説明

塩基発生剤及び当該塩基発生剤を含有する感光性樹脂組成物

【課題】発生する塩基の強度が高く、エポキシ系化合物等に適用した場合には、塩基発生
反応が連鎖的に行われ、反応効率に優れる塩基発生剤及び当該塩基発生剤を含有する感光
性樹脂組成物を提供すること。
【解決手段】本発明の塩基発生剤は、ケトプロフェンと、アミジン類あるいはイミダゾール類からなる化合物であり、光によって脱炭酸し、その結果、遊離の塩基を生成する。本発明の塩基発生剤は、塩基性が高く、反応効率が優れることになり、塩基発生剤から発生する塩基とエポキシ系化合物等との反応が連鎖的に進行し、室温レベルでも硬化が速やかに実施されて硬化が十分になされる感光性樹脂組成物となる。かかる効果を奏する本発明の感光性樹脂組成物は、例えば、高感度の光硬化材料やレジスト材料等に好適に用いることができる。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、塩基発生剤及び当該塩基発生剤を含有する感光性樹脂組成物に関する。さらに詳しくは、光等の活性エネルギー線によって塩基を発生する塩基発生剤及び当該塩基発生剤を含有する感光性樹脂組成物に関する。
【背景技術】
【0002】
光の照射によって酸を発生する酸発生剤を含有する感光性樹脂組成物が、フォトレジスト材料や光硬化材料等として適用されている。酸発生剤から発生した酸は、触媒や重合開始剤として作用し、また、酸発生剤等を含有した感光性樹脂組成物をフォトレジスト材料として用いてパターンを形成する場合には、例えば酸発生剤に光を照射して触媒等となる強酸を発生させ、樹脂成分を化学変性させる。そして、化学変性された樹脂成分の溶解性の変化により、パターンを形成するようにする。
【0003】
かかるフォトレジスト材料は、解像度及び感度が高いこと、さらには耐エッチング性が高いパターンを形成し得ることが求められており、特に、深紫外線レジスト材料として、酸素プラズマエッチングに耐性を持つパターンを形成し得る材料が求められている。酸発生剤を含有する感光性樹脂組成物からなるフォトレジスト材料は、高感度・高解像性等を目指して、種々のものが提供されているが、光酸発生剤と樹脂材料の組み合わせの種類はある程度限定されてしまうため、酸発生剤を使用しない新たな感光システムが求められていた。
【0004】
加えて、モノマー、オリゴマー、あるいはポリマーの光硬化速度を向上させるために様々な検討がなされており、光の作用で発生するラジカル種を開始剤として、多数のビニルモノマーを重合させるラジカル光重合系の材料が広く開発の対象とされてきた。また、光の作用で酸を発生させ、この酸を触媒とするカチオン重合系の材料も盛んに研究されていた。しかしながら、ラジカル光重合系の材料の場合には、空気中の酸素によって重合反応が阻害され硬化反応が抑制されるので、酸素遮断のための特別な工夫が必要とされていた。また、カチオン重合系の材料の場合には、ラジカル光重合系の材料のような酸素阻害がない一方、光酸発生剤から発生した強酸が硬化後も残存するために、当該強酸の存在を原因とする腐食性や樹脂の変性の可能性が問題とされていた。
【0005】
このような背景から、解像度及び感度が高く、耐エッチング性が高いパターンを形成できるレジスト材料を得るために、また、活性エネルギー線を利用して液状物を迅速に固化させる硬化技術をいっそう高性能化するために、空気中の酸素による阻害効果を受けず、生成する強酸のような腐食性物質を含まず高効率で反応が進行する、新たな感光システムを用いた感光性樹脂組成物が強く望まれていた。
【0006】
前記の問題を克服する手段の1つとして、塩基触媒による重合反応や化学反応を用いる方法、例えば、光の作用によって塩基を発生させ、これを触媒として樹脂を化学変性させる方法を用いて、光によって発生する塩基を触媒とする感光性樹脂組成物をフォトレジスト材料や光硬化材料等へ応用する手段が検討されている。そして、エポキシ基を有する化合物は塩基の作用によって架橋反応を起こして硬化することを利用して、光や熱の作用で開始剤あるいは触媒としてのアミン類をエポキシ樹脂層内で発生させ、次いで加熱処理によって硬化させる方法が提供されている(例えば、特許文献1及び特許文献2を参照。)。
【0007】
【特許文献1】特開2005−264156号公報
【特許文献2】特開2007−101685号公報
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0008】
しかしながら、従来提供されている方法にあっては、発生することができる塩基の強度に制限があることや、光の作用で塩基を発生する反応が迅速に行われない等の問題があるため実用性に乏しく、改善が求められていた。
【0009】
本発明は、前記の課題に鑑みてなされたものであり、例えば、エポキシ系化合物等の架橋反応に用いることができ、発生する塩基の強度が高く、エポキシ系化合物等に適用した場合には、塩基発生反応が連鎖的に行われ、反応効率に優れる塩基発生剤及び当該塩基発生剤を含有する感光性樹脂組成物を提供することにある。
【課題を解決するための手段】
【0010】
前記の課題を解決するために、本発明の請求項1に係る塩基発生剤は、下記式(I)で表されることを特徴とする。
【0011】
【化1】

