塗布液の塗布方法、塗布液の塗布装置、および光学フィルム
【課題】 幅規制部材の近傍における塗布液の回り込みを防いで塗布液を精度良く吐出させる技術を提供する。
【解決手段】 スロットダイ18の先端面のうちスロットよりも下流側の下流側ダイ先端面16Bは、上流側ダイ先端面16Aよりも支持体14に近接した位置に配置される。スロットには幅規制部材60が挿入され、スロットから支持体14に向かって吐出される塗布液の塗布幅が規制される。幅規制部材60の先端面62は、上流側ダイ先端面16Aと略連続するとともに下流側ダイ先端面16Bと略連続する。
【解決手段】 スロットダイ18の先端面のうちスロットよりも下流側の下流側ダイ先端面16Bは、上流側ダイ先端面16Aよりも支持体14に近接した位置に配置される。スロットには幅規制部材60が挿入され、スロットから支持体14に向かって吐出される塗布液の塗布幅が規制される。幅規制部材60の先端面62は、上流側ダイ先端面16Aと略連続するとともに下流側ダイ先端面16Bと略連続する。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、塗布液の塗布方法、塗布液の塗布装置、および光学フィルムに係り、特に塗布液を精度良く吐出させる技術に関する。
【背景技術】
【0002】
従来より、ウェブ(支持体)の表面に所望の厚さの塗布膜を塗布する塗布装置として、バーコータ方式、リバースロールコータ方式、グラビアロールコータ方式、エクストルージョンコータなどのスロットダイコータ方式、等が知られている。この中でもスロットダイコータ方式の塗布装置は、他の方式と比較して、高速で薄層の塗布が可能であることから多用されている。
【0003】
エクストルージョンコータに代表されるスロットダイコータ方式では、ウェブとスロットダイとの間に架設される塗布液のビードによってウェブ上に塗布液が塗布されるが、装置の製造誤差、外乱などの因子が塗布精度に大きな影響を及ぼすことがある。特に、薄層の塗布膜を生成する場合のように高精度な塗布液の塗布が要求される場合には、そのような因子の影響を無視することができない。このような事情を背景に、塗布不良を防いで均一な塗布膜を得るための手法がいくつか提案されている。
【0004】
例えば特許文献1では、上流リップおよび下流リップの両側面に設けられる塗布幅規制部材の面のうちウェブと相対する面が、リップ部の面のうちウェブと相対する面と面一に形成された塗布装置が開示されている。この塗布装置は、スロットギャップを高精度に再現し、組立作業性が良好で且つ塗布膜異常の発生を防止することを目的としている。
【0005】
また、特許文献2では、先端リップとウェブの隙間が調整されるとともに、幅規制部材の先端位置と先端リップの先端位置との相対位置関係が調整された塗布装置が開示されている。この塗布装置は、ビードの耳部を安定にし、良好な面状の塗布膜を形成することを目的としている。
【0006】
また、特許文献3では、塗布幅を規制するスペーサーの上縁部に凹状部または凸状部が形成された塗布装置が開示されている。この塗布装置は、塗れ広がり現象を抑制することを目的としている。
【特許文献1】特開平7−80380号公報
【特許文献2】特開2003−260402号公報
【特許文献3】特開2001−170542号公報
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0007】
上述のように、エクストルージョンコータなどが用いられる一般の塗布装置では、幅規制部材(スペーサー)によって塗布液の塗布幅を規制することで、所望の幅の塗布膜をウェブ上に形成することが多い。
【0008】
図13乃至図15は、オーバーバイト構造のスロットダイ18および幅規制板60の典型的な配置関係を示す図であり、スロットダイ18および幅規制板60の先端部分を側方から見た状態を示す。従来の幅規制板60の多くは、スロットダイ18のリップランド16と略平行に先端面62が形成されていた。例えば、オーバーバイト構造のスロットダイ18に用いられる幅規制板60の先端面62は、下流側リップランド16Bと略面一に形成されたり(図13参照)、上流側リップランド16Aと略面一に形成されたり(図14参照)、あるいは上流側リップランド16Aと下流側リップランド16Bとの中間に形成されていた(図15参照)。
【0009】
しかしながら、図13乃至図15に代表される従来の幅規制板60は、上流側リップランド16Aおよび/または下流側リップランド16Bとの間に段差部を形成してしまう。そのため、スロットダイ18から吐出される塗布液の一部がこの段差部に回り込んでしまい、ウェブ上に形成される塗布膜のエッジ部分(幅縁部分)が乱されてしまうことがある。
【0010】
これに対して、幅規制部材に凹凸状部を設けることによって塗布液の回り込みを防ぐ技術が提案されている(特許文献2参照)。しかしながら、スロットダイとリップランドとの間隔が非常に狭い場合には、幅規制部材に形成される凸状部がウェブ上の塗布膜を乱してしまうことがある。一方、幅規制部材に凹状部が形成される場合には、塗布液の回り込み量を減少させることはできるが、塗布液の回り込みを十分に防ぐことができない場合がある。そのため、塗布液の回り込みを防ぐ新たな手法の提案が望まれている。
【0011】
本発明は上述の事情に鑑みてなされたものであり、その目的は、塗布液の回り込みを防いで塗布液を精度良く吐出させることができる塗布液の塗布方法および塗布装置と、そのような塗布方法や塗布装置によって得られる塗布層を含む光学フィルムを提供することにある。
【課題を解決するための手段】
【0012】
前記目的を達成するために請求項1に記載の発明は、バックアップローラにより支持された状態で連続走行する支持体の表面に向かってスロットダイのスロットから塗布液を吐出させるとともに、前記スロットダイと前記支持体との間に架設される塗布液のビードの支持体上流側を減圧チャンバーによって減圧し、当該ビードによって前記支持体の表面に前記塗布液を塗布する塗布液の塗布方法に関する。この塗布液の塗布方法は、前記スロットダイの先端面のうち前記スロットよりも下流側の下流側ダイ先端面は、上流側の上流側ダイ先端面よりも前記支持体に近接した位置に配置され、前記スロットには、当該スロットから前記支持体に向かって吐出される塗布液の塗布幅を規制する幅規制部材が挿入され、前記幅規制部材の先端面は、上流側ダイ先端面と略連続するとともに下流側ダイ先端面と略連続する。
【0013】
本発明によれば、スロットダイの上流側ダイ先端面および下流側ダイ先端面と幅規制部材の先端面とが略連続するので、幅規制部材の先端面とスロットダイの先端面との間で形成される段差部を解消もしくは段差の大きさを低減させることができる。これにより、塗布液の回り込みを防いで、良好な品質の塗布膜を生成することができる。なお、ここでいう「略連続」とは、例えば、段差がほとんど無く、ほとんど途切れることなく繋がっている状態を指す。
【0014】
また、請求項2に記載のように、前記上流側ダイ先端面の前記幅規制部材側の端部と前記幅規制部材の先端面の前記上流側ダイ先端面側の端部との距離は0μm以上10μm以下であり、前記下流側ダイ先端面の前記幅規制部材側の端部と前記幅規制部材の先端面の前記下流側ダイ先端面側の端部との距離は0μm以上10μm以下であるとともに、前記上流側ダイ先端面のうち前記幅規制部材側の端部は、前記幅規制部材の先端面のうち前記上流側ダイ先端面側の端部に対して塗布液の吐出方向に関して同等もしくは突出してもよい。
【0015】
「上流側ダイ先端面の端部」および「下流側ダイ先端面の端部」と、「幅規制部材の先端面の端部」とをこのように配置することによって、前記幅規制部材の先端面を、上流側ダイ先端面と略連続させるとともに下流側ダイ先端面と略連続させることができる。なお、ここでいう、「塗布液の吐出方向に関して同等もしくは突出する」とは、本発明では、支持体に対して、同じ距離もしくは近接して配置されることを意味し、塗布液の吐出方向に関して引っ込んでいない状態を指す。したがって、上流側ダイ先端面のうち幅規制部材側の端部を基準(0)とし、支持体に近接する方向を「+」側とし、支持体から遠ざかる方向を「−」側とすると、上流側ダイ先端面のうち幅規制部材側の端部は、0μm〜+10μmで規定される範囲に配置される。同様に、下流側ダイ先端面のうち幅規制部材側の端部を基準(0)とし、支持体に近接する方向を「+」側とし、支持体から遠ざかる方向を「−」側とすると、下流側ダイ先端面のうち幅規制部材側の端部は、−10μm〜+10μmで規定される範囲に配置される。
【0016】
また、請求項3に記載のように、前記幅規制部材の先端面は、前記下流側ダイ先端面に垂直方向に対して、前記幅規制部材の先端面の前記下流側ダイ先端面側の端部よりも突出しないとともに、前記上流側ダイ先端面に垂直方向に対して、前記幅規制部材の先端面の前記上流側ダイ先端面側の端部よりも引っ込んでいなくてもよい。幅規制部材の先端面をこのように形成することによって、幅規制部材の先端面に塗布液が回り込むのを効果的に防ぐことができる。
【0017】
また、請求項4に記載のように、前記塗布液の表面張力は30mN/m以下であってもよい。塗布液の吐出が比較的乱れやすいこのような低粘度の塗布液を使用する場合に、塗布液の回り込みを防ぐ上述の塗布方法が特に有効であり、塗布液を安定的に吐出させることができる。
【0018】
また、請求項5に記載のように、前記幅規制部材に対する前記塗布液の接触角は30度以上であってもよい。幅規制部材が塗布液によって濡らされにくい場合、特に幅規制部材に対する塗布液の接触角が30度以上の場合に、塗布液の回り込みを防ぐ上述の塗布方法が有効であり、塗布液を安定的に吐出させることができる。
【0019】
また、請求項6に記載のように、前記幅規制部材のうち少なくとも前記塗布液が接する部分はポリマーによってコーティングされていてもよい。ポリマーによりコーティングされた幅規制部材を使用して、塗布液による幅規制部材の濡らしにくさを調整する場合に、塗布液の回り込みを防ぐ上述の塗布方法が有効であり、塗布液を安定的に吐出させることができる。
【0020】
また、前記目的を達成するために請求項7に記載の発明は、上述の塗布液の塗布方法によって得られた塗布層を少なくとも1層有することを特徴とする光学フィルムに関する。
【0021】
本発明によれば、塗布液の回り込みが低減された状態で得られる塗布層が用いられ、高品質の光学フィルムが提供される。
【0022】
また、前記目的を達成するために請求項8に記載の発明は、バックアップローラにより支持された状態で連続走行する支持体の表面に向かってスロットダイのスロットから塗布液を吐出させるとともに、前記スロットダイと前記支持体との間に架設される塗布液のビードの支持体上流側を減圧チャンバーによって減圧し、当該ビードによって前記支持体の表面に前記塗布液を塗布する塗布液の塗布装置に関する。この塗布液の塗布装置は、前記スロットダイの先端面のうち前記スロットよりも下流側の下流側ダイ先端面は、上流側の上流側ダイ先端面よりも前記支持体に近接した位置に配置され、前記スロットには、当該スロットから前記支持体に向かって吐出される塗布液の塗布幅を規制する幅規制部材が挿入され、前記幅規制部材の先端面は、上流側ダイ先端面と略連続するとともに下流側ダイ先端面と略連続する。
【発明の効果】
【0023】
本発明の塗布液の塗布方法および塗布装置によれば、スロットダイの上流側ダイ先端面および下流側ダイ先端面と幅規制部材の先端面とが略連続するので、幅規制部材の先端面とスロットダイの先端面との間で形成される段差部が縮小もしくは解消され、幅規制部材近傍における塗布液の回り込みを効果的に防ぐことができる。
【0024】
また、本発明の光学フィルムおよび反射防止フィルムは、塗布液の回り込みを防いで安定的に吐出された塗布液によって生成された塗布層を含み、良好な品質を有する。
【発明を実施するための最良の形態】
【0025】
以下、添付図面を参照して本発明の好ましい実施の形態について説明する。
【0026】
