説明

塗布液塗布装置および塗布液塗布方法

【課題】短時間で塗布液流量を調整して、塗布液の塗布量を正確に制御することが可能な塗布液塗布装置および塗布液塗布方法を提供する。
【解決手段】塗布液の塗布を行う前に、予め、塗布軌跡の幅と各ノズルから吐出される塗布液の流量との関係を示す関係式を作成して記憶する準備工程を実行する。そして、塗布を実行する毎、あるいは、一定期間毎に、テスト塗布領域に対して塗布液を連続して吐出することにより形成された塗布軌跡の幅を測定する塗布軌跡測定工程を実行する。ガラス基板への塗布液の塗布時には、各支管流量計75が計測した塗布液の流量値と、塗布軌跡測定工程で測定した塗布液の幅と、予め記憶した関係式とを利用して各流量制御バルブ74の開度を調整することにより、塗布液の塗布量を適正なものとする。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
この発明は、有機EL表示装置用ガラス基板、液晶表示装置用ガラス基板、PDP用ガラス基板、太陽電池用基板、電子ペーパー用基板あるいは半導体製造装置用マスク基板等の基板に塗布液を塗布する塗布液塗布装置および塗布液塗布方法に関する。
【背景技術】
【0002】
例えば、高分子有機EL(Electro Luminescence)材料を用いたアクティブマトリックス駆動方式の有機EL表示装置を製造するときには、ガラス基板に対して、TFT(Thin Film Transistor)回路の形成工程、陽極となるITO(Indium Tin Oxide)電極の形成工程、隔壁の形成工程、正孔輸送材料を含む流動性材料の塗布工程、加熱処理による正孔輸送層の形成工程、有機EL材料を含む流動性材料の塗布工程、加熱処理による有機EL層の形成工程、陰極の形成工程、および、絶縁膜の形成による封止工程が順次実行される。
【0003】
このような有機EL表示装置の製造時に、正孔輸送材料を含む流動性材料や有機EL材料を含む流動性材料等の塗布液を基板に塗布する塗布液塗布装置として、塗布液を連続的に吐出する複数のノズルを、基板に対して主走査方向および副走査方向に相対移動させることにより、基板上の塗布領域に塗布液をストライプ状に塗布する装置が知られている。
【0004】
ところで、このような塗布液塗布装置においては、塗布液の塗布量にムラがあった場合においては、これに伴って表示装置の表示ムラ等が発生することから、塗布液の塗布量を極めて正確に制御する必要がある。
【0005】
このため、特許文献1には、塗布液を供給する供給部と、塗布液を吐出する複数のノズルと、処理液供給部から本管を介して供給される塗布液をノズルに接続される複数の支管に分流する分岐部と、本管に配設されこの本管を流動する塗布液の流量を計測する基準流量計と、支管に各々配設されこれら各支管を流動する塗布液の流量を計測する複数の支管流量計と、支管に各々配設されこれらの各支管を流動する塗布液の流量を調節する複数の流量制御バルブと、を備えた塗布液塗布装置において、実吐出流量と基準流量計の流量計測値との関係を示す関係式と、基準流量計の流量計測値と支管流量計の流量計測値との関係を示す関係式とを求め、これらの関係式を利用して流量制御バルブを制御するようにした塗布液塗布装置が開示されている。この特許文献1に記載の塗布液塗布装置においては、塗布液の流量の校正を行うことにより、塗布液の流量を正確に制御することが可能となる。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0006】
【特許文献1】特開2009−45574号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0007】
上述した特許文献1に記載の塗布液塗布装置は、各ノズルから吐出される塗布液の流量を容易に校正できる優れたものではあるが、近年のノズルの多本数化にともない、流量調整に時間がかかるという問題が生じている。すなわち、近年の基板の大サイズ化等に伴って、塗布液塗布装置に搭載されるノズルの本数が多くなっている。特許文献1に記載の塗布液塗布装置においては、ノズル本数に比例して、校正に要する時間が必要となることから、ノズル本数の増加に伴って校正作業に要する時間が極めて長くなり、基板の生産性を低下させるという問題が生ずる。一方、流量計と流量調整バルブを利用して流量制御を行う場合に、経時変化により流量が変動し、校正頻度が小さくなると正確な流量制御を行うことができないという問題が生ずる。
【0008】
