増幅回路、集積回路装置及び電子機器
【課題】特性が安定し、増幅効率の良い増幅回路、集積回路装置及び電子機器等を提供すること。
【解決手段】増幅回路は、出力ノードNPに増幅信号VPを出力する増幅用トランジスター10と、インダクターLA及びキャパシターCA、CBにより構成され、インダクターのインダクタンス値及びキャパシターのキャパシタンス値の少なくとも一方が可変に設定されるLC負荷回路20と、増幅信号VPの電圧振幅を検出する振幅検出回路30と、振幅検出回路30の検出結果に基づいてインダクタンス値及びキャパシタンス値の少なくとも一方を設定し、増幅信号VPの電圧振幅値を極大値に近づける制御を行う制御回路40とを含む。
【解決手段】増幅回路は、出力ノードNPに増幅信号VPを出力する増幅用トランジスター10と、インダクターLA及びキャパシターCA、CBにより構成され、インダクターのインダクタンス値及びキャパシターのキャパシタンス値の少なくとも一方が可変に設定されるLC負荷回路20と、増幅信号VPの電圧振幅を検出する振幅検出回路30と、振幅検出回路30の検出結果に基づいてインダクタンス値及びキャパシタンス値の少なくとも一方を設定し、増幅信号VPの電圧振幅値を極大値に近づける制御を行う制御回路40とを含む。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、増幅回路、集積回路装置及び電子機器等に関する。
【背景技術】
【0002】
無線通信機器に使用される増幅回路においては、製造ばらつきや温度、電源電圧の変動などによる増幅回路の特性劣化が問題になっている。例えば増幅回路に含まれるインダクターのインダクタンス値及びキャパシターのキャパシタンス値が、製造ばらつきや温度、電源電圧の変動などにより変化すると、使用する周波数での増幅回路のゲインが低下するなどの問題がある。
【0003】
この課題に対して例えば特許文献1には、バラクター(電圧制御可変容量)により増幅回路の負荷インピーダンスを変化させる手法が開示されている。
【0004】
しかしながらこの手法では、増幅回路に含まれるLC負荷回路(LC共振回路)の共振周波数を変化させることができないため、広い範囲の周波数について増幅効率の良い増幅回路を実現することが難しいなどの課題があった。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0005】
【特許文献1】特開2003−204230号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0006】
本発明の幾つかの態様によれば、特性が安定し、増幅効率の良い増幅回路、集積回路装置及び電子機器等を提供できる。
【課題を解決するための手段】
【0007】
本発明の一態様は、入力信号を増幅する増幅用トランジスターと、インダクター及びキャパシターにより構成され、前記インダクターのインダクタンス値及び前記キャパシターのキャパシタンス値の少なくとも一方が可変に設定されるLC負荷回路と、増幅信号の電圧振幅を検出する振幅検出回路と、前記振幅検出回路の検出結果に基づいて前記インダクタンス値及び前記キャパシタンス値の少なくとも一方を設定し、前記増幅信号の電圧振幅値を極大値に近づける制御を行う制御回路とを含む増幅回路に関係する。
【0008】
本発明の一態様によれば、増幅信号の電圧振幅値を極大値に近づけるように、LC負荷回路のインダクタンス値及びキャパシタンス値の少なくとも一方を設定することができる。その結果、製造ばらつきや温度、電源電圧の変動などによる増幅回路の特性劣化を補正することができるから、特性が安定し、増幅効率の良い増幅回路を実現することができる。さらに入力信号の周波数が変化する場合でも、その変化した周波数に対して電圧振幅値を極大値に近づけることができるから、広い範囲の周波数について増幅効率の良い増幅回路を実現することが可能になる。
【0009】
また本発明の一態様では、前記キャパシターは、第1の電源ノードと制御ノードとの間に設けられる第1のキャパシターと、前記制御ノードと前記増幅用トランジスターの出力ノードとの間に設けられる第2のキャパシターとにより構成され、前記第1のキャパシターは、前記制御ノードの電圧によりキャパシタンス値が可変に設定され、前記インダクターは、前記出力ノードと第2の電源ノードとの間に設けられてもよい。
【0010】
このようにすれば、制御ノードの電圧により第1のキャパシターのキャパシタンス値を可変に設定することができるから、LC負荷回路の共振周波数を可変に設定することができる。
【0011】
また本発明の一態様では、前記増幅用トランジスターに電流を流すための可変電流源を含み、前記制御回路は、前記振幅検出回路の検出結果に基づいて、前記可変電流源の電流値を設定する制御を行ってもよい。
【0012】
このようにすれば、制御回路は、振幅検出回路の検出結果に基づいて、増幅用トランジスターに流れる電流値を設定することができる。
【0013】
また本発明の一態様では、前記制御回路は、前記振幅検出回路の検出結果に基づいて、前記増幅信号の電圧振幅値を極大値に近づける処理を行って、前記インダクタンス値及び前記キャパシタンス値の少なくとも一方を設定し、前記インダクタンス値及び前記キャパシタンス値の少なくとも一方を設定した後に、前記増幅信号の電圧振幅値をターゲット振幅値に近づける処理を行って、前記可変電流源の電流値を設定してもよい。
【0014】
このようにすれば、制御回路は、増幅信号の電圧振幅値を極大値に近づけるように、LC負荷回路のインダクタンス値及びキャパシタンス値の少なくとも一方を設定することができる。そして上記の設定後に可変電流源の電流値を設定して、増幅信号の電圧振幅値をターゲット振幅値に近づけることができる。その結果、増幅回路の用途に応じて電圧振幅値を適正な値に設定することが可能になる。
【0015】
また本発明の一態様では、前記増幅用トランジスターと前記LC負荷回路を有する第1の増幅器と、前記第1の増幅器からの信号を増幅する第2の増幅器とを含んでもよい。
【0016】
このようにすれば、第1の増幅器のLC負荷回路のインダクタンス値及びキャパシタンス値の少なくとも一方を設定することで、増幅信号の電圧振幅値を極大値に近づけることができる。また第2の増幅器の出力インピーダンスを一定に保つことができるから、安定したインピーダンス整合を得ることができ、特性が安定し、増幅効率の良い増幅回路を実現することが可能になる。
【0017】
また本発明の一態様では、前記振幅検出回路が電圧振幅を検出する前記増幅信号は、前記第1の増幅器の出力信号であってもよい。
【0018】
このようにすれば、第1の増幅器の出力信号の電圧振幅を極大値に近づけるように、第1の増幅器のLC負荷回路のインダクタンス値及びキャパシタンス値の少なくとも一方を設定することができる。
【0019】
また本発明の一態様では、前記振幅検出回路が電圧振幅を検出する前記増幅信号は、前記第2の増幅器の出力信号であってもよい。
【0020】
このようにすれば、第2の増幅器の出力信号の電圧振幅を極大値に近づけるように、第1の増幅器のLC負荷回路のインダクタンス値及びキャパシタンス値の少なくとも一方を設定することができる。
【0021】
また本発明の一態様では、前記振幅検出回路は、前記出力ノードと入力ノードとの間に設けられるAC結合キャパシターと、前記入力ノードにバイアス電圧を印加するバイアス電圧設定回路と、第2の電源ノードと検出ノードとの間に設けられ、前記入力ノードの電圧によりゲートが制御される振幅検出トランジスターと、前記検出ノードと第1の電源ノードとの間に設けられる振幅検出用電流源と、前記検出ノードと前記第1の電源ノードとの間に設けられる平滑用キャパシターと、前記検出ノードの電圧を受け、前記検出ノードの電圧のインピーダンス変換を行い、前記制御回路へ出力するインピーダンス変換回路とを含んでもよい。
【0022】
このようにすれば、検出ノードには増幅信号と振幅が等しい交流電圧が生じ、その交流電圧が平滑化されることで、増幅信号の電圧振幅に応じた電圧が検出ノードに生じる。さらに検出ノードの電圧を、インピーダンス変換回路により、低インピーダンスに変換することで、検出結果信号を出力することができる。
【0023】
また本発明の一態様では、前記バイアス電圧をVBIASとし、前記振幅検出トランジスターのしきい値電圧をVTHとした場合に、前記振幅検出回路は、前記増幅信号の電圧振幅が増加するにつれて電圧VBIAS−VTHからの変化電圧が増加する検出結果信号を出力してもよい。
【0024】
このようにすれば、検出結果の電圧と電圧VBIAS−VTHとの電圧差から増幅信号の電圧振幅値を求めることができる。
【0025】
本発明の他の態様は、上記のいずれかに記載の増幅回路を有する送信回路を含む集積回路装置に関係する。
【0026】
本発明の他の態様は、上記のいずれかに記載の増幅回路を有する受信回路を含む集積回路装置に関係する。
【0027】
本発明の他の態様は、上記のいずれかに記載の集積回路装置を含む電子機器に関係する。
【図面の簡単な説明】
【0028】
【図1】増幅回路の第1の構成例。
【図2】振幅検出回路の構成例。
【図3】図3(A)、図3(B)は、振幅検出回路の動作を説明する図。
【図4】増幅回路の第2の構成例。
【図5】振幅検出回路の別の構成例。
【図6】振幅検出回路の動作を説明する図。
【図7】図7(A)、図7(B)は、増幅信号の電圧振幅の周波数特性の一例。
【図8】L値、C値を設定する処理のフローチャートの一例。
【図9】可変電流源の電流値を設定する処理のフローチャートの一例。
【図10】集積回路装置の構成例。
【図11】電子機器の構成例。
【発明を実施するための形態】
【0029】
以下、本発明の好適な実施の形態について詳細に説明する。なお以下に説明する本実施形態は特許請求の範囲に記載された本発明の内容を不当に限定するものではなく、本実施形態で説明される構成の全てが本発明の解決手段として必須であるとは限らない。
【0030】
1.増幅回路
図1に、本実施形態の増幅回路の第1の構成例を示す。本実施形態の増幅回路は、増幅用トランジスター10、LC負荷回路20、振幅検出回路30及び制御回路40を含む。増幅用トランジスター10は、カスコード接続された2つのN型トランジスターT1、T2により構成され、入力信号を増幅する。バイアス電圧VB1、VB2は、それぞれトランジスターT1、T2のゲート電圧を適正な電圧値に設定するためのものである。
【0031】
なお、本実施形態の増幅回路は図1の構成に限定されず、その構成要素の一部を省略したり、他の構成要素に置き換えたり、他の構成要素を追加するなどの種々の変形実施が可能である。例えば、増幅用トランジスター10は、1個のトランジスターで構成してもよいし、またP型トランジスターで構成することもできる。
【0032】
LC負荷回路20は、インダクター及びキャパシターにより構成され、インダクターのインダクタンス値及びキャパシターのキャパシタンス値の少なくとも一方が可変に設定される。具体的には、LC負荷回路20は、例えばバラクター(バリキャップ、電圧制御可変容量)CA(広義には第1のキャパシター)、キャパシターCB(広義には第2のキャパシター)及びインダクター(コイル)LAを含む。