図1は、本発明の一実施の形態におけるスロットダイコータ式塗布システム10の構成図である。また、図2は、スロットダイ18の一部を切断した状態を示す斜視図である。なお、図中のバックアップローラ12およびウェブ14の近傍の矢印は、本実施の形態の「バックアップローラ12によるウェブ14の搬送方向」、すなわち「ウェブ14の走行方向」を示す。
【0027】
本実施の形態のエクトルージョン型のスロットダイコータ式塗布システム10では、バックアップローラ12により支持された状態で連続走行するウェブ(支持体)14の表面に向かってスロットダイ18のスロット24から塗布液が吐出され、スロットダイ18とウェブ14との間に塗布液のビード20が液架橋される。そして、ビード20のウェブ上流側が減圧チャンバー26によって減圧された状態で、連続走行するウェブ14の表面にビード20の塗布液が塗布され、ウェブ14上に塗布膜(塗布層)が生成される。
【0028】
なお、スロットダイ18によって塗布液が塗布される位置(以下、「塗布位置」とも称する)を基準にして、ウェブ14の走行方向に関し塗布位置よりも前段の部分を「ウェブ上流」と称し、後段の部分を「ウェブ下流」と称する。したがって、図1に示す横型のスロットダイ18では、ビード20の下側は「ウェブ上流側」となり、ビード20の上側は「ウェブ下流側」となる。また、ウェブの搬送方向と垂直を成すウェブの幅方向を「ウェブ幅方向」と称する。
【0029】
スロットダイ18は、本体50の内部に設けられたマニホールド22と、マニホールド22からスロットダイ18の先端部に延在するスロット24とを有する。また、スロットダイ18は、上流側ダイブロック18Aおよび下流側ダイブロック18Bの二つのブロックによって構成されており、マニホールド22およびスロット24が上流側ダイブロック18Aおよび下流側ダイブロック18Bの境界の一部となっている。このように、スロットダイ18を多ブロック構造とすることで、スロットダイ18の製造精度を高め、洗浄などの後処理を容易にする。なお、スロットダイ18の具体的な形状やサイズは、自重、使用時の環境や塗布液の温度、製作仕様限界、等に基づいて決定される。
【0030】
スロットダイ18の先端部分は先細り状に形成され、その先端はリップランド16と呼ばれる。スロット24のウェブ上流側(図1の下側)のリップランド16を上流側リップランド16Aと称し、ウェブ下流側(図1の上側)のリップランド16を下流側リップランド16Bと称する。
【0031】
一般的に上流側リップランド部16Aの塗布幅に垂直方向の長さは100μm〜1mmの範囲で用いられており、また、下流側リップランド部16Bの長さは30μm〜100μmの範囲で用いられる。また、上流側リップランド部16Aの長さは特に限定はされないが200μm〜1mmが好ましく用いられる。また、リップの先端の真直度は、幅方向に対して上流側および下流側ともに1m当たり10μm以下、好ましくは5μm以下に設定可能である。
【0032】
本実施の形態のスロットダイ18はオーバーバイト構造を有し、上流側リップランド16Aよりも下流側リップランド16Bのほうが、バックアップローラ12に巻き掛けられたウェブ14に近い位置に配置される。このようなオーバーバイト構造は、スロットダイ18のウェブ幅方向の全長に亘って略均一に形成されている。なお、塗布液の吐出方向(矢印A参照)に関する上流側リップランド16Aと下流側リップランド16Bとの距離Lを「オーバーバイト量」と称する。
【0033】
一般に、ウェブ(支持体)14と下流側リップランド16Bとの距離は20μm〜200μm程度が好ましく、オーバーバイト量は30μm〜120μmの範囲で用いられる。
【0034】
以上の形状を満たすため、リップ先端の強度や表面状態の向上対策として、少なくともこの箇所を含むスロットダイ18の材質をタングステンカーバイト(以下WCと称す)を主成分とする超硬材質とする。超硬材質を用いることにより、表面形状の均質性とあわせ、常に吐出される塗布液によるリップの磨耗への対策にもなる。塗布液として、研磨剤を含む磁性体液等を塗布する場合は特に有効である。超硬材質としては平均粒径5μmのWC炭化物結晶に、Coをはじめとする結合金属で結合してなる材質を使用するが、結合金属はこれに限定されず、Ti、Ta、Nbをはじめとする各種金属を使用することもできる。なお、WC結晶の平均粒径は5μm以下であれば任意の平均粒径のものを用いてよい。
【0035】
一般に、これらのオーバーバイト構造は、リップランド16とウェブ14の間隔が狭い低リップクリアランス構造を採用する場合、ビード20の下流側塗布液の圧損を小さくして、減圧チャンバー26における減圧値を小さくすることができる。そのため、これらの構造を採用する場合には、ビード20の変動が抑えられ、塗布液をウェブ14上に安定塗布することが可能となって、高精度な面状を有する塗布膜を提供することができる。
【0036】
マニホールド22は、スロットダイ18に供給された塗布液を塗布幅方向(ウェブ幅方向)へ拡流する液溜め部であり、ウェブ幅方向(長手方向)へ延びる。このマニホールド22は、略円形の断面形状を有し、ウェブ幅方向に沿って略同一の断面形状をもつ空洞部を構成する。マニホールド22のウェブ幅方向への有効長さは、ウェブ14に対する塗布幅と同等又は若干長く設定される。なお、マニホールド22は、「ポケット」とも称される。
【0037】
このマニホールド22には、塗布液を貯留する塗布液タンク44が塗布液供給管46を介して接続され、塗布液供給管46には、塗布液タンク44からマニホールド22に塗布液を送る塗布液ポンプ42が設けられている。
【0038】
図2に示すように、本体50のウェブ幅方向の両端部には閉鎖板54が設けられている。また、マニホールド22には、マニホールド22から塗布液を引き抜くための塗布液排出管52が接続されている。なお、塗布液供給管46および塗布液排出管52は、閉鎖板54を貫通して、マニホールド22と連通する。
【0039】
マニホールド22への塗布液の供給方式は、マニホールド22に塗布液を適切に供給することができればどのような手法であってもよい。例えば、マニホールド22の一端側から塗布液を供給する方式だけではなく、マニホールド22の中央部から塗布液を供給する方式、マニホールド22の両端部に塗布液が漏れ出ることを防止する栓を設けて、マニホールド22の一方端から新規な塗布液を供給するとともに、他方端から抜き取られた一部の塗布液を再び一方端に循環させる方式、等も用いられうる。また、マニホールド22の断面形状は、略円形に限定されるものではなく、例えば半円形、台形などの矩形、あるいはそれらに類似する形状であってもよい。
【0040】
スロット24は、マニホールド22からスロット先端に至る狭隘な塗布液の流路を構成し、スロットダイ18の先端部分における開口部24Aから塗布液を吐出させて、スロットダイ18とウェブ14との間にビード20を架設する。このスロット24は、通常、0. 01〜0. 5mm程度の開口幅をもち、ウェブ幅方向(長手方向)に関してウェブ14に対する塗布液の塗布幅よりも大きい長さを有する。なお、マニホールド22からウェブ14に向かって延びるスロット24の流路長は、塗布液の液組成、物性、供給流量、供給液圧、等の諸条件を考慮して設定可能であり、スロット24の開口部24Aから吐出される塗布液がウェブ幅方向に亘って略均一な流量および液圧をもつように、スロット24の流路長を設定することが好ましい。
【0041】
上述のような構成を有するスロットダイ18の先端部分の下方には、図1に示すように、ビード20のウェブ上流側を減圧するための減圧チャンバー26が設けられている。減圧チャンバー26は、内部に空間形成するバックプレート26A、サイドプレート26B、リアプレート26C、およびボトムプレート26Dを有し、減圧状態を保持する箱形形状となっている。
【0042】
バックプレート26Aは、減圧チャンバー26のうちウェブ搬送方向の最も上流側に位置し、ウェブ14の幅方向に沿って配置される。サイドプレート26Bは、バックプレート26Aと垂直を成すように配置されて減圧チャンバー26の両側壁を構成し、バックアップローラ12と近接する縁部分(図示省略)がバックアップローラ12とほぼ同じ曲率を有する。リアプレート26Cは、スロットダイ18の下方において、バックプレート26Aとほぼ平行に配置されている。ボトムプレート26Dは、減圧チャンバー26の底部分を構成し、バックプレート26A、サイドプレート26B、およびリアプレート26Cと縁部分において接合する。そして、「バックプレート26Aとウェブ14の間」および「サイドプレート26Bとウェブ14の間」の各々には、所定の大きさの隙間が存在する。なお、バックプレート26Aには吸引口40が形成されており、吸引口40にはエア配管28が接続されている。
【0043】
減圧チャンバー26は、吸引口40およびエア配管28を介してブロア30に接続され、エア配管28の途中には、バルブ32およびバッファ装置34が設けられている。ブロア30は、吸引口40およびエア配管28を介して減圧チャンバー26内を吸引し、減圧チャンバー26内を負圧にする。バルブ32は、その開度に応じて減圧チャンバー26内の減圧度を調整する。バッファ装置34は、減圧チャンバー26内の圧力変動を小さくするための緩衝部としての役割を果たす。
【0044】
減圧チャンバー26内には、減圧チャンバー26内の圧力を測定する圧力計36が設けられており、圧力計36の測定結果はコントローラ38に送られる。コントローラ38は、圧力計36の測定結果に基づいてバルブ32の開度を調節し、減圧チャンバー26内の圧力を所定の圧力に保つ。なお、本実施の形態において「減圧チャンバー26内の圧力」は「ビード20のウェブ上流側の圧力」に対応する。
【0045】
なお、ウェブ14や塗布液は、目的に応じた各種成分を含むものが使用されうる。一例として、ポリエチレンテレフタレート、ポリエチレン−2,6−ナフタレート、セルロースダイアセテート、セルローストリアセテート、セルロースアセテートプロピオネート、ポリ塩化ビニル、ポリ塩化ビニリデン、ポリカーボネート、ポリイミド、ポリアミド等の公知の各種プラスチックフィルム、紙、紙にポリエチレン、ポリプロピレン、エチレンブテン共重合体等の炭素数が2〜10のα−ポリオレフィン類を塗布またはラミネートした各種積層紙、アルミニウム、銅、スズ等の金属箔等、帯状基材の表面に予備的な加工層を形成させたもの、その他の可撓性部材、あるいはこれらを積層した各種複合材料を、ウェブ14の材質として使用することができる。
【0046】
また、塗布液の溶媒として、水、各種のハロゲン化炭化水素、アルコール、エーテル、エステル、ケトンなどを単独あるいは複数混合したものを使用することができる。
【0047】
また、塗布液として、光学補償シート塗布液、反射防止フィルム塗布液、防眩性付与液磁性塗布液、写真感光性塗布液、磁性塗布液、視野角拡大塗布液、表面保護液、帯電防止液、滑性用塗布液、カラーフィルタ用顔料液、あるいはその他の光学フィルム用塗布液を使用することができる。
【0048】
なお、下述する[実施例]で示唆されているように、スロットダイ18からウェブ14に向かって吐出させる塗布液として、「表面張力が30mN/m以下の塗布液」や「幅規制板60に対する接触角が30度以上の塗布液」を使用することが好ましい。
【0049】
図2に示すように、スロット24のウェブ幅方向の両端部には、幅規制板60が、スロット24の壁部を構成する上流側ダイブロック18Aおよび下流側ダイブロック18Bに接触した状態で挿入されている。幅規制板60は、詳細については後述するが(図3参照)、スロットダイ18のスロット24の開口部24Aから吐出される塗布液の塗布幅を規制する部材である。
【0050】
幅規制板60は、下述する[実施例]で示唆されているように、幅規制板60の近傍の塗布液の塗布状態を安定化させる観点から、特定の材料や表面加工を採用して、塗布液の濡れ性が調整されることが好ましい。例えば、テフロンやニューライトなどの材料によって幅規制板60を形成したり、フッ素樹脂などのポリマーによってコーティングされた金属板を幅規制板60として使用することで、幅規制板60の塗布液に対する接触角が30度以上となるように調整されることが好ましい。