この発明は上記課題を解決するためになされたものであり、短時間で塗布液流量を調整して、塗布液の塗布量を正確に制御することが可能な塗布液塗布装置および塗布液塗布方法を提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0009】
請求項1に記載の発明は、塗布液を貯留する塗布液貯留部と、前記塗布液を吐出する複数のノズルと、前記塗布液貯留部から本管を介して供給される塗布液を前記ノズルに接続される複数の支管に分流する分岐部と、前記支管に各々配設され当該各支管を流動する塗布液の流量を計測する複数の支管流量計と、前記支管に各々配設され当該各支管を流動する塗布液の流量を調節する複数の流量制御バルブと、を備えた塗布液塗布装置であって、前記複数のノズルからテスト塗布領域に対して塗布液を連続して吐出することにより形成された塗布軌跡の幅または断面形状と、前記ノズルから吐出される塗布液の流量との関係を示す関係式を記憶する記憶手段と、前記ノズルからテスト塗布領域に対して塗布液を連続して吐出することにより形成された塗布軌跡の幅または断面形状を測定する塗布軌跡測定手段と、基板に対する塗布液の塗布時に、前記記憶手段に記憶した関係式と、前記支管流量計が計測した塗布液の流量値と、前記塗布軌跡測定手段が測定した塗布軌跡の幅または断面形状とに基づいて、前記流量制御バルブの開度を制御する制御部とを備えたことを特徴とする。
【0010】
請求項2に記載の発明は、請求項1に記載の発明において、前記塗布軌跡測定手段は、前記塗布軌跡を撮影するカメラと、前記カメラにより撮影した塗布軌跡の画像から当該塗布軌跡の幅を測定する画像処理部とを備える。
【0011】
請求項3に記載の発明は、請求項2に記載の発明において、前記カメラは、複数のノズルから吐出された複数の塗布軌跡を一括して撮影する。
【0012】
請求項4に記載の発明は、塗布液を貯留する塗布液貯留部と、前記塗布液を吐出する複数のノズルと、前記塗布液貯留部から本管を介して供給される塗布液を前記ノズルに接続される複数の支管に分流する分岐部と、前記支管に各々配設され当該各支管を流動する塗布液の流量を計測する複数の支管流量計と、前記支管に各々配設され当該各支管を流動する塗布液の流量を調節する複数の流量制御バルブとを備え、基板に塗布液を塗布する塗布液塗布装置における塗布液塗布方法であって、前記複数のノズルから塗布液を連続して吐出するとともに、そのときの前記支管流量計による塗布液の流量の測定値と、ノズルから吐出された塗布液の重量とから、前記支管流量計による塗布液の流量の計測値と塗布液の実際の流量との関係を示す第1関係式を求め、前記複数のノズルからテスト塗布領域に対して塗布液を連続して吐出することにより形成された塗布軌跡の幅または断面形状と、そのときの前記支管流量計による塗布液の流量の測定値とから、塗布軌跡の幅または断面形状と前記支管流量計による塗布液の流量の計測値との関係を表す第2関係式を求め、前記第1関係式および前記第2関係式から、塗布軌跡の幅または断面形状と塗布液の流量との関係を示す第3関係式を求める準備工程と、基板に塗布液を塗布するに先だって、前記ノズルからテスト塗布領域に対して塗布液を連続して吐出して塗布軌跡を形成するとともに、このテスト塗布領域に形成された塗布軌跡の幅または断面形状を測定する塗布軌跡測定工程と、基板に塗布液を塗布するときに、前記準備工程で求めた第3関係式と、前記塗布軌跡測定工程で測定した塗布軌跡の幅または断面形状と、前記支管流量計による塗布液の流量の測定値とに基づいて、前記各流量制御バルブの開度を制御する塗布工程とを備えたことを特徴とする。
【発明の効果】
【0013】
請求項1および請求項4に記載の発明によれば、短時間で塗布液流量を調整して、塗布液の塗布量を正確に制御することが可能となる。
【0014】
請求項2に記載の発明によれば、カメラを利用して塗布軌跡の幅を測定することにより、簡単かつ正確に、塗布液流量を認識することが可能となる。
【0015】
請求項3に記載の発明によれば、複数のノズルによる塗布液の流量を一括して認識することが可能となり、塗布液の流量調整に要する時間を短縮することが可能となる。また、各支管から塗布される塗布液の流量を正確に制御することが可能となる。
【図面の簡単な説明】
【0016】
【図1】この発明に係る塗布液塗布装置の平面図である。
【図2】この発明に係る塗布液塗布装置の正面図である。
【図3】ヘッド移動機構21におけるスライダ31付近の断面図である。
【図4】試験塗布ステージ部16の側面から見た断面図である。
【図5】試験塗布ステージ部16の正面から見た断面図である。