(式(I)中、nは1〜3の整数を示す。)
【0012】
本発明の請求項2に係る塩基発生剤は、下記式(II)で表されることを特徴とする。
【0013】
【化2】

(式(II)中、Rはそれぞれ、独立して水素原子、炭素数が1〜4のアルキル基(S等のヘテロ原子を含んでもよい。)、またはフェニル基、を示す。)
【0014】
本発明の請求項3に係る感光性樹脂組成物は、前記請求項1または請求項2に記載の塩基発生剤と、塩基反応性化合物とを含有することを特徴とする。
【0015】
本発明の請求項4に係る感光性樹脂組成物は、前記請求項3において、前記塩基反応性化合物がエポキシ系化合物及び/またはケイ素系化合物であることを特徴とする。
【発明の効果】
【0016】
本発明の請求項1及び請求項2に係る塩基発生剤は、2−(1−カルボキシエチル)ベンゾフェノン(ケトプロフェンとも呼ばれる。)とアミジン類あるいはイミダゾール類からなる化合物であり、光によって脱炭酸し、その結果、遊離のアミジンないしはイミダゾールを生成するため塩基性が高く(酸解離定数(pKa)が12〜13程度)、反応効率に優れ、塩基反応性化合物とともに感光性樹脂組成物を構成した場合にあっては、エポキシ系化合物等の塩基反応性化合物との反応は連鎖的に進行して、当該化合物との反応効率が格段に高い塩基発生剤となる。
【0017】
本発明の請求項3に係る感光性樹脂組成物は、前記した本発明の塩基発生剤と、塩基反応性化合物とを含有するので、塩基発生剤から発生する塩基とエポキシ系化合物等との反応が連鎖的に進行し、優れた反応効率を備えるため、室温レベルでも硬化が速やかに実施され、硬化が十分になされる感光性樹脂組成物となる。かかる効果を奏する本発明の感光性樹脂組成物は、例えば、高感度の光硬化材料やレジスト材料等に好適に用いることができる。
【0018】
本発明の請求項4に係る感光性樹脂組成物は、当該樹脂組成物を構成する塩基反応性化合物としてエポキシ系化合物あるいはケイ素系化合物を採用しているので、硬化が効率よく実施され、特に、重合性エポキシ系化合物あるいは重合性ケイ素系化合物を採用した場合にあっては、エポキシ基の開環重合、またはシラノール基またはアルコキシシリル基の縮重合によるポリマーを好適に提供することができる。また、エポキシ系化合物等は汎用材料であるため、コスト的にも有利である。
【発明を実施するための最良の形態】
【0019】
以下、本発明の一態様を説明する。本発明の塩基発生剤は、下記式(I)または下記式(II)で表される化合物である。なお、式(I)中、nは1、2または3を示し、式(II)中、Rはそれぞれ、独立して水素原子、炭素数が1〜4のアルキル基(S等のヘテロ原子を含んでもよい。)、またはフェニル基、を示す。
【0020】
【化3】

【0021】
【化4】

【0022】
これら式(I)または式(II)で表される塩基発生剤は、光によって脱炭酸し、その結果、遊離のアミジン類ないしはイミダゾール類といった塩基を生成する。スキームで示すと以下のスキーム1及びスキーム2のとおりである。
【0023】
(スキーム1)
【化5】

【0024】
(スキーム2)
【化6】

【0025】
本発明の塩基発生剤を製造するには、下記式(III)で表される2−(1−カルボキシエチル)ベンゾフェノン(いわゆるケトプロフェン)と、発生させたいアミジン類あるいはイミダゾール類を混合することにより簡便に製造することができる。
【0026】
【化7】

【0027】
式(I)に表される本発明の塩基発生剤を得るために、使用することができるアミジン類としては、例えば、アミジン構造を有するジアザビシクロノネン(DBN)や、ジアザビシクロウンデセン(DBU)等が挙げられる。かかるDBN及びDBUをアミジン類として用いた本発明の感光性樹脂組成物を下記式(I−a)及び式(I−b)に示す。
【0028】
【化8】

【0029】
【化9】

【0030】
また、式(II)に表される本発明の塩基発生剤を得るために、使用することができるイミダゾール類としては、例えば、イミダゾール、1−メチルイミダゾール、2−メチルイミダゾール、2−フェニルイミダゾール、3−(4,5−ジヒドロ−2−イミダゾイル)ピリジン、2−ベンジルイミダゾール、4−(4,5−ジヒドロ−1H−イミダゾール−2−イル)フェニルアミン、3A,4,5,6,7,7A−ヘキサヒドロ−1H−ベンズイミダゾール−2−イル メチルスルフィド、2−(4−ブロモフェニル)4,5−ジヒドロ−1H−イミダゾール、1−[3−(トリエトキシシリル)プロピル]−4,5−ジヒドロ−1H−イミダゾール、DL−イソアマリン等が挙げられる(なお、前記したイミダゾール類に存在する炭素数が1〜4のアルキル基には、S等のヘテロ原子を含んでもよい。)。また、かかる1−メチルイミダゾール及び2−メチルイミダゾールをイミダゾール類として用いた本発明の感光性樹脂組成物を下記式(II−a)及び式(II−b)に示す。
【0031】
【化10】