【0051】
次に、幅規制板60について説明する。本件発明者は、鋭意研究した結果、下述する[実施例]で示唆されているように、以下の知見を得た。
【0052】
すなわち、幅規制板60の先端面(以下、「幅規制部材先端面」とも称する)62を、上流側リップランド16Aと略連続するように設定するとともに下流側リップランド16Bと略連続するように設定することによって、幅規制板60の周辺における塗布液の回り込みを効果的に防ぐことができる。
【0053】
特に、スロットダイ18および幅規制板60を以下の条件に設定した場合に、幅規制板60の周辺における塗布液の回り込みを効果的に防ぐことができることを本件発明者は突き止めた。すなわち、上流側リップランド16Aのうち幅規制板60側の端部である幅規制側上流リップエッジが、塗布液の吐出方向(矢印A参照)に関して、幅規制部材先端面62のうち上流側リップランド16A側の端部である上流リップ側幅規制エッジと同等もしくは突出するように調整されることが好ましい。そして、上流リップ側幅規制エッジ64と幅規制側上流リップエッジとの距離を0μm以上10μm以下の範囲に設定し、下流側リップランド16Bのうち幅規制板60側の端部である幅規制側下流リップエッジと幅規制部材先端面62のうち下流側リップランド16B側の端部である下流リップ側幅規制エッジとの距離を0μm以上10μm以下の範囲に設定することが好ましい。
【0054】
更に、幅規制部材先端面62が、塗布液の吐出方向(矢印A参照)に関して、下流側リップランド16Bよりも突出しないようにするとともに、上流側リップランド16Aよりも引っ込まないように設定することも好ましい。以下に、本件発明者が突き止めた好適な実施の形態の一例について説明する。
【0055】
図3は、本実施の形態のスロットダイ18および幅規制板60の配置関係の一例を示す図であり、スロットダイ18および幅規制板60の先端部分を側方から見た状態を示す。図3に示す例では、上流側リップランド16Aの幅規制側上流リップエッジ17Aが、塗布液の吐出方向(図3の矢印A参照)に関して、幅規制部材先端面62の上流リップ側幅規制エッジ64と同等の位置となるように設けられている。同様に、下流側リップランド16Bの幅規制側下流リップエッジ17Bが、塗布液の吐出方向(矢印A参照)に関して、幅規制部材先端面62の下流リップ側幅規制エッジ66と同等の位置となるように設けられている。
【0056】
したがって、幅規制側上流リップエッジ17Aと上流リップ側幅規制エッジ64との距離が0μmとなるように、上流側リップランド16Aおよび幅規制部材先端面62が調整されている。また、幅規制側下流リップエッジ17Bと下流リップ側幅規制エッジ66との距離が0μmとなるように、下流側リップランド16Bおよび幅規制部材先端面62が調整されている。そして、幅規制部材先端面62は、上流リップ側幅規制エッジ64と下流リップ側幅規制エッジ66とを含む平面構造を有し、塗布液の吐出方向に関して(矢印A参照)、下流側リップランド16Bよりも突出せず(図3の点線部B参照)且つ上流側リップランド16Aよりも引っ込んでいない(図3の点線部C参照)形状を有する。
【0057】
このように、幅規制部材先端面62が上流側リップランド16Aおよび下流側リップランド16Bと略連続するように設定されることで、幅規制板60の先端部分における塗布液の回り込みを非常に効果的に防ぐことができる。これにより、幅規制板60が設けられるスロットダイ18のウェブ幅方向の端部に塗布液が滞留してしまうことを回避することができ、幅規制板60の近傍におけるビード20(塗布液)のエッジ部を安定化させることができる。したがって、幅規制板60の近傍から吐出される塗布液もウェブ14に対し安定的に塗布され、良好な品質の塗布膜(塗布層)がウェブ14上に生成される。そして、そのような塗布膜を用いて高度な製造精度が要求される光学フィルム等を製造することが可能となる。
【0058】
上述の事項は本発明の一態様を例示したものであり、当業者の知識に基づいて各種の設計変更等の変形が加えられたり、公知の要素を応用したりすることも可能であり、そのような各種態様も本発明の範囲に含まれうる。
【0059】
例えば、幅規制板60は図3に図示されているものには限定されない。「上流側リップランド16Aの幅規制側上流リップエッジ17A」と「下流側リップランド16Bの幅規制側下流リップエッジ17B」とを実質的に結ぶ平面または曲面の幅規制部材先端面62を有する幅規制板60を好適に用いることが可能である。例えば、図4に示されるように、幅規制板60の上流リップ側幅規制エッジ64を上流側リップランド16Aの幅規制側上流リップエッジ17Aよりも突出させて、以下の式(1)を満たす範囲で、上流リップ側幅規制エッジ64と幅規制側上流リップエッジ17Aとの距離DAを適宜調整することもできる。
【0060】
0μm≦DA≦10μm 式(1)
また、図5に示されるように、幅規制板60の下流リップ側幅規制エッジ66を下流側リップランド16Bの幅規制側下流リップエッジ17Bよりも引っ込ませて、以下の式(2)を満たす範囲で、下流リップ側幅規制エッジ66と幅規制側下流リップエッジ17Bとの距離DB1を適宜調整することもできる。
【0061】
0μm≦DB1≦10μm 式(2)
また、図6に示されるように、幅規制板60の下流リップ側幅規制エッジ66を下流側リップランド16Bの幅規制側下流リップエッジ17Bよりも突出させて、以下の式(3)を満たす範囲で、下流リップ側幅規制エッジ66と幅規制側下流リップエッジ17Bとの距離DB2を適宜調整することもできる。
【0062】
0μm≦DB2≦10μm 式(3)
また、図7に示されるように、幅規制板60の下流リップ側幅規制エッジ66を下流側リップランド16Bの幅規制側下流リップエッジ17Bよりも引っ込ませるとともに、幅規制板60の上流リップ側幅規制エッジ64を上流側リップランド16Aの幅規制側上流リップエッジ17Aよりも突出させてもよい。その場合、上記の式(1)および式(2)を満たすように、上流リップ側幅規制エッジ64と幅規制側上流リップエッジ17Aとの距離DAおよび下流リップ側幅規制エッジ66と幅規制側下流リップエッジ17Bとの距離DB1を適宜調整することが好ましい。
【0063】
また、図8に示されるように、幅規制板60の下流リップ側幅規制エッジ66を下流側リップランド16Bの幅規制側下流リップエッジ17Bよりも突出させるとともに、幅規制板60の上流リップ側幅規制エッジ64を上流側リップランド16Aの幅規制側上流リップエッジ17Aよりも突出させてもよい。その場合、上記の式(1)および式(3)を満たすように、上流リップ側幅規制エッジ64と幅規制側上流リップエッジ17Aとの距離DAおよび下流リップ側幅規制エッジ66と幅規制側下流リップエッジ17Bとの距離DB2を適宜調整することが好ましい。
【0064】
また、図9乃至図11に示されるように、幅規制板60の幅規制部材先端面62は、下流側リップランド16Bに垂直方向に対して、幅規制部材先端面62の下流側リップランド16B側の端部である下流リップ側幅規制エッジ66よりも突出しないとともに(点線部B参照)、上流側リップランド16Aに垂直方向に対して、幅規制部材先端面62の上流側リップランド16A側の端部である上流リップ側幅規制エッジ64よりも引っ込んでいない(点線部C参照)範囲で、様々な形状を採ることが可能である。例えば、「幅規制側上流リップエッジ17Aにおける上流側リップランド16Aの曲率」と「上流リップ側幅規制エッジ64における幅規制部材先端面62の曲率」とがほぼ等しい円弧状(図9参照)、「幅規制側下流リップエッジ17Bにおける下流側リップランド16Bの曲率」と「下流リップ側幅規制エッジ66における幅規制部材先端面62の曲率」とがほぼ等しい円弧状(図10参照)、あるいは図9および図10を組み合わせたような形状(図11参照)に、幅規制部材先端面62を設定することが可能である。
【0065】
また、スロットダイコータ式塗布システム10におけるバックアップローラ12、スロットダイ18、および減圧チャンバー26は、ウェブ14上に塗布液を適切に塗布することができれば、どのような配置関係であってもよい。例えば、ウェブ14に対するスロットダイ18の塗布液の吐出角度、マニホールド22の断面形状、バックアップローラ12に対するウェブ14の巻き掛け状態、バックアップローラ12に対するウェブ14の巻き掛け部とスロットダイ18や減圧チャンバー26との相対位置関係、オーバーバイト量、等は、目的に応じて適宜調整可能である。
【実施例】
【0066】
以下に上述のスロットダイコータ式塗布システム10を用いた実施例について記述するが、本発明は以下の実施例に限定されるものではない。
【0067】
(共通の塗布条件)
以下の各実施例(但し、実施例3を除く)で用いられた塗布液は、以下のようにして調製された。すなわち、「屈折率が1.46の熱架橋性含フッ素ポリマー(JN−7221、JSR(株)製)200g」に対し、「メチルイソプチルケトン200g」を添加して、攪拌する。そして、その攪拌された溶液を孔径1μmのポリプロピレン製フィルタ(PPE−01)によって濾過することで調製される低屈折率層用溶液を塗布液として使用した。
【0068】
また、各実施例における共通の塗布条件を以下の表1に示す。各実施例は、特に断りが無い限り、表1に示されている塗布条件に従って行われた。
【0069】
【表1】
表1に示されているように共通の塗布条件は、ウェブ14の搬送速度を示す塗布速度が60m/min、ウェブ14上の塗布膜の膜厚を示す塗布膜厚が5ml/m2、ウェブ14上の塗布膜の幅を示す塗布幅が600mm、下流側リップランド部16Bとウェブ14との間隔を示す下流側リップ間隙が50μm、オーバーバイト量が50μm、ウェブ14の走行方向に関する上流側リップランド16Aの長さを示す上流側リップ長が200μm、ウェブ14の走行方向に関する下流側リップランド16Bの長さを示す下流側リップ長が200μm、ウェブ14の走行方向に関するスロット幅が200μm、幅規制板60の材質がSUS630、ウェブ14の走行方向に関する幅規制板60の幅が195μm、塗布液の表面張力が20mN/m、減圧チャンバー26による減圧度が1.0kPa、上下リップ先端面の真直度が塗布幅1m当たり5μm、となっている。
【0070】
また、幅規制板60は、マイクロスコープ(VHX−200)により、上流側リップランド面方向の上流側および下流側、下流側リップランド面方向下流側、そして、ダイ側面から観察しリップランド面からの突出量を観察、測定することで位置調整を行っている。なお、マイクロスコープによる測定は±0.1μmでの距離測定が可能である。
【0071】
(実施例1)
本例では、スロットダイ18の先端部に対する幅規制板60の突出状態(引っ込み状態)を変えて、スロットダイ18から塗布液を吐出させた。図12は、実施例1で使用したスロットダイ18および幅規制板60と、塗布液の塗布結果とを示す。図12において、(a)では、下流側リップランド16Bよりも25μmだけ突出した位置に幅規制部材先端面62を配置し、(b)では、上流側リップランド16Aおよび下流側リップランド16Bの中間であって上流側リップランド16Aよりも25μmだけ突出した位置に幅規制部材先端面62を配置し、(c)では、幅規制部材先端面62の端部(エッジ)を上流側リップランド16Aおよび下流側リップランド16Bの端部(エッジ)をほぼ一致させて、上流側リップランド16Aおよび下流側リップランド16Bと略連続するように幅規制部材先端面62を配置し(図3参照)、(d)では、上流側リップランド16Aよりも25μmだけ引っ込んだ位置に幅規制部材先端面62を配置した。
【0072】
また、図12において、「○」は、ビード20が成立し、ウェブ14上の塗布膜の幅方向端部(以下、「塗布膜エッジ」とも称する)のウェブ幅方向への幅振れが±1mm未満であることを示し、「△」は、ビード20が成立し、塗布膜エッジのウェブ幅方向への幅振れが±3mm未満であることを示し、「×」は、ビード20が成立しない、或いは塗布膜エッジのウェブ幅方向への幅振れが±3mm以上であることを示す。