【図6】この発明に係る塗布液塗布装置の主要な制御系を示すブロック図である。
【図7】塗布液供給部24の構成、および、塗布液供給部24と塗布ヘッド20における複数のノズル23との接続関係を示す模式図である。
【図8】CCDカメラ90により撮影した塗布軌跡の画像を示す模式図である。
【図9】流量制御バルブ74への指令信号と塗布軌跡の幅の関係を示すグラフである。
【発明を実施するための形態】
【0017】
以下、この発明の実施の形態を図面に基づいて説明する。図1はこの発明に係る塗布液塗布装置の平面図であり、図2はその正面図である。
【0018】
この塗布液塗布装置は、矩形状のガラス基板100に対して塗布液を塗布するためのものである。より詳細には、この塗布液塗布装置は、アクティブマトリックス駆動方式の有機EL(Electro Luminescence)表示装置用のガラス基板100に、揮発性の溶媒(本実施の形態では、芳香族の有機溶媒)、および、発光材料としての有機EL材料を含む塗布液を塗布するためのものである。
【0019】
この塗布液塗布装置は、ガラス基板100を移動させるための基板移動機構11を備える。この基板移動機構11は、図2に示すように、ガラス基板100をその裏面から保持する基板保持部10を有する。この基板保持部10は、一対のレール12に沿って移動する基台13と、この基台13上に配設された回転台14とにより支持されている。このため、この基板保持部10は、図1に示すY方向に、ガラス基板100の表面と平行に移動可能となっている。このY方向は、塗布ヘッド20の往復移動方向である主走査方向(図1におけるX方向)と直交する方向である。以下、このY方向を「副走査方向」とも呼称する。また、この基板保持部10は、鉛直方向(図1におけるZ方向)を向く軸を中心に、回転可能となっている。
【0020】
この基板保持部10は、ガラス基板100を下側から加熱するヒータをその内部に備える。このガラス基板100の表面には、それぞれがX方向に伸びる複数の塗布領域が、Y方向に、例えば100〜150μmのピッチにて配列形成されている。この塗布領域は、例えば、X方向に配置された隔壁などによって形成されている。
【0021】
また、この塗布液塗布装置は、ガラス基板100上に形成された、図示しないアライメントマークを撮影して検出するとともに、塗布ヘッド20による塗布軌跡を撮影するための左右一対の撮像部15を備える。この一対の撮像部15には、各々、後述するCCDカメラ90が配設されている。また、この塗布液塗布装置は、塗布軌跡の試験的な塗布に使用される左右一対の試験塗布ステージ部16を備える。この塗布液塗布装置においては、試験塗布ステージ部16に試験的に塗布された塗布軌跡を利用して、後述するノズル23のピッチを調整するとともに、必要に応じて塗布ヘッド20の送り制御を調整する構成が採用されている。また、この塗布液塗布装置においては、試験塗布ステージ部16に試験的に塗布された塗布軌跡を利用して、塗布液の流量を調整する構成が採用されている。
【0022】
基板保持部10に保持されたガラス基板100の表面に向けて塗布液を吐出する塗布ヘッド20は、ヘッド移動機構21により、ガイド部22に沿って、ガラス基板100表面に平行な主走査方向(図1におけるX方向)に往復移動される。この塗布ヘッド20には、同一種類の塗布液を連続的に吐出するための複数のノズル23が副走査方向に関して等間隔に配設されている。図1および図2では図示の都合上、5個のノズル23のみを図示しているが、ノズル23の個数はさらに多数となっている。
【0023】
塗布ヘッド20は、エア供給管および後述する複数の支管をひとまとめにした供給管群26を介して、塗布液供給部24およびエア供給源25と接続されている。塗布ヘッド20の往復移動方向(X方向)に関して基板保持部10の両側には、塗布ヘッド20におけるノズル23からの塗布液を受ける2つの受液部17、18が配設されている。また、塗布ヘッド20の往復移動方向(X方向)に関して一方の受液部18の側方には、上述した複数のノズル23の副走査方向のピッチを調整するためのノズルピッチ調整機構19が配設されている。
【0024】
図3は、ヘッド移動機構21におけるスライダ31付近の断面図である。
【0025】
図1に示すヘッド移動機構21におけるガイド部材22には、スライダ31が摺動可能に配設されている。このスライダ31には、ガイド部材22が貫通する貫通孔32が形成されている。このスライダ31には、図1に示すように、供給管群26に含まれるエア供給管を介して、エア供給源25から一定圧力のエア(気体)が供給される。このため、図3に示すように、貫通孔32の内周面とガイド部22の外周面との間にエアが噴出される。図3では、エアの噴出方向を符号A1を付す矢印にて示している。これにより、スライダ31がガイド部22に非接触状態にて係合しつつ、主走査方向に移動可能に支持される。