【0032】
【化11】

【0033】
本発明の塩基発生剤は、前記した式(I)または式(II)で表される化合物であるが、当該化合物を構成する塩基としてアミジン類あるいはイミダゾール類を用いており、酸解離定数(pKa)が12〜13程度(従来は3級アミンでも8〜9程度)となり非常に塩基性が高く、重合時の反応効率が高い、優れた塩基発生剤として作用する。例えば、エポキシ系化合物等に適用した場合には、後記するスキーム5等に示すように、塩基が水からプロトンを奪って、水酸化物イオンを発生し、これがエポキシ化合物の連鎖的な重合反応を開始することになるが、水酸化物イオンの発生量は塩基の強度に依存するため、塩基強度が高いほど重合反応効率も高くなる。さらに、例えば、後記するNo.2−1〜No.2−6は電子吸引性基のα位のプロトンが引き抜かれβ脱離を引き起こし、極性変換が起こる高分子化合物であるが、この時のプロトン引き抜き効率も塩基強度に依存するため、塩基強度が大きいほど脱離反応は起こりやすく、本発明の塩基発生剤を含有した感光性樹脂組成物が、感度の高い感光性樹脂として機能することが期待できる。
【0034】
なお、本発明の塩基発生剤、及び当該塩基発生剤を含有した感光性樹脂組成物における照射光の波長及び露光量の範囲は、塩基発生剤の種類や量、及び感光性樹脂組成物を構成する塩基反応性化合物の種類等に応じて適宜決定すればよいが、例えば、波長として250〜320nm、露光量として100〜1000mJ/cmの範囲内から選択して適用すればよい。
【0035】
次に、本発明の感光性樹脂組成物を説明する。本発明の感光性樹脂組成物は、光によって脱炭酸して、遊離の塩基を発生する本発明の塩基発生剤と、塩基反応性化合物を必須成分として含有する。本発明の感光性樹脂組成物を構成する塩基反応性化合物は、塩基発生剤及び必要により含有する塩基増殖剤により発生した塩基の作用により反応して、架橋等により硬化する化合物であり、例えば、下記No.2−1〜No.5−5の化合物等を使用することができ、特に、例えば、少なくとも1つのエポキシ基を有するエポキシ系化合物、少なくとも1つのアルコキシシリル基やシラノール基等を有しているケイ素系化合物等が挙げられる。かかる塩基反応性化合物は、1種類を単独で用いるようにしてもよく、また、2種類以上を組み合わせて使用するようにしてもよい。また、本発明の塩基発生剤も、1種類を単独で用いるようにしてもよく、また、2種類以上を組み合わせて使用するようにしてもよい。
【0036】
以下、本発明の塩基発生剤を適用した場合のエポキシ系化合物との反応挙動を説明する。なお、下記のスキームにあっては、塩基として便宜的にアミンを用いて説明するものとし、また、R及びR’は、例えば炭素数が1〜12のアルキル基を示すが、特にそれらには限定されない。
【0037】
まず、1級や2級のアミン系では、下記に示したスキーム3のように、例えば、塩基発生剤による1級アミンがエポキシ基に付加すると、中間体1となるが、Hとして脱離可能な水素が窒素原子上に2つあるため、このうち1つのHを失って2へと変化する。一方、変化した2は2級アミンの構造をしているので、もう一度、別のエポキシ系化合物と反応することが可能となり3を生成することになるが、生成した3は3級アミンの構造をしているが、立体的にエポキシ系化合物と反応することはできない。また、反応は逐次的な付加反応として進行するため、エポキシ系化合物が十分に硬化しない場合が多い。
【0038】
(スキーム3)
【化12】

【0039】
一方、3級アミン系や本発明の塩基発生剤のようなアミジン系、イミダゾール系にあっては、3級アミンやアミジン、イミダゾール等の塩基が直接付加する場合と、塩基と水からOHが生成し、これがエポキシと反応する場合の2種類が考えられる。塩基が直接付加する場合は、下記に示したスキーム4のように、まず化合物4が生成するが、この場合、窒素原子上には水素が存在しないので、酸素原子上の電荷は消失せず、次のエポキシ系化合物と反応し5を生成することになる。このようにしてエポキシ系化合物との反応は連鎖的に進行するので、1級,2級アミン系のような付加反応機能に比べてエポキシ系化合物との反応効率が格段に高い。
【0040】
(スキーム4)
【化13】

【0041】
一方、塩基と水からOHが生成し、これがエポキシと反応する場合は、下記に示したスキーム5のように、生成したOHから6が生成するが、この場合も、酸素原子上の電荷は消失せず、次のエポキシ系化合物と反応し7を生成することになる。従って、前記したスキームと同様にエポキシ系化合物との反応は連鎖的に進行し、エポキシ系化合物との反応効率が格段に高くなる。
【0042】
(スキーム5)
【化14】

【0043】
以下、塩基反応性化合物の具体例を挙げる。なお、下記No.2−1〜No.2−6の高分子化号物(塩基反応性化合物)のうち、No.2−1〜No.2−4の高分子化合物は、塩基の作用により脱離及び脱炭酸の反応を生じる。一方、No.2−5及びNo.2−6の塩基反応性化合物は、塩基の作用により脱離反応を引き起こし、カルボン酸を生じる。
【0044】
【化15】