【0073】
図12に示されているように、塗布膜エッジの幅振れを抑えて安定した塗布液の塗布を実施する観点からは、(c)の「上流側リップランド16Aおよび下流側リップランド16Bと略連続するように幅規制部材先端面62を配置すること」が好ましい。
【0074】
(実施例2)
本例では、スロットダイ18の先端部に対する幅規制板60の突出量(引っ込み量)を変えて、スロットダイ18から塗布液を吐出させた。以下の表2は、上流側リップランド16Aおよび下流側リップランド16Bに対する幅規制板60(幅規制部材先端面62)の突出量(引っ込み量)と、塗布液の塗布結果とを示す。
【0075】
【表2】
表2において、「下流側」は、下流側リップランド16Bに対する幅規制板60(幅規制部材先端面62)の突出量を示し、「上流側」は、上流側リップランド16Aに対する幅規制板60(幅規制部材先端面62)の突出量を示す。「上流側」および「下流側」の欄における「0」は、上流側リップランド16Aあるいは下流側リップランド16Bの位置を示し、「+」は、幅規制板60(幅規制部材先端面62)が塗布液の吐出方向へ上流側リップランド16Aあるいは下流側リップランド16Bよりも突出していることを示し、「−」は、幅規制板60(幅規制部材先端面62)が、塗布液の吐出方向とは逆方向へ、上流側リップランド16Aあるいは下流側リップランド16Bよりも引っ込んでいることを示す。また、「◎」は、ビード20が成立し、塗布膜エッジのウェブ幅方向への幅振れが±0.5mm未満であることを示し、「○」、「△」、および「×」は、上述した図12の場合と同様の内容を示す。
【0076】
表2に示されているように、塗布膜エッジの幅振れを抑えて安定した塗布液の塗布を実施する観点からは、下流側リップランド16Bに対する幅規制板60(幅規制部材先端面62)の突出量(引っ込み量)を、「−10μm〜+10μm」の範囲に設定することが好ましい。同様に、上流側リップランド16Aに対する幅規制板60(幅規制部材先端面62)の突出量(引っ込み量)を、「0μm〜+10μm」の範囲に設定することが好ましい。なお、上流側リップランド16Aおよび下流側リップランド16Bに対する幅規制板60(幅規制部材先端面62)の突出量(引っ込み量)が、上記の好ましい範囲から逸脱すると、幅規制板60の近傍のビード20が不安定になって、塗布液の塗布状態が不安定になることが確認された。
【0077】
(実施例3)
本例では、塗布液の表面張力を変えて、スロットダイ18から塗布液を吐出させた。なお、有機溶剤系の塗布液では表面張力を変化させることが難しいので、本例では、水、エタノール、および染料の混合量を調節して表面張力を調整した溶液を塗布液として使用した。なお、本例で使用された染料は、以下の化学式で示される4,4’−(1,3−ペンタジエン−1−イル−5−イリデン)−ビス[3−カルボエトキシ−1−(p−スルホ−フェニル)−5−ピラゾロン]2カリウム塩(Di-potassiumu Salt of 4,4'-(1,3-pentadien-1-yl-5-ylidene)-bis[3-carboethoxy-1-(p-sulfo-phenyl)-5-pyrazolone])が用いられた。
【0078】
【化1】
以下の表3は、塗布液の表面張力と、塗布液の塗布結果とを示す。
【0079】
【表3】
表3において、「(b)」および「(c)」は、図12の「(b)」および「(c)」に準じており(実施例1参照)、塗布液の表面張力以外の塗布条件は図12の「(b)」および「(c)」と同様である。また、「◎」、「○」、「△」、および「×」は、上述の図12および表2におけるのと同様の内容を示す。
【0080】
表3に示されているように、塗布膜エッジの幅振れを抑えて安定した塗布液の塗布を実施する観点からは、特に表面張力が30mN/m以下の塗布液を使用する場合に、本発明に係るスロットダイ18および幅規制板60(表3の(c)参照)が有効であることが確認された。これは、表面張力が30mN/mよりも大きい塗布液のビード20は本来的に安定度が高く、表面張力が30mN/m以下の塗布液を使用する場合に幅規制板60の先端形状が塗布液の塗布に大きな影響を与えるからであると考えられる。
【0081】
(実施例4)
本例では、幅規制板60の塗布液に対する濡れ性を変えて、本発明に係る図12の(c)に示すスロットダイ18から塗布液を吐出させた。具体的には、幅規制板60の塗布液に対する濡れ性の指標として接触角を用い、幅規制板60の表面の材質を「SUS」「テフロン」および「ニューライト」に変えることで、幅規制板60の塗布液に対する接触角を調整した。なお、「SUS」はステンレス鋼(Stainless Used Steel)を意味し、「テフロン」はテトラフルオロエチレンを意味し、「ニューライト」はチグラー法により製造される平均分子量550万(光散乱法測定)以上の超高分子量ポリエチレンを意味する。以下の表4は、幅規制板60の材質と、接触角と、塗布液の塗布結果とを示す。
【0082】
【表4】
表4において、「◎」、「○」、「△」、および「×」は、上述の図12および表2の場合と同様の内容を示す。
【0083】
表4に示されているように、塗布膜エッジの幅振れを抑えて安定した塗布液の塗布を実施する観点からは、接触角を上げて濡れにくい性質にした場合、特に幅規制板60に対する塗布液の接触角を30度以上に調整した場合に(表4の「テフロン」「ニューライト」参照)、本発明に係るスロットダイ18および幅規制板60(図12の(c)参照)が有効であることが確認された。
【0084】
なお、幅規制板60の塗布液に対する濡れ性は、塗布液と接触する部分の幅規制板60の材質によって決定されるので、例えば金属板によって構成される幅規制板60のうち少なくとも塗布液が接触する部分をフッ素樹脂などのポリマーによってコーティングして、接触角を30度以上に調整した幅規制板60を使用することも可能である。また、塗布液の塗布状態は、特にスロットダイ18の先端部分の開口部24Aの近傍における「幅規制板60の塗布液に対する濡れ性」が重要となる。したがって、幅規制板60のうちスロット24の開口部24Aの近傍箇所がフッ素樹脂などによってコーティングされていれば、塗布液の塗布の安定性を向上させることができると考えられる。
【図面の簡単な説明】
【0085】
【図1】本発明の一実施の形態におけるスロットダイコータの構成図である。
【図2】スロットダイの一部を切断した状態を示す斜視図である。
【図3】スロットダイおよび幅規制板の配置関係の一例を示す図であり、スロットダイおよび幅規制板の先端部分を側方から見た状態を示す図である。
【図4】幅規制板の変形例を示す図である。
【図5】幅規制板の変形例を示す図である。
【図6】幅規制板の変形例を示す図である。
【図7】幅規制板の変形例を示す図である。
【図8】幅規制板の変形例を示す図である。
【図9】幅規制板の変形例を示す図である。
【図10】幅規制板の変形例を示す図である。
【図11】幅規制板の変形例を示す図である。
【図12】実施例1で使用したスロットダイおよび幅規制板と、塗布液の塗布結果とを示す図である。
【図13】オーバーバイト構造のスロットダイおよび幅規制板の典型的な配置関係の一例を示す図であり、スロットダイおよび幅規制板の先端部分を側方から見た状態を示す図である。
【図14】オーバーバイト構造のスロットダイおよび幅規制板の典型的な配置関係の他の例を示す図である。
【図15】オーバーバイト構造のスロットダイおよび幅規制板の典型的な配置関係の他の例を示す図である。
【符号の説明】
【0086】
10・・・スロットダイコータ、12・・・バックアップローラ、14・・・ウェブ、16・・・リップランド、16A・・・上流側リップランド、16B・・・下流側リップランド、17A・・・幅規制側上流リップエッジ、17B・・・幅規制側下流リップエッジ、18・・・スロットダイ、18A・・・上流側ダイブロック、18B・・・下流側ダイブロック、20・・・ビード、22・・・マニホールド、24・・・スロット、24A・・・開口部、26・・・減圧チャンバー、26A・・・バックプレート、26B・・・サイドプレート、26C・・・リアプレート、26D・・・ボトムプレート、28・・・エア配管、30・・・ブロア、32・・・バルブ、34・・・バッファ装置、36・・・圧力計、38・・・コントローラ、40・・・吸引口、42・・・塗布液ポンプ、44・・・塗布液タンク、46・・・塗布液供給管、50・・・本体、52・・・塗布液排出管、54・・・閉鎖板、60・・・幅規制板、62・・・幅規制部材先端面、64・・・上流リップ側幅規制エッジ、66・・・下流リップ側幅規制エッジ
【技術分野】
【0001】
本発明は、塗布液の塗布方法、塗布液の塗布装置、および光学フィルムに係り、特に塗布液を精度良く吐出させる技術に関する。
【背景技術】
【0002】
従来より、ウェブ(支持体)の表面に所望の厚さの塗布膜を塗布する塗布装置として、バーコータ方式、リバースロールコータ方式、グラビアロールコータ方式、エクストルージョンコータなどのスロットダイコータ方式、等が知られている。この中でもスロットダイコータ方式の塗布装置は、他の方式と比較して、高速で薄層の塗布が可能であることから多用されている。
【0003】
エクストルージョンコータに代表されるスロットダイコータ方式では、ウェブとスロットダイとの間に架設される塗布液のビードによってウェブ上に塗布液が塗布されるが、装置の製造誤差、外乱などの因子が塗布精度に大きな影響を及ぼすことがある。特に、薄層の塗布膜を生成する場合のように高精度な塗布液の塗布が要求される場合には、そのような因子の影響を無視することができない。このような事情を背景に、塗布不良を防いで均一な塗布膜を得るための手法がいくつか提案されている。
【0004】
例えば特許文献1では、上流リップおよび下流リップの両側面に設けられる塗布幅規制部材の面のうちウェブと相対する面が、リップ部の面のうちウェブと相対する面と面一に形成された塗布装置が開示されている。この塗布装置は、スロットギャップを高精度に再現し、組立作業性が良好で且つ塗布膜異常の発生を防止することを目的としている。
【0005】
また、特許文献2では、先端リップとウェブの隙間が調整されるとともに、幅規制部材の先端位置と先端リップの先端位置との相対位置関係が調整された塗布装置が開示されている。この塗布装置は、ビードの耳部を安定にし、良好な面状の塗布膜を形成することを目的としている。
【0006】
また、特許文献3では、塗布幅を規制するスペーサーの上縁部に凹状部または凸状部が形成された塗布装置が開示されている。この塗布装置は、塗れ広がり現象を抑制することを目的としている。
【特許文献1】特開平7−80380号公報
【特許文献2】特開2003−260402号公報
【特許文献3】特開2001−170542号公報
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0007】
上述のように、エクストルージョンコータなどが用いられる一般の塗布装置では、幅規制部材(スペーサー)によって塗布液の塗布幅を規制することで、所望の幅の塗布膜をウェブ上に形成することが多い。
【0008】
図13乃至図15は、オーバーバイト構造のスロットダイ18および幅規制板60の典型的な配置関係を示す図であり、スロットダイ18および幅規制板60の先端部分を側方から見た状態を示す。従来の幅規制板60の多くは、スロットダイ18のリップランド16と略平行に先端面62が形成されていた。例えば、オーバーバイト構造のスロットダイ18に用いられる幅規制板60の先端面62は、下流側リップランド16Bと略面一に形成されたり(図13参照)、上流側リップランド16Aと略面一に形成されたり(図14参照)、あるいは上流側リップランド16Aと下流側リップランド16Bとの中間に形成されていた(図15参照)。
【0009】