【0026】
図1を参照して、ガイド部22の両端部付近には、Z軸方向を向く軸を中心に回転可能な一対のプーリ33が配設されている。この一対のプーリ33には、無端状の同期ベルト34が巻回されている。スライダ31の一端は、この同期ベルト34に固定されている。一方、スライダ31の他端には、上述した塗布ヘッド20が固定されている。このため、図示しないモータの駆動により同期ベルト34を時計回りあるいは反時計回りに回転させることにより、塗布ヘッド20を(−X)方向または(+X)方向に往復移動させることができる。このとき、上述した気体の作用により、スライダ31をガイド部22に対して非接触状態で支持することができるので、塗布ヘッド20の往復移動を、高速かつ滑らかなものとすることが可能となる。
【0027】
この塗布液塗布装置においては、このヘッド移動機構21が、塗布ヘッド20を主走査方向に移動させる主走査方向移動機構となり、基板移動機構11が、基板保持部10を副走査方向に移動させる副走査方向移動機構となる。この塗布液塗布装置においては、塗布ヘッド20の主走査方向への移動が完了する毎に、ガラス基板100を副走査方向に移動させることにより、ガラス基板100の表面の塗布領域に対して塗布液の塗布を実行する。なお、塗布ヘッド20の主走査時には、受液部17、18の近傍にて加速または減速が完了し、ガラス基板100の上方においては、塗布ヘッド20は、例えば、毎秒3〜5m程度の一定速度で移動する。
【0028】
また、この塗布液塗布装置においては、試験塗布ステージ部16に試験的に塗布された塗布軌跡を利用して、後述するノズル23のピッチを調整するとともに、必要に応じて塗布ヘッド20の送り制御を調整する構成が採用されている。また、この塗布液塗布装置においては、試験塗布ステージ部16に試験的に塗布された塗布軌跡を利用して、塗布液の流量を調整する構成が採用されている。
【0029】
図4は、ノズル23のピッチを調整し、あるいは、塗布液の流量を調整するための塗布軌跡の試験的な塗布に使用される左右一対の試験塗布ステージ部16のうちの一方を側面から見た断面図であり、図5は、その正面から見た断面図である。なお、図4においては、樹脂テープ41を一部省略して図示している。
【0030】
この試験塗布ステージ部16は、塗布ヘッド20により樹脂テープ41上に塗布液を試験的に塗布して塗布軌跡を形成し、この塗布軌跡を撮像部15により撮影するものである。この試験塗布ステージ部16は、図4および図5に示すように、基板移動機構11のレール12に摺動可能に取り付けられるスライダ42と、このスライダ42上に固定されたハウジング43とを備える。
【0031】
このハウジング43内には、新しい樹脂テープ41を供給する巻き出しローラ44と、塗布液が塗布された樹脂テープ41を巻き取る巻き取りローラ45と、これらの巻き出しローラ44および巻き取りローラ45の間において、試験塗布が実行される樹脂テープ41を保持するテープ保持部46とが配設される。図4に示すように、巻き取りローラ45は、モータ52の駆動により回転するウォームギア51に連結されている。このため、モータ52の駆動により、樹脂テープ41は巻き出しローラ44から巻き出され、巻き取りローラ45に巻き取られる。
【0032】
図4に示すように、巻き取りローラ45に巻き取られた樹脂テープ41の量は、センサ48により検出される。また、巻き出しローラ44から巻き出される樹脂テープ41の終端は、センサ47により検出される。
【0033】
この試験塗布ステージ部16におけるテープ保持部46に保持された樹脂テープ41には、塗布ヘッド20により塗布液が塗布され、塗布軌跡が形成される。この塗布軌跡は、後述する撮像部15におけるCCDカメラ90により撮影される。使用に供された樹脂テープ41は、巻き取りローラ45により巻き取られ、回収される。なお、この樹脂テープ41は、この発明に係るテスト塗布領域に相当する。
【0034】
以上のような構成を有する塗布液塗布装置において、ガラス基板100に対して塗布液の塗布を開始する場合においては、最初に、ガラス基板100が基板保持部10に保持される。そして、撮像部15によりガラス基板100に形成されたアライメントマークを検出し、その検出結果に基づいて基板保持部10が移動および回転し、ガラス基板100が図1において実線にて示す塗布開始位置に配置される。この状態において、塗布ヘッド20における複数のノズル23から塗布液の吐出が開始されるとともに、ヘッド移動機構21により塗布ヘッド20が主走査方向に移動される。
