状波長変換材料ともいう)であるようにするとよい。
【0023】
このように構成された報知装置によれば、面状波長変換材料に向けてレーザ光を照射する際に、時間の経過に応じてレーザ光の照射方向を変化させることにより、面状波長変換材料上で可視光の発光点を任意に移動させることができる。このため、様々な移動パターン(例えば、螺旋運動、回転運動、往復運動)で可視光の発光点を移動させることが可能になる。これにより、発光点の移動パターンと、報知する情報の内容とを対応させることで、発光点の移動パターンにより、報知する情報の内容を認識させることが可能となる。なお、面状波長変換材料としては、例えば、特開平5−142601号公報に開示されている材料を利用することができる。
【発明を実施するための最良の形態】
【0024】
(第1実施形態)
以下に本発明の第1実施形態について図面とともに説明する。
図1は本発明が適用された第1実施形態のレーザ照射報知装置1の構成を示すブロック図、図2は車両内におけるレーザ照射報知装置1の構成要素の配置を示す図である。
【0025】
レーザ照射報知装置1は、車両に搭載され、図1に示すように、レーザ光L1,L2をそれぞれ照射するレーザ照射部2,3と、レーザ光L1,L2をそれぞれ入射することにより発光する発光表示部4,5と、レーザ照射部2,3を制御するレーザ制御ECU9とを備える。
【0026】
これらのうちレーザ照射部2,3は、図2に示すように、車室50の天井部51の前端付近に装着され、眼に対して安全性の高い波長領域(0.4μm以下または1.2μm以上の波長)のレーザ光(本実施形態では、1.5μmの波長)を照射する。そしてレーザ照射部2,3は、レーザ制御ECU9からの指示に従い、レーザ照射の有無およびレーザ照射方向を変更可能に構成されている。
【0027】
また発光表示部4は、カーナビゲーション装置61に装着され(図2を参照)、図3に示すように、反射体21と波長変換素子22と導光体23とから構成される。
これらのうち反射体21は、レーザ照射部2から照射されたレーザ光L1を波長変換素子22に向けて反射する。
【0028】
また波長変換素子22は、入射光の2次高調波、3次高調波、4次高調波などを発生させる非線形光学効果を示す材料(例えば、BIBO(BiB3O6)結晶、LBO結晶(LiB3O5)、KTP結晶(KTiOPO4)結晶、あるいは、KTPの分極構造を周期的に反転させたPPKPTなど)で構成される。本実施形態では、波長変換素子22は、3次高調波を発生させる効果を有する材料で構成されている。このため、レーザ照射部2から照射されて波長変換素子22に入射するレーザ光L1(波長1.5μm)は、波長変換素子22によって、波長が0.5μmの可視光に変換される。
【0029】
また導光体23は、カーナビゲーション装置61の表示画面61aの外周に沿って表示画面61aを取り囲むように設置されている。そして導光体23は、波長変換素子22で波長変換された光を一端23aから導入して他端23bへ伝達する(矢印ILを参照)とともに、導光体23内を進行する光を、内部に分散して設けられた散乱体(不図示)によって様々な方向に向けて散乱させる(矢印SLを参照)。
【0030】
これにより、図4に示すように、レーザ照射部2からレーザ光L1(波長1.5μm)を発光表示部4に向けて照射することによって、発光表示部4を緑色の可視光(波長0.5μm)で発光させることができる。
【0031】
次に発光表示部5は、メータパネル62に装着され(図2を参照)、図5に示すように、反射体26と波長変換素子27と導光体28とから構成される。
これらのうち反射体26は、レーザ照射部3から照射されたレーザ光L2を波長変換素子27に向けて反射する。
【0032】
また波長変換素子27は、波長変換素子22と同様に、3次高調波を発生させる効果を有する材料で構成されている。このため、レーザ照射部3から照射されて波長変換素子27に入射するレーザ光L2(波長1.5μm)は、波長変換素子27によって、波長が0.5μmの可視光に変換される。
【0033】
また導光体28は、メータパネル62の表示画面62aの外周に沿って表示画面62aを取り囲むように設置されている。そして導光体28は、波長変換素子27で波長変換された光を一端28aから導入して他端28bへ伝達するとともに、導光体28内を進行する光を、内部に分散して設けられた散乱体(不図示)によって様々な方向に向けて散乱させる。
【0034】
これにより、レーザ照射部3からレーザ光L2(波長1.5μm)を発光表示部5に向けて照射することによって、発光表示部5を緑色の可視光(波長0.5μm)で発光させることができる。
【0035】
さらにレーザ制御ECU9は、車両に設置された各種センサ(不図示)および各種装置(不図示)からの信号を取得可能に構成されている。またレーザ制御ECU9は、レーザを照射する際の目標地点を決定するための照射地点決定テーブル9aを記憶している(図1を参照)。