しかしながら、図13乃至図15に代表される従来の幅規制板60は、上流側リップランド16Aおよび/または下流側リップランド16Bとの間に段差部を形成してしまう。そのため、スロットダイ18から吐出される塗布液の一部がこの段差部に回り込んでしまい、ウェブ上に形成される塗布膜のエッジ部分(幅縁部分)が乱されてしまうことがある。
【0010】
これに対して、幅規制部材に凹凸状部を設けることによって塗布液の回り込みを防ぐ技術が提案されている(特許文献2参照)。しかしながら、スロットダイとリップランドとの間隔が非常に狭い場合には、幅規制部材に形成される凸状部がウェブ上の塗布膜を乱してしまうことがある。一方、幅規制部材に凹状部が形成される場合には、塗布液の回り込み量を減少させることはできるが、塗布液の回り込みを十分に防ぐことができない場合がある。そのため、塗布液の回り込みを防ぐ新たな手法の提案が望まれている。
【0011】
本発明は上述の事情に鑑みてなされたものであり、その目的は、塗布液の回り込みを防いで塗布液を精度良く吐出させることができる塗布液の塗布方法および塗布装置と、そのような塗布方法や塗布装置によって得られる塗布層を含む光学フィルムを提供することにある。
【課題を解決するための手段】
【0012】
前記目的を達成するために請求項1に記載の発明は、バックアップローラにより支持された状態で連続走行する支持体の表面に向かってスロットダイのスロットから塗布液を吐出させるとともに、前記スロットダイと前記支持体との間に架設される塗布液のビードの支持体上流側を減圧チャンバーによって減圧し、当該ビードによって前記支持体の表面に前記塗布液を塗布する塗布液の塗布方法に関する。この塗布液の塗布方法は、前記スロットダイの先端面のうち前記スロットよりも下流側の下流側ダイ先端面は、上流側の上流側ダイ先端面よりも前記支持体に近接した位置に配置され、前記スロットには、当該スロットから前記支持体に向かって吐出される塗布液の塗布幅を規制する幅規制部材が挿入され、前記幅規制部材の先端面は、上流側ダイ先端面と略連続するとともに下流側ダイ先端面と略連続する。
【0013】
本発明によれば、スロットダイの上流側ダイ先端面および下流側ダイ先端面と幅規制部材の先端面とが略連続するので、幅規制部材の先端面とスロットダイの先端面との間で形成される段差部を解消もしくは段差の大きさを低減させることができる。これにより、塗布液の回り込みを防いで、良好な品質の塗布膜を生成することができる。なお、ここでいう「略連続」とは、例えば、段差がほとんど無く、ほとんど途切れることなく繋がっている状態を指す。
【0014】
また、請求項2に記載のように、前記上流側ダイ先端面の前記幅規制部材側の端部と前記幅規制部材の先端面の前記上流側ダイ先端面側の端部との距離は0μm以上10μm以下であり、前記下流側ダイ先端面の前記幅規制部材側の端部と前記幅規制部材の先端面の前記下流側ダイ先端面側の端部との距離は0μm以上10μm以下であるとともに、前記上流側ダイ先端面のうち前記幅規制部材側の端部は、前記幅規制部材の先端面のうち前記上流側ダイ先端面側の端部に対して塗布液の吐出方向に関して同等もしくは突出してもよい。
【0015】
「上流側ダイ先端面の端部」および「下流側ダイ先端面の端部」と、「幅規制部材の先端面の端部」とをこのように配置することによって、前記幅規制部材の先端面を、上流側ダイ先端面と略連続させるとともに下流側ダイ先端面と略連続させることができる。なお、ここでいう、「塗布液の吐出方向に関して同等もしくは突出する」とは、本発明では、支持体に対して、同じ距離もしくは近接して配置されることを意味し、塗布液の吐出方向に関して引っ込んでいない状態を指す。したがって、上流側ダイ先端面のうち幅規制部材側の端部を基準(0)とし、支持体に近接する方向を「+」側とし、支持体から遠ざかる方向を「−」側とすると、上流側ダイ先端面のうち幅規制部材側の端部は、0μm〜+10μmで規定される範囲に配置される。同様に、下流側ダイ先端面のうち幅規制部材側の端部を基準(0)とし、支持体に近接する方向を「+」側とし、支持体から遠ざかる方向を「−」側とすると、下流側ダイ先端面のうち幅規制部材側の端部は、−10μm〜+10μmで規定される範囲に配置される。
【0016】
また、請求項3に記載のように、前記幅規制部材の先端面は、前記下流側ダイ先端面に垂直方向に対して、前記幅規制部材の先端面の前記下流側ダイ先端面側の端部よりも突出しないとともに、前記上流側ダイ先端面に垂直方向に対して、前記幅規制部材の先端面の前記上流側ダイ先端面側の端部よりも引っ込んでいなくてもよい。幅規制部材の先端面をこのように形成することによって、幅規制部材の先端面に塗布液が回り込むのを効果的に防ぐことができる。
【0017】
また、請求項4に記載のように、前記塗布液の表面張力は30mN/m以下であってもよい。塗布液の吐出が比較的乱れやすいこのような低粘度の塗布液を使用する場合に、塗布液の回り込みを防ぐ上述の塗布方法が特に有効であり、塗布液を安定的に吐出させることができる。
【0018】
また、請求項5に記載のように、前記幅規制部材に対する前記塗布液の接触角は30度以上であってもよい。幅規制部材が塗布液によって濡らされにくい場合、特に幅規制部材に対する塗布液の接触角が30度以上の場合に、塗布液の回り込みを防ぐ上述の塗布方法が有効であり、塗布液を安定的に吐出させることができる。
【0019】
また、請求項6に記載のように、前記幅規制部材のうち少なくとも前記塗布液が接する部分はポリマーによってコーティングされていてもよい。ポリマーによりコーティングされた幅規制部材を使用して、塗布液による幅規制部材の濡らしにくさを調整する場合に、塗布液の回り込みを防ぐ上述の塗布方法が有効であり、塗布液を安定的に吐出させることができる。
【0020】
また、前記目的を達成するために請求項7に記載の発明は、上述の塗布液の塗布方法によって得られた塗布層を少なくとも1層有することを特徴とする光学フィルムに関する。
【0021】
本発明によれば、塗布液の回り込みが低減された状態で得られる塗布層が用いられ、高品質の光学フィルムが提供される。
【0022】
また、前記目的を達成するために請求項8に記載の発明は、バックアップローラにより支持された状態で連続走行する支持体の表面に向かってスロットダイのスロットから塗布液を吐出させるとともに、前記スロットダイと前記支持体との間に架設される塗布液のビードの支持体上流側を減圧チャンバーによって減圧し、当該ビードによって前記支持体の表面に前記塗布液を塗布する塗布液の塗布装置に関する。この塗布液の塗布装置は、前記スロットダイの先端面のうち前記スロットよりも下流側の下流側ダイ先端面は、上流側の上流側ダイ先端面よりも前記支持体に近接した位置に配置され、前記スロットには、当該スロットから前記支持体に向かって吐出される塗布液の塗布幅を規制する幅規制部材が挿入され、前記幅規制部材の先端面は、上流側ダイ先端面と略連続するとともに下流側ダイ先端面と略連続する。
【発明の効果】
【0023】
本発明の塗布液の塗布方法および塗布装置によれば、スロットダイの上流側ダイ先端面および下流側ダイ先端面と幅規制部材の先端面とが略連続するので、幅規制部材の先端面とスロットダイの先端面との間で形成される段差部が縮小もしくは解消され、幅規制部材近傍における塗布液の回り込みを効果的に防ぐことができる。
【0024】
また、本発明の光学フィルムおよび反射防止フィルムは、塗布液の回り込みを防いで安定的に吐出された塗布液によって生成された塗布層を含み、良好な品質を有する。
【発明を実施するための最良の形態】
【0025】
以下、添付図面を参照して本発明の好ましい実施の形態について説明する。
【0026】
図1は、本発明の一実施の形態におけるスロットダイコータ式塗布システム10の構成図である。また、図2は、スロットダイ18の一部を切断した状態を示す斜視図である。なお、図中のバックアップローラ12およびウェブ14の近傍の矢印は、本実施の形態の「バックアップローラ12によるウェブ14の搬送方向」、すなわち「ウェブ14の走行方向」を示す。
【0027】
本実施の形態のエクトルージョン型のスロットダイコータ式塗布システム10では、バックアップローラ12により支持された状態で連続走行するウェブ(支持体)14の表面に向かってスロットダイ18のスロット24から塗布液が吐出され、スロットダイ18とウェブ14との間に塗布液のビード20が液架橋される。そして、ビード20のウェブ上流側が減圧チャンバー26によって減圧された状態で、連続走行するウェブ14の表面にビード20の塗布液が塗布され、ウェブ14上に塗布膜(塗布層)が生成される。
【0028】
なお、スロットダイ18によって塗布液が塗布される位置(以下、「塗布位置」とも称する)を基準にして、ウェブ14の走行方向に関し塗布位置よりも前段の部分を「ウェブ上流」と称し、後段の部分を「ウェブ下流」と称する。したがって、図1に示す横型のスロットダイ18では、ビード20の下側は「ウェブ上流側」となり、ビード20の上側は「ウェブ下流側」となる。また、ウェブの搬送方向と垂直を成すウェブの幅方向を「ウェブ幅方向」と称する。
【0029】
スロットダイ18は、本体50の内部に設けられたマニホールド22と、マニホールド22からスロットダイ18の先端部に延在するスロット24とを有する。また、スロットダイ18は、上流側ダイブロック18Aおよび下流側ダイブロック18Bの二つのブロックによって構成されており、マニホールド22およびスロット24が上流側ダイブロック18Aおよび下流側ダイブロック18Bの境界の一部となっている。このように、スロットダイ18を多ブロック構造とすることで、スロットダイ18の製造精度を高め、洗浄などの後処理を容易にする。なお、スロットダイ18の具体的な形状やサイズは、自重、使用時の環境や塗布液の温度、製作仕様限界、等に基づいて決定される。
【0030】
スロットダイ18の先端部分は先細り状に形成され、その先端はリップランド16と呼ばれる。スロット24のウェブ上流側(図1の下側)のリップランド16を上流側リップランド16Aと称し、ウェブ下流側(図1の上側)のリップランド16を下流側リップランド16Bと称する。
【0031】
一般的に上流側リップランド部16Aの塗布幅に垂直方向の長さは100μm〜1mmの範囲で用いられており、また、下流側リップランド部16Bの長さは30μm〜100μmの範囲で用いられる。また、上流側リップランド部16Aの長さは特に限定はされないが200μm〜1mmが好ましく用いられる。また、リップの先端の真直度は、幅方向に対して上流側および下流側ともに1m当たり10μm以下、好ましくは5μm以下に設定可能である。
【0032】
本実施の形態のスロットダイ18はオーバーバイト構造を有し、上流側リップランド16Aよりも下流側リップランド16Bのほうが、バックアップローラ12に巻き掛けられたウェブ14に近い位置に配置される。このようなオーバーバイト構造は、スロットダイ18のウェブ幅方向の全長に亘って略均一に形成されている。なお、塗布液の吐出方向(矢印A参照)に関する上流側リップランド16Aと下流側リップランド16Bとの距離Lを「オーバーバイト量」と称する。
【0033】
一般に、ウェブ(支持体)14と下流側リップランド16Bとの距離は20μm〜200μm程度が好ましく、オーバーバイト量は30μm〜120μmの範囲で用いられる。
【0034】
以上の形状を満たすため、リップ先端の強度や表面状態の向上対策として、少なくともこの箇所を含むスロットダイ18の材質をタングステンカーバイト(以下WCと称す)を主成分とする超硬材質とする。超硬材質を用いることにより、表面形状の均質性とあわせ、常に吐出される塗布液によるリップの磨耗への対策にもなる。塗布液として、研磨剤を含む磁性体液等を塗布する場合は特に有効である。超硬材質としては平均粒径5μmのWC炭化物結晶に、Coをはじめとする結合金属で結合してなる材質を使用するが、結合金属はこれに限定されず、Ti、Ta、Nbをはじめとする各種金属を使用することもできる。なお、WC結晶の平均粒径は5μm以下であれば任意の平均粒径のものを用いてよい。
【0035】