【0033】
バラクターCAは、低電位側電源ノードVSS(広義には第1の電源ノード)と制御ノードNCとの間に設けられ、制御ノードNCの電圧によりキャパシタンス値(容量値)が可変に設定される。バラクターCAのキャパシタンス値を変化させることで、LC負荷回路20の共振周波数が変化するから、LC負荷回路20の周波数特性が変化する。
【0034】
キャパシターCBは、直流成分を遮断するためのもので、制御ノードNCと増幅用トランジスター10の出力ノードNPとの間に設けられる。またインダクターLAは、出力ノードNPと高電位側電源ノードVDD(広義には第2の電源ノード)との間に設けられる。
【0035】
振幅検出回路30は、増幅信号VPの電圧振幅を検出し、検出結果として検出出力電圧VDを出力する。この振幅検出回路30の詳細な構成例については、図2で説明する。
【0036】
制御回路40は、振幅検出回路30の検出結果に基づいて、増幅信号VPの電圧振幅値を極大値に近づける処理を行って、インダクタンス値及びキャパシタンス値の少なくとも一方を設定する制御を行う。
【0037】
例えば図1では、制御回路40は、制御ノードNCに印加されるLC制御電圧VTを変化させることで、バラクターCAのキャパシタンス値を設定する。制御回路40は、A/D変換器41、論理回路42及びD/A変換器43で構成することができる。A/D変換器41はアナログデータである検出出力電圧VD(検出結果)をデジタルデータに変換し、論理回路42は変換されたデジタルデータに基づいて処理を行う。D/A変換器43は論理回路42の出力に基づいてLC制御電圧VTを生成し出力する。
【0038】
このようにすることで、増幅信号VPの電圧振幅値を極大値に近づけるように、LC負荷回路20のインダクタンス値及びキャパシタンス値の少なくとも一方を設定することができる。その結果、製造ばらつきや環境変動(例えば温度、電源電圧等の変動)による増幅回路の特性劣化を補正することができるから、特性が安定し、増幅効率の良い増幅回路を実現することができる。さらに入力信号の周波数が変化する場合でも、その変化した周波数に対して電圧振幅値を極大値に近づけることができるから、広い範囲の周波数について増幅効率の良い増幅回路を実現することができる。
【0039】
また、LC負荷回路の共振周波数を可変に設定することで、負荷インピーダンスを可変に設定する従来の手法と比較して、増幅用トランジスターの限られた素子能力の範囲で、比較的高い増幅効率を得ることができるという利点がある。あるいは、同等の素子性能であれば、より高い周波数まで動作させることができるという利点がある。
【0040】
図2に、本実施形態の振幅検出回路30の構成例を示す。振幅検出回路30は、AC結合キャパシターCC、バイアス電圧設定回路60、振幅検出トランジスターTA、振幅検出用電流源IS、平滑用キャパシターCF及びインピーダンス変換回路70を含む。
【0041】
なお、本実施形態の振幅検出回路は図2の構成に限定されず、その構成要素の一部を省略したり、他の構成要素に置き換えたり、他の構成要素を追加するなどの種々の変形実施が可能である。
【0042】
AC結合キャパシターCCは、出力ノードNPと入力ノードNIとの間に設けられ、増幅信号VPの交流成分を通過させる。バイアス電圧設定回路60は、入力ノードNIにバイアス電圧VBIASを印加するためのものである。
【0043】
振幅検出トランジスターTAは、高電位側電源ノードVDD(広義には第2の電源ノード)と検出ノードNQとの間に設けられ、入力ノードNIの電圧によりゲートが制御される。バイアス電圧VBIASにより、入力ノードNIの電圧を振幅検出トランジスターTAが動作可能な電圧値に設定することができる。こうすることで、検出ノードNQには、VBIAS−VTH(VTHはTAのしきい値電圧)を中心電圧として、増幅信号VPと振幅が等しい交流電圧が生じる。
【0044】
振幅検出用電流源ISは、検出ノードNQと低電位側電源ノードVSS(広義には第1の電源ノード)との間に設けられる。振幅検出用電流源ISは、振幅検出トランジスターTAのドレイン電流を確保するためのものである。
【0045】
平滑用キャパシターCFは、検出ノードNQと低電位側電源ノードVSSとの間に設けられる。平滑用キャパシターCFにより、検出ノードNQの電圧が平滑化されることで、増幅信号VPの電圧振幅に応じた電圧が検出ノードNQに生じる。
【0046】
インピーダンス変換回路70は、検出ノードNQの電圧を受け、検出ノードNQの電圧のインピーダンス変換を行い、制御回路40へ検出出力電圧VDを出力する。検出ノードNQに発生する信号は高インピーダンスなので、これをインピーダンス変換回路70により低インピーダンスに変換して、制御回路40へ出力する。インピーダンス変換回路70は、例えば図2に示すように、ボルテージフォロワー接続のオペアンプOPAで構成することができる。
【0047】
図3(A)、図3(B)は、振幅検出回路30の動作を説明する図である。図3(A)に、増幅信号VP、入力ノードNIの電圧V(NI)及び検出ノードNQの電圧V(NQ)(検出出力電圧VD)の波形の一例を示す。入力ノードNIには、増幅信号VPに応じて、バイアス電圧VBIASを中心電圧とする交流電圧が生じる。そして検出ノードNQには、VBIAS−VTHを中心電圧とする交流信号を平滑化した電圧が出力される。この平滑化された電圧が、検出出力電圧VDとして出力される。
【0048】
例えば、VPの電圧振幅が大きい場合には、図3(A)のC1、C2、C3に示す波形になり、VPの電圧振幅が小さい場合には、図3(A)のD1、D2、D3に示す波形になる。なお、増幅信号の周波数が十分高ければ、平滑化によってほぼ一定の電圧値が出力される。
【0049】
図3(B)に、検出出力電圧VDと増幅信号VPの電圧振幅との関係の一例を示す。図3(B)に示すように、振幅検出回路30は、増幅信号VPの電圧振幅が増加するにつれて電圧VBIAS−VTHからの変化電圧が増加する信号を、検出出力電圧VD(広義には検出結果信号)として出力する。このようにすれば、検出出力電圧VDとVBIAS−VTHとの電圧差から増幅信号VPの電圧振幅値を求めることができる。
【0050】
例えば、VPの電圧振幅が大きい場合には、図3(B)のC4に示す電圧が出力され、VPの電圧振幅が小さい場合には、図3(B)のD4に示す電圧が出力される。
【0051】
なお、増幅信号VPの電圧振幅が大きい場合に、図3(B)の破線で示すように検出出力電圧VDが飽和することがある。しかし、バイアス電圧VBIASを適正な電圧に設定することで、VDの飽和を回避することができる。
【0052】
図4に、本実施形態の増幅回路の第2の構成例を示す。第2の構成例の増幅回路は、差動入力信号を増幅する。第2の構成例の増幅回路は、増幅用トランジスター10、LC負荷回路20、振幅検出回路30、制御回路40及び可変電流源50を含む。
【0053】
増幅用トランジスター10は、カスコード接続のN型トランジスターT11、T12及びT21、T22を含む。また、LC負荷回路20は、バラクターCA1、CA2(広義には第1のキャパシター)、キャパシターCB1、CB2(広義には第2のキャパシター)及びインダクター(コイル)LBを含む。
【0054】
バラクターCA1は、低電位側電源ノードVSS(広義には第1の電源ノード)と制御ノードNC1との間に設けられ、制御ノードNC1の電圧によりキャパシタンス値(容量値)が可変に設定される。キャパシターCB1は、直流成分を遮断するためのもので、制御ノードNC1と増幅用トランジスター10の出力ノードNP1との間に設けられる。またインダクターLBは、出力ノードNP1と別の出力ノードNP2との間に設けられ、インダクターLBの中間タップは、高電位側電源ノードVDD(広義には第2の電源ノード)に接続される。
【0055】
バラクターCA2は、低電位側電源ノードVSSと制御ノードNC2との間に設けられ、制御ノードNC2の電圧によりキャパシタンス値(容量値)が可変に設定される。キャパシターCB2は、直流成分を遮断するためのもので、制御ノードNC2と増幅用トランジスター10の出力ノードNP2との間に設けられる。
【0056】
2つのバラクターCA1、CA2のキャパシタンス値を変化させることで、LC負荷回路20の共振周波数が変化するから、LC負荷回路20の周波数特性が変化する。
【0057】
振幅検出回路30は、差動増幅信号VP1、VP2の電圧振幅を検出し、検出結果として検出出力電圧VDを出力する。この振幅検出回路30の詳細な構成例については、図5で説明する。
【0058】
制御回路40は、振幅検出回路30の検出結果に基づいて、差動増幅信号VP1、VP2の電圧振幅値を極大値に近づける処理を行って、インダクタンス値及びキャパシタンス値の少なくとも一方を設定する制御を行う。例えば図4では、制御回路40は、制御ノードNC1、NC2に印加されるLC制御電圧VTを変化させることで、バラクターCA1、CA2のキャパシタンス値を設定する。
【0059】
さらに制御回路40は、インダクタンス値及びキャパシタンス値の少なくとも一方を設定した後に、増幅信号VP1、VP2の電圧振幅値をターゲット振幅値に近づける処理を行って、可変電流源50の電流値IAを設定する制御を行う。例えば図4では、制御回路40は、電流源制御電圧VAを変化させることで、可変電流源50の電流値IAを設定する制御を行う。具体的には、電流源制御電圧VAを上昇させることで電流値IAが増加し、電流値IAが増加することで、増幅信号VP1、VP2の電圧振幅値が増加する。逆に電流源制御電圧VAを低下させることで電流値IAが減少し、電流値IAが減少することで、増幅信号VP1、VP2の電圧振幅値が減少する。
【0060】
制御回路40は、A/D変換器41、論理回路42及びD/A変換器43、44で構成することができる。A/D変換器41はアナログデータである検出出力電圧VD(検出結果)をデジタルデータに変換し、論理回路42は変換されたデジタルデータに基づいて処理を行う。D/A変換器43は論理回路42の出力に基づいて電流源制御電圧VAを生成し出力し、D/A変換器44は論理回路42の出力に基づいてLC制御電圧VTを生成し出力する。
【0061】
可変電流源50は、増幅用トランジスター10に電流を流すためのものであり、例えば図4に示すようにトランジスターT31で構成される。T31のゲートに印加される電流源制御電圧VAを変化させることで、可変電流源50の電流値IAを可変に設定することができる。なお、可変電流源50は、図4に示す構成に限定されるものではなく、例えば複数個のカレントミラー回路を設けて、それらの接続をスイッチ素子等により切り換える構成にしてもよい。
【0062】