【0036】
この照射地点決定テーブル9aは、図6に示すように、発光表示部4,5での発光表示を必要とする状況と、レーザ照射の目標地点との対応関係を記憶している。具体的には、カーナビゲーション装置61が、経路誘導の表示、後方のクリアランスソナー表示、リアビュー表示、車両内電話機(不図示)に着信があった旨の表示、ETC車載器(不図示)において課金処理があった旨の表示、各種メンテナンス(例えばオイル交換、フィルター交換)の情報の表示を行った場合には、レーザ照射の目標地点をカーナビゲーション装置61、すなわち、発光表示部4とする(列r1を参照)。またメータパネル62が、何らかのウォーニング表示(例えばドアオープン表示、エンジン冷却水温が所定温度を超えた旨の表示、ガソリン残量が所定量を下回った旨の表示)、及び何らかのインジケータ表示を行った場合には、レーザ照射の目標地点をメータパネル62、すなわち、発光表示部5とする(列r2を参照)。
【0037】
そしてレーザ制御ECU9は、レーザ照射部2,3を駆動するためのレーザ照射処理を実行する。
ここで、レーザ制御ECU9が実行するレーザ照射処理の手順を、図7を用いて説明する。図7はレーザ照射処理を示すフローチャートである。
【0038】
このレーザ照射処理は、レーザ制御ECU9が起動(電源オン)している間に繰り返し実行される処理である。
このレーザ照射処理が実行されると、レーザ制御ECU9は、まずS10にて、車両に設置された各種センサおよび各種装置からの信号(以下、センサ・装置信号という)を取得し、この信号と照射地点決定テーブル9aに基づいて、レーザ照射部2,3にレーザ照射を行わせるか否かを決定する。
【0039】
具体的には、センサ・装置信号に基づいて、カーナビゲーション装置61が経路誘導を行ったと判断した場合、カーナビゲーション装置61が後方のクリアランスソナー表示を行ったと判断した場合、カーナビゲーション装置61がリアビュー表示を行ったと判断した場合、車両内電話機に着信があった旨をカーナビゲーション装置61が表示したと判断した場合、ETC車載器において課金処理があった旨をカーナビゲーション装置61が表示したと判断した場合、及び各種メンテナンスの情報をカーナビゲーション装置61が表示したと判断した場合に、照射地点決定テーブル9aを参照して(図6の列r1を参照)、「レーザ照射部2にレーザ照射を行わせる」と決定する。
【0040】
また、センサ・装置信号に基づいて、メータパネル62が何らかのウォーニング表示を行ったと判断した場合、及びメータパネル62が何らかのインジケータ表示を行ったと判断した場合に、照射地点決定テーブル9aを参照して(図7の列r2を参照)、「レーザ照射部3にレーザ照射を行わせる」と決定する。
【0041】
その後S20にて、S10で「レーザ照射部2またはレーザ照射部3にレーザ照射を行わせる」と決定したか否かを判断する。ここで、「レーザ照射部2またはレーザ照射部3にレーザ照射を行わせる」と決定しなかった場合には(S20:NO)、レーザ照射処理を終了する。
【0042】
一方、「レーザ照射部2またはレーザ照射部3にレーザ照射を行わせる」と決定した場合には(S20:YES)、S30にて、S10で「レーザ照射を行わせる」と決定したレーザ照射部2またはレーザ照射部3によるレーザ照射を開始する。即ち、S10で「レーザ照射部2にレーザ照射を行わせる」と決定した場合にはレーザ照射部2によるレーザ照射を開始し、S10で「レーザ照射部3にレーザ照射を行わせる」と決定した場合にはレーザ照射部3によるレーザ照射を開始する。
【0043】
そしてS40にて、レーザ照射が開始されてから予め設定された所定照射時間(例えば、5秒)が経過したか否かを判断する。ここで、所定照射時間が経過していないと判断した場合には(S40:NO)、S40の処理を繰り返すことにより所定照射時間が経過するまで待機する。一方、所定照射時間が経過したと判断した場合には(S40:YES)、S50にて、S30で開始されたレーザ照射を停止し、レーザ照射処理を終了する。
【0044】
このように構成されたレーザ照射報知装置1では、レーザ照射部2,3が、波長が0.4μm以下または1.2μm以上のレーザ光L1,L2を照射し、さらに発光表示部4,5が、レーザ照射部2,3により照射されるレーザ光L1,L2の波長を、可視光の波長に変換する。
【0045】
すなわち、レーザ照射部2,3が照射するレーザ光の波長が0.4μm以下または1.2μm以上であるので、眼に対して安全性が高く、このレーザ光が人間の眼に入射しても、眼の網膜の損傷を抑制することができる。
【0046】
またレーザ照射部2,3は、最大許容露光量が最大である波長領域(1.5μmから1.8μm(図15を参照))のレーザ光L1,L2(波長1.5μm)を照射しているため、眼に対して最も安全性が高い。