【0035】
そして、複数のノズル23のそれぞれからガラス基板100の表面に向けて塗布液が一定の流量にて連続的に吐出されるとともに、塗布ヘッド20が主走査方向に連続的に一定の速度にて移動し、ガラス基板100の塗布領域の複数の線状領域に塗布液がストライプ状に塗布される。
【0036】
このようにして、塗布ヘッド20が図1および図2中に二点鎖線にて示す受液部18と対向する待機位置まで移動することにより、塗布液によるストライプ状のパターンが形成される。塗布ヘッド20が待機位置まで移動すると、基板移動機構11が駆動され、ガラス基板100が基板保持部10と共に副走査方向に移動する。このとき、塗布ヘッド20では、複数のノズル23から受液部18に向けて塗布液が連続的に吐出されている。
【0037】
以上のような動作を必要な塗布動作が完了するまで継続する。そして、ガラス基板100が塗布終了位置まで移動すると、複数のノズル23からの塗布液の吐出が停止され、塗布液塗布装置によるガラス基板100に対する塗布液の塗布動作が終了する。塗布が終了したガラス基板100は、他の塗布液塗布装置等に搬送され、この塗布液塗布装置により塗布された塗布液以外の他の2色の塗布液が塗布される。そして、ガラス基板100に対して所定の塗布工程が行われた後、他の部品と組み合わされて有機EL表示装置が製造される。
【0038】
図6は、この発明に係る塗布液塗布装置の主要な制御系を示すブロック図である。
【0039】
この塗布液塗布装置は、装置全体を制御する制御部60を備える。この制御部60は、上述した基板移動機構11、回転台14、ヘッド移動機構21およびノズルピッチ調整機構19と接続されている。また、この制御部60は、塗布液供給部24における流量制御バルブ70、基準流量計72、流量制御バルブ74、支管流量計75、開閉バルブ76、開閉バルブ81および校正部82と接続されている。また、この制御部60は、画像処理部35を介して上述したCCDカメラ90と接続されている。この画像処理部35は、CCDカメラ90により撮影された塗布軌跡の画像からその塗布軌跡の幅を測定する。さらに、図示は省略しているが、この制御部60は、後述する各種の動作を実行するためのRAMやROM等から構成される記憶部や、CPU等から構成される演算部を備える。この制御部60としては、一般的なパーソナルコンピュータを利用してソフトウエアにより構成してもよく、また、プリント基板等によりハードウエアによりこの制御部を構成してもよい。
【0040】
次に、塗布液供給部24の構成について説明する。図7は、塗布液供給部24の構成、および、塗布液供給部24と塗布ヘッド20における複数のノズル23との接続関係を示す模式図である。
【0041】
この発明に係る塗布液塗布装置における塗布液供給部24は、流量制御バルブ70と、塗布液貯留部71と、基準流量計72と、分岐部としてのマニホールド73と、複数個の流量制御バルブ74a、74b、74c・・・74nと、複数の支管流量計75a、75b、75c・・・75nと、複数の開閉バルブ76a、76b、76c・・・76nと、開閉バルブ81と、後述する校正部82とを備える。各開閉バルブ76a、76b、76c・・・76nは、塗布ヘッド20における複数のノズル23a、23b、23c・・・23nと、各々接続されている。
【0042】
なお、この明細書においては、必要に応じ、複数個の流量制御バルブ74a、74b、74c・・・74nを総称して流量制御バルブ74と、複数の支管流量計75a、75b、75c・・・75nを総称して支管流量計75と、複数の開閉バルブ76a、76b、76c・・・76nを総称して開閉バルブ76と、複数のノズル23a、23b、23c・・・23nを総称してノズル23と表現する。
【0043】
また、この明細書においては、塗布液貯留部71から流量制御バルブ70および基準流量計72を介してマニホールド73に至る、分岐前の管路を、本管と呼称する。また、この明細書においては、マニホールド73から各流量制御バルブ74a、74b、74c・・・74n、各支管流量計75a、75b、75c・・・75n、各開閉バルブ76a、76b、76c・・・76nを介して各ノズル23a、23b、23c・・・23nに至る、分岐後の管路を、支管と呼称する。この塗布液塗布装置には、a〜nに相当する複数の支管が存在することになる。
【0044】