このようにすることで、差動増幅信号VP1、VP2の電圧振幅値を極大値に近づけるように、LC負荷回路20のインダクタンス値及びキャパシタンス値の少なくとも一方を設定することができる。その結果、製造ばらつきや環境変動(例えば温度、電源電圧等の変動)による増幅回路の特性劣化を補正することができるから、特性が安定し、増幅効率の良い増幅回路を実現することができる。さらに入力信号の周波数が変化する場合でも、その変化した周波数に対して電圧振幅値を極大値に近づけることができるから、広い範囲の周波数について増幅効率の良い増幅回路を実現することができる。さらにインダクタンス値及びキャパシタンス値の少なくとも一方を設定した後に、電圧振幅値をターゲット振幅値に近づけることができるから、増幅回路の用途に応じて電圧振幅値を適正な値に設定することが可能になる。
【0063】
図5に、本実施形態の振幅検出回路30の別の構成例を示す。図5に示す振幅検出回路30は、差動増幅信号VP1、VP2の電圧振幅を検出する回路であって、AC結合キャパシターCC1、CC2、バイアス電圧設定回路60、振幅検出トランジスターTA1、TA2、振幅検出用電流源IS、平滑用キャパシターCF及びインピーダンス変換回路70を含む。
【0064】
AC結合キャパシターCC1、CC2は、出力ノードNP1と入力ノードNI1との間、及び出力ノードNP2と入力ノードNI2との間に各々設けられ、差動増幅信号VP1、VP2の交流成分を通過させる。バイアス電圧設定回路60は、入力ノードNI1、NI2にバイアス電圧VBIASを印加するためのものである。
【0065】
振幅検出トランジスターTA1、TA2は、高電位側電源ノードVDD(広義には第2の電源ノード)と検出ノードNQとの間に設けられる。入力ノードNI1の電圧によりTA1のゲートが制御され、入力ノードNI2の電圧によりTA2のゲートが制御される。バイアス電圧VBIASにより、入力ノードNI1、NI2の電圧を振幅検出トランジスターTA1、TA2が動作可能な電圧値に設定することができる。こうすることで、検出ノードNQには、VBIAS−VTH(VTHはTA1、TA2のしきい値電圧)を中心電圧として、増幅信号VP1、VP2と振幅が等しい交流電圧が生じる。
【0066】
振幅検出用電流源ISは、検出ノードNQと低電位側電源ノードVSS(広義には第1の電源ノード)との間に設けられる。振幅検出用電流源ISは、振幅検出トランジスターTA1、TA2のドレイン電流を確保するためのものである。
【0067】
平滑用キャパシターCFは、検出ノードNQと低電位側電源ノードVSSとの間に設けられる。平滑用キャパシターCFにより、検出ノードNQの電圧が平滑化されることで、差動増幅信号VP1、VP2の電圧振幅に応じた電圧が検出ノードNQに生じる。
【0068】
インピーダンス変換回路70は、検出ノードNQの電圧を受け、インピーダンスを変換して、制御回路40へ検出出力電圧VDを出力する。検出ノードNQに発生する信号は高インピーダンスなので、これをインピーダンス変換回路70により低インピーダンスに変換して、制御回路40へ出力する。インピーダンス変換回路70は、例えば図2に示すように、ボルテージフォロワー接続のオペアンプOPAで構成することができる。
【0069】
図6は、振幅検出回路30(図5)の動作を説明する図であり、差動増幅信号VP1、VP2、入力ノードNI1、NI2の各電圧V(NI1)、V(NI2)及び検出ノードNQの電圧V(NQ)(検出出力電圧VD)の波形の一例を示す。入力ノードNI1には、増幅信号VP1に応じて、バイアス電圧VBIASを中心電圧とする交流電圧が生じる。同様に、入力ノードNI2には、増幅信号VP2に応じて、バイアス電圧VBIASを中心電圧とする交流電圧が生じる。そして検出ノードNQには、VBIAS−VTHを基準電圧とする平滑化した電圧が出力される。この平滑化された電圧が、検出出力電圧VDとして出力される。
【0070】
例えば、差動増幅信号VP1、VP2の電圧振幅が大きい場合(図6のE1、E3)には、入力ノードNI1、NI2の各電圧V(NI1)、V(NI2)は、図6のE2、E4に示す波形になり、NQの電圧V(NQ)は図6のE5に示す波形になる。一方、差動増幅信号VP1、VP2の電圧振幅が小さい場合(図6のF1、F3)には、図6のF2、F4に示す波形になり、NQの電圧V(NQ)すなわち検出出力電圧VDは、図6のF5に示す波形になる。なお、増幅信号の周波数が十分高ければ、平滑化によってほぼ一定の電圧値が出力される。
【0071】
このようにして得られる検出出力電圧VDと増幅信号VPの電圧振幅との関係は、図3(B)に示すものと同様である。振幅検出回路30は、増幅信号VP1、VP2の電圧振幅の増加に従ってVBIAS−VTHである電圧からの変化電圧が増加する信号を、検出出力電圧VD(広義には検出結果)として出力する。このようにすれば、検出出力電圧VDとVBIAS−VTHとの電圧差から増幅信号VP1、VP2の電圧振幅値を求めることができる。
【0072】
図7(A)、図7(B)に、増幅信号の電圧振幅の周波数特性の一例を示す。図7(A)は、LC負荷回路20のインダクタンス値(L値)及びキャパシタンス値(C値)の少なくとも一方を設定する前の周波数特性(破線で示す)及び設定した後の周波数特性(実線で示す)である。
【0073】
例えば、L値及びC値の少なくとも一方を設定する前では、使用する周波数(搬送波の周波数)fcにおける電圧振幅値は、図7(A)のA1に示す値である。制御回路40は、振幅検出回路30の検出結果に基づいて、電圧振幅値を極大値に近づけるようにL値及びC値の少なくとも一方を設定する。具体的には、LC負荷回路20のL値及びC値の少なくとも一方を減少させる制御を行うことで、LC負荷回路20の共振周波数が高い方へシフトする。その結果、fcにおける電圧振幅値は極大値に近づき、例えば図7(A)のA2に示す値になる。
【0074】
また、図示していないが、設定前の共振周波数が使用する周波数fcよりも高い場合には、LC負荷回路20のL値及びC値の少なくとも一方を増加させる制御を行うことで、
LC負荷回路20の共振周波数が低い方へシフトする。その結果、fcにおける電圧振幅値は、極大値に近づく。
【0075】
図7(B)は、上記の設定後に可変電流源50の電流値IAを変化させた時の電圧振幅値の周波数特性である。例えば、LC負荷回路20のL値及びC値の少なくとも一方を設定した時のfcにおける電圧振幅値は、図7(B)のB1に示す値である。可変電流源50の電流値IAを増加させることで、増幅回路のゲインが増加するから、fcにおける電圧振幅値は増加し、例えば図7(B)のB2に示す値になる。逆に可変電流源50の電流値IAを減少させることで、増幅回路のゲインが減少するから、fcにおける電圧振幅値は減少し、例えば図7(B)のB3に示す値になる。
【0076】
以上説明したように、本実施形態の増幅回路によれば、増幅信号の電圧振幅値を極大値に近づけるように、LC負荷回路のインダクタンス値及びキャパシタンス値の少なくとも一方を設定することができる。その結果、製造ばらつきや環境変動(例えば温度、電源電圧等の変動)による増幅回路の特性劣化を補正することができるから、特性が安定し、増幅効率の良い増幅回路を実現することができる。さらに入力信号の周波数が変化する場合でも、その変化した周波数に対して電圧振幅値を極大値に設定することができるから、広い範囲の周波数について増幅効率の良い増幅回路を実現することができる。さらにインダクタンス値及びキャパシタンス値の少なくとも一方を設定した後に、可変電流源の電流値を設定することで、電圧振幅値をターゲット振幅値に近づけることができるから、増幅回路の用途に応じて電圧振幅値を適正な値に設定することが可能になる。
【0077】
図8は、上述したインダクタンス値及びキャパシタンス値の少なくとも一方を設定する処理のフローチャートの一例である。図8では、例としてキャパシタンス値(C値)を設定する場合を示しているが、インダクタンス値(L値)を設定する場合も同様の制御フローになる。以下では、図8に示すステップP1〜P13に従ってC値を設定する処理を説明する。
【0078】
最初にC値を初期値C0に設定する(ステップP1)。次に、振幅検出回路30からの検出結果に基づいて、初期値C0の時の電圧振幅値VPAを取得する(ステップP2)。次にC値を増分値ΔCだけ増加させ(ステップP3)、その後の電圧振幅値VPAを取得する(ステップP4)。そして電圧振幅値VPAが増加したか否かを判断する(ステップP5)。
【0079】
電圧振幅値VPAが増加した場合には、C値をさらに増分値ΔCだけ増加させ(ステップP6)、その後の電圧振幅値VPAを取得する(ステップP7)。そして電圧振幅値VPAが増加したか否かを判断する(ステップP8)。電圧振幅値VPAが増加した場合には、ステップP6に戻り、C値をさらに増分値ΔCだけ増加させる。これを繰り返した後、ステップP8の判断において電圧振幅値VPAが増加しない場合には、C値を1つ前の値(C−ΔC)に戻して(ステップP9)、設定を終了する。
【0080】
一方、ステップP5の判断において、電圧振幅値VPAが増加しない場合には、C値を増分値ΔCだけ減少させ(ステップP10)、その後の電圧振幅値VPAを取得する(ステップP11)。そして電圧振幅値VPAが増加したか否かを判断する(ステップP12)。電圧振幅値VPAが増加した場合には、ステップP10に戻り、C値をさらに増分値ΔCだけ減少させる。これを繰り返した後、ステップP12の判断において電圧振幅値VPAが増加しない場合には、C値を1つ前の値(C+ΔC)に戻して(ステップP13)、設定を終了する。
【0081】
このようにすることで、増幅信号の電圧振幅値を極大値に近づける処理を行って、LC負荷回路のキャパシタンス値を設定することができる。さらに同様の処理を行って、LC負荷回路のインダクタンス値を設定することができる。
【0082】
図9は、インダクタンス値及びキャパシタンス値の少なくとも一方を設定した後に、可変電流源50の電流値IAを設定することで、電圧振幅値VPAをターゲット振幅値VPAsetに近づける処理のフローチャートの一例である。以下では、図9に示すステップS1〜S9に従って電流値IAを設定する処理を説明する。
【0083】
最初に電流値IAを初期値IA0に設定する(ステップS1)。次に、振幅検出回路30からの検出結果に基づいて、初期値IA0の時の電圧振幅値VPAを取得する(ステップS2)。そして電圧振幅値VPAがターゲット振幅値VPAsetより小さいか否かを判断する(ステップS3)。
【0084】
電圧振幅値VPAがターゲット振幅値VPAsetより小さい場合には、電流値IAを増分値ΔIAだけ増加させ(ステップS4)、その後の電圧振幅値VPAを取得する(ステップS5)。そして電圧振幅値VPAとターゲット振幅値VPAsetとの差が所定の値Veより小さいか否かを判断する(ステップS6)。所定の値Veは、この処理によって実際に設定される電圧振幅値VPAとターゲット振幅値VPAsetとの誤差の上限を決める。電圧振幅値VPAとターゲット振幅値VPAsetとの差が所定の値Veより小さい場合には、設定を終了する。VPAとVPAsetとの差が所定の値Veより小さくない場合には、ステップS4に戻り処理を繰り返す。