【0047】
また発光表示部4,5の波長変換素子22,27は、非線形光学効果を示す材料で構成されている。このため、レーザ照射部2,3により照射されるレーザ光を波長変換素子22,27に入射させるという簡便な方法により、波長を変換することができる。
【0048】
また、波長変換素子22,27により変換された可視光を導光体23,28に導入することにより、波長変換素子22,27により変換された可視光が導光体23,28の内部を進行し、さらに、導光体23,28の内部を進行している可視光が、導光体23,28の外部に散乱する。これにより、波長変換素子22,27により変換された可視光を用いて、導光体23,28を発光させることができる。
【0049】
このため、波長変換素子22,27が小さい場合でも、導光体23,28を広い範囲にわたって配置することによって、可視光を広い範囲にわたって発光させることができる。
以上説明した実施形態において、レーザ照射報知装置1は本発明における報知装置、レーザ照射部2,3は本発明におけるレーザ照射手段、波長変換素子22,27は本発明における波長変換手段、導光体23,28は本発明における第1導光体である。
【0050】
(第2実施形態)
以下に本発明の第2実施形態について図面とともに説明する。尚、第2実施形態では、第1実施形態と異なる部分のみを説明する。
【0051】
第2実施形態のレーザ照射報知装置1は、レーザ照射報知装置1の構成の一部と、レーザ照射処理が変更された点以外は第1実施形態と同じである。
図8は第2実施形態のレーザ照射報知装置1の構成を示すブロック図である。
【0052】
まず第2実施形態のレーザ照射報知装置1は、図8に示すように、発光表示部4,5の代わりに波長変換材料6を設けた点が第1実施形態と異なる。
波長変換材料6は、大きな2次または3次分子感受率を有する色素を透明高分子に化学結合した非線形光学材料である。波長変換材料6は、シート状に加工されており、インストルメントパネル63の上面63a、メータパネル62の表示画面62a、右フロントピラー64に貼付されている(図9において、右上がりの直線でハッチングされている部分を参照)。また波長変換材料6は、レーザ照射部2,3から照射されたレーザ光L1,L2(波長1.5μm)を、波長が0.5μmの可視光に変換する。
【0053】
また第2実施形態のレーザ照射報知装置1は、照射地点決定テーブル9aの構成が第1実施形態と異なる。すなわち、第2実施形態の照射地点決定テーブル9aは、レーザ照射部2,3からのレーザ照射を必要とする状況と、レーザ照射の目標地点との対応関係を記憶している。
【0054】
具体的には、図10に示すように、メータパネル62が何らかのウォーニング表示及び何らかのインジケータ表示を行った場合と、室内カメラ(不図示)により撮影された運転者DR(図9を参照)の顔の画像に基づいて運転者DRが居眠りをしていると検知された場合には、レーザ照射の目標地点をインストルメントパネル63の上面63aとする(列r3を参照)。またカーナビゲーション装置61が、経路誘導の表示、後方のクリアランスソナー表示、車両内電話機に着信があった旨の表示、ETC車載器において課金処理があった旨の表示、各種メンテナンスの情報の表示を行った場合には、レーザ照射の目標地点を右フロントピラー64とする(列r4を参照)。
【0055】
また第2実施形態のレーザ照射報知装置1は、図8に示すように、レーザ制御ECU9が、レーザを照射する際のレーザの軌跡を決定するための軌跡決定テーブル9bを記憶している点が第1実施形態と異なる。
【0056】
軌跡決定テーブル9bは、レーザ照射部2,3からのレーザ照射を必要とする状況と、レーザ照射の軌跡との対応関係を記憶している。
具体的には、図11に示すように、メータパネル62が何らかのウォーニング表示及び何らかのインジケータ表示を行った場合と、カーナビゲーション装置61が、ETC車載器において課金処理があった旨の表示、及び各種メンテナンスの情報の表示を行った場合には、或る地点に至る螺旋の軌跡となるようにレーザ照射を行う(列r5を参照)。またカーナビゲーション装置61が、車両内電話機に着信があった旨の表示を行った場合には、或る地点の周囲を回る軌跡となるようにレーザ照射を行う(列r6を参照)。また、カーナビゲーション装置61が経路誘導の表示、後方のクリアランスソナー表示、リアビュー表示を行った場合と、運転者DRが居眠りをしていると検知された場合には、或る2点間で往復運動する軌跡となるようにレーザ照射を行う(列r7を参照)。
【0057】
なお、上記のレーザの軌跡による分類は、運転手に要求する動作の違いに基づいている。具体的には、軌跡が「螺旋」の場合には、表示をみることを運転者に要求していることを示している。また、軌跡が「回転」の場合には、スイッチ操作をすることを運転者に要求していることを示している。また、軌跡が「往復」の場合には、ハンドル、アクセル、ブレーキ操作などを運転者に要求していることを示している。