一般に、これらのオーバーバイト構造は、リップランド16とウェブ14の間隔が狭い低リップクリアランス構造を採用する場合、ビード20の下流側塗布液の圧損を小さくして、減圧チャンバー26における減圧値を小さくすることができる。そのため、これらの構造を採用する場合には、ビード20の変動が抑えられ、塗布液をウェブ14上に安定塗布することが可能となって、高精度な面状を有する塗布膜を提供することができる。
【0036】
マニホールド22は、スロットダイ18に供給された塗布液を塗布幅方向(ウェブ幅方向)へ拡流する液溜め部であり、ウェブ幅方向(長手方向)へ延びる。このマニホールド22は、略円形の断面形状を有し、ウェブ幅方向に沿って略同一の断面形状をもつ空洞部を構成する。マニホールド22のウェブ幅方向への有効長さは、ウェブ14に対する塗布幅と同等又は若干長く設定される。なお、マニホールド22は、「ポケット」とも称される。
【0037】
このマニホールド22には、塗布液を貯留する塗布液タンク44が塗布液供給管46を介して接続され、塗布液供給管46には、塗布液タンク44からマニホールド22に塗布液を送る塗布液ポンプ42が設けられている。
【0038】
図2に示すように、本体50のウェブ幅方向の両端部には閉鎖板54が設けられている。また、マニホールド22には、マニホールド22から塗布液を引き抜くための塗布液排出管52が接続されている。なお、塗布液供給管46および塗布液排出管52は、閉鎖板54を貫通して、マニホールド22と連通する。
【0039】
マニホールド22への塗布液の供給方式は、マニホールド22に塗布液を適切に供給することができればどのような手法であってもよい。例えば、マニホールド22の一端側から塗布液を供給する方式だけではなく、マニホールド22の中央部から塗布液を供給する方式、マニホールド22の両端部に塗布液が漏れ出ることを防止する栓を設けて、マニホールド22の一方端から新規な塗布液を供給するとともに、他方端から抜き取られた一部の塗布液を再び一方端に循環させる方式、等も用いられうる。また、マニホールド22の断面形状は、略円形に限定されるものではなく、例えば半円形、台形などの矩形、あるいはそれらに類似する形状であってもよい。
【0040】
スロット24は、マニホールド22からスロット先端に至る狭隘な塗布液の流路を構成し、スロットダイ18の先端部分における開口部24Aから塗布液を吐出させて、スロットダイ18とウェブ14との間にビード20を架設する。このスロット24は、通常、0. 01〜0. 5mm程度の開口幅をもち、ウェブ幅方向(長手方向)に関してウェブ14に対する塗布液の塗布幅よりも大きい長さを有する。なお、マニホールド22からウェブ14に向かって延びるスロット24の流路長は、塗布液の液組成、物性、供給流量、供給液圧、等の諸条件を考慮して設定可能であり、スロット24の開口部24Aから吐出される塗布液がウェブ幅方向に亘って略均一な流量および液圧をもつように、スロット24の流路長を設定することが好ましい。
【0041】
上述のような構成を有するスロットダイ18の先端部分の下方には、図1に示すように、ビード20のウェブ上流側を減圧するための減圧チャンバー26が設けられている。減圧チャンバー26は、内部に空間形成するバックプレート26A、サイドプレート26B、リアプレート26C、およびボトムプレート26Dを有し、減圧状態を保持する箱形形状となっている。
【0042】
バックプレート26Aは、減圧チャンバー26のうちウェブ搬送方向の最も上流側に位置し、ウェブ14の幅方向に沿って配置される。サイドプレート26Bは、バックプレート26Aと垂直を成すように配置されて減圧チャンバー26の両側壁を構成し、バックアップローラ12と近接する縁部分(図示省略)がバックアップローラ12とほぼ同じ曲率を有する。リアプレート26Cは、スロットダイ18の下方において、バックプレート26Aとほぼ平行に配置されている。ボトムプレート26Dは、減圧チャンバー26の底部分を構成し、バックプレート26A、サイドプレート26B、およびリアプレート26Cと縁部分において接合する。そして、「バックプレート26Aとウェブ14の間」および「サイドプレート26Bとウェブ14の間」の各々には、所定の大きさの隙間が存在する。なお、バックプレート26Aには吸引口40が形成されており、吸引口40にはエア配管28が接続されている。
【0043】
減圧チャンバー26は、吸引口40およびエア配管28を介してブロア30に接続され、エア配管28の途中には、バルブ32およびバッファ装置34が設けられている。ブロア30は、吸引口40およびエア配管28を介して減圧チャンバー26内を吸引し、減圧チャンバー26内を負圧にする。バルブ32は、その開度に応じて減圧チャンバー26内の減圧度を調整する。バッファ装置34は、減圧チャンバー26内の圧力変動を小さくするための緩衝部としての役割を果たす。
【0044】
減圧チャンバー26内には、減圧チャンバー26内の圧力を測定する圧力計36が設けられており、圧力計36の測定結果はコントローラ38に送られる。コントローラ38は、圧力計36の測定結果に基づいてバルブ32の開度を調節し、減圧チャンバー26内の圧力を所定の圧力に保つ。なお、本実施の形態において「減圧チャンバー26内の圧力」は「ビード20のウェブ上流側の圧力」に対応する。
【0045】
なお、ウェブ14や塗布液は、目的に応じた各種成分を含むものが使用されうる。一例として、ポリエチレンテレフタレート、ポリエチレン−2,6−ナフタレート、セルロースダイアセテート、セルローストリアセテート、セルロースアセテートプロピオネート、ポリ塩化ビニル、ポリ塩化ビニリデン、ポリカーボネート、ポリイミド、ポリアミド等の公知の各種プラスチックフィルム、紙、紙にポリエチレン、ポリプロピレン、エチレンブテン共重合体等の炭素数が2〜10のα−ポリオレフィン類を塗布またはラミネートした各種積層紙、アルミニウム、銅、スズ等の金属箔等、帯状基材の表面に予備的な加工層を形成させたもの、その他の可撓性部材、あるいはこれらを積層した各種複合材料を、ウェブ14の材質として使用することができる。
【0046】
また、塗布液の溶媒として、水、各種のハロゲン化炭化水素、アルコール、エーテル、エステル、ケトンなどを単独あるいは複数混合したものを使用することができる。
【0047】
また、塗布液として、光学補償シート塗布液、反射防止フィルム塗布液、防眩性付与液磁性塗布液、写真感光性塗布液、磁性塗布液、視野角拡大塗布液、表面保護液、帯電防止液、滑性用塗布液、カラーフィルタ用顔料液、あるいはその他の光学フィルム用塗布液を使用することができる。
【0048】
なお、下述する[実施例]で示唆されているように、スロットダイ18からウェブ14に向かって吐出させる塗布液として、「表面張力が30mN/m以下の塗布液」や「幅規制板60に対する接触角が30度以上の塗布液」を使用することが好ましい。
【0049】
図2に示すように、スロット24のウェブ幅方向の両端部には、幅規制板60が、スロット24の壁部を構成する上流側ダイブロック18Aおよび下流側ダイブロック18Bに接触した状態で挿入されている。幅規制板60は、詳細については後述するが(図3参照)、スロットダイ18のスロット24の開口部24Aから吐出される塗布液の塗布幅を規制する部材である。
【0050】
幅規制板60は、下述する[実施例]で示唆されているように、幅規制板60の近傍の塗布液の塗布状態を安定化させる観点から、特定の材料や表面加工を採用して、塗布液の濡れ性が調整されることが好ましい。例えば、テフロンやニューライトなどの材料によって幅規制板60を形成したり、フッ素樹脂などのポリマーによってコーティングされた金属板を幅規制板60として使用することで、幅規制板60の塗布液に対する接触角が30度以上となるように調整されることが好ましい。
【0051】
次に、幅規制板60について説明する。本件発明者は、鋭意研究した結果、下述する[実施例]で示唆されているように、以下の知見を得た。
【0052】
すなわち、幅規制板60の先端面(以下、「幅規制部材先端面」とも称する)62を、上流側リップランド16Aと略連続するように設定するとともに下流側リップランド16Bと略連続するように設定することによって、幅規制板60の周辺における塗布液の回り込みを効果的に防ぐことができる。
【0053】
特に、スロットダイ18および幅規制板60を以下の条件に設定した場合に、幅規制板60の周辺における塗布液の回り込みを効果的に防ぐことができることを本件発明者は突き止めた。すなわち、上流側リップランド16Aのうち幅規制板60側の端部である幅規制側上流リップエッジが、塗布液の吐出方向(矢印A参照)に関して、幅規制部材先端面62のうち上流側リップランド16A側の端部である上流リップ側幅規制エッジと同等もしくは突出するように調整されることが好ましい。そして、上流リップ側幅規制エッジ64と幅規制側上流リップエッジとの距離を0μm以上10μm以下の範囲に設定し、下流側リップランド16Bのうち幅規制板60側の端部である幅規制側下流リップエッジと幅規制部材先端面62のうち下流側リップランド16B側の端部である下流リップ側幅規制エッジとの距離を0μm以上10μm以下の範囲に設定することが好ましい。
【0054】
更に、幅規制部材先端面62が、塗布液の吐出方向(矢印A参照)に関して、下流側リップランド16Bよりも突出しないようにするとともに、上流側リップランド16Aよりも引っ込まないように設定することも好ましい。以下に、本件発明者が突き止めた好適な実施の形態の一例について説明する。
【0055】
図3は、本実施の形態のスロットダイ18および幅規制板60の配置関係の一例を示す図であり、スロットダイ18および幅規制板60の先端部分を側方から見た状態を示す。図3に示す例では、上流側リップランド16Aの幅規制側上流リップエッジ17Aが、塗布液の吐出方向(図3の矢印A参照)に関して、幅規制部材先端面62の上流リップ側幅規制エッジ64と同等の位置となるように設けられている。同様に、下流側リップランド16Bの幅規制側下流リップエッジ17Bが、塗布液の吐出方向(矢印A参照)に関して、幅規制部材先端面62の下流リップ側幅規制エッジ66と同等の位置となるように設けられている。
【0056】
したがって、幅規制側上流リップエッジ17Aと上流リップ側幅規制エッジ64との距離が0μmとなるように、上流側リップランド16Aおよび幅規制部材先端面62が調整されている。また、幅規制側下流リップエッジ17Bと下流リップ側幅規制エッジ66との距離が0μmとなるように、下流側リップランド16Bおよび幅規制部材先端面62が調整されている。そして、幅規制部材先端面62は、上流リップ側幅規制エッジ64と下流リップ側幅規制エッジ66とを含む平面構造を有し、塗布液の吐出方向に関して(矢印A参照)、下流側リップランド16Bよりも突出せず(図3の点線部B参照)且つ上流側リップランド16Aよりも引っ込んでいない(図3の点線部C参照)形状を有する。
【0057】
このように、幅規制部材先端面62が上流側リップランド16Aおよび下流側リップランド16Bと略連続するように設定されることで、幅規制板60の先端部分における塗布液の回り込みを非常に効果的に防ぐことができる。これにより、幅規制板60が設けられるスロットダイ18のウェブ幅方向の端部に塗布液が滞留してしまうことを回避することができ、幅規制板60の近傍におけるビード20(塗布液)のエッジ部を安定化させることができる。したがって、幅規制板60の近傍から吐出される塗布液もウェブ14に対し安定的に塗布され、良好な品質の塗布膜(塗布層)がウェブ14上に生成される。そして、そのような塗布膜を用いて高度な製造精度が要求される光学フィルム等を製造することが可能となる。
【0058】
上述の事項は本発明の一態様を例示したものであり、当業者の知識に基づいて各種の設計変更等の変形が加えられたり、公知の要素を応用したりすることも可能であり、そのような各種態様も本発明の範囲に含まれうる。
【0059】