【0085】
一方、ステップS3の判断において、電圧振幅値VPAがターゲット振幅値VPAsetより小さくない場合には、電流値IAを増分値ΔIAだけ減少させ(ステップS7)、その後の電圧振幅値VPAを取得する(ステップS8)。そして電圧振幅値VPAとターゲット振幅値VPAsetとの差が所定の値Veより小さいか否かを判断する(ステップS9)。電圧振幅値VPAとターゲット振幅値VPAsetとの差が所定の値Veより小さい場合には、設定を終了する。VPAとVPAsetとの差が所定の値Veより小さくない場合には、ステップS7に戻り処理を繰り返す。
【0086】
このようにすることで、増幅信号の電圧振幅値をターゲット振幅値に近づける処理を行って、可変電流源の電流値を設定することができる。
【0087】
2.集積回路装置
図10に、本実施形態の増幅回路を含む集積回路装置の構成例を示す。図10の集積回路装置100は、受信回路200、送信回路300、制御部350を含む。受信回路200は、増幅回路(受信側)230、周波数変換回路240、フィルター250、復調回路270を含む。送信回路300は、増幅回路(送信側)310、変調回路320、発振回路(PLL回路)330を含む。
【0088】
増幅回路(受信側)230は、本実施形態の増幅回路であって、アンテナ360から入力される受信信号を増幅する。上述したように、本実施形態の増幅回路(受信側)230によれば、増幅信号の電圧振幅値を極大値に近づけるように、LC負荷回路のインダクタンス値及びキャパシタンス値の少なくとも一方を設定することができるから、アンテナからの受信信号を効率良く増幅することができる。さらに受信信号の周波数が変化する場合でも、その変化した周波数に対して電圧振幅値を極大値に近づけることができるから、広い範囲の周波数について効率良く増幅することができる。
【0089】
周波数変換回路240は、受信周波数から中間周波数へ周波数変換を行う。フィルター250は、不要な周波数成分を除去して所望の信号を出力する。復調回路270は、所望波の信号を復調して必要なデータを取り出す。
【0090】
発振回路(PLL回路)330は、基準クロックから必要な周波数(搬送波周波数など)の信号を生成する。変調回路320は送信データに基づいて搬送波を変調(例えば周波数変調)する。
【0091】
制御部350は、無線通信の制御処理や集積回路装置100の外部の回路(ホストなど)とのデータ通信を行う。
【0092】
増幅回路(送信側)310は、本実施形態の増幅回路であって、変調された送信信号を増幅して、アンテナ360から送信する。図10に示す構成例では、増幅回路(送信側)310は、第1の増幅器311と、第1の増幅器311からの信号を増幅する第2の増幅器312とを含む。
【0093】
第1の増幅器311が、増幅用トランジスターとLC負荷回路とを含む。振幅検出回路313は、第1の増幅器311の出力信号の電圧振幅を検出する。制御回路314は、振幅検出回路313からの検出結果に基づいて、増幅信号の電圧振幅値を極大値に近づける処理を行って、第1の増幅器311のLC負荷回路のインダクタンス値(L値)及びキャパシタンス値(C値)の少なくとも一方を設定する。さらに制御回路314は、L値及びC値の少なくとも一方を設定した後に、増幅信号の電圧振幅値をターゲット振幅値に近づける処理を行って、可変電流源の電流値を設定する。
【0094】
なお、図10の構成では、振幅検出回路313は、第1の増幅器311の出力信号の電圧振幅を検出するが、第2の増幅器312の出力信号の電圧振幅を検出してもよい。
【0095】
以上説明したように、本実施形態の増幅回路を含む集積回路装置によれば、製造ばらつきや環境変動(例えば温度、電源電圧等の変動)による特性劣化を補正して、増幅信号の電圧振幅値を極大値に近づけることができる。また使用する周波数が変化する場合でも、その変化した周波数に対して増幅信号の電圧振幅を極大値に近づけることができるから、広い範囲の周波数について増幅効率の良い集積回路装置を実現することができる。例えば周波数ホッピング方式などの周波数を頻繁に変化させる無線方式において、増幅効率の良い無線通信機器を実現することができる。さらに電圧振幅値をターゲット振幅値に近づけることができるから、無線通信機器の用途等に応じて送信電力を適正な値に設定することが可能になる。例えば通信距離に応じて送信電力を設定したり、送信電力を小さくして受信回路のキャリブレーション用信号として利用したりすることなどが可能になる。
【0096】
3.電子機器
図11に、集積回路装置100を含む電子機器400の構成例を示す。電子機器400は、集積回路装置100、センサー部410、A/D変換器420、記憶部430、ホスト440、操作部450を含む。
【0097】
電子機器400は、例えば温度・湿度計、脈拍計、歩数計等であって、検出したデータを無線により送信することができる。センサー部410は、温度センサー、湿度センサー、ジャイロセンサー、加速度センサー、フォトセンサー、圧力センサー等を含み、電子機器400の用途に応じたセンサーが用いられる。
【0098】
センサー部410は、センサーの出力信号(センサー信号)を増幅し、フィルターによりノイズを除去する。A/D変換器420は、増幅された信号をデジタル信号に変換して集積回路装置100へ出力する。ホスト440は、例えばマイクロコンピューター等で構成され、デジタル信号処理や或いは記憶部430に記憶された設定情報や操作部450からの信号に基づいて電子機器400の制御処理を行う。記憶部430は、例えばフラッシュメモリーなどで構成され、設定情報や検出したデータ等を記憶する。操作部450は、例えばキーパッド等で構成され、使用者が電子機器400を操作するために用いられる。
【0099】
なお、以上のように本実施形態について詳細に説明したが、本発明の新規事項および効果から実体的に逸脱しない多くの変形が可能であることは当業者には容易に理解できるであろう。従って、このような変形例はすべて本発明の範囲に含まれるものとする。例えば、明細書又は図面において、少なくとも一度、より広義または同義な異なる用語(第1の電源ノード、第2の電源ノード)と共に記載された用語(低電位側電源ノードVSS、高電位側電源ノードVDD)は、明細書又は図面のいかなる箇所においても、その異なる用語に置き換えることができる。また増幅回路、集積回路装置及び電子機器の構成、動作も本実施形態で説明したものに限定されず、種々の変形実施が可能である。
【符号の説明】
【0100】
10 増幅用トランジスター、20 LC負荷回路、30 振幅検出回路、
40 制御回路、41 A/D変換器、42 論理回路、43、44 D/A変換器、
50 可変電流源、60 バイアス電圧設定回路、70 インピーダンス変換回路、
100 集積回路装置、200 受信回路、230 増幅回路(受信側)、
240 周波数変換回路、250 フィルター、270 復調回路、300 送信回路、
310 増幅回路(送信側)、311 第1の増幅器、312 第2の増幅器、
313 振幅検出回路、314 制御回路、320 変調回路、
330 発振回路(PLL回路)、350 制御部、360 アンテナ、
400 電子機器、410 センサー部、420 A/D変換器、430 記憶部、
440 ホスト、450 操作部、
CA バラクター、CB キャパシター、LA インダクター、NC 制御ノード、
NP 出力ノード、VD 検出出力電圧、VP 増幅信号、VT LC制御電圧
【技術分野】
【0001】
本発明は、増幅回路、集積回路装置及び電子機器等に関する。
【背景技術】
【0002】
無線通信機器に使用される増幅回路においては、製造ばらつきや温度、電源電圧の変動などによる増幅回路の特性劣化が問題になっている。例えば増幅回路に含まれるインダクターのインダクタンス値及びキャパシターのキャパシタンス値が、製造ばらつきや温度、電源電圧の変動などにより変化すると、使用する周波数での増幅回路のゲインが低下するなどの問題がある。
【0003】
この課題に対して例えば特許文献1には、バラクター(電圧制御可変容量)により増幅回路の負荷インピーダンスを変化させる手法が開示されている。
【0004】
しかしながらこの手法では、増幅回路に含まれるLC負荷回路(LC共振回路)の共振周波数を変化させることができないため、広い範囲の周波数について増幅効率の良い増幅回路を実現することが難しいなどの課題があった。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0005】
【特許文献1】特開2003−204230号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0006】
本発明の幾つかの態様によれば、特性が安定し、増幅効率の良い増幅回路、集積回路装置及び電子機器等を提供できる。
【課題を解決するための手段】
【0007】
本発明の一態様は、入力信号を増幅する増幅用トランジスターと、インダクター及びキャパシターにより構成され、前記インダクターのインダクタンス値及び前記キャパシターのキャパシタンス値の少なくとも一方が可変に設定されるLC負荷回路と、増幅信号の電圧振幅を検出する振幅検出回路と、前記振幅検出回路の検出結果に基づいて前記インダクタンス値及び前記キャパシタンス値の少なくとも一方を設定し、前記増幅信号の電圧振幅値を極大値に近づける制御を行う制御回路とを含む増幅回路に関係する。
【0008】
本発明の一態様によれば、増幅信号の電圧振幅値を極大値に近づけるように、LC負荷回路のインダクタンス値及びキャパシタンス値の少なくとも一方を設定することができる。その結果、製造ばらつきや温度、電源電圧の変動などによる増幅回路の特性劣化を補正することができるから、特性が安定し、増幅効率の良い増幅回路を実現することができる。さらに入力信号の周波数が変化する場合でも、その変化した周波数に対して電圧振幅値を極大値に近づけることができるから、広い範囲の周波数について増幅効率の良い増幅回路を実現することが可能になる。
【0009】
また本発明の一態様では、前記キャパシターは、第1の電源ノードと制御ノードとの間に設けられる第1のキャパシターと、前記制御ノードと前記増幅用トランジスターの出力ノードとの間に設けられる第2のキャパシターとにより構成され、前記第1のキャパシターは、前記制御ノードの電圧によりキャパシタンス値が可変に設定され、前記インダクターは、前記出力ノードと第2の電源ノードとの間に設けられてもよい。
【0010】
このようにすれば、制御ノードの電圧により第1のキャパシターのキャパシタンス値を可変に設定することができるから、LC負荷回路の共振周波数を可変に設定することができる。
【0011】
また本発明の一態様では、前記増幅用トランジスターに電流を流すための可変電流源を含み、前記制御回路は、前記振幅検出回路の検出結果に基づいて、前記可変電流源の電流値を設定する制御を行ってもよい。
【0012】
このようにすれば、制御回路は、振幅検出回路の検出結果に基づいて、増幅用トランジスターに流れる電流値を設定することができる。