塗布液貯留部71は、塗布液を貯留した可撓性の袋状容器を気密チャンバー内に収納した構成を有し、気密チャンバー内に加圧空気を供給することにより塗布液を流量制御バルブ70、基準流量計72およびマニホールド73等に向けて圧送する構成を有する。また、基準流量計72は、塗布液貯留部71から吐出されマニホールド73に流入する塗布液の流量を計測する構成を有する。この基準流量計72は、塗布液の流路に設けられた、ヒータと温度センサを利用して塗布液の流量を測定する熱式の流量計が使用される。
【0045】
各流量制御バルブ74は、図6に示す制御部60からの指令を受け、各支管を流動する塗布液の流量を調節する。また、各支管流量計75は、各支管を流動する塗布液の流量を計測する。この支管流量計75としては、基準流量計72と同様、ヒータと温度センサを利用して塗布液の流量を測定する熱式の流量計が使用される。この支管流量計75による流量の測定値は、図6に示す制御部60に送信される。これらの流量制御バルブ74および支管流量計75は、マスフローコントローラを構成する。さらに、各開閉バルブ76は、図6に示す制御部60からの指令を受け、各支管の流路を開放あるいは閉鎖する。同様に、開閉バルブ81は、図6に示す制御部60からの指令を受け、マニホールド73から校正部82に至る流路を開放あるいは閉鎖する。
【0046】
校正部82は、塗布液が貯留される容器と、塗布液が貯留された容器の重さを測定する電子天秤とを備える。この電子天秤により塗布液が貯留された容器の重さの変化量を測定することで、そこに流入した塗布液の質量を測定し、これにより、塗布液の吐出量を特定することが可能となる。
【0047】
次に、以上のような構成を有する塗布液塗布装置の動作について説明する。この塗布液塗布装置により塗布液の塗布を行う場合には、予め、塗布軌跡の幅と各ノズル23から吐出される塗布液の流量との関係を示す関係式を作成して記憶する準備工程を実行する。そして、塗布を実行する毎、あるいは、一定期間毎に、テスト塗布領域としての樹脂テープ41に対して塗布液を連続して吐出することにより形成された塗布軌跡の幅を測定する塗布軌跡測定工程を実行する。ガラス基板100への塗布液の塗布時には、各支管流量計75が計測した塗布液の流量値と、塗布軌跡測定工程で測定した塗布液の幅と、予め記憶した関係式とを利用して各流量制御バルブ74の開度を調整することにより、塗布液の塗布量を適正なものとしている。
【0048】
まず、準備工程について説明する。準備工程においては、最初に、基準流量計72の校正を行う。最初に、開閉バルブ81を開放する。このときには、塗布液貯留部71には所定圧力の加圧空気が供給されており、塗布液は流量制御バルブ70および基準流量計72を介してマニホールド73に向けて送液可能な状態となっている。また、各支管における開閉バルブ76は予め閉止されている。これにより、塗布液が塗布液貯留部71から、流量制御バルブ70、基準流量計72、マニホールド73、開閉バルブ81を介して校正部82に向けて圧送され、校正部82において容器内に貯留される。そして、塗布液が容器に吐出されるときの基準流量計72が示す流量値が取得される。また、校正部82の容器内に吐出された塗布液の重量が、電子天秤により測定される。
【0049】
そして、図6に示す制御部60により、電子天秤を利用して測定した単位時間当たりに流れた塗布液の重量と塗布液の比重とに基づいて、基準流量計72を通過した塗布液の実流量を演算する。そして、この実流量と基準流量計72が示す流量値とを比較する。しかる後、基準流量計72の示す流量値と実流量値とが一致するように、基準流量計72の調節を行う。これにより、基準流量計72が示す流量値を塗布液の実流量値に一致させることが可能となる。
【0050】
次に、複数の支管のうちの一つの支管が選択された上で、塗布液をその一つの支管にのみ供給したときに基準流量計72が示す流量値と塗布液が供給されている支管の支管流量計75が示す流量値との間の関係を示す関係式を求める。このときには、基準流量計72の校正が完了していることから、支管の支管流量計75が示す流量値と基準流量計72が示す流量値との間の関係を示す関係式は、支管の支管流量計75が示す流量値と塗布液の実際の流量との間の関係を示す第1関係式と等価なものとなる。この第1関係式を求めるときには、塗布液の流量値を変化させて何点かで測定を行う。なお、この第1関係式は、各支管毎に求められる。
【0051】
次に、各ノズル23からテスト塗布領域としての試験塗布ステージ部16における樹脂テープ41に対して塗布液を連続して吐出する。そして、その樹脂テープ41に形成された塗布軌跡をCCDカメラ90により撮影する。しかる後、画像処理部35によりその塗布軌跡の幅を測定する。