【0045】
なお、前記した塩基反応性化合物No.2−1〜No.2−6は、いずれも塩基の作用で脱離反応を起こし、極性が変換されるポリマー群であり、分解前後で溶解性が変化することを利用してパターニングを行う材料(レジスト材料)等として適用することができる。分解機構例のスキームを下記スキーム6に示す。
【0046】
(スキーム6)
【化16】

【0047】
また、塩基反応性化合物の他の例を挙げる。なお、下記No.3−1〜No.3−4の塩基反応性化合物のうち、No.3−1の物質(混合物)は塩基の作用により脱水縮合及び架橋の反応を生じる。No.3−2の物質(混合物)は塩基の作用により脱水縮合及び架橋の反応を生じる。No.3−3の物質(ポリマー)は塩基の作用により脱炭酸の反応を生じる。No.3−4の物質は塩基の作用によりイミド形成の反応を生じる。なお、No.3−1及びNo.3−2において、xは0を超えて1以下の数を示す。
【0048】
【化17】

【0049】
本発明の感光性樹脂組成物を構成する塩基反応性化合物は、少なくとも1つのエポキシ基を有するエポキシ系化合物を使用することができる。また、少なくとも2つのエポキシ基を有するエポキシ系化合物に塩基を作用させることによって、エポキシ系化合物をエポキシ基の開環重合によりポリマーとすることができる。また、エポキシ系化合物に塩基を付加することにより、かかるエポキシ系化合物を化学変性することができる。重合反応性を示すエポキシ系化合物の一例を以下に示す。
【0050】
【化18】

【0051】
また、重合反応性を示すエポキシ系化合物(ポリマー)のその他の例を以下に示す。
【0052】
【化19】

【0053】
また、塩基反応性化合物としては、少なくとも1つのシラノール基またはアルコキシシリル基を有するケイ素系化合物を使用することができる。また、少なくとも2つのシラノール基またはアルコキシシリル基を有するケイ素系化合物に塩基を作用させることによって、かかるケイ素系化合物をシラノール基またはアルコキシシリル基の縮重合によりポリマーとすることができる。重合反応性を示すケイ素系化合物(No.5−2〜No.5−4はポリマー)の具体例を以下に示す。
【0054】
【化20】