【0013】
また本発明の一態様では、前記制御回路は、前記振幅検出回路の検出結果に基づいて、前記増幅信号の電圧振幅値を極大値に近づける処理を行って、前記インダクタンス値及び前記キャパシタンス値の少なくとも一方を設定し、前記インダクタンス値及び前記キャパシタンス値の少なくとも一方を設定した後に、前記増幅信号の電圧振幅値をターゲット振幅値に近づける処理を行って、前記可変電流源の電流値を設定してもよい。
【0014】
このようにすれば、制御回路は、増幅信号の電圧振幅値を極大値に近づけるように、LC負荷回路のインダクタンス値及びキャパシタンス値の少なくとも一方を設定することができる。そして上記の設定後に可変電流源の電流値を設定して、増幅信号の電圧振幅値をターゲット振幅値に近づけることができる。その結果、増幅回路の用途に応じて電圧振幅値を適正な値に設定することが可能になる。
【0015】
また本発明の一態様では、前記増幅用トランジスターと前記LC負荷回路を有する第1の増幅器と、前記第1の増幅器からの信号を増幅する第2の増幅器とを含んでもよい。
【0016】
このようにすれば、第1の増幅器のLC負荷回路のインダクタンス値及びキャパシタンス値の少なくとも一方を設定することで、増幅信号の電圧振幅値を極大値に近づけることができる。また第2の増幅器の出力インピーダンスを一定に保つことができるから、安定したインピーダンス整合を得ることができ、特性が安定し、増幅効率の良い増幅回路を実現することが可能になる。
【0017】
また本発明の一態様では、前記振幅検出回路が電圧振幅を検出する前記増幅信号は、前記第1の増幅器の出力信号であってもよい。
【0018】
このようにすれば、第1の増幅器の出力信号の電圧振幅を極大値に近づけるように、第1の増幅器のLC負荷回路のインダクタンス値及びキャパシタンス値の少なくとも一方を設定することができる。
【0019】
また本発明の一態様では、前記振幅検出回路が電圧振幅を検出する前記増幅信号は、前記第2の増幅器の出力信号であってもよい。
【0020】
このようにすれば、第2の増幅器の出力信号の電圧振幅を極大値に近づけるように、第1の増幅器のLC負荷回路のインダクタンス値及びキャパシタンス値の少なくとも一方を設定することができる。
【0021】
また本発明の一態様では、前記振幅検出回路は、前記出力ノードと入力ノードとの間に設けられるAC結合キャパシターと、前記入力ノードにバイアス電圧を印加するバイアス電圧設定回路と、第2の電源ノードと検出ノードとの間に設けられ、前記入力ノードの電圧によりゲートが制御される振幅検出トランジスターと、前記検出ノードと第1の電源ノードとの間に設けられる振幅検出用電流源と、前記検出ノードと前記第1の電源ノードとの間に設けられる平滑用キャパシターと、前記検出ノードの電圧を受け、前記検出ノードの電圧のインピーダンス変換を行い、前記制御回路へ出力するインピーダンス変換回路とを含んでもよい。
【0022】
このようにすれば、検出ノードには増幅信号と振幅が等しい交流電圧が生じ、その交流電圧が平滑化されることで、増幅信号の電圧振幅に応じた電圧が検出ノードに生じる。さらに検出ノードの電圧を、インピーダンス変換回路により、低インピーダンスに変換することで、検出結果信号を出力することができる。
【0023】
また本発明の一態様では、前記バイアス電圧をVBIASとし、前記振幅検出トランジスターのしきい値電圧をVTHとした場合に、前記振幅検出回路は、前記増幅信号の電圧振幅が増加するにつれて電圧VBIAS−VTHからの変化電圧が増加する検出結果信号を出力してもよい。
【0024】
このようにすれば、検出結果の電圧と電圧VBIAS−VTHとの電圧差から増幅信号の電圧振幅値を求めることができる。
【0025】
本発明の他の態様は、上記のいずれかに記載の増幅回路を有する送信回路を含む集積回路装置に関係する。
【0026】
本発明の他の態様は、上記のいずれかに記載の増幅回路を有する受信回路を含む集積回路装置に関係する。
【0027】
本発明の他の態様は、上記のいずれかに記載の集積回路装置を含む電子機器に関係する。
【図面の簡単な説明】
【0028】
【図1】増幅回路の第1の構成例。
【図2】振幅検出回路の構成例。
【図3】図3(A)、図3(B)は、振幅検出回路の動作を説明する図。
【図4】増幅回路の第2の構成例。
【図5】振幅検出回路の別の構成例。
【図6】振幅検出回路の動作を説明する図。
【図7】図7(A)、図7(B)は、増幅信号の電圧振幅の周波数特性の一例。
【図8】L値、C値を設定する処理のフローチャートの一例。
【図9】可変電流源の電流値を設定する処理のフローチャートの一例。
【図10】集積回路装置の構成例。
【図11】電子機器の構成例。
【発明を実施するための形態】
【0029】
以下、本発明の好適な実施の形態について詳細に説明する。なお以下に説明する本実施形態は特許請求の範囲に記載された本発明の内容を不当に限定するものではなく、本実施形態で説明される構成の全てが本発明の解決手段として必須であるとは限らない。
【0030】
1.増幅回路
図1に、本実施形態の増幅回路の第1の構成例を示す。本実施形態の増幅回路は、増幅用トランジスター10、LC負荷回路20、振幅検出回路30及び制御回路40を含む。増幅用トランジスター10は、カスコード接続された2つのN型トランジスターT1、T2により構成され、入力信号を増幅する。バイアス電圧VB1、VB2は、それぞれトランジスターT1、T2のゲート電圧を適正な電圧値に設定するためのものである。
【0031】
なお、本実施形態の増幅回路は図1の構成に限定されず、その構成要素の一部を省略したり、他の構成要素に置き換えたり、他の構成要素を追加するなどの種々の変形実施が可能である。例えば、増幅用トランジスター10は、1個のトランジスターで構成してもよいし、またP型トランジスターで構成することもできる。
【0032】
LC負荷回路20は、インダクター及びキャパシターにより構成され、インダクターのインダクタンス値及びキャパシターのキャパシタンス値の少なくとも一方が可変に設定される。具体的には、LC負荷回路20は、例えばバラクター(バリキャップ、電圧制御可変容量)CA(広義には第1のキャパシター)、キャパシターCB(広義には第2のキャパシター)及びインダクター(コイル)LAを含む。
【0033】
バラクターCAは、低電位側電源ノードVSS(広義には第1の電源ノード)と制御ノードNCとの間に設けられ、制御ノードNCの電圧によりキャパシタンス値(容量値)が可変に設定される。バラクターCAのキャパシタンス値を変化させることで、LC負荷回路20の共振周波数が変化するから、LC負荷回路20の周波数特性が変化する。
【0034】
キャパシターCBは、直流成分を遮断するためのもので、制御ノードNCと増幅用トランジスター10の出力ノードNPとの間に設けられる。またインダクターLAは、出力ノードNPと高電位側電源ノードVDD(広義には第2の電源ノード)との間に設けられる。
【0035】
振幅検出回路30は、増幅信号VPの電圧振幅を検出し、検出結果として検出出力電圧VDを出力する。この振幅検出回路30の詳細な構成例については、図2で説明する。
【0036】
制御回路40は、振幅検出回路30の検出結果に基づいて、増幅信号VPの電圧振幅値を極大値に近づける処理を行って、インダクタンス値及びキャパシタンス値の少なくとも一方を設定する制御を行う。
【0037】
例えば図1では、制御回路40は、制御ノードNCに印加されるLC制御電圧VTを変化させることで、バラクターCAのキャパシタンス値を設定する。制御回路40は、A/D変換器41、論理回路42及びD/A変換器43で構成することができる。A/D変換器41はアナログデータである検出出力電圧VD(検出結果)をデジタルデータに変換し、論理回路42は変換されたデジタルデータに基づいて処理を行う。D/A変換器43は論理回路42の出力に基づいてLC制御電圧VTを生成し出力する。
【0038】
このようにすることで、増幅信号VPの電圧振幅値を極大値に近づけるように、LC負荷回路20のインダクタンス値及びキャパシタンス値の少なくとも一方を設定することができる。その結果、製造ばらつきや環境変動(例えば温度、電源電圧等の変動)による増幅回路の特性劣化を補正することができるから、特性が安定し、増幅効率の良い増幅回路を実現することができる。さらに入力信号の周波数が変化する場合でも、その変化した周波数に対して電圧振幅値を極大値に近づけることができるから、広い範囲の周波数について増幅効率の良い増幅回路を実現することができる。
【0039】
また、LC負荷回路の共振周波数を可変に設定することで、負荷インピーダンスを可変に設定する従来の手法と比較して、増幅用トランジスターの限られた素子能力の範囲で、比較的高い増幅効率を得ることができるという利点がある。あるいは、同等の素子性能であれば、より高い周波数まで動作させることができるという利点がある。
【0040】
図2に、本実施形態の振幅検出回路30の構成例を示す。振幅検出回路30は、AC結合キャパシターCC、バイアス電圧設定回路60、振幅検出トランジスターTA、振幅検出用電流源IS、平滑用キャパシターCF及びインピーダンス変換回路70を含む。
【0041】
なお、本実施形態の振幅検出回路は図2の構成に限定されず、その構成要素の一部を省略したり、他の構成要素に置き換えたり、他の構成要素を追加するなどの種々の変形実施が可能である。
【0042】
AC結合キャパシターCCは、出力ノードNPと入力ノードNIとの間に設けられ、増幅信号VPの交流成分を通過させる。バイアス電圧設定回路60は、入力ノードNIにバイアス電圧VBIASを印加するためのものである。
【0043】
振幅検出トランジスターTAは、高電位側電源ノードVDD(広義には第2の電源ノード)と検出ノードNQとの間に設けられ、入力ノードNIの電圧によりゲートが制御される。バイアス電圧VBIASにより、入力ノードNIの電圧を振幅検出トランジスターTAが動作可能な電圧値に設定することができる。こうすることで、検出ノードNQには、VBIAS−VTH(VTHはTAのしきい値電圧)を中心電圧として、増幅信号VPと振幅が等しい交流電圧が生じる。
【0044】
振幅検出用電流源ISは、検出ノードNQと低電位側電源ノードVSS(広義には第1の電源ノード)との間に設けられる。振幅検出用電流源ISは、振幅検出トランジスターTAのドレイン電流を確保するためのものである。
【0045】
平滑用キャパシターCFは、検出ノードNQと低電位側電源ノードVSSとの間に設けられる。平滑用キャパシターCFにより、検出ノードNQの電圧が平滑化されることで、増幅信号VPの電圧振幅に応じた電圧が検出ノードNQに生じる。
【0046】
インピーダンス変換回路70は、検出ノードNQの電圧を受け、検出ノードNQの電圧のインピーダンス変換を行い、制御回路40へ検出出力電圧VDを出力する。検出ノードNQに発生する信号は高インピーダンスなので、これをインピーダンス変換回路70により低インピーダンスに変換して、制御回路40へ出力する。インピーダンス変換回路70は、例えば図2に示すように、ボルテージフォロワー接続のオペアンプOPAで構成することができる。