例えば、幅規制板60は図3に図示されているものには限定されない。「上流側リップランド16Aの幅規制側上流リップエッジ17A」と「下流側リップランド16Bの幅規制側下流リップエッジ17B」とを実質的に結ぶ平面または曲面の幅規制部材先端面62を有する幅規制板60を好適に用いることが可能である。例えば、図4に示されるように、幅規制板60の上流リップ側幅規制エッジ64を上流側リップランド16Aの幅規制側上流リップエッジ17Aよりも突出させて、以下の式(1)を満たす範囲で、上流リップ側幅規制エッジ64と幅規制側上流リップエッジ17Aとの距離DAを適宜調整することもできる。
【0060】
0μm≦DA≦10μm 式(1)
また、図5に示されるように、幅規制板60の下流リップ側幅規制エッジ66を下流側リップランド16Bの幅規制側下流リップエッジ17Bよりも引っ込ませて、以下の式(2)を満たす範囲で、下流リップ側幅規制エッジ66と幅規制側下流リップエッジ17Bとの距離DB1を適宜調整することもできる。
【0061】
0μm≦DB1≦10μm 式(2)
また、図6に示されるように、幅規制板60の下流リップ側幅規制エッジ66を下流側リップランド16Bの幅規制側下流リップエッジ17Bよりも突出させて、以下の式(3)を満たす範囲で、下流リップ側幅規制エッジ66と幅規制側下流リップエッジ17Bとの距離DB2を適宜調整することもできる。
【0062】
0μm≦DB2≦10μm 式(3)
また、図7に示されるように、幅規制板60の下流リップ側幅規制エッジ66を下流側リップランド16Bの幅規制側下流リップエッジ17Bよりも引っ込ませるとともに、幅規制板60の上流リップ側幅規制エッジ64を上流側リップランド16Aの幅規制側上流リップエッジ17Aよりも突出させてもよい。その場合、上記の式(1)および式(2)を満たすように、上流リップ側幅規制エッジ64と幅規制側上流リップエッジ17Aとの距離DAおよび下流リップ側幅規制エッジ66と幅規制側下流リップエッジ17Bとの距離DB1を適宜調整することが好ましい。
【0063】
また、図8に示されるように、幅規制板60の下流リップ側幅規制エッジ66を下流側リップランド16Bの幅規制側下流リップエッジ17Bよりも突出させるとともに、幅規制板60の上流リップ側幅規制エッジ64を上流側リップランド16Aの幅規制側上流リップエッジ17Aよりも突出させてもよい。その場合、上記の式(1)および式(3)を満たすように、上流リップ側幅規制エッジ64と幅規制側上流リップエッジ17Aとの距離DAおよび下流リップ側幅規制エッジ66と幅規制側下流リップエッジ17Bとの距離DB2を適宜調整することが好ましい。
【0064】
また、図9乃至図11に示されるように、幅規制板60の幅規制部材先端面62は、下流側リップランド16Bに垂直方向に対して、幅規制部材先端面62の下流側リップランド16B側の端部である下流リップ側幅規制エッジ66よりも突出しないとともに(点線部B参照)、上流側リップランド16Aに垂直方向に対して、幅規制部材先端面62の上流側リップランド16A側の端部である上流リップ側幅規制エッジ64よりも引っ込んでいない(点線部C参照)範囲で、様々な形状を採ることが可能である。例えば、「幅規制側上流リップエッジ17Aにおける上流側リップランド16Aの曲率」と「上流リップ側幅規制エッジ64における幅規制部材先端面62の曲率」とがほぼ等しい円弧状(図9参照)、「幅規制側下流リップエッジ17Bにおける下流側リップランド16Bの曲率」と「下流リップ側幅規制エッジ66における幅規制部材先端面62の曲率」とがほぼ等しい円弧状(図10参照)、あるいは図9および図10を組み合わせたような形状(図11参照)に、幅規制部材先端面62を設定することが可能である。
【0065】
また、スロットダイコータ式塗布システム10におけるバックアップローラ12、スロットダイ18、および減圧チャンバー26は、ウェブ14上に塗布液を適切に塗布することができれば、どのような配置関係であってもよい。例えば、ウェブ14に対するスロットダイ18の塗布液の吐出角度、マニホールド22の断面形状、バックアップローラ12に対するウェブ14の巻き掛け状態、バックアップローラ12に対するウェブ14の巻き掛け部とスロットダイ18や減圧チャンバー26との相対位置関係、オーバーバイト量、等は、目的に応じて適宜調整可能である。
【実施例】
【0066】
以下に上述のスロットダイコータ式塗布システム10を用いた実施例について記述するが、本発明は以下の実施例に限定されるものではない。
【0067】
(共通の塗布条件)
以下の各実施例(但し、実施例3を除く)で用いられた塗布液は、以下のようにして調製された。すなわち、「屈折率が1.46の熱架橋性含フッ素ポリマー(JN−7221、JSR(株)製)200g」に対し、「メチルイソプチルケトン200g」を添加して、攪拌する。そして、その攪拌された溶液を孔径1μmのポリプロピレン製フィルタ(PPE−01)によって濾過することで調製される低屈折率層用溶液を塗布液として使用した。
【0068】
また、各実施例における共通の塗布条件を以下の表1に示す。各実施例は、特に断りが無い限り、表1に示されている塗布条件に従って行われた。
【0069】
【表1】
表1に示されているように共通の塗布条件は、ウェブ14の搬送速度を示す塗布速度が60m/min、ウェブ14上の塗布膜の膜厚を示す塗布膜厚が5ml/m2、ウェブ14上の塗布膜の幅を示す塗布幅が600mm、下流側リップランド部16Bとウェブ14との間隔を示す下流側リップ間隙が50μm、オーバーバイト量が50μm、ウェブ14の走行方向に関する上流側リップランド16Aの長さを示す上流側リップ長が200μm、ウェブ14の走行方向に関する下流側リップランド16Bの長さを示す下流側リップ長が200μm、ウェブ14の走行方向に関するスロット幅が200μm、幅規制板60の材質がSUS630、ウェブ14の走行方向に関する幅規制板60の幅が195μm、塗布液の表面張力が20mN/m、減圧チャンバー26による減圧度が1.0kPa、上下リップ先端面の真直度が塗布幅1m当たり5μm、となっている。
【0070】
また、幅規制板60は、マイクロスコープ(VHX−200)により、上流側リップランド面方向の上流側および下流側、下流側リップランド面方向下流側、そして、ダイ側面から観察しリップランド面からの突出量を観察、測定することで位置調整を行っている。なお、マイクロスコープによる測定は±0.1μmでの距離測定が可能である。
【0071】
(実施例1)
本例では、スロットダイ18の先端部に対する幅規制板60の突出状態(引っ込み状態)を変えて、スロットダイ18から塗布液を吐出させた。図12は、実施例1で使用したスロットダイ18および幅規制板60と、塗布液の塗布結果とを示す。図12において、(a)では、下流側リップランド16Bよりも25μmだけ突出した位置に幅規制部材先端面62を配置し、(b)では、上流側リップランド16Aおよび下流側リップランド16Bの中間であって上流側リップランド16Aよりも25μmだけ突出した位置に幅規制部材先端面62を配置し、(c)では、幅規制部材先端面62の端部(エッジ)を上流側リップランド16Aおよび下流側リップランド16Bの端部(エッジ)をほぼ一致させて、上流側リップランド16Aおよび下流側リップランド16Bと略連続するように幅規制部材先端面62を配置し(図3参照)、(d)では、上流側リップランド16Aよりも25μmだけ引っ込んだ位置に幅規制部材先端面62を配置した。
【0072】
また、図12において、「○」は、ビード20が成立し、ウェブ14上の塗布膜の幅方向端部(以下、「塗布膜エッジ」とも称する)のウェブ幅方向への幅振れが±1mm未満であることを示し、「△」は、ビード20が成立し、塗布膜エッジのウェブ幅方向への幅振れが±3mm未満であることを示し、「×」は、ビード20が成立しない、或いは塗布膜エッジのウェブ幅方向への幅振れが±3mm以上であることを示す。
【0073】
図12に示されているように、塗布膜エッジの幅振れを抑えて安定した塗布液の塗布を実施する観点からは、(c)の「上流側リップランド16Aおよび下流側リップランド16Bと略連続するように幅規制部材先端面62を配置すること」が好ましい。
【0074】
(実施例2)
本例では、スロットダイ18の先端部に対する幅規制板60の突出量(引っ込み量)を変えて、スロットダイ18から塗布液を吐出させた。以下の表2は、上流側リップランド16Aおよび下流側リップランド16Bに対する幅規制板60(幅規制部材先端面62)の突出量(引っ込み量)と、塗布液の塗布結果とを示す。
【0075】
【表2】
表2において、「下流側」は、下流側リップランド16Bに対する幅規制板60(幅規制部材先端面62)の突出量を示し、「上流側」は、上流側リップランド16Aに対する幅規制板60(幅規制部材先端面62)の突出量を示す。「上流側」および「下流側」の欄における「0」は、上流側リップランド16Aあるいは下流側リップランド16Bの位置を示し、「+」は、幅規制板60(幅規制部材先端面62)が塗布液の吐出方向へ上流側リップランド16Aあるいは下流側リップランド16Bよりも突出していることを示し、「−」は、幅規制板60(幅規制部材先端面62)が、塗布液の吐出方向とは逆方向へ、上流側リップランド16Aあるいは下流側リップランド16Bよりも引っ込んでいることを示す。また、「◎」は、ビード20が成立し、塗布膜エッジのウェブ幅方向への幅振れが±0.5mm未満であることを示し、「○」、「△」、および「×」は、上述した図12の場合と同様の内容を示す。
【0076】
表2に示されているように、塗布膜エッジの幅振れを抑えて安定した塗布液の塗布を実施する観点からは、下流側リップランド16Bに対する幅規制板60(幅規制部材先端面62)の突出量(引っ込み量)を、「−10μm〜+10μm」の範囲に設定することが好ましい。同様に、上流側リップランド16Aに対する幅規制板60(幅規制部材先端面62)の突出量(引っ込み量)を、「0μm〜+10μm」の範囲に設定することが好ましい。なお、上流側リップランド16Aおよび下流側リップランド16Bに対する幅規制板60(幅規制部材先端面62)の突出量(引っ込み量)が、上記の好ましい範囲から逸脱すると、幅規制板60の近傍のビード20が不安定になって、塗布液の塗布状態が不安定になることが確認された。
【0077】
(実施例3)
本例では、塗布液の表面張力を変えて、スロットダイ18から塗布液を吐出させた。なお、有機溶剤系の塗布液では表面張力を変化させることが難しいので、本例では、水、エタノール、および染料の混合量を調節して表面張力を調整した溶液を塗布液として使用した。なお、本例で使用された染料は、以下の化学式で示される4,4’−(1,3−ペンタジエン−1−イル−5−イリデン)−ビス[3−カルボエトキシ−1−(p−スルホ−フェニル)−5−ピラゾロン]2カリウム塩(Di-potassiumu Salt of 4,4'-(1,3-pentadien-1-yl-5-ylidene)-bis[3-carboethoxy-1-(p-sulfo-phenyl)-5-pyrazolone])が用いられた。
【0078】
【化1】
以下の表3は、塗布液の表面張力と、塗布液の塗布結果とを示す。
【0079】
【表3】
表3において、「(b)」および「(c)」は、図12の「(b)」および「(c)」に準じており(実施例1参照)、塗布液の表面張力以外の塗布条件は図12の「(b)」および「(c)」と同様である。また、「◎」、「○」、「△」、および「×」は、上述の図12および表2におけるのと同様の内容を示す。
【0080】
表3に示されているように、塗布膜エッジの幅振れを抑えて安定した塗布液の塗布を実施する観点からは、特に表面張力が30mN/m以下の塗布液を使用する場合に、本発明に係るスロットダイ18および幅規制板60(表3の(c)参照)が有効であることが確認された。これは、表面張力が30mN/mよりも大きい塗布液のビード20は本来的に安定度が高く、表面張力が30mN/m以下の塗布液を使用する場合に幅規制板60の先端形状が塗布液の塗布に大きな影響を与えるからであると考えられる。
【0081】
(実施例4)