【0055】
本発明の感光性樹脂組成物における塩基発生剤の含有量は、塩基反応性化合物100質量部に対して1〜60質量部とすることが好ましい。塩基発生剤の含有量が1質量部より少ないと、塩基反応性化合物を迅速に反応させることができなくなる場合がある一方、塩基発生剤の含有量が60質量部を超えると、塩基発生剤の存在が塩基反応性化合物の溶媒に対する溶解性に悪影響を与える場合があり、また、過剰量の塩基発生剤の存在はコスト高に繋がることになる。塩基発生剤の含有量は、塩基反応性化合物100質量部に対して2〜30質量部とすることがさらに好ましく、2〜20質量部とすることがより好ましく、2〜15質量部とすることが特に好ましい。
【0056】
本発明の感光性樹脂組成物は、塩基反応性化合物として、前記したNo.4−1〜No.4−12等の重合反応性を示すエポキシ系化合物(重合性エポキシ系化合物)、あるいは前記したNo.5−1〜No.5−5等の重合反応性を示すケイ素系化合物(重合性ケイ素系化合物)とすることが好ましい。このような感光性樹脂組成物は、光または熱の作用により、重合し、重合体を与えることとなる。中でも、光により重合反応を開始する塩基反応性化合物を含む感光性樹脂組成物とすることが好ましい。
【0057】
このような感光性樹脂組成物を用いてパターンを形成するには、例えば、当該樹脂組成物を有機溶媒に溶解して塗布液を調製し、調製された塗布液を基板等の適当な固体表面に塗布し、乾燥して塗膜を形成するようにする。そして、形成された塗膜に対して、パターン露光を行って塩基を発生させた後、所定の条件で加熱処理を行って、感光性樹脂組成物に含有される塩基反応性化合物の重合反応を促すようにする。
【0058】
本発明の感光性樹脂組成物は、本発明の塩基発生剤を含有するため、室温でも重合反応は進行するが、重合反応を効率よく進行させるべく、加熱処理を施すことが好ましい。加熱処理の条件は、露光エネルギー、使用する塩基発生剤から発生する塩基の種類、エポキシ系化合物またはケイ素系化合物等の塩基反応性化合物の種類によって適宜決定すればよいが、加熱温度は50℃〜150℃の範囲内とすることが好ましく、60℃〜130℃の範囲内とすることが特に好ましい。また、加熱時間は10秒〜60分とすることが好ましく、60秒〜30分とすることが特に好ましい。これを露光部と未露光部とで溶解度に差を生じる溶媒中に浸漬して現像を行ってパターンを得ることができる。
【0059】
本発明の感光性樹脂組成物には、必要により、塩基の作用で増殖的に塩基を発生する塩基増殖剤を含有させることが好ましい。本発明の感光性樹脂組成物に塩基増殖剤を含有させることにより、当該樹脂組成物の感度をさらに向上させることができる。特に、光が樹脂膜深部に到達しない場合(感光層が厚い場合や多量の染料や顔料を含む場合等。)には、表面層で光化学的に発生した塩基の作用、及び塩基増殖剤による塩基増殖反応が開始されることにより、熱化学的に、かつ連鎖的に塩基が生成するので、膜深部の塩基触媒反応を起こすことが期待できる。使用できる塩基増殖剤としては、特に制限はないが、例えば、特開2000−330270号公報、特開2002−128750号公報や、K.Arimitsu、M.Miyamoto and K.Ichimura,Angew.Chem.Int.Ed.,39,3425(2000)、等に開示される塩基増殖剤が挙げられる。塩基増殖剤の添加量は、使用する塩基発生剤や塩基反応性化合物等により適宜決定すればよいが、感光性樹脂組成物全体に対して1〜40質量%の範囲であることが好ましく、5〜20質量%の範囲内であることが特に好ましい。
【0060】
本発明の感光性樹脂組成物は、感光波長領域を拡大し、感度を高めるべく、増感剤を添加することができる。使用できる増感剤としては、特に限定はないが、例えば、ベンゾフェノン、p,p’−テトラメチルジアミノベンゾフェノン、p,p’−テトラエチルアミノベンゾフェノン、2−クロロチオキサントン、アントロン、9−エトキシアントラセン、アントラセン、ピレン、ペリレン、フェノチアジン、ベンジル、アクリジンオレンジ、ベンゾフラビン、セトフラビン−T、9,10−ジフェニルアントラセン、9−フルオレノン、アセトフェノン、フェナントレン、2−ニトロフルオレン、5−ニトロアセナフテン、ベンゾキノン、2−クロロ−4−ニトロアニリン、N−アセチル−p−ニトロアニリン、p−ニトロアニリン、N−アセチル−4−ニトロ−1−ナフチルアミン、ピクラミド、アントラキノン、2−エチルアントラキノン、2−tert−ブチルアントラキノン、1,2−ベンズアントラキノン、3−メチル−1,3−ジアザ−1,9−ベンズアンスロン、ジベンザルアセトン、1,2−ナフトキノン、3,3’−カルボニル−ビス(5,7−ジメトキシカルボニルクマリン)またはコロネン等が挙げられる。これらの増感剤は、1種類を単独で用いるようにしてもよく、また、2種類以上を組み合わせて使用するようにしてもよい。
【0061】
本発明の感光性樹脂組成物において、増感剤の添加量は、使用する塩基発生剤や塩基反応性化合物、及び必要とされる感度等により適宜決定すればよいが、感光性樹脂組成物全体に対して1〜30質量%の範囲であることが好ましい。増感剤が1質量%より少ないと、感度が十分に高められないことがある一方、増感剤が30質量%を超えると、感度を高めるのに過剰となることがある。増感剤の添加量は、感光性樹脂組成物全体に対して5〜20質量%の範囲であることが特に好ましい。
【0062】