【0047】
図3(A)、図3(B)は、振幅検出回路30の動作を説明する図である。図3(A)に、増幅信号VP、入力ノードNIの電圧V(NI)及び検出ノードNQの電圧V(NQ)(検出出力電圧VD)の波形の一例を示す。入力ノードNIには、増幅信号VPに応じて、バイアス電圧VBIASを中心電圧とする交流電圧が生じる。そして検出ノードNQには、VBIAS−VTHを中心電圧とする交流信号を平滑化した電圧が出力される。この平滑化された電圧が、検出出力電圧VDとして出力される。
【0048】
例えば、VPの電圧振幅が大きい場合には、図3(A)のC1、C2、C3に示す波形になり、VPの電圧振幅が小さい場合には、図3(A)のD1、D2、D3に示す波形になる。なお、増幅信号の周波数が十分高ければ、平滑化によってほぼ一定の電圧値が出力される。
【0049】
図3(B)に、検出出力電圧VDと増幅信号VPの電圧振幅との関係の一例を示す。図3(B)に示すように、振幅検出回路30は、増幅信号VPの電圧振幅が増加するにつれて電圧VBIAS−VTHからの変化電圧が増加する信号を、検出出力電圧VD(広義には検出結果信号)として出力する。このようにすれば、検出出力電圧VDとVBIAS−VTHとの電圧差から増幅信号VPの電圧振幅値を求めることができる。
【0050】
例えば、VPの電圧振幅が大きい場合には、図3(B)のC4に示す電圧が出力され、VPの電圧振幅が小さい場合には、図3(B)のD4に示す電圧が出力される。
【0051】
なお、増幅信号VPの電圧振幅が大きい場合に、図3(B)の破線で示すように検出出力電圧VDが飽和することがある。しかし、バイアス電圧VBIASを適正な電圧に設定することで、VDの飽和を回避することができる。
【0052】
図4に、本実施形態の増幅回路の第2の構成例を示す。第2の構成例の増幅回路は、差動入力信号を増幅する。第2の構成例の増幅回路は、増幅用トランジスター10、LC負荷回路20、振幅検出回路30、制御回路40及び可変電流源50を含む。
【0053】
増幅用トランジスター10は、カスコード接続のN型トランジスターT11、T12及びT21、T22を含む。また、LC負荷回路20は、バラクターCA1、CA2(広義には第1のキャパシター)、キャパシターCB1、CB2(広義には第2のキャパシター)及びインダクター(コイル)LBを含む。
【0054】
バラクターCA1は、低電位側電源ノードVSS(広義には第1の電源ノード)と制御ノードNC1との間に設けられ、制御ノードNC1の電圧によりキャパシタンス値(容量値)が可変に設定される。キャパシターCB1は、直流成分を遮断するためのもので、制御ノードNC1と増幅用トランジスター10の出力ノードNP1との間に設けられる。またインダクターLBは、出力ノードNP1と別の出力ノードNP2との間に設けられ、インダクターLBの中間タップは、高電位側電源ノードVDD(広義には第2の電源ノード)に接続される。
【0055】
バラクターCA2は、低電位側電源ノードVSSと制御ノードNC2との間に設けられ、制御ノードNC2の電圧によりキャパシタンス値(容量値)が可変に設定される。キャパシターCB2は、直流成分を遮断するためのもので、制御ノードNC2と増幅用トランジスター10の出力ノードNP2との間に設けられる。
【0056】
2つのバラクターCA1、CA2のキャパシタンス値を変化させることで、LC負荷回路20の共振周波数が変化するから、LC負荷回路20の周波数特性が変化する。
【0057】
振幅検出回路30は、差動増幅信号VP1、VP2の電圧振幅を検出し、検出結果として検出出力電圧VDを出力する。この振幅検出回路30の詳細な構成例については、図5で説明する。
【0058】
制御回路40は、振幅検出回路30の検出結果に基づいて、差動増幅信号VP1、VP2の電圧振幅値を極大値に近づける処理を行って、インダクタンス値及びキャパシタンス値の少なくとも一方を設定する制御を行う。例えば図4では、制御回路40は、制御ノードNC1、NC2に印加されるLC制御電圧VTを変化させることで、バラクターCA1、CA2のキャパシタンス値を設定する。
【0059】
さらに制御回路40は、インダクタンス値及びキャパシタンス値の少なくとも一方を設定した後に、増幅信号VP1、VP2の電圧振幅値をターゲット振幅値に近づける処理を行って、可変電流源50の電流値IAを設定する制御を行う。例えば図4では、制御回路40は、電流源制御電圧VAを変化させることで、可変電流源50の電流値IAを設定する制御を行う。具体的には、電流源制御電圧VAを上昇させることで電流値IAが増加し、電流値IAが増加することで、増幅信号VP1、VP2の電圧振幅値が増加する。逆に電流源制御電圧VAを低下させることで電流値IAが減少し、電流値IAが減少することで、増幅信号VP1、VP2の電圧振幅値が減少する。
【0060】
制御回路40は、A/D変換器41、論理回路42及びD/A変換器43、44で構成することができる。A/D変換器41はアナログデータである検出出力電圧VD(検出結果)をデジタルデータに変換し、論理回路42は変換されたデジタルデータに基づいて処理を行う。D/A変換器43は論理回路42の出力に基づいて電流源制御電圧VAを生成し出力し、D/A変換器44は論理回路42の出力に基づいてLC制御電圧VTを生成し出力する。
【0061】
可変電流源50は、増幅用トランジスター10に電流を流すためのものであり、例えば図4に示すようにトランジスターT31で構成される。T31のゲートに印加される電流源制御電圧VAを変化させることで、可変電流源50の電流値IAを可変に設定することができる。なお、可変電流源50は、図4に示す構成に限定されるものではなく、例えば複数個のカレントミラー回路を設けて、それらの接続をスイッチ素子等により切り換える構成にしてもよい。
【0062】
このようにすることで、差動増幅信号VP1、VP2の電圧振幅値を極大値に近づけるように、LC負荷回路20のインダクタンス値及びキャパシタンス値の少なくとも一方を設定することができる。その結果、製造ばらつきや環境変動(例えば温度、電源電圧等の変動)による増幅回路の特性劣化を補正することができるから、特性が安定し、増幅効率の良い増幅回路を実現することができる。さらに入力信号の周波数が変化する場合でも、その変化した周波数に対して電圧振幅値を極大値に近づけることができるから、広い範囲の周波数について増幅効率の良い増幅回路を実現することができる。さらにインダクタンス値及びキャパシタンス値の少なくとも一方を設定した後に、電圧振幅値をターゲット振幅値に近づけることができるから、増幅回路の用途に応じて電圧振幅値を適正な値に設定することが可能になる。
【0063】
図5に、本実施形態の振幅検出回路30の別の構成例を示す。図5に示す振幅検出回路30は、差動増幅信号VP1、VP2の電圧振幅を検出する回路であって、AC結合キャパシターCC1、CC2、バイアス電圧設定回路60、振幅検出トランジスターTA1、TA2、振幅検出用電流源IS、平滑用キャパシターCF及びインピーダンス変換回路70を含む。
【0064】
AC結合キャパシターCC1、CC2は、出力ノードNP1と入力ノードNI1との間、及び出力ノードNP2と入力ノードNI2との間に各々設けられ、差動増幅信号VP1、VP2の交流成分を通過させる。バイアス電圧設定回路60は、入力ノードNI1、NI2にバイアス電圧VBIASを印加するためのものである。
【0065】
振幅検出トランジスターTA1、TA2は、高電位側電源ノードVDD(広義には第2の電源ノード)と検出ノードNQとの間に設けられる。入力ノードNI1の電圧によりTA1のゲートが制御され、入力ノードNI2の電圧によりTA2のゲートが制御される。バイアス電圧VBIASにより、入力ノードNI1、NI2の電圧を振幅検出トランジスターTA1、TA2が動作可能な電圧値に設定することができる。こうすることで、検出ノードNQには、VBIAS−VTH(VTHはTA1、TA2のしきい値電圧)を中心電圧として、増幅信号VP1、VP2と振幅が等しい交流電圧が生じる。
【0066】
振幅検出用電流源ISは、検出ノードNQと低電位側電源ノードVSS(広義には第1の電源ノード)との間に設けられる。振幅検出用電流源ISは、振幅検出トランジスターTA1、TA2のドレイン電流を確保するためのものである。
【0067】
平滑用キャパシターCFは、検出ノードNQと低電位側電源ノードVSSとの間に設けられる。平滑用キャパシターCFにより、検出ノードNQの電圧が平滑化されることで、差動増幅信号VP1、VP2の電圧振幅に応じた電圧が検出ノードNQに生じる。
【0068】
インピーダンス変換回路70は、検出ノードNQの電圧を受け、インピーダンスを変換して、制御回路40へ検出出力電圧VDを出力する。検出ノードNQに発生する信号は高インピーダンスなので、これをインピーダンス変換回路70により低インピーダンスに変換して、制御回路40へ出力する。インピーダンス変換回路70は、例えば図2に示すように、ボルテージフォロワー接続のオペアンプOPAで構成することができる。
【0069】
図6は、振幅検出回路30(図5)の動作を説明する図であり、差動増幅信号VP1、VP2、入力ノードNI1、NI2の各電圧V(NI1)、V(NI2)及び検出ノードNQの電圧V(NQ)(検出出力電圧VD)の波形の一例を示す。入力ノードNI1には、増幅信号VP1に応じて、バイアス電圧VBIASを中心電圧とする交流電圧が生じる。同様に、入力ノードNI2には、増幅信号VP2に応じて、バイアス電圧VBIASを中心電圧とする交流電圧が生じる。そして検出ノードNQには、VBIAS−VTHを基準電圧とする平滑化した電圧が出力される。この平滑化された電圧が、検出出力電圧VDとして出力される。
【0070】
例えば、差動増幅信号VP1、VP2の電圧振幅が大きい場合(図6のE1、E3)には、入力ノードNI1、NI2の各電圧V(NI1)、V(NI2)は、図6のE2、E4に示す波形になり、NQの電圧V(NQ)は図6のE5に示す波形になる。一方、差動増幅信号VP1、VP2の電圧振幅が小さい場合(図6のF1、F3)には、図6のF2、F4に示す波形になり、NQの電圧V(NQ)すなわち検出出力電圧VDは、図6のF5に示す波形になる。なお、増幅信号の周波数が十分高ければ、平滑化によってほぼ一定の電圧値が出力される。
【0071】
このようにして得られる検出出力電圧VDと増幅信号VPの電圧振幅との関係は、図3(B)に示すものと同様である。振幅検出回路30は、増幅信号VP1、VP2の電圧振幅の増加に従ってVBIAS−VTHである電圧からの変化電圧が増加する信号を、検出出力電圧VD(広義には検出結果)として出力する。このようにすれば、検出出力電圧VDとVBIAS−VTHとの電圧差から増幅信号VP1、VP2の電圧振幅値を求めることができる。
【0072】
図7(A)、図7(B)に、増幅信号の電圧振幅の周波数特性の一例を示す。図7(A)は、LC負荷回路20のインダクタンス値(L値)及びキャパシタンス値(C値)の少なくとも一方を設定する前の周波数特性(破線で示す)及び設定した後の周波数特性(実線で示す)である。