【0058】
次に、第2実施形態のレーザ照射処理の手順を、図12を用いて説明する。図12は第2実施形態のレーザ照射処理を示すフローチャートである。
このレーザ照射処理が実行されると、レーザ制御ECU9は、まずS110にて、車両に設置された各種センサおよび各種装置からの信号(センサ・装置信号)を取得し、この信号と照射地点決定テーブル9aと軌跡決定テーブル9bに基づいて、レーザ照射部2,3にレーザ照射を行わせるか否か、レーザ照射を行わせる場合にはレーザ照射の目標地点と軌跡を決定する。なお、照射地点決定テーブル9aに基づいて、レーザ照射の目標地点がインストルメントパネル63の上面63aである場合には、「レーザ照射部2にレーザ照射を行わせる」と決定し、レーザ照射の目標地点が右フロントピラー64である場合には、「レーザ照射部3にレーザ照射を行わせる」と決定する。
【0059】
そしてS110で「レーザ照射部2またはレーザ照射部3にレーザ照射を行わせる」と決定したか否かを判断する。ここで、「レーザ照射部2またはレーザ照射部3にレーザ照射を行わせる」と決定しなかった場合には(S120:NO)、レーザ照射処理を終了する。
【0060】
一方、「レーザ照射部2またはレーザ照射部3にレーザ照射を行わせる」と決定した場合には(S120:YES)、S130にて、S110で「レーザ照射を行わせる」と決定したレーザ照射部2またはレーザ照射部3に、S110で決定した目標地点および軌跡でレーザ照射を行わせる。例えば、インストルメントパネル63の上面63aに螺旋の軌跡でレーザ照射をするとS10で決定した場合には、図13に示すように、インストルメントパネル63の上面63a上に始点80a、メータパネル62の表示画面62a上に終点80bが設定された螺旋軌跡80となるようにレーザ照射が行われる。
【0061】
そして、S130のレーザ照射が終了すると、レーザ照射処理を終了する。
このように構成されたレーザ照射報知装置1では、シート状に加工された波長変換材料6に向けてレーザ光を照射する際に、時間の経過に応じてレーザ光の照射方向を変化させることにより、波長変換材料6で可視光の発光点を任意に移動させる。これにより、様々な軌跡(例えば、螺旋、回転、往復運動)で可視光の発光点を移動させることができる。そして、軌跡決定テーブル9bによって、発光点の軌跡と、報知する情報の内容とを対応させているため、発光点の軌跡により、報知する情報の内容を認識させることができる。
【0062】
以上説明した実施形態において、波長変換材料6は本発明における波長変換手段である。
以上、本発明の一実施形態について説明したが、本発明は上記実施形態に限定されるものではなく、本発明の技術的範囲に属する限り種々の形態を採ることができる。
【0063】
例えば、上記第1実施形態においては、1.5μmの波長のレーザ光を波長変換素子22で0.5μmの波長の可視光に変換する発光表示部4を示した。しかし、図14(a)に示すように、波長変換素子22の代わりに、4次高調波を発生させる非線形光学効果を示す材料で構成された波長変換素子31を用いるようにしてもよい。この場合に波長変換素子31は1.5μmの波長のレーザ光を0.375μmの波長の紫外光に変換する。このため、導光体23の代わりに、蛍光体または燐光体が内部に分散して設けられた導光体32を設置するとよい。これにより、導光体32に導入された紫外光が、導光体32内の蛍光体または燐光体によって可視光に変換されて発光する。
【0064】
これにより、波長変換素子31が小さい場合でも、導光体32を広い範囲にわたって配置することによって、可視光を広い範囲にわたって発光させることができる。
ここで、波長変換素子31は本発明における紫外光変換手段、導光体32内の蛍光体または燐光体は本発明における可視光変換手段である。
【0065】
なお、4次高調波を発生させる非線形光学効果を示す材料で構成された波長変換素子31を用いる代わりに、2次高調波を発生させる非線形光学効果を示す材料を用いて、2次高調波への変換を2回繰り返すことによって、1.5μmの波長のレーザ光を0.375μmの波長の紫外光に変換するようにしてもよい。
【0066】
また、発光表示部4により照射されるレーザ光を、眼に対して安全性の高い0.4μm以下の波長領域の紫外光にした場合には、図14(b)に示すように、波長変換素子31を省略し、反射体21で反射された紫外光を直接、導光体32に導入するようにしてもよい。
【0067】