本発明の感光性樹脂組成物を所定の基材に塗布等する場合にあっては、必要により、溶媒を適宜含有するようにしてもよい。感光性樹脂組成物に溶媒を含有させることにより、塗布能力を高めることができ、作業性が良好となる。溶媒としては、特に限定はないが、例えば、ベンゼン、キシレン、トルエン、エチルベンゼン、スチレン、トリメチルベンゼン、ジエチルベンゼン等の芳香族炭化水素化合物;シクロヘキサン、シクロヘキセン、ジペンテン、n−ペンタン、イソペンタン、n−ヘキサン、イソヘキサン、n−ヘプタン、イソヘプタン、n−オクタン、イソオクタン、n−ノナン、イソノナン、n−デカン、イソデカン、テトラヒドロナフタレン、スクワラン等の飽和または不飽和炭化水素化合物;ジエチルエーテル、ジ−n−プロピルエーテル、ジ−イソプロピルエーテル、ジブチルエーテル、エチルプロピルエーテル、ジフェニルエーテル、ジエチレングリコールジメチルエーテル、ジエチレングリコールジエチルエーテル、ジエチレングリコールジブチルエーテル、ジエチレングリコールメチルエチルエーテル、ジプロピレングリコールジメチルエーテル、ジプロピレングリコールジエチルエーテル、ジプロピレングリコールジブチルエーテル、ジプロピレングリコールメチルエチルエーテル、エチレングリコールジメチルエーテル、エチレングリコールジエチルエーテル、エチレングリコールジプロピルエーテル、エチレングリコールメチルエチルエーテル、テトラヒドロフラン、1,4−ジオキサン、プロピレングリコールモノメチルエーテルアセテート、エチレングリコールモノエチルエーテルアセテート、ジプロピレングリコールメチルエーテルアセテート、ジエチレングリコールモノエチルエーテルアセテート、エチルシクロヘキサン、メチルシクロヘキサン、p−メンタン、o−メンタン、m−メンタン;ジプロピルエーテル、ジブチルエーテル等のエーテル類;アセトン、メチルエチルケトン、メチルイソブチルケトン、ジエチルケトン、ジプロピルケトン、メチルアミルケトン、シクロペンタノン、シクロヘキサノン、シクロヘプタノン等のケトン類;酢酸エチル、酢酸メチル、酢酸ブチル、酢酸プロピル、酢酸シクロヘキシル、酢酸メチルセロソルブ、酢酸エチルセロソルブ、酢酸ブチルセロソルブ、乳酸エチル、乳酸プロピル、乳酸ブチル、乳酸イソアミル、ステアリン酸ブチル等のエステル類等が挙げられる。これらの溶媒は、1種類を単独で用いるようにしてもよく、また、2種類以上を組み合わせて使用するようにしてもよい。
【0063】
本発明の感光性樹脂組成物において、溶媒の含有量は、例えば、所定の基材上に感光性樹脂組成物を塗布し、感光性樹脂組成物による層を形成する際に、均一に塗工されるように適宜選択すればよい。
【0064】
なお、本発明の感光性樹脂組成物には、本発明の目的及び効果を妨げない範囲において、添加剤を適宜添加するようにしてもよい。使用することができる添加剤としては、例えば、充填剤、顔料、染料、レベリング剤、消泡剤、帯電防止剤、紫外線吸収剤、pH調整剤、分散剤、分散助剤、表面改質剤、可塑剤、可塑促進剤、タレ防止剤、硬化促進剤、充填剤等が挙げられ、これらの1種類を単独で用いるようにしてもよく、2種類以上を組み合わせて使用するようにしてもよい。
【0065】
以上説明した本発明の感光性樹脂組成物は、本発明の塩基発生剤と塩基反応性化合物を含有することにより、塩基発生剤から発生する塩基とエポキシ系化合物等との反応が連鎖的に進行し、硬化速度及び反応効率に優れたものとなり、室温レベルでも硬化が速やかに実施され、硬化が十分になされる感光性樹脂組成物となる。かかる効果を奏する本発明の感光性樹脂組成物は、例えば、高感度の光硬化材料やレジスト材料(パターン形成材料)等に好適に用いることができる。
【0066】
光硬化材料として適用された成形体は、耐熱性、寸法安定性、絶縁性等の特性が有効とされる分野の部材等として、例えば、塗料または印刷インキ、カラーフィルター、フレキシブルディスプレー用フィルム、半導体装置、電子部品、層間絶縁膜、配線被覆膜、光回路、光回路部品、反射防止膜、ホログラム、光学部材または建築材料の構成部材として広く用いられ、印刷物、カラーフィルター、フレキシブルディスプレー用フィルム、半導体装置、電子部品、層間絶縁膜、配線被覆膜、光回路、光回路部品、反射防止膜、ホログラム、光学部材または建築部材等が提供される。また、形成されたパターン等は、耐熱性や絶縁性を備え、例えば、カラーフィルター、フレキシブルディスプレー用フィルム、電子部品、半導体装置、層間絶縁膜、配線被覆膜、光回路、光回路部品、反射防止膜、その他の光学部材または電子部材として有利に使用することができる。
【0067】
なお、以上説明した態様は、本発明の一態様を示したものであって、本発明は、前記した実施形態に限定されるものではなく、本発明の構成を備え、目的及び効果を達成できる範囲内での変形や改良が、本発明の内容に含まれるものであることはいうまでもない。また、本発明を実施する際における具体的な構造及び形状等は、本発明の目的及び効果を達成できる範囲内において、他の構造や形状等としても問題はない。本発明は前記した各実施形態に限定されるものではなく、本発明の目的を達成できる範囲での変形や改良は、本発明に含まれるものである。
【0068】
例えば、前記した実施形態では、本発明の塩基発生剤として、式(III)で表される2−(1−カルボキシエチル)ベンゾフェノン(ケトプロフェン)に1つのアミジン類あるいはイミダゾール類を付加した化合物を例として挙げたが、これには限定されず、本発明の塩基発生剤は、アミジン類あるいはイミダゾール類に2つのケトプロフェンが付加したものも含まれる。一例として、ジアザビシクロウンデセン(DBU)にケトプロフェンを2つ付加した化合物を下記式(I−c)に示した。
【0069】
【化21】