【0052】
図8は、CCDカメラ90により撮影した塗布軌跡の画像を示す模式図である。この図8においては、4個のノズル23から吐出された塗布軌跡がCCDカメラ90により撮影され、それらの幅がD1、D2、D3、D4であった場合を示している。
【0053】
そして、これらの塗布軌跡の幅と、対応する各ノズル23から試験塗布ステージ部16における樹脂テープ41に対して塗布液を連続して吐出して塗布軌跡を形成したときの各支管流量計75の流量の測定値とに基づいて、塗布軌跡の幅と支管流量計75による塗布液の流量の計測値との関係を表す第2関係式を求める。この第2関係式を求めるときには、塗布液の流量を変化させて何点かで測定を行う。なお、この第2関係式も、各支管毎に求められる。
【0054】
しかる後、上記各第1関係式と各第2関係式とに基づいて、塗布軌跡の幅と塗布液の流量との関係を示す第3関係式を求めることにより、準備工程が完了する。
【0055】
図9は、流量制御バルブ74への指令信号と塗布軌跡の幅の関係を示すグラフである。
【0056】
この図において、横軸は流量制御バルブ74への指令値(無単位)を表し、縦軸は塗布軌跡の幅(mm)を示している。流量制御バルブ74の指令値は塗布液の流量と比例関係にある。このグラフに示すように、塗布液の流量と塗布軌跡の幅とは、ほぼ比例状態となることが理解できる。
【0057】
ガラス基板100への塗布液の塗布を行う場合には、塗布を実行する毎、あるいは、一定期間毎に、樹脂テープ41に対して塗布液を連続して吐出することにより形成された塗布軌跡の幅を測定する塗布軌跡測定工程を実行する。
【0058】
この場合には、上述した準備工程と同様、各ノズル23から試験塗布ステージ部16における樹脂テープ41に対して塗布液を連続して吐出する。そして、その樹脂テープ41に形成された塗布軌跡をCCDカメラ90により撮影する。しかる後、画像処理部35によりその塗布軌跡の幅を測定する。これにより、その時点の塗布軌跡の幅と支管流量計75による塗布液の流量の計測値との関係を、各支管毎に特定することが可能となる。これは、この時点の支管流量計75の校正動作に相当するものとなる。
【0059】
なお、このときCCDカメラ90により測定された塗布軌跡を、ノズルピッチ調整機構19による複数のノズル23のピッチ調整に利用してもよい。
【0060】
実際のガラス基板100への塗布液の塗布時には、各支管流量計75が計測した塗布液の流量値と、塗布軌跡測定工程で測定した塗布液の幅と、予め記憶した第3関係式とを利用して各流量制御バルブ74の開度を調整する。
【0061】
すなわち、先の第3関係式により塗布軌跡の幅と塗布液の流量との関係が特定され、塗布軌跡測定工程により、その時点での塗布軌跡の幅と支管流量計75による塗布液の流量の計測値の関係が特定されることから、これらの情報に基づいて、その時点での塗布液の流量と支管流量計75による塗布液の流量の計測値との関係を求めることができる。そして、この情報に基づいて各流量制御バルブ74の開度を補正することにより、塗布液の流量を適正な値に調整することが可能となる。
【0062】
なお、上述した実施形態においては、CCDカメラ90により測定した塗布軌跡の幅に基づいて塗布液の吐出量を求めているが、塗布軌跡の断面形状に基づいて塗布液の吐出量を求めるようにしてもよい。この場合には、塗布軌跡を白色干渉計で測定したり、塗布液を乾燥させた後の塗布軌跡をプローブにより接触して測定することにより、塗布軌跡の断面形状を測定し、これに基づいて塗布液の吐出量をより正確に測定することができる。但し、塗布軌跡における塗布液の厚みが幅にかかわらず一定である場合には、塗布液の幅を測定することにより、塗布液の吐出量をより簡易に求めることが可能となる。
【符号の説明】
【0063】
10 基板保持部
11 基板移動機構
12 レール
13 基台
14 回転台
15 撮像部
16 試験塗布ステージ部
17 受液部
18 受液部
19 ノズルピッチ調整機構
20 塗布ヘッド
21 ヘッド移動機構
22 ガイド部
23 ノズル
24 塗布液供給部
25 エア供給源
31 スライダ
32 貫通孔
33 プーリ
34 同期ベルト
35 画像処理部
42 スライダ
43 ハウジング
41 樹脂テープ
44 巻き出しローラ
45 巻き取りローラ
70 流量制御バルブ
71 塗布液貯留部
72 基準流量計
73 マニホールド
74 流量制御バルブ
75 支管流量計
76 開閉バルブ