本例では、幅規制板60の塗布液に対する濡れ性を変えて、本発明に係る図12の(c)に示すスロットダイ18から塗布液を吐出させた。具体的には、幅規制板60の塗布液に対する濡れ性の指標として接触角を用い、幅規制板60の表面の材質を「SUS」「テフロン」および「ニューライト」に変えることで、幅規制板60の塗布液に対する接触角を調整した。なお、「SUS」はステンレス鋼(Stainless Used Steel)を意味し、「テフロン」はテトラフルオロエチレンを意味し、「ニューライト」はチグラー法により製造される平均分子量550万(光散乱法測定)以上の超高分子量ポリエチレンを意味する。以下の表4は、幅規制板60の材質と、接触角と、塗布液の塗布結果とを示す。
【0082】
【表4】
表4において、「◎」、「○」、「△」、および「×」は、上述の図12および表2の場合と同様の内容を示す。
【0083】
表4に示されているように、塗布膜エッジの幅振れを抑えて安定した塗布液の塗布を実施する観点からは、接触角を上げて濡れにくい性質にした場合、特に幅規制板60に対する塗布液の接触角を30度以上に調整した場合に(表4の「テフロン」「ニューライト」参照)、本発明に係るスロットダイ18および幅規制板60(図12の(c)参照)が有効であることが確認された。
【0084】
なお、幅規制板60の塗布液に対する濡れ性は、塗布液と接触する部分の幅規制板60の材質によって決定されるので、例えば金属板によって構成される幅規制板60のうち少なくとも塗布液が接触する部分をフッ素樹脂などのポリマーによってコーティングして、接触角を30度以上に調整した幅規制板60を使用することも可能である。また、塗布液の塗布状態は、特にスロットダイ18の先端部分の開口部24Aの近傍における「幅規制板60の塗布液に対する濡れ性」が重要となる。したがって、幅規制板60のうちスロット24の開口部24Aの近傍箇所がフッ素樹脂などによってコーティングされていれば、塗布液の塗布の安定性を向上させることができると考えられる。
【図面の簡単な説明】
【0085】
【図1】本発明の一実施の形態におけるスロットダイコータの構成図である。
【図2】スロットダイの一部を切断した状態を示す斜視図である。
【図3】スロットダイおよび幅規制板の配置関係の一例を示す図であり、スロットダイおよび幅規制板の先端部分を側方から見た状態を示す図である。
【図4】幅規制板の変形例を示す図である。
【図5】幅規制板の変形例を示す図である。
【図6】幅規制板の変形例を示す図である。
【図7】幅規制板の変形例を示す図である。
【図8】幅規制板の変形例を示す図である。
【図9】幅規制板の変形例を示す図である。
【図10】幅規制板の変形例を示す図である。
【図11】幅規制板の変形例を示す図である。
【図12】実施例1で使用したスロットダイおよび幅規制板と、塗布液の塗布結果とを示す図である。
【図13】オーバーバイト構造のスロットダイおよび幅規制板の典型的な配置関係の一例を示す図であり、スロットダイおよび幅規制板の先端部分を側方から見た状態を示す図である。
【図14】オーバーバイト構造のスロットダイおよび幅規制板の典型的な配置関係の他の例を示す図である。
【図15】オーバーバイト構造のスロットダイおよび幅規制板の典型的な配置関係の他の例を示す図である。
【符号の説明】
【0086】
10・・・スロットダイコータ、12・・・バックアップローラ、14・・・ウェブ、16・・・リップランド、16A・・・上流側リップランド、16B・・・下流側リップランド、17A・・・幅規制側上流リップエッジ、17B・・・幅規制側下流リップエッジ、18・・・スロットダイ、18A・・・上流側ダイブロック、18B・・・下流側ダイブロック、20・・・ビード、22・・・マニホールド、24・・・スロット、24A・・・開口部、26・・・減圧チャンバー、26A・・・バックプレート、26B・・・サイドプレート、26C・・・リアプレート、26D・・・ボトムプレート、28・・・エア配管、30・・・ブロア、32・・・バルブ、34・・・バッファ装置、36・・・圧力計、38・・・コントローラ、40・・・吸引口、42・・・塗布液ポンプ、44・・・塗布液タンク、46・・・塗布液供給管、50・・・本体、52・・・塗布液排出管、54・・・閉鎖板、60・・・幅規制板、62・・・幅規制部材先端面、64・・・上流リップ側幅規制エッジ、66・・・下流リップ側幅規制エッジ
【特許請求の範囲】
【請求項1】
バックアップローラにより支持された状態で連続走行する支持体の表面に向かってスロットダイのスロットから塗布液を吐出させるとともに、前記スロットダイと前記支持体との間に架設される塗布液のビードの支持体上流側を減圧チャンバーによって減圧し、当該ビードによって前記支持体の表面に前記塗布液を塗布する塗布液の塗布方法において、
前記スロットダイの先端面のうち前記スロットよりも下流側の下流側ダイ先端面は、上流側の上流側ダイ先端面よりも前記支持体に近接した位置に配置され、
前記スロットには、当該スロットから前記支持体に向かって吐出される塗布液の塗布幅を規制する幅規制部材が挿入され、
前記幅規制部材の先端面は、上流側ダイ先端面と略連続するとともに下流側ダイ先端面と略連続することを特徴とする塗布液の塗布方法。
【請求項2】
前記上流側ダイ先端面の前記幅規制部材側の端部と前記幅規制部材の先端面の前記上流側ダイ先端面側の端部との距離は0μm以上10μm以下であり、前記下流側ダイ先端面の前記幅規制部材側の端部と前記幅規制部材の先端面の前記下流側ダイ先端面側の端部との距離は0μm以上10μm以下であるとともに、前記上流側ダイ先端面のうち前記幅規制部材側の端部は、前記幅規制部材の先端面のうち前記上流側ダイ先端面側の端部に対して塗布液の吐出方向に関して同等もしくは突出することを特徴とする請求項1に記載の塗布液の塗布方法。
【請求項3】
前記幅規制部材の先端面は、前記下流側ダイ先端面に垂直方向に対して、前記幅規制部材の先端面の前記下流側ダイ先端面側の端部よりも突出しないとともに、前記上流側ダイ先端面に垂直方向に対して、前記幅規制部材の先端面の前記上流側ダイ先端面側の端部よりも引っ込んでいないことを特徴とする請求項1または2に記載の塗布液の塗布方法。
【請求項4】
前記塗布液の表面張力は30mN/m以下であることを特徴とする請求項1〜3のいずれかに記載の塗布液の塗布方法。
【請求項5】
前記幅規制部材に対する前記塗布液の接触角は30度以上であることを特徴とする請求項1〜4のいずれかに記載の塗布液の塗布方法。
【請求項6】
前記幅規制部材のうち少なくとも前記塗布液が接する部分は、ポリマーによってコーティングされていることを特徴とする請求項1〜5のいずれかに記載の塗布液の塗布方法。
【請求項7】
前記請求項1〜6のいずれか1項に記載の塗布液の塗布方法によって得られる塗布層を少なくとも1層有することを特徴とする光学フィルム。
【請求項8】
バックアップローラにより支持された状態で連続走行する支持体の表面に向かってスロットダイのスロットから塗布液を吐出させるとともに、前記スロットダイと前記支持体との間に架設される塗布液のビードの支持体上流側を減圧チャンバーによって減圧し、当該ビードによって前記支持体の表面に前記塗布液を塗布する塗布液の塗布装置において、
前記スロットダイの先端面のうち前記スロットよりも下流側の下流側ダイ先端面は、上流側の上流側ダイ先端面よりも前記支持体に近接した位置に配置され、
前記スロットには、当該スロットから前記支持体に向かって吐出される塗布液の塗布幅を規制する幅規制部材が挿入され、
前記幅規制部材の先端面は、上流側ダイ先端面と略連続するとともに下流側ダイ先端面と略連続することを特徴とする塗布液の塗布装置。
【請求項1】
バックアップローラにより支持された状態で連続走行する支持体の表面に向かってスロットダイのスロットから塗布液を吐出させるとともに、前記スロットダイと前記支持体との間に架設される塗布液のビードの支持体上流側を減圧チャンバーによって減圧し、当該ビードによって前記支持体の表面に前記塗布液を塗布する塗布液の塗布方法において、
前記スロットダイの先端面のうち前記スロットよりも下流側の下流側ダイ先端面は、上流側の上流側ダイ先端面よりも前記支持体に近接した位置に配置され、
前記スロットには、当該スロットから前記支持体に向かって吐出される塗布液の塗布幅を規制する幅規制部材が挿入され、
前記幅規制部材の先端面は、上流側ダイ先端面と略連続するとともに下流側ダイ先端面と略連続することを特徴とする塗布液の塗布方法。
【請求項2】
前記上流側ダイ先端面の前記幅規制部材側の端部と前記幅規制部材の先端面の前記上流側ダイ先端面側の端部との距離は0μm以上10μm以下であり、前記下流側ダイ先端面の前記幅規制部材側の端部と前記幅規制部材の先端面の前記下流側ダイ先端面側の端部との距離は0μm以上10μm以下であるとともに、前記上流側ダイ先端面のうち前記幅規制部材側の端部は、前記幅規制部材の先端面のうち前記上流側ダイ先端面側の端部に対して塗布液の吐出方向に関して同等もしくは突出することを特徴とする請求項1に記載の塗布液の塗布方法。
【請求項3】
前記幅規制部材の先端面は、前記下流側ダイ先端面に垂直方向に対して、前記幅規制部材の先端面の前記下流側ダイ先端面側の端部よりも突出しないとともに、前記上流側ダイ先端面に垂直方向に対して、前記幅規制部材の先端面の前記上流側ダイ先端面側の端部よりも引っ込んでいないことを特徴とする請求項1または2に記載の塗布液の塗布方法。
【請求項4】
前記塗布液の表面張力は30mN/m以下であることを特徴とする請求項1〜3のいずれかに記載の塗布液の塗布方法。
【請求項5】
前記幅規制部材に対する前記塗布液の接触角は30度以上であることを特徴とする請求項1〜4のいずれかに記載の塗布液の塗布方法。
【請求項6】
前記幅規制部材のうち少なくとも前記塗布液が接する部分は、ポリマーによってコーティングされていることを特徴とする請求項1〜5のいずれかに記載の塗布液の塗布方法。
【請求項7】
前記請求項1〜6のいずれか1項に記載の塗布液の塗布方法によって得られる塗布層を少なくとも1層有することを特徴とする光学フィルム。
【請求項8】
バックアップローラにより支持された状態で連続走行する支持体の表面に向かってスロットダイのスロットから塗布液を吐出させるとともに、前記スロットダイと前記支持体との間に架設される塗布液のビードの支持体上流側を減圧チャンバーによって減圧し、当該ビードによって前記支持体の表面に前記塗布液を塗布する塗布液の塗布装置において、
前記スロットダイの先端面のうち前記スロットよりも下流側の下流側ダイ先端面は、上流側の上流側ダイ先端面よりも前記支持体に近接した位置に配置され、
前記スロットには、当該スロットから前記支持体に向かって吐出される塗布液の塗布幅を規制する幅規制部材が挿入され、
前記幅規制部材の先端面は、上流側ダイ先端面と略連続するとともに下流側ダイ先端面と略連続することを特徴とする塗布液の塗布装置。
【図1】
【図2】
【図3】
【図4】
【図5】
【図6】
【図7】
【図8】
【図9】
【図10】
【図11】
【図12】
【図13】
【図14】
【図15】
【図2】
【図3】
【図4】
【図5】
【図6】
【図7】
【図8】
【図9】
【図10】
【図11】
【図12】
【図13】
【図14】
【図15】
【公開番号】特開2006−272270(P2006−272270A)
【公開日】平成18年10月12日(2006.10.12)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2005−98913(P2005−98913)
【出願日】平成17年3月30日(2005.3.30)
【公序良俗違反の表示】
(特許庁注:以下のものは登録商標)
1.テフロン
【出願人】(000005201)富士写真フイルム株式会社 (7,609)
【Fターム(参考)】
【公開日】平成18年10月12日(2006.10.12)
【国際特許分類】
【出願日】平成17年3月30日(2005.3.30)
【公序良俗違反の表示】
(特許庁注:以下のものは登録商標)
1.テフロン
【出願人】(000005201)富士写真フイルム株式会社 (7,609)
【Fターム(参考)】
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