また、導光体中に設けられた散乱体の分布を変化させることにより、導光体の明るさを一様にしたり、ある部分を明るくしたりするなど、導光体の輝度分布を変化させるようにしてもよい。例えば、図14(c)に示すように、導光体32を、連続した複数の領域32a、32b、32c、32d・・・に分割して、領域32a、32b、32c、32d・・・毎に濃度分布を変化させるようにしてもよい。具体的には、波長変換素子31から遠ざかるほど散乱体(蛍光体、燐光体)の濃度を高くすることによって、導光体32の輝度分布を一様にすることができる。また、導光体32の或る領域における散乱体の濃度を高く、または低くすることによって、この領域の輝度を大きく、または小さくすることができる。
【0068】
また図14(d)に示すように、導光体32の代わりに、高分子分散液晶34aの周囲に透明電極34bを設置した導光体34を用いるようにしてもよい。この場合には、透明電極34bにより高分子分散液晶34aの散乱状態を電気的に制御することができる。このため、導光体34の輝度分布を時間的に変化させることが可能となる。
【0069】
なお、図14(a)〜(d)に示す構成は、発光表示部5にも適用可能である。
また上記第1実施形態においては、発光表示部4,5がカーナビゲーション装置61およびメータパネル62に設置されているものを示したが、これに限られるものではなく、例えば、インストルメントパネル、ピラー、操作スイッチなどに設置するようにしてもよい。
【0070】
また上記第1実施形態においては、発光表示部4,5の導光体23,28が表示画面の周囲を取り囲む形状に形成されているものを示したが、このような形状に限られるものではなく、例えば、直線状、曲線状などであってもよいし、
また、レーザ光の波長を変換する材料として、特開平2−104547号、特開平1−132612号、特開平5−142601号に開示されているように、大きな2次または3次分子感受率を有する色素を透明高分子に化学結合した材料を利用することができる。
【0071】
また上記第1実施形態においては、波長変換材料6がシート状に加工されているものを示したが、レーザ光が照射される点を移動することができる面を有する形状であれば、このような形状に限られるものではなく、例えば、棒状であってもよい。
【0072】
また上記第2実施形態においては、シート状の波長変換材料6が、インストルメントパネル63の上面63a、メータパネル62の表示画面62a、右フロントピラー64に貼付されているものを示したが、これらの箇所に限られるものではない。
【0073】
また上記第2実施形態においては、シート状の波長変換材料6が、レーザ照射部2,3から照射されたレーザ光L1,L2の波長を直接、可視光の波長に変換するものを示した。しかしシート状の波長変換材料6がレーザ光L1,L2の波長を紫外光に変換するものである場合には、波長変換材料6の内部に蛍光体や燐光体を分散させることによって、紫外光を可視光に変換するようにしてもよい。
【図面の簡単な説明】
【0074】
【図1】第1実施形態のレーザ照射報知装置1の構成を示すブロック図である。
【図2】第1実施形態のレーザ照射報知装置1の構成要素の車両内における配置を示す図である。
【図3】第1実施形態の発光表示部4の構成を示す平面図である。
【図4】レーザ照射部2から照射されるレーザ光L1の経路を示す図である。
【図5】発光表示部5の構成を示す平面図である。
【図6】第1実施形態の照射地点決定テーブル9aの構成を示す図である。
【図7】第1実施形態のレーザ照射処理を示すフローチャートである。
【図8】第2実施形態のレーザ照射報知装置1の構成を示すブロック図である。
【図9】第2実施形態のレーザ照射報知装置1の構成要素の車両内における配置を示す図である。
【図10】第2実施形態の照射地点決定テーブル9aの構成を示す図である。
【図11】軌跡決定テーブル9bの構成を示す図である。
【図12】第2実施形態のレーザ照射処理を示すフローチャートである。
【図13】螺旋軌跡80を示す図である。
【図14】他の実施形態の発光表示部4の構成を示す図である。
【図15】最大許容露光量の波長依存性を示すグラフである。
【符号の説明】
【0075】
1…レーザ照射報知装置、2,3…レーザ照射部、4,5…発光表示部、6…波長変換材料、9…レーザ制御ECU、9a…照射地点決定テーブル、9b…軌跡決定テーブル、21,26…反射体、22,27,31…波長変換素子、23,28,32,34…導光体、34a…高分子分散液晶、34b…透明電極、61…カーナビゲーション装置、62…メータパネル、63…インストルメントパネル、64…右フロントピラー、80…螺旋軌跡

【特許請求の範囲】
【請求項1】
可視光を発生させることにより情報を報知する報知装置であって、
波長が0.4μm以下または1.2μm以上、より好ましくは1.5μmから1.8μmのレーザ光を照射するレーザ照射手段と、
前記レーザ照射手段により照射されるレーザ光の波長を、可視光の波長に変換する波長変換手段と
を備えることを特徴とする報知装置。
【請求項2】
前記レーザ照射手段は、車室内でレーザ光を照射する
ことを特徴とする請求項1に記載の報知装置。