81 開閉バルブ
82 校正部
60 制御部
90 CCDカメラ
100 ガラス基板


【特許請求の範囲】
【請求項1】
塗布液を貯留する塗布液貯留部と、前記塗布液を吐出する複数のノズルと、前記塗布液貯留部から本管を介して供給される塗布液を前記ノズルに接続される複数の支管に分流する分岐部と、前記支管に各々配設され当該各支管を流動する塗布液の流量を計測する複数の支管流量計と、前記支管に各々配設され当該各支管を流動する塗布液の流量を調節する複数の流量制御バルブと、を備えた塗布液塗布装置であって、
前記複数のノズルからテスト塗布領域に対して塗布液を連続して吐出することにより形成された塗布軌跡の幅または断面形状と、前記ノズルから吐出される塗布液の流量との関係を示す関係式を記憶する記憶手段と、
前記ノズルからテスト塗布領域に対して塗布液を連続して吐出することにより形成された塗布軌跡の幅または断面形状を測定する塗布軌跡測定手段と、
基板に対する塗布液の塗布時に、前記記憶手段に記憶した関係式と、前記支管流量計が計測した塗布液の流量値と、前記塗布軌跡測定手段が測定した塗布軌跡の幅または断面形状とに基づいて、前記流量制御バルブの開度を制御する制御部と、
を備えたことを特徴とする塗布液塗布装置。
【請求項2】
請求項1に記載の塗布液塗布装置において、
前記塗布軌跡測定手段は、前記塗布軌跡を撮影するカメラと、前記カメラにより撮影した塗布軌跡の画像から当該塗布軌跡の幅を測定する画像処理部とを備える塗布液塗布装置。
【請求項3】
請求項2に記載の塗布液塗布装置において、
前記カメラは、複数のノズルから吐出された複数の塗布軌跡を一括して撮影する塗布液塗布装置。
【請求項4】
塗布液を貯留する塗布液貯留部と、前記塗布液を吐出する複数のノズルと、前記塗布液貯留部から本管を介して供給される塗布液を前記ノズルに接続される複数の支管に分流する分岐部と、前記支管に各々配設され当該各支管を流動する塗布液の流量を計測する複数の支管流量計と、前記支管に各々配設され当該各支管を流動する塗布液の流量を調節する複数の流量制御バルブとを備え、基板に塗布液を塗布する塗布液塗布装置における塗布液塗布方法であって、
前記複数のノズルから塗布液を連続して吐出するとともに、そのときの前記支管流量計による塗布液の流量の測定値と、ノズルから吐出された塗布液の重量とから、前記支管流量計による塗布液の流量の計測値と塗布液の実際の流量との関係を示す第1関係式を求め、
前記複数のノズルからテスト塗布領域に対して塗布液を連続して吐出することにより形成された塗布軌跡の幅または断面形状と、そのときの前記支管流量計による塗布液の流量の測定値とから、塗布軌跡の幅または断面形状と前記支管流量計による塗布液の流量の計測値との関係を表す第2関係式を求め、
前記第1関係式および前記第2関係式から、塗布軌跡の幅または断面形状と塗布液の流量との関係を示す第3関係式を求める準備工程と、
基板に塗布液を塗布するに先だって、前記ノズルからテスト塗布領域に対して塗布液を連続して吐出して塗布軌跡を形成するとともに、このテスト塗布領域に形成された塗布軌跡の幅または断面形状を測定する塗布軌跡測定工程と、
基板に塗布液を塗布するときに、前記準備工程で求めた第3関係式と、前記塗布軌跡測定工程で測定した塗布軌跡の幅または断面形状と、前記支管流量計による塗布液の流量の測定値とに基づいて、前記各流量制御バルブの開度を制御する塗布工程と、
を備えたことを特徴とする塗布液塗布方法。


【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【図6】
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【図7】
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【図8】
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【図9】
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【公開番号】特開2013−43136(P2013−43136A)
【公開日】平成25年3月4日(2013.3.4)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2011−183417(P2011−183417)
【出願日】平成23年8月25日(2011.8.25)
【出願人】(000207551)大日本スクリーン製造株式会社 (2,640)
【Fターム(参考)】