【0070】
また、前記した実施形態では、本発明の感光性樹脂組成物を構成する塩基反応性化合物の例として、No.2−1〜No.5−5の化合物を挙げたが、使用することができる塩基反応性化合物はこれらには限定されず、塩基の作用により反応して、架橋等により硬化する任意の化合物を使用することができる。
その他、本発明の実施の際の具体的な構造及び形状等は、本発明の目的を達成できる範囲で他の構造等としてもよい。
【実施例】
【0071】
以下、実施例に基づき本発明をさらに詳細に説明するが、本発明は、かかる実施例に何ら限定されるものではない。
【0072】
[実施例1]
塩基発生剤の製造(1):
式(III)に示したケトプロフェン3.0gを含有したエーテル溶液30mLに、アミジンであるジアザビシクロウンデセン(DBU)1.8gを直接滴下後、室温で1時間反応させた。反応終了後、溶媒留去することで、式(I−b)で表される本発明の塩基発生剤(アミジン塩)の透明粘性液体を得た。
【0073】
H−NMR(500MHz,CDCl):δ(ppm)1.52(d,3H,J=7.0Hz),1.63−1.68(m,6H),1.93(qu,2H,J=6.0Hz),2.73(t,2H,J=6.0Hz),3.37(m,6H),3.71(q,1H,J=7.0Hz),7.35−7.84(m,9H)
【0074】
[実施例2]
塩基発生剤の製造(2):
ケトプロフェン3.0gを含有したテトラヒドロフラン(THF)溶液5mLに、イミダゾールである2−メチルイミダゾール1.8gのテトラヒドロフラン(THF)溶液25mLを滴下後、室温で1時間反応させた。反応終了後、溶媒留去することで、式(II−b)で表される本発明の塩基発生剤(イミダゾール塩)の透明粘性液体を得た。
【0075】
H−NMR(500MHz,CDCl):δ(ppm)1.54(d,3H,J=7.0Hz),1.85(m,1H),2.26(s,3H),3.75(m,2H),6.76(s,2H),7.34−7.82(m,9H)
【0076】
光照射による塩基発生能の確認:
実施例1及び実施例2で得られた塩基発生剤をpH試験紙(Whatman indicator paper pH 1〜14)に数滴垂らした後(試験紙の色である黄色:pHが7〜8)、波長が254nmの光を照射したところ深緑色に変色し、pHが約12となった。以上より、実施例1及び実施例2で得られた塩基発生剤が光の照射により塩基が発生することが確認できた。
【0077】
UVスペクトル測定:
実施例1及び実施例2で得られた塩基発生剤について、溶媒としてメタノールを用いて、UVスペクトル測定を行った。結果を図1(実施例1)及び図2(実施例2)に示す。
【0078】
図1に示すように、実施例1の塩基発生剤は255nm付近に吸収極大値を持ち、モル吸光係数は12000(dm・mol−1・cm−1)であった。また、図2に示すように、実施例2の塩基発生剤は255nm付近に吸収極大値を持ち、モル吸光係数は13000(dm・mol−1cm−1)であった。
【0079】
光分解挙動の確認:
実施例1及び実施例2で得られた塩基発生剤について、下記の測定方法を用いて光分解挙動の確認を行った。結果を図3(実施例1)及び図4(実施例2)に示す。
【0080】
(測定方法)
実施例1の塩基発生剤のメタノール溶液(2.4×10−5mol/L)及び実施例2の塩基発生剤のメタノール溶液(2.0×10−5mol/L)に波長が254nmの光を照射し、紫外可視分光光度計(MultiSpec−1500/(株)島津製作所製)を用いて、0、50、200、800mJ/cmの4種類の露光量を用いて、UVスペクトルの経時変化を確認した。
【0081】
図3及び図4に示すように、実施例1及び実施例2の塩基発生剤は、光照射の露光量に伴って、237nm付近の吸収強度が増大していく様子が見られ、光分解挙動を確認することができた。なお、800mJ/cmで光分解反応は終結した。
【0082】
[実施例3]
感光性樹脂組成物の製造(1):
式(No.4−12)に表されるエポキシ系化合物であるポリグリシジルメタクリレート(PGMA、M=15000)0.1g(100質量部)に対して、実施例1で得られた塩基発生剤を0.01g(10質量部)含有させることにより、本発明の感光性樹脂組成物を得た。
【0083】
[試験例1]
光不溶化挙動の確認(1):
実施例3で得られた感光性樹脂組成物を1.0gのクロロホルムに溶解させた。この試料溶液を3000rpm、30秒間でシリコンウェハ上にスピンコートし、ホットプレートで80℃、30秒間プリベイクすることにより、厚さ1.4μmの膜を作製した。このようにして作製された膜に所定量の254nm単色光を照射し、室温、40℃または80℃で5分間ポストベイクした後、クロロホルムで30秒間現像した。そして、残っている膜の厚さを測定し、感度曲線を作成した。感度曲線を図5に示す。
【0084】
図5に示すように、実施例3に係る本発明の感光性樹脂組成物は、室温レベルであっても、光照射するにつれて、エポキシ系化合物(PGMA)の架橋反応が進行して、100mJ/cm強の露光で不溶化が始まることがわかった。一般に、1級、2級アミンを発生する系では、室温あるいは40℃の加熱で不溶化させることは不可能であり、塩基としてDBUを備えた化合物である本発明の塩基発生剤を含有する本発明の感光性樹脂組成物が、連鎖的なエポキシとの反応機構を実施して、室温でもエポキシ系化合物の硬化が進行することになることが確認できた。
【0085】
[実施例4]
感光性樹脂組成物の製造(2):
式(No.4−12)に表されるエポキシ系化合物であるポリグリシジルメタクリレート(PGMA、M=15000)0.1g(100質量部)に対して、実施例2で得られた塩基発生剤を0.005g(5質量部)含有させることにより、本発明の感光性樹脂組成物を得た。
【0086】
[試験例2]
光不溶化挙動の確認(2):