【請求項3】
前記波長変換手段は、
非線形光学効果を示す材料である
ことを特徴とする請求項1または請求項2に記載の報知装置。
【請求項4】
前記波長変換手段は、前記レーザ照射手段により照射されるレーザ光の波長を直接、可視光の波長に変換する
ことを特徴とする請求項1〜請求項3の何れかに記載の報知装置。
【請求項5】
前記波長変換手段により変換された可視光が内部を進行可能であるとともに、内部を進行している可視光を外部に散乱可能に構成された第1導光体を備える
ことを特徴とする請求項4に記載の報知装置。
【請求項6】
前記第1導光体は、
前記第1導光体の内部を進行している可視光を外部に散乱するための散乱体を、前記第1導光体の内部に有し、
前記散乱体は、
前記第1導光体の内部を進行している可視光によって前記第1導光体が全体にわたって一様に発光するように、前記波長変換手段から遠ざかるほど濃度が高くなるように分布する
ことを特徴とする請求項5に記載の報知装置。
【請求項7】
前記波長変換手段は、
前記レーザ照射手段により照射されるレーザ光の波長を、紫外光の波長に変換する紫外光変換手段と、
前記紫外光変換手段により波長が変換された紫外光の波長を可視光の波長に変換する可視光変換手段とから構成される
ことを特徴とする請求項1〜請求項3の何れかに記載の報知装置。
【請求項8】
前記可視光変換手段は、
前記紫外光変換手段により波長を変換された紫外光が内部を進行可能であるとともに、前記紫外光変換手段により波長を変換された紫外光を可視光に変換する波長変換材料が内部に設けられ、さらに、前記波長変換材料により変換された可視光が内部を進行可能であるとともに、内部を進行している可視光を外部に散乱可能に構成される第2導光体である
ことを特徴とする請求項7に記載の報知装置。
【請求項9】
前記波長変換材料は、
前記波長変換材料により変換された可視光によって前記第2導光体が全体にわたって一様に発光するように、前記紫外光変換手段から遠ざかるほど濃度が高くなるように分布する
ことを特徴とする請求項8に記載の報知装置。
【請求項10】
前記波長変換手段は、
前記レーザ照射手段により照射されるレーザ光の波長を変換することができる材料を、レーザ光が照射される点を移動することができる面を有する形状に加工したものである
ことを特徴とする請求項4または請求項7に記載の報知装置。

【図1】
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【図2】
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【図4】
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【図6】
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【図7】
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【図8】
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【図9】
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【図10】
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【図11】
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【図12】
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【図13】
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【図15】
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【図3】
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【図5】
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【図14】
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【公開番号】特開2009−248960(P2009−248960A)
【公開日】平成21年10月29日(2009.10.29)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2008−103461(P2008−103461)
【出願日】平成20年4月11日(2008.4.11)
【出願人】(000004260)株式会社デンソー (27,639)
【Fターム(参考)】