【0073】
例えば、L値及びC値の少なくとも一方を設定する前では、使用する周波数(搬送波の周波数)fcにおける電圧振幅値は、図7(A)のA1に示す値である。制御回路40は、振幅検出回路30の検出結果に基づいて、電圧振幅値を極大値に近づけるようにL値及びC値の少なくとも一方を設定する。具体的には、LC負荷回路20のL値及びC値の少なくとも一方を減少させる制御を行うことで、LC負荷回路20の共振周波数が高い方へシフトする。その結果、fcにおける電圧振幅値は極大値に近づき、例えば図7(A)のA2に示す値になる。
【0074】
また、図示していないが、設定前の共振周波数が使用する周波数fcよりも高い場合には、LC負荷回路20のL値及びC値の少なくとも一方を増加させる制御を行うことで、
LC負荷回路20の共振周波数が低い方へシフトする。その結果、fcにおける電圧振幅値は、極大値に近づく。
【0075】
図7(B)は、上記の設定後に可変電流源50の電流値IAを変化させた時の電圧振幅値の周波数特性である。例えば、LC負荷回路20のL値及びC値の少なくとも一方を設定した時のfcにおける電圧振幅値は、図7(B)のB1に示す値である。可変電流源50の電流値IAを増加させることで、増幅回路のゲインが増加するから、fcにおける電圧振幅値は増加し、例えば図7(B)のB2に示す値になる。逆に可変電流源50の電流値IAを減少させることで、増幅回路のゲインが減少するから、fcにおける電圧振幅値は減少し、例えば図7(B)のB3に示す値になる。
【0076】
以上説明したように、本実施形態の増幅回路によれば、増幅信号の電圧振幅値を極大値に近づけるように、LC負荷回路のインダクタンス値及びキャパシタンス値の少なくとも一方を設定することができる。その結果、製造ばらつきや環境変動(例えば温度、電源電圧等の変動)による増幅回路の特性劣化を補正することができるから、特性が安定し、増幅効率の良い増幅回路を実現することができる。さらに入力信号の周波数が変化する場合でも、その変化した周波数に対して電圧振幅値を極大値に設定することができるから、広い範囲の周波数について増幅効率の良い増幅回路を実現することができる。さらにインダクタンス値及びキャパシタンス値の少なくとも一方を設定した後に、可変電流源の電流値を設定することで、電圧振幅値をターゲット振幅値に近づけることができるから、増幅回路の用途に応じて電圧振幅値を適正な値に設定することが可能になる。
【0077】
図8は、上述したインダクタンス値及びキャパシタンス値の少なくとも一方を設定する処理のフローチャートの一例である。図8では、例としてキャパシタンス値(C値)を設定する場合を示しているが、インダクタンス値(L値)を設定する場合も同様の制御フローになる。以下では、図8に示すステップP1〜P13に従ってC値を設定する処理を説明する。
【0078】
最初にC値を初期値C0に設定する(ステップP1)。次に、振幅検出回路30からの検出結果に基づいて、初期値C0の時の電圧振幅値VPAを取得する(ステップP2)。次にC値を増分値ΔCだけ増加させ(ステップP3)、その後の電圧振幅値VPAを取得する(ステップP4)。そして電圧振幅値VPAが増加したか否かを判断する(ステップP5)。
【0079】
電圧振幅値VPAが増加した場合には、C値をさらに増分値ΔCだけ増加させ(ステップP6)、その後の電圧振幅値VPAを取得する(ステップP7)。そして電圧振幅値VPAが増加したか否かを判断する(ステップP8)。電圧振幅値VPAが増加した場合には、ステップP6に戻り、C値をさらに増分値ΔCだけ増加させる。これを繰り返した後、ステップP8の判断において電圧振幅値VPAが増加しない場合には、C値を1つ前の値(C−ΔC)に戻して(ステップP9)、設定を終了する。
【0080】
一方、ステップP5の判断において、電圧振幅値VPAが増加しない場合には、C値を増分値ΔCだけ減少させ(ステップP10)、その後の電圧振幅値VPAを取得する(ステップP11)。そして電圧振幅値VPAが増加したか否かを判断する(ステップP12)。電圧振幅値VPAが増加した場合には、ステップP10に戻り、C値をさらに増分値ΔCだけ減少させる。これを繰り返した後、ステップP12の判断において電圧振幅値VPAが増加しない場合には、C値を1つ前の値(C+ΔC)に戻して(ステップP13)、設定を終了する。
【0081】
このようにすることで、増幅信号の電圧振幅値を極大値に近づける処理を行って、LC負荷回路のキャパシタンス値を設定することができる。さらに同様の処理を行って、LC負荷回路のインダクタンス値を設定することができる。
【0082】
図9は、インダクタンス値及びキャパシタンス値の少なくとも一方を設定した後に、可変電流源50の電流値IAを設定することで、電圧振幅値VPAをターゲット振幅値VPAsetに近づける処理のフローチャートの一例である。以下では、図9に示すステップS1〜S9に従って電流値IAを設定する処理を説明する。
【0083】
最初に電流値IAを初期値IA0に設定する(ステップS1)。次に、振幅検出回路30からの検出結果に基づいて、初期値IA0の時の電圧振幅値VPAを取得する(ステップS2)。そして電圧振幅値VPAがターゲット振幅値VPAsetより小さいか否かを判断する(ステップS3)。
【0084】
電圧振幅値VPAがターゲット振幅値VPAsetより小さい場合には、電流値IAを増分値ΔIAだけ増加させ(ステップS4)、その後の電圧振幅値VPAを取得する(ステップS5)。そして電圧振幅値VPAとターゲット振幅値VPAsetとの差が所定の値Veより小さいか否かを判断する(ステップS6)。所定の値Veは、この処理によって実際に設定される電圧振幅値VPAとターゲット振幅値VPAsetとの誤差の上限を決める。電圧振幅値VPAとターゲット振幅値VPAsetとの差が所定の値Veより小さい場合には、設定を終了する。VPAとVPAsetとの差が所定の値Veより小さくない場合には、ステップS4に戻り処理を繰り返す。
【0085】
一方、ステップS3の判断において、電圧振幅値VPAがターゲット振幅値VPAsetより小さくない場合には、電流値IAを増分値ΔIAだけ減少させ(ステップS7)、その後の電圧振幅値VPAを取得する(ステップS8)。そして電圧振幅値VPAとターゲット振幅値VPAsetとの差が所定の値Veより小さいか否かを判断する(ステップS9)。電圧振幅値VPAとターゲット振幅値VPAsetとの差が所定の値Veより小さい場合には、設定を終了する。VPAとVPAsetとの差が所定の値Veより小さくない場合には、ステップS7に戻り処理を繰り返す。
【0086】
このようにすることで、増幅信号の電圧振幅値をターゲット振幅値に近づける処理を行って、可変電流源の電流値を設定することができる。
【0087】
2.集積回路装置
図10に、本実施形態の増幅回路を含む集積回路装置の構成例を示す。図10の集積回路装置100は、受信回路200、送信回路300、制御部350を含む。受信回路200は、増幅回路(受信側)230、周波数変換回路240、フィルター250、復調回路270を含む。送信回路300は、増幅回路(送信側)310、変調回路320、発振回路(PLL回路)330を含む。
【0088】
増幅回路(受信側)230は、本実施形態の増幅回路であって、アンテナ360から入力される受信信号を増幅する。上述したように、本実施形態の増幅回路(受信側)230によれば、増幅信号の電圧振幅値を極大値に近づけるように、LC負荷回路のインダクタンス値及びキャパシタンス値の少なくとも一方を設定することができるから、アンテナからの受信信号を効率良く増幅することができる。さらに受信信号の周波数が変化する場合でも、その変化した周波数に対して電圧振幅値を極大値に近づけることができるから、広い範囲の周波数について効率良く増幅することができる。
【0089】
周波数変換回路240は、受信周波数から中間周波数へ周波数変換を行う。フィルター250は、不要な周波数成分を除去して所望の信号を出力する。復調回路270は、所望波の信号を復調して必要なデータを取り出す。
【0090】
発振回路(PLL回路)330は、基準クロックから必要な周波数(搬送波周波数など)の信号を生成する。変調回路320は送信データに基づいて搬送波を変調(例えば周波数変調)する。
【0091】
制御部350は、無線通信の制御処理や集積回路装置100の外部の回路(ホストなど)とのデータ通信を行う。
【0092】
増幅回路(送信側)310は、本実施形態の増幅回路であって、変調された送信信号を増幅して、アンテナ360から送信する。図10に示す構成例では、増幅回路(送信側)310は、第1の増幅器311と、第1の増幅器311からの信号を増幅する第2の増幅器312とを含む。
【0093】
第1の増幅器311が、増幅用トランジスターとLC負荷回路とを含む。振幅検出回路313は、第1の増幅器311の出力信号の電圧振幅を検出する。制御回路314は、振幅検出回路313からの検出結果に基づいて、増幅信号の電圧振幅値を極大値に近づける処理を行って、第1の増幅器311のLC負荷回路のインダクタンス値(L値)及びキャパシタンス値(C値)の少なくとも一方を設定する。さらに制御回路314は、L値及びC値の少なくとも一方を設定した後に、増幅信号の電圧振幅値をターゲット振幅値に近づける処理を行って、可変電流源の電流値を設定する。
【0094】
なお、図10の構成では、振幅検出回路313は、第1の増幅器311の出力信号の電圧振幅を検出するが、第2の増幅器312の出力信号の電圧振幅を検出してもよい。
【0095】
以上説明したように、本実施形態の増幅回路を含む集積回路装置によれば、製造ばらつきや環境変動(例えば温度、電源電圧等の変動)による特性劣化を補正して、増幅信号の電圧振幅値を極大値に近づけることができる。また使用する周波数が変化する場合でも、その変化した周波数に対して増幅信号の電圧振幅を極大値に近づけることができるから、広い範囲の周波数について増幅効率の良い集積回路装置を実現することができる。例えば周波数ホッピング方式などの周波数を頻繁に変化させる無線方式において、増幅効率の良い無線通信機器を実現することができる。さらに電圧振幅値をターゲット振幅値に近づけることができるから、無線通信機器の用途等に応じて送信電力を適正な値に設定することが可能になる。例えば通信距離に応じて送信電力を設定したり、送信電力を小さくして受信回路のキャリブレーション用信号として利用したりすることなどが可能になる。
【0096】
3.電子機器
図11に、集積回路装置100を含む電子機器400の構成例を示す。電子機器400は、集積回路装置100、センサー部410、A/D変換器420、記憶部430、ホスト440、操作部450を含む。
【0097】
電子機器400は、例えば温度・湿度計、脈拍計、歩数計等であって、検出したデータを無線により送信することができる。センサー部410は、温度センサー、湿度センサー、ジャイロセンサー、加速度センサー、フォトセンサー、圧力センサー等を含み、電子機器400の用途に応じたセンサーが用いられる。