実施例4で得られた感光性樹脂組成物を1.0gのクロロホルムに溶解させた。この試料溶液を3000rpm、30秒間でシリコンウェハ上にスピンコートし、ホットプレートで80℃、30秒間プリベイクすることにより、厚さ1.2μmの膜を作製した。このようにして作製された膜に所定量の254nm単色光を照射し、室温、60℃または80℃で5分間ポストベイクした後、クロロホルムで30秒間現像した。そして、残っている膜の厚さを測定し、感度曲線を作成した。感度曲線を図6に示す。
【0087】
図6に示すように、試験例1と同様に、実施例4に係る本発明の感光性樹脂組成物は、室温レベルであっても、光照射するにつれて、エポキシポリマー(PGMA)の架橋反応が進行して、100mJ/cm強の露光で不溶化が始まることが確認できた。
【0088】
光分解挙動の確認:
ポリメチルメタクリレート(PMMA)0.1gとこれに対して実施例1で得られた塩基発生剤を0.006g(6質量%)を含むクロロホルム溶液を石英板状にスピンコートし、ホットプレートで80℃、30秒間プリベイクすることにより厚さ1.3μmの膜を作製した。かかる膜に対して波長が254nmの光を所定量照射して、紫外可視分光光度計(MultiSpec−1500/(株)島津製作所製)を用いて、0、40、60、100、200mJ/cmの5種類の露光量を用いて、膜のUVスペクトルの経時変化を確認した。結果を図7に示す。
【0089】
図7に示すように、実施例1で得られた塩基発生剤は波長が254nm光に感光し、PMMA膜中で速やかに光分解することを確認できた。
【0090】
[実施例5]
感光性樹脂組成物の製造:
式(No.4−12)に表されるエポキシ系化合物であるポリグリシルメタクリレート(PGMA、M=10000、M/M=1.8)0.1g(100質量部)に対して、実施例1で得られた塩基発生剤を0.003g(3質量部)含有(そのモノマーユニットに対して1mol%)の実施例1で得られた塩基発生剤を含有させることにより、本発明の感光性樹脂組成物を得た。
【0091】
[試験例3]
光不溶化挙動の確認(3):
実施例5で得られた感光性樹脂組成物0.103gをクロロホルムに溶解させて試料溶液とした。この試料溶液をシリコンウェハ上にスピンコートし、ホットプレートで80℃、30秒間プリベイクすることにより厚さ1.1μmの膜を作製した。この膜に対して波長254nmの単色光を所定量照射後、80、100または120℃のホットプレート上で5分間ポストベイクし、クロロホルムで30秒間現像した後の残膜率を測定して感度曲線を作成することで感度を評価した。感度曲線を図8に示す。
【0092】
PGMAは塩基触媒の存在下、加熱すると三次元架橋体を形成して不溶化する。本試験においても、実施例1で得られた塩基発生剤を含むPGMA膜に254nm光を照射し、所定温度で加熱を施したところ、露光部のみがクロロホルムに不溶となることが確認できた。これは光照射により塩基発生剤から塩基であるジアザビシクロウンデセン(DBU)が発生し、PGMAのエポキシ基の架橋反応が引き起こされたためと考えられる。
【0093】
図8に示した感度曲線において、残膜率が0.5となるのに要する露光エネルギーを感度と定義すると、加熱温度が100℃及び120℃とした場合に対するそれぞれの感度は、3000mJ/cm及び300mJ/cmとなる。このように、加熱温度を高くすることで1桁の感度向上が見られることが確認できた。
【産業上の利用可能性】
【0094】
本発明は、高感度の光硬化材料やレジスト材料(パターン形成材料)等を提供する感光性樹脂材料として有利に使用することができる。
【図面の簡単な説明】
【0095】
【図1】実施例1で得られた塩基発生剤のUVスペクトルの測定結果を示した図である。
【図2】実施例2で得られた塩基発生剤のUVスペクトルの測定結果を示した図である。
【図3】実施例1で得られた塩基発生剤の光分解挙動を示した図である。
【図4】実施例2で得られた塩基発生剤の光分解挙動を示した図である。
【図5】試験例1において、露光量と残膜率との関係を示した図である。
【図6】試験例2において、露光量と残膜率との関係を示した図である。
【図7】実施例1で得られた塩基発生剤を含むPMMA膜のUVスペクトルの測定結果を示した図である。
【図8】試験例3において、露光量と残膜率との関係を示した図である。

【特許請求の範囲】
【請求項1】
下記式(I)で表されることを特徴とする塩基発生剤。
【化1】

(式(I)中、nは1〜3の整数を示す。)
【請求項2】
下記式(II)で表されることを特徴とする塩基発生剤。
【化2】

(式(II)中、Rはそれぞれ、独立して水素原子、炭素数が1〜4のアルキル基(S等のヘテロ原子を含んでもよい。)、またはフェニル基、を示す。)
【請求項3】
前記請求項1または請求項2に記載の塩基発生剤と、塩基反応性化合物とを含有することを特徴とする感光性樹脂組成物。
【請求項4】
前記塩基反応性化合物がエポキシ系化合物及び/またはケイ素系化合物であることを特徴とする請求項3に記載の感光性樹脂組成物。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【図6】
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【図7】
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【図8】
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【公開番号】特開2009−280785(P2009−280785A)
【公開日】平成21年12月3日(2009.12.3)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2008−230324(P2008−230324)
【出願日】平成20年9月8日(2008.9.8)
【出願人】(803000115)学校法人東京理科大学 (545)
【Fターム(参考)】