【0098】
センサー部410は、センサーの出力信号(センサー信号)を増幅し、フィルターによりノイズを除去する。A/D変換器420は、増幅された信号をデジタル信号に変換して集積回路装置100へ出力する。ホスト440は、例えばマイクロコンピューター等で構成され、デジタル信号処理や或いは記憶部430に記憶された設定情報や操作部450からの信号に基づいて電子機器400の制御処理を行う。記憶部430は、例えばフラッシュメモリーなどで構成され、設定情報や検出したデータ等を記憶する。操作部450は、例えばキーパッド等で構成され、使用者が電子機器400を操作するために用いられる。
【0099】
なお、以上のように本実施形態について詳細に説明したが、本発明の新規事項および効果から実体的に逸脱しない多くの変形が可能であることは当業者には容易に理解できるであろう。従って、このような変形例はすべて本発明の範囲に含まれるものとする。例えば、明細書又は図面において、少なくとも一度、より広義または同義な異なる用語(第1の電源ノード、第2の電源ノード)と共に記載された用語(低電位側電源ノードVSS、高電位側電源ノードVDD)は、明細書又は図面のいかなる箇所においても、その異なる用語に置き換えることができる。また増幅回路、集積回路装置及び電子機器の構成、動作も本実施形態で説明したものに限定されず、種々の変形実施が可能である。
【符号の説明】
【0100】
10 増幅用トランジスター、20 LC負荷回路、30 振幅検出回路、
40 制御回路、41 A/D変換器、42 論理回路、43、44 D/A変換器、
50 可変電流源、60 バイアス電圧設定回路、70 インピーダンス変換回路、
100 集積回路装置、200 受信回路、230 増幅回路(受信側)、
240 周波数変換回路、250 フィルター、270 復調回路、300 送信回路、
310 増幅回路(送信側)、311 第1の増幅器、312 第2の増幅器、
313 振幅検出回路、314 制御回路、320 変調回路、
330 発振回路(PLL回路)、350 制御部、360 アンテナ、
400 電子機器、410 センサー部、420 A/D変換器、430 記憶部、
440 ホスト、450 操作部、
CA バラクター、CB キャパシター、LA インダクター、NC 制御ノード、
NP 出力ノード、VD 検出出力電圧、VP 増幅信号、VT LC制御電圧
【特許請求の範囲】
【請求項1】
入力信号を増幅する増幅用トランジスターと、
インダクター及びキャパシターにより構成され、前記インダクターのインダクタンス値及び前記キャパシターのキャパシタンス値の少なくとも一方が可変に設定されるLC負荷回路と、
増幅信号の電圧振幅を検出する振幅検出回路と、
前記振幅検出回路の検出結果に基づいて前記インダクタンス値及び前記キャパシタンス値の少なくとも一方を設定し、前記増幅信号の電圧振幅値を極大値に近づける制御を行う制御回路とを含むことを特徴とする増幅回路。
【請求項2】
請求項1において、
前記キャパシターは、第1の電源ノードと制御ノードとの間に設けられる第1のキャパシターと、前記制御ノードと前記増幅用トランジスターの出力ノードとの間に設けられる第2のキャパシターとにより構成され、
前記第1のキャパシターは、前記制御ノードの電圧によりキャパシタンス値が可変に設定され、
前記インダクターは、前記出力ノードと第2の電源ノードとの間に設けられることを特徴とする増幅回路。
【請求項3】
請求項1又は2において、
前記増幅用トランジスターに電流を流すための可変電流源を含み、
前記制御回路は、前記振幅検出回路の検出結果に基づいて、前記可変電流源の電流値を設定する制御を行うことを特徴とする増幅回路。
【請求項4】
請求項3において、
前記制御回路は、
前記振幅検出回路の検出結果に基づいて、前記増幅信号の電圧振幅値を極大値に近づける処理を行って、前記インダクタンス値及び前記キャパシタンス値の少なくとも一方を設定し、
前記インダクタンス値及び前記キャパシタンス値の少なくとも一方を設定した後に、前記増幅信号の電圧振幅値をターゲット振幅値に近づける処理を行って、前記可変電流源の電流値を設定することを特徴とする増幅回路。
【請求項5】
請求項1乃至4のいずれかにおいて、
前記増幅用トランジスターと前記LC負荷回路を有する第1の増幅器と、
前記第1の増幅器からの信号を増幅する第2の増幅器とを含むことを特徴とする増幅回路。
【請求項6】
請求項5において、
前記振幅検出回路が電圧振幅を検出する前記増幅信号は、前記第1の増幅器の出力信号であることを特徴とする増幅回路。
【請求項7】
請求項5において、
前記振幅検出回路が電圧振幅を検出する前記増幅信号は、前記第2の増幅器の出力信号であることを特徴とする増幅回路。
【請求項8】
請求項1乃至7のいずれかにおいて、
前記振幅検出回路は、
前記出力ノードと入力ノードとの間に設けられるAC結合キャパシターと、
前記入力ノードにバイアス電圧を印加するバイアス電圧設定回路と、
第2の電源ノードと検出ノードとの間に設けられ、前記入力ノードの電圧によりゲートが制御される振幅検出トランジスターと、
前記検出ノードと第1の電源ノードとの間に設けられる振幅検出用電流源と、
前記検出ノードと前記第1の電源ノードとの間に設けられる平滑用キャパシターと、
前記検出ノードの電圧を受け、前記検出ノードの電圧のインピーダンス変換を行い、前記制御回路へ出力するインピーダンス変換回路とを含むことを特徴とする増幅回路。
【請求項9】
請求項8において、
前記バイアス電圧をVBIASとし、前記振幅検出トランジスターのしきい値電圧をVTHとした場合に、
前記振幅検出回路は、
前記増幅信号の電圧振幅が増加するにつれて電圧VBIAS−VTHからの変化電圧が増加する検出結果信号を出力することを特徴とする増幅回路。
【請求項10】
請求項1乃至9のいずれかに記載の増幅回路を有する送信回路を含むことを特徴とする集積回路装置。
【請求項11】
請求項1乃至9のいずれかに記載の増幅回路を有する受信回路を含むことを特徴とする集積回路装置。
【請求項12】
請求項10又は11に記載の集積回路装置を含むことを特徴とする電子機器。
【請求項1】
入力信号を増幅する増幅用トランジスターと、
インダクター及びキャパシターにより構成され、前記インダクターのインダクタンス値及び前記キャパシターのキャパシタンス値の少なくとも一方が可変に設定されるLC負荷回路と、
増幅信号の電圧振幅を検出する振幅検出回路と、
前記振幅検出回路の検出結果に基づいて前記インダクタンス値及び前記キャパシタンス値の少なくとも一方を設定し、前記増幅信号の電圧振幅値を極大値に近づける制御を行う制御回路とを含むことを特徴とする増幅回路。
【請求項2】
請求項1において、
前記キャパシターは、第1の電源ノードと制御ノードとの間に設けられる第1のキャパシターと、前記制御ノードと前記増幅用トランジスターの出力ノードとの間に設けられる第2のキャパシターとにより構成され、
前記第1のキャパシターは、前記制御ノードの電圧によりキャパシタンス値が可変に設定され、
前記インダクターは、前記出力ノードと第2の電源ノードとの間に設けられることを特徴とする増幅回路。
【請求項3】
請求項1又は2において、
前記増幅用トランジスターに電流を流すための可変電流源を含み、
前記制御回路は、前記振幅検出回路の検出結果に基づいて、前記可変電流源の電流値を設定する制御を行うことを特徴とする増幅回路。
【請求項4】
請求項3において、
前記制御回路は、
前記振幅検出回路の検出結果に基づいて、前記増幅信号の電圧振幅値を極大値に近づける処理を行って、前記インダクタンス値及び前記キャパシタンス値の少なくとも一方を設定し、
前記インダクタンス値及び前記キャパシタンス値の少なくとも一方を設定した後に、前記増幅信号の電圧振幅値をターゲット振幅値に近づける処理を行って、前記可変電流源の電流値を設定することを特徴とする増幅回路。
【請求項5】
請求項1乃至4のいずれかにおいて、
前記増幅用トランジスターと前記LC負荷回路を有する第1の増幅器と、
前記第1の増幅器からの信号を増幅する第2の増幅器とを含むことを特徴とする増幅回路。
【請求項6】
請求項5において、
前記振幅検出回路が電圧振幅を検出する前記増幅信号は、前記第1の増幅器の出力信号であることを特徴とする増幅回路。
【請求項7】
請求項5において、
前記振幅検出回路が電圧振幅を検出する前記増幅信号は、前記第2の増幅器の出力信号であることを特徴とする増幅回路。
【請求項8】
請求項1乃至7のいずれかにおいて、
前記振幅検出回路は、
前記出力ノードと入力ノードとの間に設けられるAC結合キャパシターと、
前記入力ノードにバイアス電圧を印加するバイアス電圧設定回路と、
第2の電源ノードと検出ノードとの間に設けられ、前記入力ノードの電圧によりゲートが制御される振幅検出トランジスターと、
前記検出ノードと第1の電源ノードとの間に設けられる振幅検出用電流源と、
前記検出ノードと前記第1の電源ノードとの間に設けられる平滑用キャパシターと、
前記検出ノードの電圧を受け、前記検出ノードの電圧のインピーダンス変換を行い、前記制御回路へ出力するインピーダンス変換回路とを含むことを特徴とする増幅回路。
【請求項9】
請求項8において、
前記バイアス電圧をVBIASとし、前記振幅検出トランジスターのしきい値電圧をVTHとした場合に、
前記振幅検出回路は、
前記増幅信号の電圧振幅が増加するにつれて電圧VBIAS−VTHからの変化電圧が増加する検出結果信号を出力することを特徴とする増幅回路。
【請求項10】
請求項1乃至9のいずれかに記載の増幅回路を有する送信回路を含むことを特徴とする集積回路装置。
【請求項11】
請求項1乃至9のいずれかに記載の増幅回路を有する受信回路を含むことを特徴とする集積回路装置。
【請求項12】
請求項10又は11に記載の集積回路装置を含むことを特徴とする電子機器。
【図1】
【図2】
【図3】
【図4】
【図5】
【図6】
【図7】
【図8】
【図9】
【図10】
【図11】
【図2】
【図3】
【図4】
【図5】
【図6】
【図7】
【図8】
【図9】
【図10】
【図11】
【公開番号】特開2011−155386(P2011−155386A)
【公開日】平成23年8月11日(2011.8.11)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2010−14548(P2010−14548)
【出願日】平成22年1月26日(2010.1.26)
【出願人】(000002369)セイコーエプソン株式会社 (51,324)
【Fターム(参考)】
【公開日】平成23年8月11日(2011.8.11)
【国際特許分類】
【出願日】平成22年1月26日(2010.1.26)
【出願人】(000002369)セイコーエプソン株式会社 (51,324)
【Fターム(参考)】
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